死に至る病
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#182 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「うん。いいやつだよ。すっごくいいやつ。そのせいで傷つくことも多いからよく泣くんだけど、…幸せそうに泣くんだよな、あいつ。他人が傷つくくらいなら自分が傷つくほうがマシ、なんて考えてる。そんなやつ、なかなかいないよな。レアだよレア」

「……桐沢さん、好きでたまらないって感じですね」

「そうかな」


お待たせー、とりこと直央がトレイに紅茶を乗せて帰ってきた。

猫足の木製テーブルに白い陶磁器のカップが置かれる様子を、僕は夢の中のように見ていた。

⏰:09/08/13 22:34 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#183 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央がしずしずと、僕の横に正座でちょこんと座った。

僕の顔を覗き込む。

「眠い?」

直央が訊いた。

僕は頷いた。

すると彼女は正座のまま、自分のももをぽんぽんと叩いてみせた。

⏰:09/08/13 22:35 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#184 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「膝枕したげるよぅ〜」

りこが紅茶をふきだしかけて、口を押さえながら笑った。

つられて僕も笑った。

ほらほら早くぅ、と直央は頬っぺたを膨らませて急かした。

「いーじゃん、してもらいなよ膝枕ー。絶世の美少女の太もも撫でれるなんて生き天国じゃん。直央ちゃんがあんたになついてくれてる間がチャンスだよー。素直になんないと他の男に直央ちゃん持ってかれるよん」

りこは言った。

⏰:09/08/13 22:36 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#185 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「ばーか、持っていかせねーよ」

なんて言ってみる。

直央はみるみるうちに真っ赤になり、ぽわーんんんとつぶやいて妄想をしだした。

と思いきや、あっという間に直央は僕の腕をひっつかみ(すごい力で)、横に引っ張った。


体勢を崩して倒れたさきには、直央の膝枕があった。

⏰:09/08/13 22:37 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#186 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ぽふ、と頭に柔らかい感触。

鼻の下を伸ばさずにはいられない、膝枕って男のロマンだよな。

直央は僕の頭を撫でながら、やーんいい匂いがするよぅと言って、猫みたいに頬をすりつけてきた。

「うっしっし、あたしらの前で公開イチャイチャしてくれちゃってさー。直央ちゃんもホンット渉が好きだねぇ。そんなオトコのどこがいーんだか」

「えへへ〜。好きだからしょうがないよぅ。それに、渉ちゃんにはわたししかいないもんね〜。バレンタインチョコはわたしにしかもらえないもんね」

⏰:09/08/13 22:39 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#187 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
反論したかったが、そう言った直央の顔はひどく幸せそうで、なにも反発せずに頷いた。

むせかえるほどの直央の匂い。


「あれー?」

りこはかがんでテーブルの下から意地悪な笑顔で僕を見た。

嫌な予感がした。

⏰:09/08/13 22:40 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#188 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「バレンタインチョコは誰にももらってないぃぃ? 本当かなぁ、桐沢渉くぅーん? …毎年ロッカーいっぱいに本命チョコもらってるのは……あれれ、ワタクシの記憶違いかしらん?」

えっ、と直央が小さく叫んだ。


赤い舌を出すりこ。

⏰:09/08/13 22:41 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#189 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央は無言で僕の頬っぺたをつねり、力強く横に伸ばした。

本当容赦ない。

止めろよ痛いだろ、と言おうとしても、口から出るのはふごふごもごもごと意味不明なものだった。

「わたしを騙してたなぁ」

直央の瞳は怒りを孕んでいた。

⏰:09/08/13 22:42 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#190 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「じゃむしてにゃいひょ、ごかひだほ。ひゃめろひ」

「う〜、ひどいよぅ」

頬っぺたをつねる手をぱっと放して、のしかかるように直央は僕に抱きついてきた。

彼女の長い髪が視界を隠す。

⏰:09/08/13 22:43 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#191 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
胸板に当たるふたつの柔らかく温かい感触に、高鳴る僕の心臓。

心臓の鼓動が重なる。


直央はゆっくりと唇を開いた。

⏰:09/08/13 22:43 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


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