月蝕
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#12 [まぐろ]
やれやれ、と首を振る澪の色素の薄い髪が靡いた。
それを綺麗だと思ってしまった自分を恥じる。
「…頼りない姉君ですね。
僕としては貴女など…、帰って来なくても構いませんが」
「…そう、だね。
澪は彼がいればいいのだから。私はいらない」
「…」
沈黙は肯定だろう。
何も言わない澪を横切って自室へ向かった。
…重苦しい空気は、嫌い。
:09/09/23 02:12 :SH705i :☆☆☆
#13 [まぐろ]
襖を開けると同時に、瞠目した。
「お帰り、月夜」
誰もいるはずのない自室の窓辺に、彼がいたから。
彼は窓の縁に座って穏やかに微笑み、私を見つめている。
「…また澪が煩いでしょうね」
苦笑を浮かべながら、言う。すると彼はムッとして目を逸らし、立ち上がる。
:09/09/23 02:22 :SH705i :☆☆☆
#14 [まぐろ]
「家族が話すことは悪いことじゃない。澪は馬鹿なんだ。頭が堅い…馬鹿澪」
「澪は貴方のことを思って言ってるのよ?」
徐々に機嫌が悪くなっていく彼。
ため息を堪えて、彼に言い聞かせる。
「だから…俺達は家族、」
「普通の、ではないって…分かってるでしょう。太陽」
:09/09/23 02:29 :SH705i :☆☆☆
#15 [まぐろ]
彼の名を呼ぶと、彼…太陽は眉を寄せた。
緋色の着物を握り締めているようで、シワができている。
描かれた太陽が、眩しい。
「…望んだわけじゃ、ない。
この名前だって…!」
月夜…、と私に縋り付く太陽。
この話をすると、彼はどうしようもないくらい不安定になる。
落ち着いてほしくて、肩に置かれた彼の頭を優しく撫でた。
:09/09/23 02:42 :SH705i :☆☆☆
#16 [まぐろ]
.
お日様は、
いつだってお月様の
憧れなんです。
.
:09/09/23 16:25 :SH705i :☆☆☆
#17 [まぐろ]
私の膝を枕にすると、いつのまにかで眠っていた彼。
体を丸めて、まるで猫のようだ。
柔らかな彼の…私達双子の唯一の共通点である、漆黒の髪に指を通す。
双子といえど、それ以外に共通しているものは見受けられない。
それに指を絡めたまま、窓から見える藍色の空を見上げた。
:09/09/23 16:34 :SH705i :☆☆☆
#18 [まぐろ]
空に輝くものは、ない。
きっと今の私は、闇と同化してしまうに違いない。
そして…
「…月、」
描かれた月は、どこまでも冷たい。
藍色の空に浮かぶ、無感情な月…。
太陽が羨ましい。
:09/09/23 16:39 :SH705i :☆☆☆
#19 [まぐろ]
けれど分かっている。
私は日輪になどなれない。
緋色の着物なんて似合わない。
「…月と、太陽」
だから、いい。
あなたに憧れるのは、私。
置いていかれるのは、私。
だけど、いい。
太陽が笑ってくれるなら。
:09/09/23 16:44 :SH705i :☆☆☆
#20 [まぐろ]
「月夜さん、」
「!」
突然の声にハッとする。
襖の外から、…澪だ。
私を嫌いな彼が部屋に来るのは、決まって太陽がいる時。
また太陽を連れ戻しに来たのだ。
「…どうぞ」
了承の意を発すると、静かに襖が開いた。
:09/09/23 16:48 :SH705i :☆☆☆
#21 [まぐろ]
一応、主人の姉であると思ってか、控えめに入ってくる澪。
太陽の姿を目に捉えると、大きくため息をついた。
「、まったくこの人は…」
起きてください、と彼の横に膝をついて揺さぶる。
…無理に起こしてしまうなんて、可哀相ではないか。
:09/09/23 16:51 :SH705i :☆☆☆
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