ピンクな気分。U
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#201 [のの子]
 
「えっなんかすでに暗くなっちゃった?ごっごめんね?今のは忘れてください。」

聡美も慌てて謝り出す。

「だから終わりだって言ってんじゃん。ったく、次謝ったら電話切るぞ?!」

部屋で電話をしてた俺はベッドにねっころがる。

‥いや、マジそろそろ切った方がいいんじゃね?

「あっ‥ってか電話代あるしマジそろそろ切る?」

切るぞって脅しときながらもう一回聞く。

「あぁ〜‥そうだよね。なんか長電話しちゃってごめんね?」

あっ謝ったよ、こいつ。
切らなきゃじゃん。

⏰:09/11/06 22:39 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#202 [のの子]
 
ふっとそんな事を思った。

「いいよ。じゃまたな。」

「あっうん。またね。」

‥‥‥‥‥

こういう時のどっちが先に切るかっていうタイミングが分からない俺は、携帯を耳につけたまま静かに終わりを待つ。






「あのさぁ‥」

.

⏰:09/11/06 22:46 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#203 [のの子]
 
なかなか終わらないので、ついまた話し出す。

「‥ぷっ‥‥なぁに?」

聡美が待ってましたと言わんばかりにクスクス笑い出す。

こいつっ‥

ちょっと気恥ずかしいのを我慢して俺は天井を見つめながら一息吐く。

「‥またこういう風に電話しない?」

「えっ?」

聡美は驚いたのかクスクス笑う声が止まる。

「別に暇つぶしでもいいし。」

ドキ ドキ

うわ‥また来たこの感じ‥

今まで一定のリズムをとっていた俺の心臓がボリュームを上げて体中に響く。
.

⏰:09/11/06 22:59 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#204 [のの子]
 

「‥うんっ、彰君からもしてくれるならいいよ。私ばっかかけてたらなんかストーカーみたいだし?」

「あぁ、するする。」

また笑う声が聞こえると俺の心臓も大人しくなっていく。

「なんか私彼氏いなくなって暇人だからありがたいよ〜‥なぁんちゃって♪」

ドクンッ

確かに聡美の隣から竜二がいなくなったせいか俺の聡美への壁がなくなってきている気が‥

「彰君今の笑うところっ!‥自分で言うの凹むんだからぁ。」
.

⏰:09/11/07 21:08 📱:SH06A3 🆔:yGDc2Ssk


#205 [のの子]
 
「あっあぁ‥ご愁傷様です。ってかマジそろそろ切るから。」

「うわ〜ひどぉいっ。自己チュー‥」

聡美の拗ねた声が聞こえる。

本当子供だな。

聡美と祐輔が会ったらどうなるか考えると笑える。

「じゃまた電話するわ。」

「はぁい。私もできたらするねっ。‥彰君、ありがと。」

ん?

そのあとすぐじゃあと言って先に切ったのは聡美だった。

⏰:09/11/10 21:58 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#206 [のの子]
 
もう用済みの携帯を置いてまた俺はじっと天井を見上げる。」

はぁっ‥ヤバいな。

関わらないって決めたくせにめちゃくちゃ関わってるし。しかも長電話してるし。またしようとか言って‥

何してんだよ俺ぇー!!

バッ
枕を顔に押し付ける。
「ん゙〜〜〜〜〜〜っ!」

ぷはっ

「はぁはぁっ‥マジ何してんだよ、俺。」
.

⏰:09/11/10 22:04 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#207 [のの子]
 

‥真琴っ真琴っ

思い出せっ俺が好きなのは真琴だけ。そうだよ。

真琴‥真琴‥

真琴っ
『彰、どした?そんな寂しそうな顔して。』

‥真琴?

『泣きそうになってんの?やっぱガキだねぇ。』

‥笑うな、バカ。

『バカって言うなぁ!』

真琴‥

『ん〜?なに?』
.

⏰:09/11/10 22:14 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#208 [のの子]
 
俺‥真琴だけだよ。
真琴だけ愛し続ける。

『‥‥重っ!!ってか無理無理〜。』

‥‥‥んだとっこらぁ?!人が真剣に言って
『だってアンタ生きてんじゃん。私だけとか無理でしょ。』

っ!‥‥無理じゃない。

『ぷっ無理だって。』

だから笑うなって!本当に俺はお前の事‥
『彰君‥?』

聡美っ?

⏰:09/11/10 22:22 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#209 [のの子]
 
『彰君、どうしたの?‥泣いてるの?』

えっいやっこれは‥

『クスッ‥彰君て泣き虫?』

なっ!違げぇしっ!

『彰、その子誰?』

っ!真琴っ‥こいつは

『彰君?‥あの人誰?』

っ‥あいつは‥


.

⏰:09/11/10 22:27 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#210 [のの子]
 
『私の事ずっと好きとか言ってもしかして好きな子いたとか?嘘つき。』

『彰君‥?あの時好きって言ってたのは本当に嘘だったの?』

っ‥‥俺は‥俺が好きなのは‥

好きなのは‥

『っぷ‥あはははっマジ困った顔してるし!アンタまだわかんないのぉ?』

っ?!なっ何が?

『この子‥だーれ?』

はっ?そいつは‥だからっ‥聡美だ‥ろ?

っ?!

⏰:09/11/10 22:37 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#211 [のの子]
ドンッ

「ぐはっ!!」
「あっきーおはよーっ!」

祐輔が俺の腹の上に思いっきり座って跳ねる。

「おっはっよー!」

「祐輔っ‥おっおもい゙‥ギブ。」

やったぁ♪っと笑って祐輔はバタバタと俺の部屋からでていった。

うぇ゙‥あいつ強烈な起こし方だな。

「っつか寝てた‥マジで朝?」

ムクッと起き上がって携帯を見ると七時半になるところだった。

‥‥‥あいつ夏休みなのに早起きさせんなよぉ〜。
.

⏰:09/11/11 09:47 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#212 [のの子]
 
「はぁ‥あっちぃ。」

ため息を着くと適当に服をとって風呂場に向かう。

とりあえず風呂入ろ‥汗が気持ち悪ぃ。

「風呂入るからぁ!」

「はいよーっ。」

リビングに向かって一声かけると母さんの声と祐輔の笑い声が聞こえてきた。

‥朝から平和な家族だ。


シャーーーッ

勢いよく流れるシャワーを頭からかぶる。
.

⏰:09/11/11 09:55 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#213 [のの子]
  
「‥‥‥‥変な夢。」

変な夢を見た。

久しぶりに夢に真琴が出てきた。生前と変わらない姿のあいつ。

てっきり【忘れるな】そういう事かと思った。

でも途中から聡美まで現れて、二人に痛い所をつかれた。

夢の中でも修羅場って恐ろしい‥

‥‥でも、最後に真琴が笑って聡美の横にたった時

『この子‥だーれ?』
.

⏰:09/11/11 10:04 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#214 [のの子]
 
二人が並んで笑いながら俺を見つめた。もちろんそこにいるのは真琴と聡美。

‥でもふっとある事に気付いた瞬間、祐輔に起こられた。

でも覚えてる。


【二ノ宮】


二人とも同じ名字だという事。

‥偶然なのか?

偶然にしては恐い。
.

⏰:09/11/11 14:59 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#215 [のの子]
 
でもきっと偶然‥

いや、でも前に聡美の笑った顔が真琴に似てると思った事があった。

二ノ宮‥

他に真琴と聡美の繋がりは
シャーーーッ

「‥‥‥昇さん‥?」

ドクンッ

そうだ。二人は昇さんと繋がってる。

本当に偶然なのか?
.

⏰:09/11/11 16:56 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#216 [のの子]
 
「‥‥って考えすぎか。」

きっと変な夢を見たせいだ。

例えもし二人が繋がってたとしても、それはもう‥

【罪を忘れるな】

真琴がそう言ってるんだ。

変な夢だってきっと

真琴が怒ってるんだ。

「忘れないよ‥俺は人殺しだ。忘れない。」

忘れられない。
.

⏰:09/11/11 17:03 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#217 [のの子]
聡美Side

「あっそういえば明日桃達遊園地行くんだって。いいなぁ‥」

「へぇ〜‥付き合ってから初デートとか?」

「そうらしいよ。」

‥なんで彰君とわざわざ電話で桃達の初デートの話をしてるんだろ。

クスッ

若干そんな事を思いつつ、ペラペラと教科書をめくる。

彰君と今日2回目の電話。

彰君に電話しようって言われてから、なんだかんだ毎日1回は電話している。

「ってか補習明日だっけ?」
.

⏰:09/11/12 20:40 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#218 [のの子]
 
「うん、でももうほとんど復習したし大丈夫。」

「そう言って書く欄間違えなきゃいいけど‥」

う゛っ‥

「今回は大丈夫だもんねっ。」

パタンッ
教科書を閉じて近くにあった猫の形の抱きまくらをギュッと抱きしめる。

「なら良いけど〜。まぁ頑張ってこい。」

「‥うん。彰君は明日何してるの?」

.

⏰:09/11/12 20:45 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#219 [のの子]
 
「俺ぇ?あぁ〜‥バーベキューの日の用意でもすっかなぁ。」

「そっかぁ。もうすぐだもんね‥」

そう、もうすぐバーベキューの日。

彼と別れてから連絡もとってないし、もちろん会ってもいない。

別れてから初めて会う。

どんな顔で、どんな風に彼に接すればいいのかわからなくて不安になる。

桃にずっとくっついてるわけにもいかないしなぁ‥

「あいつなら普通に元気だよ。」

「へっ?」
.

⏰:09/11/12 20:51 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#220 [のの子]
 
「りゅーじっ。あいつは普通に元気だし、バーベキューも来るって。」

「えっあぁ、そうなんだっ。」

急に彰君の口から竜二君の名前が出てきたから不意をつかれた。

桃もフクも私に気を使ってか、竜二君については話題に出なかった。

「‥竜二君に‥どう接すればいいかわかんない。」

「はぁ?別に普通でいいじゃん。話したきゃ話して、話し掛けられたら話せばいいし。」

「えぇ〜‥私そんなの上手くできないもん。」

ギュッと抱きまくらに力を入れると猫の顔が曲がる。

「じゃ話さなきゃ
「それは避けてるみたいで嫌なんだもんっ。」

⏰:09/11/12 21:05 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#221 [のの子]
 
「それに皆に気使わして空気悪くしたくないのっ。」

「わがままかっ!‥はぁ。」

複雑な乙女心に彰君の小さなため息が染みる。

「‥ってかまぁ相手は竜二だし。たぶんあいつに合わせてれば平気だよ。」

「どういう意味?」

「空気壊さないようあいつから普通に接してくるはずって事。だからそれにお前は合わせりゃ平気だよ。」

竜二君から普通に‥?

「‥うん、確かに竜二君てそういう人だもんね。」
.

⏰:09/11/12 21:12 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#222 [のの子]
 
付き合った期間は自慢できるほど長くはなかったけど、彼と出会ってから一緒にいた時間で彼がどんな人かは少しはわかってるつもり。

竜二君は優しい‥

なのに自分には優しくできない所もあって

そこが少し心配な所だったなぁ。

「‥泣いてる?」

「えっ泣いてない泣いてないっ。ちょっとしんみりしちゃっただけ。」
.

⏰:09/11/12 21:22 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#223 [のの子]
 
「ふーん。ただのしんみりねぇ‥」

「本当だよ?だってあれから泣いてないもん。」

まぁ泣く隙もなく勉強してたんですけどね。

「へぇ〜‥涙枯れちゃったとか?それとも案外お前冷たい子だった?」

クスクスと嫌みったらしく笑う彰君にムッとする私。

「違うもんっ。あれから勉強もあったし、桃からも連絡来るし‥それに彰君も毎日電話してるから大丈夫なのっ!あっきーのバカ!」

「えっマジでムキになんなよっ。」

だってあの日から彰君に助けられてばっかりで本当に感謝してたのに‥

‥ふんっ。
.

⏰:09/11/15 20:19 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#224 [のの子]
 
「もう寝るっ!あっきーのバカッ!」

「はっ?!またバカッてお前なぁっ!」

「あっきーのバーカッ!」

ピッ プーップーップーッ

ふんっと猫の抱きまくらに更にまた力を入れる。

あっきーの‥バカ‥


でも

「‥‥本当に切っちゃったけど、怒ったかな?」

かけ直してくる気配もない携帯をじっと見つめる。
.

⏰:09/11/15 20:40 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#225 [のの子]
 
‥かけ直してもこないの?

何よっ‥べぇーっだ!

無反応の携帯に舌を出してフンッと放り投げる。

別にかけ直してこなくたっていいもんっ。

‥でもあんな切り方したら嫌になっちゃったかな?

♪〜♪〜♪
っ!

「‥彰君‥かな?」

放り投げた携帯を見つめる。

⏰:09/11/15 20:48 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#226 [のの子]
 
あっでもこの着信音メールだ。

「メールかぁ‥」

少し離れたとこに落ちている携帯をのろのろと手に取ると、やっぱりメール一件を受信していた。

カチッ
「あっ‥‥彰君だ。」

やっぱりメールは彰君からで、連絡があった事に少しほっとしながらも電話じゃない事に不安がよぎる。

カチッ カチッ

――――――

バカはお前だっ!
短気女!勝手にしろ。

――――――

「‥‥うぅっ‥やっぱ怒ってる〜!!」


その後、結局意地っ張りな私から返事をする事ももちろん謝る事もできないまま、補習当日を迎えた。

⏰:09/11/15 20:58 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#227 [のの子]
 
――――補習当日
ミーンミンミン

「はいっそこまで〜。んじゃ先生も忙しいんでさっさと帰れぇ。」

そう言う先生がさっさと教室から出ていくと同時に私は椅子の背もたれによっ掛かる。

「あっつい‥」

補習が終わった瞬間、私の口から出たのは教室の暑さについて。

夏休みの学校はモワモワしてかなり暑い‥

外から蝉の音と部活の子達の掛け声が聞こえる。

でも学校内は静かで、教室まで生徒と会う事もなかった。

「でも‥やっと解放されたぁ。」

補習という再テストはなんなくクリアしたと思う。

三回も確認したし、今回は大丈夫っ。
.

⏰:09/11/15 23:16 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#228 [のの子]
 
カチッ カチッ カチッ カチッ

教室の時計の針をじっと見つめる。

時刻はまだ11時前。

‥‥‥‥‥‥はぁっ。

「帰ろ。」

得に学校にいる用事もないし、今日の予定もない。

それに暇つぶしと言って彰君への電話もできないし‥

本当に私、暇人。

「はぁ‥お昼ご飯でも買って帰ろうかなぁ。」

今日に限って家族皆も出かけてる。

さみしー‥

⏰:09/11/15 23:23 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#229 [のの子]
 
立ち上がって筆箱とお財布と携帯しか入っていない軽い鞄を持つ。

「‥なんか私、一人ぼっちで可哀相。なんてねぇ〜。」

自虐ネタにふっと笑いながらゆっくり歩き出す。

ドアを開けようと手を伸ばすと、

ガラッ!!

ビクッ
「あっいた。」

「‥‥‥えっ?なんでいるの?」

「さてなんででしょう?」
.

⏰:09/11/15 23:35 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#230 [のの子]
 
私の目の前に現れたのは

「なん‥なんで竜二君が‥?」

私を見てクスクス笑う姿は前と変わない。

「ん?あっ補習お疲れ様。聡美ちゃんに会いに来たんだけど‥元気そうで良かった。」

そう言ってニッコリ笑った彼は私の横を通り過ぎて教室に入る。

私に会いに?

「なんで会いに来たの?連絡もなしに‥」

「あぁごめん。今日補習だってわかってたから連絡しなかったんだ。」

補習の日覚えてたんだ‥
.

⏰:09/11/17 15:21 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#231 [のの子]
 
ぐっと込み上げてきた何かを押さえるように私は唇を噛む。

ガタンッ
「はぁ〜‥暑いね。っというか久しぶりだね。」

「そうだね。」

ドアの前に立ったまま動かない私に対して竜二君は自分の席に座った。

「聡美ちゃん、あの時はごめんね‥急にあんな事になっちゃって。」

聡美ちゃん

前は呼び捨てだったのに‥

前と変わらずに私に話しかけ、笑う彼でも以前とは違うと突き付けられてるようで胸が痛い。
.

⏰:09/11/17 15:28 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#232 [のの子]
 
「‥私なら大丈夫だよ。」

ニコッと笑う私。

ズキッ

蓋を閉めていたのか‥

忘れかけていたあの時の感情が、溢れ出ようと私の心臓をギュッと痛みつけた。

「‥そう、良かった。あとこれ、返そうと思って。」

この距離からでもわかる。

キラッと光るそれは、初めて会った日に竜二君に取られたピアス。

ズキッ

‥また心臓が痛い。
.

⏰:09/11/17 18:27 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#233 [のの子]
 
「それ‥‥」

「別れたのにお揃いの物持ってるの変だし、返すよ。」

さっきから笑顔の竜二君がはいっとピアスを私に向けてきた。

今‥別れたって言った?

「‥っ‥‥‥」

「聡美ちゃん?」


竜二君から終わりにしようって言われただけで、別れようとは言われてなかった。

だから『別れ』って言葉にそこまでピンときてなかったのかもしれない。
.

⏰:09/11/17 21:42 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#234 [のの子]
 
「私っ‥本当バカみたい‥」

心の中で呟いたはずの言葉が、小さな声になって漏れた。


私、まだどこかで期待してたんだ。

また戻れるって‥

でも彼の中ではもうしっかり私達の恋は終わっていた。

『別れたのに‥』

そうだよね。

私達は別れたんだ。

もう小さく光るピアスのような繋がりなんて必要ないんだね‥
.

⏰:09/11/17 21:54 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#235 [のの子]
 
でも大丈夫‥心の準備はできてたもん。

目にたまった涙がこぼれないように、こぼれても彼には見えないように‥

前髪を手で押さえて目元が見えないようにする。

「っ‥うん‥‥わざわざありがと。ごめんねっ‥」

それだけ言うと、今にも涙がこぼれそうで恐くて動けなくなる。

「‥本当私ってダメだよね‥本当にバカッ‥」

私は竜二君のように笑えない。

できないよ‥

「‥‥さと
「確かにお前はバカだ。」.

⏰:09/11/17 22:17 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#236 [のの子]
 
っ?
ガシッ

「ひぁっ‥‥」

後ろから私の目を隠すよう大きな腕が私に被さった。

「しかもバカなくせに短気で泣き虫でチビで‥」

チビは余計でしょ‥

「‥はぁっ全く手間が掛かってほっとけないバカ女だな、お前の元カノは。」

「っ‥またバカって言ったぁ‥」

大きな腕が被さった事で涙はこぼれたけど、泣き顔をみせる事も彼がどんな顔をするか見る事もない。

また助けられた‥

勝手にしろって言ってたくせに‥なんでいるの?

彰君‥
.

⏰:09/11/17 22:34 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#237 [のの子]
 
「なんで彰がいんの?」

竜二君の冷静な声が聞こえた。

‥彰君も竜二君もどんな顔をしているんだろ?

私は彰君の大きな腕に顔をうめるよう、ただじっとする。

「別に〜。生意気なこいつにお仕置きしに来ただけだよ。」

お仕置き?

「まさかお前がいるとは思わなかったけど‥まぁこいつ連れてくから。」

グッと引っ張られて私はモタモタしながら歩く。
.

⏰:09/11/18 00:56 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#238 [のの子]
 
前‥見えないや‥

大きな腕から少し離れ彰君を見上げると、彰君が私服で来ていた事に初めて気づいた。

「‥泣き虫。しっかり歩け。」

彼はそう一言言うと今度は私の肩を抱いてまた一歩ドアに向かう。


「ちょっと待って。」

竜二君が私達を呼び止める。

⏰:09/11/18 01:07 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#239 [のの子]
 
「聡美ちゃんこれ‥これを返すために今日来たんだ。受けとって?」

「なにそれ?ピアス?」

っ!

彰君が振り返って小さなピアスを睨む。

「あっ‥あれ私のなの。だから‥」

彰君の黒いTシャツ掴む。

「‥んだよっめんどくせぇな。竜二、投げて。」

「なんでお前は上から目線なんだよ‥ほらっ。」

キラッ

竜二君の手から離れたピアスが一瞬輝いて彰君の手の中に渡った。
.

⏰:09/11/18 22:18 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#240 [のの子]
 
「はいよ。」

「ありがと‥」

数ヶ月ぶりに私の手に戻ってきたピアスは変わらず輝いている。

でも、私の耳にはもう片割れのピアスはない。

竜二君と別れた日、どこかに落としたのかいつの間にかなくなってた。

このピアスも私と同じで一人ぼっちなんだ。

一人ぼっち‥‥
.

⏰:09/11/18 22:26 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#241 [のの子]
 
「‥‥‥竜二君‥」

やっと出た小さな声。

「?‥なに?」

「私達‥別れたらどうなるの?」

一人ぼっちは寂しくて悲しくて怖い。

やっと竜二君の方を向くと、竜二君はにっこり優しく笑っていた。

いつも私を見つめていたあの優しい温かい目。

「大丈夫‥友達だよ。」


‥私達の赤い糸の繋がりはなくなってしまったけど、また違う繋がりがそこにはあった。

それは私には十分な繋がりだった。

⏰:09/11/18 22:36 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#242 [のの子]
竜二Side

「友達か‥」

二人がいなくなった暑い教室に俺はポツンと一人残った。

聡美ちょっと痩せた?俺と別れたからかな‥

そんな事を考えながら机に顔をつけて窓の外を見つめる。

‥嘘つくのってこんな辛くて体力使うんだな。

スッと目の前に手を置く。

キラッ

俺の手で光ったのは‥聡美のピアス。
.

⏰:09/11/18 22:44 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#243 [のの子]
 
あの日聡美が俺の家から飛び出して行った後、母さんがこのピアスを見つけた。

きっと聡美はどこかでなくしたと思ってるだけで、俺が持ってるとは思ってないだろう。

「やっぱこれも返すべきだった?」

コロコロと転がるピアスをただじっと見つめる。

ってかなんで彰いたんだろ‥?あの二人俺がいなくなった途端にあんな仲良しとかひでぇ〜。

『手間が掛かってほっとけない』

そうだよ。そこが聡美の可愛いとこで魅力なんだっつーの!

⏰:09/11/18 22:54 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#244 [のの子]
 
二人の並ぶ姿を思い出すと腹がたつのと同時に、なんとも言えない切なさが込み上げる。

あの事を二人が知るのももうすぐだろう‥

どうなるかわからないけど、俺は二人を見守る。今の俺にはそれぐらいしかできないから。

キュッとピアスを握りしめる。

「好きだよ、聡美‥」

聡美なら大丈夫。

彰も‥二人なら大丈夫だよ。

だから笑って?
.

⏰:09/11/19 01:58 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#245 [のの子]
聡美Side

「どうした?」

私が立ち止まって大きな校舎を見上げてるのを、彰君は不自然そうに見つめる。

「ん〜‥竜二君はまだ帰らないのかなって思って。」

「また泣かされたくせにあいつの心配すんのかよ。こりねぇ奴だな。」

ムッと彰君を睨むと彰君はふっと笑って歩きだす。

私もその後をついて歩く。

「あっつ‥」

「今日最高39°らしいよ。」

ミーンミンミーン

真夏の太陽が私達を照り付ける。

⏰:09/11/19 20:37 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#246 [のの子]
 
ミーンミンミーン

蝉の音があちこちからはっきりと聞こえる。

「‥なぁ。」

「なに?」

「お前まだ竜二の事好きなんだろ?友達って言われたのになんで笑ってんの?」

彰君が私を横目で見つめてきた。

「そりゃ嬉しいからじゃない?」
.

⏰:09/11/19 20:41 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#247 [のの子]
 
私はニコッと笑う。

涙がこぼれたさっきの私とは全く違う。

「嬉しいって‥『友達』が?もう恋愛対象じゃないって意味じゃん。」

「いいのっ私は嬉しいの‥だって別れたら全部終わりだと思ってたんだもん。」

そう、全部終わり。

どこかで一人ぼっちになると思ってた。

それほど私は彼が好きで、一時でも彼は私の全てだったのかもしれない。

「終わりじゃなかった‥友達でもいい。竜二君と繋がってたかったから。」
.

⏰:09/11/20 00:11 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#248 [のの子]
 
「嬉しい‥良かった〜。」

私がまた笑うと彰君はバカにしたように鼻で笑う。

「竜二は愛されてるねぇ。羨ましい〜。」

「やっちょっとぉ!もうっ‥あっもちろん竜二君だけじゃなくて彰君も愛してますよ〜?」

ピタッ

私が彰君にからかうようにニヤニヤ笑いながら服を引っ張ると、彰君が驚いた顔で立ち止まる。

「えっ‥?」

「おまっお前なぁ!そういうのやめろよ!」
.

⏰:09/11/20 00:25 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#249 [のの子]
 
「えっだって羨ましいとか言うから‥ごめんね?」

「別に羨ましいとか本気じゃねぇしっ。バカ女!」

「またバカって‥はぁい。」

ふんっと歩きだした彰君の耳が赤いのは太陽のせいでしょうか?

べぇーっだ!
‥クスッ

「ねぇ、あっきーアイス食べたいなぁ。」

「はぁっ?お前は幼稚園児かっ!」

「えっなんでっ?!」
.

⏰:09/11/20 00:31 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#250 [のの子]
彰Side

「うまい?」

「うんっ美味しい〜♪」

アイスを食べながら聡美が満足そうに笑う。

はぁ‥マジでこいつ祐輔と同レベルだな。

「はぁ、お前は笑ってる方がいいよ‥泣かれたらめんどい。」

「ん゛ーっ!ひどぉいっ!」

ってかマジで竜二に友達だって言われてから元気すぎてウザい。

結局こいつを心配してた俺より、竜二の冷たい言葉でこんな変わるもんなのか‥.

⏰:09/11/20 19:49 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#251 [のの子]
 
なんか俺‥こいつに振り回されただけ?

「なんか切ねぇー‥」

「ん?なになにっ?あっ彰君もアイス一口食べる?ほらっあーん♪」

ストロベリーのアイスをスプーンにとって俺の口の前で止める。

「‥‥‥‥‥‥。」

‥だからっ‥‥こういうのを普通にすんのがバカだって言ってんのにわかんねぇ奴だなぁ‥

「あれ‥あーんは?ストロベリー嫌い?」

「別に嫌いじゃ‥っ!!
「あはははっスキありー♪」

俺が口を開けるのを待ってたのか、俺の口の中にはストロベリーの香りが広がった。

⏰:09/11/20 19:57 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#252 [のの子]
 
「急に口に入れんな!
「でも美味しいでしょ?」

聡美がニコニコ笑いながらまたあーんと俺の口にアイスを運んできた。

自然に俺も口を開ける。

「んっまぁ美味いけど〜‥これ間接キスじゃね?」

ピタッ

今度は自分の口にアイスを運んだ手がピタリと止まる。

「ちっ‥違うよ!」

「‥いや〜そうだろ。」

「違うもん!全然違うしねっ!」

「お前今まで食べてたスプーンで俺の口に入れただろうが!」

「うっ‥ち違うやつ使ったもんね!」
.

⏰:09/11/20 20:08 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#253 [のの子]
 
顔を真っ赤にしてムキになる聡美を見て、つい俺もムキになる。

「じゃそのスプーンで今お前食ったよな?!それ俺が使ったやつだしっ。やっぱ間接キスじゃん。」

聡美の手にあるスプーンを指差してふんっと笑う。

「‥‥また彰君とキスしちゃったぁ。彰君の変態〜!」

聡美が顔を赤くしながらジタバタと足を鳴らす。

「誰が変態だっコラ。お前からやってきたんだろ?ってかアイス溶けますけど。」

アイスを見るとストロベリーのピンクの液体が揺れていた。
.

⏰:09/11/20 20:18 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#254 [のの子]
 
「‥‥でもぉっ‥。」

チラッと俺を見つめる聡美に俺は笑う。

「ぷっ‥もったいない事すんなよ。ただの間接キスじゃん。」

聡美の髪をクシクシャと撫でるとほっぺを赤くした聡美がそうだけど、っと小さな声で呟いた。

「やっぱ彰君食べて?私もうごちそうさま‥」

「えぇっ‥なんかもろに嫌がられてんのもショックなんだけど。」

「嫌とかじゃなくってぇ‥はっ恥ずかしいの!もうっほら食べて食べてっ!」
.

⏰:09/11/20 20:32 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#255 [のの子]
 
無理矢理アイスとスプーンを渡された俺を置いて歩き出す聡美。

「‥それ言われたらこっちも恥ずかしくなるっつーの。」

柔らかくなったアイスを口に運ぶ。

甘い‥

「ストロベリー好き?」

「ん‥まぁ好き。」

「私も好き。」

エヘヘッと笑う聡美を横に俺はアイスを食べる。

「ストロベリーの色とか甘酸っぱさって恋と似てません?」

何を言い出すんだ、こいつは‥

⏰:09/11/20 20:38 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#256 [のの子]
 
「あぁ〜‥どうかねぇ。」

「そうだよぉ!」

「だってわかんねぇもん。俺男の子だしー。」

そんな事を言いながらあっという間にアイスを食べきった。

「男の子でも恋した事ぐらいあるでしょ?」

恋ねぇ...

真琴がいた時の事を思い出しそうになったけど恋とは掛け離れた哀しみ込み上げてきて頭から消す。

「‥恋ってどんなんか忘れたぁ。」

「なにそれぇ〜!恋っていうのはねぇ‥
「竜二としか付き合った事ないくせに偉そうにすんな。」
.

⏰:09/11/21 20:19 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#257 [のの子]
 
コツン、と頭を叩くと聡美はまたほっぺを赤くしてムスッとした。

「そりゃ私も教えてもらった言葉だけどぉ‥」

「なら余計に偉そうにすんなっつーの。」

どうせ変なロマンチストな女から聞いたんだろう。

「えぇ〜‥でもこれ聞いてすごいって思っちゃったよわたしっ!」

もう話したくてしょうがないって顔をして俺を見つめる聡美。

っ‥しょうがねぇなぁ。

「じゃ試しに言ってみ?」

俺がそう言うと聡美の表情が明るくな

「えっとね‥えっと〜」

⏰:09/11/21 20:40 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#258 [のの子]
『恋をすると二つの感情が生まれるの。

自分勝手な考えや相手に押し付けてしまう欲、

それを色で例えるなら
情熱的な赤。

それとは逆に相手の気持ちを想ったり、嫌われないよう自分を守ったりする思いやり、

それは色で言うと純粋な白。

この二つがそろって恋なんだって。

だから恋をすると‥‥』
.

⏰:09/11/21 20:42 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#259 [のの子]
 
「―‥ピンクな気分になる。』って‥なんかすごくないっ?私そうなんだって納得しちゃったもん!」

あははと笑う彼女を俺は立ち止まってじっと見つめる。

なんで‥

「あれ、彰君?」

俺を不思議そうに見つめるこいつは

‥誰だ?

なんでその言葉を

お前が知ってるんだよ。

お前は真琴じゃないだろ?

聡美だろ?

――――――ポロッ

聡美が話した言葉は、
真琴がいつか俺に教えてくれた言葉だった。

『ピンクな気分』
.

⏰:09/11/21 20:56 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#260 [のの子]
 
『えっ?』

『ねぇねぇ、ピンクな気分って知ってる?』

真琴が俺の横に座る。

『知らない。なにそれ?』

『ピンクな気分っていうのはぁ〜‥―――』

―――

『だからピンクな気分。わかる?』

『ふーん‥アンタが意外にロマンチストって事はわかった。』

バシッ

俺がクスクス笑うと真琴が頭を思いっ切り叩いてきた。

『アホ。』
.

⏰:09/11/22 19:55 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#261 [のの子]
 
『いってぇー。真琴のバカ力ぁ!』

一瞬怒ったのかと思ったら真琴は笑っていた。

『私ね、こういうの好き。』

そういって真琴は俺の首に手を絡める

『‥俺を叩くのが?』

『違う。こうやってふざけ合いながら愛を深める事。』

『‥やっぱロマンチストだ。』
.

⏰:09/11/22 20:01 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#262 [のの子]
 
『しかもロマンチストでSっ気もある。新たな発見‥』

俺も真琴の腰に手を回す。

『アンタまた殴られたいの?』

『でもこうやって愛を深めるのが好きなんだろ?』

真琴がムッとしたのを俺は目を閉じて気付いてないふりをする。

唇がゆっくり重なっても真琴が嫌がらない事が彼女の気持ちを表していてほっとした。

⏰:09/11/22 20:06 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#263 [のの子]
 
『‥ねぇ、』

『ん?』

唇が離れたのが名残惜しくて俺はまだ真琴の唇を見つめる。

『私が今ピンクな気分なのわかる?』

真琴がニヤッと笑いながら俺にギュッとくっつく。

『ん〜‥わかるかも。』

『かもぉっ?』

『ぷっ‥わかるよ。俺も今そうだもん。』

そう言って笑いながら二人で何度もキスをした。
.

⏰:09/11/22 20:11 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#264 [のの子]
―――――

一筋の涙が俺の頬を落ちていくのがわかった。

「彰君‥?」

聡美が困った顔で俺を見つめる。

「大丈夫っ?なんか私変な事言っちゃった‥?」

心配そうに聡美がまたスカートのポケットからハンカチを出して俺に渡す。

俺‥またこいつの前で泣いてる。

そんな事を考えながらハンカチをただ見つめた。
.

⏰:09/11/22 20:16 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#265 [のの子]
 
「お前‥誰から聞いた?」

まだハンカチを差し出す聡美を見ずに俺は呟く。

「なにを?」

「さっきの話‥誰から聞いた?」

まだ流れる涙。

「誰って‥なんでそんな事聞くの?」

俺がハンカチを受け取らないとわかったのか聡美がハンカチをギュッと胸の前で握り締める。

「‥‥‥お前、真琴の‥」
.

⏰:09/11/22 20:22 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#266 [のの子]
プァーーーーッ!

ビック!

トラックが俺達に向けて大きなクラクションを鳴らしてきた。

自然と道の端っこに行くとトラックは排気ガスを撒き散らして通り過ぎて行った。

「びっびっくりした‥」

「うん。」

聡美を見るとトラックに驚いたからか、それとも俺が恐かったのか‥

キュッと俺のTシャツを握って下唇を噛んでいた。

「‥大丈夫?」

「えっあっごめんね。大丈夫大丈夫っ。」

そういって手を離すと俯いて立ちすくむ姿に、俺の胸がチクッと痛む。
.

⏰:09/11/22 20:35 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#267 [のの子]
 
「‥‥彰君、」

「なに?」

聡美が哀しみと寂しさがこもった弱い目で俺を見つめる。

それを見つめると、俺の胸はまたチクッ痛んだ。

「さっき『真琴』って言ったの‥?」

やっぱり‥

「‥‥そうだよ。」

聡美の表情と、聡美の口から真琴の名前が出た瞬間わかった。


こいつは真琴と繋がってる。
.

⏰:09/11/23 20:16 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#268 [のの子]
聡美Side

彰君の口から真琴って言葉が出た瞬間、トラックのクラクションの音が響き渡った。

まるで聞くなって誰かが言ってるみたいに‥

でも、私にはトラックのクラクションより真琴って言葉の方に驚いてた。

ドクン ドクン ドクン


知ってる‥の?

彰君が‥まこ姉の事‥

なんで?

ドクン ドクン ドクン
.

⏰:09/11/23 20:25 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#269 [のの子]
 
この人は‥誰から何を聞いてまこ姉を知っているの?

「ピンクな気分って真琴が言ってたんだろ?‥俺も前聞いた‥」

でも彼が口にするまこ姉の名前の呼び方は、優しかった。

「お前‥‥真琴の
「なんで彰君がまこ姉の事知ってるのっ?!」

私の目から涙が溢れ出す。

なんで?

なんで?
.

⏰:09/11/23 20:30 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#270 [のの子]
 
神様っ‥なんで

竜二君が私の隣からいなくなって

彰君までいなくなるの?

「話したくないっ‥話したくないっ。」

きっと彼も全てを話せば私を軽蔑の目で見るんだろう。

【姉貴が死んでから話せるようになるとか気持ち悪ぃ‥】

【お姉ちゃんが死んだ瞬間笑ってたらしいよ?】

【恐〜い】
.

⏰:09/11/23 20:37 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#271 [のの子]
 
違うよ

いっぱい泣いたもん

【事故ってあいつが殺したんじゃねぇの?】

【人殺し】

やめて  違う

【姉貴殺し】

【お前の姉貴、お前のせいで死んだよ】


やめてっ 違うってばぁ


.

⏰:09/11/23 20:40 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#272 [のの子]
 
「やだっ‥話したくない。」

「聡美‥?」

私はボロボロ涙をこぼしながら彰君から後退りする。

「おいっちょ
「彰君にっ‥嫌われたくないの。だから話したくないっ!」

私はそこから逃げるように走り出す。


彰君は今までの人とは違うかもしれない。

彼を信用してないわけじゃない。

でももし彼もいなくなったら、そう思うと話せなかった。.

⏰:09/11/23 20:47 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#273 [のの子]
 
ごめんね、彰君。

ごめんね、まこ姉‥

私は本当はこんなに弱くて

強くなれない自分が

大嫌い。

ミーンミンミーン
「ッハァ‥ハァハァ‥ッ‥もうっ‥誰もいなくならないで‥」

夏の太陽が当たらない日影に隠れて、蝉の音に掻き消されそうな小さな声で私は呟いた。

⏰:09/11/24 23:59 📱:SH06A3 🆔:BOqSlspM


#274 [のの子]
 
―――――
ザワザワ

夏休みの駅は学生達や家族連れが多くて賑やかだ。

私が端っこで座り込んでいても誰も気付いてないかのように通り過ぎる。




「‥さとちゃん?」

っ!

顔を上げると昇さんが笑っていた。
.

⏰:09/11/25 20:29 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#275 [のの子]
 
「急に泣きながら電話きてびっくりしたよ〜。どしたの?」

ザワザワ

「‥静かな所行く?」

コクンッ

小さく頷くと昇さんの手に引っ張られ立ち上がる。

「ついておいで。」

昇さんの後にゆっくり着いていく。

一歩が重い。

.

⏰:09/11/25 20:34 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#276 [のの子]
 
駅から少し歩いて裏道に入ると昇さんが小さな喫茶店に入っていった。

今時の喫茶店じゃなくて、昔からあるような古い喫茶店。

一瞬戸惑ったけど、私も黙ったまま喫茶店に入っていく。

カラーン

ドアについていたベルが鳴る。

「さとちゃん、こっち。」

昇さんはもうソファ席に座っていた。
.

⏰:09/11/25 20:42 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#277 [のの子]
 
私もソファ席に着くと周りを見渡す。

意外にもアンティークの置物や絵がたくさんあってお洒落な喫茶店だった。


「ここ亮と二人でよく来るんだ。人に聞かれたら困る話とかしやすくてね‥あっ飲み物アイスティーでいい?」

「はい。」

確かに私達以外に人はサラリーマンの人がいるぐらいだ。
.

⏰:09/11/25 23:52 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#278 [のの子]
 
「あっ湯上さん、アイスティー二つで。」

「‥かしこまりました。」

湯上と呼ばれた人はカウンターの奥で本を読んでいたのか、パタンッと本を閉じるとカチャカチャと動き出す。

私は喫茶店に流れるクラシックと湯上さんの丁寧な動きが見事に合っている気がしてじっと見つめていた。

「あの人ここのマスターなんだけどまだ32歳なんだ。無口だけど優しいんだよ。」

昇さんが優しく笑う。

「それにコーヒーと紅茶が美味しいのもここの店の魅力。」

⏰:09/11/26 00:03 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#279 [のの子]
 
「へぇ‥」

「お待たせしました。」

湯上さんはアイスティーを置くと私をチラッと見て

「彼女に似てますね‥」

「ん?あぁ、この子妹なんですよ。」

「どうりで‥ごゆっくり。」

そう言って湯上さんはカウンターの奥に入って行った。

「彼女ってまこ姉‥?」

「うん、俺らよりもとは真琴が常連だったんだよ。」

⏰:09/11/26 00:11 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#280 [のの子]
 
「‥知らなかった。」

「あいつここで一人考え事したり、勉強するのが好きでさ〜。俺らに教えるのもちょっと嫌がってた。」

ははっと笑う昇さんに私もつられてクスッと笑う。

「まぁそれよりも‥何があったか教えてごらんよ。」

黙ったままアイスティーを口にすると喉が渇いていたのか、ここのが特別なのか‥とっても美味しい事に少し心が和む。

⏰:09/11/26 09:11 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#281 [のの子]
 
「昇さん、」

「ん?」

「‥彰君、まこ姉の事知ってたんですね。」

昇さんは相変わらず優しい表情で笑っている。

「だから昇さんとも知り合いだったんですよね?」

私は昇さんの目を真っ直ぐ見れない。

「その話か‥うん、まぁそうだね。俺と真琴と、亮とかも知ってるよ。」

.

⏰:09/11/26 09:15 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#282 [のの子]
 
「‥なんでですか?いつから知り合いだったんですか?」

私は相変わらず昇さんの目を見れないのに、はっきりと質問する。

「ん〜‥それはちょっと言いにくいというか、少年から聞いてほしいんだけどなぁ。」

少年。
昇さんは彰君を時々少年って呼ぶ。

「彰君は私がまこ姉の妹だって知らなかったんです‥でも、たぶん今日‥気付いたと思います‥」

「そっか。」
.

⏰:09/11/26 09:20 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#283 [のの子]
 
「知られたくなかった?」

違う、と頭を左右にふって否定する。

「じゃ教えてあげれば良かったじゃん。真琴は自分の姉貴だって‥」

また私は左右に頭をふる。

「さとちゃ
「私っ‥私まだ恐いんです。話せるようになった時の‥周りの冷たい目や言葉がっ‥」

乗り越えたと思ってた。

全ての人じゃなくていい

私の気持ちをわかってくれる人が少しでもいてくれたらそれでいいんだって‥

でも、やっぱり人に冷たくされるのは辛くて恐い。
.

⏰:09/11/26 09:30 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#284 [のの子]
 
それが深い関係な分、恐くて仕方がない。

間違えれば、その人を失うのだから‥

「彰君を信じてない訳じゃなくって‥どうしても、失う恐さの方が勝つんですっ。」

「さとちゃん‥」

昇さんが複雑そうな目で私を見つめる。


「一人になりたくないっ‥」

そう呟くと一粒の涙が落ちていった。
.

⏰:09/11/26 09:39 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#285 [のの子]
 
ポロポロと落ちる涙を隠すように俯く。

「‥似てるなぁ。」

「えっ?」

顔を少し上げると昇さんは優しく笑っていた。

「さとちゃんと少年。そっくり。」

彰君と‥私が?

「俺から言えるのはね、さとちゃん‥あいつはさとちゃんの気持ちわかってくれると思うよ?もしかしたらさとちゃんの気持ちを1番理解できる奴かもしれない。」

昇さんはそう言いながら少し悲しげな目で私を見つめる。

⏰:09/11/26 20:25 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#286 [のの子]
 
「どうして‥ですか?」

涙を拭きながら昇さんを見つめる。

「二人の間には、同じ悲しみがあるから。」

「同じ悲しみって‥まこ姉?」

昇さんはアイスティーを一口飲むとソファーに寄り掛かる。

「‥あの当時さ、少年と真琴は付き合ってたんだよ。」

っ!

「えっ‥彰君と‥まこ姉がですが?」

「うん。詳しくはあいつから聞いてほしいんだけど‥」
.

⏰:09/11/26 20:31 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#287 [のの子]
 
「そんな二人がっ‥」

っ!

「あっでも‥彰君の元カノさんが‥交通事故で亡くなったって聞いた事が‥」

そんな‥

こんな偶然があっていいの?

彼を苦しめていた過去の鎖が私にも繋がっていた。


『お前真琴の‥‥』


彰君が真琴と優しく呼んだのは、愛していた彼女の呼び方だったんだ。
.

⏰:09/11/26 20:42 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#288 [のの子]
 
ドクン

「まるで運命だよね、二人が出会うなんて‥俺も少年とさとちゃんが知り合いだって知った時マジでゾクッときたもん。」

ドクン

「そんなっ私‥もう彰君と会えないですっ‥」

妹と知った今、もう私の後ろにまこ姉を見るだろう。

きっと今度私までも彼を苦しめる鎖になるんだ。


「‥彰とさとちゃんは本当そっくりだよ。二人だからこそわかり合える事もあると思う。」
.

⏰:09/11/26 20:48 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#289 [のの子]
 
「でもっ‥きっと苦しめ合うだけです。もう友達じゃいれません‥」

私は両手で顔を覆い隠す。

「‥お前らはいつまでそうしてんだよっ!」

ビクッ
静かな喫茶店内に昇さんの声が響く。

「死んだ真琴にいつまで気使ってんだっ!真琴が死んだのはもう過去なんだよっ。俺達は『今』を生きて進むしかないんだっ!」

昇さんが私の顔をグッと掴む。

「過去に捕われるなよ。今について考えて、未来を見ろ。」

⏰:09/11/26 21:00 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#290 [のの子]
 
「そうしなきゃ、真琴が可哀相だろう‥」



‥‥‥お姉ちゃん、

なんで死んじゃったの?

お姉ちゃんにも

未来があったでしょ?

どんな気持ちで

死んでいったの?

今の私達を見て

‥どう思ってる?


.

⏰:09/11/27 20:17 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#291 [のの子]
 

『二人揃ってバカじゃないのぉ?』


きっとムスッとしながら
笑うんだろうな。



まこ姉なら、きっと..




.

⏰:09/11/27 20:21 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#292 [のの子]
彰Side

「彰っ、こっち。」

声がした方を見ると、少し離れた所で亮さんが手を振っていた。

「亮さん、急にすみません。」

「別にいいよ。こっちこそ昇じゃなくて悪いけど‥なんか話があるんだろ?どっか行くか?」

「‥はい。」


――――

聡美が走っていくのを俺はただ見つめていた。

追いかけなかった。
.

⏰:09/11/27 20:26 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#293 [のの子]
 
追いかけても何を言えばいいか、何を聞けばいいか‥

わからなかった。

それに‥俺にはもう答えはわかってた。

その答え合わせは

無理矢理あいつにさせるよりも、もう前からわかってたはずの

『昇さん』に聞いた方が良いって思った。

.

⏰:09/11/27 20:29 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#294 [のの子]
 
あの人がすんなり話してくれるかはわからないけど‥


「とりあえず‥連絡とってみるかな。」

カチッ
携帯を開いて昇さんの番号を探す。

番号変わってないといいけど‥

ピッ ♪〜♪〜♪

携帯を持つ手が震える。

冷静を装う自分の中に取り乱している自分がいるのを感じる。

⏰:09/11/27 20:34 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#295 [のの子]
 
♪〜♪〜♪
‥出ねぇか。

「はーい。なんか用?」

耳から少し離した携帯から陽気な昇さんの声が漏れる。

「あっ昇さん!彰ですけど‥」

「知ってる。俺に電話してくるなんて何かあったんでしょー‥なに?」

昇さんからめんどくさそうなのが伝わってくる。

「あの‥実は聞きたい事があるんですけど、今日会えませんか?」

「やだ。」

‥‥イラッ
.

⏰:09/11/27 20:41 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#296 [のの子]
 
「いやっでも真剣な話なんですよ。お願いしますっ。」

「真剣な話ってなんだよ。」

「それはっ‥」

今言ったらこの人はぐらかして逃げるかも‥

そんな事が頭に浮かぶ。

「言わないなら会わない。」

ガキかよっ‥!

「‥‥聡美の事です。」


「はぁっ?さとちゃん?」
.

⏰:09/11/27 20:44 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#297 [のの子]
 
「ふーん‥わかった。じゃ時間と場所は俺が決めるから。」

「わかりました。」

「じゃまた連絡するわ。」

そういって切った電話から15分後、昇さんから来たメールは

――――――

やっぱ会えない。
代わりに亮が行く。

――――――

「はぁっ?‥んだよっ。」


そんなこんなで俺は今亮さんと会っている。

⏰:09/11/27 20:54 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#298 [のの子]
――――――

「なんか悪いな、昇指名だったのにさぁ。」

俺の横を歩きながらタバコを吸いはじめた亮さん。

まだタバコ吸ってんのか‥

「別に‥俺の知りたい事を亮さんが知ってるなら昇さんでも亮さんでも、どちらでもいいですから。」

「ふっ相変わらず生意気だな‥」

タバコを片手に笑う姿は俺から見てもかっこいい。

亮さんは昇さん率いるスノードロップのNo.2、つまり副総長だ。

正直、昇さんよりも冷静でしっかりしてる。

⏰:09/11/28 11:17 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#299 [のの子]
 
髪は真っ黒で前髪の一カ所だけ金のメッシュを入れてるのが印象的。

―――

「そろそろなんだけど‥あっここでもいい?」

昇さんが指差したのは

「ここは‥?」

「昇ん家。あいつもいつか帰ってくるし、それまで俺が聞いてやるよ。」

そう言って取り出したのは銀色の鍵。

「合い鍵貰っちゃった♪」

笑いながら昇さんの部屋のドアに鍵をさす。

⏰:09/11/28 22:04 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#300 [のの子]
 
×昇さんが指差したのは
○亮さんが指差したのは
.

⏰:09/11/28 22:23 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


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