月蝕
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#61 [まぐろ]
告げてしまった言葉には
嘘も、後悔もなかった。
それなのに、何故僕はこんなにも無力なのか。
何故、彼女を救えないのか。
…太陽と共に逃がしてやれないのか。
“いなくなれ”としか言えない自分に嫌気がさす。
:09/10/02 22:11 :SH705i :☆☆☆
#62 [まぐろ]
月夜さんに背を向けた僕はそのまま何も言わずに、屋敷へ戻った。
彼女も、僕を呼び止めなかった。
…別に期待をしていたわけじゃない。
彼女に嫌われるように接していたのだから、当然だ。
それでも優しい月夜さんは、僕を拒むことはなかったが。
:09/10/02 22:15 :SH705i :☆☆☆
#63 [まぐろ]
「…神楽家に生まれた月の運命、ですか…」
一部の者のみが知る、彼女の運命。
その他の人間は皆、知らないが故に彼女を崇める。
無知とはなんて恐ろしい。
人々の言葉が、彼女をどれほど苦しめたことか。
…僕が言えた義理ではないが。
:09/10/02 22:20 :SH705i :☆☆☆
#64 [まぐろ]
だけど、どんなに傷ついても…
「生きてさえ、
いてくれるなら…」
空を仰ぐ。
今日は綺麗な月が見れるのかと思うと心が躍る。
…久しぶりに今夜は、太陽と一緒にいさせてあげようか。
当主に気づかれなければ構うことはない。
:09/10/02 22:29 :SH705i :☆☆☆
#65 [まぐろ]
.
月と太陽。
どちらが欠けたとしても
僕は世界を失うでしょう。
.
:09/10/02 22:31 :SH705i :☆☆☆
#66 [まぐろ]
.
感じたのは、
淡い嫉妬心と
置いて行かれた寂しさ。
.
:09/10/02 22:40 :SH705i :☆☆☆
#67 [まぐろ]
やってしまった、と俺は一人頭を抱える。
畳にごろごろ転がり、ううと唸った。
…遂にたきつけてしまったのだ、澪を。
「あー、俺無責任っ!!
俺の馬鹿…!」
素直に、怖いと思った。
月夜が俺から離れて行くことが。
:09/10/02 22:44 :SH705i :☆☆☆
#68 [まぐろ]
「…」
先程の会話が蘇る。
“…なあ、澪”
“はい?”
“どうしたら…月夜を止められるのかな”
答えを知りたいあまりに、焦って何も考えられなかったのかもしれない。
“っ…そうだ!”
あの瞬間に戻れるなら戻りたい。
:09/10/02 22:50 :SH705i :☆☆☆
#69 [まぐろ]
ただ、月夜に未練を残させればいいと閃いた浅はかな考え。
澪が月夜を大切に思っているのは知っていたから。
“澪!月夜に想いを伝えるんだよ、お前が!”
今思えば最低だ。
二人の気持ちを踏みにじる提案だった。
:09/10/02 22:55 :SH705i :☆☆☆
#70 [まぐろ]
「…澪、言っちゃったかな」
天井を見つめながら呟く。
…ずるい。
どうして俺に出来ないことが他人に出来てしまうんだろうか。
確かに俺は月夜の恋人にはなれない。
だけど、月夜を救うのは俺でありたい。
:09/10/02 23:02 :SH705i :☆☆☆
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