らぶずっきゅん!!!!
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#301 [七瀬]
 
 
「‥んー‥謝るべきか‥」

「陽」

部屋の中、一人で
ぶつぶつ呟いていると、


「ちょっといい?」

コンコンと
母さんがドアを叩いた。

「どうしたの、母さん」



いやな予感がした。

⏰:09/09/05 23:22 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#302 [七瀬]
 
 
「座って」

カレーの良いにおいがリビングに充満するなか

母さんと机を挟んで向かい合うように、イスに腰掛けた。



「なに」


なかなか話そうとしない
母さんに、仕方なく俺から話を持ち出した。

⏰:09/09/05 23:23 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#303 [七瀬]
 
 
「‥うん‥。実はね‥」


すると、母さんは待っていた、というように話し始めた。



ただ俺は、
黙って聞いていた。


カチッカチッと時計の針が動く音がなぜか異様に響いていた。
 
 

⏰:09/09/05 23:24 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#304 [七瀬]
――――――――――…


目を大きく開く。
なにか言いたげに口も開く。


せめて口は閉じようか。



「千頼ちゃん」

女の子なんだから。


「カズ‥なんで‥」
 

⏰:09/09/05 23:25 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#305 [七瀬]
 
 
「なんでいるのか、って言いたいんでしょー?
んとねぇ、答えは簡単。
葉山さんを待っていたのです。一時間近く待ってたかなー?いや、一時間半は待ってたね」

そう言いながら、
机に座っていたのを、軽く飛び降りた。



千頼の表情はいつも極端だから、おもしろい。
 

⏰:09/09/05 23:25 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#306 [七瀬]
 
 
「出したんでしょ?進路きぼー調査。もちろん取りに帰った判子押して」

「うん。たったいま‥」

まーだ葉山さんは
驚きが治まらないご様子。


「だって見てたもん。
千頼が学校に出ていって、また戻ってくんの」

「なんで声掛けてくれなかったの?」
 

⏰:09/09/05 23:26 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#307 [七瀬]
 
「たまには待つ身になるのもいっかなー、と思って」


ほんとは、担任に呼び出されてたんだけど。

進路希望調査出してないの俺だけだったから。

千頼は除いてね。


「ほら。いつも千頼、俺のこと待っててくれるから。ちよの気持ちになってみた」

嘘も方便。

⏰:09/09/05 23:27 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#308 [七瀬]
 
 
「帰ろっか?」

まだびっくり顔の
千頼の手をにぎった。

あったかい。



でも、もうすぐ
この温かさとは、ばいばい。


決心したんだ、俺は。
 

⏰:09/09/05 23:28 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#309 [七瀬]
 
 
「千頼ちゃん」


外はもう暗くなっていた。

昼間の快晴とは打って変わって、厚い雲が空を覆っていたせいかもしれない。



「俺の部屋、寄ってかない?」

千頼は素直に、
俺んちへ入った。

⏰:09/09/05 23:28 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#310 [七瀬]
 
 
早く。

早く終わらせよう。


早くしないと、

雨が降ってくるかもしれない。

千頼が帰っちゃうかもしれない。



なにより俺がつらくなる。 

⏰:09/09/05 23:30 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#311 [七瀬]
 
 
そのくせ


「なんか飲む?」

なかなか切り出せず、
もたもたしていた。


「ううん。いらない」

「そ。じゃー和希くんルームへ」


カウントダウンが始まる。さよならへの‥――

⏰:09/09/05 23:30 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#312 [七瀬]
 
 
「なんかカズ変」

部屋に入っての第一声がこれ。


「‥ふふ。そんなことないよ」

参ったなぁ。バレバレ?


「そんなことある。
なんかよそよそしいもん」


うん、バレバレ。
 

⏰:09/09/05 23:31 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#313 [七瀬]
 
 
「うん。実は話ある」



雨が降ったら
傘を貸してあげる。

そんで、傘を返しにもらうなんて理由を作って千頼に会いに行く。


千頼が帰りそうになったら腕をつかんで引き止める。

そんでもって、
そのままぎゅーってする。

⏰:09/09/05 23:32 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#314 [七瀬]
 
 
 
その2つの、
どっちもできないのは



「えっとねー‥
 別れない?」


紛れもなく俺のせい。



千頼はどんな顔をしているんだろう。
 
 

⏰:09/09/05 23:34 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#315 [七瀬]
――――――――――…


変化がありました。


あたしと彼の間に、
大きな変化があったのです。


その一言は、
とても軽く自然に彼の口から出て、

その口調とは裏腹に、
あたしにとっては残酷過ぎる言葉でした。

⏰:09/09/05 23:34 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#316 [七瀬]
 
 
「‥ふふふ‥はは。
 カズやっぱり変だよ」

彼がおかしいのか。
あたしがおかしいのか。


「エイプリルフールは、もうとっくに終わってるよ」

きっと両方変なんだよ。
狂ってる。


あたしの脳は、

自分を守るために
都合よく解釈した。

⏰:09/09/05 23:35 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#317 [七瀬]
 
 
「冗談はもう‥いいよ」

「冗談じゃない」


彼は、はっきりと静かに言った。

その声の中には、きっと
冷酷な悪魔が潜んでいる。


「ふふ‥ふ。カズはいつも突然だなぁ」

あたしはなんとか
平然を保とうとした。

⏰:09/09/05 23:36 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#318 [七瀬]
 
 
「‥いきなり付き合おう、って言ったかと思えば、
別れよう、か‥」



彼は、きっとおかしいの。きっとそう。

じゃなきゃ
説明つかないよ。


「‥なんっでぇ‥カズ‥」 
 

⏰:09/09/05 23:37 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#319 [七瀬]
 
 
変化がありました。


あたしと彼の間に。



友達から彼氏になって、
彼氏からクラスメート。

ただのクラスメートに。


結果的にあたしは、
カズを失った――
 

⏰:09/09/05 23:38 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#320 [七瀬]
 
 
 
そして、変化は
これだけではなかった。



あたしの知らぬ間に、

周りは
どんどん変わっていった。


これはまだ始まりということに気付けるほど、

いまのあたしは
冷静ではなかった。
 

⏰:09/09/05 23:38 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#321 [七瀬]
 
 
 
 
 
4/28、


夏へと近づいていく中、



ひとつ季節が終わって、
あたしの恋も終わった。
 
 
 
 

⏰:09/09/05 23:41 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#322 [七瀬]
 
 
今日はここまでです!

よろしければ、
ご感想をお聞かせ下さい♪http://bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/05 23:48 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#323 [七瀬]
>>322


すいません><
まさかのURLミス。笑

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/


今度は
ちゃんと貼れてるかな?
 

⏰:09/09/05 23:51 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#324 [七瀬]
 
 
No.9 時の流れ
 
 

⏰:09/09/11 19:12 📱:N703iD 🆔:482lwPvA


#325 [七瀬]
 
 
「‥うん‥うん‥。
 それでそれで?」

深夜を回った。


「‥うんうん。‥‥え‥? あ!ほんとだぁっ!!」

慌てて台所へ走る。


「ふぅ〜‥ギリギリ
 間に合ったぁ‥‥‥」

ほんとうにギリギリ、
やかんから溢れずに済んだ。

⏰:09/09/12 09:36 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#326 [七瀬]
 
 
「いやー、ごめんごめん。話に夢中になっちゃって、気付かなったよぉ」


"千頼は抜けてるから"


電波越しの愛しい人は、
半ば呆れながらも、
笑って答える。


最初は、
なんだかくすぐったかった"千頼"という呼び方も

今では慣れた。

⏰:09/09/12 09:37 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#327 [七瀬]
 
 
「あはは、ごめんって。
え?大丈夫だって、もう!心配しすぎー」

肩に携帯を挟みながら、
カップにお湯を注ぐ。

ここに来たばっかりのとき買ったココアも、もう半分近く減っていた。

もうそろそろ
新しいのを買おうか、

それともこれから暖かくなるだろうし止めとこうか。

いま悩んでいる最中。

⏰:09/09/12 10:14 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#328 [七瀬]
 
 
"あ、もうこんな時間だ"


時間は早く過ぎる。


「‥ほんと、だね」

特に楽しい時間は。


"なに千頼。もしかして
電話切りたくない?"

クスクスと笑う声が聞こえてくる。

「そんなことっ‥」

⏰:09/09/12 10:14 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#329 [七瀬]
 
 
入れたてのココアからは、甘ーい湯気が立っている。


「‥‥ある、けど‥」

"はは、正直でよろしい"

ちょーっと意地悪なとこがあるけど、大切な人。


"また明日も電話するから"

「‥うん」


"好きだよ、千頼"

⏰:09/09/12 10:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#330 [七瀬]
 
 
「‥‥‥」

意地悪かと思うと、
急にやさしくなるから、

なんだか恥ずかしくなる。


"おやすみ"




「‥おやすみ、陽」

前田陽。
あたしの愛しい人。

⏰:09/09/12 10:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#331 [七瀬]
 
 
 
葉山千頼、18歳。


D外国大学、一年生。


まだ温かい春。





あたしは、ひとつ
大きな山を越えました。
 
 

⏰:09/09/12 10:17 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#332 [七瀬]
 
 
「‥はぁ、あったまる」

東京の春は、少し冷たい。


「あ、明日の用意しないと」


でも、大丈夫。

ホットココアと、
毎日の陽からの電話が
あっためてくれるから。
 

⏰:09/09/12 10:18 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#333 [七瀬]
 
 
まだ1ヶ月も
経っていないけど


大学生活、バイトに
一人暮らしだって、

がんばってるつもり。



「‥あ゙ーー!
 課題忘れたぁ!!!」


‥がんばってる、つもり。 

⏰:09/09/12 10:19 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#334 [七瀬]
 
 
時間は早く過ぎる。

特に楽しい時間は。



カレンダーへと目を向けると

「‥4/28‥‥」



時は、あたしを

あたしたちを
待ってはくれなかった。
 

⏰:09/09/12 10:20 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#335 [七瀬]
 
 
どんどんどんどん流れて、


どんどんどんどん
あたしを置いてきぼりに。



やらなければ
ならないときに、

なにもできずにいた
あたしを救ってくれたのは


まぎれもなく彼だった。
 
 

⏰:09/09/12 10:21 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#336 [七瀬]
 
 
前田陽。


あたしの幼なじみ。

あたしの恩人。

そして、愛しい人。



だけど


あたしは、まだ想いを断ち切れていない。
 

⏰:09/09/12 10:22 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#337 [七瀬]
――――――――――…


「ちーよーりっ!
まーた彼氏とメール!?
この幸せ者がっ!」


いま、バシバシあたしの
背中を叩いているのが、

「‥ちょちょっと痛い〜‥ 花寿美ぃ!!」


大江花寿美、
オオ エ カ ス ミ

同じ大学の同じ学科の
同じ学年同い年。

⏰:09/09/12 10:24 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#338 [七瀬]
 
 
「痛いじゃなーいのっ!!朝にラブラブメール送っている千頼のすがた見てる
あたしのほうが痛いよ!」

そう言って、
心臓を押さえる花寿美。


「‥なに言ってんの‥」

「ああ〜っ!彼氏ほしーい!うらやましいー!!」

花寿美は、かなりかわいいのに、長いこと彼氏がいないらしい。

⏰:09/09/12 10:25 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#339 [七瀬]
 
 
「よしっ!次はゲットするぞぉっ!!」

そんで、彼氏ゲットのため合コンばーっかり行ってたら、

いつのまにか、合コンが
趣味になっていたらしい。



「はぁ〜‥花寿美ったら」

呆れてものも言えない。

⏰:09/09/12 10:26 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#340 [七瀬]
 
 
でも、

東京に来たばっかりで、
戸惑っていたあたしに

いちばん
最初にできた友だち。


なんだかんだ
あたしは花寿美が好きだ。


「千頼ぃ〜」

大きな目をパチパチさせながら花寿美は、あたしを呼んだ。

⏰:09/09/12 10:27 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#341 [七瀬]
 
「ね、千頼も一緒に行かない!?今度の合コン!!」

「行かない」

「んもぉ〜‥。
 即答だなぁ‥」

「行くわけないじゃん」

あたしには、
陽がいるもん!!


「‥ちょっとくらいいいじゃん」

あくどい顔をする花寿美。

⏰:09/09/12 10:28 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#342 [七瀬]
 
 
「なに言ってんの‥」

さらに呆れてしまった。


「だぁーって、
彼氏は遠ーい遠ーい離れたとこにいるんでしょ?
バレないバレない!」

「‥そういう
 問題じゃなくって‥」


「一回くらい
 いーじゃんっ!!!」

花寿美は引かない。

⏰:09/09/12 10:29 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#343 [七瀬]
 
 
「千頼だって、
 まだここに来て数週間」

引くどころか、
ヒートアップしてきた。


「まだ慣れない土地‥。
ちょーっと、友だちの輪を広げよう、とか思わないわけ!??」

「‥それが、
 合コンですか‥」

ため息をつかずには
いられなかった。

⏰:09/09/12 10:30 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#344 [七瀬]
 
 
「いいじゃんいいじゃん。実はね、人数一人足りないの」

てへっと、
舌を出す花寿美。


「‥‥」

「お願い!千頼!
座っとくだけでいーの!」

しまいには、
手を合わせだす始末。

あたしは、
神さまでも仏様でもない。

⏰:09/09/12 10:30 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#345 [七瀬]
 
 
「‥‥じゃあ仕方なく‥」

「わあっ!ありがと千頼! 大好きぃ〜〜!!」

抱きつこうとしてきた
花寿美を手で制す。


「陽から、許可が出たら、 ね!」

花寿美も真剣な目でうなずいた。


夜言おう‥。

⏰:09/09/12 10:33 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#346 [七瀬]
――――――――――…


――ピリリリリ‥


いつもの時間。
ブーブーと揺れる携帯。


「もしもしー」

いつもの風景。


「もしもし、俺」

やすらぎの時がやってきた。

⏰:09/09/12 10:34 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#347 [七瀬]
 
 
「今日は、なんか変わったことなかった?」

いつもの質問。


「大丈夫。いつもどおり」

ぶっきらぼうな声から、
伝わってくる。


「そっか。良かった」


彼のやさしさ。
 

⏰:09/09/12 10:34 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#348 [七瀬]
 
 
「陽は、どう?」

「俺も、いつもどおり」

「よかった」

あたしたちの会話は、
いつもこれから始まる。



「‥あ、実は今日ね」

あたしは、陽に
合コンのことを話した。
 

⏰:09/09/12 10:35 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#349 [七瀬]
 
 
「‥というわけ、
 なんだけど」


陽が無言になってしまったので、

「‥でもっ、もし嫌だったら、今からでも断るし‥」

慌てて、付け足した。


「‥あのなぁ」

しばらくしてから、
陽は口を開く。

⏰:09/09/12 10:36 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#350 [七瀬]
 
 
「ただでさえ、毎日会えなくて、こうして声聞くだけで、いや‥声聞くだけでも十分なんだけど‥」

陽の声がだんだん小さくなっていく。

それが、あたしには
たまらなくうれしかった。


「そのだから‥不安だったりするわけで」


なんか、かわいくない!? 

⏰:09/09/12 10:37 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#351 [七瀬]
 
 
「‥ふふ、わかった。
明日、花寿美に断っとく」

あたしは、うれしさ半分、恥ずかしさ半分といった
気持ちで陽に伝えた。


「‥いや、いいよ。
やっぱり行ってきても」

「いいよ?どうせ行っても、座っとくだけだし!」

「ううん。たまには、そういう付き合いも大切だろうし、行っといで」

⏰:09/09/12 10:39 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#352 [七瀬]
 
また深夜を回ろうとしていた。


「千頼、こうしてちゃんと言ってくれたし、なによりその‥‥」

東京の夜は寒い。


「俺は、
 千頼を信じてるから」


でも、大丈夫だよ。

陽の言葉の一つ一つが
あっためてくれるから。

⏰:09/09/12 10:40 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#353 [七瀬]
 
「じゃあ‥もう遅いから。 おやすみ」

「陽、ありがとう。
 大好き」

電話から、ごほんごほんと咳き込む音が聞こえた。


「‥その電話して‥。
合コン、終わったら」

あたしがおもいっきりの
スマイルで「うん!」と、言ったのは、

たぶん
陽にも伝わったはず。

⏰:09/09/12 10:41 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#354 [七瀬]
――――――――――…


「はじめましてぇ!大江花寿美、18歳ですっ!!」

メイクだって、巻だって
いつもの三倍は気合いの入った花寿美とは裏腹に


「葉山千頼、同じく18歳です。よろしくお願いします」

なんとも、
ふっつーなあたし。
 

⏰:09/09/12 10:46 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#355 [七瀬]
 
 
畳の敷かれた部屋は、
個室になっていた。

一個しかない電球のせいで室内はけっこう暗い。

それが、オシャレというかなんというか‥、

まあはっきり言って、あたしには、よくわかんない。


その電球の下には、
テーブルの中心にある網があった。
 

⏰:09/09/12 10:48 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#356 [七瀬]
 
 
「じゃーまず、乾杯しますか!」

花寿美と一人の男の子は、慣れたように、リードした。


あたしと花寿美、そして、もう一人の花寿美の友だちだという女の子、

そして、三人の男性と


人生初の合コンが
幕を上げた。
 

⏰:09/09/12 10:49 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#357 [七瀬]
 
 
「かんぱーいっっ!!」

みんなお酒を飲んでいたがあたしは水しか飲まなかった。

だってだって!
未成年だもんっ!
―真面目ですいません―


花寿美は、もうターゲットを決めてたみたいで、ぐいぐいアピールしまくっている。
 

⏰:09/09/12 10:49 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#358 [七瀬]
 
 
もう一人の子も、
一時間ほど経つと、いい感じになってきたみたいで、男と絡んでいた。


なんか‥取り残されちゃったなぁ。


ほんとうにじっと座っていたあたしは余っちゃったみたい。

ただジュージューと焼けるお肉を食べていた。
 

⏰:09/09/12 10:50 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#359 [七瀬]
 
 
「‥ねー‥ねぇ!」

「は!‥はひ‥」

お肉に夢中になっていた
あたしは、呼ばれたことに気付かなかった。


「な、なんでひょう‥」

口いっぱいにやわらかいハラミを詰め込んでいたあたしは、うまく話せない。
 

⏰:09/09/12 10:51 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#360 [七瀬]
 
 
「名前ー‥たしか千頼、
 だったっけ」

なんだよ、馴々しいなー、と思いながらも、うなずくと


「そーだよな!!ってか、オレの名前知ってる?」

「ふいまへん」

まだ肉汁があたしの口内を支配したままだったので、首を振りながら精一杯答えた。
 

⏰:09/09/12 10:52 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#361 [七瀬]
 
 
「ははっ!やっぱりなー。オレ、颯太!」
   ソウ タ

あまりの勢いに、押されながらも小さくうなずいた。


「いやー。オレ余っちまってさー。退屈してたんだ」

「ほぉなんですか‥」


一応、礼儀として
口に手を添えて答えた。
 

⏰:09/09/12 10:53 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#362 [七瀬]
 
 
「ってか、あんた。さっきから肉食い過ぎだから!」

突然の指摘に
下を向いてしまった。


「ごめんごめん。
 "あんた"じゃなかった」

颯太と名乗る男は、

あたしが下を向いたのは、"あんた"と呼ばれたから、と思ったのか、言い直した。
 

⏰:09/09/12 10:54 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#363 [七瀬]
 
 
「いえ‥違いま」

「肉ばっか食ってねーで、 ちゃんと人の名前
 覚えろよ!!」


頭をぽんぽんってされる。


「ちーよりちゃん?」


――どき


なんだろ、懐かしい。
 

⏰:09/09/12 10:55 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#364 [七瀬]
 
 
「ってか、
 ほんとよく食べるなー」


あ、そっか。



「そんな食べると、
 牛になっちゃうよ?」




この人の呼び方、似てる。 
 

⏰:09/09/12 10:56 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#365 [七瀬]
 
 
 
"ちぃ〜よぉ〜"


"ちーよーり!"


"‥ちよ"





―――似てるんだ。
 
 

⏰:09/09/12 10:58 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#366 [七瀬]
 
 
「ってかさ、大丈夫?」

「ふえ?」

「いま飲んだの、チューハイだけど‥」

あたしは突然やってきた、胸の高鳴りを抑えるためにそばにあったグラスを手にとった。

あまりに動揺してたためかそれがお酒だと、気付かず飲んでしまったのだ。
 

⏰:09/09/12 10:59 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#367 [七瀬]
 
 
「‥だ、大丈夫です」

「そ?ならいいんだけど。ぜんぜん酒飲んでなかったから苦手なのかなー、って思ってたから」


よく見てるんだな、と思ったのが顔に出たのか、

「まー、大丈夫ならよかった」


男は、照れくさそうに、
笑った。

⏰:09/09/12 11:00 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#368 [七瀬]
 
「苦手っていうか、なんというか‥、ほらあたし未成年だから‥」

「‥ふっ、ははは。真面目だねー。ちよは」


あたしは、
バッと顔を上げた。

なんで、その呼び名‥。


「あ、ごめんね?馴々しく "ちよ"とか呼んじゃって。妹の名前がチヨコでいつもそう呼んでるからつい‥」 

⏰:09/09/12 11:01 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#369 [七瀬]
 
 
「‥いえ。気にしないで下さい」


なーんだ。

理由を聞いたら、なぜかちょっとがっかりしてしまった自分がいた。


「あのさ」

「はい?」

「敬語、止めない?」

「は、はぁ」

⏰:09/09/12 11:02 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#370 [七瀬]
 
 
「せっかくの合コンなんだから。ちよ」

「その呼び方止めてください!」

「じゃあ敬語も止めようか」

交換条件。


「わかりました」

「ちよ、わかってない。
 敬語だめ」
 

⏰:09/09/12 11:03 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#371 [七瀬]
 
 
「‥わかった」

「よろしい。千頼ちゃん」

いやいやと言う風に返事をしたのに、男は納得したようだった。


「あ、あと颯太って呼んで。オレのこと」

「それは無理です!あなたのほうが年上なんだし!」


「ち〜よ?け・い・語」
 

⏰:09/09/12 11:05 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#372 [七瀬]
 
「‥‥颯太"さん"のほうが年上なんだし無理!!」

やけに、"さん"を強調してやった。


「"颯太さん"か。うーん、まあいいよそれで!」

颯太さんは、
いかにも納得してません!という顔をしたと思ったら


「いつか颯太って呼びたくなるようにしたげる」

にっこりとした。

⏰:09/09/12 11:07 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#373 [七瀬]
 
‥‥なに、どきっとしてんだ、あたし!!

あたしは、赤みを増す頬をごまかすため、またお酒を飲んだ。

「さっきから飲んでる酒、オレのなんっすけど」

「す、すすすみません!
じゃなくて、すまん!?」

「ははは!そんなに飲みたいんならチューモンしたげる」

そう言って、メニューを広げた颯太さん。

⏰:09/09/12 11:08 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#374 [七瀬]
 
 
「い、いいよぉ‥」

「いーからいーから」

あたしは、完全に颯太さんのペースに呑まれている。


久しぶりに訪れた激しい感情に、少し舞い上がってしまっていたのかもしれない。


「千頼ちゃんには、どれがいいだろ。あんま強いのはダメだよね」

⏰:09/09/12 11:12 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#375 [七瀬]
 
 
 
あたしは、困ったように。




でも、微笑を浮かべながら

無邪気に、メニューを眺める颯太さんの横に座った。




過去の扉を開けるように― 
 

⏰:09/09/12 11:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#376 [七瀬]
 
 
よろしければ
ご感想を★

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/12 11:18 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#377 [七瀬]
 
 
No.10 いちご
   ミルフィーユ
 
 

⏰:09/09/20 21:24 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#378 [七瀬]
 
 
「‥う、ん‥」


いま‥何時‥?

かたわらにある携帯に
手を伸ばした。


「バイト行かないと‥」

はずが、ない。

あるはずのものがなく、
伸ばしたあたしの手は、
見事にスルッと滑った。

⏰:09/09/20 21:26 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#379 [七瀬]
 
 
「んもぉ〜‥どこぉ‥」

しかたなく、
重いまぶたを開く。

すると、目に入ってきたのは、

「‥ここ‥、ど、こ‥」


小さいテーブルに
白いソファー。

上京してきたばっかりの、ビンボー女子大生には、夢のまた夢、おっきい液晶テレビ。

⏰:09/09/20 21:26 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#380 [七瀬]
 
 
「うーん‥‥」

あたしは、夢でも見ているのだろうか。

うん、そうだ。
きっと夢でも見てるんだ。



「‥‥もう一眠りしよ‥」


そうやって、やわらかく心地よいタオル地の布団を頭までかぶった。
 

⏰:09/09/20 21:27 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#381 [七瀬]
 
 
「!??」

その瞬間、
バッと飛び起きていた。


‥あたし‥‥、

「‥なんにも‥着てない」


なんとなく気付いてた。

重たい頭のせいで、
起きたときから。
 

⏰:09/09/20 21:28 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#382 [七瀬]
 
 
でも、でもでも。


夢のせいにしないとって、本能が叫んでいた。

ううん。
夢のせいにしたかった。


だけど、

下着すらも着けていない
自分自身の身体が、
昨日のできごとを物語っていた。

⏰:09/09/20 21:29 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#383 [七瀬]
 
 
ここは、
きっと‥颯太さんの家。

間違いない。
絶対そうだ。



「‥‥ふぁあ〜あ‥。
あれ、千頼ちゃん起きた?」

やっぱり‥。

あたしは、ドアを開けて入ってきた、半裸の颯太さんをにらみつけた。
 

⏰:09/09/20 21:30 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#384 [七瀬]
 
 
「‥なに千頼ちゃん」

にらむあたしを、颯太さんはニヤリと笑って見る。


「昨晩は、あんなに受け身だったのに‥、ね」


ショックだった。

正直言って、
記憶がなかった。

こんな状況でも、
記憶がない限り小さな望みに賭けたかった。

⏰:09/09/20 21:31 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#385 [七瀬]
 
 
颯太さんの頼んでくれた
お酒が思いの外、美味しくって、たくさん飲んでしまったのは覚えている。

フラっフラのあたしを送ってくれようとした颯太さんとタクシーに乗ったのも、覚えている。



「‥その後だ」

まったく覚えてないのは。 

⏰:09/09/20 21:31 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#386 [七瀬]
 
 
「ど?思い出した?」

あたしに伸ばそうとした
手を払い除けて、

ベッド下に落ちている下着を素早く着けた。


「あたしの服はどこですかっ!??」

下着はすぐそこにあったのに、あたしの服が見当たらない。
 

⏰:09/09/20 21:33 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#387 [七瀬]
 
 
はぁ、とため息をつく颯太さんの手には、昨日あたしがはいていたスカートが。


「返して!!」

勢いよく、それを取った。


「上はどこにあるの!?」

呆れたようすのままの颯太さんは「‥そこ」と玄関方向だろう先を指差した。
 

⏰:09/09/20 21:33 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#388 [七瀬]
 
 
あたしはあわてて、
廊下を通って、玄関へ向かった。

そこには、あたしのパンプスのすぐそばに、シャツが落ちていた。

それを拾い上げると


「あのさ、もしかしてなにか勘違いしてない?」

うしろから、もっとも聞きたくない声が聞こえた。
 

⏰:09/09/20 21:34 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#389 [七瀬]
 
 
「‥なにが、ですか」

あたしは、
上を着て振り返った。


「服、脱ぎだしたの千頼ちゃんだよ?」

「うそっ‥!」

「うそじゃないよ」

きっぱりと言う颯太さんに首を振るあたし。
 

⏰:09/09/20 21:35 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#390 [七瀬]
 
 
「ちなみにオレの部屋に行きたいって言い出したのも千頼ちゃん。タクシー乗って、いきなりダダこねだすから‥、途中で行き先変えてもらって‥」

「うそよ!!」

「だから、うそじゃないって。大変だったよ、オレも運転手さんも」

ははは、と笑う颯太さんを放って、帰ろうとドアのぶに手を掛けたが、思いとどまった。
 

⏰:09/09/20 21:36 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#391 [七瀬]
 
 
「‥‥バッグ」

「はい、どーぞ」

あたしの思っていたことが分かっていたらしく、
すでに、手に握っていたようだ。


「‥おじゃましました」

そんな余裕綽々な態度が、よけいにあたしをイライラさせた。
 

⏰:09/09/20 21:37 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#392 [七瀬]
 
 
「またのお越しをー」


気の抜けそうな、なんとものんきな声に見送られ、

二度と来るものかっ!!
と思いながら、

高くそびえ立つ、あたしんちの家賃の3倍はしそうなマンションを後にした。
 

⏰:09/09/20 21:38 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#393 [七瀬]
 
 
「ドアが閉まります。ご注意下さい」

駆け込み乗車をして、
白い目に注目を浴びながらドア付近に寄った。


「はぁ‥」

鉛のような頭痛と
後悔が改めて襲う。


携帯を開くと、

陽からの不在着信がいくつも入っていた。

⏰:09/09/20 21:38 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#394 [七瀬]
 
 
そして、メールも。

"大丈夫か?メールでもいいから、連絡して"


後悔の念は、押し寄せてくるばかり。


一刻も早く陽に電話するべきだったが、
気が重くてできず、

昼からのバイトのため
家に帰って、シャワーを浴びた。
 

⏰:09/09/20 21:39 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#395 [七瀬]
 
 
バイトから帰ってくると、もう12時を回っていた。

切っていた電源を入れるとやっぱり不在着信。


相手は、もちろん

「もしもし‥陽?」

頭痛はまだ治まらず、
仕事疲れで体がダルかったけれど、陽の声が聞きたかった。

自分勝手だけど、ちゃんと言わなきゃって思った。

⏰:09/09/20 21:40 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#396 [七瀬]
 
 
「疲れてたのか?」

相変わらずのやさしい声。

一日聞かなかっただけなのに、とても懐かしい。


「‥うん、ごめんね。
 昨日電話しなくて」

ああ、これだ。
あたしの聞きたかった声。


泣きそうになったのを
必死で堪えた。

⏰:09/09/20 21:41 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#397 [七瀬]
 
 
「いや、いいんだ。
 ただ心配で」

でも、陽のやさしさに触れるたび、胸が痛む。


「ほんとごめんね。昨日は初めて合コンなんか行ったものだから、疲れちゃってて‥」

言えない。
言えるわけないよ‥。

心のなかで、陽にごめん、と電話し忘れたことではないことに謝った。

⏰:09/09/20 21:42 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#398 [七瀬]
 
 
「だから、いいって。それより、今日はバイトだったんだろ」

なんで、
そんなにやさしいの。


「今日はもう切るよ。まだ疲れ残ってるだろうし。
明日も学校あるし、千頼ももう寝‥」

「‥っ‥」

「千頼?」

「‥‥‥」

⏰:09/09/20 21:43 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#399 [七瀬]
 
 
「どうかした?」

「‥ううん‥なんで、も、ない‥」

やばい、ほんとうに泣きそうになった。


「‥そ。じゃあ切るな。
 おやすみ」

「おやすみ」


ってか、もう泣いてた。
 

⏰:09/09/20 21:44 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#400 [七瀬]
 
 
「‥う‥ふえ」

陽の心配してるよ、と言った辺りから涙が一筋頬を伝っていた。


電話が切れたとたん、



「‥うっうう‥ふえぇえ」

張り詰めていた糸が切れたようで、涙が止まらなかった。
 

⏰:09/09/20 21:44 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#401 [七瀬]
――――――――――…


「千頼ちゃん」

「‥なんですか」


次の講義まで、
時間があるし、ちょうど小腹も空いたということで、

花寿美とケーキの美味しい喫茶店へでも行こうと、

出たところに男はいた。
 

⏰:09/09/20 21:46 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


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