黒猫の唄。
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#163 [あんず]



3.最後の願い



⏰:09/11/13 19:35 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#164 [あんず]
 


―――――…。


無言の時間が続く。

こんな時間が
無駄なのはわかってる。
けど話せない。



次の言葉が
思い付かないの。


 

⏰:09/11/13 19:41 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#165 [あんず]
 

何て言っていいのか
わからない。


ただ絶え間なく、
涙は流れるだけ。


ポタリ、ポタリと
床に涙が落ちる。
視界はぼやけて
何もみえない。



頭に浮かぶのは、
「ずっと側にいたい」
という、1つの願い。

 

⏰:09/11/13 19:46 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#166 [あんず]
 

無理なことを何度頭の中で願っただろうか。
何度祈っただろうか。


でも叶うことはない。



「…リナ、泣かないで。
どうしてなのか…
理由を知りたい。」


 

⏰:09/11/13 19:51 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#167 [あんず]
 

上を見上げると、


強い眼差しで
私を見つめる彼の姿。


その姿を見て、
更に泣きそうになる私は

本当に泣き虫。


 

⏰:09/11/13 19:52 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#168 [あんず]
 


「ヒロ、私は
1度死んだ人間…。
この世にはいない存在。
いてはいけない存在。


だから…
この世にはいられない。

ヒロの側には
いられないの…。」


 

⏰:09/11/13 19:55 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#169 [あんず]
 

堪えきれない涙で
頬を濡らしながら、
私は答えた。



それを聞いた彼は
だんだん、ゆっくりと
下を向き始めた。


 

⏰:09/11/13 19:59 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#170 [あんず]
 

「そっか…」と言う声が
乾いた笑いと共に
部屋に響く。


その声は酷く小さく
悲しいくらい、
弱かった。



「ヒロ、ごめんね…」

 

⏰:09/11/13 20:04 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#171 [あんず]
 

弱い私は、
そう小さく呟いた。


すると彼は、俯いたまま私を抱き締めた。


「謝らないで。」


そう、呟きながら。


 

⏰:09/11/13 20:07 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#172 [あんず]
 


「リナは悪くない。
謝ることないよ。
仕方ないんだ。

だから、謝らないで。
泣かないで。」


耳元で彼の
優しい声が響く。
少し低い、彼の声。


 

⏰:09/11/13 20:14 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#173 [あんず]
 

「…っヒロ…」


私、本当に
貴方と離れたくない。
貴方の側にいたい。


無理なのはわかってる。
だからせめて…


 

⏰:09/11/13 20:20 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#174 [あんず]
 


別れが来る、

その時まで



貴方の温もりを
感じていたい。

貴方の側にいたい。


 

⏰:09/11/13 20:21 📱:W61K 🆔:iCtg4F4w


#175 [あんず]
 

私は彼の胸に
顔を埋めた。

昔、これをするのが大好きで、いつもやってたなぁ…。



懐かしい。


 

⏰:09/11/15 17:45 📱:W61K 🆔:t4cgse.o


#176 [あんず]
 

「ヒロ、覚えてる?
私こうやってするのが
大好きだったこと。」


私は涙を堪えながら、
笑顔で彼を見上げた。

すると、
彼の悲しそうな顔は
一気に優しい笑顔に
変わったんだ。


 

⏰:09/11/15 18:27 📱:W61K 🆔:t4cgse.o


#177 [あんず]
 

「勿論覚えてる。
忘れてなんかいない。
忘れられる訳、ない。」

そう言った彼の笑顔に、私は酷く安心した。

ヒロ、
私も同じことを
想っていたよ。


私もずっと、この先も…

忘れられる訳ないよ。

 

⏰:09/11/20 19:03 📱:W61K 🆔:PovzlMio


#178 [あんず]
 

壁に掛かっている
時計を見ると、
早くも8時だった。


時というのは残酷で。

嫌でもどんどん
進んでいってしまうの。


 

⏰:09/11/21 12:01 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#179 [あんず]
 

そろそろかな、
なんて思ってしまう。

彼と離れる恐怖と、
寂しさが私を襲う。


でももう十分。

十分過ぎるくらい、
私は幸せだった。


 

⏰:09/11/21 20:33 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#180 [あんず]
 

貴方と過ごせた時間は、
長いようで
短かったけれど。


最期に貴方とこうして
時を過ごせたんだもん。



私は今とても…幸せ。


 

⏰:09/11/21 20:37 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#181 [あんず]
 

私は強く、強く
彼を抱き締めた。



時間はもうない。

だから最期まで、
貴方を感じたい。


 

⏰:09/11/21 20:56 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#182 [あんず]
 


カチッ、と
時計の針が1つ動く。


それと同時に


「リナ…ッ…!?」


という、動揺した
彼の声が耳に入った。


 

⏰:09/11/21 20:58 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#183 [あんず]
 

彼を見上げると、
涙ぐむ彼の姿。


そんな彼の視線を追うと
自分の体が目に入った。



見えたのは

透けた、自分。


 

⏰:09/11/21 21:08 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#184 [あんず]
 


あぁ、透けてる。


それくらいしか、
感じなかった。
驚きもしなかった。


でも、
やっぱり寂しさは
消えてくれない。


 

⏰:09/11/21 21:16 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#185 [あんず]
 

離れてしまう寂しさは、いつまでも私を取り巻いている。

寂しさが
消えることは、
この先きっとない。


でも大丈夫だよね。

だって寂しさを
忘れるくらい、
幸せなんだから。


 

⏰:09/11/21 21:26 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#186 [あんず]
 

私は彼の涙を拭う。
「そんな顔しないで、
もっと笑って?」
と彼に伝えながら。


すると彼は


私に優しく、
   キスをした。


 

⏰:09/11/21 21:31 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#187 [あんず]
 

柔らかくて、
温かい彼の唇。

久々のキス。
大好きな、彼とのキス。


ほんの一瞬だったけど、一気に懐かしさが込み上げてきた。


 

⏰:09/11/21 21:38 📱:W61K 🆔:FBxQw/hE


#188 [あんず]
 

再び強く、
彼を抱き締める。


離れぬように、
離さぬように。


不思議ね、
私、泣き虫なのに…
今は涙すら出てこない。


 

⏰:09/11/24 23:02 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#189 [あんず]
 

寧ろ、今の私の表情は、
笑顔で溢れてる。

こんなに笑ったのは、
いつぶりだろう?


そんなことを
考えてるうちに、
時間はどんどん
進んでいる。


私の身体も、
とうとう彼の感覚を
感じなくなってしまった

 

⏰:09/11/24 23:05 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#190 [あんず]
 

温かさが
感じられない。
一瞬、怖くなった。
貴方に触れられない
恐怖が頭を駆け巡った。


でもね、今は
時間も、何もかも
考えたくない。


貴方と過ごしてる
この時を、感じたい。

 

⏰:09/11/24 23:07 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#191 [あんず]
 

「リナ、」

彼はまだ感覚がある、
私の頬を手で包んだ。

いつもと変わらない、
温かい大きな手。


貴方のこの手が大好き。
優しくて、安心できる
大好きな場所。

 

⏰:09/11/24 23:11 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#192 [あんず]
 

彼は私を見つめて、
優しくそっと微笑んだ。

そしていつもの
優しい声で、彼は



「あぁ、リアの瞳は
相変わらず綺麗だね。」

と笑ったんだ。

 

⏰:09/11/24 23:14 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#193 [あんず]
 

久々に聞いた、
リアと言う名前。
私が一度歩んだ、
黒猫の人生。


久々に聞いた、
彼の口癖。
いつも私を見るたび、
そう言ってたよね。


ご主人様……。

 

⏰:09/11/24 23:16 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#194 [あんず]
 


自分の身体はもう、ほとんど消えてしまっていた


別れの時がもう
目の前まで来ている。


でもね、もう
何も怖くないよ。


 

⏰:09/11/24 23:19 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#195 [あんず]
 


だって、
きっといつか……




貴方にまた、
逢える気がするから。


 

⏰:09/11/24 23:20 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#196 [あんず]
 


そして私は、
最期の言葉を紡ぐ。


溢れるような笑顔で、

彼への感謝の言葉を、
彼への愛の言葉を。


 

⏰:09/11/24 23:22 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#197 [あんず]
 


「ヒロ…ッ、ご主人様…


ありがとう、
私を愛してくれて。


私に愛を教えてくれて、
ありがとう…。」

 

⏰:09/11/24 23:24 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#198 [あんず]
 


「愛してる、
この先も、ずっと…




ヒロ、ご主人様。




また、どこかで――…」


 

⏰:09/11/24 23:26 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#199 [あんず]
 



“またどこかで逢おう”



そう伝える途中に、
私は彼の目の前から
姿を消した。


 

⏰:09/11/24 23:29 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#200 [あんず]
 


途中だけど…
貴方には伝わったよね?

貴方には届いたよね?



ねぇ、ヒロ。

どんな形でもいい。


私、また貴方に逢いたい

 

⏰:09/11/24 23:32 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#201 [あんず]
 


神様、

私の最後の願いを
聞いて下さい。



いつでも、
どんな形でもいいです。


どうか、どうか
また彼に逢わせて下さい


 

⏰:09/11/24 23:35 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


#202 [あんず]
 


欲を言えば…






ずっと、ずっと

彼の側に
いさせて下さい。


 

⏰:09/11/24 23:36 📱:W61K 🆔:KrymBNm2


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