らぶずっきゅん!!!!
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#301 [七瀬]
「‥んー‥謝るべきか‥」
「陽」
部屋の中、一人で
ぶつぶつ呟いていると、
「ちょっといい?」
コンコンと
母さんがドアを叩いた。
「どうしたの、母さん」
いやな予感がした。
:09/09/05 23:22
:N703iD
:PSrvbbbw
#302 [七瀬]
「座って」
カレーの良いにおいがリビングに充満するなか
母さんと机を挟んで向かい合うように、イスに腰掛けた。
「なに」
なかなか話そうとしない
母さんに、仕方なく俺から話を持ち出した。
:09/09/05 23:23
:N703iD
:PSrvbbbw
#303 [七瀬]
「‥うん‥。実はね‥」
すると、母さんは待っていた、というように話し始めた。
ただ俺は、
黙って聞いていた。
カチッカチッと時計の針が動く音がなぜか異様に響いていた。
:09/09/05 23:24
:N703iD
:PSrvbbbw
#304 [七瀬]
――――――――――…
目を大きく開く。
なにか言いたげに口も開く。
せめて口は閉じようか。
「千頼ちゃん」
女の子なんだから。
「カズ‥なんで‥」
:09/09/05 23:25
:N703iD
:PSrvbbbw
#305 [七瀬]
「なんでいるのか、って言いたいんでしょー?
んとねぇ、答えは簡単。
葉山さんを待っていたのです。一時間近く待ってたかなー?いや、一時間半は待ってたね」
そう言いながら、
机に座っていたのを、軽く飛び降りた。
千頼の表情はいつも極端だから、おもしろい。
:09/09/05 23:25
:N703iD
:PSrvbbbw
#306 [七瀬]
「出したんでしょ?進路きぼー調査。もちろん取りに帰った判子押して」
「うん。たったいま‥」
まーだ葉山さんは
驚きが治まらないご様子。
「だって見てたもん。
千頼が学校に出ていって、また戻ってくんの」
「なんで声掛けてくれなかったの?」
:09/09/05 23:26
:N703iD
:PSrvbbbw
#307 [七瀬]
「たまには待つ身になるのもいっかなー、と思って」
ほんとは、担任に呼び出されてたんだけど。
進路希望調査出してないの俺だけだったから。
千頼は除いてね。
「ほら。いつも千頼、俺のこと待っててくれるから。ちよの気持ちになってみた」
嘘も方便。
:09/09/05 23:27
:N703iD
:PSrvbbbw
#308 [七瀬]
「帰ろっか?」
まだびっくり顔の
千頼の手をにぎった。
あったかい。
でも、もうすぐ
この温かさとは、ばいばい。
決心したんだ、俺は。
:09/09/05 23:28
:N703iD
:PSrvbbbw
#309 [七瀬]
「千頼ちゃん」
外はもう暗くなっていた。
昼間の快晴とは打って変わって、厚い雲が空を覆っていたせいかもしれない。
「俺の部屋、寄ってかない?」
千頼は素直に、
俺んちへ入った。
:09/09/05 23:28
:N703iD
:PSrvbbbw
#310 [七瀬]
早く。
早く終わらせよう。
早くしないと、
雨が降ってくるかもしれない。
千頼が帰っちゃうかもしれない。
なにより俺がつらくなる。
:09/09/05 23:30
:N703iD
:PSrvbbbw
#311 [七瀬]
そのくせ
「なんか飲む?」
なかなか切り出せず、
もたもたしていた。
「ううん。いらない」
「そ。じゃー和希くんルームへ」
カウントダウンが始まる。さよならへの‥――
:09/09/05 23:30
:N703iD
:PSrvbbbw
#312 [七瀬]
「なんかカズ変」
部屋に入っての第一声がこれ。
「‥ふふ。そんなことないよ」
参ったなぁ。バレバレ?
「そんなことある。
なんかよそよそしいもん」
うん、バレバレ。
:09/09/05 23:31
:N703iD
:PSrvbbbw
#313 [七瀬]
「うん。実は話ある」
雨が降ったら
傘を貸してあげる。
そんで、傘を返しにもらうなんて理由を作って千頼に会いに行く。
千頼が帰りそうになったら腕をつかんで引き止める。
そんでもって、
そのままぎゅーってする。
:09/09/05 23:32
:N703iD
:PSrvbbbw
#314 [七瀬]
その2つの、
どっちもできないのは
「えっとねー‥
別れない?」
紛れもなく俺のせい。
千頼はどんな顔をしているんだろう。
:09/09/05 23:34
:N703iD
:PSrvbbbw
#315 [七瀬]
――――――――――…
変化がありました。
あたしと彼の間に、
大きな変化があったのです。
その一言は、
とても軽く自然に彼の口から出て、
その口調とは裏腹に、
あたしにとっては残酷過ぎる言葉でした。
:09/09/05 23:34
:N703iD
:PSrvbbbw
#316 [七瀬]
「‥ふふふ‥はは。
カズやっぱり変だよ」
彼がおかしいのか。
あたしがおかしいのか。
「エイプリルフールは、もうとっくに終わってるよ」
きっと両方変なんだよ。
狂ってる。
あたしの脳は、
自分を守るために
都合よく解釈した。
:09/09/05 23:35
:N703iD
:PSrvbbbw
#317 [七瀬]
「冗談はもう‥いいよ」
「冗談じゃない」
彼は、はっきりと静かに言った。
その声の中には、きっと
冷酷な悪魔が潜んでいる。
「ふふ‥ふ。カズはいつも突然だなぁ」
あたしはなんとか
平然を保とうとした。
:09/09/05 23:36
:N703iD
:PSrvbbbw
#318 [七瀬]
「‥いきなり付き合おう、って言ったかと思えば、
別れよう、か‥」
彼は、きっとおかしいの。きっとそう。
じゃなきゃ
説明つかないよ。
「‥なんっでぇ‥カズ‥」
:09/09/05 23:37
:N703iD
:PSrvbbbw
#319 [七瀬]
変化がありました。
あたしと彼の間に。
友達から彼氏になって、
彼氏からクラスメート。
ただのクラスメートに。
結果的にあたしは、
カズを失った――
:09/09/05 23:38
:N703iD
:PSrvbbbw
#320 [七瀬]
そして、変化は
これだけではなかった。
あたしの知らぬ間に、
周りは
どんどん変わっていった。
これはまだ始まりということに気付けるほど、
いまのあたしは
冷静ではなかった。
:09/09/05 23:38
:N703iD
:PSrvbbbw
#321 [七瀬]
4/28、
夏へと近づいていく中、
ひとつ季節が終わって、
あたしの恋も終わった。
:09/09/05 23:41
:N703iD
:PSrvbbbw
#322 [七瀬]
今日はここまでです!
よろしければ、
ご感想をお聞かせ下さい♪http://bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
:09/09/05 23:48
:N703iD
:PSrvbbbw
#323 [七瀬]
:09/09/05 23:51
:N703iD
:PSrvbbbw
#324 [七瀬]
No.9 時の流れ
:09/09/11 19:12
:N703iD
:482lwPvA
#325 [七瀬]
「‥うん‥うん‥。
それでそれで?」
深夜を回った。
「‥うんうん。‥‥え‥? あ!ほんとだぁっ!!」
慌てて台所へ走る。
「ふぅ〜‥ギリギリ
間に合ったぁ‥‥‥」
ほんとうにギリギリ、
やかんから溢れずに済んだ。
:09/09/12 09:36
:N703iD
:s/pxcVGo
#326 [七瀬]
「いやー、ごめんごめん。話に夢中になっちゃって、気付かなったよぉ」
"千頼は抜けてるから"
電波越しの愛しい人は、
半ば呆れながらも、
笑って答える。
最初は、
なんだかくすぐったかった"千頼"という呼び方も
今では慣れた。
:09/09/12 09:37
:N703iD
:s/pxcVGo
#327 [七瀬]
「あはは、ごめんって。
え?大丈夫だって、もう!心配しすぎー」
肩に携帯を挟みながら、
カップにお湯を注ぐ。
ここに来たばっかりのとき買ったココアも、もう半分近く減っていた。
もうそろそろ
新しいのを買おうか、
それともこれから暖かくなるだろうし止めとこうか。
いま悩んでいる最中。
:09/09/12 10:14
:N703iD
:s/pxcVGo
#328 [七瀬]
"あ、もうこんな時間だ"
時間は早く過ぎる。
「‥ほんと、だね」
特に楽しい時間は。
"なに千頼。もしかして
電話切りたくない?"
クスクスと笑う声が聞こえてくる。
「そんなことっ‥」
:09/09/12 10:14
:N703iD
:s/pxcVGo
#329 [七瀬]
入れたてのココアからは、甘ーい湯気が立っている。
「‥‥ある、けど‥」
"はは、正直でよろしい"
ちょーっと意地悪なとこがあるけど、大切な人。
"また明日も電話するから"
「‥うん」
"好きだよ、千頼"
:09/09/12 10:16
:N703iD
:s/pxcVGo
#330 [七瀬]
「‥‥‥」
意地悪かと思うと、
急にやさしくなるから、
なんだか恥ずかしくなる。
"おやすみ"
「‥おやすみ、陽」
前田陽。
あたしの愛しい人。
:09/09/12 10:16
:N703iD
:s/pxcVGo
#331 [七瀬]
葉山千頼、18歳。
D外国大学、一年生。
まだ温かい春。
あたしは、ひとつ
大きな山を越えました。
:09/09/12 10:17
:N703iD
:s/pxcVGo
#332 [七瀬]
「‥はぁ、あったまる」
東京の春は、少し冷たい。
「あ、明日の用意しないと」
でも、大丈夫。
ホットココアと、
毎日の陽からの電話が
あっためてくれるから。
:09/09/12 10:18
:N703iD
:s/pxcVGo
#333 [七瀬]
まだ1ヶ月も
経っていないけど
大学生活、バイトに
一人暮らしだって、
がんばってるつもり。
「‥あ゙ーー!
課題忘れたぁ!!!」
‥がんばってる、つもり。
:09/09/12 10:19
:N703iD
:s/pxcVGo
#334 [七瀬]
時間は早く過ぎる。
特に楽しい時間は。
カレンダーへと目を向けると
「‥4/28‥‥」
時は、あたしを
あたしたちを
待ってはくれなかった。
:09/09/12 10:20
:N703iD
:s/pxcVGo
#335 [七瀬]
どんどんどんどん流れて、
どんどんどんどん
あたしを置いてきぼりに。
やらなければ
ならないときに、
なにもできずにいた
あたしを救ってくれたのは
まぎれもなく彼だった。
:09/09/12 10:21
:N703iD
:s/pxcVGo
#336 [七瀬]
前田陽。
あたしの幼なじみ。
あたしの恩人。
そして、愛しい人。
だけど
あたしは、まだ想いを断ち切れていない。
:09/09/12 10:22
:N703iD
:s/pxcVGo
#337 [七瀬]
――――――――――…
「ちーよーりっ!
まーた彼氏とメール!?
この幸せ者がっ!」
いま、バシバシあたしの
背中を叩いているのが、
「‥ちょちょっと痛い〜‥ 花寿美ぃ!!」
大江花寿美、
オオ エ カ ス ミ
同じ大学の同じ学科の
同じ学年同い年。
:09/09/12 10:24
:N703iD
:s/pxcVGo
#338 [七瀬]
「痛いじゃなーいのっ!!朝にラブラブメール送っている千頼のすがた見てる
あたしのほうが痛いよ!」
そう言って、
心臓を押さえる花寿美。
「‥なに言ってんの‥」
「ああ〜っ!彼氏ほしーい!うらやましいー!!」
花寿美は、かなりかわいいのに、長いこと彼氏がいないらしい。
:09/09/12 10:25
:N703iD
:s/pxcVGo
#339 [七瀬]
「よしっ!次はゲットするぞぉっ!!」
そんで、彼氏ゲットのため合コンばーっかり行ってたら、
いつのまにか、合コンが
趣味になっていたらしい。
「はぁ〜‥花寿美ったら」
呆れてものも言えない。
:09/09/12 10:26
:N703iD
:s/pxcVGo
#340 [七瀬]
でも、
東京に来たばっかりで、
戸惑っていたあたしに
いちばん
最初にできた友だち。
なんだかんだ
あたしは花寿美が好きだ。
「千頼ぃ〜」
大きな目をパチパチさせながら花寿美は、あたしを呼んだ。
:09/09/12 10:27
:N703iD
:s/pxcVGo
#341 [七瀬]
「ね、千頼も一緒に行かない!?今度の合コン!!」
「行かない」
「んもぉ〜‥。
即答だなぁ‥」
「行くわけないじゃん」
あたしには、
陽がいるもん!!
「‥ちょっとくらいいいじゃん」
あくどい顔をする花寿美。
:09/09/12 10:28
:N703iD
:s/pxcVGo
#342 [七瀬]
「なに言ってんの‥」
さらに呆れてしまった。
「だぁーって、
彼氏は遠ーい遠ーい離れたとこにいるんでしょ?
バレないバレない!」
「‥そういう
問題じゃなくって‥」
「一回くらい
いーじゃんっ!!!」
花寿美は引かない。
:09/09/12 10:29
:N703iD
:s/pxcVGo
#343 [七瀬]
「千頼だって、
まだここに来て数週間」
引くどころか、
ヒートアップしてきた。
「まだ慣れない土地‥。
ちょーっと、友だちの輪を広げよう、とか思わないわけ!??」
「‥それが、
合コンですか‥」
ため息をつかずには
いられなかった。
:09/09/12 10:30
:N703iD
:s/pxcVGo
#344 [七瀬]
「いいじゃんいいじゃん。実はね、人数一人足りないの」
てへっと、
舌を出す花寿美。
「‥‥」
「お願い!千頼!
座っとくだけでいーの!」
しまいには、
手を合わせだす始末。
あたしは、
神さまでも仏様でもない。
:09/09/12 10:30
:N703iD
:s/pxcVGo
#345 [七瀬]
「‥‥じゃあ仕方なく‥」
「わあっ!ありがと千頼! 大好きぃ〜〜!!」
抱きつこうとしてきた
花寿美を手で制す。
「陽から、許可が出たら、 ね!」
花寿美も真剣な目でうなずいた。
夜言おう‥。
:09/09/12 10:33
:N703iD
:s/pxcVGo
#346 [七瀬]
――――――――――…
――ピリリリリ‥
いつもの時間。
ブーブーと揺れる携帯。
「もしもしー」
いつもの風景。
「もしもし、俺」
やすらぎの時がやってきた。
:09/09/12 10:34
:N703iD
:s/pxcVGo
#347 [七瀬]
「今日は、なんか変わったことなかった?」
いつもの質問。
「大丈夫。いつもどおり」
ぶっきらぼうな声から、
伝わってくる。
「そっか。良かった」
彼のやさしさ。
:09/09/12 10:34
:N703iD
:s/pxcVGo
#348 [七瀬]
「陽は、どう?」
「俺も、いつもどおり」
「よかった」
あたしたちの会話は、
いつもこれから始まる。
「‥あ、実は今日ね」
あたしは、陽に
合コンのことを話した。
:09/09/12 10:35
:N703iD
:s/pxcVGo
#349 [七瀬]
「‥というわけ、
なんだけど」
陽が無言になってしまったので、
「‥でもっ、もし嫌だったら、今からでも断るし‥」
慌てて、付け足した。
「‥あのなぁ」
しばらくしてから、
陽は口を開く。
:09/09/12 10:36
:N703iD
:s/pxcVGo
#350 [七瀬]
「ただでさえ、毎日会えなくて、こうして声聞くだけで、いや‥声聞くだけでも十分なんだけど‥」
陽の声がだんだん小さくなっていく。
それが、あたしには
たまらなくうれしかった。
「そのだから‥不安だったりするわけで」
なんか、かわいくない!?
:09/09/12 10:37
:N703iD
:s/pxcVGo
#351 [七瀬]
「‥ふふ、わかった。
明日、花寿美に断っとく」
あたしは、うれしさ半分、恥ずかしさ半分といった
気持ちで陽に伝えた。
「‥いや、いいよ。
やっぱり行ってきても」
「いいよ?どうせ行っても、座っとくだけだし!」
「ううん。たまには、そういう付き合いも大切だろうし、行っといで」
:09/09/12 10:39
:N703iD
:s/pxcVGo
#352 [七瀬]
また深夜を回ろうとしていた。
「千頼、こうしてちゃんと言ってくれたし、なによりその‥‥」
東京の夜は寒い。
「俺は、
千頼を信じてるから」
でも、大丈夫だよ。
陽の言葉の一つ一つが
あっためてくれるから。
:09/09/12 10:40
:N703iD
:s/pxcVGo
#353 [七瀬]
「じゃあ‥もう遅いから。 おやすみ」
「陽、ありがとう。
大好き」
電話から、ごほんごほんと咳き込む音が聞こえた。
「‥その電話して‥。
合コン、終わったら」
あたしがおもいっきりの
スマイルで「うん!」と、言ったのは、
たぶん
陽にも伝わったはず。
:09/09/12 10:41
:N703iD
:s/pxcVGo
#354 [七瀬]
――――――――――…
「はじめましてぇ!大江花寿美、18歳ですっ!!」
メイクだって、巻だって
いつもの三倍は気合いの入った花寿美とは裏腹に
「葉山千頼、同じく18歳です。よろしくお願いします」
なんとも、
ふっつーなあたし。
:09/09/12 10:46
:N703iD
:s/pxcVGo
#355 [七瀬]
畳の敷かれた部屋は、
個室になっていた。
一個しかない電球のせいで室内はけっこう暗い。
それが、オシャレというかなんというか‥、
まあはっきり言って、あたしには、よくわかんない。
その電球の下には、
テーブルの中心にある網があった。
:09/09/12 10:48
:N703iD
:s/pxcVGo
#356 [七瀬]
「じゃーまず、乾杯しますか!」
花寿美と一人の男の子は、慣れたように、リードした。
あたしと花寿美、そして、もう一人の花寿美の友だちだという女の子、
そして、三人の男性と
人生初の合コンが
幕を上げた。
:09/09/12 10:49
:N703iD
:s/pxcVGo
#357 [七瀬]
「かんぱーいっっ!!」
みんなお酒を飲んでいたがあたしは水しか飲まなかった。
だってだって!
未成年だもんっ!
―真面目ですいません―
花寿美は、もうターゲットを決めてたみたいで、ぐいぐいアピールしまくっている。
:09/09/12 10:49
:N703iD
:s/pxcVGo
#358 [七瀬]
もう一人の子も、
一時間ほど経つと、いい感じになってきたみたいで、男と絡んでいた。
なんか‥取り残されちゃったなぁ。
ほんとうにじっと座っていたあたしは余っちゃったみたい。
ただジュージューと焼けるお肉を食べていた。
:09/09/12 10:50
:N703iD
:s/pxcVGo
#359 [七瀬]
「‥ねー‥ねぇ!」
「は!‥はひ‥」
お肉に夢中になっていた
あたしは、呼ばれたことに気付かなかった。
「な、なんでひょう‥」
口いっぱいにやわらかいハラミを詰め込んでいたあたしは、うまく話せない。
:09/09/12 10:51
:N703iD
:s/pxcVGo
#360 [七瀬]
「名前ー‥たしか千頼、
だったっけ」
なんだよ、馴々しいなー、と思いながらも、うなずくと
「そーだよな!!ってか、オレの名前知ってる?」
「ふいまへん」
まだ肉汁があたしの口内を支配したままだったので、首を振りながら精一杯答えた。
:09/09/12 10:52
:N703iD
:s/pxcVGo
#361 [七瀬]
「ははっ!やっぱりなー。オレ、颯太!」
ソウ タ
あまりの勢いに、押されながらも小さくうなずいた。
「いやー。オレ余っちまってさー。退屈してたんだ」
「ほぉなんですか‥」
一応、礼儀として
口に手を添えて答えた。
:09/09/12 10:53
:N703iD
:s/pxcVGo
#362 [七瀬]
「ってか、あんた。さっきから肉食い過ぎだから!」
突然の指摘に
下を向いてしまった。
「ごめんごめん。
"あんた"じゃなかった」
颯太と名乗る男は、
あたしが下を向いたのは、"あんた"と呼ばれたから、と思ったのか、言い直した。
:09/09/12 10:54
:N703iD
:s/pxcVGo
#363 [七瀬]
「いえ‥違いま」
「肉ばっか食ってねーで、 ちゃんと人の名前
覚えろよ!!」
頭をぽんぽんってされる。
「ちーよりちゃん?」
――どき
なんだろ、懐かしい。
:09/09/12 10:55
:N703iD
:s/pxcVGo
#364 [七瀬]
「ってか、
ほんとよく食べるなー」
あ、そっか。
「そんな食べると、
牛になっちゃうよ?」
この人の呼び方、似てる。
:09/09/12 10:56
:N703iD
:s/pxcVGo
#365 [七瀬]
"ちぃ〜よぉ〜"
"ちーよーり!"
"‥ちよ"
―――似てるんだ。
:09/09/12 10:58
:N703iD
:s/pxcVGo
#366 [七瀬]
「ってかさ、大丈夫?」
「ふえ?」
「いま飲んだの、チューハイだけど‥」
あたしは突然やってきた、胸の高鳴りを抑えるためにそばにあったグラスを手にとった。
あまりに動揺してたためかそれがお酒だと、気付かず飲んでしまったのだ。
:09/09/12 10:59
:N703iD
:s/pxcVGo
#367 [七瀬]
「‥だ、大丈夫です」
「そ?ならいいんだけど。ぜんぜん酒飲んでなかったから苦手なのかなー、って思ってたから」
よく見てるんだな、と思ったのが顔に出たのか、
「まー、大丈夫ならよかった」
男は、照れくさそうに、
笑った。
:09/09/12 11:00
:N703iD
:s/pxcVGo
#368 [七瀬]
「苦手っていうか、なんというか‥、ほらあたし未成年だから‥」
「‥ふっ、ははは。真面目だねー。ちよは」
あたしは、
バッと顔を上げた。
なんで、その呼び名‥。
「あ、ごめんね?馴々しく "ちよ"とか呼んじゃって。妹の名前がチヨコでいつもそう呼んでるからつい‥」
:09/09/12 11:01
:N703iD
:s/pxcVGo
#369 [七瀬]
「‥いえ。気にしないで下さい」
なーんだ。
理由を聞いたら、なぜかちょっとがっかりしてしまった自分がいた。
「あのさ」
「はい?」
「敬語、止めない?」
「は、はぁ」
:09/09/12 11:02
:N703iD
:s/pxcVGo
#370 [七瀬]
「せっかくの合コンなんだから。ちよ」
「その呼び方止めてください!」
「じゃあ敬語も止めようか」
交換条件。
「わかりました」
「ちよ、わかってない。
敬語だめ」
:09/09/12 11:03
:N703iD
:s/pxcVGo
#371 [七瀬]
「‥わかった」
「よろしい。千頼ちゃん」
いやいやと言う風に返事をしたのに、男は納得したようだった。
「あ、あと颯太って呼んで。オレのこと」
「それは無理です!あなたのほうが年上なんだし!」
「ち〜よ?け・い・語」
:09/09/12 11:05
:N703iD
:s/pxcVGo
#372 [七瀬]
「‥‥颯太"さん"のほうが年上なんだし無理!!」
やけに、"さん"を強調してやった。
「"颯太さん"か。うーん、まあいいよそれで!」
颯太さんは、
いかにも納得してません!という顔をしたと思ったら
「いつか颯太って呼びたくなるようにしたげる」
にっこりとした。
:09/09/12 11:07
:N703iD
:s/pxcVGo
#373 [七瀬]
‥‥なに、どきっとしてんだ、あたし!!
あたしは、赤みを増す頬をごまかすため、またお酒を飲んだ。
「さっきから飲んでる酒、オレのなんっすけど」
「す、すすすみません!
じゃなくて、すまん!?」
「ははは!そんなに飲みたいんならチューモンしたげる」
そう言って、メニューを広げた颯太さん。
:09/09/12 11:08
:N703iD
:s/pxcVGo
#374 [七瀬]
「い、いいよぉ‥」
「いーからいーから」
あたしは、完全に颯太さんのペースに呑まれている。
久しぶりに訪れた激しい感情に、少し舞い上がってしまっていたのかもしれない。
「千頼ちゃんには、どれがいいだろ。あんま強いのはダメだよね」
:09/09/12 11:12
:N703iD
:s/pxcVGo
#375 [七瀬]
あたしは、困ったように。
でも、微笑を浮かべながら
無邪気に、メニューを眺める颯太さんの横に座った。
過去の扉を開けるように―
:09/09/12 11:16
:N703iD
:s/pxcVGo
#376 [七瀬]
:09/09/12 11:18
:N703iD
:s/pxcVGo
#377 [七瀬]
No.10 いちご
ミルフィーユ
:09/09/20 21:24
:N703iD
:AJOkFi7.
#378 [七瀬]
「‥う、ん‥」
いま‥何時‥?
かたわらにある携帯に
手を伸ばした。
「バイト行かないと‥」
はずが、ない。
あるはずのものがなく、
伸ばしたあたしの手は、
見事にスルッと滑った。
:09/09/20 21:26
:N703iD
:AJOkFi7.
#379 [七瀬]
「んもぉ〜‥どこぉ‥」
しかたなく、
重いまぶたを開く。
すると、目に入ってきたのは、
「‥ここ‥、ど、こ‥」
小さいテーブルに
白いソファー。
上京してきたばっかりの、ビンボー女子大生には、夢のまた夢、おっきい液晶テレビ。
:09/09/20 21:26
:N703iD
:AJOkFi7.
#380 [七瀬]
「うーん‥‥」
あたしは、夢でも見ているのだろうか。
うん、そうだ。
きっと夢でも見てるんだ。
「‥‥もう一眠りしよ‥」
そうやって、やわらかく心地よいタオル地の布団を頭までかぶった。
:09/09/20 21:27
:N703iD
:AJOkFi7.
#381 [七瀬]
「!??」
その瞬間、
バッと飛び起きていた。
‥あたし‥‥、
「‥なんにも‥着てない」
なんとなく気付いてた。
重たい頭のせいで、
起きたときから。
:09/09/20 21:28
:N703iD
:AJOkFi7.
#382 [七瀬]
でも、でもでも。
夢のせいにしないとって、本能が叫んでいた。
ううん。
夢のせいにしたかった。
だけど、
下着すらも着けていない
自分自身の身体が、
昨日のできごとを物語っていた。
:09/09/20 21:29
:N703iD
:AJOkFi7.
#383 [七瀬]
ここは、
きっと‥颯太さんの家。
間違いない。
絶対そうだ。
「‥‥ふぁあ〜あ‥。
あれ、千頼ちゃん起きた?」
やっぱり‥。
あたしは、ドアを開けて入ってきた、半裸の颯太さんをにらみつけた。
:09/09/20 21:30
:N703iD
:AJOkFi7.
#384 [七瀬]
「‥なに千頼ちゃん」
にらむあたしを、颯太さんはニヤリと笑って見る。
「昨晩は、あんなに受け身だったのに‥、ね」
ショックだった。
正直言って、
記憶がなかった。
こんな状況でも、
記憶がない限り小さな望みに賭けたかった。
:09/09/20 21:31
:N703iD
:AJOkFi7.
#385 [七瀬]
颯太さんの頼んでくれた
お酒が思いの外、美味しくって、たくさん飲んでしまったのは覚えている。
フラっフラのあたしを送ってくれようとした颯太さんとタクシーに乗ったのも、覚えている。
「‥その後だ」
まったく覚えてないのは。
:09/09/20 21:31
:N703iD
:AJOkFi7.
#386 [七瀬]
「ど?思い出した?」
あたしに伸ばそうとした
手を払い除けて、
ベッド下に落ちている下着を素早く着けた。
「あたしの服はどこですかっ!??」
下着はすぐそこにあったのに、あたしの服が見当たらない。
:09/09/20 21:33
:N703iD
:AJOkFi7.
#387 [七瀬]
はぁ、とため息をつく颯太さんの手には、昨日あたしがはいていたスカートが。
「返して!!」
勢いよく、それを取った。
「上はどこにあるの!?」
呆れたようすのままの颯太さんは「‥そこ」と玄関方向だろう先を指差した。
:09/09/20 21:33
:N703iD
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#388 [七瀬]
あたしはあわてて、
廊下を通って、玄関へ向かった。
そこには、あたしのパンプスのすぐそばに、シャツが落ちていた。
それを拾い上げると
「あのさ、もしかしてなにか勘違いしてない?」
うしろから、もっとも聞きたくない声が聞こえた。
:09/09/20 21:34
:N703iD
:AJOkFi7.
#389 [七瀬]
「‥なにが、ですか」
あたしは、
上を着て振り返った。
「服、脱ぎだしたの千頼ちゃんだよ?」
「うそっ‥!」
「うそじゃないよ」
きっぱりと言う颯太さんに首を振るあたし。
:09/09/20 21:35
:N703iD
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#390 [七瀬]
「ちなみにオレの部屋に行きたいって言い出したのも千頼ちゃん。タクシー乗って、いきなりダダこねだすから‥、途中で行き先変えてもらって‥」
「うそよ!!」
「だから、うそじゃないって。大変だったよ、オレも運転手さんも」
ははは、と笑う颯太さんを放って、帰ろうとドアのぶに手を掛けたが、思いとどまった。
:09/09/20 21:36
:N703iD
:AJOkFi7.
#391 [七瀬]
「‥‥バッグ」
「はい、どーぞ」
あたしの思っていたことが分かっていたらしく、
すでに、手に握っていたようだ。
「‥おじゃましました」
そんな余裕綽々な態度が、よけいにあたしをイライラさせた。
:09/09/20 21:37
:N703iD
:AJOkFi7.
#392 [七瀬]
「またのお越しをー」
気の抜けそうな、なんとものんきな声に見送られ、
二度と来るものかっ!!
と思いながら、
高くそびえ立つ、あたしんちの家賃の3倍はしそうなマンションを後にした。
:09/09/20 21:38
:N703iD
:AJOkFi7.
#393 [七瀬]
「ドアが閉まります。ご注意下さい」
駆け込み乗車をして、
白い目に注目を浴びながらドア付近に寄った。
「はぁ‥」
鉛のような頭痛と
後悔が改めて襲う。
携帯を開くと、
陽からの不在着信がいくつも入っていた。
:09/09/20 21:38
:N703iD
:AJOkFi7.
#394 [七瀬]
そして、メールも。
"大丈夫か?メールでもいいから、連絡して"
後悔の念は、押し寄せてくるばかり。
一刻も早く陽に電話するべきだったが、
気が重くてできず、
昼からのバイトのため
家に帰って、シャワーを浴びた。
:09/09/20 21:39
:N703iD
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#395 [七瀬]
バイトから帰ってくると、もう12時を回っていた。
切っていた電源を入れるとやっぱり不在着信。
相手は、もちろん
「もしもし‥陽?」
頭痛はまだ治まらず、
仕事疲れで体がダルかったけれど、陽の声が聞きたかった。
自分勝手だけど、ちゃんと言わなきゃって思った。
:09/09/20 21:40
:N703iD
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#396 [七瀬]
「疲れてたのか?」
相変わらずのやさしい声。
一日聞かなかっただけなのに、とても懐かしい。
「‥うん、ごめんね。
昨日電話しなくて」
ああ、これだ。
あたしの聞きたかった声。
泣きそうになったのを
必死で堪えた。
:09/09/20 21:41
:N703iD
:AJOkFi7.
#397 [七瀬]
「いや、いいんだ。
ただ心配で」
でも、陽のやさしさに触れるたび、胸が痛む。
「ほんとごめんね。昨日は初めて合コンなんか行ったものだから、疲れちゃってて‥」
言えない。
言えるわけないよ‥。
心のなかで、陽にごめん、と電話し忘れたことではないことに謝った。
:09/09/20 21:42
:N703iD
:AJOkFi7.
#398 [七瀬]
「だから、いいって。それより、今日はバイトだったんだろ」
なんで、
そんなにやさしいの。
「今日はもう切るよ。まだ疲れ残ってるだろうし。
明日も学校あるし、千頼ももう寝‥」
「‥っ‥」
「千頼?」
「‥‥‥」
:09/09/20 21:43
:N703iD
:AJOkFi7.
#399 [七瀬]
「どうかした?」
「‥ううん‥なんで、も、ない‥」
やばい、ほんとうに泣きそうになった。
「‥そ。じゃあ切るな。
おやすみ」
「おやすみ」
ってか、もう泣いてた。
:09/09/20 21:44
:N703iD
:AJOkFi7.
#400 [七瀬]
「‥う‥ふえ」
陽の心配してるよ、と言った辺りから涙が一筋頬を伝っていた。
電話が切れたとたん、
「‥うっうう‥ふえぇえ」
張り詰めていた糸が切れたようで、涙が止まらなかった。
:09/09/20 21:44
:N703iD
:AJOkFi7.
#401 [七瀬]
――――――――――…
「千頼ちゃん」
「‥なんですか」
次の講義まで、
時間があるし、ちょうど小腹も空いたということで、
花寿美とケーキの美味しい喫茶店へでも行こうと、
出たところに男はいた。
:09/09/20 21:46
:N703iD
:AJOkFi7.
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