死に至る病
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#175 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
あまりに静かなので、僕がちょっと動いただけで、早紀さんはじろりと僕を睨んだ。

図書館にいる気分だった。


「一緒にきた人と、お付き合いされてるんですか」

不意に、彼女が喋った。

発言がいきなりだし予想外だったのでうまく聞き取れず、僕はもう一度お願いと言った。

⏰:09/08/13 22:24 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#176 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
彼女は小説にしおりを挟んで、ぱたんと閉じた。

「一緒にきた人と、お付き合いされてるんですか」


ややあって、僕は答えた。

「直央のことだよね? …してないよ。お互いフリーだから、寂しくて身を寄せあってんの」

僕は肩をすくめてみせた。

⏰:09/08/13 22:25 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#177 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「意外です。とても仲がよさそうに見えたので、てっきりそうかと勘違いしてました」

「よく言われる」

「でも、本当に恋人にしか見えません。そうでなかったら手を繋いだり寄りかったりしませんよ」

「直央にとって、それがスキンシップだからね」


「…それを口実に、イチャつきたいだけじゃないですか」

⏰:09/08/13 22:25 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#178 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
口実。


痛いとこつくな、この子。

僕はちょっと笑って、その反面胸がちくちく痛むのを感じていた。

でもそれは僕だけじゃないはずだ。

直央もきっと同じだろう。

⏰:09/08/13 22:28 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#179 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
お互い必要だから、一緒にいる。

お互いが信じてる。

明日を一緒に迎えて、喜びを分かちあって、悲しみに涙を流しあう。

抱きしめたければ優しく抱きしめればいい。

キスしたければ何回でもすればいい。

⏰:09/08/13 22:31 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#180 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
きれいごとかもしれないけど、あたりまえだからしかたない。

これはあたりまえだった。

だけど他人はこのあたりまえをあたりまえと認めず、嫌う。

友達と恋人の境目にはなにもないと決めつけ、きっちりしたカテゴリーにおさめたがる。

真実にしたがる。

僕らにしてみれば、それは無粋でしかないことだった。

⏰:09/08/13 22:32 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#181 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
日差しで暖められたぬるい空気が、僕の眠気を誘う。

「あの人がすごくいい人だというのは、分かります」

早紀さんは今まで下げていた頭をす上げて、くっきりした声で言った。

彼女の声は透明で、頭の中にすっと入ってくる。

なんとなく、この子は嘘をつかないしつけないだろうなと思った。

⏰:09/08/13 22:33 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#182 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「うん。いいやつだよ。すっごくいいやつ。そのせいで傷つくことも多いからよく泣くんだけど、…幸せそうに泣くんだよな、あいつ。他人が傷つくくらいなら自分が傷つくほうがマシ、なんて考えてる。そんなやつ、なかなかいないよな。レアだよレア」

「……桐沢さん、好きでたまらないって感じですね」

「そうかな」


お待たせー、とりこと直央がトレイに紅茶を乗せて帰ってきた。

猫足の木製テーブルに白い陶磁器のカップが置かれる様子を、僕は夢の中のように見ていた。

⏰:09/08/13 22:34 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#183 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
直央がしずしずと、僕の横に正座でちょこんと座った。

僕の顔を覗き込む。

「眠い?」

直央が訊いた。

僕は頷いた。

すると彼女は正座のまま、自分のももをぽんぽんと叩いてみせた。

⏰:09/08/13 22:35 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


#184 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
「膝枕したげるよぅ〜」

りこが紅茶をふきだしかけて、口を押さえながら笑った。

つられて僕も笑った。

ほらほら早くぅ、と直央は頬っぺたを膨らませて急かした。

「いーじゃん、してもらいなよ膝枕ー。絶世の美少女の太もも撫でれるなんて生き天国じゃん。直央ちゃんがあんたになついてくれてる間がチャンスだよー。素直になんないと他の男に直央ちゃん持ってかれるよん」

りこは言った。

⏰:09/08/13 22:36 📱:N03A 🆔:RJ.dOnTs


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