らぶずっきゅん!!!!
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#377 [七瀬]
No.10 いちご
ミルフィーユ
:09/09/20 21:24
:N703iD
:AJOkFi7.
#378 [七瀬]
「‥う、ん‥」
いま‥何時‥?
かたわらにある携帯に
手を伸ばした。
「バイト行かないと‥」
はずが、ない。
あるはずのものがなく、
伸ばしたあたしの手は、
見事にスルッと滑った。
:09/09/20 21:26
:N703iD
:AJOkFi7.
#379 [七瀬]
「んもぉ〜‥どこぉ‥」
しかたなく、
重いまぶたを開く。
すると、目に入ってきたのは、
「‥ここ‥、ど、こ‥」
小さいテーブルに
白いソファー。
上京してきたばっかりの、ビンボー女子大生には、夢のまた夢、おっきい液晶テレビ。
:09/09/20 21:26
:N703iD
:AJOkFi7.
#380 [七瀬]
「うーん‥‥」
あたしは、夢でも見ているのだろうか。
うん、そうだ。
きっと夢でも見てるんだ。
「‥‥もう一眠りしよ‥」
そうやって、やわらかく心地よいタオル地の布団を頭までかぶった。
:09/09/20 21:27
:N703iD
:AJOkFi7.
#381 [七瀬]
「!??」
その瞬間、
バッと飛び起きていた。
‥あたし‥‥、
「‥なんにも‥着てない」
なんとなく気付いてた。
重たい頭のせいで、
起きたときから。
:09/09/20 21:28
:N703iD
:AJOkFi7.
#382 [七瀬]
でも、でもでも。
夢のせいにしないとって、本能が叫んでいた。
ううん。
夢のせいにしたかった。
だけど、
下着すらも着けていない
自分自身の身体が、
昨日のできごとを物語っていた。
:09/09/20 21:29
:N703iD
:AJOkFi7.
#383 [七瀬]
ここは、
きっと‥颯太さんの家。
間違いない。
絶対そうだ。
「‥‥ふぁあ〜あ‥。
あれ、千頼ちゃん起きた?」
やっぱり‥。
あたしは、ドアを開けて入ってきた、半裸の颯太さんをにらみつけた。
:09/09/20 21:30
:N703iD
:AJOkFi7.
#384 [七瀬]
「‥なに千頼ちゃん」
にらむあたしを、颯太さんはニヤリと笑って見る。
「昨晩は、あんなに受け身だったのに‥、ね」
ショックだった。
正直言って、
記憶がなかった。
こんな状況でも、
記憶がない限り小さな望みに賭けたかった。
:09/09/20 21:31
:N703iD
:AJOkFi7.
#385 [七瀬]
颯太さんの頼んでくれた
お酒が思いの外、美味しくって、たくさん飲んでしまったのは覚えている。
フラっフラのあたしを送ってくれようとした颯太さんとタクシーに乗ったのも、覚えている。
「‥その後だ」
まったく覚えてないのは。
:09/09/20 21:31
:N703iD
:AJOkFi7.
#386 [七瀬]
「ど?思い出した?」
あたしに伸ばそうとした
手を払い除けて、
ベッド下に落ちている下着を素早く着けた。
「あたしの服はどこですかっ!??」
下着はすぐそこにあったのに、あたしの服が見当たらない。
:09/09/20 21:33
:N703iD
:AJOkFi7.
#387 [七瀬]
はぁ、とため息をつく颯太さんの手には、昨日あたしがはいていたスカートが。
「返して!!」
勢いよく、それを取った。
「上はどこにあるの!?」
呆れたようすのままの颯太さんは「‥そこ」と玄関方向だろう先を指差した。
:09/09/20 21:33
:N703iD
:AJOkFi7.
#388 [七瀬]
あたしはあわてて、
廊下を通って、玄関へ向かった。
そこには、あたしのパンプスのすぐそばに、シャツが落ちていた。
それを拾い上げると
「あのさ、もしかしてなにか勘違いしてない?」
うしろから、もっとも聞きたくない声が聞こえた。
:09/09/20 21:34
:N703iD
:AJOkFi7.
#389 [七瀬]
「‥なにが、ですか」
あたしは、
上を着て振り返った。
「服、脱ぎだしたの千頼ちゃんだよ?」
「うそっ‥!」
「うそじゃないよ」
きっぱりと言う颯太さんに首を振るあたし。
:09/09/20 21:35
:N703iD
:AJOkFi7.
#390 [七瀬]
「ちなみにオレの部屋に行きたいって言い出したのも千頼ちゃん。タクシー乗って、いきなりダダこねだすから‥、途中で行き先変えてもらって‥」
「うそよ!!」
「だから、うそじゃないって。大変だったよ、オレも運転手さんも」
ははは、と笑う颯太さんを放って、帰ろうとドアのぶに手を掛けたが、思いとどまった。
:09/09/20 21:36
:N703iD
:AJOkFi7.
#391 [七瀬]
「‥‥バッグ」
「はい、どーぞ」
あたしの思っていたことが分かっていたらしく、
すでに、手に握っていたようだ。
「‥おじゃましました」
そんな余裕綽々な態度が、よけいにあたしをイライラさせた。
:09/09/20 21:37
:N703iD
:AJOkFi7.
#392 [七瀬]
「またのお越しをー」
気の抜けそうな、なんとものんきな声に見送られ、
二度と来るものかっ!!
と思いながら、
高くそびえ立つ、あたしんちの家賃の3倍はしそうなマンションを後にした。
:09/09/20 21:38
:N703iD
:AJOkFi7.
#393 [七瀬]
「ドアが閉まります。ご注意下さい」
駆け込み乗車をして、
白い目に注目を浴びながらドア付近に寄った。
「はぁ‥」
鉛のような頭痛と
後悔が改めて襲う。
携帯を開くと、
陽からの不在着信がいくつも入っていた。
:09/09/20 21:38
:N703iD
:AJOkFi7.
#394 [七瀬]
そして、メールも。
"大丈夫か?メールでもいいから、連絡して"
後悔の念は、押し寄せてくるばかり。
一刻も早く陽に電話するべきだったが、
気が重くてできず、
昼からのバイトのため
家に帰って、シャワーを浴びた。
:09/09/20 21:39
:N703iD
:AJOkFi7.
#395 [七瀬]
バイトから帰ってくると、もう12時を回っていた。
切っていた電源を入れるとやっぱり不在着信。
相手は、もちろん
「もしもし‥陽?」
頭痛はまだ治まらず、
仕事疲れで体がダルかったけれど、陽の声が聞きたかった。
自分勝手だけど、ちゃんと言わなきゃって思った。
:09/09/20 21:40
:N703iD
:AJOkFi7.
#396 [七瀬]
「疲れてたのか?」
相変わらずのやさしい声。
一日聞かなかっただけなのに、とても懐かしい。
「‥うん、ごめんね。
昨日電話しなくて」
ああ、これだ。
あたしの聞きたかった声。
泣きそうになったのを
必死で堪えた。
:09/09/20 21:41
:N703iD
:AJOkFi7.
#397 [七瀬]
「いや、いいんだ。
ただ心配で」
でも、陽のやさしさに触れるたび、胸が痛む。
「ほんとごめんね。昨日は初めて合コンなんか行ったものだから、疲れちゃってて‥」
言えない。
言えるわけないよ‥。
心のなかで、陽にごめん、と電話し忘れたことではないことに謝った。
:09/09/20 21:42
:N703iD
:AJOkFi7.
#398 [七瀬]
「だから、いいって。それより、今日はバイトだったんだろ」
なんで、
そんなにやさしいの。
「今日はもう切るよ。まだ疲れ残ってるだろうし。
明日も学校あるし、千頼ももう寝‥」
「‥っ‥」
「千頼?」
「‥‥‥」
:09/09/20 21:43
:N703iD
:AJOkFi7.
#399 [七瀬]
「どうかした?」
「‥ううん‥なんで、も、ない‥」
やばい、ほんとうに泣きそうになった。
「‥そ。じゃあ切るな。
おやすみ」
「おやすみ」
ってか、もう泣いてた。
:09/09/20 21:44
:N703iD
:AJOkFi7.
#400 [七瀬]
「‥う‥ふえ」
陽の心配してるよ、と言った辺りから涙が一筋頬を伝っていた。
電話が切れたとたん、
「‥うっうう‥ふえぇえ」
張り詰めていた糸が切れたようで、涙が止まらなかった。
:09/09/20 21:44
:N703iD
:AJOkFi7.
#401 [七瀬]
――――――――――…
「千頼ちゃん」
「‥なんですか」
次の講義まで、
時間があるし、ちょうど小腹も空いたということで、
花寿美とケーキの美味しい喫茶店へでも行こうと、
出たところに男はいた。
:09/09/20 21:46
:N703iD
:AJOkFi7.
#402 [七瀬]
「いやー、なんだか千頼ちゃんに会いたくなっちゃってー。来ちゃった」
にこにこと作りすぎた顔には、なにか企みが含んでいるように見えた。
「この人って合コンの帰りに千頼を送っていった‥」
「そうですか。では。
行こ、花寿美」
驚く花寿美の言葉をさえぎり、颯太さんの隣を通り過ぎようとした。
:09/09/20 21:46
:N703iD
:AJOkFi7.
#403 [七瀬]
「なにするんですか!?」
が、手首を捕まれてしまう。
「ごめん。借りるねー」
困惑するあたしと花寿美を余所に、颯太さんは楽しそう。
結局、ケーキの美味しい喫茶店へは颯太さんと行くはめになってしまった。
:09/09/20 21:47
:N703iD
:AJOkFi7.
#404 [七瀬]
「そんな怒らないでよ」
「怒りますよ、誰でも」
「‥ご」
「え?なにか言いました?」
「敬語、直ってないね」
そう言った颯太さんの表情が、なぜかとても哀しげで
その一瞬は、怒りを忘れてしまった。
:09/09/20 21:48
:N703iD
:AJOkFi7.
#405 [七瀬]
「‥まあいいや。なんか飲む?」
メニューを手に握るそのすがたは一昨日のことを、あたしに思い出させた。
「じゃあ‥アイスミルクティー」
すぐ帰るつもりだったあたしは、飲み物のみを注文することにした。
「アイスミルクティーね。りょーかいしましたー」
:09/09/20 21:49
:N703iD
:AJOkFi7.
#406 [七瀬]
颯太さんは、アイスコーヒーとミルフィーユを注文した。
「‥なんで止めてくれなかったんですか」
「え?なにが?」
目の前の男は、氷を口の中に入れて、遊んでいる。
「だから、おととい‥」
この人といると調子が狂う。
:09/09/20 21:49
:N703iD
:AJOkFi7.
#407 [七瀬]
「はは、なに言ってんの」
「だからっ!あたしから、服脱いだとしても、と止めてほしかった‥っていうか‥その‥」
「据え膳食わぬは男の恥ってゆーだろ?誘われたらいっちゃうじゃん。オレは健全な男なんだから」
「それは‥っ」
だって、びっくりするくらい似てるんだもん‥。
:09/09/20 21:50
:N703iD
:AJOkFi7.
#408 [七瀬]
「‥‥ごもっともな、
ご意見ですけど」
分かってる。
目の前で服脱がれて、なにもしない男の人なんて滅多にいない。
分かってたけど‥、
「そりゃどぉーも」
なんか、この人は違うな、って思ってた。
:09/09/20 21:51
:N703iD
:AJOkFi7.
#409 [七瀬]
それはまぁ、
あたしの過去の思い出が、勝手にこいつを美化してしまったんまったんだと思う。
「お待たせ致しました。こちらアイスミルクティーになります」
ただ"似てる"
という理由だけで。
「そして、アイスコーヒーと季節のイチゴを使ったミルフィーユです。注文は以上になります。ではごゆっくり」
:09/09/20 21:52
:N703iD
:AJOkFi7.
#410 [七瀬]
「わー!うっまそー!」
でも、あたしがバカだったというわけか。
「なに千頼ちゃん?」
「‥なにも」
「あ、もしかして食べたい?だから飲み物だけでいいの、って聞いたのに。
言っとくけど、イチゴ一粒もあげないからねー」
‥はぁ、なんか疲れた。
:09/09/20 21:53
:N703iD
:AJOkFi7.
#411 [七瀬]
「別に、ケーキがほしくて見てたわけじゃありません」
「ふーん‥。じゃあなに?見惚れてたの?オレに」
「違うっ!!」
もー、なんなのこの人‥。
意地でも見ない!
あたしは頭を横に向けた。
:09/09/20 21:54
:N703iD
:AJOkFi7.
#412 [七瀬]
「あははー。ジョークだって、ジョーク!」
一人はしゃぐ颯太さん。
「ごめんって。ね?こっち向いてよ、ちよ」
――きゅん
だっ、だから!
「その名前で呼ばないでって‥ふむっ!??」
:09/09/20 21:55
:N703iD
:AJOkFi7.
#413 [七瀬]
「だからジョークだって、言ったじゃん。ちゃんと
千頼にもおすそ分けー」
な、なにこのシチュエーション!
「おいしー?」
無理やり突っ込まれたためあたしの口の周りには、生クリームが付いていて、ちょっと違和感。
でも、
ほんと甘くて甘くて‥。
:09/09/20 21:56
:N703iD
:AJOkFi7.
#414 [七瀬]
「おいしい‥」
「それは、よかったよかった。じゃあオレもー」
そうやって、赤い粒を付けたフォークを口へと運ぶ。
ふんわりとした甘いクリームに、サクッとしたパイと甘酸っぱいイチゴ。
ほんとのほんとに
美味しかった。
たぶん人生で食べたすべてのケーキの中でいちばん。
:09/09/20 21:57
:N703iD
:AJOkFi7.
#415 [七瀬]
「んん〜!
ほんとうまいな〜!!」
だけど、味だけの問題じゃない。
「おいしいものって、つい独り占めしたくなるけど、やっぱさ、好きな人と半分こするほうが、何倍にも、うまくなるよな」
いま颯太さんが言ったとおりなんだと思う。
‥あたしの好きな人が、
颯太さんってわけじゃないけどね!!
:09/09/20 21:58
:N703iD
:AJOkFi7.
#416 [七瀬]
甘い甘いイチゴが
あたしたちの体に溶ける。
「形‥崩れちゃいましたね」
半分こにしたミルフィーユは、崩れてもう原型を留めてはいなかった。
「でも、うまいのは同じじゃん。甘いのは変わらないだろ?」
:09/09/20 21:59
:N703iD
:AJOkFi7.
#417 [七瀬]
「それはそうですけど‥」
「じゃあいいじゃん」
颯太さんは、ぐちゃぐちゃのケーキを頬張りながら、言った。
「終わり良ければ、すべて良し。食べて、あーおいしかったなまた食べたいなぁと思えればそれでいーの」
「‥へりくつ」
納得しかけた自分に言い聞かせるように言った。
:09/09/20 22:00
:N703iD
:AJOkFi7.
#418 [七瀬]
「頭堅いね、千頼ちゃん」
「大きなお世話です」
げんなりとした男は、
苦笑した。
「困った困った」
そして、また残りのケーキをむしゃむしゃと口に運びはじめた。
:09/09/20 22:01
:N703iD
:AJOkFi7.
#419 [七瀬]
「あ、あとね」
ケーキを食べ終えて、コーヒーを一口すすったあと、一息も付かず、平然と前の男は言った。
「はい?」
あたしも乾いた口内を
ミルクティーで潤している最中だった。
「一昨日の夜、
なにもなかったから」
:09/09/20 22:02
:N703iD
:AJOkFi7.
#420 [七瀬]
「‥‥‥はああぁあ!?」
バン!と机に置いたグラスが割れるんじゃないかってくらい音を立てた。
「あは、いい
リアクションだねぇ」
それでも、のんきに笑う
颯太さんは、この状況を楽しんでいるようす。
「もうやだーー!!」
:09/09/20 22:03
:N703iD
:AJOkFi7.
#421 [七瀬]
すっごく疲れたけど
甘くておいしい、
たのしく快い。
そんな甘美な一日だった。
のかも、ね‥。
:09/09/20 22:04
:N703iD
:AJOkFi7.
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