黒猫の唄。
最新 最初 全 
#3 [あんず]
:09/08/11 14:47
:W61K
:qGBM5BGk
#4 [あんず]
「リア、お前の瞳は本当に綺麗だね。」
ご主人様はいつも笑いながら私にそう言う。
まるで口癖のように。
“ブルーの瞳が綺麗だ”と。
:09/08/11 15:06
:W61K
:qGBM5BGk
#5 [あんず]
私はご主人様にそう言われるのが嬉しかった。
笑いながら、頭を撫でて貰うのが好きだった。
ご主人様の手は、温かくて、大きくて。
撫でて貰うと、なんだかとても安心するの。
:09/08/11 15:09
:W61K
:qGBM5BGk
#6 [あんず]
――私の名前はリア。
真っ黒な毛、
真っ青な瞳が特徴のごく普通の黒猫。
ご主人様に助けてもらう前は、その辺の道端で歩いている普通の野良猫だった。
:09/08/11 15:21
:W61K
:qGBM5BGk
#7 [あんず]
「リア、ご飯だよ。」
そして今、私の目の前に餌の入った皿を置いてくれたのが……。
私の大好きな、大好きなご主人様。
:09/08/11 15:25
:W61K
:qGBM5BGk
#8 [あんず]
名前は確か…ヒロ。
あまり覚えてないけど、ご主人様のお友達が「ヒロ」と呼んでいた。
そしてご主人様の髪の毛はとても綺麗な蜂蜜色。
ふわふわ柔らかくて。
私はご主人様の髪の毛が大好きなんだ。
:09/08/11 15:34
:W61K
:qGBM5BGk
#9 [あんず]
――ご主人様と出会ったのは去年の冬。
凄く寒くて、まだ小さかった私は草むらで凍えていた。
そんな所を、ご主人様が見つけてくれた。
…助けてくれたんだ。
:09/08/11 15:52
:W61K
:qGBM5BGk
#10 [あんず]
何も言わずに私の上に積もった雪を払い、コートに包んで温めてくれた。
優しく微笑みながら、
頭を撫でてくれた。
あの日、ご主人様は私を助けてくれた。
:09/08/11 18:25
:W61K
:qGBM5BGk
#11 [あんず]
ご主人様は野良猫の私を拾ってくれたんだ。
優しくて、かっこよくて、面白いご主人様。
私はすぐにご主人様が大好きになった。
:09/08/11 18:31
:W61K
:qGBM5BGk
#12 [あんず]
大好きなご主人様には、いつも笑顔でいて欲しい
ずっと笑ってて欲しい。
ご主人様は
私に幸せをくれた。
だからご主人様も幸せでいてほしい。
猫ながらも、ご主人様の幸せを願っていたんだ。
:09/08/11 18:53
:W61K
:qGBM5BGk
#13 [あんず]
でも…でも……
私は見てしまったんだ。
:09/08/11 18:54
:W61K
:qGBM5BGk
#14 [あんず]
ご主人様が、
ベッドに座りながら俯いているのを。
そのご主人様の手には、綺麗な女の人の写真があるのを。
そしてその写真に、水滴がぽたりぽたりと落ちているのを。
:09/08/11 22:26
:W61K
:qGBM5BGk
#15 [あんず]
それがご主人様の“涙”だってことに気づくのに時間はかからなかった。
ご主人様が泣いている。
いつも笑顔でいてほしい、大好きなご主人様が泣いている。
なんで?なんで?
……………なんで…。
:09/08/11 23:02
:W61K
:qGBM5BGk
#16 [あんず]
私はただご主人様の膝に乗り、涙を舐め取ることしか出来なかった。
そんなことしか出来ない自分がふがいなくて、やるせない。
でもご主人様は私の頭を撫でて、「くすぐったいよ」と笑ったんだ。
:09/08/13 09:56
:W61K
:N1XzLosg
#17 [あんず]
その笑顔はとても無理してるように見えた。
だって…ご主人様の頬には、今でも涙が伝っている。
無理して笑ってくれるのは、私を心配させないため?
ご主人様…、ご主人様はどうしてそんなに優しいんですか?
:09/08/13 14:11
:W61K
:N1XzLosg
#18 [あんず]
もうご主人様を
泣かせたくない……。
――――私がご主人様を支えたい。
:09/08/16 13:13
:W61K
:RJ2wyNt2
#19 [あんず]
その想いが一気に強くなり、私の小さな心はぎゅっと締め付けられた。
でも…
ご主人様を支えるには、どうしたらいい…?
:09/08/19 19:18
:W61K
:XZYRHRvE
#20 [あんず]
あぁ、どうして自分は
猫なんだろう。
私は猫だから、ご主人様と話すことも、慰めることも出来ない。
自分は凄く無力で、何も出来ない。
:09/08/19 19:21
:W61K
:XZYRHRvE
#21 [あんず]
ご主人様と話したい。
ご主人様を慰めたい。
ご主人様と笑いたい。
…………私も、ご主人様みたいになりたい。
ご主人様と同じ、
“人間”になりたい!!
:09/08/19 20:17
:W61K
:XZYRHRvE
#22 [あんず]
その時、ブルーの瞳が一層に輝いた。
人間になれば、私でも出来ることがあるかもしれない…!!
1つの閃きで、リアの気持ちは一気に高まった。
:09/08/19 20:33
:W61K
:XZYRHRvE
#23 [あんず]
ご主人様、もう少し待ってて下さい。
私絶対、絶対に人間になって、ご主人様に会いに行きます。
その想いを込めて、私は1つ「みゃー」と鳴いた
:09/08/19 20:36
:W61K
:XZYRHRvE
#24 [あんず]
するとご主人様は少し微笑みながら「リアの鳴き声は可愛らしいね。」と私の頭を撫でた。
その笑顔を見て、少し安心しながら私はご主人様の部屋を後にした。
:09/08/19 20:40
:W61K
:XZYRHRvE
#25 [あんず]
パチパチ、と音を立てながら燃える炎。
そんな炎、暖炉の目の前で私は体を丸めた。
窓に映るお月様におやすみなさい、と告げて。
神様に祈りを捧げるかのように空を見つめて。
:09/08/19 20:56
:W61K
:XZYRHRvE
#26 [あんず]
――――神様、
どうか、どうか私を
人間にして下さい――
:09/08/19 20:57
:W61K
:XZYRHRvE
#27 [あんず]
:09/08/19 22:27
:W61K
:XZYRHRvE
#28 [あんず]
>>26――― チュンチュン...
いつものように聞こえる鳥の鳴き声。
この街の朝が来た。
私は重たい身体を起こし、漆黒の長い髪を手で掻きあげた。
………………え?
:09/08/20 19:06
:W61K
:s2zljno.
#29 [あんず]
長い髪……?
手で掻きあげた…?
よく考えたら、
いつもは大きいベッドが凄く小さい………。
…………もしかして!!
:09/08/20 19:09
:W61K
:s2zljno.
#30 [あんず]
私はベッドから降り、
洗面所の鏡に向かって足を走らせる。
心の中は、
喜びで溢れてた。
:09/08/20 19:12
:W61K
:s2zljno.
#31 [あんず]
いつもはご主人様に開けて貰わないと入れないドアも、全て自分で開けて進む。
……気持ちいい。
そして私は洗面所のドアを開け、鏡に向かった。
:09/08/20 19:16
:W61K
:s2zljno.
#32 [あんず]
鏡に映るのは、黒い髪で青い瞳の“女の人。”
あ、私女なんだ、とその時初めて気付いた。
私は感激して、その場から動けずにいた。
―私、人間になれた!!
:09/08/20 19:28
:W61K
:s2zljno.
#33 [あんず]
―――――神様、本当にありがとうございます!!
私、ご主人様のために
精一杯頑張ります。――
:09/08/20 19:30
:W61K
:s2zljno.
#34 [あんず]
…さて、早速ご主人様に会いに行かなきゃ…。
そう思い、私は鏡から目を反らした。
………でも、
よく考えたらこの姿でご主人様に会いに行ってもご主人様が驚くだけ…。
この姿では、ご主人様に会いに行けない……。
:09/08/20 19:36
:W61K
:s2zljno.
#35 [あんず]
どうしよう……!!
私はパニックになり、おろおろとその場を歩く。
ご主人様に会えない。
:09/08/20 19:49
:W61K
:s2zljno.
#36 [あんず]
私はなんて
馬鹿なんだろう。
ご主人様は気付くわけないのに。
わかるわけないのに。
悔しさで胸がいっぱいになる。
悔しさと混乱からか、私の瞳にはじわり、と涙が浮かんだ。
:09/08/20 22:14
:W61K
:s2zljno.
#37 [あんず]
その涙がポタリと床に落ちて滲む。
…これが、ご主人様の流した涙……。
私はぐいっと涙を拭い、ドアへ手を掛けた。
泣いてる暇なんてない。今はとりあえずこの家から出よう。
:09/08/20 23:20
:W61K
:s2zljno.
#38 [あんず]
“この家から出る”
そう決心し、私はドアを引いた。
ドアを引き、狭い隙間から外を覗く。
…………あ、やばい。
一瞬で私はそう思い、
静かに上を見上げた。
:09/08/20 23:29
:W61K
:s2zljno.
#39 [あんず]
大好きなご主人様の甘い香りが鼻を掠める。
そして視界いっぱいに広がるご主人様の、柔らかいふわふわな蜂蜜色の髪。
「…君は………?」
不思議そうな顔をした
ご主人様が、ドア越しの目の前に立っていた。
:09/08/20 23:34
:W61K
:s2zljno.
#40 [あんず]
「……………っ!!」
驚き過ぎて声が出なかったのか、私は口をパクパクしながらご主人様を見上げる。
ご主人様は目を見開く。
まさかこんな所で
ご主人様と鉢合わせになるなんて―――。
:09/08/21 22:38
:W61K
:u3ldLYt.
#41 [あんず]
するとご主人様は私の肩をぐいっと掴んだ。
その手は震えていて、
力強くて、少し痛かった
「…………っっ、」
私はただ固まってるだけ。頭の中は大パニックだ。
:09/08/21 22:41
:W61K
:u3ldLYt.
#42 [あんず]
肩を掴んでる手は、次第に強くなる。
少し痛いけど、それどころではなかった。
そしてゆっくりと、ご主人様は口を開いた。
「………リナ………?」
:09/08/21 22:53
:W61K
:u3ldLYt.
#43 [あんず]
………リ…ナ?
なぜか聞き覚えのある名前だった。
どこか切なくて、懐かしい気持ちになる。
でも“リナ”って、
誰なの――――?
:09/08/21 22:56
:W61K
:u3ldLYt.
#44 [あんず]
未だに声の出ない私を、ご主人様はじっと見つめる。
そしてご主人様は肩を掴んでる手を離し、頭を抱えて笑った。
「……な、訳ないよな。ごめんね、人違いだったよ。」
その笑顔はこの前見た笑顔と同じ、無理しているような笑顔だった。
:09/08/21 23:01
:W61K
:u3ldLYt.
#45 [あんず]
私はただ顔を横に振る。
「あはは、そんな悲しそうな顔しないで。………で、君の名前はなんて言う?」
ご主人様は変わらない笑顔でそう言った。
「……私、は……。」
やっとの思いで絞り出した声は、あまりにも弱々しくて、小さかった。
:09/08/21 23:05
:W61K
:u3ldLYt.
#46 [あんず]
なんて言ったらいいんだろう……。
リアって言っても、大丈夫かな………?
私は不安に感じながらも
「…リア、です。」
と呟いた。
:09/08/21 23:07
:W61K
:u3ldLYt.
#47 [あんず]
「リア…?」
「あの…住む所がなくて……さ迷ってたら…ここにたどり着きました。」
あまりにも見え見えな嘘。猫だったから、嘘なんて考えたことなかった。
意外と嘘って、難しいんだな、と改めて感じた。
:09/08/21 23:09
:W61K
:u3ldLYt.
#48 [あんず]
「……そうか、大変だったんだね。」
そう言ってご主人様は私の頭を優しく撫でた。
この感覚が大好きなのは、人間も猫も関係ないんだなぁ…。
「ごめんなさい…っ」
私は頭を下げ、その場から立ち去ろうとした。
なんか、このままいたら涙が溢れそうだから。
:09/08/21 23:25
:W61K
:u3ldLYt.
#49 [あんず]
するとご主人様は私の腕を強く掴んだ。
「…君は昔の知人によく似ているんだ。なんだか放っておけない。」
その時のご主人様の表情は真剣で、その綺麗な目が私を動けなくした。
:09/08/21 23:28
:W61K
:u3ldLYt.
#50 [あんず]
:09/08/21 23:32
:W61K
:u3ldLYt.
#51 [あんず]
>>49初めて見た
ご主人様の表情。
胸がドキドキする。
「…でも………、」
鼓動が煩いくらいに聞こえてくる。
:09/08/24 20:34
:W61K
:BWBDQQJM
#52 [あんず]
するとご主人様は私を腕を掴んでいた手を離し、頭を抱えた。
「っ…突然、ごめんね。君があまりにも知り合いに似てたから、少し動揺しただけなんだ。…君がリナなわけないのに……。」
ポツリ、と呟くご主人様の姿は、表情は、とても悲しげだった。
:09/08/31 12:57
:W61K
:fH2tl95k
#53 [あんず]
そんなご主人様を見て、とても胸が締め付けられた。
返す言葉が見つからない
「…でも、本当に住む所がないのなら部屋ぐらい貸してあげるよ。遠慮することはない。」
そう言いながらご主人様は、いつもの優しい笑顔で私の頭を撫でた。
:09/08/31 13:00
:W61K
:fH2tl95k
#54 [あんず]
「よろしく、お願いします……。」
私はご主人様の優しさに甘えることにした。
やっぱり、ご主人様の側にいたいから。
「…じゃあ部屋に案内しよう。おいで。」
ご主人様は優しく私の手を取り、少しずつ歩き始めた。
:09/08/31 13:03
:W61K
:fH2tl95k
#55 [あんず]
階段を上がりたどり着いた部屋は、私でも入ったことのない部屋だった。
薔薇の香りのする、大きく綺麗な部屋。
「こんな綺麗な部屋…、いいんですか?」
私はご主人様を見上げながら、遠慮がちに呟いた
:09/08/31 13:08
:W61K
:fH2tl95k
#56 [あんず]
「いいんだよ。何年も使ってないから埃っぽいけど……。」
2階にこんな素敵な部屋があるなんて知らなかった……。
こんな綺麗な部屋を使わしてくれるなんて、やっぱりご主人様は優しいな……。
:09/08/31 16:16
:W61K
:fH2tl95k
#57 [あんず]
「本当に、ありがとうございます…!!」
私は深く頭を下げ、ご主人様に感謝の気持ちを伝えた。
「こちらこそ、強引に住ませてしまってごめんね。僕の名前はヒロ。よろしく。」
柔らかく微笑んでいるご主人様は、やっぱり綺麗だった。
:09/08/31 17:11
:W61K
:fH2tl95k
#58 [あんず]
「よろしく、お願いします。……ヒロ…さん。」
初めてご主人様の名前を呼ぶ。
なんだろう、とても恥ずかしい。
私は少し頬を赤らめながら、ご主人様の手を握った。
:09/08/31 17:15
:W61K
:fH2tl95k
#59 [あんず]
「あぁ、よろしくな。リア。」
いつもと変わらない声色で私の名前を呼ぶ。
強く、強く握り返してくれた温かい手が、
とても心地よかった。
:09/08/31 17:17
:W61K
:fH2tl95k
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194