死に至る病
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#16 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
長い睫毛で包まれた大きく丸い瞳がぱっちり開いて、困ったように僕を見ていた。
しかし、口元はへの字で、しっかり怒っていた。
「真面目に受けてるって。ほら、教科書もノートも広げてるしさ」
僕は机の上の教科書をパラパラめくってみせる。
隅っこに描かれた半年かけた超大作のパラパラ漫画が、不器用な動きを見せていた。
:09/07/23 22:34
:N03A
:U89gCFpA
#17 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央はぶぅ、と頬を膨らませて、それ以上何もいわずにすねてしまった。
……少しやりすぎたかな。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、直央はおもいっきり背伸びをして、机にうつ伏せた。
腰まであるウェーブのかかった髪が、顔をすっぽり隠し、カーテンみたく机から垂れ下がっている。
:09/07/23 22:55
:N03A
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#18 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
撫でて見ると、さらさらしていて、とても気持ちいい。
うちの猫みたいだな、と思った。
しばらくしても起き上がらないので顔を覗いてみると、なんとスナック菓子を食べていた。
薄目で、ただひたすら口だけ動かしている。
その無気力さが面白くて愛しくて、いよいよ笑いをこらえきれずに腹を抱えて笑った。
直央は頬をうっすら赤に染めて、恥ずかしそうに「なんだよぅ」と言った。
:09/07/23 22:56
:N03A
:U89gCFpA
#19 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「動物みたいだなー、お前は。そんなに緩みまくって、珍しく真面目に授業受けて疲れたんだろ」
「違いますぅ」
菓子を一口して、直央は言った。
「わたしはやる時はきちんとして、休む時はきっちり休むの。渉ちゃんみたいなねぼすけとは違うのぉ」
「……ほーお。生活習慣病まっしぐらの爆食娘が生意気いうようになったな」
:09/07/24 16:25
:N03A
:rRJYHlQs
#20 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕は直央のスナック菓子の袋を奪い取ると、残り少ない中身を全部食べてやった。
……うむ、美味である。
直央はわーっと悲鳴を上げながら袋をむしり取り、空っぽなのに気づくと怒りを露にして襲いかかってきた。
「ひどいよぉ、渉ちゃんのバカぁーっ。人でなしーっ」
「人様を馬鹿にするからだ。悔しかったら、俺の腹ん中から取り戻してみやがれってんだ」
「ばかばか、ばかぁ!」
:09/07/24 16:27
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#21 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
小さな握りこぶしが、僕の胸をぽかぽか叩く。
そのうちの一回がみぞおちにヒットし、かなりの大打撃を受けた。
うえ、吐きそう。
「天罰ですぅ。人様のお菓子を横取りするからだよぉ」
直央は、してやったりと真っ赤な舌を出してみせる。
窮鼠猫を噛むって、こういうことなのかと身をもって実感した。
:09/07/24 17:33
:N03A
:rRJYHlQs
#22 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
しかし、いくら鈍感で無神経(直央いわく、そうらしい)な僕でもここは直央に謝るべきだと分かっていた。
菓子のことじゃなく、授業中に居眠りを起こして助けてくれたことにだ。
恥ずかしくて煙にまくつもりだったけど、やっぱり言おう、言ったほうがいい。
僕は咳払いをして、言った。
:09/07/24 17:35
:N03A
:rRJYHlQs
#23 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「……ありがとな」
「え?」
きょとんとして僕を見上げる直央に、顔が熱くなるのがわかった。
彼女の瞳は、綺麗だ。
混血らしく、瞳は濃い青色をしていた。
澄んだ湖が凝縮されたみたいにきらきら輝いて、そして深い。
見つめられると、底知れない瞳の奥に、吸い込まれてしまいそうになる。
:09/07/24 17:52
:N03A
:rRJYHlQs
#24 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「授業中起こしてくれてありがと。助かったよ」
言い終わったと同時に、チャイムが鳴り、僕は逃げるようにして机に座った。
……顔がまだ熱い。
:09/07/24 17:54
:N03A
:rRJYHlQs
#25 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央は何も言わずに席につくと、ちょんちょん、と僕の肩をつついた。
そして、いたずらっぽく、ひそひそと小声で言った。
「放課後、どこかに遊びにいこ。美味しいもの食べたいなぁ」
彼女の顔もまた赤く、白い八重歯を覗かせて、魅力的に笑った。
僕も一緒に、笑った。
:09/07/24 17:55
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