黒猫の唄。
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#180 [あんず]
貴方と過ごせた時間は、
長いようで
短かったけれど。
最期に貴方とこうして
時を過ごせたんだもん。
私は今とても…幸せ。
:09/11/21 20:37
:W61K
:FBxQw/hE
#181 [あんず]
私は強く、強く
彼を抱き締めた。
時間はもうない。
だから最期まで、
貴方を感じたい。
:09/11/21 20:56
:W61K
:FBxQw/hE
#182 [あんず]
カチッ、と
時計の針が1つ動く。
それと同時に
「リナ…ッ…!?」
という、動揺した
彼の声が耳に入った。
:09/11/21 20:58
:W61K
:FBxQw/hE
#183 [あんず]
彼を見上げると、
涙ぐむ彼の姿。
そんな彼の視線を追うと
自分の体が目に入った。
見えたのは
透けた、自分。
:09/11/21 21:08
:W61K
:FBxQw/hE
#184 [あんず]
あぁ、透けてる。
それくらいしか、
感じなかった。
驚きもしなかった。
でも、
やっぱり寂しさは
消えてくれない。
:09/11/21 21:16
:W61K
:FBxQw/hE
#185 [あんず]
離れてしまう寂しさは、いつまでも私を取り巻いている。
寂しさが
消えることは、
この先きっとない。
でも大丈夫だよね。
だって寂しさを
忘れるくらい、
幸せなんだから。
:09/11/21 21:26
:W61K
:FBxQw/hE
#186 [あんず]
私は彼の涙を拭う。
「そんな顔しないで、
もっと笑って?」
と彼に伝えながら。
すると彼は
私に優しく、
キスをした。
:09/11/21 21:31
:W61K
:FBxQw/hE
#187 [あんず]
柔らかくて、
温かい彼の唇。
久々のキス。
大好きな、彼とのキス。
ほんの一瞬だったけど、一気に懐かしさが込み上げてきた。
:09/11/21 21:38
:W61K
:FBxQw/hE
#188 [あんず]
再び強く、
彼を抱き締める。
離れぬように、
離さぬように。
不思議ね、
私、泣き虫なのに…
今は涙すら出てこない。
:09/11/24 23:02
:W61K
:KrymBNm2
#189 [あんず]
寧ろ、今の私の表情は、
笑顔で溢れてる。
こんなに笑ったのは、
いつぶりだろう?
そんなことを
考えてるうちに、
時間はどんどん
進んでいる。
私の身体も、
とうとう彼の感覚を
感じなくなってしまった
:09/11/24 23:05
:W61K
:KrymBNm2
#190 [あんず]
温かさが
感じられない。
一瞬、怖くなった。
貴方に触れられない
恐怖が頭を駆け巡った。
でもね、今は
時間も、何もかも
考えたくない。
貴方と過ごしてる
この時を、感じたい。
:09/11/24 23:07
:W61K
:KrymBNm2
#191 [あんず]
「リナ、」
彼はまだ感覚がある、
私の頬を手で包んだ。
いつもと変わらない、
温かい大きな手。
貴方のこの手が大好き。
優しくて、安心できる
大好きな場所。
:09/11/24 23:11
:W61K
:KrymBNm2
#192 [あんず]
彼は私を見つめて、
優しくそっと微笑んだ。
そしていつもの
優しい声で、彼は
「あぁ、リアの瞳は
相変わらず綺麗だね。」
と笑ったんだ。
:09/11/24 23:14
:W61K
:KrymBNm2
#193 [あんず]
久々に聞いた、
リアと言う名前。
私が一度歩んだ、
黒猫の人生。
久々に聞いた、
彼の口癖。
いつも私を見るたび、
そう言ってたよね。
ご主人様……。
:09/11/24 23:16
:W61K
:KrymBNm2
#194 [あんず]
自分の身体はもう、ほとんど消えてしまっていた
別れの時がもう
目の前まで来ている。
でもね、もう
何も怖くないよ。
:09/11/24 23:19
:W61K
:KrymBNm2
#195 [あんず]
だって、
きっといつか……
貴方にまた、
逢える気がするから。
:09/11/24 23:20
:W61K
:KrymBNm2
#196 [あんず]
そして私は、
最期の言葉を紡ぐ。
溢れるような笑顔で、
彼への感謝の言葉を、
彼への愛の言葉を。
:09/11/24 23:22
:W61K
:KrymBNm2
#197 [あんず]
「ヒロ…ッ、ご主人様…
ありがとう、
私を愛してくれて。
私に愛を教えてくれて、
ありがとう…。」
:09/11/24 23:24
:W61K
:KrymBNm2
#198 [あんず]
「愛してる、
この先も、ずっと…
ヒロ、ご主人様。
また、どこかで――…」
:09/11/24 23:26
:W61K
:KrymBNm2
#199 [あんず]
“またどこかで逢おう”
そう伝える途中に、
私は彼の目の前から
姿を消した。
:09/11/24 23:29
:W61K
:KrymBNm2
#200 [あんず]
途中だけど…
貴方には伝わったよね?
貴方には届いたよね?
ねぇ、ヒロ。
どんな形でもいい。
私、また貴方に逢いたい
:09/11/24 23:32
:W61K
:KrymBNm2
#201 [あんず]
神様、
私の最後の願いを
聞いて下さい。
いつでも、
どんな形でもいいです。
どうか、どうか
また彼に逢わせて下さい
:09/11/24 23:35
:W61K
:KrymBNm2
#202 [あんず]
欲を言えば…
ずっと、ずっと
彼の側に
いさせて下さい。
:09/11/24 23:36
:W61K
:KrymBNm2
#203 [あんず]
:09/11/24 23:40
:W61K
:KrymBNm2
#204 [あんず]
「うわぁー!!
お父さん見てみて、
星いーっぱい!!」
「おぉ、本当だなぁ。
――…ユナは本当に、
星空が好きだね。」
にこっと笑うお父さんの上に跨がり、肩車をしてもらう。肩車をすると星に触れそうで、ぐんっと思いきり手を伸ばす。
:09/11/24 23:52
:W61K
:KrymBNm2
#205 [あんず]
「んんん〜っ、
届かないよぉ、お父さん大きくなって!!」
そう言うと、
お父さんはハハッと少し困ったようにに笑った。
「ユナ…星はな、すぐに
届くような物じゃない。
でかくなっても届かないくらい星は遠いんだ。」
:09/11/24 23:56
:W61K
:KrymBNm2
#206 [あんず]
「…じゃあ、
星に触れないのー?」
「ううん、違う。
ユナがこれから
たーくさん年をとって、
おばあさんになって、
そして星になるとき…
きっと星に触れるよ。」
:09/11/24 23:59
:W61K
:KrymBNm2
#207 [あんず]
そう言ったお父さんは
ずっと空を見つめていた
私も一緒に空を見る。
空の星は
キラキラ綺麗で…
いつか絶対、
触ってやると心から
誓ったんだ。
:09/11/25 00:01
:W61K
:fWOlF0LQ
#208 [あんず]
暫くして、
公園のベンチに
座っていたお父さんは
ゆっくり立ち上がった。
「よし、ユナ帰るか。
お母さんがご飯作って
待ってるぞ。」
丁度お腹が減る時間。
自分もぴょんっと
ベンチから降りて、
先に歩いてるお父さんに向かって走っていった。
:09/11/25 00:05
:W61K
:fWOlF0LQ
#209 [あんず]
小さな足で地面を蹴り、やっとたどり着いたお父さんの手を握る。
そして家に帰るため、
信号が青になるのを
待っている時。
真っ黒の猫が、
私の目に入った。
:09/11/25 00:11
:W61K
:fWOlF0LQ
#210 [あんず]
「あっ、猫ー…」
軽快なリズムで
歩く黒猫を見て、
私は堪らずその姿を追う
途中、お父さんの
声が聞こえたけど、
それも無視して
その黒猫を追った。
:09/11/25 00:13
:W61K
:fWOlF0LQ
#211 [あんず]
「猫さんっ、待って!!」
走って走って走って。
そしてやっと黒猫の
隣まで追い付いた時。
ドンッ、と
私は何かにぶつかった。
:09/11/25 00:16
:W61K
:fWOlF0LQ
#212 [あんず]
「痛い……。」
額を何かにぶつけ、
手で痛い所を押さえる。
痛さを堪えて
ぎゅっと瞑っていた
目を少し開くと、
目の前には、
茶色い髪の男の子が
立っていた。
:09/11/25 00:22
:W61K
:fWOlF0LQ
#213 [あんず]
その男の子は、
額を押さえている。
一緒だぁ、なんて
少し感動を覚えながら
ボーッとただその男の子を見つめていた。
「あっ、ごめん!!
おでこ痛い!?」
するとさっきまで
何も言わず立っていた男の子は、突然あたふたと動き始めたんだ。
:09/11/25 00:29
:W61K
:fWOlF0LQ
#214 [あんず]
そんな姿が面白くて、
私は思わず
口元が緩んでしまった。
「えへへっ
ユナ、大丈夫だよ!!」
そう言いながら、
男の子に額を見せる。
すると男の子は、
安心したかのように柔らかく微笑んだ。
:09/11/25 00:32
:W61K
:fWOlF0LQ
#215 [あんず]
凄く、凄く優しく。
そして凄く懐かしい。
そんな、彼の笑顔。
その笑顔につられて、
私まで微笑む。
なんだろう…
とても心が温かい。
:09/11/28 07:41
:W61K
:b99CU1No
#216 [あんず]
どうして懐かしいの?
そんな疑問が
頭に浮かんだ。
「この人と私は、
いつか会ったことが
あるのかな…」
なんて思い、記憶を
覚えてる限り辿る。
でも、この人との
記憶なんて、
1つもなかった。
:09/11/29 17:30
:W61K
:bLhx7oT.
#217 [あんず]
「あの…お兄ちゃん、
名前何て言うの?」
名前を聞いたら、
思い出せるかも知れない
そんな淡い期待を胸に、私は名前を尋ねた。
すると彼は
「僕の名前はヒロト!!
ヒロでいいよ。」
と、笑顔で答えたんだ。
:09/11/29 18:58
:W61K
:bLhx7oT.
#218 [あんず]
ヒロ…くん。
彼の名前を聞いた途端、
胸がドクンと高鳴った。
“ヒロト”と言う名前は
やっぱり記憶の中でどんなに探しても、見当たらなかった。
淡い期待も
あっさりと裏切られた。
けれど―――…。
:09/11/30 18:40
:W61K
:ACyroCOI
#219 [あんず]
なんでだろう、
彼の名前を聞くと…
愛しくて、
堪らないんだ。
:09/11/30 18:41
:W61K
:ACyroCOI
#220 [あんず]
とても、とても
幸せな気持ちになれる。
とても安心出来る。
不思議だね…。
私達、
今日会ったばかりなのに
なんだかずっと昔から、
一緒にいる気がする。
:09/11/30 18:45
:W61K
:ACyroCOI
#221 [あんず]
「ユナー、行くぞー。」
そんなことを考えてる途中に、遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
…お父さんだ。
もう時間なんだ、なんて寂しい気持ちを堪え、
「はーいっ!!」
と、私は大きく返事をして、彼に目を向けた。
:09/11/30 18:53
:W61K
:ACyroCOI
#222 [あんず]
「ヒロくん、
私もう帰んなきゃ…。」
「そっか、…じゃあ僕もそろそろ帰るね。」
彼は微笑みながら答える
ヒロくんと…、
また会えるのだろうか。
…離れたくない。
そんな感情が、
私の胸を痛めた。
:09/11/30 21:43
:W61K
:ACyroCOI
#223 [あんず]
彼はゆっくりと
私に背を向けた。
その背中は近いはずなのに、凄く遠く見える。
また、ヒロくんに
逢いたい。
「…ヒロくん、
また、逢えるよね?
いつかまた…
一緒にお話出来るよね?」
:09/11/30 21:47
:W61K
:ACyroCOI
#224 [あんず]
私は彼の服の裾を
掴み、俯いた。
“また彼に逢いたい”
と言う気持ちが大きくて堪らなかった。
我が儘かもしれない。
理由もわかんない。
けど、またヒロくんに逢いたいんだ。
:09/12/04 23:12
:W61K
:rfEg6w7U
#225 [あんず]
すると、
固く目を閉じ、
俯いていた私の頭に
微かだけれど、
とても温かい何かを
感じたんだ。
:09/12/04 23:14
:W61K
:rfEg6w7U
#226 [あんず]
温かい。
見上げると、
いつの間にか振り向き
微笑む彼の姿。
そして彼の右手は
私の頭の上にあった。
「――――…っ!!」
:09/12/04 23:16
:W61K
:rfEg6w7U
#227 [あんず]
胸が、締め付けられた。
嬉しくて、切なくて。
――――愛しくて。
彼は優しく
私の頭を撫でたあと、
再び私に背を向け、
ゆっくりと歩き始めた。
:09/12/05 20:55
:W61K
:4uM4GwxA
#228 [あんず]
彼は私の問いかけに、
答えなかった。
でもね、
私には伝わったよ。
しっかりと、
……伝わったの。
「また逢える」って。
:09/12/05 21:13
:W61K
:4uM4GwxA
#229 [あんず]
言葉にしなくても、
ちゃんと伝わる
貴方と私。
“またどこかで逢おう”
不意に私の頭に
その言葉が浮かんだ。
その言葉は、
不思議なくらい
懐かしく感じた。
:09/12/05 21:40
:W61K
:4uM4GwxA
#230 [あんず]
懐かしい、
覚えのある言葉。
これは、
私、ユナがヒロくんに
対して想った言葉なのか
それとも――――…。
:09/12/05 21:44
:W61K
:4uM4GwxA
#231 [あんず]
いつの間にか
遠く小さくなる彼の姿。
そんな彼を見届けて、
私は待っているお父さんの元へ向かう。
走ってる途中、私の
目の前に広がる星空。
冬の星空が、
切ないくらい綺麗だった
:09/12/05 21:49
:W61K
:4uM4GwxA
#232 [あんず]
まるで星空の中を
駆け抜けるかのように、
私は空を
見つめながら走った。
夢中で走ってると、
「ユナ、」と言うお父さんの声が聞こえた。
少し上を見上げると
「前を向いて走らないと、危ないだろ?」
と微笑む、
お父さんがいた。
:09/12/05 21:53
:W61K
:4uM4GwxA
#233 [あんず]
「ほら、お母さんが
ご飯作って待ってるぞ。
もう帰ろう?」
私の手を握り、
家に向かい歩き始めるお父さん。
私の歩幅に合わせて、
ゆっくりと歩いてくれる
「お父さんっ
今度またお星様、
捕まえに来ようね!!」
:09/12/05 21:59
:W61K
:4uM4GwxA
#234 [あんず]
そう言うと、お父さんは優しく微笑んだ。
また、
お星様を捕まえに来て。
また、
ヒロくんに逢いに行って
お話をして、
笑いあって……。
:09/12/05 22:07
:W61K
:4uM4GwxA
#235 [あんず]
そんな幸せなことを思い描いていると、いつの間にか目の前には自分の家。
「遅かったね、
ご飯出来たわよ。」
と笑うお母さんが、
玄関で私達を待っていた
「ただいまっ!!」
:09/12/05 22:16
:W61K
:4uM4GwxA
#236 [あんず]
私は家に入るとき、
最後にもう一度だけ
綺麗な星空を見上げた。
キラキラと、
優しく輝くお星様。
すると、
私の目には
一際綺麗に輝く星が
映ったんだ。
:09/12/05 22:19
:W61K
:4uM4GwxA
#237 [あんず]
あまりの綺麗さに
目が、離せない。
ただ目を見開きながら、
星空を見上げてると
お父さんでも
お母さんでもない、
少し低く優しい声が
耳を掠めた。
:09/12/05 22:38
:W61K
:4uM4GwxA
#238 [あんず]
:09/12/05 22:49
:W61K
:4uM4GwxA
#239 [あんず]
「え………?」
その声は、
綺麗な星空の中で
静かに響いた。
「ユナ?どうしたの、
早くおいで。」
そう言うお母さんの方を振り返り、「はい」と1つ返事をした。
そしてもう一度、
ゆっくり空を見上げ…。
:09/12/05 22:54
:W61K
:4uM4GwxA
#240 [あんず]
「待ってたよ、
貴方にまた逢える日を」
と、呟いたんだ。
誰にも聞こえないくらい小さな声で。
でもきっと、
貴方には届くはず。
あの星に、届くはず。
:09/12/05 22:57
:W61K
:4uM4GwxA
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