━星降る夜のオリオン座━
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#1 [LucK]
君が見たオリオン座と
俺が見るオリオン座は
まったく違っていた。
同じ輝きなのにね。

⏰:09/07/22 10:42 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#2 [LucK]
11年前、10歳だった俺は、実の父親を殺した。毎日酒に狂い母親を殴り俺を殴り。この背中の傷も、父親に付けられたものだ。

地獄から逃れるには、自分が死ぬか、父親が死ぬかしかなかった。いや、10歳の少年には、その選択肢しかなかったのだ。

俺をかばった母親は、刑務所に入った。

俺は何の罪に問われる事もなく今を生きている。しかし、俺が感じる罪の意識は、他人からは計りきれないだろう。

⏰:09/07/22 10:54 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#3 [LucK]
俺は3日ぶりに、ボロアパートの我が家に帰った。

今の仕事先の町工場がちょうど忙しい時期に差し掛かったからだ。年末直前の12月中旬、発注が呼ぶ発注に、工場はフル稼働。家に帰る暇もなく、この3日は工場の片隅で寝泊まりしていた。

アパートのドアを開けると、鼻を突く異臭。いわゆるゴミ屋敷と言ったところか。

他人から見れば見窄らしい生活かもしれない。だが俺にとっては充分過ぎると思えた。

⏰:09/07/22 12:20 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#4 [LucK]
仕事続きだったこの数日のせいで、家に着いた俺にすぐ眠気が襲う。

だが目は閉じたくない。あの日あの時から、目を閉じるたび、父親の死に顔が浮かぶから。

その顔を見ながら俺は眠りにつく。夢の中でさえ、その顔が消る事はなかった。

そしてまた朝が来る。

今日は久しぶりに休みの俺は、いつもより遅い11時に目を覚ました。

⏰:09/07/22 12:29 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#5 [LucK]
少しの期待を持ち、冷蔵庫を開けてみる。しかし案の定、朝飯になりそうなものは入っていない。

俺は作業着に入っている財布の中身を確認し、家を出た。

歩いて10分のコンビニまでは住宅街が続く。日曜という事もあって、小さな公園からは子供の声がする。

まさに「平和」と言えるこの街の日常だ。

そんな「平和」に俺は慣れずにいた。

⏰:09/07/22 12:53 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#6 [LucK]
焼き肉弁当を手に取り、会計を済ませコンビニを出る。タバコに火をつけ、ふと空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。

同じ道を歩いて戻る。平和な風景、町を歩く人、車、植物までもが、幸せそうに見える。その中で俺だけは…どこか浮いていた。

我が家の近所に大きな一軒家がある。高い塀で囲まれ、門から見える庭は大きく、「金持ちの家」だと一目で分かるような豪邸だ。見た限り、老婆が1人で住んでいる様子。

⏰:09/07/22 15:21 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#7 [LucK]
俺は毎日その家の前を通るのだが、こんな豪邸に住むことに幸せを感じれる人間がいると思うと、うらやましく思えた。

また今日もその豪邸の門の前を通り過ぎる。

と、その時。

「キャッ!」

急にその豪邸から全身黒ずくめの女性が出てきて俺にぶつかった。

黒い帽子を深く被っていたが、髪の長さや、ぶつかった時の声で女性だとすぐに分かった。

⏰:09/07/22 15:27 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#8 [LucK]
腕には大きなバッグをかかえている。俺は急な出来事に少し気が動転したが、全身黒ずくめという特殊な格好から、空き巣泥棒だと気付くのに時間はかからなかった。

その女性はすぐに俺をよけて走り去ろうとする。しかし、俺の右手は彼女の左腕をギュッと掴んだ。

「待てよ…」

正義感?いやそんなモノじゃない。なぜか分からないが、俺は彼女を引き止めたい衝動にかられたのだ。

⏰:09/07/22 15:36 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#9 [LucK]
「ちょっと!離してっ!」

その女性は俺の手を振り払おうと必死に抵抗したが、こんな華奢な腕が男の力に適うはずがない。

「あんた空き巣だろ?」

「いいから離して!」

「こんな事して罪悪感はないのかよ。」

俺がそう言うと、彼女は抵抗をやめて俯き

「…お願いです…離してください…」

と力無い声で言った。

⏰:09/07/22 15:43 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#10 [LucK]
俺は彼女の腕をグイッと引っ張り歩き出す。その時俺が何を考えていたのか自分でも分からない。

「警察はイヤです!お願いします!…離してください!」

彼女は涙声でそう訴えるが、俺は何も返答しない。と言うよりも、できなかった。

俺は彼女の腕を掴んだまま自宅の前に来た。

「あんたを警察に突き出したりはしない。でも少しあんたと話がしたい。いい?」

女性は俯いたまま、何も言わなかった。

⏰:09/07/22 15:50 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#11 [LucK]
女性を引っ張り家に入る。この家に人を入れたのは初めてだ。ドアの鍵を閉める。彼女は俯いたまま何も喋らない。

「そこに座って。」

とテーブルの前を指差した。彼女は何も言わず、そこに座りまた俯いた。

俺は彼女が座った場所のテーブルを挟んで向かい側に座り、コンビニの袋から弁当を出した。

「室内なんだから帽子取れよ。」

⏰:09/07/22 15:56 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#12 [LucK]
そう言うと彼女はゆっくりと帽子を取る。そして俺は驚いた。

帽子を深く被っていたせいで分からなかったが、綺麗な女性だ。可愛い、の表現の方が合っているかもしれない。それに歳も若い様だ。俺と同じくらいか年下に見える。

「驚いたな…なんであんたみたいな人が空き巣なんか…」

「………」

相変わらず何も喋らない彼女。

「なんか喋らないと警察に突き出すぞ?」

⏰:09/07/22 16:03 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#13 [LucK]
「そ、それだけはイヤです!」

冗談半分だった俺の言葉に、彼女は大きく反応した。

「なんだ、喋れるじゃん。」

「…警察だけは本当に…お願いします…」

再び俯いた彼女の瞳に、涙が見えた。俺はそれを見て、この人がなぜ空き巣をしたのか妙に気になった。

「なんで空き巣なんかしたんだよ。」

⏰:09/07/22 16:08 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#14 [LucK]
「……お金が必要で…」

「なんで?」

「……………」

また黙る。見る限り、どうやら深い理由がありそうに思えた。

「俺は警察じゃないしさ、他人なんだから軽く話してよ。」

と言ったものの、もし自分が相手の立場だったらと考えると、黙るのも無理はない。

「話してくれないなら今から警察に電話するよ?」

脅しはあんまり好きじゃないが、話してもらうには効果的だった。

⏰:09/07/22 16:14 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#15 [我輩は匿名である]
なんかすごい!
読んでてわくわくする!大変だろうけど、頑張って下さい!

⏰:09/07/22 17:01 📱:F02A 🆔:QZpLnnfk


#16 [LucK]
「……お金が必要で…」

「だからお金が必要な理由は何なの?」

「……それは…言えないです…」

「…警察に電話しようかなぁ」

俺はテーブルの上の携帯電話を取って見せた。

「………」

黙る彼女。

「本当に電話するよ?」

「………どうぞ…」

⏰:09/07/22 18:16 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#17 [LucK]
思いがけない返事に戸惑った。携帯電話を手に俺はもう一度言う。

「本当に電話するからね?」

「……はい…どうぞ…」

「…いいんだね?」

「…いいですよ……刑務所にいる方が…楽かもしれないし…」

俺は携帯電話をテーブルに置いた。彼女は「怒り」とも「悲しみ」ともとれない表情をして俯いている。

「…それ…どうゆう意味?」

⏰:09/07/22 18:23 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#18 [LucK]
「…………」

また沈黙の彼女。俺も少しの間何も喋らなかった。刑務所に入った方が楽とはどういう意味か考えていた。

「…現実がつらいって事?」

少しして俺が尋ねると彼女は軽く頷いた。

「…何がつらいの?」

「……………もうこれ以上はアナタに関係ないじゃないですか…」

もっともな意見だったが、俺は妙に気になっている。今までに経験した事のない感情だった。

⏰:09/07/22 18:30 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#19 [LucK]
「気になるんだよ。」

「…どうしてですか?」

「だって…あんたみたいな…綺麗な人が空き巣なんてやってるから。」

「……あたしだってやりたくてやってるんじゃない…」

また彼女の目に大粒の涙が見えた。その瞬間、俺は急に抱き締めてやりたい衝動にかられた。が、そんな事できるはずもなく。

「…理由を話してくれたら…俺が力になれるかもしれないよ。」

⏰:09/07/22 18:34 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#20 [LucK]
「…そんな簡単な話じゃないんです…」

泣きながら彼女は言う。俺はその場を立ち上がり、彼女の隣に座り、勢いで抱きしめた。

さっき出会ったばかりで名前も知らない、ましてや空き巣犯の女性を抱きしめるなんて、おかしな行為だとは分かっていた。

だが俺の心の何かがそう動かした。

「…なぜか分からないけど、あんたは俺と同じにおいがする。だから力になりたい。話してくれないか?」

⏰:09/07/22 18:41 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#21 [LucK]
彼女は抵抗せず、俺の胸で泣いている。彼女が落ち着くまで待とうと、数十分そのままだった。

彼女の息も落ち着き、涙も止まったところでもう一度尋ねた。

「…話してくれる?」

彼女は少し間をおいて、軽く頷いた。

⏰:09/07/22 18:45 📱:D905i 🆔:G2ivWW/g


#22 [LucK]
俺は彼女から少し離れてから座り直した。

「名前は?」

「サキ…」

「歳は?」

「…18…」

俯いたまま答えるサキ。俺は歳を聞いてまた驚いた。まだこんな若い子がなんで空き巣なんか…とさらに気になる。

「サキは…なんで空き巣なんかしたんだ?」

「……お金が必要で…」

⏰:09/07/23 00:14 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#23 [LucK]
「だからなんでお金が必要なの?」

そう尋ねると、サキは俯いたまま目だけでチラッと俺を見て、少し黙ったあと話し始めた。

「……殺したい人がいるんです。」

そのあどけないピンクの唇から放たれた言葉は、重く俺の胸を突き刺し、心臓の動きを速めた。

「えっ……」

と無意識に出た声。俺は父親の死に顔を思い出した。

「どうしても殺したい人がいるんです…。」

⏰:09/07/23 00:19 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#24 [LucK]
「…そっか…。…でも何でそれに金が必要なんだよ?」

平静を装う俺だが、内心はサキの残酷な発言に戸惑っていた。

「あたし自身は…直接人を殺すなんて怖くてできないです…。でも…500万円払えば、殺しを請け負ってくれるって人がいて……それで……。」

理解するにはかなりの時間がかかった。黙る俺に、次はサキが追い討ちをかける。

「別にこの事をあなたが警察に言ってもかまいません。あの人から逃げれるなら……」

⏰:09/07/23 00:29 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#25 [LucK]
「サキ…もしお前が本当に人を殺してしまったとしたら、この先一生その罪悪感の中を生きていかなきゃいけなくなるぞ?」

「…分かったような事言わないで下さい…。あたしのその人への怨みは殺すだけじゃおさまらないかもしれないくらいなんです!だから…分かったような事言わないで下さい…」

「俺には分かるんだよ!」

声を荒らげ俺は言った。サキは俯いていた顔を上げ、キョトンとした表情をしている。俺は言ってしまった、と手に汗を握った。

⏰:09/07/23 00:35 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#26 [LucK]
「……どうゆう意味ですか?」

握った汗は一気に冷える。しかし、焦っていた俺は何も考えずに言ってしまった。

「俺は人を殺した事があるんだ…」

自分でも、何を言ってるんだと思った。少し下を向くと、俺の拳は硬く握られていた。

「………」

サキは大きな瞳で俺を見つめ、唖然としている。その視線は、驚き・疑い・恐怖で作られていた。

⏰:09/07/23 22:34 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#27 [LucK]
「……まぁその話はいい。サキはなんで"その人"を殺したいと思うんだ?」

そうはぐらかした俺に対し、サキはクスッと小さく笑う。

「なんでそんな嘘つくんですか?他人なのに。」

「だからその話はもういい!サキはなぜ殺したいと思うんだよ。その質問に答えて?」

サキは再び俯き、少し黙ったあと小さな声で話し始めた。

「……あたしが殺したい人は…義理の母なんです……」

⏰:09/07/23 22:50 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#28 [LucK]
「……え?」

「あたしは12歳の頃にお母さんを病気で亡くしました。それからは、あたしと10歳下の弟の姉弟二人はお父さん一人で育ててくれたんです。義理の母っていうのは…、そのお父さんが5年前に再婚した人で…。」

あまりに小さく力ない声に俺は耳を傾ける。さらにサキは続けた。

「…その義母は、再婚当初からあたしや弟に暴力を振るってきました。特に弟にはひどくて、コップを投げられ、おでこを九針も縫う大怪我までしたんです…。理由は、「笑った顔がイラついた」と……。」

⏰:09/07/23 23:02 📱:D905i 🆔:Z0JUHvLg


#29 [LucK]
父親につけられた背中の傷が痛んだ。まるで幼い頃の自分を見ているようで、手が震えた。

「…あたしはこの歳になって、あたしへの虐待は少なくなりました…。でも……」

「…………でも、何?」

サキは大粒の涙を流した。さっきとは比べ物にならないくらいの量の涙。

「……弟への虐待はエスカレートしていくばかりなんです…!児童相談所にも何度も通報したし、お父さんにも何度も言いましたっ……でも…そのたびに義母はうまくはぐらかすんです…」

⏰:09/07/25 13:43 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#30 [LucK]
「弟を助けるには…もうあの人を殺すしかないんです…。いや、殺したいくらいあの人が憎い…!」

サキの涙で濡れる瞳からは、悲しみの中の慈悲なき決意が見えた。黙って聞いている俺は、その話が他人ごとには思えなかった。

「本音は…人を殺すなんて…あたしは怖いです…。でも殺したい……。でも人を殺すくらいなら、今刑務所に入って殺さない結果になってもいい…。でも…でも……」

小さく震える声に、俺はいつのまにか涙を流していた。

⏰:09/07/25 13:51 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#31 [LucK]
「なんか変ですね…。初対面の人にこんな話をして…。本当は誰かに聞いてほしかったのかもしれないです…。」

サキは俺の涙に気付いていない。俺は袖で涙を拭った。

「…俺は本当に人を殺した事があるんだ。」

サキは赤裸々な自分を初対面の俺に話してくれた。次は俺が話さなきゃ、と思った。

「…………本当に?」

サキは涙を拭って俺を見た。

「こんな嘘はつかない…」

⏰:09/07/25 13:58 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#32 [LucK]
「……誰を?」

「小さな頃に実の父親を…。」

「………!」

驚きが隠せない様子だった。

「あんたと同じように、俺は虐待を受けていた。酒に狂った父親は毎晩俺と母親を殴り蹴り…。その地獄から逃げるには、俺か父親が死ぬしかなかった…。」

淡々と続ける俺に、サキはまた涙を流している。自分の体験と照らし合わせたのだろう。

⏰:09/07/25 14:05 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#33 [LucK]
「…そしてある日、俺は母親を殴る父親に背後から包丁を突き立てた。」

その瞬間、鮮明にその景色を思い出した。

おびただしい血と父親のうめき声。脳裏によぎるだけで吐き気がした。

「…母親は、「自分が刺した」と警察に話し、俺をかばって刑務所に入ったんだ…。」

サキは黙って聞いていた。涙を流しながら。

⏰:09/07/25 14:11 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#34 [LucK]
「…だから俺は人を殺す重さを知ってるんだ。あの日から夢に父親の顔が出てこない日はない…。母親の顔もだ…。父親は夢の中でいつもこう言う、「なんで俺を刺した!お前も殺してやる!」ってね……」

俺は体が震え涙が溢れる。それをみたサキは急に俺の手を握ってきた。そして…

「…だからさっきあたしを抱き締めてくれたんですね…」

更に涙が溢れた。この話を誰かにしたのは初めてだし、話そうと思ったのもサキが初めてだった。それは、サキがあの時の俺と同じ感情を持っていたから。

⏰:09/07/25 14:17 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#35 [LucK]
「……この話を聞いても…サキが義母を殺そうと思うなら……金なんかいらない、俺がそいつを殺してやる。」

「……え?」

「人殺しのこんな思い…誰にもしてほしくない。もちろんサキにも。俺はもう人を殺した。あと一人二人殺そうと…何も変わらないから…。」

あの豪邸の前でぶつかったサキの腕をなぜ俺が掴んだのか、なぜサキの素性が妙に気になったのか、それは…俺とサキがとても似ていたからだと分かった。

⏰:09/07/25 14:25 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#36 [LucK]
「それでもサキはその義母を本当に殺したい?」

俺はサキの手を握り返し、目を見て尋ねた。

「………」

サキは俺の手をギュッと強く握り重そうな口を開いた。

「殺したいです…。」

固い決意が見えた。俺はその決意を曲げる事はできないだろうと感じた。

「でも…あなたに殺してもらうなんてできません!あたしは…あたしの手で…」

⏰:09/07/25 14:34 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#37 [LucK]
サキには、そんな事をしてもらいたくなかった。つらい過去を背負い今を生きるサキに、それより重い過去を背負わせるなんて無理だ。

こんな思いをするのは、俺だけで十分だよ…

「俺が殺してやる。」

「いやです!」

「どちらにしろ金を払って他人に殺させるつもりだったんだろ?」

「…………」

「俺がやる。やらせてくれ…」

⏰:09/07/25 14:42 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#38 [LucK]
「…な?たのむ。俺は大丈夫だから。言い方はおかしいけど、俺が殺したい。そんなヤツは俺が殺したいんだ!」

サキは黙って下を向き悩む仕草をしている。さらに俺は頼み続けた。俺は声は届いていたのだろうか。



サキは少しして軽く頷いた。そして

「でももしあなたがその後に罪悪感を感じたなら、それは間違いです。殺すのはあたしです…全部あたしの意志です…。」

と言った。

⏰:09/07/25 14:52 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#39 [LucK]
「初対面のあたしに…なんでそんなに言ってくれるんですか?」

「サキは…俺と同じ苦しみを味わってるから、サキの気持ちがよく分かるんだ。」

「…ありがとう。」

それからサキと俺は色々な話をした。俺の名前、年齢、過去の詳しい話、今の生活。

話せば話すほど、サキは俺と似ていた。

⏰:09/07/25 20:50 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#40 [LucK]
何時間話しただろうか。窓から見える景色はいつのまにか暗くなっていた。

「…やっぱり、翔太さん(俺の名前)に殺してもらうなんて無理です…。翔太さんみたいないい人はいません。そんな人に…頼めないです。」

サキは俺の目を見つめ言った。

⏰:09/07/25 20:57 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


#41 [LucK]
「…俺はもういいんだ。この先誰を何人殺そうと何も変わらない。それなら、こんな気持ちを背負っていく人間を一人でも少なくしたいんだ。俺にまかせてくれ。」

俺の本心だ。サキみたいな女の子が手を汚す必要なんてない。子供に地獄を見せるような親は、俺の手で殺してやる。

あの日あの時の感情が、再び溢れてきたんだ。後先も考えない感情が。

「………翔太さんの気持ちは嬉しいです。少し…考えさしてください。」

サキはまた俺の手を握り、言った。

⏰:09/07/25 22:21 📱:D905i 🆔:rxFu3jww


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