あの場所まで
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#32 [ミツバ]
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うっすらとしか記憶になかった思い出があの朱色の鳥居と白い帽子を見て微かに脳裏をよぎった。
雨は次第に弱くなり、小雨よりも霧に近い雨に移り変わってきた。
傘を差す人、差さない人が半々に見える。
:09/07/04 14:35 :D904i :2xlbwZBE
#33 [ミツバ]
優介はまだしっかりと傘を紗代里の上にかざしていた。
観光客にぶつからないように歩く。
紗代里は朱色の鳥居を目を凝らして見つめていた。
:09/07/04 14:38 :D904i :2xlbwZBE
#34 [ミツバ]
白い帽子に白いポロシャツ、灰色のズボンがしっかり見えた。
おじいちゃんが死んでから、紗代里はスラリとした老人を見るとおじいちゃんに見えてしまう。
今回もそうだった。
:09/07/04 14:43 :D904i :2xlbwZBE
#35 [ミツバ]
どこにでもいるような普通のおじいちゃんだからこそ、街中に似てる姿を何度も見た。
そして、目で追う。
その繰り返し。
:09/07/04 14:45 :D904i :2xlbwZBE
#36 [ミツバ]
「紗代里、紗代里っ」
紗代里はぐいぐいと腕を引っ張られた。
「あれ、テレビでやってたやつだよ」
優介は嬉しそうにメディアに取り上げられた店を見ていた。
「寄ってもいい?」
楽しそうに言うので、紗代里はくすりと笑って頷いた。
:09/07/04 14:49 :D904i :2xlbwZBE
#37 [ミツバ]
潮風が舞う。
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店から出て、紗代里と優介は有料のエスカレーターには乗らず歩いて登る事にした。
石階段を上がり、左手に『エスカーのりば』が見えた。
:09/07/04 15:01 :D904i :2xlbwZBE
#38 [ミツバ]
歩きよりも、エスカーに乗る人の方が多かった。
その中に白い帽子を見つけた。
「あれ?」
紗代里はドキンと胸が鳴った。
:09/07/04 15:03 :D904i :2xlbwZBE
#39 [ミツバ]
「優介、私もあれに乗りたい!」
紗代里は慌てて優介に言った。
「いいけど、体ツラいのか?」
心配そうに優介が聞いてくる。
「違うよ、元気だよ。私もあれに乗りたいの」
体のだるさなんて全く感じてはいなかった。
:09/07/04 15:08 :D904i :2xlbwZBE
#40 [ミツバ]
一つしかない切符売り場に3人も並んでいた。
顔を見てみたい。
もう一度見渡すと白い帽子はもういなかった。
:09/07/04 15:11 :D904i :2xlbwZBE
#41 [ミツバ]
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『おじいちゃん危ないから早く帰ってきて』
母から紗代里あてにメールが届いた。
夕暮れ時。
紗代里が高校3年生の秋だった。
:09/07/05 10:22 :D904i :zokoJNWk
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