死に至る病
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#323 [chimu◆Hi9o8eIXuA]



満月の輝く夜だった。

障子(しょうじ)を挟んだ窓ガラスに、羽虫や蝉がこつこつとぶつかって音を立てていた。


「りこちゃんの浴衣可愛いーっ! オレンジ似合うよぅー。早紀ちゃんのも大人っぽくていいなぁ! 蝶の模様なんだねっ」

「直央ちゃんのも可愛いよん」

⏰:09/08/21 11:45 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#324 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
襖の向こうから、楽しげな会話がもれ聞こえてくる。

僕と湊は暇潰しに持ってきたトランプでババ抜きをして、彼女らの着付けが終わるのを待っていた。


今夜は夏祭りがある。

結構大きな祭りだから、私服じゃもったいないと、りこが浴衣で合わせようとした。

⏰:09/08/21 11:46 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#325 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ちなみに男は甚平(じんべえ)を着るようりこに脅されたので、ちゃんと買って持ってきた。

りこ達の着付けが終われば、次は僕達の番だ。



やがて、襖が開いた。

そこには色鮮やかな浴衣を着て、髪を結い上げ変身した彼女らがいた。

思わず感嘆の声を上げた。

⏰:09/08/21 11:47 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#326 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
他の誰よりも、僕は直央に見惚れていた。


首には十字架のネックレス。

ふわふわした、薄桃色のへこ帯。

腰まである長い髪は、ゆったりしたふたつ結びのおさげにされていた。

りこに化粧をしてもらったのだろう、唇は光沢をおびていた。

⏰:09/08/21 11:51 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#327 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
可愛い、と口にした。

何気なく言ってしまうほど、本当に直央は可愛いくて、抱きしめたくなるくらいだった。

いつも可愛いけど。

⏰:09/08/21 11:52 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#328 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
ほらほら早くとりこに急かされ、僕と湊は甚平を持って彼女らと入れ替えで部屋から出た。

我ながらぶきっちょな手つきで甚平を着付けていくのを、時たま、りこが襖を開けて覗いた。

湊はてきぱきと早々に着てしまい、とろい僕の着付けを手伝ってくれた。

湊は器用だなと感心する。

⏰:09/08/21 13:40 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#329 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
僕ももう少し器用に生まれてくれば、こんなのどうってことなかったのにな。

道ばたで水溜まりを避けて隣の水溜まりに足を突っ込むこともなかった。

飼い猫のミイの餌の缶詰めとシーチキン缶を間違えて食べることもなかった。

⏰:09/08/21 14:07 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#330 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
それだけじゃないもっとあるけど、――うん、もう止めよう。

悲しくなってきた。

はい出来上がり、と湊が僕の両肩をぽんぽんと叩いた。

本当に申し訳ない。

⏰:09/08/21 16:17 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#331 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
今か今かと待ち構えていたりこが勢いよく襖を開き、ちょっと恥ずかしい甚平姿のお披露目だった。

恥ずかしがる僕を、お約束でりこが茶化した。



直央は――眩しそうに、熱っぽいとろんとした目で僕を見上げていた。

⏰:09/08/21 16:22 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


#332 [chimu◆Hi9o8eIXuA]
もしかしたら、電灯を見ているのかもしれない。



――恍惚としたような、憔悴しきったような、諦めたような、そんな様々な感情を孕んだ万華鏡の瞳。

僕を見ているようで、見ていない、と思った。

⏰:09/08/21 16:25 📱:N03A 🆔:yUstpkE6


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