月蝕
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#41 [まぐろ]
あざみは面倒そうにあたしを一瞥して、その手中のものに興味を注いだ。
「…ピアス?
あんたにしちゃ、珍しく地味なデザインだけど」
「そうそう!なんか惹かれちゃったんだよね〜」
彼女の言う通り、いつもは大きめの派手なものを買うのに、何故かこの小さい地味なピアスが欲しかった。
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#42 [まぐろ]
…といっても、使用する気は更々ない。
第一、こうまで地味だと服とも合わせづらい。
だから、ただ買うだけ。
「ふーん?
ま、私はこじんまりとしてて好きだけど。コレ」
「あざみもピアス開ければいいのにー!」
「…うちの高校、ピアス禁止なの知ってる?」
:09/09/30 08:14 :SH705i :☆☆☆
#43 [まぐろ]
あれ?そうだっけ?とおどけてみせると、呆れたようにため息を吐かれた。
変なとこで真面目だもん、あざみは。
校則なんてあってないようなものだしさ…先生も諦めちゃうし。
そう言うと、あざみはあたしの頭を軽く叩いて苦笑した。
:09/09/30 08:18 :SH705i :☆☆☆
#44 [まぐろ]
「桜って、本当に無鉄砲。
羨ましいよ」
「えー…それ褒めてないからヤだ!」
ピアスを手にレジへ行く。
値段は手頃だから、財布の心配もないだろう。
小さいやつはやっぱり安くていいな…。
会計を済ませて、あたし達はデパートを出た。
:09/09/30 08:23 :SH705i :☆☆☆
#45 [まぐろ]
「わー、日が落ちるのが早くなったね!」
「もう秋だしね。やだなあ、寒いの」
夕日で染まる赤い空を二人で見上げる。
ふと、さっき買ったピアスの存在を思い出し、鞄から取り出した。
「…桜?」
:09/09/30 08:29 :SH705i :☆☆☆
#46 [まぐろ]
ごそごそ鞄を探って、掴んだものを空に翳す。
あたしの不可解な行動を怪訝そうに見るあざみ。
でも、あたしは何故かそうせずにいられなかった。
「…月と太陽」
左右が違うピアス。
対になってる月と太陽。
それを、空に浮かべたかった。
:09/09/30 08:32 :SH705i :☆☆☆
#47 [まぐろ]
.
あたしはいつか、
世界を知る。
.
:09/09/30 08:34 :SH705i :☆☆☆
#48 [まぐろ]
.
私の光は、
すぐ傍にあった。
.
:09/10/02 21:14 :SH705i :☆☆☆
#49 [まぐろ]
その日は、快晴だった。
空気は暖かくて、小鳥が囀る、そんな昼下がり。
まさに平和そのもの。
「こんな日が…」
“ずっと続けばいい”
そう、願った。
きっと叶う願い事。
:09/10/02 21:16 :SH705i :☆☆☆
#50 [まぐろ]
「ん…」
小さく、伸びをする。
外は好きだ。
縛るものが何もない。
本当は太陽と外を歩きたいが、それを誰も許してはくれないだろう。
外出をやっと許してもらえたのも、二月ほど前だ。
:09/10/02 21:21 :SH705i :☆☆☆
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