らぶずっきゅん!!!!
最新 最初 🆕
#1 [七瀬]
 
やわらかい髪
長いまつげ
髪と同じ茶色い瞳


すべてが

あたしを惹き付けて
わしずかみにして

離さない―――


今日もあなたに
らぶずっきゅん!!!!!


>>2 アンカー。
>>3 感想板。

⏰:09/08/08 21:38 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#2 [七瀬]
*アンカー*

>>4-50
>>51-100
>>101-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:09/08/08 21:39 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#3 [七瀬]
 
 
感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/08/08 21:40 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#4 [七瀬]
 
 
No.1 朝
 
 

⏰:09/08/08 21:41 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#5 [七瀬]
 
 
「んだよ、ったく‥」

そのダルそうな顔。
朝は機嫌の悪いところ。


「こんな朝早くから起こしやがって〜‥」

その迷惑そうな言い方‥


「おいコラ。
 聞いてんのか、千頼」

あなたのすべてのことに、あたしはずっきゅん。

⏰:09/08/08 21:42 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#6 [七瀬]
「‥って、おい!」

今、あまりに興奮しすぎて鼻血ブーになって

倒れたあたしは


葉山千頼。
ハ ヤマ チ ヨリ

ナカハラ カズキ
この中原和希を
追い掛けて、もう10年。


長いね、早いね〜。

ちなみに、18歳です。

⏰:09/08/08 21:42 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#7 [七瀬]
 
 
カズはあたしの王子さま。


ずーっと昔、

小学2年生のとき、
カズがこの町に転校してきたときから。

初めて見たときから。


あたしは

カズのために
カズのためだけに生きる。

そう決めたの。

⏰:09/08/08 21:45 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#8 [七瀬]
 
 
「中原和希くんです。
先週この町に引っ越してきました。みんな仲良くね」



先生のはなしなんて
耳に入らなかった。

ううん。
スルリと抜けていった。


あたしの真剣すべて
視覚に集中してしまっていたから。

ある一点に。

⏰:09/08/08 21:46 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#9 [七瀬]
 
 
あたしは、昔から
惚れっぽかったし、

小学生だったし。


でも、これは
軽はずみじゃない。


だって、
ピンって来たんだもんっ!!


きゅんきゅんって
来たんだもんっ!!!

しかたないじゃん〜!

⏰:09/08/08 21:47 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#10 [七瀬]
 
「なかはらかずき。
 よろしくなっ!」

カズはちっちゃいころからかっこよかった。

サッカーがうまくて‥。


昔から、よくモテた。

周りの男の子たちとは、違っていた。

"特別"なの。

周りから見ても、
あたしから見ても。
 

⏰:09/08/08 21:48 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#11 [七瀬]
 
まあ、そういうとこが
ますますあたしを

きゅんきゅんさせるんですけど。


あーっ!!

当時のかわいいカズを
思い出したら

また興奮してき‥


「‥‥より‥ち‥より‥」 

⏰:09/08/08 21:49 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#12 [七瀬]
―――――――――
――――――
―――


「‥い‥おい‥」

「ん〜〜〜‥」


ハッ――

「っ!!」

「やっと起きたか」
 

⏰:09/08/08 21:50 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#13 [七瀬]
 
目を覚ますと

ネクタイを
首にぶら下げながら


「ほら、立って。
 学校行くぞ」

しゃがんで
あたしに手を差し出すカズ。


「今‥なんじ?」

「9時過ぎ」
 

⏰:09/08/08 21:50 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#14 [七瀬]
 
「‥は、ははははは」

完璧遅刻じゃん‥。


「笑ってる場合じゃないっす。葉山さん」

「‥ごめんちゃい」

おどけて見せると、
小さく聞こえるため息。


うぅ〜〜〜‥‥
 

⏰:09/08/08 21:51 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#15 [七瀬]
 
 
「千頼」

優しい声。


「ほら、手」

下を見ながら
差し出された手を握る。




「おわっっ!!」
 
 

⏰:09/08/08 21:52 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#16 [七瀬]
 
 
「‥ネクタイ‥‥まがってる」

引っ張ったネクタイを
戻してあげたついでに


――ちゅっ

軽く唇を押し当てた。


「‥朝から、大胆だな」

カズは、やわらかく笑う。  

⏰:09/08/08 21:53 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#17 [七瀬]
 
ぜんぶ好きだけど、

この笑顔が特に好き。


きゅんなんて
もんじゃないよ。


ずっきゅーーーん!!!!!!

って感じ。笑


特に、朝はヤバい。

こんなフェロモン
毎日浴びたら死んじゃう。 

⏰:09/08/08 21:54 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#18 [七瀬]
 
余裕綽々にこんなこと言うから、ムカついた。


だから


――ちゅ‥

意地になって、もっともっと押し付けてやった。


すると、

「なに千頼。欲求不満?」だって。

⏰:09/08/08 21:55 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#19 [七瀬]
 
 
「失礼な。中原くん。
悪いけど足りてますから」


なにそれなにそれ。

「そりゃどーも。
 失礼しました」


なんで
そんな笑ってんの。

ああー、もうムカつくっ!
 

⏰:09/08/08 21:58 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#20 [七瀬]
 
 
「‥一時間目、葉山さんの嫌いな情報だけど」


「‥‥‥」

「どーします?千頼さん」


「‥‥‥‥」



「来いよ。千頼」

カズは、ベッドに座って、さっきみたいに手を差し出す。

⏰:09/08/08 21:59 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#21 [七瀬]
 
 
もー、いいやっ!


「‥せっかく、ネクタイ
締めたげたのに」

あたしは手を出す。


「またすればいーじゃん」


結局あたしは、
この笑顔に弱いんだ。
 

⏰:09/08/08 22:02 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#22 [七瀬]
 
 
「‥ん」

鎖骨に唇が触れる。


それだけなのに
心臓はもうやばい。


「‥かわい‥今日の千頼」


「今日"の"!?」

「ごめんごめん」

軽く笑うカズ。

⏰:09/08/08 22:03 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#23 [七瀬]
 
「すねないでー。
 千頼ちゃん」

頭をくしゃくしゃって
やられる。

心臓もやられる。


「ってか、そろそろ
 タッチ交替します?
 和希くん」

上にいる和希くんは

「んー、
 どーしよっかなー」

悩んでいるようす。

⏰:09/08/08 22:04 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#24 [七瀬]
 
 
「ひさびさに千頼にも、してほしいけど、やっぱいーや」


「ふぅん‥。そ」

珍しい。


「うん。
今日はねー、俺がいっぱい千頼を鳴かせたいから」

「うわ。やらしー」
 

⏰:09/08/08 22:05 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#25 [七瀬]
 
笑っていると、


「‥笑ってられるの、今のうちだけだよ?」

‥っと。
いきなりの、S発言。


「覚悟してます」

そう言ったが最後。


あたしたちは、
何度も何度も愛し合った。

⏰:09/08/08 22:06 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#26 [七瀬]
 
 
「お腹空いたー」

「もう、お昼だもんねー」


時計の針は
12時を差している。


「ってか、千頼ほんと声出しすぎ」

ははっと笑うカズ。


「カズのせいじゃんっ!」 

⏰:09/08/08 22:07 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#27 [七瀬]
 
 
「まーねー。
 俺の予定どーり」

「‥じゃあ、こんな昼過ぎになることも予定にしてたのかしら」

ちょっと
嫌味を言ってやった。


「ごめんごめん。
ひさびさだったし、千頼がかわいかったから」
 

⏰:09/08/08 22:08 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#28 [七瀬]
 
 
"ごめんごめん"って、
笑いながら言うのは

カズのくせ。




「なんか食べに行こっか」

カズが立ち上った。


「なんか
 食べたいもんある?」
 

⏰:09/08/08 22:09 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#29 [七瀬]
 
「うーん‥、パスタ!」

「パスタか。わかった。
 ちょっと待ってて」

そうやって、
カズは着替えだした。


「えっ、着替えんの?」

「うん。だって、学校サボるだろ?」


「まぁ‥そうだけど。
じゃあ、あたしも着替えたーい」
 

⏰:09/08/08 22:09 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#30 [七瀬]
 
「えー、千頼用意長いもん。待ってたら、夕方なっちまうじゃん」

「悪かったわね!」


「いーじゃん。制服のままで。かわいーよ?千頼は、なにを着ても」


熱くなるのが、全身でわかる。


カズはずるい。
 

⏰:09/08/08 22:10 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#31 [七瀬]
――――――――――
――――――
―――


「おっはよー」

「あ、おはよ!千頼」

あたしが教室に入ると
声をかけてきたのは、


ともだちの多果子。
タ カ コ
 

⏰:09/08/08 22:11 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#32 [七瀬]
 


「‥はよ」


男ともだちの陽。
ハル


「ってか、昨日は二人そろってサボり?」

多果子は、
あきれたように言う。


「ごめん。1限目が糸田の授業だと思うと、行く気が一気に失せちゃって」

⏰:09/08/08 22:22 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#33 [七瀬]
 
 
あたしは、かばんを机に置いて、言った。


「‥で、一日中なにしてたのよ。王子と」


「別にー。ゴロゴロしてー、パスタ食べにいってー、
ばいばいみたいな」

「ふーん」

いろいろ聞いてくる
多果子とは裏腹に

興味無さげな陽。

⏰:09/08/08 22:23 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#34 [七瀬]
 
 
多果子はあたしとカズの関係を気にしてくれてる。

だけど、気を遣って、あまり深くは触れない。


多果子も陽も、なにも言わないけど、ほんとは知ってるんだ。




あたしとカズは
体だけの関係ってこと。
 
 

⏰:09/08/08 22:24 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#35 [七瀬]
 
 
No.2 二人の関係
 
 

⏰:09/08/08 23:55 📱:N703iD 🆔:ndZ1OwLY


#36 [七瀬]
 
 
「ちーよーちゃん」

「なにー」

「現社の宿題見せてー」

「あたしもやってなーい」


「珍しい。
 才色兼備なのに」

「昨日、誰かさんと一緒に、おサボりしたからじゃん」 

⏰:09/08/10 16:51 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#37 [七瀬]
 
 
「えー、あれは、千頼から誘ってきたからだろー?」

また、あのやわらかい
笑顔で言う。


「‥すみませんね。
でも、宿題は見せてあげられませんから」

「ケチー」


「‥一緒にする?」

「千頼なら、そう言ってくれると思ってた」

⏰:09/08/10 16:51 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#38 [七瀬]
 
 
ノートと、青い教科書を
開いて、お互い向き合う。


「ぜんぜんわかんない」

「どれ?」

「ここ」


"一緒に"と言っても、
ほとんどあたしがやるみたいなもの。
 

⏰:09/08/10 16:52 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#39 [七瀬]
 
 
それでも


「あ、そっか。
やっぱ、千頼の教え方うまい。山部の授業より、ぜんぜんわかりやすいよ?」

この笑顔が見れたらいい。



‥なんて。


あたしって、バカな女。
 

⏰:09/08/10 16:54 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#40 [七瀬]
 
 
いつもいつも


追い掛けるのは
あたしのほうで

ドキドキするのも、
いーっつもあたしだけ。


あたしは、

いつもその笑顔に
ずっきゅんってくるのに‥。
 
 

⏰:09/08/10 16:55 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#41 [七瀬]
 
 
 
しかも、


質が悪いのは



カズが、あたしの気持ちに気づいてるってこと。
 
 
 
 

⏰:09/08/10 16:56 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#42 [七瀬]
 
「ちよりー」

「なに?」

あたしが、形だけでも
説明しているときに

「そと」

「もー、だからなに?」

カズは
いつもみたいに口を開く。


「外だってば。見てみ?」

シャーペンを持つ
手の袖を引っ張る。

⏰:09/08/10 16:57 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#43 [七瀬]
 
 
「‥飛行機雲」

「きれーだろ」


きれい、なのだろうか。



「えー」

「んだよ」


白い線は、青い空に
まっすぐのびている。
 

⏰:09/08/10 16:57 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#44 [七瀬]
 
 
「虹の方が好きだなぁ‥」

ほんとうに当たり前なほどまっすぐで


「わがまま」

まっすぐまっすぐ


「わがままで結構」

まっすぐまっすぐ‥


「そんなんじゃ、お嫁にいけないよ?」

⏰:09/08/10 16:58 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#45 [七瀬]
 
「いーよ。カズにもらってもらうから」

あまりに、まっすぐすぎて

「ははは。わかった。
じゃー中原千頼ちゃんだ」

ムカついた。


飛行機雲のように
まっすぐな彼は

「‥せに」

あたしの怒りを静かにゆっくりと燃え上がらせた。

⏰:09/08/10 16:59 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#46 [七瀬]
 
 
「え?千頼、声小さ‥」


「その気もないくせに」





でも、

まっすぐなものほど
壊れやすいってことを


あたしは、知っている。
 

⏰:09/08/10 17:00 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#47 [七瀬]
―――――――――…


ポケットの中が
ブーブーブーって、言っている。


着信"カズ"


出たくない。
というより、出れない。


しばらくすると、
ブザーは止まった。
 

⏰:09/08/10 17:01 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#48 [七瀬]
 
 
出ようか、止めとこうか

迷っているうちに
止まった。


‥なんで、あんなこと
言ったんだろ、あたし。


はぁーあ。

ほどよく崩した
ネクタイ。

青いチェックの
スカート。

⏰:09/08/10 17:02 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#49 [七瀬]
 
まだあたしが
中学生になるときにできた

それが今、あたしたちが
通う宮島高校。


"できた"というのは、
ちょっと違うな。


正しくは、"新"宮島高校。

もともとあった宮島高校とどっかの総合学科が合併して、今の高校ができた。
 

⏰:09/08/10 17:03 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#50 [七瀬]
 
それで
制服も新しくなって‥。


当時、中学生だった
あたしは

かわいい!

ガキんちょながら
感動した。


緑のネクタイが
ポイントの制服。


宮高‥当時は憧れたなぁ。 

⏰:09/08/10 17:03 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#51 [七瀬]
 
 
‥でも、
今となっては大後悔。


自分の力をガクンと
下げてしまったのも、

カズと同じ高校に
入っちゃったのも。


かわいいと思っていた制服も着てみるとたいしたことなかった。

もっと、オシャレな制服がある高校も今では当たり前になってきたしね。

⏰:09/08/10 17:04 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#52 [七瀬]
 
 
幼すぎたんだと思う。


小学生のとき、カズに
一目惚れしたのだって

制服で高校
選んじゃったのだって。


やっぱ、
あたしってバカ女。


後悔したって、
もう遅いことだらけ。
 

⏰:09/08/10 17:05 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#53 [七瀬]
 
 
ブーブーブーブー

この感じは‥


受信"カズ"

メールか。


携帯をスライドさせる。

先月買い替えたスライド式の新しい携帯は、まだ慣れない。
 

⏰:09/08/10 17:06 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#54 [七瀬]
 
 
"ちよー。さっきはごめん。なんか怒ってる?"

だってさ。


あたしがなんで
怒ってるのか

わかんないくせに
"ごめん"か‥。


あたしは、そのまま
ポケットに入れた。
 

⏰:09/08/10 17:06 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#55 [七瀬]
 
 
あたしは、
今でも子どもだと思う。


勝手に怒って、
勝手に帰って、

10年も、カズのこと
追い掛け回して。


うん、十分子どもだ。


でも、あたしは悪くない。

ぜったいぜったい
悪くない。

⏰:09/08/10 17:07 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#56 [七瀬]
 
 
だって、カズも
子どもだもん。


あたしの
気持ち知りながら

それを利用して、
もてあそんでる。


あたしとキスする。
えっちだってする。



彼女‥いるくせに。
 

⏰:09/08/10 17:08 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#57 [七瀬]
 
 
ブーブーブーブー

"千頼、どこいんの?"


多果子か‥。


"ごめん。サボる"

送信、っと。


またサボっちゃったけど、仕方ない。
 

⏰:09/08/10 17:09 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#58 [七瀬]
 
昼休みに
脱走してきたから

まだお昼過ぎ。


お弁当食べたし、
お金持ってきてないし、

家に帰るしかない、よね。


‥たいくつ。


やだなぁ。

ヒマだといらないことまで思い出しちゃう。

⏰:09/08/10 17:09 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#59 [七瀬]
 
 
‥あの時のこととか。


―――――――――
―――――
―――


「あたし、カズが好き」

中学三年生。


まだ肌寒い
春休みのときだった。
 

⏰:09/08/10 17:11 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#60 [七瀬]
 
あたしは、
カズに告白した。

いつものように、
カズの部屋で二人で
まったりしているときに。


あたしは、冗談抜きで
マジメに真剣に告った。



正直、自信もあった。

カズとは長い付き合いだし

カズもあたしのこと好きだろうと思ってた。

⏰:09/08/10 17:11 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#61 [七瀬]
 
今思うと、とんでもない
勘違いでうぬぼれだけど。




「‥ごめん。
 俺、彼女いるから」



返ってきたのは、
その一言だけ。
 
 

⏰:09/08/10 17:12 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#62 [七瀬]
 
なにを言われたのか
理解できない。

思考は完全に停止状態。

ショックと恥ずかしさが
入り交じって‥。




「‥そ、そっかあ」


あたしも、
これしか言えなかった。
 
 

⏰:09/08/10 17:15 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#63 [七瀬]
 
 
まぁ、あれから
3年の月日が流れて、

いろいろわかってきた
こともある。


例の彼女は、

カズがここに引っ越してくるまえに住んでたところの幼なじみらしい。


幼稚園児のとき、
"結婚しようねー"って、
約束したんだそう。
 

⏰:09/08/10 17:18 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#64 [七瀬]
 
ね、

カズも案外
子どもでしょ?

そんな初恋みたいな。

あたしとやってること
変わんない。


ううん。

向こうなんて、あたしが
カズを好きになるよりも、ずっとまえなんだから、


ぜんぜん適わない。

⏰:09/08/10 17:19 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#65 [七瀬]
 
 
ありえない。

ありえないありえない。

そんなたかが幼稚園時代のもろい口約束のくせに。


ほんとありえないよ。


あたしも
たかが一目惚れのくせに。


――こんなに
  好き、だなんて。
 

⏰:09/08/10 17:20 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#66 [七瀬]
 
 
 
それからだった。




あたしとカズの
今にまで続く、



"この関係"になって
しまったのは―――
 
 
 
 

⏰:09/08/10 17:23 📱:N703iD 🆔:KCNCkJKg


#67 [七瀬]
 
 
No.3 きゅん、ときどき    ずっきゅん
 
 

⏰:09/08/11 12:13 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#68 [七瀬]
 
 
 
「‥それさ、美化されすぎちゃったんじゃない?」


好物の照り焼きバーガーを大きな口で頬張りながら、多果子は言った。



「美化?」

破片しか残っていない
ポテトをちまちま食べながら答えた。
 

⏰:09/08/11 12:14 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#69 [七瀬]
 
 
「そ。美化」

夕方のマクドは混んでないから、割りと好き。


「長いこと中原を追っかけてるから、いつのまにか
美化されちゃってんじゃない?」


でも、マクドのポテトは
あまり好きじゃない。

定番メニューだからか、
いつも頼んじゃうけど、塩辛いから嫌い。

⏰:09/08/11 12:16 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#70 [七瀬]
 
「ねぇ、千頼。
中原はいつまでも"カズ"のままじゃないんだよ?」

「‥」

わかってる、そんなの。


「千頼の好きな"カズ"はもういないんだよ」

「‥‥」

‥それは違う。

たとえ、昔のカズのままじゃなくても、あたしは、カズが好きだ。

⏰:09/08/11 12:18 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#71 [七瀬]
 
しょうがないじゃん。


わかってても、
昔のカズじゃなくても


カズを見ると心臓が勝手にどきどきするんだもん。


寝起きで機嫌悪いとことか子どもじみたとことか。

きゅん、って。


いやでも、なるんだもん。 

⏰:09/08/11 12:21 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#72 [七瀬]
 
 
「‥あのさ」

「んー?」

「こんなこと
 言いたくないけど」

「なによ」


「もうそろそろ、
 止めたら?」


むしゃむしゃと食べていた口が止まる。
 

⏰:09/08/11 12:23 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#73 [七瀬]
 
 
「‥今の千頼は、半分あきらめてるような、でもまだ固執してるような‥‥」

多果子は、ほんとうに
言いにくそうに言う。


「その‥なんていうか‥」

でも、的の中心を射たことを言う。


「‥前はもっと輝いてたってゆーか、全身で恋してます!って感じだった」
 

⏰:09/08/11 12:23 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#74 [七瀬]
 
冗談混じりに言ってくれるのは多果子の気遣いだってこと。

わかってる。


「好きな人に彼女がいようと、あきらめないで頑張る千頼すごいな、って思ったよ」


よーくわかってる。
 

⏰:09/08/11 12:24 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#75 [七瀬]
 
だけど


「‥‥でも、最近の千頼はただ意地になってるだけに見える、の‥」


人って、ほんとうのこと言われると

抗いたくなる。


それが
正しいことであっても。

自分のために言ってくれてることでも。

⏰:09/08/11 12:25 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#76 [七瀬]
 
 
「‥‥ね‥」

あたしってダメ人間。


「多果子はいいね」

友だちに
八つ当りするなんて。


「多果子は彼氏いるから、そんなこと言えるんだよ」 

⏰:09/08/11 12:26 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#77 [七瀬]
 
頭の中は意外と冷静。
でも、心臓は忙しい。


「あたしの気持ち、
 多果子にはわからない」


ダメダメダメ人間。

好きな人とケンカして、
友だちともケンカした。


原因はすべて自分。
 

⏰:09/08/11 12:27 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#78 [七瀬]
 
 
「千頼‥もっと頭よく冷やして考えな‥」

それだけ言うと、
多果子は立ち上がって

出ていった。



さっき、カズも同じ気持ちだったのかな。


‥取り残された気持ち。
 
 

⏰:09/08/11 12:28 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#79 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――


プルルルル…

その夜、
電話がかかってきた。


「はい、もしもし」

ママに促され、受話器を取ったことを後悔した。


「もしもし、ちよ?」
 

⏰:09/08/11 12:29 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#80 [七瀬]
 
 
「‥‥」

ふだん、家にはまったく
かけてこないから驚いた。


「‥俺だけど」

携帯だと、あたしが出ないのが、わかっていたからだろう。


「"俺"って、どちらさまですか?」

わかってたけど、
意地悪してやった。

⏰:09/08/11 12:30 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#81 [七瀬]
 
 
「‥‥」

しばらくの沈黙のあと、


「ちよ、ごめんな」

カズが謝ってきた。


「‥なんで謝ってんの」

「えっ?」


「あたしが、なんで怒ってるかも知らないくせに」
 

⏰:09/08/11 12:30 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#82 [七瀬]
 
 
「だから謝ってんじゃん」

カズはずるい。


「なんで怒ってんのか、わかってやんなくてごめん」

――きゅん


「でも俺、千頼がなんで怒ってんのか知りたい。
ちよと、ずっとこのままなんて、やだから」

――きゅん、きゅん
 

⏰:09/08/11 12:31 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#83 [七瀬]
 
 
「頼む。
 教えてくれよ、ちよ‥」




カズは、どうしていつも

こんな一言で、あたしの心を打ち抜くんだろう。



――‥ずっきゅんって
 
 

⏰:09/08/11 12:34 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#84 [七瀬]
 
 
「あたしも、ごめんね‥」

素直にならなきゃ。


「あたしだって、カズと
一生このままなんてやだ」

ちゃんと言わなきゃ。


「‥‥」


「‥どした?千頼」
 

⏰:09/08/11 12:35 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#85 [七瀬]
 
 
―固執してる

―ただ意地になってるだけ


頭のなかを駆け巡る
ことばたち。


あー、
やっぱそろそろ潮時?



「ちよ?千頼?」
 

⏰:09/08/11 12:36 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#86 [七瀬]
 
 
 
「‥好きぃ‥カズ‥」


そろそろ潮時。


だから、最後に悪あがき。


最後‥ほんとに最後だから

これで、ほんとうのほんとにラストだから


神様、許してください。
 

⏰:09/08/11 12:37 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#87 [七瀬]
 
 
 
「‥‥ちよ‥俺‥」




あたしの心臓に
ふたたび、ずっきゅん、はやってくるのか、


18歳の春になるのか‥。



わからない。
まさに、神のみぞ知る?
 

⏰:09/08/11 12:40 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#88 [七瀬]
―――――――――…

「あたし‥やっぱカズが好き」

「‥そっか」

「多果子‥ごめんね」


「いいよ、わたしはただ千頼に幸せになってほしいだけだから」

「ありがと‥」


「でも、よかったじゃん!おめでと‥千頼」
 

⏰:09/08/11 12:42 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#89 [七瀬]
 
 
「うん‥ありがとう」

そう。

あたしたちは
付き合うことになった。


「なに言ってんの、いまさら」

受話器越しに苦笑する多果子の声が聞こえる。


「‥だけどさぁ‥やっぱ照れるよ、こうやって改めると」

⏰:09/08/11 12:43 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#90 [七瀬]
 
「なに?のろけ?」

「‥えへへ‥‥」



ダメだ、あたし‥。


うれしいうれしい!
うれしすぎる。

嘘じゃないよね。
夢じゃないよね。


さっきのできごとが
頭のなかを巡る。
 

⏰:09/08/11 12:45 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#91 [七瀬]
――――――――
―――――
―――


「‥‥俺‥」



どきどきどきどき‥。


沈黙が
あたしを不安に包む。
 
 

⏰:09/08/11 12:45 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#92 [七瀬]
 
 
「付き合おっか」


「‥はっ?」


あたし‥‥耳‥おかしくなった?

「いや‥だから俺たち付き合う?」


いや、大丈夫だ、うん。
耳は正常‥ってことは


カズがおかしいのか〜。

⏰:09/08/11 12:49 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#93 [七瀬]
 
 
「ちよ?聞いてる?」

「え、うん!聞いてるよ」

「それなら‥いいけど」

また変な沈黙ができる


「あの‥」

「ん?」

「付き合う‥って、カズがあたしの彼女に‥あたしがカズの彼氏になる‥‥ってことだよね?」
 

⏰:09/08/11 13:10 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#94 [七瀬]
 
「‥いや‥反対。
ちよが俺の彼女に。俺がちよの彼氏になんの」

「‥あ‥そか‥ははは‥」

あたしは、
かーなりテンパってた。

「‥あの」

「まだなにか?」

どーーしても、確かめなきゃいけないことが、一つあった。

「カズ、東京に彼女いるんじゃないの?」

⏰:09/08/11 13:10 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#95 [七瀬]
 
 
すると、カズは


「ぷっ、はははは!」

笑いだした。


「なっ‥なに!?
なんで笑ってんのよ〜!?」


「だってー!ちよ、まだ信じてんだもん!」

「え?えっ?
 どういうこと!?」

⏰:09/08/11 13:11 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#96 [七瀬]
 
 
「そんな昔話忘れたよ。
ってか、それってもう10年以上まえの話じゃん。
ちよ、信じすぎ!」


な、

「なんだぁ〜」


「なに?もしかして千頼、ほんとに東京に彼女いると思ってた?」

カズは笑って言う。
気が抜けた。

⏰:09/08/11 13:14 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#97 [七瀬]
 
 
「‥っ‥カズぅ‥ぐず‥」

気が抜けたあたしは
泣いた。


「‥ごめんごめん。ちょっと冗談が過ぎたかな」

「‥ほん‥っと‥冗談きつすぎ‥」


‥そうだよ、バカっ!
 
 

⏰:09/08/11 13:15 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#98 [七瀬]
 
なんで、気付かなかったんだろう。


ずっと、ずっと

あなただけを
見てきたのに。


なんで、思い出さなかったんだろう。


あのときの

「‥俺、彼女いるから」

っていうカズの表情を。

⏰:09/08/11 13:16 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#99 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――

「‥まぢかよ」

受話器越しに聞こえる
陽の声はなんだか険しい。

「ああ」

「和希、それまぢで言ってんのか?」

「さっきから、何度もそう言ってんじゃねーか‥」

そう言っても、陽は
まだぶつぶつなんか言っている。

⏰:09/08/11 13:16 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#100 [七瀬]
 
「‥本気?」

「‥‥」

「お前、本気で葉山と付き合うのか?」

携帯を握る手が強くなる。


「‥ああ」



「止めとけ」


‥即答かよ。
 

⏰:09/08/11 13:17 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#101 [七瀬]
 
 
「なんで‥」

「だって、お前‥‥」


なんとなく、わかってた。


これから、陽が
言おうとしていること。





「まだ、切れてないだろ。 東京の彼女」
 

⏰:09/08/11 13:18 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#102 [七瀬]
―――――――――…


このとき、
ちゃんと見抜いてたら


カズを失うことには
ならなかったのだろうか。


あたしのそばに
ずっといてくれたかな?



たとえ、
"友だち"という形でも。
 
 

⏰:09/08/11 13:19 📱:N703iD 🆔:ZycRR2Ck


#103 [七瀬]
 
 
No.4 嘘
 
 

⏰:09/08/13 23:12 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#104 [七瀬]
 
 
 
「‥ズっ!‥‥カズ!」


んだよ、朝っぱらから。


「もうっ!遅刻っ!
 遅刻しちゃうよ!?」


薄目を開くと、

「起きた?」


そこには、彼女の顔が。

⏰:09/08/13 23:13 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#105 [七瀬]
 
 
「はい!起きたら、顔洗う」


言っとくけど
俺の彼女はかわいーです。


顔はちっちゃいし
目はぱっちり。

細いけど、
出るとこ出てるし。

頭もいい。


才色兼備まさに完璧。
 

⏰:09/08/13 23:13 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#106 [七瀬]
 
 
「ちーよー‥」


たまに、ドジしたり
ちょっと抜けてるとことか

またかわいい。


「‥ちょっ‥カズ‥っ」


うん、だから。


朝から、
襲いたくなるんです。

⏰:09/08/13 23:15 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#107 [七瀬]
 
 
「1限目、葉山さんの嫌いな‥」

「もーその手には乗りませんっ!はいっ!起きて!」


「‥ちぇっ」

しぶしぶ立ち上がる。


うーん。

俺の彼女、融通利かないのが、ちょっとなぁ。

もったいない。

⏰:09/08/13 23:15 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#108 [七瀬]
 
 
「やばー!ほんと急がないと、リアル遅刻だよ!カズ」

「んー」


「聞いてるの!?」

「聞ーてるよ。急がないと遅刻するんだろ?」

「じゃあ、急いでよ!」


さっぱりした顔を
柔らかいタオルに押しつけて振り向いた。
 

⏰:09/08/13 23:16 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#109 [七瀬]
 
 
「大丈夫、だいじょーぶ!
学校まで、ひとっ飛びしたげるから」


「‥ばーか」

鏡越しに、
笑う千頼の顔がかわいい。


「‥早くしてよね。あたし玄関で待ってるから」


そう言って、出ていった。 

⏰:09/08/13 23:17 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#110 [七瀬]
 
 
「‥‥」


なんだろ。


今日の千頼、昨日より
数倍かわいく見えた。



「‥うーん‥‥謎」


女ってーのは、
1日でこんなに変わるものなのだろうか。
 

⏰:09/08/13 23:18 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#111 [七瀬]
 
 
「はーやーく!」

玄関から聞こえる声からは千頼のだんだんイラついてきているようすが伺える。


「すぐ行くー」

ボタンを二つ開けて、
あわててネクタイを首に掛けた。


「おっそい!もうっ!」
 

⏰:09/08/13 23:18 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#112 [七瀬]
 
 
「ごめーん」

かかとのつぶれたスニーカーに足を押し込む。


「あ!ネクタイ!
また、ちゃんとできてないじゃん」

毎朝のように
千頼は俺の首に手を回す。


「まったく‥」

ぶつぶつ言いながらも、
ネクタイを結んでくれる。 

⏰:09/08/13 23:19 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#113 [七瀬]
 
 
いつも


いつものことなのに
うれしい。



「‥よし!できたよ」


目が合う。


――ちゅ

いつものように唇が触れる。

⏰:09/08/13 23:20 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#114 [七瀬]
 
慣れたことなのに、
愛しい。


だけど


――ズキン―

胸が痛い。


千頼の柔らかい唇が
唇を離したあとに
見せる笑顔が

心臓に穴を増やして、
大きくする。
 

⏰:09/08/13 23:21 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#115 [七瀬]
 
 
「‥さあー、行こー」

明らか照れてる
彼女のすがたを見ながら、いざ、しゅっぱーつ!



「ほら、うしろ乗れ」

俺のより、一回りサイズの小さいヘルメットを渡すと


「乗るのひさびさだから、怖い‥」

小さくつぶやいた。

⏰:09/08/13 23:22 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#116 [七瀬]
 
 
「なーに、ビビってんの」

「うん‥」


あれ、


「‥珍しく素直」

「えっ?」


「ううん、なんもない」


やばい。
 

⏰:09/08/13 23:23 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#117 [七瀬]
 
 
「なによー」


やばいよ、俺。

「なんでもなーい」


今、すっごい幸せかも。


「‥気になる」

「なんでもないって」

言った瞬間、
アクセルを踏んだ。
 

⏰:09/08/13 23:24 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#118 [七瀬]
 
 
ブーーー

エンジンの音と共に


「きゃあぁぁあああーー」

うしろから、すごい声。


「あははー、
朝から元気だねーちよは」

なんて言っても、

なんも聞こえてない千頼はぎゅっと、俺の腰に捕まるだけ。

⏰:09/08/13 23:24 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#119 [七瀬]
 
 
信号が赤に変わると、
千頼はやっと顔を上げた。


「‥死ぬかと思った」

「おーげさ」


「カズの運転が荒いからじゃんっ!」

「だって、ちよが遅刻遅刻って、鬼みたいな形相で言うから、急がないとと思って」
 

⏰:09/08/13 23:26 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#120 [七瀬]
 
 
「それは、カズがいつまでも寝てるから‥‥って!
鬼みたいな形相って、なによ!"鬼みたいな"って!」


「‥ほんと朝から元気ありすぎ」

ひとり、
クスッと笑った瞬間、


「さっきから聞いてん‥」

青に変わった。
 
 

⏰:09/08/13 23:26 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#121 [七瀬]
 
 
「いやああぁああ!!!」


‥ほんと、

どっから、そんな
すごい声出てくんの。




俺の融通利かない彼女、
かわいいでしょ。
 
 

⏰:09/08/13 23:27 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#122 [七瀬]
 
 
「着いたよ」


まったく‥困ったもんだ。

「つーいーたーよ!ちよ」

すっかり意気消沈の千頼。


ちょっといじめすぎた?




「‥はよ」
 
 

⏰:09/08/13 23:28 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#123 [七瀬]
 
 
「あ、おはよ!陽!」

ぐったりしていた
千頼がいきなりピン!ってなった。


「はるー、聞いてよー!」


――ちらっ

‥んだよ。


陽は、言いたいことがあるように、視線を送る。
 

⏰:09/08/13 23:29 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#124 [七瀬]
 
それを

早く言えよ!とイライラする自分も入れば、


聞くのが怖い自分もいる。



「‥あ〜、情けねぇ‥」


嘘が多くなるほど、
臆病になっていく。

自業自得。
 

⏰:09/08/13 23:29 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#125 [七瀬]
 
 
「カズ?なにぼぉーっとしてんの!行こっ!」

「あ‥うん」


いま、目の前にいる千頼は俺の考えてることなんて、夢にも見てないだろう。


「ほら、かず‥」


「わかったから」
 

⏰:09/08/13 23:32 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#126 [七瀬]
 
 
 
あ、やば。


「‥先、行ってるねっ」






つい冷たく
当たってしまった。
 
 

⏰:09/08/13 23:33 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#127 [七瀬]
―――――――――
――――――
―――


「おめ!」

席に座ると、
多果子が肩を軽く叩いた。


「あ‥多果子‥」

「どうしたの?そんな顔して‥」

不思議そうにあたしの顔を覗き込む多果子。
 

⏰:09/08/13 23:34 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#128 [七瀬]
 
そりゃそうだよね。

昨日は、あんなに
のろけてたんだもん。


「どうしたの?」

それが今では、こんなに
テンションダウン。


「ん、なんでもない」

不思議に
思わないはずがない。
 

⏰:09/08/13 23:34 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#129 [七瀬]
 
「‥なんかあったの?あそこの王子さまと」

なんでもないと言ってるのに、言う多果子。

指差す先には、

いま、教室に入ってきたという感じの、カズと陽。


「‥ほんとにあたしでいいのかな」

ぽつり。


ほんとに、ぽつりと言った。 

⏰:09/08/13 23:36 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#130 [七瀬]
 
聞こえてただろう多果子はなにも言わず、ただあたしを見るだけだった。



【わかったから】


「はぁ‥」

カズのばか。


あんな態度しなくても、
いーじゃん。
 

⏰:09/08/13 23:36 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#131 [七瀬]
―――――――――
――――――
―――


「ちょっと中原」


休み時間、いつもの
野郎たちとバカ言ってたら

うしろから、俺を呼ぶ声。


「‥‥」

一瞬だれだか、
わかんなかった。
 

⏰:09/08/13 23:37 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#132 [七瀬]
 
 
えーと。


いつも、千頼と絡んでる女‥‥だよな。


――"タカコ"がねー

――ごめん。その日、
"タカコ"と遊ぶんだぁ

――聞いて聞いて!
"タカコ"の彼氏がねぇー


タカコ!!
 

⏰:09/08/13 23:38 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#133 [七瀬]
 
そうそうそうそう!
タカコだ!タ・カ・コ!!浜口タカコ!!!

千頼が、いつも話してたことを頼りに名前を思い出した。


「なに?‥浜口さん‥‥」

「‥‥‥」


痛い。
痛い痛い‥。

なに、その信じられない!というような目。

⏰:09/08/13 23:39 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#134 [七瀬]
 
 
「‥‥"浜野"なんだけど」


‥‥‥は。


「‥は‥ははははは‥」

笑うしかなかった。

釣り上がった目、
への字の口‥。


苦笑いするしか‥。
 
 

⏰:09/08/13 23:40 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#135 [七瀬]
 
 
「はぁ‥名前なんて、どうでもいいんだった」

ふぅ、と息を吐き出す、
浜野。


「こっち来て」

「え、なに!?ちょっと!」

俺は、腕を引っ張られ、
さっきも来た屋上へ連れていかれた。
 

⏰:09/08/13 23:41 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#136 [七瀬]
 
 
ふわあっと、風が吹く。


「で?なんの用かな、浜野さん。告白なら悪いけど‥」

「千頼のことよ」


真剣なようすの浜野。

どうやら、俺のジョークにノル気も聞く気もないらしい。
 

⏰:09/08/13 23:42 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#137 [七瀬]
 
「はぁ‥またそれかよ。どいつもこいつも‥」

まぁ、
予測はしてたけどね。


「"どいつもこいつも"ってどういうこと?」

「そのまんまだよ。浜野さんも聞きにきたんだろ?」

風のいたずらで、
髪が乱れる。


「"千頼と本気で付き合うのか"って」

⏰:09/08/13 23:43 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#138 [七瀬]
 
大きく目を開いたかと、
思いきや

「‥フフッ‥‥それなら話は早いわ」

また真剣な
目付きをする浜野。


「で、どうなの?本気なの?」

答えは決まってる。


「本気だよ」

俺は、即答した。

⏰:09/08/13 23:44 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#139 [七瀬]
 
 
「じゃあ」

浜野の目の真剣みが増す。


「千頼にあんな顔させないで」

俺は、思わず目を反らしてしまった。

「どういうつもりかは知らないけど、そう言った以上は、きちんと千頼を幸せにしてよ」

浜野のスカートもひらひらと揺れている。

⏰:09/08/13 23:45 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#140 [七瀬]
 
「それでなくても、千頼はあんたに10年も振り回されてきたんだから」

いつのまにか、風は止んでいた。


「わかってるよ」

さっきも同じこと言われて内心イライラしていた。


「んなこと、あんたに言われなくても、十分わかってっから」
 

⏰:09/08/13 23:45 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#141 [七瀬]
 
「じゃあ、二度と千頼にあんなこと言わせないで」

「ん」

"あんなこと"なんて、聞かなくてもだいたいわかる。

じゃなきゃ二回もこんなとこ、呼び出されないだろ。


「約束よ。中原和希」


――パタン―

浜野は、さっさと屋上から出ていった。

⏰:09/08/13 23:46 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#142 [七瀬]
 
 
まぁ、まだマシか‥。

ははっ‥さっきは
尋問だったもんな。



でも俺、さっきの
気付いちまったぜ。





陽、千頼が好きなんだな。 
 

⏰:09/08/13 23:47 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#143 [七瀬]
―――――――――
――――――
―――

「おい、和希」

朝のSHRが始まる前、

「ちょっと」

陽に呼び出された。


わかってた俺は、さっき浜野に呼び出されたときとは違って、すんなりと着いていった。

んで、連れてこられたのが今いる屋上ってわけ。

⏰:09/08/13 23:48 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#144 [七瀬]
 
 
「昨日も聞いたけど」

陽は、念を置いた。


「お前、本気で葉山と付き合うのか?」


―ああ、やっぱり。

俺は冷静だった。


「うん」

あっさりとうなずいた。

⏰:09/08/13 23:49 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#145 [七瀬]
 
 
「止めとけって言ったろ」


あくまで、陽も冷静だった。

ってか、いつもの
クールな陽だった。


まだこのときは―‥


「俺の勝手じゃん。そんなの」

あー‥まぢ感じ悪ぃ、俺。 

⏰:09/08/13 23:50 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#146 [七瀬]
 
 
すると、
陽に少し変化があった。

「そんなので、葉山を傷つけんのかよ!」


顔が少し赤い。


これには驚いた。

俺と陽は、小さいころからの仲だけど、こんなに感情的なコイツ、見たことがなかった。
 

⏰:09/08/13 23:50 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#147 [七瀬]
 
俺が驚いた目で見ているのに気付いたのか、少し落ち着きを取り戻す陽。


「とりあえず、切れよ」

「は?」

「東京の女。さっさと終わらせろ。葉山のこと、本気なら」


俺は黙ったまま。


「なんか言えよ」

⏰:09/08/13 23:51 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#148 [七瀬]
 
なにも言えない。
言えないんだ、俺‥。


「和希」

低い声が、
より一層低くなる。


「かずき‥っ!!」

間に流れる空気。
なんだこれ。


重すぎだろ。
 

⏰:09/08/13 23:52 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#149 [七瀬]
 
 
「‥わかったよ」

今まで見たことないコイツの剣幕に了承するしかなかった。


「絶対、だからな」

「ああ‥。絶対だ」


そういうと、
とりあえず満足してくれたみたいで、二人で教室に戻った。

⏰:09/08/13 23:53 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#150 [七瀬]
 
 
陽、ごめん。
俺、切れそうにない。


浜野、ごめん。
俺、約束守れない。



千頼‥ごめん。

俺‥



春なのに、吹く風は冷たかった。
 

⏰:09/08/13 23:54 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#151 [七瀬]
―――――――――
――――――
―――


教室に戻ると、


「遅刻だぞー」

最悪‥。


「すんません」

とりあえず謝って、
席に着いた。
 

⏰:09/08/13 23:55 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#152 [七瀬]
 
 
右斜めに目を向けると、
千頼と目が合った。

‥が、すぐに反らされた。


イライラは募るばかり。

朝から、おんなじこと
二回も言われるし、

千頼からも避けられるし

授業もつまんない。


まぁ、ぜんぶ自分のせいだけど。

⏰:09/08/13 23:56 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#153 [七瀬]
―――――――――…


‥‥ん?


あ、終わったのか。

休み時間を告げるチャイムが鳴ったことに、今さらながら気付いて、体を起こす。

「ふぁ〜ああ‥」

大きなあくび。

30分ほど眠ったからか、ちょっと気持ちが良かった。

⏰:09/08/13 23:57 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#154 [七瀬]
 
 
自然と千頼の席のほうへと目が行ってしまう。


そこには、一時間ほど前に見せた顔とは正反対に笑う浜野と千頼。

ぷんぷん起こってた浜野は白い歯を見せて、

悲しそうな顔してた千頼は自慢の笑くぼを見せながら


笑っている。
 

⏰:09/08/13 23:58 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#155 [七瀬]
 
 
女って、よくわかんね。


ぼんやりと、そんなことを思いながら、再び夢の世界へ飛び込もうとしたとき

キーンコーン
カーンコーン…


知らね。このまま寝よっ。


そうやって、また顔を伏せたのに‥

――バコっ―

⏰:09/08/13 23:58 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#156 [七瀬]
 
 
「いてっ!‥なにすんだよっ!」

顔を上げると


「次、移動教室だよ‥」

千頼が。


「立って。カズ‥」


――ガタ―

なにも言わず、立ち上がって教室を出た。

⏰:09/08/13 23:59 📱:N703iD 🆔:HkAdbfH.


#157 [七瀬]
 
 
あぁ〜‥またやっちまったよ、俺。

ってか、せっかく千頼が言ってくれたのに、今度は、無視かよ‥。

ますます感じ悪い。


ただ千頼の顔見ると、

さっきの陽や浜野の言ってることが頭の中を回る。


そして、千頼にあんな態度取ってしまう。

⏰:09/08/14 00:00 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#158 [七瀬]
 
 
‥次、移動どこだっけ。
忘れた。



ま、いっか。

どうせ筆箱すら、持ってきてないし。


サーボろ‥‥



「‥っ、カズっっ!!!」 

⏰:09/08/14 00:01 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#159 [七瀬]
 
 
振り返ると、


「ちょっと!
 待ちなさいよっっ!!」

千頼が、もんすごいスピードで駆けてきた。


直感で、「まずい!」
そう思った。


――ハァハァっ‥―

息を整えながら、
千頼は、こっちを見る。

⏰:09/08/14 00:02 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#160 [七瀬]
 
逃げる間もなかった。


「ちょっと!
あたしがカズになにしたって、いうのよ!
さっきから‥あたしを避けてるみたいだけど‥‥っ!!」

一気に吐き出す千頼。

「言いたいことあるなら、はっきり言いなさいよっ!このあほぉーーっっ!!」

強気な態度を見せながらも目に涙が溜まっているのが、見えた。

⏰:09/08/14 00:02 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#161 [七瀬]
 
 
「ちよ‥」

そうやって、
手を出したが‥


――パシっ―

払いのけられる。


「‥ぅっ‥カズっ‥カズはほんとにあたしで‥よかったの‥?」


まさに、半泣き状態。
 

⏰:09/08/14 00:03 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#162 [七瀬]
 
 
――ぎゅっ―


「‥っ‥いやっ‥いやいや!離してっ‥!!」

抵抗する千頼を余所に、
抱きしめた腕の力を強くした。


「‥離して‥ってばぁ‥」

「やだ」


抵抗する力が、だんだん弱まってくる。

⏰:09/08/14 00:04 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#163 [七瀬]
 
 
「‥ぅっ‥っ‥ぐず‥」

そして、千頼はとうとう
泣いてしまった。


「よかったよ。いいに決まってんじゃん。
ってか、ちよじゃなきゃ、やだし。俺」


「‥うぅ‥じゃあ‥なんで冷たくすんの‥っ」

どんどんと弱い力で
俺の胸を叩く千頼。

⏰:09/08/14 00:05 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#164 [七瀬]
 
 
「‥‥‥‥」

「‥なん‥で‥っ」


「‥ごめん」

ごめん、ちよ。


千頼、ごめんな。


「‥ヤキモチ、妬いてた」


嘘、ついてごめん。
 

⏰:09/08/14 00:05 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#165 [七瀬]
 
 
「‥ふえっ?」

千頼は、真っ赤な目で、俺の顔を見上げた。


「いやぁ‥ほら。
今朝、学校着いたとき、ちよ、あんなにぐったりしてたじゃん?」

嘘って、案外すらすら出てくるもんなんだな。

「なのに、陽が来た瞬間、千頼ピン!ってなったから‥‥ヤキモチ妬いちゃったよ」

⏰:09/08/14 00:07 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#166 [七瀬]
 
 
「なにそれ」

え、なんか変だった?


「心配して損したぁ‥」

そこには、心底安心したような千頼の顔。


「‥ふふっ」

「なに?」

「いやぁ、なんかカズがヤキモチ妬いてくれるなんてうれしいなぁ‥と思って」

⏰:09/08/14 00:07 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#167 [七瀬]
 
ふふふと、
幸せそうに笑う千頼。


――ズキっ


また‥まただ。

嘘が増えて
増えて増えて――



心臓に穴を増やして、
大きくする―――
 
 

⏰:09/08/14 00:08 📱:N703iD 🆔:xB0MIIes


#168 [七瀬]
 
 
No.5 線香花火の行方
 
 

⏰:09/08/20 15:35 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#169 [七瀬]
 
 
プルルルルルル…

夜、電話が鳴った。

あたしがお風呂から上がり寝転がってぱらぱらと雑誌をめくっているときだった。

あいにく、ママは友だちと食事、パパは残業で遅くって、だれもいない。


こんなときに、だれよー。

そんなことを思いながら、電話に出た。

⏰:09/08/20 15:36 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#170 [七瀬]
 
 
「もしもし」

「葉山?俺、前田」


電話の主は、陽。

「どうしたの?こんな時間に」


現在、深夜0時。

いくら明日が日曜日だからって、なにか用がない限り、家の電話なんて、かけてこないだろう。
 

⏰:09/08/20 15:37 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#171 [七瀬]
 
 
「いや‥いま暇?」

「暇もなにも‥。こんな時間に用事あるほうが、変でしょ」

すると、陽は「そうだな」と少し笑った。


「いま花火してるんだ。
お前んちの向かいの駐車場で」

「‥まだ春だよ」

すると、また陽は「そうだな」と笑う。

⏰:09/08/20 15:38 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#172 [七瀬]
 
 
「‥実は、今日和希んちでみんなで酒パしてたら、
酔っ払った和希が"花火やろー"とか言って、押し入れから出してきたんだよ。去年の残ったやつ」

「え、カズいんの!?」

「うん。べろべろに酔って、お前の名前呼んでる。
ってか、叫んでる。まぢ近所迷惑」

これには、あたしも
声を出して笑ってしまった。
 

⏰:09/08/20 15:39 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#173 [七瀬]
 
「迎えにきてくんない?」

「ふふ、わかった」

「‥んで」

「えっ?」


「ついでに花火、見においで。いちばんおっきい打ち上げ花火、残してあるから」

「‥楽しみにしてるね」

電話を切った。
 

⏰:09/08/20 15:39 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#174 [七瀬]
 
 
髪をドライヤーで半乾きにして、スエットの上から、いちまい薄いの羽織って、家の鍵閉めたのを、何回もチェックして、外に出た。

夜だからか、春にも関わらず、ひんやりとしている。


「はーるー!」

駐車場に2つの影を見つけて、駆け寄ると、

「しーっ」

人差し指を口に当てる陽。

⏰:09/08/20 15:41 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#175 [七瀬]
 
あたしが完全に陽の元へ迎うと、小声で陽は言った。

「寝た」

「えー、せっかく来たのにぃ」

もちろん、あたしも小声。


「あれ?他の連中は?」

バイクに座って寝ているカズと、あたしの目のまえにいる陽しか見当たらない。 

⏰:09/08/20 15:42 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#176 [七瀬]
 
「帰らせた。あいつらも、かなり酒入ってたし。
何匹も、あんなのがいたらさすがに、俺も手ぇ追えないよ」

と、バイクで熟睡しているカズを指差した。


「ははっ‥それもそうだね」

「だろ」


あ、星‥。
 

⏰:09/08/20 15:43 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#177 [七瀬]
 
 
「なんか、ごめんね」

昨日は、曇ってて見えなかった星たちが、あたしたちを照らしてくれる。


「ん。いーよ、別に」

陽は相変わらず、だ。


「ありがとう」

「ん」

なにが"相変わらず"なのかというと、

⏰:09/08/20 15:44 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#178 [七瀬]
 
「今日は星が見えるねぇ」

「ん、だな」

「陽もお酒、けっこう飲んだの?」

「いや、あんま」



"相変わらず"

しゃべらない、ってとこ。 
 

⏰:09/08/20 15:45 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#179 [七瀬]
 
でも、けっしていやじゃない。

むしろ、カズや多果子とはいっしょにいても感じない――失礼だけど―

安心感がある。


「する?花火」


こう、なんか‥癒し系?


「うん!する!」
 

⏰:09/08/20 15:46 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#180 [七瀬]
 
 
ふつうの花火が5本、
線香花火が2本。

そして、打ち上げ花火が
一つ残してあった。


「どれにする?」と聞きながらも、すでに手に打ち上げ花火をにぎってる陽。

「お楽しみは、最後に残しとかなきゃ」

そう言って、ふつうの花火を取った。
 

⏰:09/08/20 15:47 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#181 [七瀬]
 
 
火を付けると、

シャーーっと音を立てて、飛び散る花火。


「きゃー!見て見て、陽!」

ひさびさの花火に、あたしは、はしゃいだ。


「陽も、やりなよー!」

「俺はいい。さっき和希にさんざんやらされたから」

そう言って、首を横に振る。

⏰:09/08/20 15:47 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#182 [七瀬]
 
 
残りの4本も、
すべてあたしが楽しんだ。

陽は、見てるだけでも
十分楽しそうだった。


「次、これは?」

陽が差し出してきたのは、線香花火。


「あ、陽。勝負しよーよ。 これで」

「勝負?」

⏰:09/08/20 15:48 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#183 [七瀬]
 
「うん。どっちが長くできるか勝負!」

「俺はいーよ。勝負なんて」

あたしの提案が、あまりに子ども染みていたのか、


「じゃあ‥負けたほうが
勝ったほうの言うこと、
なんでも聞くことにしようよ!」

バカにしたように笑う陽にムキになってしまった。
 

⏰:09/08/20 15:49 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#184 [七瀬]
 
 
――ぴくっ

すると、陽に少し変化が。


「なんでも?」

「な‥なんでも!」

陽の顔が、いつにもなく
真剣で、たじろぐ。


「ん」

そうやって、
線香花火を渡される。

⏰:09/08/20 15:50 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#185 [七瀬]
 
 
「さ。さっさと始めよ、
 勝負」


いまさら撤回なんて
できない。


珍しく怪しげに口角を上げる陽から、

勢いよく、
線香花火を奪い取った。


静かな夜に、
静かにゴングが鳴った。
 

⏰:09/08/20 15:53 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#186 [七瀬]
 
 
2つの線香花火が
二つの顔を照らす。

線香花火なんて、するの
いつ以来だろう。


ジリリリリ…

この音を最後に聞いたのはいくつだったろう。


なつかしい‥。

なつかしさと同時に
あることが思い出された。 

⏰:09/08/20 15:54 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#187 [七瀬]
 
「ね、陽」

「ん」

「覚えてる?」

「なにが」

「小学生のとき、流行ったやつ」

陽は、わからないというように、あたしを見る。


「あれだよ、あれ!」

あたしは、小さく灯った
火を見て、言った。

⏰:09/08/20 15:55 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#188 [七瀬]
 
 
「ほら、あったじゃん。
カズが引っ越してくる前に流行った恋占い。小2の夏に!」

「ああ‥」


「線香花火がだれよりも
いちばん長く付いてたら、恋が実るってやつ」

陽は、黙って
あたしの話に耳を傾ける。 

⏰:09/08/20 15:56 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#189 [七瀬]
 
「あたしは、当時はあんま興味無くて、やんなかったけど、みんな夢中でやってたなぁ」

思い出すと、なつかしさから、顔が緩む。


「線香花火をつけては消えて、つけては消えて‥。
今のあたしらみたいに、張り合ったよね」

「おかげで、いちばん地味な線香花火が、真っ先になくなった、よな」

陽は、思い出したようす。

⏰:09/08/20 15:56 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#190 [七瀬]
 
「そうそう!」

みんな興味ないふりして、三回はやってたなぁ‥。

母校のグランドで小さいころの、あたしたちが花火をしているのが頭に浮かんだ。


「‥俺もやったなあ」

ぽつっと、陽は
衝撃的なことを言った。


「ええ!陽が!?」

⏰:09/08/20 15:58 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#191 [七瀬]
 
 
「ん?ん」

陽は、なんでもないように言った。


「好きなひといたの!?」

でも、あたしは驚きの驚きの驚きでいっぱい。


そりゃあ、もう10年以上まえだし、陽にだって好きな子くらいいただろう。
 

⏰:09/08/20 15:58 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#192 [七瀬]
 
だけど、陽は昔から
こんなのだし‥。


なんてゆーか‥わからないけど、

あの無口な陽が、
こんなになつかしそうに
優しい顔で言うんだから


「へー‥
 なんか意外だなぁ‥」


嘘じゃないんだなぁ、って。 

⏰:09/08/20 16:00 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#193 [七瀬]
 
 
「ふっ‥ははっ」

ひとり笑うあたしに、陽は不思議そうな顔をする。


あのぶっきらぼうな
興味無さげな顔で

小さい灯火を見つめたり、

何度も何度も、
恥ずかしそうに、線香花火を取りに行くすがたを
想像してしまったのは


陽には、ないしょ‥ね。

⏰:09/08/20 16:00 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#194 [七瀬]
 
 
「あ」

あたしの線香花火の火が
小さくなっていく。


「消えないで‥っ」

と言った瞬間、
シューっと消えた。


「あ〜あっ!
 消えちゃった‥」

あたしの線香花火からは、煙が出ているだけだった。

⏰:09/08/20 16:01 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#195 [七瀬]
 
 
「俺の勝ちだな」

まだ光る花火を見せて
陽は言う。


「あー、負けちゃった。
仕方ない。なんでも言うこと聞くよ」

先端が灰になった花火を、バケツに入れた。


「なんか言って」
 

⏰:09/08/20 16:05 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#196 [七瀬]
 
 
静かな夜に、沈黙が流れる。

「陽?」

「ん」

「なんか言ってよ。約束通り言うこと聞くから」

「ああ‥」


また黙り込む。

「は‥」

「じゃあ」

⏰:09/08/20 16:07 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#197 [七瀬]
 
あたしの言葉を遮る、
その口調が硬い。


「じゃあ?」

「じゃあ‥」


正直、あたしは興味があった。

陽とは、カズや多果子よりも長い付き合いだけど、
あたしに頼みごととか、
してきたことなかった。


なんて、言うんだろう。

⏰:09/08/20 16:08 📱:N703iD 🆔:zyDZj5Sc


#198 [あ-ちャん]


今全部読みました!!
めっちゃ面白いです。
これからも頑張って下さいヾ^ω^ノ*

⏰:09/08/22 00:15 📱:W65T 🆔:hcTY0kHE


#199 [髑髏-ドクロ-]
気になります(^.^)

頑張ってください⊂(^ω^)⊃

⏰:09/08/22 03:09 📱:SH705i 🆔:pMY0qwxA


#200 [七瀬]
>>198 あ-ちャんさん

わー\(^O^)/
ぜんぶ読んでもらって
光栄です!(^ω^)

マイペース更新ですが、
がんばります
 

⏰:09/08/22 11:36 📱:N703iD 🆔:UBtSTtrg


#201 [七瀬]
>>199 髑髏-ドクロ-さん

すいません><

気になるとこで、
止めちゃいました。笑


当分更新できないですが、どうか楽しみに待っててくれたらなぁ、とお願いします(*^^*)
 

⏰:09/08/22 11:41 📱:N703iD 🆔:UBtSTtrg


#202 [七瀬]
 
 
No.6 願い
 
 

⏰:09/08/29 22:28 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#203 [七瀬]
 
 
ドクンドクン‥―

胸の鼓動を抑えることが、できなかった。


「じゃあ」


"なんでも"、なんて。

俺の願いは一つに決まってる。


そのために、俺は千頼にとって、悲しい頼みをする。 

⏰:09/08/29 22:29 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#204 [七瀬]
 
 
喉に、すぐそこに
出掛かっているのに、

いざ言葉に出そうとしたらなにかが邪魔をする。

脈がドクドクと
波打っているのが分かる。


俺が黙っているあいだ、
千頼は不思議そうに、
目をくりくりさせている。


意を決しって、口を開いた。 

⏰:09/08/29 22:29 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#205 [七瀬]
 
 
「‥て」

「え、なんて?」


「貸して、充電器」

「は?」

「いや‥携帯の充電なくなっちまって」



‥やっぱりダメだ。
言えない。
 

⏰:09/08/29 22:30 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#206 [七瀬]
 
 
「なにそれー!もっとすごいお願いしなさいよぉ!」

千頼はけらけらと笑う。


「いいだろ、別に。和希とは、合わねーんだよ。機種」

「もぉー!」

千頼は、
パンパンと俺の肩を叩く。


言えるわけないだろ。
こんなに笑ってる千頼に。 

⏰:09/08/29 22:31 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#207 [七瀬]
 
 
「じゃあ、うち来る?」

千頼は立ち上がった。


「うん」

俺も立ち上がろうとしたとき、「あ」思い出したように声を発する千頼。

「ママ帰って来てるかも。家、電話してみるから、待ってて」

と言って、
携帯を取り出した。
 

⏰:09/08/29 22:32 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#208 [七瀬]
 
 
5メートルほど先で、電話している千頼の背中を確認して、

目線を
右後ろのバイクへやった。

グースカと寝てる和希は
起きる気配もしない。


――和希

頼むから、千頼に悲しい顔させないでくれ。

千頼が、欲しい
なんて言わない。

⏰:09/08/29 22:32 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#209 [七瀬]
 
 
ただ、俺は、


俺の願いは‥――



「はるーっ!ママまだ帰ってきてないみたいだから、うちおいでっ!」

「‥わかった」


胸の内をしまって、
千頼の家へと向かった。

憎い親友を抱えて。

⏰:09/08/29 22:33 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#210 [七瀬]
――――――――――‥


「さ、入ってー。
 ちらかってるけど」

ひさびさに踏み入れる千頼の家には、女の子独特の
甘いにおいでいっぱいだった。


「和希‥どこ置けばいい?」

「あー、そうだねぇ。
悪いけど、カズはあたしの部屋に運んでくれるかな」 

⏰:09/08/29 22:34 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#211 [七瀬]
 
「わかった。お前の部屋って、二階に上がった右のつきあたりだよな」

「うん。そうだよー。
悪いけどよろしくね。
あたし、リビングでお茶入れてくるから」

「ん。了解」


階段を上がった。

一歩一歩踏みしめるたびに香りは濃度を増す。

⏰:09/08/29 22:35 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#212 [七瀬]
 
 
何年ぶりだろう千頼の部屋は、幼いころ来たときと、あまり変わってなくて、
緊張した。


「‥よいしょっと」

黄色いベッドに、和希を寝かした。


俺のほうが、千頼と出会った期間は早かったのに、

こいつのほうが、きっと
この部屋に来た回数は多い。

⏰:09/08/29 22:35 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#213 [七瀬]
 
このベッドの上で、
千頼を抱き締めて

キスして

押し倒して


そして―――



むしゃくしゃする。


ここで寝ている和希や
いま、下にいる千頼が

すごく遠い存在に感じた。

⏰:09/08/29 22:36 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#214 [七瀬]
 
 
「お待たせ!」

バーンと、お盆片手にドアを開けた千頼。


「陽?」


ああ、俺。


―――嫉妬してる
 
 

⏰:09/08/29 22:37 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#215 [七瀬]
 
 
「‥なんでもない。
 葉山、充電器貸して」


簡単に、
下の名前で呼べる和希―

何度も、千頼の乱れるすがたを見てる和希――

それでも、千頼を大切にしない和希に―――


嫉妬、してるんだ。
 

⏰:09/08/29 22:38 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#216 [七瀬]
 
「あ、うん」

引き出しのなかを探す千頼との距離は、さっきと1ミリも縮まっていなかった。


「あったぁ。はい陽」

「さんきゅ」


むしろ遠い。

さっきよりも、ずっと。


ずっと、ずっと――遠い。

⏰:09/08/29 22:38 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#217 [七瀬]
 
 
「陽がうちに来るの、めちゃくちゃ久しぶりだよね」

「ああ」

「昔はよく来たよねぇ。
遊びに来たり、ごはん食べに来たり!」

「ん‥」

「線香花火のことといい、なつかしいなー、ほんと」

「だな」


途切れてしまう、会話。

⏰:09/08/29 22:40 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#218 [七瀬]
 
 
それは、
めずらしいことじゃない。

いや、当たり前だった。
少なくとも俺にとっては。


だけど、

いつも流れてるような、
穏やかな沈黙じゃない。


どんよりとした空気。
 
 

⏰:09/08/29 22:40 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#219 [七瀬]
 
 
「陽?どうかしたの?」

たぶん、それは俺のせい。


「なんでもない」

相変わらず流れる沈黙。

千頼は、心配そうに
じっと俺を見ている。


――なにか話さないと。

柄にもなく、そう思った。 

⏰:09/08/29 22:41 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#220 [七瀬]
 
 
「‥‥帰るわ、俺」


そう思ったけど、なにも
思いつくはずなく、

沈黙に耐えられなくなって出されたお茶に手をつけず立ち上がった。


「え、充電、したばっかだよ?」
 

⏰:09/08/29 22:42 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#221 [七瀬]
 
 
「ん?ああ‥いいよ。
 帰って、うちでするわ」

「そう?」

携帯を充電器から、外した。

ピピッと音がする。


「和希は、このまま寝かせてやっといて。明日は学校も休みだし」

二人で、
ゆっくりしたらいい。
 

⏰:09/08/29 22:43 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#222 [七瀬]
 
「うん、わかった。迷惑掛けてごめんね、ほんと」

「いや、大丈夫。今日はありがとな」

「ううん‥こちらこそ。
 花火楽しかった」


あ、

「‥打ち上げ花火」

完全に忘れてた。


「悪い‥結局できなかったな」

⏰:09/08/29 22:44 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#223 [七瀬]
 
「ううん!気にしないで。また夏にやろうよ!今度はみんなで」


みんなで、か。

「‥そうだな」

俺、いますごい
情けない顔してると思う。


「おやすみなさい」


おやすみ、と言って
部屋を出た。
 

⏰:09/08/29 22:45 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#224 [七瀬]
 
階段に足を踏み出すと
足音が一つ、寂しく響く。

来たときよりも、
千頼の香りは薄まったような、気がした。


靴に足を押し込んでいると

今度は、いつここに来れるんだろう、と思った。


ただの幼なじみの俺が、

和希のいる千頼の部屋に
ふたたび入れる日なんて、くるのだろうか。

⏰:09/08/29 22:46 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#225 [七瀬]
 
 
――カチャ―
ドアを開いた瞬間、


「はるっ!!」

振り向くと、
少し息の荒い千頼。


「きょ‥今日はほんとにありがと!」

「あ、うん」


驚いた。
 

⏰:09/08/29 22:46 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#226 [七瀬]
 
 
千頼が俺のために、こんな顔してくれるなんて。


「そ、それだけ!
 気を付けて帰ってね」

「うん」

「‥ばいばい」


最後に、
ばいばい、って笑った顔は

今まで見たなかで
最高の笑顔だった。
 

⏰:09/08/29 22:47 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#227 [七瀬]
 
 
 
千頼宅を
肌寒い外から見上げる。




――俺の願いは一つ。



千頼が
幸せになること、だ。


だから、
ずっと笑ってて。千頼
 

⏰:09/08/29 22:48 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#228 [七瀬]
―――――――――…


陽、なんか変だった。
なにか、あったのかな?



「んー‥ちよ‥?」

カズがベッドから、
上半身だけ起こした。


「あ、起きた?」

「‥‥ここどこ‥」

目をこするカズ。

⏰:09/08/29 22:49 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#229 [七瀬]
 
 
「あたしの部屋だよ」

「そっかあ‥水、ほしい」

甘えた声で言うカズ。


時計の針は、もう1時30分を差している。


「わかった。リビング行ってくるね」
 
 

⏰:09/08/29 22:49 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#230 [七瀬]
 
水の入ったコップを持ってカズの待つ部屋に戻る。


「はい。水」

「ありがと‥」

カズはコップを手に取り、ごくごくと喉を鳴らして、水を飲んだ。


「‥あ〜っ!すっきりした。ん?誰か来たの?」

机の上に二つコップが乗ってるのを見て、カズは首を傾げた。

⏰:09/08/29 22:50 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#231 [七瀬]
 
 
「ああ。陽だよ」

「‥陽?」

「うん!酔っ払たカズを運んでくれたんだよ!
ちゃんと、お礼言っといきなさいよー?」

「‥ああ‥わかった」


黙るカズ。


なんか、さっきの陽みたい。 

⏰:09/08/29 22:51 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#232 [七瀬]
 
 
「‥カズ?」

今日、カズも陽も変だよ?



「‥っわあ!!
 ちょっとカズ!??」



あたしの気のせい?

二人とも、
ただ酔っ払ってるだけ?
 
 

⏰:09/08/29 22:53 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#233 [七瀬]
 
 
「どうしたの?急に」

「‥なんか、ぎゅうーってしたくなった」

カズは、ベッドに座ったまま、あたしを抱き締めた。


「‥ダメ、かな?」

耳元で、甘くささやく。


「‥っ‥‥ママたち‥帰ってくる、かも‥」
 

⏰:09/08/29 22:53 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#234 [七瀬]
 
「ちゅうだけ‥だめ?」

そんな声で、こんなところで言われたら


「だめ‥じゃない」

いやなんて、言えない。


「ありがと」


大きな手が、
あたしの頬に触れる。

――ちゅ
 

⏰:09/08/29 22:54 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#235 [七瀬]
 
 
「‥ん‥はぁっ‥カズ‥」


口内を荒らされて、
なにも考えられない。

激しく、長いキスだった。



――カズ、お願い

ずっと傍にいてね、ずっと。


18歳、まだ幼かったあたしの願い。
 

⏰:09/08/29 22:55 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#236 [七瀬]
 
 
 
カズはこのとき、
なに願っていたのかな?


その茶色い瞳に、なにを映していたのだろう?




それは、
大人になった今でも

わからない。
 
 

⏰:09/08/29 22:56 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#237 [七瀬]
 
 
少し時間ができた
更新しました(*´`*)

よかったら感想下さい♪
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/08/29 22:58 📱:N703iD 🆔:k2/mIJPU


#238 [七瀬]
 
 
No.7 種
 
 

⏰:09/09/03 20:35 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#239 [七瀬]
 
 
「頭いた〜い!」

「‥はぁ。昨日はいったいどれだけ飲んだのよ‥」


翌日、

雲が太陽に隠れて、
ちょうどいい気温。


せっかくのお出かけ日和
なのにカズったら、まったくもう‥。

「頭ん中、
 ギンギンする〜!」

⏰:09/09/03 20:36 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#240 [七瀬]
 
「‥しょーがない。どっか行きたかったけど、今日は家でのんびりしますか」

「さんせいさんせーい!」

カズは両手を上げながら、バンザイする格好になる。


「今日はねー。一日中ちよとイチャイチャすんのー」

どうやらカズは、
昨日のキスだけでは足りないらしい。

けっこうアルコール
入ってたくせに。

⏰:09/09/03 20:36 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#241 [七瀬]
 
 
「はいはい。でもその前にシャワー浴びてきたら?」

「ちよ、なんかエロい‥」

「そういう意味じゃない!昨日あのまま寝たでしょ‥お風呂も入らないで!」

もー、頭の中は、そういうことしかないのか!


「わかったわかった」

カズはしぶしぶと言った
感じでベッドから立ち上がる。

⏰:09/09/03 20:38 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#242 [七瀬]
 
「じゃー、
 お風呂借りまーす」

そうやって、
ドアノブに手を掛けた。


その瞬間、

「‥上がったら、昨日の続き、いっぱいやろーねー。覚悟、しててよ?」

ニヤッて八重歯を見せた。


一気に体温が上昇するのがわかる。
 

⏰:09/09/03 20:38 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#243 [七瀬]
 
 
「じゃーねー。
 ちよりちゃん?」

パタンとドアが閉まってもあたしの温度は高いまま。


あたしもカズのこと、どうこう言えないんだよね。


だって、

やっぱりあたしも
カズを求めているから。
 
 

⏰:09/09/03 20:40 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#244 [七瀬]
 
 
「‥ああ〜っ‥もう!」

ワケのわからない衝動に
駆られて恥ずかしくなる。

それを紛らわすために、
枕に顔を押しつけた。



‥カズの匂いがする。


あたしを一瞬で心地よくさせるワックスの香り。
 

⏰:09/09/03 20:41 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#245 [七瀬]
 
それは、
あたしを安心させる。

カズがそばにいるようで、ドキドキする。

ずーっと、
こうしていたい。

ずーっと、
カズのそばにいたい。


今日も、あたしはあなたにずっきゅんなのです。

悔しいほどに。
 

⏰:09/09/03 20:42 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#246 [七瀬]
――――――――――…


「上がったよー!ちよ!」


まだ体から湯気が昇る。


「ちよ?」

暑い暑い。


「‥ったく」

熱い。

⏰:09/09/03 20:56 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#247 [七瀬]
 
 
そこには、

さっき
俺のいたベッドの上で

スースーと
寝息を立てる彼女。



「‥‥かわい‥」

その無防備なすがたに
思わず見とれてしまう。
 

⏰:09/09/03 20:56 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#248 [七瀬]
 
 
「ちーよ」

優しく呼びながら、
目に掛かる髪をそっと、
耳に掛けてやった。


「んー‥」

すると、小さく反応する。


それが、
俺の神経全てを刺激する。 

⏰:09/09/03 20:58 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#249 [七瀬]
 
 
「千頼‥好きだよ」


俺、幸せだなぁ。


ぷっくりとした唇に
自身の唇を近付けようとしたとき、

あるモノが目に入る。



【進路希望調査】

‥たしか、千頼は
進学するんだったよな。

⏰:09/09/03 20:58 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#250 [七瀬]
 
 
気になって、
机のそばに行ってみる。



「‥これ‥」


そこには、きれいな字で
消しゴムで消した跡もなく

はっきりと書かれていた。 

⏰:09/09/03 20:59 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#251 [七瀬]
 
俺は目を見開く。


なにかの
間違いであってほしい。

そう祈りながら、
何度も何度も見直した。


しかし、
そんな祈りも虚しく、

俺の目の前にあるのは


"D外国大学"

この5文字だけ。

⏰:09/09/03 21:00 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#252 [七瀬]
 
 
うそ、だろ?

これは夢なのだろうか。


体から、一気に熱が
引いていくのを感じた。



そんな俺を余所に、

ただ隣で眠る千頼の寝顔はとても幸せそうだった。

まるで、
さっきの俺のように。

⏰:09/09/03 21:00 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#253 [七瀬]
 
 
 
 
 
 
 
 
そこは
東京の大学だった。
 
 
 
 
 

⏰:09/09/03 21:01 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#254 [七瀬]
――――――――――…


「おっはよー」


いつもと同じ朝。

多果子は、いつものようにあたしにおはよー、とあいさつする。


「今日、これ提出だねー」

多果子は、それをペラペラと指で摘む。
 

⏰:09/09/03 21:02 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#255 [七瀬]
 
 
「ずいぶん迷ったけど」

多果子は、困ったとでも
言うように両手を広げる。


「多果子、就職?」

「うん。だよー」

「そっかぁ」


時間は確実に過ぎていて、

どうしようとも、目を反らせない現実があたしたちを直面していた。

⏰:09/09/03 21:04 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#256 [七瀬]
 
 
宮高は総合学科だからか、かなり高い就職率を誇る。

「正直、大学行くよりも、就職率いいじゃん?こっちのが」

でも数人の生徒たちは、大学、専門学校、短大へ進学する。


「‥まぁ、千頼みたいに、具体的にしたいことがあるなら、別だけどねぇ‥」

多果子は
苦笑しながら、言った。

⏰:09/09/03 21:05 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#257 [七瀬]
 
進学するのは、
かなりの少人数。

あたしは、
そのなかの一人。


ちなみに、
カズと陽も進学。

カズは親が大学行けって、うるさいから、とりあえず行くみたいなことを言っていた。

陽は、中学校か高校の
先生になりたいらしい。
 

⏰:09/09/03 21:06 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#258 [七瀬]
 
 
「んま、頑張って下さいよぉー。受験生!」

「もぉっ!止めてよー。
気ぃ重いじゃん!」


先生には、「葉山の成績で就職はもったいない!」
と言われたのと

英語が好きだから、私立の外国語学科にと決めた。

そして、これを機に
見知らぬ土地へ。

⏰:09/09/03 21:07 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#259 [七瀬]
 
 
「あれ?」

「どーした?千頼」


‥ない。

「ないないない!」

うそ!うそうそうそー!

「ない、ってまさか‥」

「進路希望調査!!」


うそでしょー!??
 

⏰:09/09/03 21:07 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#260 [七瀬]
――――――――――…


さて。


どーしよーか。


俺の手には、

【進路希望調査
3年5組28番 葉山千頼】

と記されたプリント。


‥やべーよな。
 

⏰:09/09/03 21:08 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#261 [七瀬]
 
 
早く返さないと。
千頼、困ってるよな。


今日、提出だし‥うん。
ぜったい困ってる。


でもなぁ‥。


「‥D外国大学」

「お前の成績じゃ
 100%、無理だな」
 

⏰:09/09/03 21:09 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#262 [七瀬]
 
 
「‥なんだよ」

「ってか、和希のいちばんの苦手科目じゃん。英語って」

そうやって、
俺の隣に腰掛けた陽。


「‥なんで、
 こんなとこ、いんだよ」

陽のことばを無視して、
逆に質問で返してやった。 

⏰:09/09/03 21:09 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#263 [七瀬]
 
 
「そうだな。お前がここに行きたいなら、死ぬほど勉強しなきゃな。
夏休みなんてなし。
‥いや、死ぬほど勉強しても無理だな、無理」

が、こいつも俺の質問を無視しやがった
―上にバカにした―。


裏庭は、じめじめしていて少し暗いけど、
誰も来ないので、屋上につづいて、俺の格好のサボり場なのに。
 

⏰:09/09/03 21:10 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#264 [七瀬]
 
 
「質問に答えろよ」

じろりと
目線を陽に向けると


「じゃあはじめに、俺の
質問に答えてくれるか」

俺の持ってた
プリントを奪われた。


「なんで、葉山の
進路希望調査を和希が持ってるんだ?」
 

⏰:09/09/03 21:11 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#265 [七瀬]
 
 
「‥‥えーと」

言い淀む俺に、


「葉山、さっき教室で、
ないないないー!って騒いでた」

容赦も情けもない。


「あの感じじゃ、葉山は
忘れたわけではない」

そうやって陽は、自身の額に人差し指を押しつけた。

⏰:09/09/03 21:12 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#266 [七瀬]
 
 
「俺の推測では‥盗まれたんだ。何者かによって」

陽は、深刻そうに、

そんでもって、大げさに、頭を振った。


「‥そして、
 犯人は和希。お前だ」


‥そりゃ、いまこの手に
持ってますからね。

俺は、ため息をついた。
 

⏰:09/09/03 21:13 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#267 [七瀬]
 
 
「昨日、葉山の家にいて、最も葉山に近付ける。
不自然さもなく。
よって‥」

「‥俺だよ、俺。犯人」

めんどくさくなって、
そう答えると、

陽はにやりと笑う。


「俺の推理は、まだまだ続いているんだ」

そう言って、
また探偵ごっこを始めた。

⏰:09/09/03 21:13 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#268 [七瀬]
 
 
「犯人は判ったところで、俺は動機について考えてみた。
犯人はなんのために、
葉山の進路希望調査なんて盗んだのだろう。
気まぐれか、
ただの愉快犯か。
はたまた、葉山のストーカーか‥」


陽はふだんクールだけど、こういう冗談が好きなヤツ。

ってか、千頼の
ストーカーって‥。笑

⏰:09/09/03 21:21 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#269 [七瀬]
 
「俺はありとあらゆる可能性を考えた。犯人になったつもりで。でも解らない」


俺は、こいつの
こういうとこが嫌いじゃない。


「でも、もう謎な解けた。解く鍵はこれだったんだ」

そうやって、指差す先。


でも、今じゃ
それも悪い冗談だぜ‥陽。

⏰:09/09/03 21:21 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#270 [七瀬]
 
 
「俺の推理はこうだ。
D外国大学。ここは東京都内にあるまあまあなレベルの大学。
犯人は葉山を東京に行かせたくなかったんだ。
そして、そこにも」

陽の差すプリントは、
少しくしゃくしゃになっていた。


「そして、なぜ行かせたくないのか。ここが肝心なところだ」
 

⏰:09/09/03 21:22 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#271 [七瀬]
 
一つ、呼吸する陽。

「その大学には、犯人が会わせたくないヒトがいる。葉山がそのヒトに会うのを、犯人は最も恐れていた」

そこで、
陽は口を告ぐんだ。

さらさらと吹く風が
俺らを包む。


「‥ちょっと無理あるんじゃね?その推理」

笑って言うと、
陽も少し笑った。

⏰:09/09/03 21:23 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#272 [七瀬]
 
 
「まー、お前にしちゃよくデキタ方だと思うけど‥」

そう言って、
俺は下を向いた。




「和希‥切れてないんだろ?」


それは、
とてもおだやかな声で

怒りも悲しみも、なにも漂わせてはいなかった。

⏰:09/09/03 21:24 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#273 [七瀬]
 
 
「世間は狭いっていうけど、やっぱり東京は人も多いし、よっぽどなことがない限り会うことなんてない。楽観主義なお前が、こんなに心配そうな顔してるなんて、大学が一緒なんだろうって思った」


陽は、俺のことを
よく知ってるんだな‥。

皮肉にも、こういうときに友達の大切さが感じられた。
 

⏰:09/09/03 21:25 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#274 [七瀬]
 
 
「でも、もうなにもないなら、会ったっていいじゃないか。しょせんは元カノなのだから。
‥でも、お前は心配で心配で仕方なかった」



その続きは、
また今度にしてほしいなー。

なんて思いながら、
ほどけた靴ひもを、ぼんやり見ていた。
 

⏰:09/09/03 21:26 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#275 [七瀬]
 
 
「なぜなら‥」

「そうだよ」

言い訳もなにもしない。

だって、ぜんぶこいつの
言うとおりだから。



「‥そうか」


なんで‥


「‥そんな顔すんだよ‥」

⏰:09/09/03 21:27 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#276 [七瀬]
 
 
陽の悲しげに笑った顔は、俺を困惑させた。


殴ってくれてもいいのに。

最低だって、
罵ってくれてもいいのに。


いや、そうしてくれ。



そんな瞳で見んな。
    メ
 
 

⏰:09/09/03 21:28 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#277 [七瀬]
 
 
「‥怒らないわけ」

「怒らない」

優しく静かに。
でも、はっきりと陽は言う。





「でも、もう引かない」


陽は立ち上がった。
 

⏰:09/09/03 21:28 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#278 [七瀬]
 
 
「俺は、ただ葉山に笑っててほしいだけ。
でも、いまお前には、
任せられないと分かった」


俺は、なにも言わず
ただそれを聞く。



「遠慮、しないから」


陽はそう言って校門前へと、戻って言った。

⏰:09/09/03 21:29 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#279 [七瀬]
 
 
ってか、あいつセコくね?

自分は、言うだけ言って‥なんかかっこいーじゃん。

あんな風に言われたら、
俺だってうなずくしか
できないし。

あの
良いとこ取りヤローめ。


ほんとは、もっと
‥責めてほしかった。


変な意味じゃなくってね。

⏰:09/09/03 21:30 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#280 [七瀬]
 
話が多少ずれたけど、





「‥俺もけじめ‥着けないとな」



いい加減にしないと、
また千頼泣かせちゃう。
 
 

⏰:09/09/03 21:31 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#281 [七瀬]
――――――――――…


「ふぅ〜‥よかったぁ」

「もう、しっかりしなよ?千頼は、いつもなんか抜けてるんだからー!」

「ごめんごめん」


さんざんないない
騒いだ挙句、

先生にもう一度プリントをもらうことにした。

いまは、職員室から
教室へ帰っているところ。

⏰:09/09/03 21:32 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#282 [七瀬]
 
 
廊下を歩く、カズの
うしろすがた発見!


「カズー!」

呼ぶと、立ち止まって
振り向いたカズ。


「ごめーん!今日は一緒に帰れないっぽい」

カズはいいよ、と言うように、うなずく。
 

⏰:09/09/03 21:33 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#283 [七瀬]
 
 
「あたし、これ忘れちゃってさー。もう一枚もらったはいいけど、判子いるみたいだから、取りに帰らないといけないみたい」

もう最悪だよー、
と笑って見せた。


「‥そっか。でもよかったじゃん」

「えへへー。ありがとー」

⏰:09/09/03 21:34 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#284 [七瀬]
 
 
「陽が言ってたよ?
 ちよ騒いでた、って」

「えー、うそぉ!
 もー恥ずかしいなぁ‥」


「ははは!ご苦労さまでーす!‥じゃあまた後で」

そう言って、カズは
階段を上がって行った。



‥気のせいだろうか。
元気がないように見えた。

⏰:09/09/03 21:35 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#285 [七瀬]
 
 
 
あたしはこのとき、
知る由もなかった。



今、にぎっている
紙切れが




あたしとカズを

――引き離す
  "種"になるなんて‥― 
 

⏰:09/09/03 21:36 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#286 [七瀬]
 
 
よかったら、
感想をどうぞ★

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/03 21:40 📱:N703iD 🆔:wDwXTER2


#287 [七瀬]
 
 
No.8 変化
 
 

⏰:09/09/05 22:39 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#288 [七瀬]
――――――――――…


放課後。


「はっるー!」

ぶんぶんと、手を振っているのに、陽は振り向くだけで、あまり反応しない。


「掃除当番、
 いっしょだねぇ」

駆け寄ると、
やっと「ん」と反応した。 

⏰:09/09/05 23:09 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#289 [七瀬]
 
 
大広場の掃除に、二人というのは、いくらなんでも少なすぎると思う。


「あっつーい‥」

先日の一緒に花火をしたときから、

なんとなく陽の態度が
よそよそしく感じたけど


「んー、だな」

今のところ、大丈夫みたい。

⏰:09/09/05 23:10 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#290 [七瀬]
 
 
「日焼けしちゃーう」

とか言って、木陰に入ると


「日焼けしないうちに、
 さっさと、終わらすぞ」

ほうき渡された。


「はぁい‥」

しょうがない!
一回、家帰んないといけないしやりますか‥。

ほうきを握った。

⏰:09/09/05 23:11 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#291 [七瀬]
 
 
「この前まで、肌寒かったのに、今日は少し蒸し蒸しするねー」

昨日と同様に晴れ渡る空のせいか、気温が少し高い。

長袖に汗が薄らとにじむ。


「ほんと、
 時間経つの早ーい!」

「そうだなぁ‥。
葉山がもうすぐ女子大生
なんて信じられない」

クスクスと笑う陽。

⏰:09/09/05 23:12 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#292 [七瀬]
 
 
「もぉーっ!陽ったら‥」

「ごめんごめん」

陽は、まだおかしそうに
笑っている。


「ひどーい‥」

ぷくっと膨れて見せると


「悪かったって」

ポンポンと頭をなでた。

⏰:09/09/05 23:13 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#293 [七瀬]
 
 
「‥なにその子ども扱い」


まだそっぽを向いていると


「冗談だよ。冗談」

「どーせあたしは、ガキんちょですぅー」

陽は苦笑しながらも
完璧楽しんでいる。

だって口元緩んでるもん。目じり下がってるもん。

⏰:09/09/05 23:14 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#294 [七瀬]
 
 
「‥かわいいよ」



‥‥うえっ?


「かわいい。葉山は」


あたしは、
かなりびっくりしながら、

フイと横を向いていた
顔を陽に戻した。
 
 

⏰:09/09/05 23:15 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#295 [七瀬]
 
 
‥なんてやさしい
目をしているんだろう。



カズ‥ごめんっ!


不覚にも、ちょっと
どきっとしちゃった。



「なんか、妹みたいで」


「‥‥‥は?」

⏰:09/09/05 23:16 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#296 [七瀬]
 
 
「いとこにいるんだよー。まだ4歳なんだけど、葉山にそっくり」

クククと思い出すように、陽は、一人笑いだす。

さっきとは違って、
爆笑に近い感じの笑い。



「なにそれ〜〜‥」


‥もう。

どきどきしたじゃん。

⏰:09/09/05 23:17 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#297 [七瀬]
 
 
「いやー、うん。でも」

「"いやー、うん。でも"
 なによ」


「うん。だから」

陽は笑いを止めて、
顔を下へと向けた。



「その‥葉山のが
 かわいい、よ‥‥」
 
 

⏰:09/09/05 23:18 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#298 [七瀬]
 
 
――カアアァア

顔が熱くなる。


「‥あ、ありがと」



よくよく考えると

いとこの4歳児と
比べられても!
って感じなんだけど、

陽が、そんな
明らか照れてます、みたいに言うから‥‥。

⏰:09/09/05 23:19 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#299 [七瀬]
 
 
こっちまで
恥ずかしーじゃんかぁっ!

しかも、なんか
いつもとキャラ違うし‥。




それから
掃除終了までの約10分。


あたしと陽の間には

花火をしたときとは、
また違った
ビミョーな雰囲気が流れた。

⏰:09/09/05 23:20 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#300 [七瀬]
――――――――――…


まずかった、よなぁ‥。


うーん。まずかった。
かなりまずかった。


いとこと、しかも4歳児と比べるなんて、

きっと気を悪くしたに
違いない。


だって、葉山あれ以降、
掃除中ぜんぜんしゃべらなかったし。

⏰:09/09/05 23:21 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#301 [七瀬]
 
 
「‥んー‥謝るべきか‥」

「陽」

部屋の中、一人で
ぶつぶつ呟いていると、


「ちょっといい?」

コンコンと
母さんがドアを叩いた。

「どうしたの、母さん」



いやな予感がした。

⏰:09/09/05 23:22 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#302 [七瀬]
 
 
「座って」

カレーの良いにおいがリビングに充満するなか

母さんと机を挟んで向かい合うように、イスに腰掛けた。



「なに」


なかなか話そうとしない
母さんに、仕方なく俺から話を持ち出した。

⏰:09/09/05 23:23 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#303 [七瀬]
 
 
「‥うん‥。実はね‥」


すると、母さんは待っていた、というように話し始めた。



ただ俺は、
黙って聞いていた。


カチッカチッと時計の針が動く音がなぜか異様に響いていた。
 
 

⏰:09/09/05 23:24 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#304 [七瀬]
――――――――――…


目を大きく開く。
なにか言いたげに口も開く。


せめて口は閉じようか。



「千頼ちゃん」

女の子なんだから。


「カズ‥なんで‥」
 

⏰:09/09/05 23:25 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#305 [七瀬]
 
 
「なんでいるのか、って言いたいんでしょー?
んとねぇ、答えは簡単。
葉山さんを待っていたのです。一時間近く待ってたかなー?いや、一時間半は待ってたね」

そう言いながら、
机に座っていたのを、軽く飛び降りた。



千頼の表情はいつも極端だから、おもしろい。
 

⏰:09/09/05 23:25 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#306 [七瀬]
 
 
「出したんでしょ?進路きぼー調査。もちろん取りに帰った判子押して」

「うん。たったいま‥」

まーだ葉山さんは
驚きが治まらないご様子。


「だって見てたもん。
千頼が学校に出ていって、また戻ってくんの」

「なんで声掛けてくれなかったの?」
 

⏰:09/09/05 23:26 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#307 [七瀬]
 
「たまには待つ身になるのもいっかなー、と思って」


ほんとは、担任に呼び出されてたんだけど。

進路希望調査出してないの俺だけだったから。

千頼は除いてね。


「ほら。いつも千頼、俺のこと待っててくれるから。ちよの気持ちになってみた」

嘘も方便。

⏰:09/09/05 23:27 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#308 [七瀬]
 
 
「帰ろっか?」

まだびっくり顔の
千頼の手をにぎった。

あったかい。



でも、もうすぐ
この温かさとは、ばいばい。


決心したんだ、俺は。
 

⏰:09/09/05 23:28 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#309 [七瀬]
 
 
「千頼ちゃん」


外はもう暗くなっていた。

昼間の快晴とは打って変わって、厚い雲が空を覆っていたせいかもしれない。



「俺の部屋、寄ってかない?」

千頼は素直に、
俺んちへ入った。

⏰:09/09/05 23:28 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#310 [七瀬]
 
 
早く。

早く終わらせよう。


早くしないと、

雨が降ってくるかもしれない。

千頼が帰っちゃうかもしれない。



なにより俺がつらくなる。 

⏰:09/09/05 23:30 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#311 [七瀬]
 
 
そのくせ


「なんか飲む?」

なかなか切り出せず、
もたもたしていた。


「ううん。いらない」

「そ。じゃー和希くんルームへ」


カウントダウンが始まる。さよならへの‥――

⏰:09/09/05 23:30 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#312 [七瀬]
 
 
「なんかカズ変」

部屋に入っての第一声がこれ。


「‥ふふ。そんなことないよ」

参ったなぁ。バレバレ?


「そんなことある。
なんかよそよそしいもん」


うん、バレバレ。
 

⏰:09/09/05 23:31 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#313 [七瀬]
 
 
「うん。実は話ある」



雨が降ったら
傘を貸してあげる。

そんで、傘を返しにもらうなんて理由を作って千頼に会いに行く。


千頼が帰りそうになったら腕をつかんで引き止める。

そんでもって、
そのままぎゅーってする。

⏰:09/09/05 23:32 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#314 [七瀬]
 
 
 
その2つの、
どっちもできないのは



「えっとねー‥
 別れない?」


紛れもなく俺のせい。



千頼はどんな顔をしているんだろう。
 
 

⏰:09/09/05 23:34 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#315 [七瀬]
――――――――――…


変化がありました。


あたしと彼の間に、
大きな変化があったのです。


その一言は、
とても軽く自然に彼の口から出て、

その口調とは裏腹に、
あたしにとっては残酷過ぎる言葉でした。

⏰:09/09/05 23:34 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#316 [七瀬]
 
 
「‥ふふふ‥はは。
 カズやっぱり変だよ」

彼がおかしいのか。
あたしがおかしいのか。


「エイプリルフールは、もうとっくに終わってるよ」

きっと両方変なんだよ。
狂ってる。


あたしの脳は、

自分を守るために
都合よく解釈した。

⏰:09/09/05 23:35 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#317 [七瀬]
 
 
「冗談はもう‥いいよ」

「冗談じゃない」


彼は、はっきりと静かに言った。

その声の中には、きっと
冷酷な悪魔が潜んでいる。


「ふふ‥ふ。カズはいつも突然だなぁ」

あたしはなんとか
平然を保とうとした。

⏰:09/09/05 23:36 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#318 [七瀬]
 
 
「‥いきなり付き合おう、って言ったかと思えば、
別れよう、か‥」



彼は、きっとおかしいの。きっとそう。

じゃなきゃ
説明つかないよ。


「‥なんっでぇ‥カズ‥」 
 

⏰:09/09/05 23:37 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#319 [七瀬]
 
 
変化がありました。


あたしと彼の間に。



友達から彼氏になって、
彼氏からクラスメート。

ただのクラスメートに。


結果的にあたしは、
カズを失った――
 

⏰:09/09/05 23:38 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#320 [七瀬]
 
 
 
そして、変化は
これだけではなかった。



あたしの知らぬ間に、

周りは
どんどん変わっていった。


これはまだ始まりということに気付けるほど、

いまのあたしは
冷静ではなかった。
 

⏰:09/09/05 23:38 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#321 [七瀬]
 
 
 
 
 
4/28、


夏へと近づいていく中、



ひとつ季節が終わって、
あたしの恋も終わった。
 
 
 
 

⏰:09/09/05 23:41 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#322 [七瀬]
 
 
今日はここまでです!

よろしければ、
ご感想をお聞かせ下さい♪http://bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/05 23:48 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#323 [七瀬]
>>322


すいません><
まさかのURLミス。笑

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/


今度は
ちゃんと貼れてるかな?
 

⏰:09/09/05 23:51 📱:N703iD 🆔:PSrvbbbw


#324 [七瀬]
 
 
No.9 時の流れ
 
 

⏰:09/09/11 19:12 📱:N703iD 🆔:482lwPvA


#325 [七瀬]
 
 
「‥うん‥うん‥。
 それでそれで?」

深夜を回った。


「‥うんうん。‥‥え‥? あ!ほんとだぁっ!!」

慌てて台所へ走る。


「ふぅ〜‥ギリギリ
 間に合ったぁ‥‥‥」

ほんとうにギリギリ、
やかんから溢れずに済んだ。

⏰:09/09/12 09:36 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#326 [七瀬]
 
 
「いやー、ごめんごめん。話に夢中になっちゃって、気付かなったよぉ」


"千頼は抜けてるから"


電波越しの愛しい人は、
半ば呆れながらも、
笑って答える。


最初は、
なんだかくすぐったかった"千頼"という呼び方も

今では慣れた。

⏰:09/09/12 09:37 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#327 [七瀬]
 
 
「あはは、ごめんって。
え?大丈夫だって、もう!心配しすぎー」

肩に携帯を挟みながら、
カップにお湯を注ぐ。

ここに来たばっかりのとき買ったココアも、もう半分近く減っていた。

もうそろそろ
新しいのを買おうか、

それともこれから暖かくなるだろうし止めとこうか。

いま悩んでいる最中。

⏰:09/09/12 10:14 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#328 [七瀬]
 
 
"あ、もうこんな時間だ"


時間は早く過ぎる。


「‥ほんと、だね」

特に楽しい時間は。


"なに千頼。もしかして
電話切りたくない?"

クスクスと笑う声が聞こえてくる。

「そんなことっ‥」

⏰:09/09/12 10:14 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#329 [七瀬]
 
 
入れたてのココアからは、甘ーい湯気が立っている。


「‥‥ある、けど‥」

"はは、正直でよろしい"

ちょーっと意地悪なとこがあるけど、大切な人。


"また明日も電話するから"

「‥うん」


"好きだよ、千頼"

⏰:09/09/12 10:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#330 [七瀬]
 
 
「‥‥‥」

意地悪かと思うと、
急にやさしくなるから、

なんだか恥ずかしくなる。


"おやすみ"




「‥おやすみ、陽」

前田陽。
あたしの愛しい人。

⏰:09/09/12 10:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#331 [七瀬]
 
 
 
葉山千頼、18歳。


D外国大学、一年生。


まだ温かい春。





あたしは、ひとつ
大きな山を越えました。
 
 

⏰:09/09/12 10:17 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#332 [七瀬]
 
 
「‥はぁ、あったまる」

東京の春は、少し冷たい。


「あ、明日の用意しないと」


でも、大丈夫。

ホットココアと、
毎日の陽からの電話が
あっためてくれるから。
 

⏰:09/09/12 10:18 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#333 [七瀬]
 
 
まだ1ヶ月も
経っていないけど


大学生活、バイトに
一人暮らしだって、

がんばってるつもり。



「‥あ゙ーー!
 課題忘れたぁ!!!」


‥がんばってる、つもり。 

⏰:09/09/12 10:19 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#334 [七瀬]
 
 
時間は早く過ぎる。

特に楽しい時間は。



カレンダーへと目を向けると

「‥4/28‥‥」



時は、あたしを

あたしたちを
待ってはくれなかった。
 

⏰:09/09/12 10:20 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#335 [七瀬]
 
 
どんどんどんどん流れて、


どんどんどんどん
あたしを置いてきぼりに。



やらなければ
ならないときに、

なにもできずにいた
あたしを救ってくれたのは


まぎれもなく彼だった。
 
 

⏰:09/09/12 10:21 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#336 [七瀬]
 
 
前田陽。


あたしの幼なじみ。

あたしの恩人。

そして、愛しい人。



だけど


あたしは、まだ想いを断ち切れていない。
 

⏰:09/09/12 10:22 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#337 [七瀬]
――――――――――…


「ちーよーりっ!
まーた彼氏とメール!?
この幸せ者がっ!」


いま、バシバシあたしの
背中を叩いているのが、

「‥ちょちょっと痛い〜‥ 花寿美ぃ!!」


大江花寿美、
オオ エ カ ス ミ

同じ大学の同じ学科の
同じ学年同い年。

⏰:09/09/12 10:24 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#338 [七瀬]
 
 
「痛いじゃなーいのっ!!朝にラブラブメール送っている千頼のすがた見てる
あたしのほうが痛いよ!」

そう言って、
心臓を押さえる花寿美。


「‥なに言ってんの‥」

「ああ〜っ!彼氏ほしーい!うらやましいー!!」

花寿美は、かなりかわいいのに、長いこと彼氏がいないらしい。

⏰:09/09/12 10:25 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#339 [七瀬]
 
 
「よしっ!次はゲットするぞぉっ!!」

そんで、彼氏ゲットのため合コンばーっかり行ってたら、

いつのまにか、合コンが
趣味になっていたらしい。



「はぁ〜‥花寿美ったら」

呆れてものも言えない。

⏰:09/09/12 10:26 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#340 [七瀬]
 
 
でも、

東京に来たばっかりで、
戸惑っていたあたしに

いちばん
最初にできた友だち。


なんだかんだ
あたしは花寿美が好きだ。


「千頼ぃ〜」

大きな目をパチパチさせながら花寿美は、あたしを呼んだ。

⏰:09/09/12 10:27 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#341 [七瀬]
 
「ね、千頼も一緒に行かない!?今度の合コン!!」

「行かない」

「んもぉ〜‥。
 即答だなぁ‥」

「行くわけないじゃん」

あたしには、
陽がいるもん!!


「‥ちょっとくらいいいじゃん」

あくどい顔をする花寿美。

⏰:09/09/12 10:28 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#342 [七瀬]
 
 
「なに言ってんの‥」

さらに呆れてしまった。


「だぁーって、
彼氏は遠ーい遠ーい離れたとこにいるんでしょ?
バレないバレない!」

「‥そういう
 問題じゃなくって‥」


「一回くらい
 いーじゃんっ!!!」

花寿美は引かない。

⏰:09/09/12 10:29 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#343 [七瀬]
 
 
「千頼だって、
 まだここに来て数週間」

引くどころか、
ヒートアップしてきた。


「まだ慣れない土地‥。
ちょーっと、友だちの輪を広げよう、とか思わないわけ!??」

「‥それが、
 合コンですか‥」

ため息をつかずには
いられなかった。

⏰:09/09/12 10:30 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#344 [七瀬]
 
 
「いいじゃんいいじゃん。実はね、人数一人足りないの」

てへっと、
舌を出す花寿美。


「‥‥」

「お願い!千頼!
座っとくだけでいーの!」

しまいには、
手を合わせだす始末。

あたしは、
神さまでも仏様でもない。

⏰:09/09/12 10:30 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#345 [七瀬]
 
 
「‥‥じゃあ仕方なく‥」

「わあっ!ありがと千頼! 大好きぃ〜〜!!」

抱きつこうとしてきた
花寿美を手で制す。


「陽から、許可が出たら、 ね!」

花寿美も真剣な目でうなずいた。


夜言おう‥。

⏰:09/09/12 10:33 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#346 [七瀬]
――――――――――…


――ピリリリリ‥


いつもの時間。
ブーブーと揺れる携帯。


「もしもしー」

いつもの風景。


「もしもし、俺」

やすらぎの時がやってきた。

⏰:09/09/12 10:34 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#347 [七瀬]
 
 
「今日は、なんか変わったことなかった?」

いつもの質問。


「大丈夫。いつもどおり」

ぶっきらぼうな声から、
伝わってくる。


「そっか。良かった」


彼のやさしさ。
 

⏰:09/09/12 10:34 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#348 [七瀬]
 
 
「陽は、どう?」

「俺も、いつもどおり」

「よかった」

あたしたちの会話は、
いつもこれから始まる。



「‥あ、実は今日ね」

あたしは、陽に
合コンのことを話した。
 

⏰:09/09/12 10:35 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#349 [七瀬]
 
 
「‥というわけ、
 なんだけど」


陽が無言になってしまったので、

「‥でもっ、もし嫌だったら、今からでも断るし‥」

慌てて、付け足した。


「‥あのなぁ」

しばらくしてから、
陽は口を開く。

⏰:09/09/12 10:36 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#350 [七瀬]
 
 
「ただでさえ、毎日会えなくて、こうして声聞くだけで、いや‥声聞くだけでも十分なんだけど‥」

陽の声がだんだん小さくなっていく。

それが、あたしには
たまらなくうれしかった。


「そのだから‥不安だったりするわけで」


なんか、かわいくない!? 

⏰:09/09/12 10:37 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#351 [七瀬]
 
 
「‥ふふ、わかった。
明日、花寿美に断っとく」

あたしは、うれしさ半分、恥ずかしさ半分といった
気持ちで陽に伝えた。


「‥いや、いいよ。
やっぱり行ってきても」

「いいよ?どうせ行っても、座っとくだけだし!」

「ううん。たまには、そういう付き合いも大切だろうし、行っといで」

⏰:09/09/12 10:39 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#352 [七瀬]
 
また深夜を回ろうとしていた。


「千頼、こうしてちゃんと言ってくれたし、なによりその‥‥」

東京の夜は寒い。


「俺は、
 千頼を信じてるから」


でも、大丈夫だよ。

陽の言葉の一つ一つが
あっためてくれるから。

⏰:09/09/12 10:40 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#353 [七瀬]
 
「じゃあ‥もう遅いから。 おやすみ」

「陽、ありがとう。
 大好き」

電話から、ごほんごほんと咳き込む音が聞こえた。


「‥その電話して‥。
合コン、終わったら」

あたしがおもいっきりの
スマイルで「うん!」と、言ったのは、

たぶん
陽にも伝わったはず。

⏰:09/09/12 10:41 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#354 [七瀬]
――――――――――…


「はじめましてぇ!大江花寿美、18歳ですっ!!」

メイクだって、巻だって
いつもの三倍は気合いの入った花寿美とは裏腹に


「葉山千頼、同じく18歳です。よろしくお願いします」

なんとも、
ふっつーなあたし。
 

⏰:09/09/12 10:46 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#355 [七瀬]
 
 
畳の敷かれた部屋は、
個室になっていた。

一個しかない電球のせいで室内はけっこう暗い。

それが、オシャレというかなんというか‥、

まあはっきり言って、あたしには、よくわかんない。


その電球の下には、
テーブルの中心にある網があった。
 

⏰:09/09/12 10:48 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#356 [七瀬]
 
 
「じゃーまず、乾杯しますか!」

花寿美と一人の男の子は、慣れたように、リードした。


あたしと花寿美、そして、もう一人の花寿美の友だちだという女の子、

そして、三人の男性と


人生初の合コンが
幕を上げた。
 

⏰:09/09/12 10:49 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#357 [七瀬]
 
 
「かんぱーいっっ!!」

みんなお酒を飲んでいたがあたしは水しか飲まなかった。

だってだって!
未成年だもんっ!
―真面目ですいません―


花寿美は、もうターゲットを決めてたみたいで、ぐいぐいアピールしまくっている。
 

⏰:09/09/12 10:49 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#358 [七瀬]
 
 
もう一人の子も、
一時間ほど経つと、いい感じになってきたみたいで、男と絡んでいた。


なんか‥取り残されちゃったなぁ。


ほんとうにじっと座っていたあたしは余っちゃったみたい。

ただジュージューと焼けるお肉を食べていた。
 

⏰:09/09/12 10:50 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#359 [七瀬]
 
 
「‥ねー‥ねぇ!」

「は!‥はひ‥」

お肉に夢中になっていた
あたしは、呼ばれたことに気付かなかった。


「な、なんでひょう‥」

口いっぱいにやわらかいハラミを詰め込んでいたあたしは、うまく話せない。
 

⏰:09/09/12 10:51 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#360 [七瀬]
 
 
「名前ー‥たしか千頼、
 だったっけ」

なんだよ、馴々しいなー、と思いながらも、うなずくと


「そーだよな!!ってか、オレの名前知ってる?」

「ふいまへん」

まだ肉汁があたしの口内を支配したままだったので、首を振りながら精一杯答えた。
 

⏰:09/09/12 10:52 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#361 [七瀬]
 
 
「ははっ!やっぱりなー。オレ、颯太!」
   ソウ タ

あまりの勢いに、押されながらも小さくうなずいた。


「いやー。オレ余っちまってさー。退屈してたんだ」

「ほぉなんですか‥」


一応、礼儀として
口に手を添えて答えた。
 

⏰:09/09/12 10:53 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#362 [七瀬]
 
 
「ってか、あんた。さっきから肉食い過ぎだから!」

突然の指摘に
下を向いてしまった。


「ごめんごめん。
 "あんた"じゃなかった」

颯太と名乗る男は、

あたしが下を向いたのは、"あんた"と呼ばれたから、と思ったのか、言い直した。
 

⏰:09/09/12 10:54 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#363 [七瀬]
 
 
「いえ‥違いま」

「肉ばっか食ってねーで、 ちゃんと人の名前
 覚えろよ!!」


頭をぽんぽんってされる。


「ちーよりちゃん?」


――どき


なんだろ、懐かしい。
 

⏰:09/09/12 10:55 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#364 [七瀬]
 
 
「ってか、
 ほんとよく食べるなー」


あ、そっか。



「そんな食べると、
 牛になっちゃうよ?」




この人の呼び方、似てる。 
 

⏰:09/09/12 10:56 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#365 [七瀬]
 
 
 
"ちぃ〜よぉ〜"


"ちーよーり!"


"‥ちよ"





―――似てるんだ。
 
 

⏰:09/09/12 10:58 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#366 [七瀬]
 
 
「ってかさ、大丈夫?」

「ふえ?」

「いま飲んだの、チューハイだけど‥」

あたしは突然やってきた、胸の高鳴りを抑えるためにそばにあったグラスを手にとった。

あまりに動揺してたためかそれがお酒だと、気付かず飲んでしまったのだ。
 

⏰:09/09/12 10:59 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#367 [七瀬]
 
 
「‥だ、大丈夫です」

「そ?ならいいんだけど。ぜんぜん酒飲んでなかったから苦手なのかなー、って思ってたから」


よく見てるんだな、と思ったのが顔に出たのか、

「まー、大丈夫ならよかった」


男は、照れくさそうに、
笑った。

⏰:09/09/12 11:00 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#368 [七瀬]
 
「苦手っていうか、なんというか‥、ほらあたし未成年だから‥」

「‥ふっ、ははは。真面目だねー。ちよは」


あたしは、
バッと顔を上げた。

なんで、その呼び名‥。


「あ、ごめんね?馴々しく "ちよ"とか呼んじゃって。妹の名前がチヨコでいつもそう呼んでるからつい‥」 

⏰:09/09/12 11:01 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#369 [七瀬]
 
 
「‥いえ。気にしないで下さい」


なーんだ。

理由を聞いたら、なぜかちょっとがっかりしてしまった自分がいた。


「あのさ」

「はい?」

「敬語、止めない?」

「は、はぁ」

⏰:09/09/12 11:02 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#370 [七瀬]
 
 
「せっかくの合コンなんだから。ちよ」

「その呼び方止めてください!」

「じゃあ敬語も止めようか」

交換条件。


「わかりました」

「ちよ、わかってない。
 敬語だめ」
 

⏰:09/09/12 11:03 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#371 [七瀬]
 
 
「‥わかった」

「よろしい。千頼ちゃん」

いやいやと言う風に返事をしたのに、男は納得したようだった。


「あ、あと颯太って呼んで。オレのこと」

「それは無理です!あなたのほうが年上なんだし!」


「ち〜よ?け・い・語」
 

⏰:09/09/12 11:05 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#372 [七瀬]
 
「‥‥颯太"さん"のほうが年上なんだし無理!!」

やけに、"さん"を強調してやった。


「"颯太さん"か。うーん、まあいいよそれで!」

颯太さんは、
いかにも納得してません!という顔をしたと思ったら


「いつか颯太って呼びたくなるようにしたげる」

にっこりとした。

⏰:09/09/12 11:07 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#373 [七瀬]
 
‥‥なに、どきっとしてんだ、あたし!!

あたしは、赤みを増す頬をごまかすため、またお酒を飲んだ。

「さっきから飲んでる酒、オレのなんっすけど」

「す、すすすみません!
じゃなくて、すまん!?」

「ははは!そんなに飲みたいんならチューモンしたげる」

そう言って、メニューを広げた颯太さん。

⏰:09/09/12 11:08 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#374 [七瀬]
 
 
「い、いいよぉ‥」

「いーからいーから」

あたしは、完全に颯太さんのペースに呑まれている。


久しぶりに訪れた激しい感情に、少し舞い上がってしまっていたのかもしれない。


「千頼ちゃんには、どれがいいだろ。あんま強いのはダメだよね」

⏰:09/09/12 11:12 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#375 [七瀬]
 
 
 
あたしは、困ったように。




でも、微笑を浮かべながら

無邪気に、メニューを眺める颯太さんの横に座った。




過去の扉を開けるように― 
 

⏰:09/09/12 11:16 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#376 [七瀬]
 
 
よろしければ
ご感想を★

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/12 11:18 📱:N703iD 🆔:s/pxcVGo


#377 [七瀬]
 
 
No.10 いちご
   ミルフィーユ
 
 

⏰:09/09/20 21:24 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#378 [七瀬]
 
 
「‥う、ん‥」


いま‥何時‥?

かたわらにある携帯に
手を伸ばした。


「バイト行かないと‥」

はずが、ない。

あるはずのものがなく、
伸ばしたあたしの手は、
見事にスルッと滑った。

⏰:09/09/20 21:26 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#379 [七瀬]
 
 
「んもぉ〜‥どこぉ‥」

しかたなく、
重いまぶたを開く。

すると、目に入ってきたのは、

「‥ここ‥、ど、こ‥」


小さいテーブルに
白いソファー。

上京してきたばっかりの、ビンボー女子大生には、夢のまた夢、おっきい液晶テレビ。

⏰:09/09/20 21:26 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#380 [七瀬]
 
 
「うーん‥‥」

あたしは、夢でも見ているのだろうか。

うん、そうだ。
きっと夢でも見てるんだ。



「‥‥もう一眠りしよ‥」


そうやって、やわらかく心地よいタオル地の布団を頭までかぶった。
 

⏰:09/09/20 21:27 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#381 [七瀬]
 
 
「!??」

その瞬間、
バッと飛び起きていた。


‥あたし‥‥、

「‥なんにも‥着てない」


なんとなく気付いてた。

重たい頭のせいで、
起きたときから。
 

⏰:09/09/20 21:28 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#382 [七瀬]
 
 
でも、でもでも。


夢のせいにしないとって、本能が叫んでいた。

ううん。
夢のせいにしたかった。


だけど、

下着すらも着けていない
自分自身の身体が、
昨日のできごとを物語っていた。

⏰:09/09/20 21:29 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#383 [七瀬]
 
 
ここは、
きっと‥颯太さんの家。

間違いない。
絶対そうだ。



「‥‥ふぁあ〜あ‥。
あれ、千頼ちゃん起きた?」

やっぱり‥。

あたしは、ドアを開けて入ってきた、半裸の颯太さんをにらみつけた。
 

⏰:09/09/20 21:30 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#384 [七瀬]
 
 
「‥なに千頼ちゃん」

にらむあたしを、颯太さんはニヤリと笑って見る。


「昨晩は、あんなに受け身だったのに‥、ね」


ショックだった。

正直言って、
記憶がなかった。

こんな状況でも、
記憶がない限り小さな望みに賭けたかった。

⏰:09/09/20 21:31 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#385 [七瀬]
 
 
颯太さんの頼んでくれた
お酒が思いの外、美味しくって、たくさん飲んでしまったのは覚えている。

フラっフラのあたしを送ってくれようとした颯太さんとタクシーに乗ったのも、覚えている。



「‥その後だ」

まったく覚えてないのは。 

⏰:09/09/20 21:31 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#386 [七瀬]
 
 
「ど?思い出した?」

あたしに伸ばそうとした
手を払い除けて、

ベッド下に落ちている下着を素早く着けた。


「あたしの服はどこですかっ!??」

下着はすぐそこにあったのに、あたしの服が見当たらない。
 

⏰:09/09/20 21:33 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#387 [七瀬]
 
 
はぁ、とため息をつく颯太さんの手には、昨日あたしがはいていたスカートが。


「返して!!」

勢いよく、それを取った。


「上はどこにあるの!?」

呆れたようすのままの颯太さんは「‥そこ」と玄関方向だろう先を指差した。
 

⏰:09/09/20 21:33 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#388 [七瀬]
 
 
あたしはあわてて、
廊下を通って、玄関へ向かった。

そこには、あたしのパンプスのすぐそばに、シャツが落ちていた。

それを拾い上げると


「あのさ、もしかしてなにか勘違いしてない?」

うしろから、もっとも聞きたくない声が聞こえた。
 

⏰:09/09/20 21:34 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#389 [七瀬]
 
 
「‥なにが、ですか」

あたしは、
上を着て振り返った。


「服、脱ぎだしたの千頼ちゃんだよ?」

「うそっ‥!」

「うそじゃないよ」

きっぱりと言う颯太さんに首を振るあたし。
 

⏰:09/09/20 21:35 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#390 [七瀬]
 
 
「ちなみにオレの部屋に行きたいって言い出したのも千頼ちゃん。タクシー乗って、いきなりダダこねだすから‥、途中で行き先変えてもらって‥」

「うそよ!!」

「だから、うそじゃないって。大変だったよ、オレも運転手さんも」

ははは、と笑う颯太さんを放って、帰ろうとドアのぶに手を掛けたが、思いとどまった。
 

⏰:09/09/20 21:36 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#391 [七瀬]
 
 
「‥‥バッグ」

「はい、どーぞ」

あたしの思っていたことが分かっていたらしく、
すでに、手に握っていたようだ。


「‥おじゃましました」

そんな余裕綽々な態度が、よけいにあたしをイライラさせた。
 

⏰:09/09/20 21:37 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#392 [七瀬]
 
 
「またのお越しをー」


気の抜けそうな、なんとものんきな声に見送られ、

二度と来るものかっ!!
と思いながら、

高くそびえ立つ、あたしんちの家賃の3倍はしそうなマンションを後にした。
 

⏰:09/09/20 21:38 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#393 [七瀬]
 
 
「ドアが閉まります。ご注意下さい」

駆け込み乗車をして、
白い目に注目を浴びながらドア付近に寄った。


「はぁ‥」

鉛のような頭痛と
後悔が改めて襲う。


携帯を開くと、

陽からの不在着信がいくつも入っていた。

⏰:09/09/20 21:38 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#394 [七瀬]
 
 
そして、メールも。

"大丈夫か?メールでもいいから、連絡して"


後悔の念は、押し寄せてくるばかり。


一刻も早く陽に電話するべきだったが、
気が重くてできず、

昼からのバイトのため
家に帰って、シャワーを浴びた。
 

⏰:09/09/20 21:39 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#395 [七瀬]
 
 
バイトから帰ってくると、もう12時を回っていた。

切っていた電源を入れるとやっぱり不在着信。


相手は、もちろん

「もしもし‥陽?」

頭痛はまだ治まらず、
仕事疲れで体がダルかったけれど、陽の声が聞きたかった。

自分勝手だけど、ちゃんと言わなきゃって思った。

⏰:09/09/20 21:40 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#396 [七瀬]
 
 
「疲れてたのか?」

相変わらずのやさしい声。

一日聞かなかっただけなのに、とても懐かしい。


「‥うん、ごめんね。
 昨日電話しなくて」

ああ、これだ。
あたしの聞きたかった声。


泣きそうになったのを
必死で堪えた。

⏰:09/09/20 21:41 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#397 [七瀬]
 
 
「いや、いいんだ。
 ただ心配で」

でも、陽のやさしさに触れるたび、胸が痛む。


「ほんとごめんね。昨日は初めて合コンなんか行ったものだから、疲れちゃってて‥」

言えない。
言えるわけないよ‥。

心のなかで、陽にごめん、と電話し忘れたことではないことに謝った。

⏰:09/09/20 21:42 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#398 [七瀬]
 
 
「だから、いいって。それより、今日はバイトだったんだろ」

なんで、
そんなにやさしいの。


「今日はもう切るよ。まだ疲れ残ってるだろうし。
明日も学校あるし、千頼ももう寝‥」

「‥っ‥」

「千頼?」

「‥‥‥」

⏰:09/09/20 21:43 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#399 [七瀬]
 
 
「どうかした?」

「‥ううん‥なんで、も、ない‥」

やばい、ほんとうに泣きそうになった。


「‥そ。じゃあ切るな。
 おやすみ」

「おやすみ」


ってか、もう泣いてた。
 

⏰:09/09/20 21:44 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#400 [七瀬]
 
 
「‥う‥ふえ」

陽の心配してるよ、と言った辺りから涙が一筋頬を伝っていた。


電話が切れたとたん、



「‥うっうう‥ふえぇえ」

張り詰めていた糸が切れたようで、涙が止まらなかった。
 

⏰:09/09/20 21:44 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#401 [七瀬]
――――――――――…


「千頼ちゃん」

「‥なんですか」


次の講義まで、
時間があるし、ちょうど小腹も空いたということで、

花寿美とケーキの美味しい喫茶店へでも行こうと、

出たところに男はいた。
 

⏰:09/09/20 21:46 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#402 [七瀬]
 
 
「いやー、なんだか千頼ちゃんに会いたくなっちゃってー。来ちゃった」

にこにこと作りすぎた顔には、なにか企みが含んでいるように見えた。


「この人って合コンの帰りに千頼を送っていった‥」

「そうですか。では。
 行こ、花寿美」

驚く花寿美の言葉をさえぎり、颯太さんの隣を通り過ぎようとした。

⏰:09/09/20 21:46 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#403 [七瀬]
 
 
「なにするんですか!?」

が、手首を捕まれてしまう。


「ごめん。借りるねー」

困惑するあたしと花寿美を余所に、颯太さんは楽しそう。


結局、ケーキの美味しい喫茶店へは颯太さんと行くはめになってしまった。
 

⏰:09/09/20 21:47 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#404 [七瀬]
 
 
「そんな怒らないでよ」

「怒りますよ、誰でも」

「‥ご」

「え?なにか言いました?」

「敬語、直ってないね」


そう言った颯太さんの表情が、なぜかとても哀しげで

その一瞬は、怒りを忘れてしまった。

⏰:09/09/20 21:48 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#405 [七瀬]
 
 
「‥まあいいや。なんか飲む?」

メニューを手に握るそのすがたは一昨日のことを、あたしに思い出させた。


「じゃあ‥アイスミルクティー」

すぐ帰るつもりだったあたしは、飲み物のみを注文することにした。


「アイスミルクティーね。りょーかいしましたー」

⏰:09/09/20 21:49 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#406 [七瀬]
 
 
颯太さんは、アイスコーヒーとミルフィーユを注文した。


「‥なんで止めてくれなかったんですか」

「え?なにが?」

目の前の男は、氷を口の中に入れて、遊んでいる。


「だから、おととい‥」

この人といると調子が狂う。

⏰:09/09/20 21:49 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#407 [七瀬]
 
 
「はは、なに言ってんの」

「だからっ!あたしから、服脱いだとしても、と止めてほしかった‥っていうか‥その‥」

「据え膳食わぬは男の恥ってゆーだろ?誘われたらいっちゃうじゃん。オレは健全な男なんだから」

「それは‥っ」


だって、びっくりするくらい似てるんだもん‥。
 

⏰:09/09/20 21:50 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#408 [七瀬]
 
 
「‥‥ごもっともな、
 ご意見ですけど」

分かってる。
目の前で服脱がれて、なにもしない男の人なんて滅多にいない。


分かってたけど‥、

「そりゃどぉーも」


なんか、この人は違うな、って思ってた。
 

⏰:09/09/20 21:51 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#409 [七瀬]
 
それはまぁ、
あたしの過去の思い出が、勝手にこいつを美化してしまったんまったんだと思う。


「お待たせ致しました。こちらアイスミルクティーになります」

ただ"似てる"
という理由だけで。

「そして、アイスコーヒーと季節のイチゴを使ったミルフィーユです。注文は以上になります。ではごゆっくり」

⏰:09/09/20 21:52 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#410 [七瀬]
 
 
「わー!うっまそー!」

でも、あたしがバカだったというわけか。


「なに千頼ちゃん?」

「‥なにも」

「あ、もしかして食べたい?だから飲み物だけでいいの、って聞いたのに。
言っとくけど、イチゴ一粒もあげないからねー」


‥はぁ、なんか疲れた。

⏰:09/09/20 21:53 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#411 [七瀬]
 
 
「別に、ケーキがほしくて見てたわけじゃありません」

「ふーん‥。じゃあなに?見惚れてたの?オレに」

「違うっ!!」


もー、なんなのこの人‥。

意地でも見ない!

あたしは頭を横に向けた。 

⏰:09/09/20 21:54 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#412 [七瀬]
 
 
「あははー。ジョークだって、ジョーク!」

一人はしゃぐ颯太さん。


「ごめんって。ね?こっち向いてよ、ちよ」



――きゅん


だっ、だから!

「その名前で呼ばないでって‥ふむっ!??」

⏰:09/09/20 21:55 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#413 [七瀬]
 
 
「だからジョークだって、言ったじゃん。ちゃんと
千頼にもおすそ分けー」

な、なにこのシチュエーション!


「おいしー?」

無理やり突っ込まれたためあたしの口の周りには、生クリームが付いていて、ちょっと違和感。

でも、
ほんと甘くて甘くて‥。

⏰:09/09/20 21:56 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#414 [七瀬]
 
 
「おいしい‥」

「それは、よかったよかった。じゃあオレもー」

そうやって、赤い粒を付けたフォークを口へと運ぶ。


ふんわりとした甘いクリームに、サクッとしたパイと甘酸っぱいイチゴ。

ほんとのほんとに
美味しかった。

たぶん人生で食べたすべてのケーキの中でいちばん。

⏰:09/09/20 21:57 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#415 [七瀬]
 
「んん〜!
 ほんとうまいな〜!!」

だけど、味だけの問題じゃない。

「おいしいものって、つい独り占めしたくなるけど、やっぱさ、好きな人と半分こするほうが、何倍にも、うまくなるよな」


いま颯太さんが言ったとおりなんだと思う。

‥あたしの好きな人が、
颯太さんってわけじゃないけどね!!

⏰:09/09/20 21:58 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#416 [七瀬]
 
 
甘い甘いイチゴが
あたしたちの体に溶ける。


「形‥崩れちゃいましたね」

半分こにしたミルフィーユは、崩れてもう原型を留めてはいなかった。



「でも、うまいのは同じじゃん。甘いのは変わらないだろ?」
 

⏰:09/09/20 21:59 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#417 [七瀬]
 
「それはそうですけど‥」

「じゃあいいじゃん」

颯太さんは、ぐちゃぐちゃのケーキを頬張りながら、言った。


「終わり良ければ、すべて良し。食べて、あーおいしかったなまた食べたいなぁと思えればそれでいーの」


「‥へりくつ」

納得しかけた自分に言い聞かせるように言った。

⏰:09/09/20 22:00 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#418 [七瀬]
 
 
「頭堅いね、千頼ちゃん」

「大きなお世話です」

げんなりとした男は、
苦笑した。


「困った困った」

そして、また残りのケーキをむしゃむしゃと口に運びはじめた。
 

⏰:09/09/20 22:01 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#419 [七瀬]
 
 
「あ、あとね」

ケーキを食べ終えて、コーヒーを一口すすったあと、一息も付かず、平然と前の男は言った。


「はい?」

あたしも乾いた口内を
ミルクティーで潤している最中だった。


「一昨日の夜、
 なにもなかったから」
 

⏰:09/09/20 22:02 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#420 [七瀬]
 
 
「‥‥‥はああぁあ!?」

バン!と机に置いたグラスが割れるんじゃないかってくらい音を立てた。


「あは、いい
 リアクションだねぇ」

それでも、のんきに笑う
颯太さんは、この状況を楽しんでいるようす。



「もうやだーー!!」
 

⏰:09/09/20 22:03 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#421 [七瀬]
 
 
 
すっごく疲れたけど


甘くておいしい、
たのしく快い。



そんな甘美な一日だった。



のかも、ね‥。
 
 

⏰:09/09/20 22:04 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


#422 [七瀬]
 
今日の更新分
>>377-421



よろしければ
ご感想を★

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
 

⏰:09/09/20 22:07 📱:N703iD 🆔:AJOkFi7.


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194