死に至る病
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#80 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
さすがに直央は困った顔をして、苦し気に小さく笑った。
「あと……、明日からも、これまでと同じように仲良しでいようね。渉ちゃんの気持ち、わたしすごく嬉しかったよぅ。これは本当、嘘なんかじゃないから…」
直央は言った。
いつもの軽い感じじゃなく、とてもしっかりしたもので驚いた。
誰にも頼らない、この意志だけは譲らない、そんな強い光をもった瞳でまっすぐ僕を見ている。
しっかりとそらさずに。
:09/08/05 18:55
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#81 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕はそれが恐ろしかった。
一人じゃなにもできなくて、見守ってやらなきゃ危なっかしい直央が、いつの間にか僕を必要しなくなることを何より恐れていた。
だって僕は、直央に必要とされているからいまも親友であれるわけで、必要とされなくなれば、直央は僕から離れていくに違いない。
僕は、直央の特別ではないから。
ずっと、親友のままだから。
:09/08/05 19:19
:N03A
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#82 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
胸が痛んだ。
このまま握り潰してしまえたら楽なのに、と思った。
:09/08/05 20:30
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#83 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
玄関の横にある勝手口から、メイド服姿の女性が出てきた。
黒木さんだった。
「直央お嬢様、お帰りなさいませ。そして渉さんこんばんは。お帰りが遅いのでお父様がご心配なさっておられますよ」
黒木さんは言った。
直央は冗談っぽく照れてみせた。
:09/08/05 20:34
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#84 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
黒木さんは、切れ長のどこか冷たい目と無表情が印象的な女性だった。
年齢はまだ若い。
私語はつつしみ妥協を許さず仕事に徹底するメイドの鏡で、狩山家に信頼をおかれているという。
付け加え、仕事が終わるとすごく優しいお姉ちゃん。
直央いわく、そうらしい。
:09/08/05 21:18
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#85 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「暗いですから、門まで私がお見送りいたします」
黒木さんは僕に言った。
それには直央も賛成らしい、大急ぎで懐中電灯を持ってきた。
「わたしも行くよぅ」
直央は言った。
僕はそれを断わった。
最後の最後まで僕を楽しくさせようとする努力が嬉しくもあり、悲しくもあった。
:09/08/05 21:20
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#86 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕がこうさせているんだ。
これ以上、どんなささいなことでも僕のせいで直央に迷惑をかけたくない。
直央に別れも告げないまま立ち去ろうとした、…その時だった。
直央がかけよってきて僕の背中をばしーん、と思いきり叩いた。
すごい力だった。
僕が驚いて振り返ると、なんの容赦もなしにもう一発すごいのを食らわせられた。
:09/08/05 21:21
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#87 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
…突然の出来事だった。
僕はすっかりひるんでしまって、彼女になにも言えず呆然としていた。
黒木さんも全く同じように、目を丸くしていた。
直央は僕を睨みつけて、すこしためらってから力強く言った。
:09/08/05 21:31
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#88 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「私、渉ちゃんのこと大好きだって言ってる。信じてる。だから渉ちゃんには笑っていて欲しい。これからもずっと、私のそばにいて欲しい。渉ちゃん以外には考えられない。なのにどうして素っ気なくするの。恋人になれないから?」
「……直央、…」
「恋人になっても、きっと私達は変わらない。手も繋げるし、キスだってできるよ。だから笑ってよ渉ちゃん。渉ちゃんが笑ってくれないと、私困る。私は、」
そこまで言うと、直央はいきなり頭を押さえて崩れるように座り込んだ。
持っていた懐中電灯が地面に落ちる、鈍い音が響く。
:09/08/05 21:32
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#89 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
弾けるように黒木さんと僕は彼女にかけよった。
直央がうつろな瞳で僕をみる。
小さな手がそっと、僕の頬に触れた。
僕はその手に手を重ねた。
頬に手で触れるのは、ずっと仲良しだよのサイン。
僕達だけの、サイン。
:09/08/05 21:34
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