ピンクな気分。U
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#1 [のの子]
 
ピンクな気分。の続きを書かせていただくのの子です

よろしくお願いします


↓ピンクな気分。
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9640/
 
.

⏰:09/09/30 21:13 📱:SH06A3 🆔:aFVkM0kY


#2 [ハナ]
キャァ---
頑張ってぇ

⏰:09/09/30 21:19 📱:SO903iTV 🆔:bPzlBQf2


#3 [のの子]
聡美Side

――――――

「聡美〜ご飯〜っ!」

「はぁいっ!今行く〜。」

はぁ‥

ため息をつくと私は携帯を握ったまま下に降りた。

テーブルに並んだ夜ご飯はそうめんとその他もろもろのおかず。

「いただきま〜す‥」

テレビのついたリビングは私が喋らなくても十分賑やかで、私はテーブルに置いた携帯をじっと見つめたままそうめんをすする。

桜姉がテレビを見て笑う声や、お母さんの声もどこか遠くに感じた。
.

⏰:09/10/02 20:51 📱:SH06A3 🆔:lcTBDkYw


#4 [のの子]
 
‥鳴らないなぁ。

「‥‥ってかご飯食べる時ぐらい彼氏の事忘れたら?」

ギクッ

桜姉がそうめんをお茶碗にとる。

「何〜?喧嘩でもしたの?」

お母さんまで話に入ってきた。

「ちっ違うよっ!ただ、メールがこないだけ‥」

「ってか本当に彼氏からのメール待ってたんだ。別になんかしてんじゃないのぉ?それかあんたが何かしたか。」
ズズッ

そうめんを食べながらまたテレビを見出す桜姉とは逆に私は箸を持つ手を置く。.

⏰:09/10/03 20:40 📱:SH06A3 🆔:DSuOOkNo


#5 [のの子]
 
「うわぁ、心当たりあんのぉ?」

うっ‥たっ確かに心当たりはあるよ。 そりゃもちろん明日の事でしょ。

やっぱ怒ってんだぁ〜‥
どうしよう。

「全く、連絡したの?」

お母さんが呆れた顔で言う。

「ん‥まだしてないけど‥でもウザがられるかもだし。」

「とりあえずしてみたら?しなきゃわかんないでしょうが。彼氏なんでしょ?」

「‥うん。」

ズルズル

いつもと同じそうめんがなかなか喉を通らない。

竜二君、何してんの?
.

⏰:09/10/03 20:52 📱:SH06A3 🆔:DSuOOkNo


#6 [のの子]
 
―――――
パタンッ

静かな部屋に戻るとすぐベッドに座る。

相変わらず携帯はならない。

「はぁ‥‥‥よしっ!」

もう覚え始めてきた竜二君の番号。いつもとは違うドキドキを胸にボタンを押す。

カチッ
♪〜♪〜♪

ってか出てくれなかったら泣くからねぇ‥

そんな事を心で叫びながら天井を見つめる。

⏰:09/10/05 00:14 📱:SH06A3 🆔:5ZBadnr2


#7 [のの子]
 
♪〜♪〜♪

うぅ‥やっぱ出な
ピッ
「‥はぃ‥?」

出たっ!

「あっ竜二君?あのっ聡美ですっ!あのね、あの〜‥連絡こないからそのっあのしっ心配でっ!心配でね、電話を‥したんですが。」

「‥うん‥ありがとぉ‥」

‥‥‥‥ん?

「竜二君、今大丈夫?」

「ん〜‥?何ぃ?」

‥‥‥‥なんか変っ!?

いつもと違ってなんか話し方違うよね?
.

⏰:09/10/05 22:42 📱:SH06A3 🆔:5ZBadnr2


#8 [のの子]
 
「ぇっと何してたの?」

「‥ん〜?‥なんかぁ寝てたみたい‥」

まさか‥寝ぼけてる?

「まだ眠い?」

「ん‥ちょっとだけ‥」

「じゃ電話切ろうか?」

「ん〜‥‥電話するぅ‥」

なんか‥
竜二君可愛いっ!!
.

⏰:09/10/05 22:52 📱:SH06A3 🆔:5ZBadnr2


#9 [のの子]
 
さっきまでの不安は消え去っていた。

竜二君て寝ぼけるとこんな風になるんだぁ♪

「ねぇ聡美ぃ‥?」

「あっなになに?」

「夏休みさぁ‥たくさん会おうねぇ‥?」

「うんっ♪」

「ねぇ聡美ぃ‥」

クスッ
「なぁに〜?」


「俺がもし別れようって言ったらどうする?」


.

⏰:09/10/05 23:00 📱:SH06A3 🆔:5ZBadnr2


#10 [ハナ]
頑張って下さいね

⏰:09/10/05 23:09 📱:SO903iTV 🆔:2D7.jBTM


#11 [髑髏-ドクロ-]

やだ(゚Д゚)←


楽しいです!
頑張ってください(^ω^)

⏰:09/10/06 00:01 📱:SH705i 🆔:F5IwqHw2


#12 [のの子]
ハナさん
髑髏-ドクロ-さん

ありがとうございます
新スレになって更新遅いですが楽しみに待っていて下さると嬉しいです

皆様へ。

いつも読んでくださってありがとうございます
実は今までの意見で感想スレを別にしてくださいやオーダーをしてみては?との声があったので勝手ながらオーダーをさせて頂きました


今後は感想などは感想板にお願いします
申し訳ありません

⏰:09/10/07 00:21 📱:SH06A3 🆔:S0wGLLD2


#13 [のの子]
 
ドクンッ

別れる?

笑ったままの口元‥
というか動けなくなった。
ドクン ドクン

「ねぇどうする‥?」


本当に寝ぼけてるの?
今更そんな疑問が浮かび上がる。

電話をする前に抱いていた不安がまた溢れ出す。

ドクンッ

「‥泣く‥‥かな‥」
.

⏰:09/10/07 00:43 📱:SH06A3 🆔:S0wGLLD2


#14 [のの子]
 
「泣いて泣いて‥空っぽになるよ、きっと‥」

まだ私の心臓は痛いくらい私を締め付ける。

怒ってるの?


「‥そっか。」

‥?

「っはぁ〜、なんか目覚めてきた。今何時?」

「えっ!〜っと8時ちょっと過ぎたとこだけど‥」

「8時か。よしっ今から会いに行くよ。」
.

⏰:09/10/07 11:03 📱:SH06A3 🆔:S0wGLLD2


#15 [のの子]
 
「えぇっ?!!!ちょちょちょっと待って!もう夜だし、今から来るとかっ‥」

「明日から夏休みなんだよ?大丈夫だよ。30分ぐらいで着くから。」

「でもぉっ!」

「じゃいつもの公園着いたら連絡するよ。後でね。」

プーップーッ

なんていう自分勝手‥

何よっもしもの話でも別れようとか言ったくせに。

私がどんだけ恐かったか知らないくせに。


‥‥だから会いに来てくれるの?
.

⏰:09/10/07 22:18 📱:SH06A3 🆔:S0wGLLD2


#16 [のの子]
 

‥‥‥‥‥‥バカ。

「もう化粧落としちゃったのにな‥」

そういいながら携帯の時間を見つめる。

30分後、彼に会える。

会いたい。

会いたい。

今すぐ会いたいよ。


バッ

立ち上がるとすぐクローゼットを開ける。

「何着よう‥」

.

⏰:09/10/07 22:22 📱:SH06A3 🆔:S0wGLLD2


#17 [のの子]
――――――

8:43

「はぁっはぁ‥」

「! 聡美っこっち。」

あっ‥

ベンチに座って手をあげたのは間違いなく竜二君だった。

「はぁっはぁ‥ごめんね、待った?」

「いや、大丈夫。俺こそ急にごめんね。」

「ん‥平気。」

なんかこうやって夜会うの初めてで‥ドキドキする。

もう7月半ばでも夜の風は蒸し暑さを少し和らげながら、私の髪を揺らす。
.

⏰:09/10/08 01:07 📱:SH06A3 🆔:RxX1q5SY


#18 [のの子]
 
黙り込む私を見つめて笑う竜二君。

「クスッ‥緊張してる?」

「‥ん、ちょっと‥」

だって本当に急だったからスッピンだし、服装だって結局ブラウスとショートパンツ。

制服以外で会うの初めてだったのにな‥

一方彼は髪もワックスつけてるし、服装もノースリーブにシャツを羽織って下はカーキ色のパンツとか履いちゃって‥‥

‥‥カッコイイ


なんか本当‥ドキドキする。

⏰:09/10/08 01:17 📱:SH06A3 🆔:RxX1q5SY


#19 [のの子]
 
あんな事言われた後だから余計なのかな。

「‥可愛い。」

そう言って竜二君は私の頭を撫でる。

キュンッ

髪の毛結ばなくて良かったぁ‥

そんな事を考えていると、竜二君が夜空を見上げる。

「冬もだけど夏も星がキレイだよねぇ。」

「そうだね。」

二人で見上げる夜空に星はたくさんあった。

でも今ここには私達だけしかいなくて‥

世界は狭く、広く感じた。.

⏰:09/10/09 14:28 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#20 [のの子]
 
「竜二君‥‥」

「ん?」

「さっき、なんであんな事言ったの?」

「あんな事って‥もしもの話?」

そう、もしも別れようって言ったらの話。

「なんで言ったの?」

今の私の目に映るのは彼だけ。

「ん〜‥好きだから。」

竜二君は膝に頬杖をつきながら笑う。

⏰:09/10/09 17:39 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#21 [のの子]
 
「好きだから、聡美の為ならなんでもするよ。」

笑いながらも私を見ないで何かを見つめる彼が、何を見てるか私もその先を見つめたけど、私には何も見えなかった。


「‥私も好きだよ。」

彼が何を見ているか何を思っているのかわからなくて、それしか言えなかった。


「せっかく会いにきたのに泣くなよ。泣き虫‥」

.

⏰:09/10/09 17:45 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#22 [のの子]
 
「泣いてないもん‥」

私の目から零れた水を竜二君が温かい指でぬぐう。

『好きだから、聡美の為ならなんでもするよ』

なんでもの中にはきっと悲しい事も含まれている事が伝わってくる。

好きになる事はこんなにも温かく、冷たい。


「‥明日はどうするの?行くの?」

明日‥‥‥

「行かない。」
.

⏰:09/10/09 20:58 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#23 [のの子]
 
「行かないの?彰きっと怒るよ?」

「別にいいもん‥」

そう言って私は竜二君にくっつく。

「行かない。」

行かないから

どこにも行かないから

離れないで‥

キュッとシャツの裾を掴む。

竜二君は笑いながら私の手を握るとコツンと肩が当たった。
.

⏰:09/10/09 21:06 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#24 [のの子]
 
私いつからこんなに弱くなったんだろう?

少し前は一人でも大丈夫だったのに‥

私の身体はいつの間にこんなに竜二君に染まっていたんだろう‥

竜二君のくっついたままの肩が温かくなる。


「‥でも彰はたぶんずっと待つよ?聡美が来るまで‥」

ズキンッ

彰君‥‥
.

⏰:09/10/09 21:11 📱:SH06A3 🆔:DZ30X4ks


#25 [のの子]
 
彰君が私を待つ姿が頭に浮かぶ。

「‥行ってくれば?昼間も言ったけど俺なら大丈夫だからさ。」

「‥‥嫌じゃないの?」

ギュッと手に力を入れる。

「そりゃいい気分じゃないけど、大丈夫。」

力の入った手を竜二君の手が優しく包み込む。


『あの事』

それを知ってしまった私は、もう彰君をほっとけなくなってた。

私と似た彼は

一人ぼっちで

まだ俯いたまま‥
.

⏰:09/10/10 18:28 📱:SH06A3 🆔:7to.RVnE


#26 [のの子]
 
一度行ってみようと決めたけど、今更になって竜二君の気持ちや自分の愚かさを感じてきた。

私はずるい‥

竜二君の気持ちも彰君をも見て見ぬふりができない、ただの偽善者。


「間違ってないよ。」



「聡美は間違ってない。俺がついてるから大丈夫だよ。」
.

⏰:09/10/10 18:47 📱:SH06A3 🆔:7to.RVnE


#27 [のの子]
 
そういって彼が真っ直ぐ見つめていたのは
    私だった。


「本当に‥どこまで優しいの?竜二君は‥」

私が困ったように笑うと竜二君も笑った。



ありがとう
ごめんね

両方とも言えなかった。

知ってしまった罪悪感は
きっともう消せない。


.
「」

⏰:09/10/11 20:20 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#28 [のの子]
竜二Side

次の日――――

チュンチュン チュン

どこにいるかわからない雀の声がうっすら聞こえる西岡家。


「あら、夏休み初日なのに早起きなんてどうしたの?」

「‥友達が来るから。」

キッチンで朝から何かを作っている母さんを横に俺は冷蔵庫を開ける。

「友達って彰君達?‥でもだからって早いんじゃないのぉ?まだ8時になるとこじゃない。」

ペットボトルの水をコップに注ぎながら俺は一瞬考える‥‥

「‥‥彼女もくる‥」
.

⏰:09/10/11 20:28 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#29 [のの子]
 
「えっ‥‥」

母さんが固まったのを無視して水を一口飲む。

この匂い‥またケーキ作ってんのか。

「ちょっとあんた彼女いたのっ?!!」

母さんは俺の両肩を掴んで真っ直ぐと俺を見つめてきた。

肩痛い‥

「いたよ。悪い?」

「悪いわけないでしょ〜!まぁ言わないあんたは悪いけど‥そう〜‥彼女も来るのね。」

⏰:09/10/11 20:36 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#30 [のの子]
 
「ならケーキ作っといて良かったぁ♪あっでも彰君達も来るんでしょう?じゃクッキーも作ろうかしら‥」

「彰と彼女しか来ないからケーキだけでいいよ。昼ぐらいに来るから。」

母さんがニコニコ‥いやニヤニヤと笑ってるのが嫌ですぐにソファに座った。

別に隠してたつもりはなかったし、今までそういう話題にならなかっただけだ。

まぁ今日、聡美が家に来るのはいいきっかけだったのかもしれない‥
.

⏰:09/10/11 20:45 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#31 [のの子]
 
昨日の夜―――

「‥竜二君も来る?」

「えっ?」

「宿題やろうって言ってたし‥三人ならどう、かな?」

あぁ〜‥どうだろ。

「でも彰が許すか‥
「ダメ?」

あぁ〜これはまさか‥‥

世に言う『上目遣い』?

うん。
やっぱ聡美可愛い‥

「いいよ。」

――――――

⏰:09/10/11 20:55 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#32 [のの子]
 
俺も男。単純でバカだ。

好きな子には弱い。

それにしても、あの潤目に上目遣いは

「反則だろ‥‥」

まぁ一応図書館でもしも彰と俺が喧嘩になった時の為に、俺の家に変更してもらった。

ってか彰来るかな?来なかったら聡美と二人か‥

そんな淡い期待を考えながら俺はまた水を一口飲んでテレビを見つめた。
.

⏰:09/10/11 21:05 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#33 [のの子]
 
――――――
13:07
ピンポーン

「母さぁんっ!来たっぽいよー。」

「はぁい♪」

ガチャッ

俺が玄関のドアを開けると彰がイラついた顔で立っていた。

「よっ‥遅かったね?」

「こいつどうにかして。」

彰が後ろに指さすと、聡美が下を向いて立っていた。.

⏰:09/10/11 21:14 📱:SH06A3 🆔:gltkxid6


#34 [のの子]
 
その前にお前の面どうにかしろっつーの。

「あれ‥どうしたの?」

「あいつ緊張してんのかずっとあれでさぁ、10分も前にお前ん家着いてたのに固まってんの。いい加減暑いし俺が呼び鈴鳴らした。」

あぁ〜なるほど。

聡美は下を向いたままだったけど、お団子に結んでいるから耳が赤くなってるのがわかった。

昨日の夜、場所を俺ん家に決めた時もあんなんなったもんなぁ。

.

⏰:09/10/12 00:25 📱:SH06A3 🆔:pFmCBKXs


#35 [のの子]
 
一旦外に出て玄関のドアを閉める。

聡美は相変わらずモジモジとするように下をむいたまま‥

「いらっしゃい。そんな緊張しなくたって大丈夫だよ。」

そういって頭を撫でると

「あのっ!こっこれ良かったらどうぞっ!!」

グイッと差し出してきた袋の中にあったのは、母さんの大好きなあんみつ。

彰から聞いたのか‥
.

⏰:09/10/12 17:46 📱:SH06A3 🆔:pFmCBKXs


#36 [のの子]
 
チラッと彰を見るとイラついたまの顔で庭の花を見ていた。

何イラついてんだよ‥

でも聡美を見ると下唇を噛んで顔を赤くしてる姿が可愛くて笑いそうになった。

「ありがとう。入って。」

聡美の手を引いて家に入れる。

「ぉっお邪魔しま
「いらっしゃぁい♪♪」

.

⏰:09/10/12 20:55 📱:SH06A3 🆔:pFmCBKXs


#37 [のの子]
 
「彰君久しぶりねぇ♪あっどうも、竜二の母です〜。」

聡美の声を掻き消した母さんは玄関に立って俺達を待っていた、らしい。

ニコニコ笑いながら俺達を見つめている。

「あっあの私竜二君と同じクラスの二ノ宮聡美ですっ。今日はよろしくお願いします!」

よろしくって‥

びっくりしたのか聡美はさっきまでとは違ってカチカチになってお辞儀をする。

「まぁ‥竜二の彼女さんなのよね?」

ピクッ

「‥はい、すみません‥」
「いや謝んなくていいからっ。」

今度は顔を青くしてく聡美。
.

⏰:09/10/12 21:05 📱:SH06A3 🆔:pFmCBKXs


#38 [のの子]
 
「どうぞ上がってください♪お茶持ってくわね。」

「いや、俺持ってくよ。俺の部屋2階だから二人は先行ってて。」

聡美の頭をクシャッと撫でると母さんの後についてキッチンに向かう。

―――

「可愛い子じゃない♪お兄ちゃんはキレイ系がタイプだったけど竜二はあういう子がタイプなのかぁ。」

母さんがコップにお茶を注ぎながら笑う。

「はいはい。‥ったく、わざわざ部屋に来なくていいからね?」
.
母さんが

⏰:09/10/13 23:56 📱:SH06A3 🆔:l2T.nD7c


#39 [のの子]
 
「あとそれ聡美があんみつくれたから食べていいよ。」

「あんみつっ?やだ、誰から私の好きな物聞いたのかしら『聡美』ちゃ〜ん♪」

ふざける母さんを無視して2階に向かう。

カチャ

部屋のドアを開けるとふわぁっとカーテンがゆれた。

「ごめん、クーラーつけてなかった。」

「俺は平気。」

「私も大丈夫だよ。」
.

⏰:09/10/14 14:46 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#40 [のの子]
 
「そっか。」


ミーンミーン ミーンミーン


‥‥何この空気。

気まずいような照れ臭いようなこの空気。


「えっと‥部屋、きれいだね。」

聡美がグルッと俺の部屋を見渡す。

「そう?でも午前中に一応掃除したからかな。」
.

⏰:09/10/14 15:04 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#41 [のの子]
 
「でもきれい。」

ニコッと笑う聡美はさっきより顔色が良くなっていた。


「ってかおかしいだろ‥」

「「え?」」

彰が俺のベッドに座りながら俺達を睨む。

「え?じゃねぇしっ。なんで竜二がいて、しかも竜二の部屋で勉強しなきゃいけないんだよっ!」

完璧二人が良かったって言ってるようなもんだな。
.

⏰:09/10/14 20:21 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#42 [のの子]
 
「そんな怒んないでよぉ。みんなで勉強できるんだしいいじゃん、あっきー‥」

聡美がグラスを手に弱々しい声で呟く。

「お前っ!あっきーって呼ぶなっ!」

「あっきー?」

俺がキョトンとすると聡美が笑い出した。

「ぷっ‥あっきーはあっきーだもんねぇ♪」

「てんめぇ〜‥この口はどうしたら黙んだよ?ん?」

冷たく笑いながら聡美のほっぺをつまむ彰。

痛いと騒ぐ聡美を見つめる瞳は 温かかった。
.

⏰:09/10/14 20:36 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#43 [のの子]
 
確か祐輔があっきーって彰の事呼んでたっけ‥

ふざけ合う二人を見つめながら俺は冷静にまだ『あっきー』について考えていた。

あっきーの謎が解けてもまだふざけあう二人。


‥‥懐かしい。

昔、こんな光景を見た。

俺の前に彰と彼女がいて、笑い合う。

優しい時間だった。

居心地が良くて離したくなかった。
.

⏰:09/10/14 20:43 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#44 [のの子]
 
でもそれは崩れ去ってしまった。

でも今、目の前の光景は

あの時とすごい似てて

また痛みが胸に突き刺さる。

カチャンッ!

っ!?

「ったく、さっさと宿題やって帰るからな。

彰がテーブルにぶつかった音にハッとする。
.

⏰:09/10/14 20:53 📱:SH06A3 🆔:6fxK8x6k


#45 [のの子]
 
‥俺の部屋に呼んだのは間違いだったかもしれない。

そんな事を今更思う。

「痛〜い‥」

つままれたほっぺを撫でる聡美。

「大丈夫?」

「うん。‥よしっそろそろ本当宿題やろっか。」

聡美が可愛らしいキャラクターの筆箱からピンクのシャーペンを出す。

「だね。」

俺も宿題のプリントを何枚か出すと、どれからやるか考える。
.

⏰:09/10/15 23:51 📱:SH06A3 🆔:V7nTYruk


#46 [のの子]
 
クラスの違う彰と宿題が少し違うのもあったけどだいたい同じだった。

とりあえず数学からやることになった。

計算問題のプリント2枚だけだっけど、3人でやれば早く終わるだろう。



自然と無言になる。

「これって‥‥どの公式だろ?えっと〜‥」

聡美以外は。
.

⏰:09/10/15 23:56 📱:SH06A3 🆔:V7nTYruk


#47 [のの子]
 
クスッ
いつもの独り言か。

お茶を飲むふりをしながら聡美を見ると、シャーペンを顎に当てて一生懸命考えている姿が可愛らしかった。

ついでに彰を見るとやっぱり呆れた目で聡美を見つめていた。

顔には『うるさい』って書いてあるのがわかる。

でもまたさっきと同じように優しく笑ってまたプリントに目を戻す。

その時彰と目があった。
.

⏰:09/10/16 00:05 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#48 [のの子]
 
“ バーカ ”

彰が口パクで俺に言ってきた。

“ お前もな ”

俺もベーッ舌を出す。

フンッと笑った彰はすぐにプリントに目を戻して計算を解きだした。

ミーンミーン ミーンミーン

相変わらず俺の部屋には聡美の小さな独り言と、外から聞こえるセミの声が響くだけ。

いつもはうるさく感じるセミの声も、なんでか今日は居心地が良く感じた。
.

⏰:09/10/16 00:15 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#49 [のの子]
彰side

コンコンッ
「竜二、ケーキ用意したから持ってって?」

するとすぐにドアの向こうからおばさんの階段を降りる足音が聞こえた。

「わっもう3時半過ぎてる!早いな〜‥」

聡美が携帯を見ていると竜二が立ち上がる。

「じゃ休憩にしよっか。ちょっと待ってて。」

そういって出ていくと、聡美はテーブルの上にあるプリントを片付け始めた。
.

⏰:09/10/16 09:06 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#50 [のの子]
 
プリントを整えながらチラッと俺を見ると、ほっぺを赤くする。

「‥何?」

俺は空になったグラスを見つめる。

「私、男の人の部屋って初めてなんだぁ‥だからすごい緊張してたんだけど、彰君がいてくれて良かった。」

照れるように笑う聡美がなんだか憎たらしく感じる。

「あっそー‥ってかお前マジで竜二が初の彼氏なの?」

今の御時世、高二にもなって初彼は珍しくないか?
.

⏰:09/10/16 20:00 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#51 [のの子]
 
「うん。」

またほっぺをを赤くする聡美が憎たらしい。

竜二が初めてって事はこいつ‥

「へぇ‥じゃ竜二とキスした?」

「ふぇっ??!なな何急にっ!」

ピンクだった頬がどんどん真っ赤になる。

「キス。したの?」

俺は頬杖をつきながら普通に聡美を見つめる。
.

⏰:09/10/16 20:12 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#52 [のの子]
 
「おっ教えるわけないじゃんっ!エッチ!」

フンッとそっぽを向く聡美。

ふ〜ん‥したんだ。
ってかこれぐらいでエッチはないだろ。

それに聡美の反応見てれば誰だってわかるし。

「じゃ一応もうキスは済ましたとして〜‥次は何すんのかねぇ?」

聡美がピクッとすると顔が段々俯いていく。

‥まだキスだけか。
.

⏰:09/10/16 20:17 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#53 [のの子]
 
でもこいつの初めては全部竜二なんだろうな‥

そんな目でそっぽを向いたままの聡美を見つめる。

イラッ

‥‥なんかムカつく。

キシッ

気づかれないようにゆっくりと聡美の後ろに近づいてく。

「初めては大事にしなね、聡美ちゃん?」

聡美の肩を掴み耳元で小さな低い声で呟く。

ビクッ!

「やっっ‥‥!」
.

⏰:09/10/16 20:25 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#54 [のの子]
 

チュッ‥‥‥‥


「‥っ!‥‥‥」

顔を真っ赤にしながら唇を隠す聡美とは逆に俺の唇は笑う。

「うわぁー‥何?セカンドキスは竜二じゃなくて俺が良かったの?」

俺と聡美の距離はもう30aもない。

「ちがっ!い今のは‥事故だもん。」

目をそらす聡美を俺は冷静な目で見つめる。

「事故って言ってもキスじゃん、今の。」
.

⏰:09/10/16 20:38 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#55 [のの子]
 
俺の声に驚いて振り返ってきた聡美の唇と俺の唇は、上手い具合に重なった。

「違う?」

聡美は混乱してるのか何も言い返してこない。

そんな聡美を見て俺は、今もまだ唇を隠す手を掴んでゆっくりおろす。

微かに震えている手には力なんてなかった。

「下に竜二いんのに他の男とキスするなんて‥最低な彼女。」

「そっそんな‥だって今のは‥」

涙目になる聡美。

別に泣かしたかったわけじゃないし、泣いてほしくもなかった。
.

⏰:09/10/16 20:49 📱:SH06A3 🆔:Yv7.jsPw


#56 [のの子]
 
俺の汚い手で汚すつもりもなかった。

ただ、竜二の色に染まっていくなら俺の手で汚してしまおう‥そんな考えが聡美を掴んだんだ。


「なんでっ‥こんなひどい事‥‥」

俺の目を見ない聡美。


「好きだから‥」



.

⏰:09/10/17 20:12 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#57 [のの子]
 


「‥‥えっ?」


聡美が俺の目を見つめた瞬間、聡美の目から涙がこぼれる。

ギシッ

竜二だろうか。階段をゆっくりと上って来る音が聞こえてきた。

それでもまだ見つめ合う俺達二人だけの時間は、もう終わる。

ギシッ

階段を上ってくる音はカウントダウン。

ギシッ
.

⏰:09/10/17 20:21 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#58 [のの子]
 

今日、本当に二人だけで会っていたらどうなっていたんだろう。

ふっと考える。


グイッ

これが最後だから‥

聡美の肩を引っ張り優しく抱きしめる。


「うそだよ。ごめん‥お前は竜二の彼女だ。」



「あきらくっ

.

⏰:09/10/17 20:24 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#59 [のの子]
 
ガチャッ

「お待たせ。」

竜二がケーキを持ってドアを開ける。

俺と聡美の距離はさっきまでと同じに戻っていた。

「ん〜‥何ケーキ?」

「今日はチーズケーキ。聡美チーズ大丈夫?」

「えっ‥あっうん、チーズケーキ大好き。」

そっか、と笑う竜二とは逆に聡美は目を伏せる。

バレたいのかよ、バカ‥


.

⏰:09/10/17 20:31 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#60 [のの子]
 
俺は平然を装うように聡美を無視した。

でも竜二が気づいてるのか気になって俺も自然と目を伏せた。

おばさんの手作りケーキを一口食べるとなんだか落ち着く。

やっぱ上手いなぁ‥


「なんかあった?」

「はっ‥何が?」

「二人‥なんか変だよ。」

竜二がチーズケーキを食べながら笑う。

その笑い方はまるで何もかもお見通しのような余裕さを感じた。

.

⏰:09/10/17 20:40 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#61 [のの子]
 
「別に何もないけど。」

俺はフォークの先を見つめて言う。

「そう。じゃ聡美は何かあった?」

「ぇっ‥」

聡美を見ないようにしていた俺もつい聡美に目がいく。

「何もないよ?それよりチーズケーキ美味しい。」

そう言って笑う聡美の目はいつも見たく笑えてない。

「‥‥ありがとう。母さん料理教室の先生なんだよ。」

「そうなんだ!すごぉい。」
.

⏰:09/10/17 20:48 📱:SH06A3 🆔:DD4V5KJo


#62 [のの子]
 
竜二は笑いながらそんな事ないよ、と言うとケーキを口に運ぶ。

聡美も笑いながらケーキを食べる。

‥まるで仮面をかぶってるみたいだな。

今の二人を見てるとそうとしか見えなかった。


「俺さぁ‥」

この空間に耐えられなくなった。

聡美はピクッと肩を揺らすと俺をじっと見つめてきた。

竜二は目をふせたまま‥
.

⏰:09/10/21 14:22 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#63 [のの子]
 

「用事思い出したから帰るわ。」


まだチーズケーキが半分も残っているのが名残惜しかったけど、もう無理。

ここから逃げ出したい。

二人を見ていると、自分のした事の罪の重さが伝わってくる。

‥恐かった。

二人を傷つけた事も、失う事も、恐くて見てられなかったんだ。

バッグを手に俺は竜二の部屋を出る。
.

⏰:09/10/21 14:28 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#64 [のの子]
 
気持ちは焦るがゆっくり落ち着きながら階段を下りていく。

「あれっ彰君もう帰るの?」

キッチンにいたおばさんが顔をだしてきた。

「これから用事あって。久しぶりのおばさんのケーキ美味しかったですよ。」

そう笑うとおばさんもふふっと笑う。

「はいっこれ♪」

「なんすか、これ?」

おばさんがくれたのは小さな白い箱。

「チーズケーキ♪祐輔君の分もあるから家食べて?」.

⏰:09/10/21 14:34 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#65 [のの子]
 
「あぁ〜なんかすみません。」

「いいえ〜♪気をつけてね。」

おばさんに見送られながら俺は西岡家を出た。



「はぁ〜〜〜っ‥」

誰かん家の木でできた影に入ると壁に寄り掛かる。

あの重い空気。
あの仮面みたいな笑顔。

竜二‥感づいてる。

⏰:09/10/21 14:38 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#66 [のの子]
 
「ってかマジで何してんだよ、俺‥」

二人にイラついて
聡美にキスして
聡美に好きって言って


「俺が好きなのはあいつだって言ってんのに‥なんでっ‥‥なんでだよクソッ!!」

うずくまるように地面に座る。


なんで なんで

「なんでいなくなっちゃったんだよ、真琴‥」

.

⏰:09/10/21 14:43 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#67 [のの子]
聡美Side

「彰君‥本当に帰っちゃった。」

「うん。」

彰君を引き止める事も、さよならも言わないまま出てってしまった。

美味しいチーズケーキを半分も残して‥

さっきの事気にしてるのかな。

ってそりゃ気にしてもらわなきゃ納得行かない!

けど‥
.

⏰:09/10/21 19:01 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#68 [のの子]
 

『好きだから』

その言葉が今も私の胸を鳴らし続ける。

ドクン  ドクン

彰君の茶色い髪の毛が外の光で明るく見えたあの時、彼の言葉と瞳が私の何かを掴んだ。


ってコラコラッ!
何考えてんの私っ!!

私が好きなのは竜二君だもん。

竜二君だけだもんっ。
.

⏰:09/10/21 19:07 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#69 [のの子]
 
彰君を気にしちゃってるのはあの事があったからで、やましい気持ち一切ないんだからっ!
ぜった
「何考えてるの?」

「っっ!」

竜二君が私の手を掴んだ。

ビックリしたぁ。

「今何考えてたの?」

「えっ別に何も‥」

ギュッと掴んだ手はうっすら痛く感じる。

「本当かな?彰じゃない?今聡美のここにいるの。」

竜二君が頭を人差し指でコツコツと叩く。
.

⏰:09/10/21 19:12 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#70 [のの子]
 
「そっそんな事ない‥手‥痛いよ。離して?」

竜二君の言ってた事は半分以上は合ってる。

図星に近い。

でも私の中には竜二君だっているんだ。

「‥竜二君っ‥‥」

冷たい目で私を見つめる竜二君は黙ったまま手を離さない。

「この手を離したら彰ん所にでも行くの‥?」

ドクン ドクン
.

⏰:09/10/21 22:12 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#71 [のの子]
 
「俺を残して行くの?」

ドクン ドクン

竜二君の手にグッと力が入ると、私の心臓も捕まれたかのように締め付けられる。

痛っ‥

「行かないってばぁ‥」

俯いた私から涙がこぼれる。

こんなに‥

こんなに近くて私の手を握り締めているのに

私の隣にいた竜二君はいなくなっていく。

竜二君の目は今までで一番冷たくて悲しげで‥

もう私なんか見てない。


「俺、嘘つきは嫌い。」


.

⏰:09/10/21 22:28 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#72 [のの子]
竜二Side

守りたくて離したくなくて

しっかり掴んでいた手を

今、ここで俺から離すよ。

悲しくて辛くて苦しい。

でも君の為に。

彼の為に。

彼女の為に。

俺は大好きな君の前からいなくなる。
.

⏰:09/10/21 22:40 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#73 [のの子]
 
二人を守りたかったし

幸せになってほしかった。

ドアの前で聞いた彼の小さな言葉。

『好きだから』

その言葉を聞いてわかった。

二人を想うなら俺がいなくなればいいんだって‥

簡単な事だった。

こんな簡単な事なんで気付かなかったんだろう。

なんてね‥
本当は気づきたくなかったんだ。
.

⏰:09/10/21 22:49 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#74 [のの子]
 
わかってた。

わかってたんだけどどうしても離したくなかった。

あまりにも君が

愛くるしくて

愛しくて

‥本当に愛してた。


でも俺が手を離しても
君の手を彼がすぐ掴まえるよ。

大丈夫。
.

⏰:09/10/21 22:54 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#75 [のの子]
 

だから  



だから‥



‥‥‥‥だから



さよなら。




.

⏰:09/10/21 22:57 📱:SH06A3 🆔:.AlQ1Whc


#76 [のの子]
 

「俺、嘘つきは嫌い。」


うん。
こんな嘘ついて君を傷つける俺なんて大嫌い。


「っ!‥竜二くっ
「もういいから。もう終わりにしよう‥『聡美ちゃん』ばいばい。」


こんな俺を大嫌いになって。

忘れて。

幸せになって。

.

⏰:09/10/22 01:35 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#77 [のの子]
 
「やだ‥やだやだやだっ!なんで?なんで急にそん
「そこまで好きじゃなかった。冷めたの。わかる?」

俺は端に置いてあったプリントを手にとると、自分の分だけ抜く。

「はい。もう帰って。」

プリントを聡美に渡す。

「怒ってるの?謝るから‥だからっ‥」

俯いて涙を流す聡美はプリントをなかなか受け取ろうとしない。
.

⏰:09/10/22 10:59 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#78 [のの子]
 
今すぐ抱きしめて、その涙を止めたい衝動を押さえる。

「怒ってないよ?ただ俺ら終わりにしようって言ってんの。こういうのもう飽きたし、冷めた。」

クシャッ

聡美の手に無理矢理プリントを渡すと、プリントか聡美の心の音なのか‥潰されるような音が聞こえた。

「終わりって‥‥別れ‥るの‥?」

「そうだよ。」

「きっ昨日‥まであん‥な笑って‥笑ってたの、に?」
.

⏰:09/10/22 11:09 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#79 [のの子]
 
「そうだよ。」

「な‥んで‥‥っ‥‥」

ポロッと落ちた涙がプリントに染みを作る。

「恋愛ってこういうもんなんだよ。‥呆気ないもんなんだよ。」

大丈夫。

君なら大丈夫だから。

俺がいなくても大丈夫。
.

⏰:09/10/22 11:12 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#80 [のの子]
 
だから

「さよなら。」

聡美が立ち上がって俺の横を小走りで去っていく。

その姿がスローモーションに見えて、手を伸ばせばすぐ捕まえられる‥
そう思ったら振り返らずにはいられなかった。

バタンッ

でも目の前でドアが閉じると我にかえる。

ミーンミーン

うるさい蝉の声が部屋に響く。

⏰:09/10/22 19:32 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#81 [のの子]
 
「竜二っ?聡美ちゃん帰っちゃったけどいいの〜?」

母さんの声が下から聞こえたけど、俺は返事をしなかった。

「さ‥とみ‥」

今もまだドアを見つめたまま固まる俺。

これで良かったんだ。

これで、君も彼も

幸せに  幸せに‥

‥‥‥‥


「俺の手で‥幸せにしたかったなぁ‥」


ベッドに倒れこむようにねっころがる。

聡美、さよなら。
.

⏰:09/10/22 19:38 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#82 [のの子]
聡美Side

ドンッ

「‥‥いった‥っ‥」

こけた。

めっちゃ走ってたらこけました。

高2にもなってこけました。

高2になって初めての彼氏に振られました。

痛いです。

痛くて痛くて

涙が止まりません。
.

⏰:09/10/22 19:42 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#83 [のの子]
 
「‥‥っ‥なんで‥」

何これ

知らない

こんな気持ち知らない

悲しくて寂しくて辛くてムカついて‥‥痛い。


「痛い‥痛い痛い痛い痛いっ。」

もう立ち上がれない。

竜二君がいなきゃダメなのに‥

なんでっ なんで

.

⏰:09/10/22 19:45 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#84 [のの子]
 
 
「そこの君、どこが痛いのよ?」

っ?


ボロボロの私に声をかけてきたのは、金に近い髪の毛が似合うお兄さん。

あれ‥?どこかで見た事ある?

「ん?ほらっお兄さんに言ってみなさい。」

そう言って笑うとお兄さんのほっぺに笑窪ができた。

「っ?‥昇さん?」
.

⏰:09/10/22 22:23 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#85 [のの子]
 
「あれまっ‥俺の事知ってんの?」

道の真ん中で座り込んで首を傾げながら笑うお兄さんは、間違いなく昇さんだ。

「ん〜‥でも君誰だっけ?ってかメイクも落ちてるしボロボロだしわかんないっ!」

笑ってたかと思うとふんっとそっぽを向く自由な感じ‥

懐かしい。

「あっ‥私‥聡美です。『さとちゃん』です。」

自分で『さとちゃん』なんて言うのも恥ずかしい。

「さとちゃん‥?」
.

⏰:09/10/22 22:29 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#86 [のの子]
 
いつの間にか止まった涙の跡を拭ってちゃんと顔をあげる。

じっと昇さんは私を見る。



「‥‥えぇっっ!!あの『さとちゃん』っ?」

「はい‥お久しぶりです。」

覚えててくれた‥

「えっ全然わかんなかった!綺麗に‥いやっなんか凄まじくボロボロだね。」
.

⏰:09/10/22 22:32 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#87 [のの子]
 
「すみません‥」

身も心もボロボロです‥

苦笑いする私を見て昇さんは優しく笑う。

「‥でも元気そうで良かった。久しぶりだね。」

「はい。昇さんもお元気そうで‥」

二人にしかわからない優しくて寂しい空気が流れる。

スッと昇さんが右手を出す。

「おいで。そのままじゃ帰れないっしょ?」

「そんな‥久しぶりなのに悪いです。」
.

⏰:09/10/22 22:39 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#88 [のの子]
 
「いや‥久しぶりにあってこんなボロボロなさとちゃんほったらかすのも気が引けるし。それにさっきまで大声で泣いてたじゃん。」

ほっとけないよ、と私の手をとるとゆっくり立ち上がらせてくれた。

「まっそんな詳しくは聞かないから甘えなさいって。」

そう言って私の肩をしっかり掴んでくれた。


‥‥‥

‥‥‥‥‥


「‥昇さん‥ありがとうございます‥」

⏰:09/10/22 22:44 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#89 [のの子]
 
膝が擦りむけてうっすら血がでているのをじっと見つめながら、私は昇さんについていった。


――――――


「はいっじゃメットかぶってねぇ。」

連れて来られたのは駅近くの駐輪場。

目の前には大きな黒いバイク。

「このバイク‥懐かしい。」

「よく乗っけてたからねぇ。ってかさとちゃん乙女だし聞くけど‥マジで俺ん家でいい?」

真剣な目で私を見つめる昇さん。

「‥‥はい。」

「‥お兄さんも男だけど絶対何もしないから安心して。」

「‥ぷっ‥はい。」

.

⏰:09/10/22 22:55 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#90 [のの子]
 
「笑わなーい。」

私のメットをコツンと叩くと、昇さんは先に私を後ろに座らせた。

「じゃ出発しまぁす♪」

ブロロロロロッ

低いエンジン音が響くと、何人かの通行人がビクッとこっちを見てきた。

昇さんは気づいていないのか気にしないでバイクを走らせる。

「のっ昇さん‥まだ‥やってるんで‥すか?」

「えぇ〜?なぁに〜?」
.

⏰:09/10/22 23:10 📱:SH06A3 🆔:uwLS1etM


#91 [のの子]
 
風を切る音とエンジンの音で普通の声の大きさじゃ聞き取りづらいのをすっかり忘れていた。

「あっ‥えっと〜‥まだやってるんですかぁ?」

さっきまで泣いてたせいか、喉が痛いのを我慢して大きな声を出す。

「何を〜?」

昇さんは軽く私の方を見る。

「総長ですよぉ!」

「あははっうん、まだ現役でやってるー♪」

昇さんが笑うと襟足がくるっとはねて揺れる。
.

⏰:09/10/23 00:03 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#92 [のの子]
 
「でも俺これでも大学生〜♪」

「えっ!大学行ってるんですかっ?」

「うん。全く、本当学業と両立すんの大変だよねー。俺にはやっぱキツイわぁ。」

あははっと笑う昇さんに私もクスッと笑う。

「でも毎日充実しているよ。」

そう言った昇さんな背中からはどこか寂しげに見えた。

.

⏰:09/10/23 01:13 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#93 [のの子]
 
「私も‥もう高2になりましたっ。」

「高2ぃっ?!うわぁ‥なんか時間過ぎんのマジ早いねぇ。」

「‥はい。本当に‥」

それから二人共黙ったまま、生温い強い風の音とエンジンの音だけが響く。


――――――― 

「はぁい。到着っ!」

バイクが止まったのは小さな茶色いアパート。

メットを外そうとすると昇さんが外してくれた。

「あっごめん。お兄さんぶっちゃった。」

照れ笑いをしながらメットを置くと、私の手を握って一階の端から二番目の部屋に向かう。
.

⏰:09/10/23 01:33 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#94 [のの子]
 
前から一人暮らしだった昇さん。

「懐かしいです‥」

「また懐かしいって‥おばぁちゃんじゃないんだから。せめて心ん中で思ってくださぁい。」

ガチャ

ドアが開くと昇さんは先に私を中に入れてくれた。

「んじゃとりあえず風呂入ろっか。

中に入ると大学の教科書とプリントらしき物が重なっているのが見えた。

「どこの大学に行ってるんですか?」

「ん〜?‥灘崎大学。あいつが行きたがってたとこ。」

.

⏰:09/10/23 18:56 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#95 [のの子]
 
灘崎大学は、この辺じゃ良い所の大学だ。

「うわぁ‥すごい。」

「めちゃくちゃ頑張ったからねー。今の俺頭いいよぉ?」

ははっと笑う昇さんがクローゼットからTシャツとジャージを出してきた。

「ほれっ着替え。行ってきんしゃーい♪」

肩を押されてお風呂場に入ると、居間の方からテレビの音が聞こえてきた。


スルッ‥‥

服を脱いでから初めて鏡を見ると思っていたより擦りむいたり小さな痣があった。

⏰:09/10/23 19:04 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#96 [のの子]
 
それにしても

「本当ボロボロ‥」

鏡に映る私の目は赤いのに、目の回りやほっぺは所々化粧で黒くなっていた。

カチャ

シャーーッ

熱いシャワーで一気に浴室は湯気に包まれていく。

私はシャワーを頭から浴びる。

「 ‥‥‥‥‥‥ 」

擦りむいた所がチクチク痛む。
.

⏰:09/10/23 19:10 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#97 [のの子]
 



『冷めた』



『終わりにしよう』



『さよなら』




.

⏰:09/10/23 19:12 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#98 [のの子]
 

シャーーッ


「‥ッ‥‥‥ック‥‥嫌だぁ‥‥ッ‥」

膝を抱え込むように座りこむ。


『もし俺が別れようって言ったらどうする?』

『泣いて泣いて、空っぽになるよ』


…空っぽになる。

空っぽになっていくのを

感じる。
.

⏰:09/10/23 19:33 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#99 [のの子]
 

「‥りゅっじく‥ッ…‥」

シャーーッ

居間からのテレビの音とシャワーの音に隠れて私は泣きつづけた。


――――――

「おっ!お帰り〜。」

「あっお風呂ありがとうございました。」

.

⏰:09/10/23 19:54 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#100 [のの子]
 
結局メイクを落とすのにも時間がかかって1時間も入っていた。

「いいえ〜。ってかスッピンになるとやっぱさとちゃんだねぇ。」

「はははっ‥」

部屋にある時計に目をやるともう6時を過ぎているのに気づく。

「ちょっとゆっくりしてきな?バイクで送るし。」

「‥はい。」
.

⏰:09/10/23 22:39 📱:SH06A3 🆔:LIBWp1MQ


#101 [のの子]
 
今は一人にならない方がいいよ、そう言ってるように聞こえた。


「そういえば‥みなさんは元気ですか?」

「うんっ。でも馬鹿ばっかだけどねぇ。」

ニコニコと笑う昇さんは、この辺りを占める『スノードロップ』の総長だったりする。

「いや〜でも本当なんか不思議だねぇ。」

「‥?何がですか?」

「こうやって話してんの。前は話せなかったじゃん?」
.

⏰:09/10/24 01:07 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#102 [のの子]
 
昇さんの髪が扇風機の風に揺れてるのをじっと見つめる。

「…‥そう、でしたね‥」

「声‥いつからでるようになった?」

「いや、あの時は一時的に話せなくなってただけで‥でも‥普通に話せるようになったのは高校入る前ぐらいです。」

私はある時期、突然声の出し方を忘れてしまったかのように話せなくなった。

その時に昇さん達スノードロップに会ったのだ。

「…そっか。良かったじゃーんっ♪」
.

⏰:09/10/24 01:18 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#103 [のの子]
 
頭をクシャクシャに撫でながら昇さんは笑ってくれたけど、このことで私は前から思っていた事がある。


「でも…お姉ちゃんが死んでから話せるようになるなんて私‥おかしくないですか?」


ピタッ

昇さんの手が止まる。

「私‥ひどい妹ですよね。」

扇風機の風に揺れた髪の毛が私の顔を隠す。

「恐いって‥喜んでるみたいだって言われました‥そんな事あるわけないのに。」

⏰:09/10/24 18:00 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#104 [のの子]
 
‥‥‥‥‥

私の頭の上で止まったままの昇さんの手。

昇さんもそう思ったんだろうか‥不安になった私は昇さんを見ないように、窓から見える夕焼け空を見つめた。

「…誰にそんな事言われた?」

昇さんの真剣な声。

「忘れました。覚えていたくもなかったんで‥」


………‥

バァンッ!!
.

⏰:09/10/24 18:05 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#105 [のの子]
ビクッ!

私の頭にあった昇さんの手がすぐ横にあったテーブルを叩いた。というより殴った‥

「なっなんですかっ?」

「そんな事言った奴ら全員ぶっ飛ばしてやるよ!覚えてる奴らの名前言えっ。‥姉貴が死んで喜ぶわけねぇだろっ!っざけんじゃんねぇぞコラァ!あ゛ぁーっマジでムカつくムカつくムカつく…」

…‥こっ恐い。

さっきまでとは違うすっごい怒った顔で怒鳴る昇さんからは、スノードロップの総長なんだってのがジワジワ伝わってきた。
.

⏰:09/10/24 18:12 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#106 [のの子]
 
「のっ昇さん落ち着いてください。もう過ぎた事なんでっね?」

「‥‥‥ッチ‥」

思いっきり舌打ちされたけど、それから昇さんは怒った顔をしたまま静かになった。


‥シーン。


これもこれで気まずい。

「ねぇさとちゃん‥」
.

⏰:09/10/24 20:20 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#107 [のの子]
 
いつもの口調に戻った昇さんは私の両手をとると、ギュッと握る。

「俺、さとちゃんとこうやって話せんのすげぇ嬉しいよ?あいつの思い出話も笑ってできるし、これからの事も話せる。でしょ?」

私は昇さんを見つめてただ小さく頷く。

「ありがと‥よく頑張りました。」

そう言ってまた私の頭を撫でてくれた。

その姿が少し竜二君とかぶって見えて私はまた泣きそうになった。
.

⏰:09/10/24 20:29 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#108 [のの子]
 




「あっ俺の事、昇お兄ちゃんって呼んでもいいよ。」

「‥‥えっなんでですか?」

「だってさとちゃん可愛いんだもーんっ。それに俺は妹だと思ってるし。」

照れながら話す昇さんを見て私はつい笑ってしまった。

「いやっでもマジ兄貴だと思って頼っていいよ!」
.

⏰:09/10/24 20:35 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#109 [のの子]
 
「まぁあいつの代わりになんてなれないんだろうけどさっ‥なんかあったら守ってやるよ?

『真琴』の大切な妹のさとちゃんを。」


「あははっありがとうございます。嬉しいです。」



竜二君に別れを切り出された私は、運命に手繰りよせられるように昇さんに再会した。

それはこれから私と彰君の運命を大きく変える事になる。
.

⏰:09/10/24 20:43 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#110 [のの子]
彰Side

「ありがとうございました〜。」

あれから結局トボトボ家に帰ったけど、暇すぎて駅の本屋に来た。

が、買ったのは祐輔への絵本一冊のみ。

「はぁ〜‥マジで俺何してんだろ?ってかつまんねぇー。」

こういう時に限って誰も遊ぶ相手がいない。お決まりのパターンだ。

これからどうすっかぁ‥

ふっと携帯を開いてみるとメールが一通届いていた。

誰だ?
.

⏰:09/10/24 20:54 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#111 [のの子]
 
ドキッ

「竜二かよ…」

さっきの事もあるし今メールを貰ってもあんま嬉しくない相手No.1。

カチッ

――――――

聡美にお前の分のプリント持たせた。貰っといて。

あと聡美と別れた。

じゃ。

――――――


「…はっ?」

メールを読んだ瞬間、心臓が痛くなったのがわかる。.

⏰:09/10/24 20:58 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#112 [のの子]
 
俺の心臓を痛めつけるメールを何回も何回も読み返す。

その度俺の心臓はバクバクと痛くなって、早く動く。

「マジかよ。嘘だろ…?」

嘘じゃない事ぐらいわかってる。

竜二はこういう冗談は言わない。

なんでっ…ってかあの後なんかあったのか?
.

⏰:09/10/24 21:02 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#113 [のの子]
 
聡美から別れようなんて言わなそうだし…

でも俺とキスした罪悪感からとかなら有り得る。

いや、でもメールの内容から竜二から‥?

やっぱ気づいてたのか?


「あぁ〜っもうどっちにしろあいつは今何してんだよっ。」


.

⏰:09/10/24 21:07 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#114 [のの子]
 
あーゆー女は絶対泣いてるに決まってる。

聡美の泣き顔と竜二の無表情の顔が頭に浮かぶ。

「‥ったく、竜二の野郎〜。」

カチカチッ

聡美の電話番号が画面に写ると指が止まる。

‥今俺が電話してどうなる?

本当に別れたならもうどうもならないし、それにあいつは今俺と話したくもないだろう…
.

⏰:09/10/24 21:22 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#115 [のの子]
 
そうだよな‥

「ってか別れたとかわざわざ俺に言うなっつーの‥俺に関係ねぇじゃん。」

そう言ったものの、聡美の電話番号を見つめながらじっと立ち止まる。


ドンッ
っ!!

体格のいいサラリーマンにぶつかられて携帯が1b先にぶっ飛んだ。

「っいってぇな、クソじじい‥」

小さくなっていくサラリーマンの後ろ姿を睨みつけてぶつぶつ文句を言いながら携帯を取りに歩く。
.

⏰:09/10/24 21:27 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#116 [のの子]
 
別に何回も落としてるし傷とか気にしてないけど一応手にとって確認。

大丈夫か‥

「はぁっなんかマジついてねぇー。」

ため息をついて顔を上げると、俺の視界に見覚えのある金髪男が入った。

「あれって‥」
.

⏰:09/10/24 23:31 📱:SH06A3 🆔:iEIVt7Sg


#117 [のの子]
 
スノードロップの‥

「昇さん‥久しぶりに見たな。」

駅前は人通りが多いのに何bか先を歩いてる昇さんは髪の毛の色ですぐわかった。

向こうは気づいてないみたいだけど、俺からはニコニコ笑ってるのがわかる。

‥隣にいんの女か?

昇さんの隣に小さな頭があるのがわかった。

それにしても

「Tシャツにジャージってラフすぎだろ、あの女‥」
.

⏰:09/10/25 10:39 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#118 [のの子]
 
ふんわりした髪を揺らしながら昇さんの隣を歩く女。

ダボダボのTシャツに裾半分切ったジャージ姿で、駅前というのもありちょっと目立つ‥

でも女連れてるなんて珍しいな。

「‥まっ帰るか。」

気づいてないし、女といるのに声をかけるのも気まずいからそのまま帰る事にした。

携帯を見ると落ちた衝撃か電源が切れて画面は真っ暗になっていた。
.

⏰:09/10/25 21:35 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#119 [のの子]
 
‥今頃泣いてんだろうな。

真っ暗な画面に写る自分の顔は情けない顔をしていてちょっと笑えた。

何もできない。

俺は二人の関係にとっては部外者だ。

しょうがない。ってか当たり前だし‥

でも‥今のあいつは一人。

竜二がいなくなったあいつは一人。

なら俺が‥
「昇さんっ!」
.

⏰:09/10/25 21:41 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#120 [のの子]
 
「やっと見つけたっ!ったく何してんすかぁ〜。今日集まるって言ってたじゃないっすかぁ!」

「うわっ何探してんだよ、気持ち悪いなぁ!後で行くし俺いなくても亮くんいんだからいいじゃんっ!今デート中なのっバカ!」

「いやっその亮さんに探してこいって言われて
「あぁーっ!亮くんのせいにすんのとか最低っ。」

「ちょっ勘弁してくださいよぉ。」

‥‥‥‥‥うるさっ。
.

⏰:09/10/25 21:48 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#121 [のの子]
 
デカい声のする方向にはやっぱ昇さん。

相変わらずの自由人だな‥

昇さんと下っ端っぽい茶髪の男が話す少し後ろに女がキョロキョロと慌てるように立っていた。

可哀相ー‥とか思って見ていると、さっきは見えなかった女の顔が見えた。

困ったように苦笑いしながら昇さんをなだめだしたのは紛れも無い


「…っ‥聡美?」

.

⏰:09/10/25 21:56 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#122 [のの子]
聡美Side

「のっ昇さんデートじゃないですし、私ここで大丈夫なのでっ‥」

「いや、良い雰囲気が壊れたしこのままバイバイはちょっとお兄ちゃん寂しいぞ。」

駅まで送ってもらったものの後輩?の人が現れて昇さんの機嫌は何故か悪くなってしまった。

「亮さんの命令無視したら俺が殺されるんですからぁ〜。マジで早く来てくださいよぉ!」

後輩さんも必死。

「えぇ〜‥確かに亮くん怒ったら恐いけどさー‥」

チラッと私を見てきたので、ニコッと笑うと昇さんは大きなため息をつく。
.

⏰:09/10/25 22:05 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#123 [のの子]
 
「はぁあぁっ‥俺こんなんでもこいつらの総長だからさ、行かなきゃ‥こんなバイバイでごめんね?」

ヨシヨシ、と頭を撫でる昇さんは本当に寂しそうでなんか胸が暖かくなった。

「はい。Tシャツ返しにまた来ますね。」

「うん。連絡して?今度はもっとゆっくり話そう。」
優しく笑う昇さんに私も笑うと‥‥

ガバッッッ!!
っ!

.

⏰:09/10/25 22:13 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#124 [のの子]
 
体を何かに引っ張られたかと思うと、その何かに包まれた。

温かい‥

ビックリしてその何かを見上げるとそこには

「えっ彰君っ?なんで

「お前は黙ってろ。‥お久しぶりです、昇さん。」

「うわぁ〜何この再会‥久しぶりだね、少年。何してんの?」

昇さんも一瞬驚いた顔をしたけどすぐニコッと笑った。

.

⏰:09/10/25 22:21 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#125 [のの子]
 
「ちょっと本屋に‥」

「なんすか、こいつ?」

「ん〜‥腐れ縁てやつ?まぁ悪い子じゃないからお前は黙って見てろって。」

後輩さんが彰君を睨んでるのを見て、私は喧嘩になるんじゃないかって一気に不安が沸く。

「あっ彰君、喧嘩はダメだよ?」

彰君に抱きしめられるようになっていた私は、彰君の服を引っ張って小さな声で話す。
.

⏰:09/10/25 22:29 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#126 [のの子]
 
「しねぇよっバカ。昇さんに勝てるわけねぇだろっ!」

なっなら良いんだけど‥

「二人って知り合いなの?」

昇さんがニコッと笑いながら私達を指差す。

でもなんだか作り笑いみたで、空気もあまり和やかではない気が‥

「高校が一緒なんです。」

「なるほどぉ。そりゃすごい偶然だ。と言うか運命?」

⏰:09/10/25 22:34 📱:SH06A3 🆔:wL13Kal2


#127 [のの子]
 
彰君はムッとして眉間にシワを寄せる。

運命だなんて大袈裟じゃ‥

私もつい苦笑いする。

「そんなくっついて二人は仲良しみたいだねぇ。」

ドキッ

そっそうだよ!いつまでくっついて
グッ!

「っ!‥彰君?」

慌てた私を見て彰君は私を包む手に力を入れてきた。

私の肩が彰君の胸に食い込む。

⏰:09/10/26 00:47 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#128 [のの子]
 
ドクン ドクン

さっきの事もあったせいか、彰君に抱きしめられてると思うと心臓が早く鳴る。

「まぁ仲良くやってますけど。」

「じゃもしかしてさとちゃん泣かしたの少年のせいだったり?」

っ!

昇さんはきっとそうなら彰君を怒るつもりなんだろうけど、実際は違う。

彰君は悪くない。

「俺のせいかはこいつに聞かないとわかりませんけど‥もしそうならちゃんと謝りますよ。」
.

⏰:09/10/26 00:55 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#129 [のの子]
 
「謝るって言ったってさとちゃんを守るお兄ちゃんとしてはそう簡単に許せないんだけどなぁ。」

「お兄ちゃんっ?!また適当な事言って‥俺達の問題なんですから口ださなくて結構です。」

彰君が昇さん横目にふんっと嫌みったらしく言う。

「カッチーン‥俺はさとちゃんのお兄ちゃんみたいなもんなんなのっ!急に現れたただの同級生に言われたくないしっ。ってかやっぱお前が泣かしたんだろ!」

「なっ!昇さんこそこんなチビにダボダボの服着させて変な趣味持ってんじゃないっすか?!ってかお前今日髪結んでたよなっ?‥まさかあんたこいつに変な事したんじゃっ‥」

「してねぇしっ!お前とは違って俺はちゃんと―‥」

‥‥どっどうすればいいの?

⏰:09/10/26 11:43 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#130 [のの子]
 
二人のペースに入れなくて止める事もできない私は、周りからの冷たい視線に気付かないよう彰君の胸に顔を隠す。

もう二人とも恥ずかしいからもうやめてよ〜っ!

「だいたいスノードロップの総長の昇さんとこいつがなんで知り合いなんですかっ?」

っ!

昇さんが話すのか気になって私も顔を上げて昇さんを見つめる。

「‥お前なんかに教えないしね。さとちゃんも教えなくていいからね?」

ニコッと笑う昇さんを見て私はほっとした。
.

⏰:09/10/26 11:50 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#131 [のの子]
 
でも彰君はさらに眉間にシワを寄せて昇さんを睨みだす。

「そう睨むなよ。昔と変わんないなぁ。」

‥っというか二人こそ知り合いなの?

「のっ昇さん、そろそろマジで行かないと亮さんが〜‥」

後輩さんが昇さんの顔を伺いながらそろりと二人の間に入る。

「時間も時間ですし‥彼女さんも帰らなきゃじゃ〜?」

ね?っと困った顔付きで私を見つめる後輩さんに言われて私も頷く。
.

⏰:09/10/26 19:57 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#132 [のの子]
 
もうすぐ時計の針は8時をさそうとしている。

さすがにもう帰らないと‥

「そうだね。じゃさとちゃんは俺が送る
「俺が送りますっ。」

彰君は私をさっと背中にまわすと昇さんの手が宙で浮いたまま止まる。

ガシッ

「彼が送ってくれるならもう安心ですねっ!ささっ早いとこ行きましょー!」

「えっちょっ!やだやだっ!俺送るって!」
.

⏰:09/10/26 20:03 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#133 [のの子]
後輩さんに掴まれて昇さんが遠ざかっていくのを私達は手を振って見送る。

「さとちゃんちゃんと連絡してっ!気をつけてねぇ!」

それだけ叫ぶと昇さんは見えなくなった。


「「‥‥‥‥ふぅ。」」


二人して一息つくと手を下ろす。
.

⏰:09/10/26 22:52 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#134 [のの子]
 
急に二人っきりになって私達はただボーッと立ち尽くす。

「‥昇さんと何してた?」

こっちを見ずに前を向いたまま彰君が話す。

「別にお風呂借りて話してただけだよ。」

「なんかされ
「されてませんっ。」

「あっそー。ならいいんだけど‥」

ポリポリと頭をかく彰君を横に私はまた小さなため息つく。

⏰:09/10/26 22:58 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#135 [のの子]
 
「私帰るね。ばいばい。」

彰君をチラッと見上げ軽く手を振りながら一本踏み出すと、すぐに彰君の手に捕まった。

「ちょっと待てよ。送るって‥」

「いいよ。彰君電車乗らなきゃだし。」

「俺は平気だから、送る。」

「‥大丈夫。」

「送るっ。」

キュッと彰君の手に力が入ったのがわかると、竜二君に掴まれた感覚が蘇る。
.

⏰:09/10/26 23:04 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#136 [のの子]
 
あの冷たい目に胸に刺さる言葉。

ゾクッ

「やっやだ‥離してっ!」

「えっあぁ‥ごめん。」

彰君はすぐ手を離すとその手を隠すかのように背中にまわす。

その姿を見た私はハッとして彰君に背を向けた。

「ごっごめんなさい。」

「ん‥平気。手‥痛かった?」

⏰:09/10/26 23:22 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#137 [のの子]
 
「ちょっとだけ‥」

「そっか。ごめん‥」

私達の横を同い年ぐらいの男女グループが笑いながら通っていく。

私達も昨日まではあんなに笑ってたのにな‥

今日は色々起こりすぎた。

初めて竜二君の家に行って

竜二君のお母さんに会って

彰君にキスされて

竜二君に別れを告げられた。

そしたら昇さんとも久しぶりに再会して

今もあれから竜二君からの連絡はないのに

私は彰君といる。

色々起こりすぎて
もう何もわからない。
.

⏰:09/10/26 23:33 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#138 [のの子]
 
‥わかりたくない。

なら‥考えなければいい。

力が抜けていくように、私の心はどんどん空っぽになっていく。

そんな事を考えていると彰君が私の目の前に来て私の手を優しく握る。

「何?‥‥彰君、もう知ってるんでしょ?」

「‥知ってる。」

「やっぱり‥私、振られたの。」

「知ってる。」

「言っとくけど彰君のせいじゃないよ?」
.

⏰:09/10/26 23:40 📱:SH06A3 🆔:gooTw2M2


#139 [のの子]
 
「竜二君ね、私に冷めたんだって。‥もういらないって。」

「‥なんだそれ。」

悲しそうにふっと笑う彰君を私はただ見つめる。

「‥恋愛ってこんな簡単に終わるものなの?」

私も彰君の手を握る。

「全部初めてでわからないの‥そういうものなの?」

こんな事彰君に聞いたって何も変わらない。

でもどうにかして平然を装うには、どこかに納得してないと今にもこの顔が崩れてしまいそうで恐い。

⏰:09/10/27 09:18 📱:SH06A3 🆔:lVj2utXE


#140 [のの子]
 
こういうものなんだ‥
少しでも客観的にそう思えれば私は泣かずにいられる。

「ごめん‥俺もよくわかんない。‥でも、終わりは突然来る。」

彰君は私を見つめたかと思うと俯く。

「‥永遠なんてないんだ。」

ドクンッ

永遠なんてない。

‥わかってた。

私も永遠なんてこの世界にはない事ぐらいわかってたのに

何をしていたんだろう。
.

⏰:09/10/28 00:44 📱:SH06A3 🆔:ahpBJeHc


#141 [のの子]
 
「私っ‥永遠なんてないってわかってたのに、ある気がしてた‥」

竜二君と永遠に、

永遠に一緒にいれるって

そう思ってた。

「バカみたいっ‥わかってたのに‥」

結局全てに永遠なんてない。

時間にも、命にもタイムリミットはある。

ポロッ

また溢れ出した涙が頬をつたう。
.

⏰:09/10/30 20:55 📱:SH06A3 🆔:cpOf21Ts


#142 [のの子]
 
「でもっそれじゃっ‥それじゃあまりにも寂しいじゃないっ?哀しいじゃんっ?」

永遠なんてない。
‥‥だから仕方がない。

そう納得できたらどんなに楽なんだろう。

でも

私が竜二君を好きになって、彼と一緒に過ごした時間が過去になっていく今も

あの時の私は幸せで愛されてたってそう思える。

納得してしまったらあの時を全部否定するようで、

あまりにも哀しすぎる。

永遠なんてない。
でも永遠の愛を信じてた。
竜二君が好きだった。
.

⏰:09/10/30 21:38 📱:SH06A3 🆔:cpOf21Ts


#143 [のの子]
 
「聡美っ‥」

握っていた手を支えに私はうなだれるように体を曲げる。

それと同時に涙が地面にボロボロと落ちていく。

「ッ‥好きだったのぉっ‥本当にっ好きでっ‥大好きだったのぉ‥」

グイッ

「わかった‥わかったから。」

それでも私は彰君の胸の中で何度も何度も叫んだ。
私の涙が彰君の胸に大きな染みを作る‥

もう竜二君に届かない言葉は、夏の街のざわめきと彰君の胸に消えていった。
.

⏰:09/10/31 00:15 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#144 [のの子]
彰Side

「あっここ左‥」

「ん?あぁ。」

聡美が真っ直ぐ進もうとした俺の裾を掴み左を指差す。

結局あの後聡美を一人で送るのは心配で送る事になった俺だが、聡美に案内されながら歩いている。


「うぅ〜目痛いよぉ‥喉も痛ぁい。」

目を手で押さえながら聡美が口を尖らせる。

「そりゃあんだけ泣いてデカい声だせばなるだろ。ってかちゃんと前見て歩けよ。」
.

⏰:09/10/31 00:30 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#145 [のの子]
 
「はぁい‥」

うぅっと唸ると恥ずかしそうに目から手を離す。

赤くなって腫れた目は今も潤んでいて、キラキラ光ってるようにも見える。

「はぁっ‥こんな顔で帰ったらみんな驚くだろうなぁ。」

「服も男物着てるしな。」

「あっそうだよね。」

うーん、とTシャツを引っ張ってどうしようか考える姿からはさっきよりは元気になったように見える。
.

⏰:09/10/31 17:54 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#146 [のの子]
 
もう吹っ切れた。‥って訳ではないだろう。

でもどことなくスッキリしたみたいなのはわかる。


「あっ!彰君、宿題のプリント。私のと混ざってたよ。」

「あぁ〜、忘れてた。」

そういや竜二にメールで言われたんだっけ。

「サンキュ。ってクシャクシャだな‥」

バッグから出されたプリントは誰が見てもクシャクシャで、若干破けてる。

「ごっごめんねっ?構わずバッグに入れちゃったから‥でもほらっ私のもこんなクシャクシャ!」
.

⏰:09/10/31 20:14 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#147 [のの子]
 
そう言って見せてきたプリントは確かに俺と同じぐらいクシャクシャだった。

「別にいいけど。」

きっとその時はそんな事に気使ってる余裕なんてなかったんだろうし‥

ごめんね、とまたクシャクシャのプリントをバッグに入れるその姿が聡美をより小さく見せる。

「お前さぁ‥平気なの?」

「えっ何が?竜二君の事?」

「うん。」

聡美は俺の横を歩きながら首を傾げる。
.

⏰:09/10/31 20:24 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#148 [のの子]
 
「うーん‥もうどうしようもないし、とりあえず落ち着いた感じ?それに超泣いたしね。」

へへっと恥ずかしそうに笑う。

「これから夏休みで良かった。会わないですむし‥さすがに会ったらまだ凹むから。でも明日から暇だよ〜。」

バッグを大きく揺らしながら聡美が一歩先を歩く。

「‥竜二の事は?まだ好きっしょ?」

「うん。でもこれからは友達、になれるのかな?」

.

⏰:09/10/31 20:34 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#149 [のの子]
 
「‥なれたらいいなぁ。」
聡美の背中からは寂しがってるのが伝わってくる。


「バーベキューとかどうすんだよ。」

「ん〜‥やっぱ私行かない方がいい?みんな気使うよねぇ。」

振り返る聡美が困ったように笑う。

ってかさっきからなにヘラヘラ笑ってんだよっ‥

「お前さぁ、あんだけ俺の前で泣いてんだから強がんなよっ。逆にイライラする。」

.

⏰:09/10/31 20:42 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#150 [のの子]
 
聡美の頭をグッと押すと聡美がよろける。

「ったく‥バカ女。」

「‥バカって言うなぁ、バカ。」

聡美が弱々しいパンチを俺の腹にいれる。

「バーベキューも来いよ。何かあったら俺が責任持って面倒見てやるから。」

「‥ありがと、あっきー。」

聡美が笑いながら照れ隠しなのか相変わらずパンチをいれてくる。

「‥あっきーって人前で呼ぶなよ。」

「はぁい。あっきー♪」
.

⏰:09/10/31 20:55 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#151 [のの子]
 
たぶんこいつは思ってたよりも弱い‥けどその分強いって思った。

竜二といた過去に捕われる事なく、ちゃんと先を見て考えてる。

それに比べて俺は二年もの間過去にしがみついて今も離せないでいる。

‥でも、過去を離したら俺の中から真琴がいなくなる気がして恐い。

それに、そんなの真琴が可哀相だ‥
.

⏰:09/10/31 21:22 📱:SH06A3 🆔:jvctchn.


#152 [のの子]
 


「なぁ‥‥」

「何?」

「永遠てあった。」

「えっ?」

「『死』は永遠‥生き返る事も、会う事も二度とできない。だろ?」

真琴‥

俺がお前にあげれたのは、残酷な永遠だけ。
.

⏰:09/11/01 08:54 📱:SH06A3 🆔:v9ZA7PBE


#153 [のの子]
聡美Side

あぁ‥この人私と似てる。

私は彰君を見つめてふっと思う。

死を『永遠』という彼の考えは私も持っていた。

「そうだね。でも‥それって全然ロマンチックじゃない。」

私が笑うと彰君は確かにっと複雑そうに笑う。

彰君も元カノさんを亡くして、私も姉を亡くした。

元カノさんをまだ想い続け過去と生きる彼と、姉の死を乗り越え前を見つめる私。

似ているようで似てない。

.

⏰:09/11/01 21:08 📱:SH06A3 🆔:v9ZA7PBE


#154 [のの子]
 
でも今彼が私の前に立っているように、私達はたぶん同じ道に並んで立ってる。

ただどこを見ているか‥

その違いだけ。


「彰君‥あの時なんであんな事したの?」

彰君の服を掴む。

「‥さぁ。ただの気まぐれとか‥?」

彰君を見つめると、彰君とバックの夜空の星が綺麗に重なり合ってドラマのワンシーンみたいだった。
.

⏰:09/11/03 11:58 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#155 [のの子]
 
彰君にもドラマのワンシーンのように私が悲劇のヒロインにでも見えてるのかな‥

「でもね、あの時の彰君‥『今』を生きてたよ。」

ピクッ
彰君の顔が強張る。

「前私の前で泣いた時みたいだった‥」

あの時も彰君は、いつもと違って確かに私を見つめて感情をさらけ出してた。

いつも一枚のガラスが彰君の何かを止めていたのに、あの時はそれがなかった気がする。

彰君、あなたももう『今』を生きるべきだよ。

「なんだそれっ‥変な事言うな。」
.

⏰:09/11/03 12:06 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#156 [のの子]
 
眉間にシワを寄せて怒っているのか、泣くのを我慢してるのか‥
彰君が少し子供のように見えた。

二年前、私達はまだ中学三年生だった。

まだ15歳のただの子供‥


「‥まっ私の唇を奪った件は許さないけどねー。」

話を変えるように私はまた道を歩きだす。

「‥はいはい、許さなくて結構でーす。」

少し遅れて彰君も私の少し後ろについてきた。

.

⏰:09/11/03 12:13 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#157 [のの子]
次の日――――

「ちょっと待ってよぉ!なんでそこで急に別れ話になるのぉ?」

桃が周りを気にせず大きな声をだす。

「さぁ‥わかんないよ。我慢の限界だったとか?」

私が苦笑いしながらアイスティーのストローに口をつける。

「意味わかんなぁいっ。竜二君サイテーッ。ムカつく〜‥」

ほっぺを膨らましてケーキを食べる桃。

「だってあんな幸せそうにしてたじゃないっ。‥あの笑顔は嘘だったわけ?」

怒ってたかと思うと次は悲しそうな顔をする。

「そうだね‥」
.

⏰:09/11/03 12:22 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#158 [のの子]
 
昨日彰君に送ってもらった後、お母さんにグチグチ怒られながら部屋に逃げた私。

すると一気に疲れがきたのかそのままベッドに飛び込むと朝まで寝てしまっていた。

♪〜♪〜♪

ビクッ

「ぅわっ‥‥‥寝てた‥」

重い体と腫れた瞼が鳴りつづける携帯をとるのを邪魔する。
.

⏰:09/11/03 13:46 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#159 [のの子]
 
やっと取れた携帯の画面には桃の名前が写る。

ピッ

「もしも〜
「もしもしっ?大丈夫っ?」

いつもゆっくりの桃がハキハキ、しかも焦ってるもんだからすぐにわかった。

「あぁ‥なんだ〜‥もう知ってるんだ。フクから聞いたの?」

「今朝ねっ‥ってかなんですぐ連絡しないのっ?心配したんだよ?」

「うん‥ごめんね。」

電話をしながらボーッと部屋を見渡すと服やバッグらが散らかっている。
.

⏰:09/11/03 16:56 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#160 [のの子]
 
「ねぇ今日暇?会わない?」

「えっうん、いいよ。」

「じゃ12時に駅ね。」

――――――

そんなこんなで今に至るわけで‥

ご飯を食べた後、喫茶店に入った私達はソファーに座ってかれこれ2時間。

桃に何度も同じ質問やら文句やらを聞かされている。

「ってか竜二君もだけどぉ、彰君も彰君だよねぇ。」

「ん〜‥?」

「だって友達の彼女にキスするなんてさぁ。‥何考えてんだろ。」

.

⏰:09/11/03 17:08 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#161 [のの子]
 
「そうだよねぇ〜‥」

私がまたアイスティーを口にする姿を桃がじっと見つめる。

「何‥?」

「なぁんか、もっと取り乱しちゃってるかと思ったけど‥案外冷静だねぇ。」

桃がソファーの背にボスッと持たれて私を見つめる。

「そうかなぁ?」

「そうだよぉ。さっきから『そうだねぇ』ばっかだし〜‥」

そうだったっけ?
.

⏰:09/11/03 17:14 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#162 [のの子]
 
「だってどうしようもないから。それにもうたくさん泣いたし‥」

「彰君と〜昇さんだっけ?いい男二人に支えられたら平気になっちゃうもんなのかねぇ。」

励ましてくれてるのか、けなしてるのか‥

私は苦笑いすると桃は笑いながら嘘だよ、っと小さな声で言った。

「ってかじゃ竜二君とはこれからどうしてく気ぃ?」

「う〜ん‥わかんない。でも別れたいって言われたんだし、私は何もしないよ。」

「そう‥」

複雑そうに笑う桃を前に、私はアイスティーの中の氷をストローでグルグル回す。

⏰:09/11/03 17:28 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#163 [のの子]
竜二Side

「だからなんでっ?!そんなの聡美ちゃん可哀相だろっ!」

「うるっさいなぁ‥冷めたんだよっ。こういうのあんだろっ?」

「ふざけんなよっ!この前まで仲良くやってたくせにっ‥
「うるさいっ!!」

バンッ

俺がテーブルを叩くとシーンッと誰もが黙り込んだ。.

⏰:09/11/03 17:44 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#164 [のの子]
 
昨日彰以外の奴らにも連絡するとメールやら電話がうるさくて、結局皆俺ん家に集まった。

一通り話したとこで旬とフクが食いついてきた。

得に旬は理由に納得いかないと怒りだすばかり‥

「旬‥もうやめよう。竜二がそういうならそうなんだよ。二人は別れたんだ。」

フクがため息をつくと、頭をかく。

「俺らまだ高校生じゃん?結婚とか考えらんないし‥付き合ってたら別れるとかあんだろ。」

博也は携帯をいじりながら冷たく話す。

「でもっ急すぎだろ。」
.

⏰:09/11/03 17:58 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#165 [のの子]
 
旬が小さく呟く。

「‥俺は最低な男でいいよ。責めていい‥でも聡美ちゃんとよりを戻す気はない。」

俺がハッキリ言うと、暗い空気がまた重くなった。

「『聡美ちゃん』か‥この前まで呼び捨てだったのにな。」

フクが複雑そうに笑う。

「バーベキュー‥どうすんの?」

博也が携帯から目を離して俺を見つめてきた。

「あぁ〜‥どうするかな。」

⏰:09/11/03 18:06 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#166 [のの子]
 
バーベキューにお祭り‥夏休みたくさんやりたい事あっただろうな。

聡美の笑った顔を思い出すと俺はただ唇を噛み締める。

「あいつは来るよ。」

ベッドに座りながら本をただペラペラとめくっていた彰が話に入ってきた。

「あいつって‥?」

「聡美。」

ドクンッ

彰の口から聡美の名前が出るとつい胸の内側が高まる。

「聡美ちゃんが言ってたの?」
.

⏰:09/11/03 18:12 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#167 [のの子]
 
「うん。」

俺に目を向ける事なく、淡々と話す姿に少しイラつきを覚える。

「何〜?もしや聡美ちゃん早速彰とラヴラヴ?」

博也が冷やかすかのように笑うと旬がおもいっきり睨む。

「お前も来れば?あいつならなんかあったら俺見とくし。」

サラッと言ったけどこいつやっぱムカつくとこ上手くついてくるな。

「どうしようかな‥考えとくよ。」

ふっと笑うと一瞬彰がチラッと俺を見てきた。
.

⏰:09/11/03 18:31 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#168 [のの子]
 
「何?」

「いや‥お前は泣いたのかなって思って。」

彰が本をめくる手を止めてそのページをじっと読みはじめる。

「こんな事言っても無意味だけどさぁ、あいつはすげぇ泣いてたよ。」

ズキッ

心臓が大きく鳴り出すと同時に痛みが走る。

「‥あれから聡美に会ったの?」

「聡美?ふっ‥聡美ちゃんだろ?元彼さんっ。」

.

⏰:09/11/03 23:26 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#169 [のの子]
 
「彰っ‥それより聡美ちゃんに会ったのか答えろよ。泣いてたのか?」

そう言って旬が心配そうな顔を彰に向ける。

「あぁ‥駅で会ってさ、最初は笑ってたけど途中取り乱したみたく泣き出したよ。」

彰がまた本のページをめくる。

「‥その後家まで送った。その時にはもう落ち着いてたみたいだったけどね。」

ふぅっ‥

彰以外、俺を含めた四人は小さく息を漏らした。

取り乱す‥

そんなまで俺は彼女を傷つけたのか。

⏰:09/11/03 23:35 📱:SH06A3 🆔:ap0MzWFE


#170 [のの子]
 
「そっか‥」

ただそれだけしか言えなかった。

「‥‥‥‥はぁっ俺帰るわ。このまま居ても何も変わんないし。」

彰が本を閉じると皆もそうだな、とゆっくり立ち上がる。

「ごめんな。俺のせいで‥色々ごめん。」

俺は一人座ったまま俯く。

「いや、俺達こそなんかごめん。気にすんなよ。」

「そうだよっ‥俺も感情的になりすぎたしさ。バーベキューは楽しもうっ♪」

「女なんてたくさんいるし‥飢えた時は紹介してあげるよ〜。じゃねぇ♪」

旬達が出ていく中、最後に出ていこうとした彰が俺の横で立ち止まる。

⏰:09/11/04 00:52 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#171 [のの子]
 
「泣くぐらいなら聡美手放さなきゃ良かったじゃん。」

「‥なんのこと?」

俺を見下すように見下ろす彰を俺は笑いながら見上げる。

「目赤くなってんのバレバレ‥じゃーな。」

っ‥!

彰達が出ていくと、重苦しさのなくなった部屋に風がはいる。

せっかくワックスも何もつけないで目元ら返を隠してたのに‥バレバレだったわけか。

「本当ムカつく奴。」

テーブルに肘をついて目元を触るとヒリヒリして痛かった。

⏰:09/11/04 01:03 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#172 [のの子]
彰Side

「はぁ〜〜っ‥」

旬がデカいため息をつく。

「うわっやめてよ。俺らの幸せまで逃げそう。」

博也が旬からササッと離れて俺にくっつく。

「だってさぁ、やっぱショックじゃんっ?!あの二人が別れたの‥」

旬が肩を落とすようにまたため息をつく。

「まだ言ってんのぉ?もうしょうがねぇじゃんっ。‥そりゃちょっと寂しいけどさ〜。ねぇ?」

博也が俺の肩に手を置いて叩く。

「まぁな。」

あの二人は確かにバカップルなとこもあったけどその場を明るくしてくれる二人でもあった。
.

⏰:09/11/04 11:12 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#173 [のの子]
 
「復活はないのかな?聡美ちゃん何か言ってなかったの?」

旬まで俺にくっついてじっと俺を見つめてくる。

「‥‥言ってなかった。ってか重いっ!離れろっ!」

二人をはがすように旬や博也の手を掴むと、フクがボーッと前を向いたまま歩いてるのが視界に入った。



「フク?どうした?」
.

⏰:09/11/04 11:16 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#174 [のの子]
 
「えっいや‥なんでもないよ?ごめん、ごめん。」

フクがそう言って笑いながらまた前を向く。

‥‥?

「あの二人が別れたのがそんなショック?」

博也達をはがしながら俺はフクを見つめる。

「えっ‥いやそういう訳じゃないよ。」

「フクってなにげ聡美ちゃんに優しかったし〜‥聡美ちゃんの事好きだったりしてぇ?♪」

博也が今度は後ろから俺の首に腕を絡ませる。

だから苦しいっつーの。

「っ!違うよ。好きとかじゃなくって‥ってかその‥‥」

フクが顔を赤くして否定する姿を見て俺はまた苦しくなった。
.

⏰:09/11/04 11:24 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#175 [のの子]
 
えっフク‥マジで‥‥?

絶対三人ともフクを見つめて思ったはず。

「実はさ、俺言おうかすごい悩んだんだけど‥さっきはやっぱあの状況じゃ言いにくかったし‥でも言っといた方がいいと思って‥」

フクが頭をかきながら顔を赤くする姿なんて滅多に見れない。

俺達三人は嫌な予感を胸に固まる。

聡美の事が好きなんです、とか無しだかんな!

そんな空気をかもしだす俺を余所にフクを手で口元を隠してボソッと呟く。


「‥えっと‥桃と付き合う事に‥なったんだ。」

.

⏰:09/11/04 11:30 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#176 [のの子]
聡美Side

「え゙ぇっ!!!本当にっ?いつっ?いつからっ?」

さっきとは逆転して今度は私が周りを気にせず大きな声を出す。

「‥昨日。」

桃は恥ずかしそうにモジモジ指をいじる。

「昨日っ?!なんでっ?どっちから?」

「えぇ〜‥フクから?いや私からかなぁ?わかんないよぉ。」

桃がピンクに染まるほっぺを膨らます。

昨日って‥神様ってなんて残酷なのよ。
.

⏰:09/11/04 19:33 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#177 [のの子]
 
私と竜二君が別れた日が親友の桃とフクの記念日になるなんて‥

あぁなんか気が遠くなる。

「聡美に言おうか悩んだんだけどぉ、親友だしフクとも相談してやっぱ言っとこうってなってぇ。‥ごめんね?」

桃が上目遣いで申し訳なさそうに手を合わせて謝る姿が、私にはまるで合掌されてるみたく感じた。

「あはは‥なんかこっちこそごめんだよぉ。でも良かったぁ♪本当良かったね♪」

⏰:09/11/04 19:38 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#178 [のの子]
 
うん。これは本当の気持ち。

「で、どっちからなの?♪」

私が見を乗り出して聞くと、桃は照れながら話してくれた。

「昨日ね、フクと二人で遊んでたの。でねっバーベキューの話になってね、そこ流れ星が見えてすごい星がキレイなんだってぇ♪」

ニコニコと幸せそうに笑う桃を見つめながら私はうんうん、っと笑いながら頷く。

「私が流れ星に願い事しようって言ってねぇ‥そしたらフクが去年俺もしたって言って〜♪」

昨日の事を思い出してるのか桃のほっぺがどんどんピンクに染まる。

⏰:09/11/04 22:01 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#179 [のの子]
 
「へぇ〜♪フクってロマンチストなんだ。」

流れ星に向かって手を組むフクを想像して私はクスクス笑う。

「あっでもフクだけじゃなくてみんなでしたらしいよぉ?それでね‥」

みんなで‥

その時、竜二君は何をお願いしたんだろう?

彰君も何を願ったのかな‥

「何をお願いしたのって聞いたら〜‥」

桃がニヤニヤしながら私をじっと見つめる。



「『桃が俺の事好きになりますように』だって〜!!♪もう恥ずかしくないっ?そんなの願っちゃうなんてかーわーいーいー♪♪」


.

⏰:09/11/04 22:08 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#180 [のの子]
 
「うそぉ!それってじゃぁフクも去年の夏から桃の事が好きだったって事?」

「そうっ!そうなのぉ♪で、私が『そのお願い事叶ってるよ?』って‥うわ〜っ私もかなり恥ずかしい事言ってるよねぇ。」

桃がほっぺに手をあてて恥ずかしそうに俯く。

全く二人して可愛いなぁ。

「おめでとう、桃。」

私が桃の頭を撫でると桃は照れるように笑った。


昨日の私はどん底に落とされたような気分だったけど、こんなにも幸せそうな笑顔を見ると私の心が温まる気がした。
.

⏰:09/11/04 22:16 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#181 [のの子]
――――――

「あれ?今日は帰りが早いのねぇ〜‥」

家に着くとリビングでお母さんが洗濯物を畳んでいた。

「昨日帰り遅かったから今日もかと思った。」

う゛っ‥

「だから昨日はごめんなさいって謝ったじゃーん。」

バッグを起くと私は冷蔵庫を開けてお茶を出す。

「全くっ‥お母さんが心配するのわかってるでしょう?だいたいあんたはっ
♪〜♪〜♪

お母さんが愚痴り出すと同時に私の携帯が鳴り出した。

⏰:09/11/04 22:23 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#182 [のの子]
 
この曲は電話っ?助かったぁ〜♪

「ごめんねっ。電話だから〜‥」

そう言いながらお茶の入ったグラスと携帯を手に自分の部屋へ向かう。

「あっ逃げないのっ!」

お母さんの声から逃げるように私は階段を上って慌てて部屋にはいる。

♪〜♪〜♪

相変わらず鳴りつづける携帯。

「ふぅ〜っ‥誰だろ?」

携帯を開くと彰君の名前が表示されていた。
.

⏰:09/11/04 22:28 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#183 [のの子]
 
ん?どうしたんだろ?

ピッ

「もしもし‥?」

「何してんの?」

唐突だなぁ‥

私は小さな丸いテーブルにお茶おいて床に座る。

「今はぁ〜床に座ってクーラーをつけようとしてるとか?」

「なんだそれっ。」

ピピッ

クーラーのスイッチが入るとモワンッとした生温いクーラー独特の匂いが流れ出す。

⏰:09/11/04 22:35 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#184 [のの子]
 
「彰君こそ何してんの?」

「俺?俺は〜クーラーつけて扇風機つけてる。」

ぷっ‥

「なにそれぇ。私以上じゃない?」

「だって今日超暑いし。」

彰君てエコとか絶対できなさそう‥そんな事を思うとまた笑ってしまった。

「何笑ってんだよ?」

「いや、さすが彰君だなぁって‥」

聞こえないように口を押さえながらクスクス笑う。
.

⏰:09/11/04 22:41 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#185 [のの子]
 
「っというか何か用があって電話してきたんじゃないの?どうかした?」

私はお茶を飲みながら部屋に飾られたカレンダーを見る。

「いや、別に‥暇だったから?」

「暇って‥ってあれ?‥‥‥あぁっ!」

「っっ!?なんだよ、急にっ!」

「すっかり忘れてたぁ〜!私明々後日補習だったんだぁ。」

カレンダーには赤い時で大きく補習と書かれている。

なんか私ついてないなぁ‥

「勉強してんのかよ?」
.

⏰:09/11/04 22:53 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#186 [のの子]
 
「‥‥‥‥ちょっと。」

「ちょっとってお前大丈夫なのかよ?」

「だっ大丈夫だよ!だって補習だからちょっとは簡単だろうし、まだ時間あるしっ。‥‥たぶん。」

はぁっと電話の向こうからため息が聞こえた。

「じゃさっさと勉強しろっバカ!」

ブチッ
プーップーッ

ひっひどい‥
.

⏰:09/11/04 22:58 📱:SH06A3 🆔:iJ6lP1Dk


#187 [のの子]
 
それから慌てて勉強しだしてあっという間に夜の7時になった。

でも一回テスト勉強した所だったからか、だいたい覚えていて手こずらずに進んだ。

でもやっぱり

「つっ疲れたぁ〜‥」

ベッドに横になると猫のようにぐぅっと背を伸ばす。

「はぁっ‥今日はここまでにしよう。」

ゴロンッ

ベッドに横になるとテレビのない部屋は静かだ。

ゆっくり目をつぶると頭に浮かぶのは‥
.

⏰:09/11/05 19:00 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#188 [のの子]
 
竜二君‥何してるのかな?

『聡美』

『終わりにしよう』

思い出したのは彼の優しい笑顔とあの時の冷たい言葉。

なんとも言えない胸のモヤモヤが私の中で暴れ出す。

「ん〜〜〜っ‥もうやだぁ‥」

ベッドの上でやり場のないモヤモヤを枕にぶつける。

‥‥‥‥‥

バッ

「昇さんに連絡してないや。」

⏰:09/11/05 22:21 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#189 [のの子]
 
ふっと昇さんの事を思い出した。

昨日の事もあるし‥連絡しとこうかな。

胸のモヤモヤを忘れようと早速昨日交換したばかりの番号にかける。

カチッカチカチッ

♪〜♪〜♪〜

「もっしも〜し?♪うわっっと!さとちゃぁん?」

バンッ ダンッ

っ?

「あっはい、聡美で
『ちょっと待てこらぁ!』
‥‥すけど今の声は?

「あのねぇ今ちょっと取り込んでてっ‥でも大丈夫大丈夫♪」

ドスッ
.

⏰:09/11/05 22:48 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#190 [のの子]
 
「えっなんか変な音が‥」

バーンッ
『ってぇー‥!このっ‥』
『オラッ!』

「ちょっ大丈夫ですか?」

これは完全にそっち喧嘩真っ只中ですよね?

「大丈夫だって〜。これでも俺強いんだよぉ?だって俺総長だもーんっ♪」

ドスッ
『うっ‥‥』

いやいやそういう事ではなくっ!ってかずっと鈍い嫌な音するんですけど〜!
.

⏰:09/11/05 23:33 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#191 [のの子]
 
「おっお取り込み中ならまたかけ直しますっ!」

「えっ?そっか‥さとちゃんに失礼だよね。りょーうっ!俺ちょっと電話してくるねぇ。さとちゃんからなんだぁ♪」

「わかった〜。オラッ!さとちゃんによろしく〜。」

昇さんが言う亮って人は副総長の高橋亮さん。

亮さんにも昔かまってもらったりしてたな。

「‥あの〜なんか急に電話しちゃってすみませんでした。」

「だから大丈夫だって。はぁっそれより昨日はあの後大丈夫だった?」

少し息切れをする昇さん。

「はい。大丈夫でした。」

⏰:09/11/05 23:43 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#192 [のの子]
 
「なら良かった。今日何してたの?」

「えっと友達と会ったり色々です。」

へぇっと笑う昇さんは他にも色々質問してきた。

「今日何時に起きた?」
「ご飯食べた?」
「明日の予定は?」‥‥

なんでこんなに質問するんだろうと思ってると、

「そっか。大丈夫そうだね。」

その言葉ですぐにわかった。

心配してくれてるんだって。

⏰:09/11/05 23:50 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#193 [のの子]
 
「心配かけてしまったみたいですみませんっ。あの今度洋服返しに行きますね。」

「いえいえ♪俺頼られるの嫌いじゃないから。」

さすが総長。

「亮もね、さとちゃんに会いたがってたよ。声も聞きたいって‥今度は三人で会おうよ?きっと楽しいからさ。」

胸のモヤモヤが晴れて暖かくなるのを感じる。

「はい‥」

それじゃ戻るね、と言って昇さんと短い電話は終わった。
.

⏰:09/11/05 23:56 📱:SH06A3 🆔:fH9jZASQ


#194 [のの子]
 
さっきまであった胸のモヤモヤはきれいになくなっていた。

心配してくれる人がいるのは幸せものの証だ。

お母さんやお姉ちゃんはもちろん、桃とフクも言おうかすごい悩んでくれたと思う。

竜二君がいなくなった寂しさや悲しみは、たぶん誰にも埋められない。

でも私は一人なわけじゃない。私を想ってくれる人はたくさんいる。

‥きっと彼もそうなんだろうな。

カチッ カチッ

♪〜♪〜♪

「もしもし?」

「あっ彰君?何してるの?」

⏰:09/11/06 10:55 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#195 [のの子]
彰Side

聡美からかかってきた電話は得に対した内容じゃなかった。
まぁ日常会話ってやつ?

でもなんだかんだずっと話がつきなくて、結局もう1時間は電話してる。

「そうなんだぁ。私はあんま好きじゃないかも。」

「えっあいつら面白いじゃん!」

「うーん‥だったら最近出てきたアップダウンの方が好きだな♪」

「あぁ〜。あいつらも面白いけどさぁ‥」

1時間も電話して話してるのは最近のお笑いの話。

くだらない。

くだらないけど、今までこんなに話さなかった分意外に楽しかったりする。

⏰:09/11/06 19:06 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#196 [のの子]
 
聡美の事を全然知らなかったって事でもあるけどね。

「なんか話つきないね。」

聡美がクスクス笑う。

「確かに‥今まであんまこういう話しなかったしな。」

「だよねっ。なんでだろ?」

そりゃお前には竜二がいたからだろ。

なんて言いたくなったのを我慢して俺もなんでかねぇ、っと笑う。
.

⏰:09/11/06 19:14 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#197 [のの子]
 
「私達って知ってるようで何も知らなかったみたいだね。‥ちょっと寂しい。」

寂しいとか言いながら聡美はまたクスクス笑う。

「ん〜‥まぁ人間関係ってそういうもんだろ。知られたくなかったら話さない‥秘密は誰でも持ってる。」

「‥そうだよね。」

そう言う聡美の声はどこか寂しそうなのがわかった。



「どうかした?」

「えっ‥う〜ん。彰君の秘密って何かなぁって思って。」

⏰:09/11/06 22:06 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#198 [のの子]
 
‥‥秘密か。

頭に浮かぶの真琴のこと。

でも俺の秘密をこいつに話してどうなるんだろう?

俺の真琴への気持ちは何も変わらない。

あえて変わるというなら、こいつが俺に同情の目を向けるようになるぐらいだ。

「‥‥教えたくない。」

教えないんじゃなくて、教えたくない。

そんな言葉が出てきた。

「そっか。」

‥案外あっさりだな。

しつこく聞かれるかもしれないと思ってた俺に、聡美はそれ以上聞いてはこなかった。

⏰:09/11/06 22:14 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#199 [のの子]
 
何考えてんだこいつ‥

「お前は秘密あんの?」

聡美に秘密ってほどの何かがあるようには感じなかったけど、質問を仕返してみた。

「私っ?私か〜‥秘密にはしてないんだけどね、話してない事はあるんだぁ。」

それが世にいう秘密じゃねぇの?

「じゃ秘密にしてないなら教えてよ。」

俺はちょっと笑いながら聡美をからかうように言う。

「えぇ〜‥うーん‥たぶんこれ聞いたら彰君暗くなるよ?」

⏰:09/11/06 22:23 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#200 [のの子]
 
あはは、と笑う聡美の声はいつもより高い声じゃなくてどことなく暗く影を感じた。

「暗い話なの?」

「うーん‥たぶん暗い。」
たぶんて曖昧だなっ。

「悲しい話?」

「うん。」

‥なんだよっそれ。軽い気持ちで聞いたのにリアルな秘密かよっ。

「あぁ〜‥じゃダメ。秘密話終わりっ。」

気まずい俺は頭をかく。

⏰:09/11/06 22:32 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#201 [のの子]
 
「えっなんかすでに暗くなっちゃった?ごっごめんね?今のは忘れてください。」

聡美も慌てて謝り出す。

「だから終わりだって言ってんじゃん。ったく、次謝ったら電話切るぞ?!」

部屋で電話をしてた俺はベッドにねっころがる。

‥いや、マジそろそろ切った方がいいんじゃね?

「あっ‥ってか電話代あるしマジそろそろ切る?」

切るぞって脅しときながらもう一回聞く。

「あぁ〜‥そうだよね。なんか長電話しちゃってごめんね?」

あっ謝ったよ、こいつ。
切らなきゃじゃん。

⏰:09/11/06 22:39 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#202 [のの子]
 
ふっとそんな事を思った。

「いいよ。じゃまたな。」

「あっうん。またね。」

‥‥‥‥‥

こういう時のどっちが先に切るかっていうタイミングが分からない俺は、携帯を耳につけたまま静かに終わりを待つ。






「あのさぁ‥」

.

⏰:09/11/06 22:46 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#203 [のの子]
 
なかなか終わらないので、ついまた話し出す。

「‥ぷっ‥‥なぁに?」

聡美が待ってましたと言わんばかりにクスクス笑い出す。

こいつっ‥

ちょっと気恥ずかしいのを我慢して俺は天井を見つめながら一息吐く。

「‥またこういう風に電話しない?」

「えっ?」

聡美は驚いたのかクスクス笑う声が止まる。

「別に暇つぶしでもいいし。」

ドキ ドキ

うわ‥また来たこの感じ‥

今まで一定のリズムをとっていた俺の心臓がボリュームを上げて体中に響く。
.

⏰:09/11/06 22:59 📱:SH06A3 🆔:0DrbgGt6


#204 [のの子]
 

「‥うんっ、彰君からもしてくれるならいいよ。私ばっかかけてたらなんかストーカーみたいだし?」

「あぁ、するする。」

また笑う声が聞こえると俺の心臓も大人しくなっていく。

「なんか私彼氏いなくなって暇人だからありがたいよ〜‥なぁんちゃって♪」

ドクンッ

確かに聡美の隣から竜二がいなくなったせいか俺の聡美への壁がなくなってきている気が‥

「彰君今の笑うところっ!‥自分で言うの凹むんだからぁ。」
.

⏰:09/11/07 21:08 📱:SH06A3 🆔:yGDc2Ssk


#205 [のの子]
 
「あっあぁ‥ご愁傷様です。ってかマジそろそろ切るから。」

「うわ〜ひどぉいっ。自己チュー‥」

聡美の拗ねた声が聞こえる。

本当子供だな。

聡美と祐輔が会ったらどうなるか考えると笑える。

「じゃまた電話するわ。」

「はぁい。私もできたらするねっ。‥彰君、ありがと。」

ん?

そのあとすぐじゃあと言って先に切ったのは聡美だった。

⏰:09/11/10 21:58 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#206 [のの子]
 
もう用済みの携帯を置いてまた俺はじっと天井を見上げる。」

はぁっ‥ヤバいな。

関わらないって決めたくせにめちゃくちゃ関わってるし。しかも長電話してるし。またしようとか言って‥

何してんだよ俺ぇー!!

バッ
枕を顔に押し付ける。
「ん゙〜〜〜〜〜〜っ!」

ぷはっ

「はぁはぁっ‥マジ何してんだよ、俺。」
.

⏰:09/11/10 22:04 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#207 [のの子]
 

‥真琴っ真琴っ

思い出せっ俺が好きなのは真琴だけ。そうだよ。

真琴‥真琴‥

真琴っ
『彰、どした?そんな寂しそうな顔して。』

‥真琴?

『泣きそうになってんの?やっぱガキだねぇ。』

‥笑うな、バカ。

『バカって言うなぁ!』

真琴‥

『ん〜?なに?』
.

⏰:09/11/10 22:14 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#208 [のの子]
 
俺‥真琴だけだよ。
真琴だけ愛し続ける。

『‥‥重っ!!ってか無理無理〜。』

‥‥‥んだとっこらぁ?!人が真剣に言って
『だってアンタ生きてんじゃん。私だけとか無理でしょ。』

っ!‥‥無理じゃない。

『ぷっ無理だって。』

だから笑うなって!本当に俺はお前の事‥
『彰君‥?』

聡美っ?

⏰:09/11/10 22:22 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#209 [のの子]
 
『彰君、どうしたの?‥泣いてるの?』

えっいやっこれは‥

『クスッ‥彰君て泣き虫?』

なっ!違げぇしっ!

『彰、その子誰?』

っ!真琴っ‥こいつは

『彰君?‥あの人誰?』

っ‥あいつは‥


.

⏰:09/11/10 22:27 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#210 [のの子]
 
『私の事ずっと好きとか言ってもしかして好きな子いたとか?嘘つき。』

『彰君‥?あの時好きって言ってたのは本当に嘘だったの?』

っ‥‥俺は‥俺が好きなのは‥

好きなのは‥

『っぷ‥あはははっマジ困った顔してるし!アンタまだわかんないのぉ?』

っ?!なっ何が?

『この子‥だーれ?』

はっ?そいつは‥だからっ‥聡美だ‥ろ?

っ?!

⏰:09/11/10 22:37 📱:SH06A3 🆔:wd45sfUs


#211 [のの子]
ドンッ

「ぐはっ!!」
「あっきーおはよーっ!」

祐輔が俺の腹の上に思いっきり座って跳ねる。

「おっはっよー!」

「祐輔っ‥おっおもい゙‥ギブ。」

やったぁ♪っと笑って祐輔はバタバタと俺の部屋からでていった。

うぇ゙‥あいつ強烈な起こし方だな。

「っつか寝てた‥マジで朝?」

ムクッと起き上がって携帯を見ると七時半になるところだった。

‥‥‥あいつ夏休みなのに早起きさせんなよぉ〜。
.

⏰:09/11/11 09:47 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#212 [のの子]
 
「はぁ‥あっちぃ。」

ため息を着くと適当に服をとって風呂場に向かう。

とりあえず風呂入ろ‥汗が気持ち悪ぃ。

「風呂入るからぁ!」

「はいよーっ。」

リビングに向かって一声かけると母さんの声と祐輔の笑い声が聞こえてきた。

‥朝から平和な家族だ。


シャーーーッ

勢いよく流れるシャワーを頭からかぶる。
.

⏰:09/11/11 09:55 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#213 [のの子]
  
「‥‥‥‥変な夢。」

変な夢を見た。

久しぶりに夢に真琴が出てきた。生前と変わらない姿のあいつ。

てっきり【忘れるな】そういう事かと思った。

でも途中から聡美まで現れて、二人に痛い所をつかれた。

夢の中でも修羅場って恐ろしい‥

‥‥でも、最後に真琴が笑って聡美の横にたった時

『この子‥だーれ?』
.

⏰:09/11/11 10:04 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#214 [のの子]
 
二人が並んで笑いながら俺を見つめた。もちろんそこにいるのは真琴と聡美。

‥でもふっとある事に気付いた瞬間、祐輔に起こられた。

でも覚えてる。


【二ノ宮】


二人とも同じ名字だという事。

‥偶然なのか?

偶然にしては恐い。
.

⏰:09/11/11 14:59 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#215 [のの子]
 
でもきっと偶然‥

いや、でも前に聡美の笑った顔が真琴に似てると思った事があった。

二ノ宮‥

他に真琴と聡美の繋がりは
シャーーーッ

「‥‥‥昇さん‥?」

ドクンッ

そうだ。二人は昇さんと繋がってる。

本当に偶然なのか?
.

⏰:09/11/11 16:56 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#216 [のの子]
 
「‥‥って考えすぎか。」

きっと変な夢を見たせいだ。

例えもし二人が繋がってたとしても、それはもう‥

【罪を忘れるな】

真琴がそう言ってるんだ。

変な夢だってきっと

真琴が怒ってるんだ。

「忘れないよ‥俺は人殺しだ。忘れない。」

忘れられない。
.

⏰:09/11/11 17:03 📱:SH06A3 🆔:NkjBfcfg


#217 [のの子]
聡美Side

「あっそういえば明日桃達遊園地行くんだって。いいなぁ‥」

「へぇ〜‥付き合ってから初デートとか?」

「そうらしいよ。」

‥なんで彰君とわざわざ電話で桃達の初デートの話をしてるんだろ。

クスッ

若干そんな事を思いつつ、ペラペラと教科書をめくる。

彰君と今日2回目の電話。

彰君に電話しようって言われてから、なんだかんだ毎日1回は電話している。

「ってか補習明日だっけ?」
.

⏰:09/11/12 20:40 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#218 [のの子]
 
「うん、でももうほとんど復習したし大丈夫。」

「そう言って書く欄間違えなきゃいいけど‥」

う゛っ‥

「今回は大丈夫だもんねっ。」

パタンッ
教科書を閉じて近くにあった猫の形の抱きまくらをギュッと抱きしめる。

「なら良いけど〜。まぁ頑張ってこい。」

「‥うん。彰君は明日何してるの?」

.

⏰:09/11/12 20:45 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#219 [のの子]
 
「俺ぇ?あぁ〜‥バーベキューの日の用意でもすっかなぁ。」

「そっかぁ。もうすぐだもんね‥」

そう、もうすぐバーベキューの日。

彼と別れてから連絡もとってないし、もちろん会ってもいない。

別れてから初めて会う。

どんな顔で、どんな風に彼に接すればいいのかわからなくて不安になる。

桃にずっとくっついてるわけにもいかないしなぁ‥

「あいつなら普通に元気だよ。」

「へっ?」
.

⏰:09/11/12 20:51 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#220 [のの子]
 
「りゅーじっ。あいつは普通に元気だし、バーベキューも来るって。」

「えっあぁ、そうなんだっ。」

急に彰君の口から竜二君の名前が出てきたから不意をつかれた。

桃もフクも私に気を使ってか、竜二君については話題に出なかった。

「‥竜二君に‥どう接すればいいかわかんない。」

「はぁ?別に普通でいいじゃん。話したきゃ話して、話し掛けられたら話せばいいし。」

「えぇ〜‥私そんなの上手くできないもん。」

ギュッと抱きまくらに力を入れると猫の顔が曲がる。

「じゃ話さなきゃ
「それは避けてるみたいで嫌なんだもんっ。」

⏰:09/11/12 21:05 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#221 [のの子]
 
「それに皆に気使わして空気悪くしたくないのっ。」

「わがままかっ!‥はぁ。」

複雑な乙女心に彰君の小さなため息が染みる。

「‥ってかまぁ相手は竜二だし。たぶんあいつに合わせてれば平気だよ。」

「どういう意味?」

「空気壊さないようあいつから普通に接してくるはずって事。だからそれにお前は合わせりゃ平気だよ。」

竜二君から普通に‥?

「‥うん、確かに竜二君てそういう人だもんね。」
.

⏰:09/11/12 21:12 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#222 [のの子]
 
付き合った期間は自慢できるほど長くはなかったけど、彼と出会ってから一緒にいた時間で彼がどんな人かは少しはわかってるつもり。

竜二君は優しい‥

なのに自分には優しくできない所もあって

そこが少し心配な所だったなぁ。

「‥泣いてる?」

「えっ泣いてない泣いてないっ。ちょっとしんみりしちゃっただけ。」
.

⏰:09/11/12 21:22 📱:SH06A3 🆔:aEZfGdCg


#223 [のの子]
 
「ふーん。ただのしんみりねぇ‥」

「本当だよ?だってあれから泣いてないもん。」

まぁ泣く隙もなく勉強してたんですけどね。

「へぇ〜‥涙枯れちゃったとか?それとも案外お前冷たい子だった?」

クスクスと嫌みったらしく笑う彰君にムッとする私。

「違うもんっ。あれから勉強もあったし、桃からも連絡来るし‥それに彰君も毎日電話してるから大丈夫なのっ!あっきーのバカ!」

「えっマジでムキになんなよっ。」

だってあの日から彰君に助けられてばっかりで本当に感謝してたのに‥

‥ふんっ。
.

⏰:09/11/15 20:19 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#224 [のの子]
 
「もう寝るっ!あっきーのバカッ!」

「はっ?!またバカッてお前なぁっ!」

「あっきーのバーカッ!」

ピッ プーップーップーッ

ふんっと猫の抱きまくらに更にまた力を入れる。

あっきーの‥バカ‥


でも

「‥‥本当に切っちゃったけど、怒ったかな?」

かけ直してくる気配もない携帯をじっと見つめる。
.

⏰:09/11/15 20:40 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#225 [のの子]
 
‥かけ直してもこないの?

何よっ‥べぇーっだ!

無反応の携帯に舌を出してフンッと放り投げる。

別にかけ直してこなくたっていいもんっ。

‥でもあんな切り方したら嫌になっちゃったかな?

♪〜♪〜♪
っ!

「‥彰君‥かな?」

放り投げた携帯を見つめる。

⏰:09/11/15 20:48 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#226 [のの子]
 
あっでもこの着信音メールだ。

「メールかぁ‥」

少し離れたとこに落ちている携帯をのろのろと手に取ると、やっぱりメール一件を受信していた。

カチッ
「あっ‥‥彰君だ。」

やっぱりメールは彰君からで、連絡があった事に少しほっとしながらも電話じゃない事に不安がよぎる。

カチッ カチッ

――――――

バカはお前だっ!
短気女!勝手にしろ。

――――――

「‥‥うぅっ‥やっぱ怒ってる〜!!」


その後、結局意地っ張りな私から返事をする事ももちろん謝る事もできないまま、補習当日を迎えた。

⏰:09/11/15 20:58 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#227 [のの子]
 
――――補習当日
ミーンミンミン

「はいっそこまで〜。んじゃ先生も忙しいんでさっさと帰れぇ。」

そう言う先生がさっさと教室から出ていくと同時に私は椅子の背もたれによっ掛かる。

「あっつい‥」

補習が終わった瞬間、私の口から出たのは教室の暑さについて。

夏休みの学校はモワモワしてかなり暑い‥

外から蝉の音と部活の子達の掛け声が聞こえる。

でも学校内は静かで、教室まで生徒と会う事もなかった。

「でも‥やっと解放されたぁ。」

補習という再テストはなんなくクリアしたと思う。

三回も確認したし、今回は大丈夫っ。
.

⏰:09/11/15 23:16 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#228 [のの子]
 
カチッ カチッ カチッ カチッ

教室の時計の針をじっと見つめる。

時刻はまだ11時前。

‥‥‥‥‥‥はぁっ。

「帰ろ。」

得に学校にいる用事もないし、今日の予定もない。

それに暇つぶしと言って彰君への電話もできないし‥

本当に私、暇人。

「はぁ‥お昼ご飯でも買って帰ろうかなぁ。」

今日に限って家族皆も出かけてる。

さみしー‥

⏰:09/11/15 23:23 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#229 [のの子]
 
立ち上がって筆箱とお財布と携帯しか入っていない軽い鞄を持つ。

「‥なんか私、一人ぼっちで可哀相。なんてねぇ〜。」

自虐ネタにふっと笑いながらゆっくり歩き出す。

ドアを開けようと手を伸ばすと、

ガラッ!!

ビクッ
「あっいた。」

「‥‥‥えっ?なんでいるの?」

「さてなんででしょう?」
.

⏰:09/11/15 23:35 📱:SH06A3 🆔:6DM3rOGo


#230 [のの子]
 
私の目の前に現れたのは

「なん‥なんで竜二君が‥?」

私を見てクスクス笑う姿は前と変わない。

「ん?あっ補習お疲れ様。聡美ちゃんに会いに来たんだけど‥元気そうで良かった。」

そう言ってニッコリ笑った彼は私の横を通り過ぎて教室に入る。

私に会いに?

「なんで会いに来たの?連絡もなしに‥」

「あぁごめん。今日補習だってわかってたから連絡しなかったんだ。」

補習の日覚えてたんだ‥
.

⏰:09/11/17 15:21 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#231 [のの子]
 
ぐっと込み上げてきた何かを押さえるように私は唇を噛む。

ガタンッ
「はぁ〜‥暑いね。っというか久しぶりだね。」

「そうだね。」

ドアの前に立ったまま動かない私に対して竜二君は自分の席に座った。

「聡美ちゃん、あの時はごめんね‥急にあんな事になっちゃって。」

聡美ちゃん

前は呼び捨てだったのに‥

前と変わらずに私に話しかけ、笑う彼でも以前とは違うと突き付けられてるようで胸が痛い。
.

⏰:09/11/17 15:28 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#232 [のの子]
 
「‥私なら大丈夫だよ。」

ニコッと笑う私。

ズキッ

蓋を閉めていたのか‥

忘れかけていたあの時の感情が、溢れ出ようと私の心臓をギュッと痛みつけた。

「‥そう、良かった。あとこれ、返そうと思って。」

この距離からでもわかる。

キラッと光るそれは、初めて会った日に竜二君に取られたピアス。

ズキッ

‥また心臓が痛い。
.

⏰:09/11/17 18:27 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#233 [のの子]
 
「それ‥‥」

「別れたのにお揃いの物持ってるの変だし、返すよ。」

さっきから笑顔の竜二君がはいっとピアスを私に向けてきた。

今‥別れたって言った?

「‥っ‥‥‥」

「聡美ちゃん?」


竜二君から終わりにしようって言われただけで、別れようとは言われてなかった。

だから『別れ』って言葉にそこまでピンときてなかったのかもしれない。
.

⏰:09/11/17 21:42 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#234 [のの子]
 
「私っ‥本当バカみたい‥」

心の中で呟いたはずの言葉が、小さな声になって漏れた。


私、まだどこかで期待してたんだ。

また戻れるって‥

でも彼の中ではもうしっかり私達の恋は終わっていた。

『別れたのに‥』

そうだよね。

私達は別れたんだ。

もう小さく光るピアスのような繋がりなんて必要ないんだね‥
.

⏰:09/11/17 21:54 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#235 [のの子]
 
でも大丈夫‥心の準備はできてたもん。

目にたまった涙がこぼれないように、こぼれても彼には見えないように‥

前髪を手で押さえて目元が見えないようにする。

「っ‥うん‥‥わざわざありがと。ごめんねっ‥」

それだけ言うと、今にも涙がこぼれそうで恐くて動けなくなる。

「‥本当私ってダメだよね‥本当にバカッ‥」

私は竜二君のように笑えない。

できないよ‥

「‥‥さと
「確かにお前はバカだ。」.

⏰:09/11/17 22:17 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#236 [のの子]
 
っ?
ガシッ

「ひぁっ‥‥」

後ろから私の目を隠すよう大きな腕が私に被さった。

「しかもバカなくせに短気で泣き虫でチビで‥」

チビは余計でしょ‥

「‥はぁっ全く手間が掛かってほっとけないバカ女だな、お前の元カノは。」

「っ‥またバカって言ったぁ‥」

大きな腕が被さった事で涙はこぼれたけど、泣き顔をみせる事も彼がどんな顔をするか見る事もない。

また助けられた‥

勝手にしろって言ってたくせに‥なんでいるの?

彰君‥
.

⏰:09/11/17 22:34 📱:SH06A3 🆔:wt7S7trI


#237 [のの子]
 
「なんで彰がいんの?」

竜二君の冷静な声が聞こえた。

‥彰君も竜二君もどんな顔をしているんだろ?

私は彰君の大きな腕に顔をうめるよう、ただじっとする。

「別に〜。生意気なこいつにお仕置きしに来ただけだよ。」

お仕置き?

「まさかお前がいるとは思わなかったけど‥まぁこいつ連れてくから。」

グッと引っ張られて私はモタモタしながら歩く。
.

⏰:09/11/18 00:56 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#238 [のの子]
 
前‥見えないや‥

大きな腕から少し離れ彰君を見上げると、彰君が私服で来ていた事に初めて気づいた。

「‥泣き虫。しっかり歩け。」

彼はそう一言言うと今度は私の肩を抱いてまた一歩ドアに向かう。


「ちょっと待って。」

竜二君が私達を呼び止める。

⏰:09/11/18 01:07 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#239 [のの子]
 
「聡美ちゃんこれ‥これを返すために今日来たんだ。受けとって?」

「なにそれ?ピアス?」

っ!

彰君が振り返って小さなピアスを睨む。

「あっ‥あれ私のなの。だから‥」

彰君の黒いTシャツ掴む。

「‥んだよっめんどくせぇな。竜二、投げて。」

「なんでお前は上から目線なんだよ‥ほらっ。」

キラッ

竜二君の手から離れたピアスが一瞬輝いて彰君の手の中に渡った。
.

⏰:09/11/18 22:18 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#240 [のの子]
 
「はいよ。」

「ありがと‥」

数ヶ月ぶりに私の手に戻ってきたピアスは変わらず輝いている。

でも、私の耳にはもう片割れのピアスはない。

竜二君と別れた日、どこかに落としたのかいつの間にかなくなってた。

このピアスも私と同じで一人ぼっちなんだ。

一人ぼっち‥‥
.

⏰:09/11/18 22:26 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#241 [のの子]
 
「‥‥‥竜二君‥」

やっと出た小さな声。

「?‥なに?」

「私達‥別れたらどうなるの?」

一人ぼっちは寂しくて悲しくて怖い。

やっと竜二君の方を向くと、竜二君はにっこり優しく笑っていた。

いつも私を見つめていたあの優しい温かい目。

「大丈夫‥友達だよ。」


‥私達の赤い糸の繋がりはなくなってしまったけど、また違う繋がりがそこにはあった。

それは私には十分な繋がりだった。

⏰:09/11/18 22:36 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#242 [のの子]
竜二Side

「友達か‥」

二人がいなくなった暑い教室に俺はポツンと一人残った。

聡美ちょっと痩せた?俺と別れたからかな‥

そんな事を考えながら机に顔をつけて窓の外を見つめる。

‥嘘つくのってこんな辛くて体力使うんだな。

スッと目の前に手を置く。

キラッ

俺の手で光ったのは‥聡美のピアス。
.

⏰:09/11/18 22:44 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#243 [のの子]
 
あの日聡美が俺の家から飛び出して行った後、母さんがこのピアスを見つけた。

きっと聡美はどこかでなくしたと思ってるだけで、俺が持ってるとは思ってないだろう。

「やっぱこれも返すべきだった?」

コロコロと転がるピアスをただじっと見つめる。

ってかなんで彰いたんだろ‥?あの二人俺がいなくなった途端にあんな仲良しとかひでぇ〜。

『手間が掛かってほっとけない』

そうだよ。そこが聡美の可愛いとこで魅力なんだっつーの!

⏰:09/11/18 22:54 📱:SH06A3 🆔:Ugr4bHZk


#244 [のの子]
 
二人の並ぶ姿を思い出すと腹がたつのと同時に、なんとも言えない切なさが込み上げる。

あの事を二人が知るのももうすぐだろう‥

どうなるかわからないけど、俺は二人を見守る。今の俺にはそれぐらいしかできないから。

キュッとピアスを握りしめる。

「好きだよ、聡美‥」

聡美なら大丈夫。

彰も‥二人なら大丈夫だよ。

だから笑って?
.

⏰:09/11/19 01:58 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#245 [のの子]
聡美Side

「どうした?」

私が立ち止まって大きな校舎を見上げてるのを、彰君は不自然そうに見つめる。

「ん〜‥竜二君はまだ帰らないのかなって思って。」

「また泣かされたくせにあいつの心配すんのかよ。こりねぇ奴だな。」

ムッと彰君を睨むと彰君はふっと笑って歩きだす。

私もその後をついて歩く。

「あっつ‥」

「今日最高39°らしいよ。」

ミーンミンミーン

真夏の太陽が私達を照り付ける。

⏰:09/11/19 20:37 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#246 [のの子]
 
ミーンミンミーン

蝉の音があちこちからはっきりと聞こえる。

「‥なぁ。」

「なに?」

「お前まだ竜二の事好きなんだろ?友達って言われたのになんで笑ってんの?」

彰君が私を横目で見つめてきた。

「そりゃ嬉しいからじゃない?」
.

⏰:09/11/19 20:41 📱:SH06A3 🆔:iLN2SllM


#247 [のの子]
 
私はニコッと笑う。

涙がこぼれたさっきの私とは全く違う。

「嬉しいって‥『友達』が?もう恋愛対象じゃないって意味じゃん。」

「いいのっ私は嬉しいの‥だって別れたら全部終わりだと思ってたんだもん。」

そう、全部終わり。

どこかで一人ぼっちになると思ってた。

それほど私は彼が好きで、一時でも彼は私の全てだったのかもしれない。

「終わりじゃなかった‥友達でもいい。竜二君と繋がってたかったから。」
.

⏰:09/11/20 00:11 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#248 [のの子]
 
「嬉しい‥良かった〜。」

私がまた笑うと彰君はバカにしたように鼻で笑う。

「竜二は愛されてるねぇ。羨ましい〜。」

「やっちょっとぉ!もうっ‥あっもちろん竜二君だけじゃなくて彰君も愛してますよ〜?」

ピタッ

私が彰君にからかうようにニヤニヤ笑いながら服を引っ張ると、彰君が驚いた顔で立ち止まる。

「えっ‥?」

「おまっお前なぁ!そういうのやめろよ!」
.

⏰:09/11/20 00:25 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#249 [のの子]
 
「えっだって羨ましいとか言うから‥ごめんね?」

「別に羨ましいとか本気じゃねぇしっ。バカ女!」

「またバカって‥はぁい。」

ふんっと歩きだした彰君の耳が赤いのは太陽のせいでしょうか?

べぇーっだ!
‥クスッ

「ねぇ、あっきーアイス食べたいなぁ。」

「はぁっ?お前は幼稚園児かっ!」

「えっなんでっ?!」
.

⏰:09/11/20 00:31 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#250 [のの子]
彰Side

「うまい?」

「うんっ美味しい〜♪」

アイスを食べながら聡美が満足そうに笑う。

はぁ‥マジでこいつ祐輔と同レベルだな。

「はぁ、お前は笑ってる方がいいよ‥泣かれたらめんどい。」

「ん゛ーっ!ひどぉいっ!」

ってかマジで竜二に友達だって言われてから元気すぎてウザい。

結局こいつを心配してた俺より、竜二の冷たい言葉でこんな変わるもんなのか‥.

⏰:09/11/20 19:49 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#251 [のの子]
 
なんか俺‥こいつに振り回されただけ?

「なんか切ねぇー‥」

「ん?なになにっ?あっ彰君もアイス一口食べる?ほらっあーん♪」

ストロベリーのアイスをスプーンにとって俺の口の前で止める。

「‥‥‥‥‥‥。」

‥だからっ‥‥こういうのを普通にすんのがバカだって言ってんのにわかんねぇ奴だなぁ‥

「あれ‥あーんは?ストロベリー嫌い?」

「別に嫌いじゃ‥っ!!
「あはははっスキありー♪」

俺が口を開けるのを待ってたのか、俺の口の中にはストロベリーの香りが広がった。

⏰:09/11/20 19:57 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#252 [のの子]
 
「急に口に入れんな!
「でも美味しいでしょ?」

聡美がニコニコ笑いながらまたあーんと俺の口にアイスを運んできた。

自然に俺も口を開ける。

「んっまぁ美味いけど〜‥これ間接キスじゃね?」

ピタッ

今度は自分の口にアイスを運んだ手がピタリと止まる。

「ちっ‥違うよ!」

「‥いや〜そうだろ。」

「違うもん!全然違うしねっ!」

「お前今まで食べてたスプーンで俺の口に入れただろうが!」

「うっ‥ち違うやつ使ったもんね!」
.

⏰:09/11/20 20:08 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#253 [のの子]
 
顔を真っ赤にしてムキになる聡美を見て、つい俺もムキになる。

「じゃそのスプーンで今お前食ったよな?!それ俺が使ったやつだしっ。やっぱ間接キスじゃん。」

聡美の手にあるスプーンを指差してふんっと笑う。

「‥‥また彰君とキスしちゃったぁ。彰君の変態〜!」

聡美が顔を赤くしながらジタバタと足を鳴らす。

「誰が変態だっコラ。お前からやってきたんだろ?ってかアイス溶けますけど。」

アイスを見るとストロベリーのピンクの液体が揺れていた。
.

⏰:09/11/20 20:18 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#254 [のの子]
 
「‥‥でもぉっ‥。」

チラッと俺を見つめる聡美に俺は笑う。

「ぷっ‥もったいない事すんなよ。ただの間接キスじゃん。」

聡美の髪をクシクシャと撫でるとほっぺを赤くした聡美がそうだけど、っと小さな声で呟いた。

「やっぱ彰君食べて?私もうごちそうさま‥」

「えぇっ‥なんかもろに嫌がられてんのもショックなんだけど。」

「嫌とかじゃなくってぇ‥はっ恥ずかしいの!もうっほら食べて食べてっ!」
.

⏰:09/11/20 20:32 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#255 [のの子]
 
無理矢理アイスとスプーンを渡された俺を置いて歩き出す聡美。

「‥それ言われたらこっちも恥ずかしくなるっつーの。」

柔らかくなったアイスを口に運ぶ。

甘い‥

「ストロベリー好き?」

「ん‥まぁ好き。」

「私も好き。」

エヘヘッと笑う聡美を横に俺はアイスを食べる。

「ストロベリーの色とか甘酸っぱさって恋と似てません?」

何を言い出すんだ、こいつは‥

⏰:09/11/20 20:38 📱:SH06A3 🆔:aiFLMgyA


#256 [のの子]
 
「あぁ〜‥どうかねぇ。」

「そうだよぉ!」

「だってわかんねぇもん。俺男の子だしー。」

そんな事を言いながらあっという間にアイスを食べきった。

「男の子でも恋した事ぐらいあるでしょ?」

恋ねぇ...

真琴がいた時の事を思い出しそうになったけど恋とは掛け離れた哀しみ込み上げてきて頭から消す。

「‥恋ってどんなんか忘れたぁ。」

「なにそれぇ〜!恋っていうのはねぇ‥
「竜二としか付き合った事ないくせに偉そうにすんな。」
.

⏰:09/11/21 20:19 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#257 [のの子]
 
コツン、と頭を叩くと聡美はまたほっぺを赤くしてムスッとした。

「そりゃ私も教えてもらった言葉だけどぉ‥」

「なら余計に偉そうにすんなっつーの。」

どうせ変なロマンチストな女から聞いたんだろう。

「えぇ〜‥でもこれ聞いてすごいって思っちゃったよわたしっ!」

もう話したくてしょうがないって顔をして俺を見つめる聡美。

っ‥しょうがねぇなぁ。

「じゃ試しに言ってみ?」

俺がそう言うと聡美の表情が明るくな

「えっとね‥えっと〜」

⏰:09/11/21 20:40 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#258 [のの子]
『恋をすると二つの感情が生まれるの。

自分勝手な考えや相手に押し付けてしまう欲、

それを色で例えるなら
情熱的な赤。

それとは逆に相手の気持ちを想ったり、嫌われないよう自分を守ったりする思いやり、

それは色で言うと純粋な白。

この二つがそろって恋なんだって。

だから恋をすると‥‥』
.

⏰:09/11/21 20:42 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#259 [のの子]
 
「―‥ピンクな気分になる。』って‥なんかすごくないっ?私そうなんだって納得しちゃったもん!」

あははと笑う彼女を俺は立ち止まってじっと見つめる。

なんで‥

「あれ、彰君?」

俺を不思議そうに見つめるこいつは

‥誰だ?

なんでその言葉を

お前が知ってるんだよ。

お前は真琴じゃないだろ?

聡美だろ?

――――――ポロッ

聡美が話した言葉は、
真琴がいつか俺に教えてくれた言葉だった。

『ピンクな気分』
.

⏰:09/11/21 20:56 📱:SH06A3 🆔:YU5ZlOkM


#260 [のの子]
 
『えっ?』

『ねぇねぇ、ピンクな気分って知ってる?』

真琴が俺の横に座る。

『知らない。なにそれ?』

『ピンクな気分っていうのはぁ〜‥―――』

―――

『だからピンクな気分。わかる?』

『ふーん‥アンタが意外にロマンチストって事はわかった。』

バシッ

俺がクスクス笑うと真琴が頭を思いっ切り叩いてきた。

『アホ。』
.

⏰:09/11/22 19:55 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#261 [のの子]
 
『いってぇー。真琴のバカ力ぁ!』

一瞬怒ったのかと思ったら真琴は笑っていた。

『私ね、こういうの好き。』

そういって真琴は俺の首に手を絡める

『‥俺を叩くのが?』

『違う。こうやってふざけ合いながら愛を深める事。』

『‥やっぱロマンチストだ。』
.

⏰:09/11/22 20:01 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#262 [のの子]
 
『しかもロマンチストでSっ気もある。新たな発見‥』

俺も真琴の腰に手を回す。

『アンタまた殴られたいの?』

『でもこうやって愛を深めるのが好きなんだろ?』

真琴がムッとしたのを俺は目を閉じて気付いてないふりをする。

唇がゆっくり重なっても真琴が嫌がらない事が彼女の気持ちを表していてほっとした。

⏰:09/11/22 20:06 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#263 [のの子]
 
『‥ねぇ、』

『ん?』

唇が離れたのが名残惜しくて俺はまだ真琴の唇を見つめる。

『私が今ピンクな気分なのわかる?』

真琴がニヤッと笑いながら俺にギュッとくっつく。

『ん〜‥わかるかも。』

『かもぉっ?』

『ぷっ‥わかるよ。俺も今そうだもん。』

そう言って笑いながら二人で何度もキスをした。
.

⏰:09/11/22 20:11 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#264 [のの子]
―――――

一筋の涙が俺の頬を落ちていくのがわかった。

「彰君‥?」

聡美が困った顔で俺を見つめる。

「大丈夫っ?なんか私変な事言っちゃった‥?」

心配そうに聡美がまたスカートのポケットからハンカチを出して俺に渡す。

俺‥またこいつの前で泣いてる。

そんな事を考えながらハンカチをただ見つめた。
.

⏰:09/11/22 20:16 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#265 [のの子]
 
「お前‥誰から聞いた?」

まだハンカチを差し出す聡美を見ずに俺は呟く。

「なにを?」

「さっきの話‥誰から聞いた?」

まだ流れる涙。

「誰って‥なんでそんな事聞くの?」

俺がハンカチを受け取らないとわかったのか聡美がハンカチをギュッと胸の前で握り締める。

「‥‥‥お前、真琴の‥」
.

⏰:09/11/22 20:22 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#266 [のの子]
プァーーーーッ!

ビック!

トラックが俺達に向けて大きなクラクションを鳴らしてきた。

自然と道の端っこに行くとトラックは排気ガスを撒き散らして通り過ぎて行った。

「びっびっくりした‥」

「うん。」

聡美を見るとトラックに驚いたからか、それとも俺が恐かったのか‥

キュッと俺のTシャツを握って下唇を噛んでいた。

「‥大丈夫?」

「えっあっごめんね。大丈夫大丈夫っ。」

そういって手を離すと俯いて立ちすくむ姿に、俺の胸がチクッと痛む。
.

⏰:09/11/22 20:35 📱:SH06A3 🆔:8iTaxRrU


#267 [のの子]
 
「‥‥彰君、」

「なに?」

聡美が哀しみと寂しさがこもった弱い目で俺を見つめる。

それを見つめると、俺の胸はまたチクッ痛んだ。

「さっき『真琴』って言ったの‥?」

やっぱり‥

「‥‥そうだよ。」

聡美の表情と、聡美の口から真琴の名前が出た瞬間わかった。


こいつは真琴と繋がってる。
.

⏰:09/11/23 20:16 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#268 [のの子]
聡美Side

彰君の口から真琴って言葉が出た瞬間、トラックのクラクションの音が響き渡った。

まるで聞くなって誰かが言ってるみたいに‥

でも、私にはトラックのクラクションより真琴って言葉の方に驚いてた。

ドクン ドクン ドクン


知ってる‥の?

彰君が‥まこ姉の事‥

なんで?

ドクン ドクン ドクン
.

⏰:09/11/23 20:25 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#269 [のの子]
 
この人は‥誰から何を聞いてまこ姉を知っているの?

「ピンクな気分って真琴が言ってたんだろ?‥俺も前聞いた‥」

でも彼が口にするまこ姉の名前の呼び方は、優しかった。

「お前‥‥真琴の
「なんで彰君がまこ姉の事知ってるのっ?!」

私の目から涙が溢れ出す。

なんで?

なんで?
.

⏰:09/11/23 20:30 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#270 [のの子]
 
神様っ‥なんで

竜二君が私の隣からいなくなって

彰君までいなくなるの?

「話したくないっ‥話したくないっ。」

きっと彼も全てを話せば私を軽蔑の目で見るんだろう。

【姉貴が死んでから話せるようになるとか気持ち悪ぃ‥】

【お姉ちゃんが死んだ瞬間笑ってたらしいよ?】

【恐〜い】
.

⏰:09/11/23 20:37 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#271 [のの子]
 
違うよ

いっぱい泣いたもん

【事故ってあいつが殺したんじゃねぇの?】

【人殺し】

やめて  違う

【姉貴殺し】

【お前の姉貴、お前のせいで死んだよ】


やめてっ 違うってばぁ


.

⏰:09/11/23 20:40 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#272 [のの子]
 
「やだっ‥話したくない。」

「聡美‥?」

私はボロボロ涙をこぼしながら彰君から後退りする。

「おいっちょ
「彰君にっ‥嫌われたくないの。だから話したくないっ!」

私はそこから逃げるように走り出す。


彰君は今までの人とは違うかもしれない。

彼を信用してないわけじゃない。

でももし彼もいなくなったら、そう思うと話せなかった。.

⏰:09/11/23 20:47 📱:SH06A3 🆔:RvSL46Yc


#273 [のの子]
 
ごめんね、彰君。

ごめんね、まこ姉‥

私は本当はこんなに弱くて

強くなれない自分が

大嫌い。

ミーンミンミーン
「ッハァ‥ハァハァ‥ッ‥もうっ‥誰もいなくならないで‥」

夏の太陽が当たらない日影に隠れて、蝉の音に掻き消されそうな小さな声で私は呟いた。

⏰:09/11/24 23:59 📱:SH06A3 🆔:BOqSlspM


#274 [のの子]
 
―――――
ザワザワ

夏休みの駅は学生達や家族連れが多くて賑やかだ。

私が端っこで座り込んでいても誰も気付いてないかのように通り過ぎる。




「‥さとちゃん?」

っ!

顔を上げると昇さんが笑っていた。
.

⏰:09/11/25 20:29 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#275 [のの子]
 
「急に泣きながら電話きてびっくりしたよ〜。どしたの?」

ザワザワ

「‥静かな所行く?」

コクンッ

小さく頷くと昇さんの手に引っ張られ立ち上がる。

「ついておいで。」

昇さんの後にゆっくり着いていく。

一歩が重い。

.

⏰:09/11/25 20:34 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#276 [のの子]
 
駅から少し歩いて裏道に入ると昇さんが小さな喫茶店に入っていった。

今時の喫茶店じゃなくて、昔からあるような古い喫茶店。

一瞬戸惑ったけど、私も黙ったまま喫茶店に入っていく。

カラーン

ドアについていたベルが鳴る。

「さとちゃん、こっち。」

昇さんはもうソファ席に座っていた。
.

⏰:09/11/25 20:42 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#277 [のの子]
 
私もソファ席に着くと周りを見渡す。

意外にもアンティークの置物や絵がたくさんあってお洒落な喫茶店だった。


「ここ亮と二人でよく来るんだ。人に聞かれたら困る話とかしやすくてね‥あっ飲み物アイスティーでいい?」

「はい。」

確かに私達以外に人はサラリーマンの人がいるぐらいだ。
.

⏰:09/11/25 23:52 📱:SH06A3 🆔:cBOFVBZU


#278 [のの子]
 
「あっ湯上さん、アイスティー二つで。」

「‥かしこまりました。」

湯上と呼ばれた人はカウンターの奥で本を読んでいたのか、パタンッと本を閉じるとカチャカチャと動き出す。

私は喫茶店に流れるクラシックと湯上さんの丁寧な動きが見事に合っている気がしてじっと見つめていた。

「あの人ここのマスターなんだけどまだ32歳なんだ。無口だけど優しいんだよ。」

昇さんが優しく笑う。

「それにコーヒーと紅茶が美味しいのもここの店の魅力。」

⏰:09/11/26 00:03 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#279 [のの子]
 
「へぇ‥」

「お待たせしました。」

湯上さんはアイスティーを置くと私をチラッと見て

「彼女に似てますね‥」

「ん?あぁ、この子妹なんですよ。」

「どうりで‥ごゆっくり。」

そう言って湯上さんはカウンターの奥に入って行った。

「彼女ってまこ姉‥?」

「うん、俺らよりもとは真琴が常連だったんだよ。」

⏰:09/11/26 00:11 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#280 [のの子]
 
「‥知らなかった。」

「あいつここで一人考え事したり、勉強するのが好きでさ〜。俺らに教えるのもちょっと嫌がってた。」

ははっと笑う昇さんに私もつられてクスッと笑う。

「まぁそれよりも‥何があったか教えてごらんよ。」

黙ったままアイスティーを口にすると喉が渇いていたのか、ここのが特別なのか‥とっても美味しい事に少し心が和む。

⏰:09/11/26 09:11 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#281 [のの子]
 
「昇さん、」

「ん?」

「‥彰君、まこ姉の事知ってたんですね。」

昇さんは相変わらず優しい表情で笑っている。

「だから昇さんとも知り合いだったんですよね?」

私は昇さんの目を真っ直ぐ見れない。

「その話か‥うん、まぁそうだね。俺と真琴と、亮とかも知ってるよ。」

.

⏰:09/11/26 09:15 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#282 [のの子]
 
「‥なんでですか?いつから知り合いだったんですか?」

私は相変わらず昇さんの目を見れないのに、はっきりと質問する。

「ん〜‥それはちょっと言いにくいというか、少年から聞いてほしいんだけどなぁ。」

少年。
昇さんは彰君を時々少年って呼ぶ。

「彰君は私がまこ姉の妹だって知らなかったんです‥でも、たぶん今日‥気付いたと思います‥」

「そっか。」
.

⏰:09/11/26 09:20 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#283 [のの子]
 
「知られたくなかった?」

違う、と頭を左右にふって否定する。

「じゃ教えてあげれば良かったじゃん。真琴は自分の姉貴だって‥」

また私は左右に頭をふる。

「さとちゃ
「私っ‥私まだ恐いんです。話せるようになった時の‥周りの冷たい目や言葉がっ‥」

乗り越えたと思ってた。

全ての人じゃなくていい

私の気持ちをわかってくれる人が少しでもいてくれたらそれでいいんだって‥

でも、やっぱり人に冷たくされるのは辛くて恐い。
.

⏰:09/11/26 09:30 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#284 [のの子]
 
それが深い関係な分、恐くて仕方がない。

間違えれば、その人を失うのだから‥

「彰君を信じてない訳じゃなくって‥どうしても、失う恐さの方が勝つんですっ。」

「さとちゃん‥」

昇さんが複雑そうな目で私を見つめる。


「一人になりたくないっ‥」

そう呟くと一粒の涙が落ちていった。
.

⏰:09/11/26 09:39 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#285 [のの子]
 
ポロポロと落ちる涙を隠すように俯く。

「‥似てるなぁ。」

「えっ?」

顔を少し上げると昇さんは優しく笑っていた。

「さとちゃんと少年。そっくり。」

彰君と‥私が?

「俺から言えるのはね、さとちゃん‥あいつはさとちゃんの気持ちわかってくれると思うよ?もしかしたらさとちゃんの気持ちを1番理解できる奴かもしれない。」

昇さんはそう言いながら少し悲しげな目で私を見つめる。

⏰:09/11/26 20:25 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#286 [のの子]
 
「どうして‥ですか?」

涙を拭きながら昇さんを見つめる。

「二人の間には、同じ悲しみがあるから。」

「同じ悲しみって‥まこ姉?」

昇さんはアイスティーを一口飲むとソファーに寄り掛かる。

「‥あの当時さ、少年と真琴は付き合ってたんだよ。」

っ!

「えっ‥彰君と‥まこ姉がですが?」

「うん。詳しくはあいつから聞いてほしいんだけど‥」
.

⏰:09/11/26 20:31 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#287 [のの子]
 
「そんな二人がっ‥」

っ!

「あっでも‥彰君の元カノさんが‥交通事故で亡くなったって聞いた事が‥」

そんな‥

こんな偶然があっていいの?

彼を苦しめていた過去の鎖が私にも繋がっていた。


『お前真琴の‥‥』


彰君が真琴と優しく呼んだのは、愛していた彼女の呼び方だったんだ。
.

⏰:09/11/26 20:42 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#288 [のの子]
 
ドクン

「まるで運命だよね、二人が出会うなんて‥俺も少年とさとちゃんが知り合いだって知った時マジでゾクッときたもん。」

ドクン

「そんなっ私‥もう彰君と会えないですっ‥」

妹と知った今、もう私の後ろにまこ姉を見るだろう。

きっと今度私までも彼を苦しめる鎖になるんだ。


「‥彰とさとちゃんは本当そっくりだよ。二人だからこそわかり合える事もあると思う。」
.

⏰:09/11/26 20:48 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#289 [のの子]
 
「でもっ‥きっと苦しめ合うだけです。もう友達じゃいれません‥」

私は両手で顔を覆い隠す。

「‥お前らはいつまでそうしてんだよっ!」

ビクッ
静かな喫茶店内に昇さんの声が響く。

「死んだ真琴にいつまで気使ってんだっ!真琴が死んだのはもう過去なんだよっ。俺達は『今』を生きて進むしかないんだっ!」

昇さんが私の顔をグッと掴む。

「過去に捕われるなよ。今について考えて、未来を見ろ。」

⏰:09/11/26 21:00 📱:SH06A3 🆔:TD34CvsU


#290 [のの子]
 
「そうしなきゃ、真琴が可哀相だろう‥」



‥‥‥お姉ちゃん、

なんで死んじゃったの?

お姉ちゃんにも

未来があったでしょ?

どんな気持ちで

死んでいったの?

今の私達を見て

‥どう思ってる?


.

⏰:09/11/27 20:17 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#291 [のの子]
 

『二人揃ってバカじゃないのぉ?』


きっとムスッとしながら
笑うんだろうな。



まこ姉なら、きっと..




.

⏰:09/11/27 20:21 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#292 [のの子]
彰Side

「彰っ、こっち。」

声がした方を見ると、少し離れた所で亮さんが手を振っていた。

「亮さん、急にすみません。」

「別にいいよ。こっちこそ昇じゃなくて悪いけど‥なんか話があるんだろ?どっか行くか?」

「‥はい。」


――――

聡美が走っていくのを俺はただ見つめていた。

追いかけなかった。
.

⏰:09/11/27 20:26 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#293 [のの子]
 
追いかけても何を言えばいいか、何を聞けばいいか‥

わからなかった。

それに‥俺にはもう答えはわかってた。

その答え合わせは

無理矢理あいつにさせるよりも、もう前からわかってたはずの

『昇さん』に聞いた方が良いって思った。

.

⏰:09/11/27 20:29 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#294 [のの子]
 
あの人がすんなり話してくれるかはわからないけど‥


「とりあえず‥連絡とってみるかな。」

カチッ
携帯を開いて昇さんの番号を探す。

番号変わってないといいけど‥

ピッ ♪〜♪〜♪

携帯を持つ手が震える。

冷静を装う自分の中に取り乱している自分がいるのを感じる。

⏰:09/11/27 20:34 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#295 [のの子]
 
♪〜♪〜♪
‥出ねぇか。

「はーい。なんか用?」

耳から少し離した携帯から陽気な昇さんの声が漏れる。

「あっ昇さん!彰ですけど‥」

「知ってる。俺に電話してくるなんて何かあったんでしょー‥なに?」

昇さんからめんどくさそうなのが伝わってくる。

「あの‥実は聞きたい事があるんですけど、今日会えませんか?」

「やだ。」

‥‥イラッ
.

⏰:09/11/27 20:41 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#296 [のの子]
 
「いやっでも真剣な話なんですよ。お願いしますっ。」

「真剣な話ってなんだよ。」

「それはっ‥」

今言ったらこの人はぐらかして逃げるかも‥

そんな事が頭に浮かぶ。

「言わないなら会わない。」

ガキかよっ‥!

「‥‥聡美の事です。」


「はぁっ?さとちゃん?」
.

⏰:09/11/27 20:44 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#297 [のの子]
 
「ふーん‥わかった。じゃ時間と場所は俺が決めるから。」

「わかりました。」

「じゃまた連絡するわ。」

そういって切った電話から15分後、昇さんから来たメールは

――――――

やっぱ会えない。
代わりに亮が行く。

――――――

「はぁっ?‥んだよっ。」


そんなこんなで俺は今亮さんと会っている。

⏰:09/11/27 20:54 📱:SH06A3 🆔:gXf8stAU


#298 [のの子]
――――――

「なんか悪いな、昇指名だったのにさぁ。」

俺の横を歩きながらタバコを吸いはじめた亮さん。

まだタバコ吸ってんのか‥

「別に‥俺の知りたい事を亮さんが知ってるなら昇さんでも亮さんでも、どちらでもいいですから。」

「ふっ相変わらず生意気だな‥」

タバコを片手に笑う姿は俺から見てもかっこいい。

亮さんは昇さん率いるスノードロップのNo.2、つまり副総長だ。

正直、昇さんよりも冷静でしっかりしてる。

⏰:09/11/28 11:17 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#299 [のの子]
 
髪は真っ黒で前髪の一カ所だけ金のメッシュを入れてるのが印象的。

―――

「そろそろなんだけど‥あっここでもいい?」

昇さんが指差したのは

「ここは‥?」

「昇ん家。あいつもいつか帰ってくるし、それまで俺が聞いてやるよ。」

そう言って取り出したのは銀色の鍵。

「合い鍵貰っちゃった♪」

笑いながら昇さんの部屋のドアに鍵をさす。

⏰:09/11/28 22:04 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#300 [のの子]
 
×昇さんが指差したのは
○亮さんが指差したのは
.

⏰:09/11/28 22:23 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#301 [のの子]
 
初めて昇さん家に来た‥

カチャ

「ようこそ昇ん家へ〜。暑いしクーラーつけようぜぇ。」

ズカズカと部屋に入っていく亮さんに続けて、俺は遠慮がちに入っていく。

「何か飲む?」

「えっ?えっと‥」

「烏龍茶かコーラどっちがいい?」

「じゃ烏龍茶で。」

亮さんは手慣れた手つきで冷蔵庫やグラスを取り出す。

⏰:09/11/28 22:35 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#302 [のの子]
 
「座れば?」

烏龍茶を手に亮さんが窓の近くに座った。

「ども‥」

俺は亮さんと向かい合うように座る。

「それで?話って何?」

亮さんが俺をじっと見つめる。

ドクン

「‥亮さんは二ノ宮聡美って知ってますか?」

俺も真っ直ぐ亮さんを見つめる。

⏰:09/11/28 23:35 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#303 [のの子]
 
「‥知ってるよ。」

亮さんがテーブルに肘をつく。

「そいつ俺の友達なんです。前に昇さんとも駅前で会って‥」

「あぁ聞いた聞いた。なんかさとちゃんを昇から守ったらしいじゃん?」

クスクス笑う亮さんとは逆に俺の頭にあったのは

『さとちゃん』

昇さんも同じ呼び方だった‥

「聡美とはいつから知り合いなんですか?」
.

⏰:09/11/28 23:44 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#304 [のの子]
 
ドクン

「いつって‥二年ぐらい前かな。確かお前と同じ時期ぐらいに初めて会った。」

灰皿のない昇さんの部屋に、亮さんが吸っているタバコの煙が溶け込んでいく。

ドクン

「あのっ‥聡美って‥」

「なに?」

「いや‥あの‥‥あいつは真琴の‥妹、ですか?」

「はっ?」

ストレートにぶつけた俺の質問に驚くこの人は、どう返してくる気だろう。

⏰:09/11/29 20:14 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#305 [のの子]
 
俺はじっと亮さんを見つめながら、頭では聡美の泣き顔を思い出していた。


聡美

お前は一体

誰なんだ?


「そうだけど‥知らなかったのか?真琴は三姉妹の真ん中で、さとちゃんは末っ子だよ。」

‥‥やっぱり‥

亮さんのタバコの煙が揺れて見えた。

⏰:09/11/29 20:18 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#306 [のの子]
 
「やっぱり‥真琴の妹だったのかよ‥」

俺はうなだれるように頭をかかえる。

「妹ってのがなんか関係あんの‥?」

「‥真琴のですよ?俺のせいで死んだ真琴の妹だなんてっ‥もう会えない。」

「なんで?」

「だからっ!‥俺のせいであいつは
「お前まだそんな事思ってんのかよ。めんどくさい男だな。」

「‥‥‥‥‥っ」
.

⏰:09/11/29 20:24 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#307 [のの子]
 
下を向く目から涙が落ちる。

「なんで泣いてんの?‥真琴が死んだから?それとも聡美が真琴の妹だったからか?」

「‥そうですよっ。」

聡美‥ごめん。

真琴は俺のせいで死んだんだよ。

お前の姉貴は俺が殺したんだ‥

「いや、違う。」

「えっ‥?」

顔を上げると亮さんがタバコを持っている手で俺を指差していた。

⏰:09/11/29 20:30 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#308 [のの子]
 
「お前が泣いてんのは真琴とか妹とかじゃない。」

窓から入る光で亮さんの髪が明るく見えた。

「未来が見えなくなったからだろ?やっと真琴から解放されると思ってたのに‥」

未来‥解放‥?

「違うっ‥俺はそんな事思ってない。」

「違わない。」

「そんな事ないっ!俺は真琴をずっと
「彰、お前さとちゃんに惚れてんだろ?」

ドクン
.

⏰:09/11/29 20:36 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#309 [のの子]
 
「‥‥‥‥はっ?」

「お前が今泣いてんのは、さとちゃんを好きになる事は許されない事だって思ったからだよ。」

何を言ってんだ‥

俺が聡美に惚れてる?

「いや‥マジで意味わかんないですからっ有り得ませんよ。」

「有り得ないってなんで?」

亮さんは窓を少し開けてベランダにあるビールの空き缶にタバコを捨てた。

「もうこの世にいない奴を愛し続けるって事よりかは有り得ると思うけど?」

っ!

「お前さとちゃんに全部話してみろ。」
.

⏰:09/11/29 20:46 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#310 [のの子]
 
「全部って‥‥」

「真琴と付き合ってた事も、事故の事も全部だよ。」

ドクン

そんな

全部を知ったら‥


「嫌です‥話したくない。」

「話せ。」

「嫌です。」
.

⏰:09/11/29 21:06 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#311 [のの子]
 
「なんで?」

さっきから『なんで?』と何回も聞いてくる亮さんに少し苛立ちを感じながら、俺は小さく息を吐く。

「それは、話したらきっと‥あいつが傷つくから‥」

「さとちゃんが傷つくからねぇ。それも違うな。」

煙を吐きながらふっとバカにしたように笑う。

「またっすか‥」

「お前は彼女に嫌われたくないんだよ。自分が傷つくのが恐いんだけだ。」
.

⏰:09/11/30 11:32 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#312 [のの子]
 
‥っ

いつの間にか二本目のタバコを気持ち良さそうに吸っている亮さんを睨む。

「なんだよ?‥俺はその方が嬉しいけど。昇もお前と会った日笑って話してたよ、お前がさとちゃんを守ってたって‥生意気とも言ってたけど。」

亮さんから目を離して俺はまた俯く。

「‥昇さんは俺をいつも子供扱いしてますからね。今でも少年って呼ぶし。」

「でも、合ってると思うよ。お前は二年前から変わってない。ガキのまんまだ。」

「‥は?どこがっすか?」.

⏰:09/11/30 18:54 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#313 [のの子]
 
「昔のお前は普通の中坊のマセガキだったよ。でも今のお前は間違った自分を貫いて、周りを見ようとしない。」

間違った自分‥

「それは‥真琴を思い続ける事が間違ってるって言うんですか?」

「お前の気持ちの持ち方が間違ってるって言ってるんだよ。」

優しい口調でもはっきり言う亮さんは、やっぱり冷静に俺を見つめているんだろう。

俺の迷いがある言葉よりも、亮さんの言葉は一つ一つが胸につきささる。

⏰:09/11/30 22:41 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#314 [のの子]
 
「ムキになって他人の言葉も聞かずに見つめない‥そういうとこがガキなんだよ。」

「ムキになんてっ‥」

「彰、お前が真琴の事をすげぇ好きだったのはわかってる。でもな、今のお前の気持ちはまるで―――」


亮さんの言葉がまた一つ、俺の胸に刺さった。


俺は真琴がただ好きで、愛してた。


俺を好きだと言ってくれた真琴がいなくなっても

俺は真琴を想い続けるって決めたんだ。

真琴だけを‥


なのに、その気持ちは


「――まるで呪いだ。」

.

⏰:09/11/30 22:50 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#315 [のの子]
 
ドクン
呪い‥‥

この気持ちが‥?

ドクン
「お前は真琴を思い続ける事で自分に呪いをかけてるようなもんだろ。それが償いだって‥」

ドクン

「‥でももうやめてやれよ。そんなんじゃ真琴が可哀相だ‥」

なんで‥

だって真琴を想い続けないと

想い続けないと

‥‥‥‥‥どうなる?

もう真琴はいない。
.

⏰:09/11/30 23:01 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#316 [のの子]
ガチャ
「えっうわっ臭っ!!なんでこんなっ‥ってはぁ?!なんで君達いんのっ?」

っ!

「昇お帰り〜。」

「あっ俺の部屋でタバコ吸わないでってあんな頼んだのになんで吸ってんのー。最悪だしー!」

「ごめん、ごめん。」

昇さんが帰ってきた事で重い空気が一瞬で消える。

でも俺の胸に生まれた靄は今だ晴れない。

「おいっ少年、お前も何勝手に上がってんのー!」

「ぇっ‥あぁすみません。」

⏰:09/11/30 23:11 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#317 [のの子]
 
「二人とも泥棒って言われてもおかしくないんだからねー。」

昇さんはプンプン怒りながらクーラーを止めると窓をガラッと開けた。

「ったく、節電にご協力くださーい。」

「はーい。」

亮さんがタバコを持った手を挙げると昇さんがタバコを奪い取る。

「禁煙にもご協力ください。」

「はいはい‥」
.

⏰:09/11/30 23:15 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#318 [のの子]
 
ってか亮さん合い鍵勝手に作ってたのか‥?

「はぁっ‥で、亮に話聞いてもらったのか?」

昇さんが亮さんの隣に座る。

「まだお説教中だよな。」

ははっと笑う亮さんに俺は苦笑いを浮かべる。

「お説教中ねぇ‥話ってさとちゃんの事だったよな?」

「はい‥」
.

⏰:09/11/30 23:21 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#319 [のの子]
 
「‥さっきまでさとちゃんに会ってたんだよね。」

「えっ?!」

昇さんの予想外な言葉に驚く俺と違って亮さんはシスコン、とクスクス笑っている。

「はっきり言う‥俺はお前よりさとちゃんをとった。ごめんね。」

昇さんもヘラッと笑う。

「いやっなんで聡美と‥」

「お前と同じだよ。真琴の事‥さとちゃんから話聞いたからだいたいの事はわかってる。」

⏰:09/11/30 23:29 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#320 [のの子]
 
「彰、お前はさとちゃんとゆっくり話してみろ。」

「えっ‥‥」

さっき亮さんにも言われた言葉を昇さんも口にした。

「俺もそう言ったんだけど嫌だとさ。」

亮さんがそう口にすると昇さんが俺を見つめて笑い出した。

「ぷっはははっ‥やっぱ似てんだよ、お前ら。」

「?似てるって何が‥」

「お前とさとちゃんだよ。」

⏰:09/11/30 23:37 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#321 [のの子]
 
「さとちゃんもお前と会うの嫌だって言ってたわ。」

笑いながら昇さんが言う。

会いたくないって‥

「だったら‥やっぱ会えないでしょ。」

「でもさとちゃんは最後笑ってたぞ〜?お前と会ってみるとも言ってた。」

「えっあいつが?」

ドクン
.

⏰:09/12/01 18:52 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#322 [のの子]
 
さっきまで俺の苦しめていた心臓がまた鳴り響く。

「なんで‥あんな泣いて‥嫌がってたのに‥」

「そこは直接さとちゃんに聞け。それで?‥お前はどうする?」

ドクン

「俺は‥‥でも‥」

「会ってちゃんと話したいかどうか。それだけ考えてみ?」

亮さんがテーブルに肘をついて俺を見つめる。

⏰:09/12/01 18:57 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#323 [のの子]
 
‥全部を話せばきっとあいつは傷ついて、俺の前からいなくなる。

話せば‥俺もあいつの前からいなくなる。

結局ハッピーエンドなんて有り得ない。


でも、あいつは

俺なんかと会ってみたいって言ってて‥


俺は
.

⏰:09/12/01 20:18 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#324 [のの子]
聡美Side

「桃ちゃん家泊まり行くのいつだったっけ?」

「明後日だよ〜。」

「ふーん‥それにしては準備が早いし、荷物も多いんじゃない?」

ギクッ

桜姉が買ったばかりの洋服を手に笑う。

「ただのお泊りじゃなさそうねぇ。」

「たっただのお泊りだよ。」

バッと洋服を取り替えす。

⏰:09/12/01 23:50 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#325 [のの子]
 
「うそっ!あんた本当は彼氏ん家泊まりに行く気じゃないの?それとも一泊旅行とか?白状しなさいっ!」

桜姉が仁王立ちで私を睨む。

「違うもんっ‥」

私は小旅行用のバッグを胸に小さくなる。

「最近様子もおかしいし、帰り遅くなったり‥それに昨日彼氏か知らないけどコソコソ隠れて電話してたの知ってんだからねっ?」

う"っ‥

桜姉は昔からしっかりして真面目だった。長女って事もあって責任感も強いみたい‥

「私はただ心配なの‥わかるでしょ?」
.

⏰:09/12/01 23:59 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#326 [のの子]
 
桜姉とは違ってまこ姉は好きなように生きる性格だった。

そんなまこ姉が死んでからは、桜姉は時々異常に私の事を心配するときがある。

たぶんまこ姉を守れなかった分、私を守ろうとしてるんだと思う‥



「‥‥学校の友達とバーベキューに行くの。もちろん桃も一緒に‥」

私はこのまま嘘をつけないと思って正直に話した。
.

⏰:09/12/02 00:06 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#327 [のの子]
 
「やっぱり〜‥桃ちゃん以外は誰?」

「だから友達だよ。名前まで言わないといけない?」

私がムスッとすると桜姉はため息をついて

「一回嘘ついてるんだから仕方がないでしょ。言いなさい。彼氏も一緒なの?」

‥これじゃお母さんじゃない。いや、刑事?

それに彼氏彼氏って‥

「名前まで言いたくない。それに私彼氏なんていないもんっ!」

「はぁっ?」
.

⏰:09/12/02 14:41 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#328 [のの子]
 
「いないって‥もしかして別れたのっ?」

桜姉が驚いた顔で私の横に座る。

「‥そっそうだよっ?私フラれたのっ。」

「えぇっ?!フラれたって‥じゃ最近様子おかしかったのは別れたから?」

「そうかもねっ‥それに昨日の電話は友達っ。もういいでしょ?明後日の用意しなきゃなんだからぁ。」

フンッとそっぽを向くと桜姉は気まずそうに立ち上がって

「他にもイイ男いるし、気にしない方がいいよ‥?」.

⏰:09/12/02 22:11 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#329 [のの子]
 
ボソッと呟くと私の部屋から出て行った。

「‥‥はぁ〜っバレちゃったか。‥まぁいいや。」

竜二君と別れた事は、あれから色々あったしわざわざ言わなかった。

それに彼氏っていっても家族は竜二君とは会った事ないしね。


明後日のバーベキューの用意って言っても一泊だし、特に荷物もなく、あっという間に終わった。

「さて、これからどうしようかな‥」
.

⏰:09/12/02 22:18 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#330 [のの子]
 
時計を見るとまだ4時を過ぎたばかりだった。

ふっと昨日の事を思い出す。

―――――

♪〜♪〜♪〜

「聡美〜携帯鳴ってるよぉ!電話じゃないの?」

「んーっ今行く〜!」

タッタッタッタッ

階段を小走りで下りると私の着信音が聞こえてきた。

「はいはいっ誰ですか〜‥」

そんな事を言いながら手に取った携帯は相変わらず鳴りつづける。

パカッ

携帯を開くと相手の名前が写る。

⏰:09/12/02 22:32 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#331 [のの子]
 
    『彰君』

ドキッ

私の心臓は彼を待ってたかのように、反応良く鳴った。

彰君から逃げるように去った昨日から、彰君とまこ姉の事ばかり考えてた。

二人はいつ、どんな出会いをして付き合ったのか‥

まこ姉は彼のどこを好きになって、彼はまこ姉のどこを好きになったのか

そして彼はまこ姉を失ってからどんな気持ちで生きてきたのか

そんな事ばっかり‥
.

⏰:09/12/03 21:55 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#332 [のの子]
 
でもそんな気持ちが会って話したいって気持ちに繋がってた。


♪〜♪〜

「ふぅ‥よしっ。」
ピッ

一息吐くと私は携帯を耳にあてる。

「もしもしっ。」

「オッス、俺だけど‥」

「うんっ‥どうしたの?」

どうしたの?って聞いたけど、だいたいわかってる。

たぶん昨日の事‥
.

⏰:09/12/03 22:03 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#333 [のの子]
 
「あぁ〜‥あのさぁ俺昨日昇さんと会ったんだよね。」

「えっ昇さんとっ?!」

つい大きな声をだしてしまって慌てて口をふさぐ。

ちょっ昨日って私も会ったんだけど〜‥!

桜姉が私の口から男の人の名前が出たからか、チラチラとこっちを気にしてるのがわかってサッと部屋に向かう。

⏰:09/12/03 22:16 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#334 [のの子]
 
パタン

「どうかした?」

「あっううんっ、なんでもない。ごめんね。えっと昇さんに会って何か聞いたの?」

急いで部屋に入るとベッドに座る。

「‥‥会いたい。」

ドキッ

「えっ?」

「会って話したいんだ‥お前と。」

.

⏰:09/12/03 22:22 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#335 [のの子]
 
昇さんから私について何か聞いたのかも知れない。

でも、私達が会って話したい事は決して宿題の事や夏休みの事なんかじゃなくて

まこ姉の事なんだろう。


「‥うん。私もそう思ってたんだ。彰にね、話したい事も聞きたい事もあるから。」

「俺も話さなきゃいけない事がある。」

断る理由なんてない。

結局私達はバーベキューの前日、つまり明日会う事になった。
.

⏰:09/12/03 22:27 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#336 [のの子]
 
バーベキュー中気まずいのは嫌だから前日に会おうっていう彰君からの提案。

そう言ったものの

「‥でも、全部話してお前に嫌われたらバーベキュー行かないから。ってか会わない。」

そんな弱気な彼を私は笑った。

「嫌いにならないと思うよ?せっかくできた夏休みの暇つぶしの相手がいなくなっちゃ困るもん。」

「ふっ‥ムカつく奴。」

――――――
.

⏰:09/12/03 22:36 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#337 [のの子]
 
カチッカチッ

時計の針がまた一つ進む。

彰君と会うのは明日‥

彼の口から何を聞けるんだろう?

逆に私の過去は受け入れてもらえるのかな?

「気持ち悪がられたりして‥ははっ‥」

力無く笑う。

でも、彰君も今同じ気持ちのはず。

私達は話さなきゃいけない。

過去の自分のためにも

未来の自分のためにも‥

⏰:09/12/05 15:48 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#338 [のの子]
竜二Side

「なぁ、それどうすんの?」

「‥‥別に‥‥‥」

はぁっ、さっきからずっとこれだもんな。

彰が急に俺の家に来てからもうすぐ30分たつ。

急に昔の写真を見たいとか言って卒アルやら色々出してずっとそれを見ている。

何も話さず、何かを探してる訳でもなく‥ただ見ているだけ。

「‥なんかあったの?」

「‥‥お前はさ‥‥」
.

⏰:09/12/05 15:58 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#339 [のの子]
 
「この時の事‥覚えてるか?」

彰は中学の卒アルの1ページを指差して話し出す。

「ん、どれ?」

彰が指を差していたページには、中二の頃の俺達とクラスメイトの数人がいた。

「あぁこれ。林間だろ?」

「うん‥まぁ。お前この時の事覚えてるか?」

この時?
.

⏰:09/12/05 20:54 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#340 [のの子]
 
「いや‥なんでだったかな?確か他のクラスの奴と喧嘩したんじゃなかったっけ?」

「そう‥お前が最初に手出してさ、俺まで巻き添いにされたんだよ。」

彰は懐かしそうに卒アルを見つめて笑う。

俺もつられて笑う。

「‥でもさ、全部をはっきり覚えてるわけじゃない。こうやって過去は曖昧になってくんだよな‥」

彰は静かに卒アルを閉じると俺を見つめる。

「真琴もそうなってく。だろ?」
.

⏰:09/12/05 23:24 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#341 [のの子]
 
ドクンッ

彰の口から彼女の名前を聞くのは久しぶりで‥彰の中で何か変わったのが伝わってきた。

「‥お前本当に聡美の事はもういいの?」

ドクンッ

聡美の名前もまた俺の心臓をうるさくする言葉だ。

「俺がフッたのにどうして?」

じんわりと手に汗を感じて俺は無意識に自分の服を掴む。

「別に‥ただお前と聡美が付き合ってたのももう過去だなぁって思って。」
.

⏰:09/12/05 23:34 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#342 [のの子]
 
過去か‥

確かに俺と聡美は付き合ってたのは、もう過去だ。

「そう言われると‥なんだか寂しいね。」

俺がふっと笑うと、彰は卒アル以外に散らばった写真の中から一枚を手にとる。

「たぶん‥『今の俺』は、ちゃんと『今』と『未来』を見つめてる。」

彰は弱々しく笑うと


「真琴もやっぱ寂しいって思うかな?」


.

⏰:09/12/06 20:17 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#343 [のの子]
 
彰が見つめる一枚の写真は、俺と彰と‥彼女が笑っている写真だった。



「まぁ明日にははっきりするはずだし‥そろそろ帰るかな。」

彰が写真をテーブルに飛ばす。

「‥明日なんかあんの?」

「お前の元カノとデートすんの。あいつに慰めてもらうわ。」

いつものムカつく顔に戻った彰を俺は睨む。

「へぇ‥この前といい、いつの間にそんな仲良くなったんだかね。」
.

⏰:09/12/06 20:25 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#344 [のの子]
 
「そんな拗ねんなよ。ってかお前の思惑通りの展開だろ?」

っ!

「‥‥は?」

俺は更に彰を睨む。

「お前本当は聡美の事好きなのに別れたんだろ?」

「意味わかんねぇ。」

彰は余裕な表情で俺を見つめる。

「別れたのは俺と聡美を近づけさせるためとか?」

「なんでそんな事
「お前全部知ってたろ?」
.

⏰:09/12/06 20:34 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#345 [のの子]
ドクンッ

こいつ‥まさか

「全部知ってて聡美に近づいたのか?」

ドクンッ

「聡美が真琴の妹だって‥お前いつから気づいてたんだよ。」

っ!!

彰は怒る訳でも悲しむ訳でもなく、ただ俺を見つめる。


「‥彰は勘が鋭いなぁ。それに俺が思ってたより早い展開だよ。」

俺は睨むのを止めてテーブルに頬杖をつく。
.

⏰:09/12/06 20:42 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#346 [のの子]
  
「やっぱお前の思惑通りか‥」

彰がため息をしながら笑う。

「‥妹だって言うのは結構前から知ってた。でも聡美ちゃんと別れた事には関係ないよ。」

俺はさっきテーブルに飛ばされた写真を手にとる。

「もうちょっと時間かかると思ったんだけどなぁ。バレちゃったか‥聡美ちゃんも知ってんの?」

「さぁ‥もう知ってるかもだし、まだ知らねぇかも。」

彰の曖昧な返事に俺は笑うしかできなかった。
.

⏰:09/12/08 09:11 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#347 [のの子]
 
「妹って事言わなかったの怒ってる?」

「別に‥お前なりに言わなかった理由もあるんだろうし。」

「そう。それは有り難いね。」

彰は立ち上がると大きく伸びをする。

「はぁっ‥別にどうこうってないけどさ、お前には感謝するよ。」

「感謝って?」

俺は写真に写った幼さが残る中三の頃の自分を見つめる。
.

⏰:09/12/08 09:24 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#348 [のの子]
 
「明日どうなるかわかんねぇけど、とりあえず俺は『今』をちゃんと生きてる。」

「うん。」

「それは‥たぶん聡美のおかげだから。」

「そう‥で?」

「まぁお前と聡美が別れる事で、俺に微かにチャンスをができた。」

チャンス‥

過去の鎖から解放されるチャンス。

鍵は‥聡美か。
.

⏰:09/12/08 09:35 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#349 [のの子]
 
「俺は別に真琴の事から解放されたいって思ってるわけじゃない。ただ‥確かめたいって思った。」

俺はこうなるのを望んでた。

「俺の為だけじゃなくて‥周りの奴らとか、真琴の為にも確かめたいんだよね。自分の気持ち‥」

彰をここまで変えてくれたのは聡美で、

「だから、俺は明日聡美に全部話す。」

    彰のため、
   聡美のため、
   ‥真琴のため、

 いや 自分のために
.

⏰:09/12/08 20:16 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#350 [のの子]
 
どこかでそう思って今までやってきた。


「うん‥お前達なら大丈夫だよ。」


二人なら大丈夫。

二人なら‥



俺は一人で大丈夫だから。

.

⏰:09/12/08 20:19 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#351 [のの子]
 
「きっと‥彰と聡美ちゃんが出会ったのは運命だよ。だから二人は大丈夫。」

俺が笑うと彰は複雑そうに

「お前はどうすんの?まだ好きなんだろ?」


‥うん、好き。


「いや‥女の子ってやっぱめんどくさいし俺は当分彼女はいいや。」

聡美じゃないならいらない。

.

⏰:09/12/08 20:24 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#352 [のの子]
 
「お前の思惑がどんなんだったかとか一々聞かねぇけど‥まぁお前のやりたいようにやれよ。ただ‥」


彰を見上げると、彰は真面目な顔をしていた。

「俺みたくはなんなよ?」


「‥なるわけないじゃん。」

⏰:09/12/08 20:36 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#353 [のの子]
 

彰、真琴はお前のせいで死んだんじゃないよ。

全部俺がいけなかったんだ‥

あの時の俺は

ただの生意気なガキで

真琴が俺に伝えたい言葉を

わかってなかったんだ。

.

⏰:09/12/09 20:36 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#354 [のの子]
 
全部俺のせいなんだ‥

それなのに

お前が傷ついて

苦しんでるのを見て

俺は何もできなかった。


でも、そんな俺を

聡美が救ってくれて‥


今‥俺達三人は出会った。
.

⏰:09/12/09 20:40 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#355 [のの子]
 
この運命の出会いは

お前のためにある。

本当はお前が救われるべきなんだよ。


だからそのためなら

俺はなんでもするよ‥


俺が過去を背負う。

お前は今を
未来を

彼女と生きて。
.

⏰:09/12/09 20:45 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#356 [のの子]
 
あと彰は俺の思惑通りって言ってたけど

本当は思惑通りになんていってない。

聡美と別れた時点で、俺は彼女との関係を本当に終わらせるつもりだった。

会うのも
話すのも
見つめるのも‥


でも聡美、

俺はまだこんなにも君が

愛しくて

愛しくて


愛してる‥
.

⏰:09/12/09 20:54 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#357 [のの子]
 
聡美はきっと覚えてないだろうけど、

俺達が本当に初めて出会った時‥

あの時からずっと

君を忘れられなくて

ずっと想ってた‥


過去を背負うのは苦しくない。

俺の過去には俺の横で笑う君がいる。

今も‥笑顔の君を近くで見つめられるなら

過去なんて
.

⏰:09/12/09 20:57 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#358 [のの子]
――――――

「んっ‥竜ちゃん‥」

「‥なんです?」

シーツから伸びてきた腕が俺の身体に絡み付く。

「また何か考え事してたでしょ?」

「別にあなたに関係ないでしょ。」

二人の肌が触れる。

「そんな事言って‥呼び出したのは竜ちゃんのくせにひどい。」

そう言いながら女は面白そうにクスクス笑う。

「ひどいか‥まぁあなたに優しくするつもりなんてないですし。」

俺も力無く笑う。

⏰:09/12/10 17:05 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#359 [のの子]
 
「やだ、まだ昔の事怒ってるの?」

女は悲しそうな瞳をして俺の上に乗る。

「そりゃ忘れられないでしょ、あんな事‥」

「でもね、竜ちゃんも悪いんだよ?私を拒まなかったから‥」

妖しく笑うとそのまま彼女は唇を重ねてきた。




俺はズルイ。



聡美、今君は何をしているんだろう‥

.

⏰:09/12/10 17:21 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#360 [のの子]
聡美Side

次の日――――

「はぁっ緊張してきたぁ。」

リビングで私はじっとしてられずにウロチョロと動き回る。

お母さんはそんな私を無視して洗濯物を干している。

今日も暑い。

夏らしい山のような入道雲が空に浮かぶ。

「暑そう〜‥日焼け止め塗ろうかなっ。」
.

⏰:09/12/10 19:28 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#361 [のの子]
 
「日焼け止め日焼け止め〜‥」

日焼け止めを探してまたウロチョロと動き回る私。

「日焼け止めなら桜が持ってっちゃったよ。」

お母さんが空になった洗濯カゴを手に私の横を通り過ぎる。

「えぇっ!お姉ちゃんどこ行ってるの?」

「友達と遊んでくるって。」

だからいないんだ。

⏰:09/12/10 22:41 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#362 [のの子]
 
「そっかぁ‥じゃ日傘借りちゃおっかな。」

前桜姉が使っていた黒いフリルのついた日傘を思い出す。

新しいの買ったからあげるってこの前いわれたんだっけ。

「ってかあんたいつ出掛けんのよ?」

「えっ‥と、13時ぐらいかな。」

時計の針は11時になるところだ。

「まだまだじゃない。部屋でも掃除すれば?」

確かに‥

ちょっと落ち着こうととりあえず部屋に向かう。

⏰:09/12/10 22:59 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#363 [のの子]
 
「あっつい‥」

クーラーをつけると早速ベッドに飛び込む。

だって部屋を片付けだしたら止まらないもんね。


‥彰君も今、緊張してんのかな?


‥‥‥

私は起き上がると静かな部屋を見渡す。

「まこ姉‥」
.

⏰:09/12/11 00:29 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#364 [のの子]
 
「彰君とね、今日これから会うの。」

部屋には私の声と微かなクーラーの機械音しか聞こえない。

「すごい緊張してるんだ‥緊張して恐くて手が震えちゃいそう。」

苦笑いしながら私は立ち上がると、棚にある写真立てを手にとる。

「でも‥逃げないよ?」

写真には仲良く三姉妹が笑っていた。

真ん中でまこ姉が笑っている。

⏰:09/12/11 00:37 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#365 [のの子]
 

―――― 13:07


「行ってきまぁす。」

私は黒いフリルのついた日傘をさして家を出た。

真夏の暑い日差しから守られた私は、ほんの少し涼しさを感じながら歩く。


一歩一歩、

この道の先にいる彼との距離が縮んでいくと

私の心臓も一つ一つ、

大きく締め付ける。

私の耳には蝉の音よりも
心臓の音がうるさく響く。
.

⏰:09/12/11 20:19 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#366 [のの子]
 
彼との待ち合わせは小さな公園。

学校へ行く時、竜二君と待ち合わせ場所にしていた公園だ。


ドクン ドクン ドクン

大丈夫‥大丈夫‥

心の中で何度も唱える。


「お姉ちゃん待ってよぉ〜!」

っ!

「ほらっ早く来ないと置いてっちゃうぞ!」

小さな姉妹が私の横を元気よく走り去る姿を見て思わず振り返る。

姉の手を握って一生懸命走ってく後ろ姿は、小さい頃の私とそっくりだ。

「まこ姉‥‥」
.

⏰:09/12/11 20:27 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#367 [のの子]
 
――――――

『まこ姉、私足遅いから運動会出たくない‥』

小学低学年の頃、運動会の50b走に出たくないとまこ姉に相談した事があった。

『えぇっ別に足遅くたっていいじゃん。』

『やだよっ‥ビリ恥ずかしいもん。』

『恥ずかしいって‥なんで?』

まこ姉が私と目線を合わせるようにしゃがみ込む。

『‥だってバカにされるもんっ。』

『誰もバカにしないよ〜。そんな奴いたら私がぶっ飛ばしてやるから。』

まこ姉が笑って私の頭を撫でる。
.

⏰:09/12/11 20:35 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#368 [のの子]
 
『でも‥やっぱ嫌だ‥』

『しょうがないなぁ。』

まこ姉は困った顔をしながら笑う。


運動会当日。

結局50b走に出なきゃいけなかった私は周りで笑う友達とは違って俯いていた。

どうせビリなのに‥

そう思いながらあっという間に私の番が来た。

『ヨーイッ‥』

パァン!!
.

⏰:09/12/11 20:53 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#369 [のの子]
 
案の定私は他の子の背中を追いかける。

やっぱり‥

走りながら目線が段々下に落ちていく。

『聡美っ!!』
グイッ

『うわぁっ!‥まこ姉!?』

まこ姉が笑いながら私の手を握って走り出す。

運動神経の良いまこ姉にグイグイ引っ張られ、私はいつの間にかまこ姉の背中だけを追いかけていた。

⏰:09/12/11 20:58 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#370 [のの子]
 
『あはははっあっという間に一位〜♪ほらっ行ってこい!』

まこ姉が私の手を離すと、私はそのまま走りつづける。

『ハァッハァッ‥』

パァンッ!

私は一番最初にテープを切った。


‥もちろんこれは無し。
結局私は時間もないからって事でビリにされた。

後々まこ姉は先生やお母さんから怒られるし、

私も皆にズルイって言われたけど、羨ましいって言ってくれる子もたくさんいた。

⏰:09/12/11 21:08 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#371 [のの子]
 
『お姉ちゃんかっこよかったよぉ!』

『すっごい早かったもん!あんなお姉ちゃんいて羨ましいなぁ。』


まこ姉にその事を話すと

『でもせっかく一位になったのにビリになっちゃったのは私のせいじゃん。ごめんね?』

まこ姉はそう言って私の頭を撫でてくれた。

確かにズルをしたけど、私が一位になれたのはあれが最初で最後。
.

⏰:09/12/11 21:14 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#372 [のの子]
 
何年後か、まこ姉とその話をした時まこ姉は優しく笑って

『私はたまたま聡美より運動神経が良かっただけだよ。聡美は聡美のやり方で誰かを引っ張ってあげな?』

そして大きくなっても私の頭を優しく撫でてくれた‥

―――――――


「私のやり方か‥‥」

私はまた前を向いて歩きだす。

.

⏰:09/12/12 20:17 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#373 [のの子]
彰Side

サァーーーッ

生暖かい風が公園の木の葉を揺らす。

伸びっぱなしの髪の毛も頬をくすぐるように揺れた。

そろそろ髪の毛切るかな‥

ベンチに座りながら前髪をいじる。

公園には俺以外に親子や小学生ぐらいの子達が遊んでいた。

こんな暑いのに公園には笑い声がたえない。

子供ってすげぇ‥

高校生の俺は太陽から隠れるように日影のベンチを陣取っていた。

⏰:09/12/12 20:27 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#374 [のの子]
 
それにしても

「場違いだろ。」

こんな笑い声がたえない公園で、俺達はこれから話すのかと思うと余計気分がのらない。

ただでさえここに来るまでに何回も立ち止まったのに‥

「はぁ‥あっちー。」

俺は頭を抱え込むように地面を見つめる。

日影にいてもやっぱり暑い。



「大丈夫?」
.

⏰:09/12/12 20:33 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#375 [のの子]
 
っ!
ドクン   ドクン

声に反応して顔をあげると

ドクン   ドクン

黒い日傘をさした聡美が笑って立っていた。

「ずーっと下向いてたから気づかなかったでしょ?」

「ん、ちょっと驚いた。ってか日傘とかさすんだ。」

「日焼け止めなくって。」

笑いながら聡美が俺の横に座る。
.

⏰:09/12/12 20:41 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#376 [のの子]
 
「今日も暑いね。」

「夏だしな。」

俺達の前を子供達が走っていく。

見つめるのは平和で温かい光景なのに、俺達のいるこの空間だけ違う空気が流れてるようだ‥

「‥彰君、」

「ん?」

「彰君に話したい事も聞きたい事もあるって前言ったでしょ?」

「あぁ‥」

「だからその前にちゃんと言わなきゃなって思って‥」
.

⏰:09/12/13 00:40 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#377 [のの子]
 
「もう知ってるかもだけど、私の口から言わせて?

私は、二ノ宮真琴の妹。‥妹なんです。」

聡美が優しく笑う。

‥‥‥そっか

「うん‥昇さんから聞いた。」

俺も笑う。


「俺も言わなきゃいけない事がある。」

⏰:09/12/13 00:46 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#378 [のの子]
 

ドクン


「俺は‥‥っ‥」


ドクン  ドクン


言葉につまった俺を聡美は優しく微笑んだまま見つめる。





「俺は‥俺は真琴と付き合ってた。真琴が事故った時も‥一緒にいたんだ。」
.

⏰:09/12/13 00:51 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#379 [のの子]
 
重い‥

この言葉がずっと重かった。

「私も昇さんから聞いてる。」


「初めまして‥」


聡美がゆっくり頭を下げる。

っ‥

「初めまして‥」

こんな形で出会わなかったら、もっと心から笑って挨拶できただろう‥

真琴の『妹』に

真琴の『彼氏』として‥
.

⏰:09/12/13 20:18 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#380 [のの子]
 
「なぁんちゃって♪」

パッと顔を上げた聡美はいつもと変わらない笑顔だった。

「彰君、ごめんね?やっぱり私は彰君を彰君としてしか見れない。まこ姉の彼氏だったって聞いてもやっぱりピンとこないの‥」

聡美が日傘をクルクル回す。

「だって私が出会ったのは彰君なんだもん。」


出会ったのは

真琴の彼氏の俺じゃなくて

『俺』って事か‥

⏰:09/12/13 20:24 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#381 [のの子]
 
「そうだな‥俺もやっぱお前は真琴の妹とかじゃなくて、聡美だよ。」

そう言うと聡美はありがとう、っと呟いた。


「‥まこ姉と付き合ってたのっていつからなの?」

聡美が前を見つめながら遠慮がちに聞いてきた。

「中三から。‥正直短い付き合いだったよ。でも、真琴といるのはいつも楽しかった。」

愛して愛されてた

そう思う。

⏰:09/12/13 20:32 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#382 [のの子]
 

幸せだった。


初めて本当に人を
好きになったから‥


真琴は教えてくれたんだ。
俺に大切な事を

ドクン

「お前には‥全部を話そうって‥思ってる。」

ドクン

「‥俺達が出会ったのは―――――――」
.

⏰:09/12/13 20:35 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#383 [のの子]
 
二年前の春――――


バァンッ

「ってぇな!!何すんだよっ?!」

「あんた邪魔‥ウザい。」

ドスッ

この頃の竜二は俺から見ても荒れてた。

中学生のくせに髪染めるし、すぐ喧嘩するし、俺巻き込むし‥

もう目つきが今と違ってた。

俺に触んな.近づくな

そんな目つきにどす黒いオーラがあった。マジで‥
.

⏰:09/12/13 20:43 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#384 [のの子]
 
ドスッ 

「いっ‥ゴホッやめっ‥」

ほら、こうやって気にくわない奴捕まえてボコボコにしちゃう問題児。

「はぁ‥‥」

「何?混ざりたいの?」

俺の小さなため息が聞こえたのか不運な相手の腹に足を乗せたまま竜二が振り返る。

そんな目つきで俺を見つめんなっつーの。

「‥つまんねぇー。もう帰ろう?」

「‥‥うん。」
.

⏰:09/12/13 20:54 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#385 [のの子]
 
こういうとこはまだ素直なんだよな。

スッと足をどけると竜二は地面にうずくまって転がる相手に小さくごめんね?と呟いてニコッと笑う。

殴ってごめんね‥
いやいや違うからっ。

『最後までやってあげられなくてごめんね』だから。

こわっ‥


「彰っ待ってよ。」

「早く来いよぉ。」
.

⏰:09/12/13 21:04 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#386 [のの子]
 
そう言ってもやっぱ俺達は中学生で学校も行って、勉強もやってた。

まぁそこは今と変わらない。クラスにも友達だっていたし?

違うと言えば俺なんかよりも竜二が喧嘩してたって事ぐらい。

でも竜二は学校が好きでよくまだ帰りたくないなぁって言ってた。


「彰、俺家庭教師つけられた‥」

「はっ!?」

久しぶりに真っ直ぐ帰っている帰り道、竜二がムスッとしながら話し出す。

⏰:09/12/13 21:13 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#387 [のの子]
 
「家庭教師だよ。受験あるから勉強しろって‥最悪。」

「ぷっはははっ!マジかっ!面白そうでいいじゃん。」

竜二が俺を睨む。

「どこがだしっ!ただ俺に早く帰る理由を作りたかったんだよ‥早く帰ったっていないくせに。」

「はいはい。別に隼人さんとかいんだろ?」

「まぁ‥兄貴だけならいいんだけどね。」

「あぁ彼女連れて来るんだっけ?」
.

⏰:09/12/13 21:47 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#388 [のの子]
 
「うん‥」

「別にいいじゃん。ってか家庭教師っていつから?」

「今日。」

「今日っ?!今からって事か?」

「そうだよ。だから真っ直ぐ帰ってんだろ?」

竜二は大きなため息をつく。

「今日は兄貴もいるから帰らないと‥」
.

⏰:09/12/13 23:15 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#389 [のの子]
 
竜二の兄貴、隼人さんは優しいし面白いし頭も良い。

自慢の兄貴の隼人さんの事になると竜二も丸くなって大人しくなる。

「ふーん。じゃ俺も家庭教師っての見に行くかな。」

「はっ?勘弁してよ。」

「家庭教師って男?女?いくつ?」

俺がニヤニヤすると竜二も笑い出す。

「残念っ。高校二年の健全な男だよ。」

げっ‥なんだ〜。
.

⏰:09/12/13 23:24 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#390 [のの子]
 
「そいつお前にやられないといいな。」

「‥‥気が会えばいいんだけどねぇ。」

竜二が欠伸をする。

「今日来んの?」

「んー‥行くっ。おばさんのケーキをいただきに。」

軽くおばさんのケーキを食べたら帰ろう。

そんな気分で俺達は竜二ん家に向かった。
.

⏰:09/12/14 12:54 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#391 [のの子]
―――― 
「あっお帰りなさい。ちゃんと帰ってきて偉いじゃなーい♪」

「ちょっいいから。」

おばさんが竜二の頭をクシャクシャに撫でる。

「でも彰君までどうしたの?」

「おばさんのケーキ食べたくて来ちゃいました。」

ニコッと笑う。

「あぁ、それなら冷蔵庫にあるから食べて?私これからまた出掛けなきゃで‥お兄ちゃんもう少ししたら帰ってくるから。」

おばさんは慌ただしくあっちこっちを行き交う。

「初めて家庭教師来る日にいないのっ?」

竜二が眉間にシワを寄せる。

⏰:09/12/14 20:44 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#392 [のの子]
 
「何言ってんの!全く子供なんだから〜‥家庭教師の方ならもういらしてますっ!」

「「えぇっ?!」」

俺達は驚いて2階を見上げる。

「お茶とケーキ出しといたから。じゃお母さんはもう出かけるからねっ?失礼な事しちゃダメだからね?!」

バタンッ
ガチャ

シ〜〜〜ン

「おばさん行っちゃったぞ‥」

「わかってる‥」
.

⏰:09/12/14 20:48 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#393 [のの子]
 
何の音も聞こえない2階を俺達は見上げる。

「はぁ〜っ‥行く?」

竜二が俺の横で頭をかく。

「ん‥その前に俺ケーキ食いたい。」

竜二の舌打ちを無視して俺は冷蔵庫に向かう。

「おっ今日はガトーショコラ。いただきます。」

「上で食えよ。一応待たせてんだし‥」

竜二がガトーショコラの乗った皿とフォークを取り上げる。

別に俺の家庭教師じゃねぇのに。
.

⏰:09/12/14 20:52 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#394 [のの子]
 
「はいはい、わかりましたっ!」

俺は竜二からガトーショコラを取り戻すと竜二の後について階段を上る。

‥‥パクッ

うん、やっぱおばさんのケーキは美味い。

後ろで勝手にケーキを食いだした俺に竜二は気づかない。

モグモグ

「チッ‥自分の部屋なのになんでこんな気分で入らなきゃいけないんだよ。」

竜二がドアノブを握る。
.

⏰:09/12/14 20:57 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#395 [のの子]
 
ガチャ

ゆっくりドアを開ける。

竜二は家庭教師に会う前からイライラしてるし、

俺は呑気にケーキを食っていた。


この時、俺達は初めて彼女と出会った。



「こんにちは。初めまして。二ノ宮真琴です。」

.

⏰:09/12/14 21:00 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#396 [のの子]
 
はっ‥‥?


「‥あれ?竜二君てどっち?」


竜二の部屋にいたのは健全な【男】ではなく、【女】だった。


「えっ‥家庭教師?」

竜二も驚いてるのか女を指差す。

「そうだけど‥君が竜二君?」

女が首を傾げると黒い長い髪の毛が揺れる。
.

⏰:09/12/14 21:06 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#397 [のの子]
 
家庭教師って男じゃなかったっけ?

「女なんて聞いてない‥」

「女‥?あぁ男だと思ってたの?『まこと』って聞くとみんな男って思うんだよね。」

女はクスクス笑う。

「別に勉強を教えるのに男も女も関係ないでしょ?ってか君が竜二君でいいんだよね?」

最初のふんわりした印象とは違くて、ハッキリした口調で話すな‥

「‥そうですけど。」

「そう。じゃ後ろのケーキ食べてる少年は?」

ギクッ
.

⏰:09/12/14 21:13 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#398 [のの子]
 
黒い長い髪に白い肌。マスカラののったパッチリした目が俺を見つめる。

「こいつは俺の友達の彰。」

「ふーん‥なんでいるの?」

女が近づいてきた。

「私竜二君の家庭教師なんだけど‥勉強教えてほしいの?」

‥ドキッ

俺の前で目をパチパチする女は、中学の女子よりも化粧の匂いと香水の香りがする。

「べっ別に暇つぶしに来ただけだから‥」
.

⏰:09/12/14 21:19 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#399 [のの子]
 
「‥そう。じゃ竜二君勉強しよっか。」

クルッと竜二の方に振り返った時、長い髪の毛が俺の頬を撫でた。

‥ドキッ

「君は邪魔しないでね。」

ニッコリ笑う女に俺はただ頷く。

竜二はまだ女だったって事に納得がいなかいのか複雑そうな顔をしている。


勉強をしだす二人の前で、俺はケーキを食べながら竜二の隣に座ってペンを持つ女をただ見つめていた。
.

⏰:09/12/14 21:26 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#400 [のの子]
 
二ノ宮 真琴 (17)

県立でも有名な進学校に通う高校二年生。

黒く長い髪の毛がより肌を白く見せ、少しつり目でパッチリとした瞳が印象的だ。

綺麗な化粧や香水の香り、時々意地悪くクスッと笑う姿が女を意識させる‥




真琴と出会ってから二週間、これぐらいの事がわかった。
.

⏰:09/12/15 20:55 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#401 [のの子]
 
「なぁ、真琴は彼氏いんの?」

「‥‥君に教える意味がわからない。」

「仲良くなろうとしてんだしいいじゃん。ってか俺の名前は彰っ。覚えろよ〜。」

「仲良くって‥なんで君と?ってかなんでいっつもいるの?」

コツンッ
真琴がシャーペンで俺のおでこをつつく。

「別に〜‥暇だから。」
.

⏰:09/12/15 21:00 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#402 [のの子]
 
突かれたおでこをさする。

「全くもう‥勉強の邪魔しないでよね。」

ムスッとしながら真琴はノートをめくる。

「あっ竜二君、ここ‥この前間違えた所解けてるよ。すごいじゃーん♪」

真琴が竜二の頭をクシャクシャに撫でる。

「ちょっガキ扱いすんなって言ってんだろ。」

‥ふ〜ん
.

⏰:09/12/15 21:28 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#403 [のの子]
 
「俺も勉強教えてもらおうかな‥」

ボソッと呟くと、真琴と目が合う。

ドキッ

♪〜♪〜

「あっごめんね。電話みたい‥」

真琴が携帯をとると部屋を出ていく。

パタンッ

ちぇっなんだよ。

「はぁ疲れる‥彰、お前あいつの事気になんの?」

真琴がいなくなった事を良いことに竜二がベッドに寝っ転がる。

「うーん‥興味はある。」.

⏰:09/12/15 23:13 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#404 [のの子]
 
「興味ねぇ‥あいつなんかあるよ。」

竜二が枕に顔を埋めながらボソボソ喋る。

「は?なんかってなんだよ。」

「あいつ二重人格。」

「二重人格っ?ぷっ‥上等じゃん。」

俺が笑うと竜二がかったるそうに俺を見つめる。

「俺‥女苦手。」

当時の竜二は何故か女を嫌っていた。

「でもお前にしては仲良くしてるね?」
.

⏰:09/12/16 17:07 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#405 [のの子]
 
「‥だからあいつ二重人格。」

さっきから二重人格ってなんなんだよ。

「どこが?俺には真面目でちょっと気が強い女にしか見えないけど。」

「この前彰が来なかった日あるじゃん?」

そういえばこの前祐輔の面倒みるので行けなかった日があった。

「あいつ携帯忘れてったから追いかけたんだけどさ、そしたらあいつ目つきが違ったんだよ。」

「目つき?」

「たぶんだけど、あいつ俺らと似てる。こっち側の人間だよ‥」

ガチャ

「あっコラー!」
.

⏰:09/12/16 17:21 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#406 [のの子]
 
「何寝てんの!ほらっ続きやるよ?」

真琴に尻を叩かれ竜二がゆっくり立ち上がる。

「まだ終わんねぇの?疲れた‥」

「もう少しやったら終わりだから。」

真琴が竜二の肩を掴んで無理矢理座らせる。

こっち側の人間って‥なんだし。

「真琴ってどこに住んでんの?」

「教えない。」

冷たいなぁ。
.

⏰:09/12/16 17:54 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#407 [のの子]
 
「俺お茶いれてくる。」

グラスを持って部屋を出ていく時、真琴が俺をチラッと見つめてきた。

ん‥?

「あれ、また彰来てたのか。」

「こんにちは。」

「あっお邪魔してまーす。」

キッチンに行くとリビングで隼人さんと彼女さんが二人でテレビを見ていた。

大学生の二人は竜二とは違って呑気に話している。

.

⏰:09/12/16 18:03 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#408 [のの子]
 
「竜二どう?」

隼人さんが振り返って笑う。

茶髪に爽やかな笑顔。

こりゃ兄弟揃ってモテるはずだわ‥

「もともと勉強できる方だし大丈夫そうですよ。」

「邪魔してないだろうな?」

「もちろん。竜二の邪魔しに来てるわけじゃないんで。」

「あぁ、真琴ちゃんだっけ?お前も男だねー。」

隼人さんと俺は二人でニヤリと笑う。

「真琴ちゃんて、竜ちゃんの家庭教師さん?」
.

⏰:09/12/16 18:09 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#409 [のの子]
 
「ん?そうだよ。男だと気に食わなかったらあいつボコッちゃうかもじゃん?だから綺麗な女の子にしたの。」

隼人さんがクスクス笑う。

「女の子なんだ‥どんな子なの?」

隼人さんの彼女、由紀さんが二階を見つめる。

「ん〜‥綺麗な子だよ。目力が強いかも。な?」

「そうっすね。可愛いよりキレイ系ですね。」

相変わらずニヤニヤ笑う俺達を余所に由紀さんは二階を見つめたまま。

「ふーん。心配だな‥」
.

⏰:09/12/16 18:23 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#410 [のの子]
 
「えっ?」

「ん?なんでもないよ♪彰君は〜‥真琴ちゃんだっけ?その人の事好きなんだ?」

「さぁ‥気になる存在ではありますけど。」

「周りにはいない大人の女だもんなぁ。」

隼人さんがテレビを見ながらクスクス笑う。

「大人?ふふっまだ高校生じゃない。」

由紀さんが妖しく笑いながらテレビに向かうのを俺は横目で見つめる。

‥やっぱなんか掴めないんだよなぁ。

由紀さんは隼人さんと付き合ってもうすぐで二年になる。

⏰:09/12/16 18:31 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#411 [のの子]
 
可愛らしい人で優しいし、天然で面白い所もあるけど‥なんか時々見せる妖しい笑顔がなぁ。

竜二も由紀さんが苦手なのか会っても挨拶程度しかしない。

まぁ竜二は女苦手だもんな〜‥

ガチャ
「あれ、帰んの?」

俺が竜二の部屋のドアを開けると真琴がバッグに荷物を入れていた。

「ちょっと用事思い出して‥」

「彼氏からの呼び出し?」

彼氏っ?
.

⏰:09/12/16 18:40 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#412 [のの子]
 
「はっ?違う。」

「でもメール見たら急に帰るってなったし。彼氏からの呼び出しでしょ。」

竜二が意地悪く笑う。

「彼氏いるんだ。」

俺が突っ立ったまま真琴を見つめる。

「だから〜っ彼氏なんていないから!私フリーなんで。」

「じゃ俺立候補しようかな。」
.

⏰:09/12/16 18:45 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#413 [のの子]
 
俺は笑いながら真琴に手を振る。

「‥‥やだ。君に惹かれる所ないもん。じゃ私帰るね。竜二君バイバイ。」

真琴は俺を無視して横を通り過ぎていく。



「ぷっ‥フラれてるし。」

笑うのを我慢してるのか竜二の肩が揺れる。

ちっくしょー‥

君って‥俺は『彰』だって言ってんだろうがっ。

「ちょっと待てよ!」
.

⏰:09/12/16 18:59 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#414 [のの子]
 
階段を下りていく真琴を呼び止める。

「なに?」

真琴は眉間にシワをよせムスッとしながら俺を見つめた。

リビングから隼人さん達が顔を出しているのが見えたけど、俺は真琴だけを見つめる。

「俺は彰だって言ってんだろ。君って呼ぶな!」


この時の俺は好きとか付き合うとかじゃなくて、ただ『俺』を見つめて知ってほしかった。

俺が『真琴』を見つめて、知りたいと思っているように‥

⏰:09/12/16 19:05 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#415 [のの子]
 
「彰やる〜♪」

隼人さんが茶化すように笑う。

真琴は俺をじっと見つめ、

「君は馬鹿だね。」

なっ!

「はぁっ‥君の名前ぐらい覚えてるよ。でも暇つぶしに来てる子をわざわざ名前で呼ぶ必要ないでしょ。」

暇つぶしって‥

俺がいつも暇つぶしで来てるって言ってるから?
.

⏰:09/12/16 19:10 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#416 [のの子]
 
えっ俺が悪いの?

「名前で呼ばれたければそれなりの努力をしなさい。」

バタン


黒い髪をなびかせて彼女は竜二ん家を出ていった。




「かっけー‥」

俺は笑いながら呟いた。

.

⏰:09/12/16 19:44 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#417 [のの子]
――――

「あの子気が強そうな感じだね。」

「だなぁ。確かにちょっとかっこよかったし‥ありゃ彰完全惚れちゃったな。」

隼人がコーヒーを飲みながら笑う。

「そうみたいだねぇ‥でもそれなら竜ちゃんは大丈夫そう♪」

「何が?」

「ん〜?竜ちゃんには変な虫がつかないって事。」

由紀が雑誌をめくりながら笑う。

⏰:09/12/16 23:57 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#418 [のの子]
 
「変な虫って失礼だろ。」

「だってあの子きっと竜ちゃんと気が合わないよ。竜ちゃんにはもっと相応しい人がいるもの。」

由紀がニコッと笑って隼人を見つめる。

またか‥

由紀は竜二を可愛がってるけど、時々執着心が見え隠れするのを隼人は前々から気づいていた。

「お前は竜二を可愛がりすぎなんだよ。」

隼人が由紀の頭をクシャクシャに撫でる。

「だって隼人の弟なんだから当たり前だよ。」
.

⏰:09/12/17 00:05 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#419 [のの子]
 
「言ってくれたら私家庭教師やってあげたのにな。」

「そんな事したら俺との時間がなくなっちゃうだろ?」

チュッ

隼人が由紀のおでこに唇をあて背中に手を回すと、由紀も首に手を絡ませた。

「そうだよね‥隼人との時間大切だもん。またお家来てもいい?」

「いいよ。」

抱き合いお互いの肩の上で幸せそうに笑う隼人とは余所に、由紀は2階を見つめていた。
.

⏰:09/12/17 00:11 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#420 [のの子]
――――――――

「ねぇ誰待ってるの?」

「一緒に探してあげよっかぁ?」

なんか‥‥違う‥‥

「彼女待ってるんで。」

ニッコリ笑うと女達は口を尖らせながら去って行った。

「まだかなぁ‥」

真琴の通う高校を見上げて俺は門に寄り掛かる。

有名な進学校って言うから真面目そうな奴らばっかかと思ったけど、チャラそうなのもいんじゃん。

さっきから声をかけてくるのもギャルっぽいのからぶりっ子ばっか。

‥なんかピンとこないんだよなぁ。
.

⏰:09/12/17 21:20 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#421 [のの子]
 
別にギャルとかぶりっ子も嫌いなタイプじゃないんだけどなぁ‥

う〜ん、と首をかしげる。

なんかこうやっぱスラッとしてて‥あぁそうそうっあの人みたく黒髪で

「‥またいる。」

真琴が呆れた顔で門に向かって歩いてきた。

「お帰り、真琴。」

そう真琴みたいのが今の俺の心にはピンッとくる。

「君は犬か。私は君のご主人様とか?」

「うーん‥いいねっ犬。鎖で繋いでっ♪」
.

⏰:09/12/17 21:27 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#422 [のの子]
 
わんっと犬の真似をすると真琴は笑ってくれた。

「君みたいな犬のご主人様はしつけが大変そう。」

「えぇっ‥俺いい子だよ?ちゃんと真琴に言われた通り勉強もしてるし。努力してるんだけどな〜。」

ここ最近真琴を待ち伏せして一緒に竜二ん家に行くのが日課になってる俺。

『それなりの努力をしなさい。』

この時の俺は真琴に名前を呼んでほしくて自分の事を知ってもらおうと色々話した。

最初は素っ気なかった真琴も最近はよく笑ってくれるようになった。
.

⏰:09/12/17 21:34 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#423 [のの子]
 
ついでに最近は俺も真琴に勉強を教えてもらったりしてる。

もう暇つぶしで来てる俺じゃない。

「なぁ、まだ名前で呼んでくんないの?」

「そうだねぇ‥まだ努力が足りないんじゃない?」

真琴のクスクス笑う横顔を俺はムスッとしながら見つめる。

「俺の事遊んでるだろ?」

「‥‥‥さぁ。嫌なら辞めれば?」
.

⏰:09/12/17 21:40 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#424 [のの子]
 
「辞めない。」

「じゃ頑張って。」

真琴が笑うと、ムカつく気持ちもなんだか悪くない‥なんて思う俺。

♪〜♪〜♪

「あっごめん。もしもし、何?」

でたー‥謎の男。

真琴に度々かかってくる謎の男からの電話。

「今日?だから無理だって言ったじゃん。‥‥‥‥死ね。」

ピッ
.

⏰:09/12/17 21:52 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#425 [のの子]
 
‥まぁこの感じじゃ彼氏じゃねぇな。

「いっつも誰なの?」

「‥関係ないでしょ?」

「えぇ〜ご主人様の事知りたいなぁ。わん‥」

俺が大袈裟にシュンっとすると真琴が横目でチラッと見つめてきた。

「私男らしくない奴嫌いだな。」

うっ‥

「わかったよ。」
.

⏰:09/12/17 21:58 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#426 [のの子]
 
真琴はあんま自分の事を話さない。

こうやって一緒に竜二ん家に向かう事で知れたのは

真琴は女王様タイプ。

たぶん俺が真琴に惚れてるのもわかっててこいつは虐めてくんだから‥

かなり意地が悪く頑固。

「あっ今度俺お迎え来れないから。」

「えっなんで?」
.

⏰:09/12/18 22:09 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#427 [のの子]
 
「弟の面倒見なきゃなんだよね。」

「弟いんのっ?」

真琴のクリッとした黒い目が俺を見つめる。

ドキッ

「うん。まだチビだけど‥かなり歳離れてるよ〜。」

俺が苦笑いしながら写メを見せると真琴はじっと見つめる。

「可愛い‥君、お兄ちゃんなんだ。」

ふっと笑った真琴は今までで1番優しく、温かい笑顔で俺の頬も熱くなる。
.

⏰:09/12/18 22:15 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#428 [のの子]
 
「私も妹いるんだけどめちゃくちゃ可愛がってるんだぁ。」

「え?へっへぇ〜‥」

真琴が歩きながら初めて自分の話をしだした事に驚きながら平然を装う。

「下に妹とか弟がいるとさ、何でもしてあげたくならない?」

「ん〜まぁわかるかも。」

「だよねっ?!よくシスコンって言われるんだけど‥あの子は私にとって掛け替えのない子なの。」

真琴は何かを思い出すかのように空を見上げる。
.

⏰:09/12/18 22:22 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#429 [のの子]
 
「だってめちゃくちゃ可愛いんだもん。あっ先に言っとくけど君には紹介しないからね。」

真琴が俺に指をつきつける。

「俺は真琴だけだよ。」

「ふふっ本当君は私の犬だね。」


いじわるく笑う真琴は俺より先を歩く。

それについていく俺。

はぁっ本当犬みてぇ。

⏰:09/12/18 22:27 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#430 [のの子]
―――――
コンコン
「竜ちゃん。」

竜二は無表情のままドアの方を見る。

「なんでいるの?」

ドアにはニッコリ笑う由紀が立っていた。

「隼人がね、今日バイトだからお家で待っててって。」

「母さんは?」

竜二は由紀を睨む。

「また出かけちゃったよ。また竜ちゃん一人ぼっちだね。」
.

⏰:09/12/18 22:31 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#431 [のの子]
 
「うるさい。」

竜二はさっきまでつけていたウォークマンのイヤホンをまた耳につけようとすると

「可哀相な竜ちゃん‥」

っ!

由紀はベッドに座る竜二のひざ元に座り込む。

「いつも一人ぼっちな竜ちゃん。可哀相‥」

「うるさいって言ってるだろ。出てけよっ。」

「私がいなくなったらまた一人だよ?」

.

⏰:09/12/18 22:37 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#432 [のの子]
 
「っ‥これから彰と家庭教師がくんだから出てけよっ。」

「あぁ‥あの二人仲良いよね。彰君はあの子の事好きみたいだし、あの子もたぶんまんざらでもないんじゃない?」

由紀が竜二の膝にそっと触れる。

「結局竜ちゃん仲間外れじゃない。やっぱり一人ぼっ――
ダンッ

竜二がウォークマンを壁に投げつける。

「あーぁ‥壊れちゃった。」

由紀がクスクス笑い出す。
.

⏰:09/12/18 22:42 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#433 [のの子]
 
「‥なんなんだよ。いっつもいっつも‥うるせーんだよっ!」

竜二が髪をクシャッと掴む。

「私は本当の事言ってるんだよ?竜ちゃんはずーっと前から‥小さい頃から一人ぼっちだったでしょ?」

「うるさい‥やめろよ‥」

「お父さんとお母さんは仕事、お兄ちゃんは友達と遊びに行って塾にも行って‥竜ちゃんには何もなかったもんね。」

竜二が由紀を睨みつけると由紀は優しく笑う。
.

⏰:09/12/18 22:48 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#434 [のの子]
 
「その目好き‥」

由紀の手が竜二の頬に触れる。

「でも大丈夫だよ?竜ちゃんには私がいるもん。竜ちゃんの寂しさに初めて気づいてあげたのは誰?私だよね?」

由紀が妖しく笑いながら竜二の顔に近づいていく。

「竜ちゃんには私しかいないの‥忘れないで?」

二人の唇が重なったとき、

竜二の目から涙がこぼれた。

⏰:09/12/18 22:53 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#435 [のの子]
――――

「こんにちは。」

「こんにちは‥」
「お邪魔しまーす。」

竜二の家に着くと由紀さんが出迎えてくれた。

隼人さんがいなくても由紀さんはよく竜二ん家にいる。隼人さんを待ってるらしい。

「‥面倒臭いなぁ。」

真琴がボソッと呟く。

「何が?」

「‥わかんないの?」

真琴が俺を呆れた顔で見つめる。

「勉強教えんのがめんどいの?」

「バカ。」
.

⏰:09/12/18 23:00 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#436 [のの子]
 
「ひでぇ‥」

真琴は何が面倒臭いか話さないままサッサと先に階段を上っていく。

‥言わないのかよっ!

コンコン
「竜二君、入るよ?」

竜二からの返事はない。
真琴がまた小さなため息をつく。

ガチャ

「やっぱり‥」
.

⏰:09/12/18 23:27 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#437 [のの子]
 
うん、一目でわかる。

今日の竜二はご機嫌ななめ。

ウォークマンはぶっ壊れてるし、ノートも散らばっちゃって‥

ベッドの上で俯いたまま竜二は俺達を見ようともしない。

「今日ムリ。帰って‥」

イライラを我慢してる低い声で竜二が呟く。

久しぶりにご機嫌ななめだな。

「どうすんの?」
.

⏰:09/12/18 23:33 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#438 [のの子]
 
久しぶりに近づくんじゃねぇオーラが漂ってるし‥

小さな声で真琴に聞くと真琴は面倒臭そーな顔で竜二を見つめたまま

「確かにこんなんじゃ勉強できないしね‥仕方がないなぁ。」

真琴はズカズカ竜二の部屋に入って行く。

えぇっ帰んじゃねぇの?

バシンッ
「何ボーッとしてんの。さっさと片付けるよ。」

「イッ‥はぁ?」

真琴が竜二の頭を勢いよく叩いた。

⏰:09/12/19 15:42 📱:SH06A3 🆔:0C3oGL3g


#439 [のの子]
 
「はぁ〜っ私汚い部屋嫌いなんだよねぇ‥君も手伝ってよ。」

真琴がムスッとしながら散らばったノートを集める。

「えっ‥あぁ、うん。」

俺も戸惑いながら壊れたウォークマンを拾う。

「ちょっ帰れって言ってんじゃんっ!さわん―
「竜ちゃん、大丈夫?」

由紀さんが心配そうに竜二の部屋をのぞいていた。

「真琴ちゃんだっけ?竜ちゃん一人になりみたいだし今日は帰ってあげて?私がいるから大丈夫だよ。」
.

⏰:09/12/19 16:55 📱:SH06A3 🆔:0C3oGL3g


#440 [のの子]
 
「それに勉強なんてできる状況じゃないし‥ね?」

黙って俯く竜二とは反対に由紀さんはニコニコ笑って真琴を見つめる。

「勉強?あぁこんな部屋じゃ勉強なんてできませんよねぇ。っというか別に勉強するために片付けてる訳じゃないですよ。」

真琴は集めたプリントを一枚一枚確認していて由紀さんを見ようとしない。

「私もそこにいる彼も、竜二君に勉強させるためにいるわけじゃありません。」

トントンッ

真琴は綺麗にプリントを揃える。
.

⏰:09/12/20 20:20 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#441 [のの子]
 
「彼は竜二君の親友で、私は家庭教師ですが今日の私はただの二ノ宮です。」

真琴がやっと由紀さんを見た。

「私達は竜二君を心配して、一人にさせたくないと思ってます。これはいけない事でしょうか?」


シ〜〜〜〜〜ン


「いけなくはないけど竜ちゃんは一人になりたいんだよ?無理矢理一緒にいるのは残酷だって思う‥」

由紀さんが悲しい顔をするのは竜二の気持ちを思ってなのか、真琴の考えを非難してるのか‥
俺にはわからなかった。

⏰:09/12/20 20:29 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#442 [のの子]
 
でも真琴にはどっちなのかわかってるのように真琴がニヤッと笑った。

「それならあなたもですね。無理矢理はよくないです。」

いつの間にか俺よりも前に竜二の部屋に入ってきていた由紀さんの肩がピクッと揺れた。

「うん‥じゃ仕方がないですね。私達も帰りま―」
ピタッ

立ち上がろうとした真琴のシャツを竜二が掴む。

「もういいよ。‥いていいよ。」

竜二が俯いたまま呟く。
.

⏰:09/12/20 20:40 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#443 [のの子]
 
「竜ちゃんっ?」

「‥彼の許しも貰えたんでやっぱ帰りません。お邪魔させていただきますね。」

真琴がニコッと意地悪く笑うと由紀さんもニコッと笑いながら部屋を出ていった。

バタンッ!

今度は由紀さんがご機嫌ななめになったみたいだけど‥

「私あの人苦手。」

真琴がため息をつきながらまた座り込む。
.

⏰:09/12/20 20:46 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#444 [のの子]
 
「俺もちょっと苦手。」

「俺は大っ嫌いだよ‥」

竜二がベッドに倒れ込む。

大っ嫌いって‥由紀さんとなんかあったのか?

俺も真琴の前に座る。


誰も話さないから俺も黙っていると



「ありがと‥」


小さな声がベッドから聞こえた。
.

⏰:09/12/20 20:51 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#445 [のの子]
―――――

「なぁなぁっこの前【黒蝶】現れたらしいぞっ。」

「へぇ久しぶりじゃん。最近全然噂ないからいなくなったのかと思った。」

「この前族同士のデカイ喧嘩あったじゃん?あの時見た奴がいてさ、かっこよかったってよ。」

「スノードロップだっけ?できてまだ全然だろ?‥どんどんデカくなってってんな。」

「もうこの辺はスノードロップが占めてるよ。【黒煙】に【黒蝶】‥その上に総長の【雷公】がいんだもんなぁ。」
.

⏰:09/12/20 21:15 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#446 [のの子]
 
「そういや今度この辺の族同士の集会あるらしいぜ。本当かわかんねぇけど‥」

「マジで?恐そぉ‥」

チッ‥うっせーな

「たぶんスノードロップも参加するはずだし、見に行く?」

気持ち良く寝ている俺の邪魔をする奴らを睨む。

「無理無理っ!見つかったらただじゃすまねぇだろっ。」

「うっせーんだよ‥」

俺に気づかずに笑うそいつらに俺は声をかけた。

⏰:09/12/21 00:21 📱:SH06A3 🆔:W0PfAZ5s


#447 [のの子]
 
「げっ彰起きてたのかよ。」

「お前らがうるさくて寝れないんだろっ。何が族の集会だよ。」

「彰も不良なら族の話とか興味あるんじゃねぇの?」

顔見知り程度のそいつらはニヤニヤ笑う。

うぜーな‥

「不良がこんな点数とれないっしょ?」

俺はニッコリ笑ってこの前のテストをポケットから出す。

「‥はっ?!82点てお前カンニングしたろっ!」

今までよりも遥かに良い点数に驚いてる。

「バーカ!カンニングなんかすっか!ってかどっか行けよ。」
.

⏰:09/12/22 21:03 📱:SH06A3 🆔:NifqdC0o


#448 [のの子]
 
真琴達と勉強するようになって竜二ももちろん俺の成績は自然と上がっていった。

最近の竜二も前みたく簡単にキレなくなったし、平和な毎日が続いてた。


「なぁ彰一緒に族の集まり見に行かねっ?」

「はぁっ?!嫌だ。俺興味ねぇもん。」

「えぇ〜っスノードロップ見れるかもなんだぞ?さすがにスノードロップぐらい知ってるだろ?」

スノードロップ

最近力をつけてきた族の一つ。
.

⏰:09/12/23 20:39 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#449 [のの子]
 
総長も含めて若い奴らが集まったらしく、

総長の『雷公』
【スノー(雪)】っていうくせに黒服が正装で、唯一総長だけ金髪・白服が許される。そいつの金髪と喧嘩後がまるで雷が落ちたかのように人がぶっ倒れてる姿からこの名がついた。

副総長『黒煙』
総長の右腕でいつもタバコを吸っているらしい。喧嘩中もタバコを吸っていてそいつが動くと煙りが舞う姿から黒煙って呼ばれる。

『黒蝶』
族の中で唯一の女で滅多に現れないらしいが、喧嘩の腕は男に負けない。特徴の素早さが蝶が舞っている姿に似ているらしい。美人って噂があるけど本当だか‥

まぁ俺でもこれぐらい知ってる有名人がいる族って事。

⏰:09/12/23 20:52 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#450 [のの子]
 
「見ても何も得ないし。」
「まぁ興味あったら行ってみろよ。確かかわかんねーけど今週らしいぞ。」

「はいはい。」

俺が欠伸をするとそいつらはつまらなそうに出ていった。

今週ねぇ‥



「それより真琴何してんのかな〜。」


.

⏰:09/12/23 20:56 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#451 [のの子]
――――

「明日なんだけど用事あるんだ。だから次なんだけどまた来週ね。」

真琴がバッグにプリントやら筆箱を入れながらサラッと言った。

「わかった。」
「はっ聞いてないっ!俺明日なんも予定入れなかったのに〜‥」

真琴が馬鹿にしたように俺を見つめる。

「じゃ勉強してなさい。」

「真琴がいなきゃ無理。」

「俺も明日暇だし久しぶりに遊び行こうよ。」

「そうね、遊んできなさい。じゃ私帰るから。」

真琴が慌ただしく立ち上がる。

いつもならゆっくりしてくのに‥
.

⏰:09/12/23 21:04 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#452 [のの子]
 
「もう帰んの?」

竜二も驚いた顔で真琴を見上げる。

「用事があるの。じゃまたね。」

真琴は軽く手を振って部屋を出て行った。


「あいつ男いるね。」

「はっっ?!!!!」

竜二が頬杖をつきながら俺を見つめる。

「さっき真琴が電話してんの聞いちゃったんだ。明日デートだよ。」
.

⏰:09/12/23 21:10 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#453 [のの子]
 
「待ち合わせ場所も聞いちゃったけど、どうする?久しぶりに出かける?」

ニヤリと笑う竜二は天使か悪魔か...

「まぁデートを見に行く勇気があればだけど。」

勇気ねぇ‥

ふっ

俺もつられるように笑う。

「‥バーカ。よしっ久しぶりに出かけるか。」


こうなったら真琴のデートやらを見に行ってやろうじゃないか。
.

⏰:09/12/31 00:14 📱:SH06A3 🆔:TF0AcJCw


#454 [のの子]
――――――

季節はもうすぐ夏になろうとしていた。

まだ梅雨の湿った生温い空気が残るけど、夏を感じさせる太陽の暑さは日に日に増していく。

そんな中、俺達は普段は降りない駅に立っていた。


「待ち合わせ場所ってここ?」

「駅の名前と時間しか言ってなかったからなぁ。ここら辺にいれば現れると思う。」

駅前の大きな時計の針は、18時を指そうとしている。

「でも18時に駅前とかまさにデートじゃない?」

「デートにしちゃ平凡な町の駅じゃん。どこでデートすんだし。」

デートかどうかもわからないのに、俺達はもう真琴がデートするもんだと思っていた。

⏰:10/01/02 21:33 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#455 [のの子]
 
「そりゃここが相手の住んでいる町で、向かうは家とか?」

竜二の話を聞きながら、俺達はコンビニの前に座り込む。

ここなら駅から出てくる人間を目立つことなく観察できる。

「相手の家で何すんの?勉強とか?」

俺は鼻で笑いながらじっと駅の改札を見つめる。

「決まってんじゃん。‥セックスじゃないの?」

竜二が小さな声で複雑そうに言った。

‥‥‥‥‥は?
.

⏰:10/01/02 21:41 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#456 [のの子]
 
俺はゆっくり竜二を見つめて笑う。

「お前は‥‥バッカじゃねーのっ!?真琴がそんな簡単にやらせるかよっ!バーカッ!」

「うっるさいなー!そんなのわかんねぇだろっ?相手は真琴が男として好きになった奴なんだぞっ?!普通やるだろっ!」

「お前それ以上言ったらマジ殺すっ!殺すからなっ!」

デカイ声で『やる・やらない』の話をしていると、電車が着いたのか人が多く流れてきた。

「ちょっ真琴いるかもよっ!」

慌てて竜二が俺の口をふさぐ。
.

⏰:10/01/02 21:48 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#457 [のの子]
 
サラリーマンや学生がチラホラ見える。

この中に、彼氏に会いにきた真琴がいるのか。

今更少しずつここに来た事を後悔しだす。

「‥‥あっあれ真琴じゃない?」

「‥ん、だな。」

俺の気持ちを知らずに真琴は可愛らしい私服で、電話しながら現れた。

「もうすぐご対面だね。」

竜二が笑いながら俺の肩をポンッと叩く。

楽しみやがって‥
.

⏰:10/01/02 21:56 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#458 [のの子]
 
「どうすんの?めっちゃお似合いの彼氏さんだったら‥」

「別に‥俺の気持ちは変わんないし。」

「片想いか。」

「片想い上等‥」

俺は遠くに立つ真琴を見つめる。

「‥でも‥‥‥今の俺って軽くストーカー?」

「どんまい。」

竜二が今度は二回俺の肩を叩いた。
.

⏰:10/01/02 22:01 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#459 [のの子]
 
真琴が歩きだした。

「あれ‥おい、あれじゃね?」

「はぁ‥あいつっぽいな。」

真琴が手を振った先には、黒髪のタバコ吸いながら手を挙げている男がいた。

真琴と同い年ぐらいだろうか。

制服を着くずしている感じから優等生タイプではないみたいだ。

でもカッコイイ‥かな。

「真琴はあーゆーのがタイプなんだねぇ。」

二人は軽く立ち話をするとゆっくり歩きだす。

「‥もし家だったら相手ぶっ飛ばして逃げるぞ。」

「えぇ〜。そんな事したら俺達が真琴にぶっ飛ばされるじゃん。」
.

⏰:10/01/02 22:11 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#460 [のの子]
 
「いいから行くぞっ。」

真琴達の後を道路を挟んでついていく。

ストーカーがなんだし‥嫌なもんは嫌なんだよっ!


―――――――


「あれっどこ行った?」

「わかんない。あっち?」

もう空に星がハッキリ見えだす中、道路を挟んでいたせいで俺達は真琴達を見失った。
.

⏰:10/01/02 22:16 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#461 [のの子]
 
「ってかここどこっ?なんもないじゃん。」

竜二が辺りを見回す。

知らない町のせいで土地勘がない俺らにはここがどこなのか全くわからない。

わかるのは今もやってんのかわからない閉まった店と公園、もう少し行った向こうにデッカイ工場っぽいのがある事。

「道間違えたのかも。っんだよ、あの二人‥」

「はぁ、もうしょうがないよ。帰ろう?」

竜二が来た道を戻る。

俺も辺りを軽く見回して、竜二の後をついていく。

⏰:10/01/02 22:30 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#462 [のの子]
 
今頃あの二人は‥‥いやいやいやっ考えたら負けだ!考えるなっ考えるな俺っ
ドンッ

そんな事を考えてると俺は思いっきり竜二にぶつかった。

「っ‥‥お前何して
「彰っあれ‥」

竜二が指さしたのは公園を挟んで向こうの道。

明かりがほとんどなく暗い道には、

「なんだよ、あれ‥」

ゾロゾロと質が悪そうな奴らが歩いていた。
.

⏰:10/01/02 23:59 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#463 [のの子]
 
「あいつら‥たぶんブラクリックだ。前に見た事ある。」

「ブラクリックって族じゃん‥なんでこんなとこにいんだよ。」

俺達は見つからないよう小さな声で話す。

そいつらと俺達との距離は近くはない。けど、遠くもない。

「知らないよ。それより早くここから離れた方がいい。見つかったらどうなるかわかんないし‥」

確かに‥
.

⏰:10/01/03 00:08 📱:SH06A3 🆔:Q93rgQZs


#464 [のの子]
 
「面倒はごめんだし‥早いとこ離れよ。」

さすがにこの時の俺の頭には真琴とあの男の事を考える隙はなかった。

俺達はゆっくり静かに歩きだす。

自然と無言になる。

ブラクリックには良い噂はない。まぁ族に良いも悪いもないだろうけど..

仲間だろうとなんだろうと容赦ないらしい奴らにその辺の中坊が関わったらどうなるか。

苦笑いと同時に嫌な汗が出る。
.

⏰:10/01/06 20:50 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#465 [のの子]
 
ジャリッ
っ!

公園の中から砂利を踏むような鈍い音がしたのを俺も竜二も聞き逃さなかった。

反射的にブラクリックのいる方を見つめると彼等は音に気づいていないのか、そのまま暗闇に消えていった。

あっちって工場しかないんじゃ‥

ジャリッジャリッ

っ!

ハッとして音の方を見る。

ブラクリックじゃないならこの音は一体何の音なのか‥

まだ真夏でもないのに怪談なんてごめんだ。

ジャリ
「お前ら何してる‥?」

⏰:10/01/06 21:01 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#466 [のの子]
 
「うわっ!」

声を上げたのは俺。

「ったく、中坊がここで何してんだよ〜。お前ら早く帰った方がいいぞ。」

俺達の前に現れたのは、パーマをかけているのか髪の毛がうねっていてかったるそうな顔をした男だった。

そんな男を見て、俺はまた驚く。

「‥‥アンタもしかして‥スノードロップの‥」

その男は金髪、白いシャツの上に白のコートの様なモノを羽織っていた。唯一パンツと靴が黒っぽい。

「スノードロップのヘッド?」
.

⏰:10/01/06 21:22 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#467 [のの子]
 
竜二が俺の言葉を続けた。

「‥だったら?」

男の口元がニヤリと笑った。

はっきり認めた訳じゃないけど、こいつだって思った。

この人が‥『雷公』

噂で聞いていたよりも若く見え、カッコイイ男だった。

もっとゴリラみたいな奴かと思ってたのに..

「初めて見た‥」

俺は呟くと雷公はクスクス笑う。

「もしかしてお前らキングリー見に来たの?」

「キングリー?」
.

⏰:10/01/06 21:33 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#468 [のの子]
 
「ん?違うなら知る必要ないじゃん。っつか帰れ!俺忙しいんだから。」

シッシッとやる姿から総長の威厳みたいなもんは感じられない。

本当に雷公なのかよ‥

ブラクリックに雷公なんてこの辺どうなって‥


「あっ‥わかった。キングリーって集会の事だ?」

確か今週スノードロップを含めた族の集会があるって聞いた。
.

⏰:10/01/06 21:38 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#469 [のの子]
 
「‥知ってんじゃん。生意気なガキだな。」

俺の頭をコツンッと叩く。

「ったく、確かにこれから集会があるよ。中坊が二人でのこのこ歩いてるなんて危ないから早く帰れって言ってんの。優しいお兄さんだろ?」

「アンタは一人でのこのこ危なくないの?」

竜二が雷公を見つめる。

「‥俺はスノードロップのヘッドだぞ?」

その余裕の表情からは、この人は大丈夫なんだろうな.なんて思った。

じゃ気をつけろよ、それだけ言うと雷公はブラクリックと同じように暗闇に消えていった。

向かう先は工場‥
.

⏰:10/01/06 21:56 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#470 [のの子]
 
「あの工場で集会やんだ。」

竜二も工場の方を見つめていた。

「雷公って思ってたより優しいんだね。」

「ん〜‥まぁまぁじゃん?」

「まぁまぁって‥ってかブラクリックにスノードロップも集まる集会じゃ他のメンツもすごいのかな?」

「だろーな。あと黒煙と黒蝶も揃うらしいぞ。」

何日か前に聞いた情報を思い出す。
.

⏰:10/01/06 22:03 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#471 [のの子]
 
「‥ちょっと見てく?」

竜二が少し遠慮しながら小さく呟く。

「‥‥‥‥見てく。」

俺も小さく呟く。

見ても何も得なんてない。

でも今の俺達の好奇心は、得とか考えるよりも足を動かせた。

この行動が俺と真琴が付き合うきっかけに繋がるとも知らずに、俺達は雷公の後を追うように暗闇に消える。

⏰:10/01/10 23:51 📱:SH06A3 🆔:0Np5zl9g


#472 [のの子]
―――――

カチャンッ

「バカッしっ!」

「ごめん‥」

竜二が口に人差し指を当てながら俺を睨む。

遠くからはわからなかったけど、この工場はもう使われてないらしくあちこちにガラスや意味のわからないゴミや卑猥な雑誌が散らばっていた。

まさにここは不良達、族にとって居心地が良さそうだった。

建物の陰に隠れながらコソコソ進む俺達を、いつの間にか現れた大きな月が照らす。

二人の影が伸びる。
.

⏰:10/01/11 21:22 📱:SH06A3 🆔:RI/yyPH2


#473 [のの子]
 
ガシャーンッ!

っ!!

俺達は慌てて隠れる。

「うっせぇなー。」

「‥はぁ‥‥早く帰りたい。」

「‥‥‥‥。」

声のする方を見ると、何台かのバイクのライトが四人の男を中心に暗闇を照らしていた。

「あぁ、ごめん。こいつが逃げようとするからさ。」

一人の男が笑いながら指さしたのは、ボコボコにされて泣いている男だった。
.

⏰:10/01/11 21:33 📱:SH06A3 🆔:RI/yyPH2


#474 [のの子]
 
「すっ‥ずみまっ許し‥くだ‥
「しーっ‥黙れ。お前の顎壊すぞ?」

何が面白いのかそう言って笑っていたのは

ブラクリック総長
『黒い死に神』
山川 総一郎

「どっか他でやれよ。」

総一郎を横目で見つめる男

ラファエル総長
『堕天使』
中井 健斗
.

⏰:10/01/12 23:49 📱:SH06A3 🆔:8CqNi16I


#475 [のの子]
 
「つまんないなぁ‥」

ボーッと空を見上げる男

クラッシュ総長
『血まみれのクラッシャー』
飯沼 順平

「‥‥‥‥。」

黙って本を読み続ける男

ファナティック総長
『沈黙の狂言者』
深田 太一


「マジかよ‥」


俺達の前には、この辺を占めるトップの族の総長が集まっていた。
.

⏰:10/01/13 22:09 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#476 [のの子]
 
「これに雷公も入るんだろ?見つかったらマジでやべぇな‥」

「確実にあの世逝きだね。」

ライトに照らされる総長達とは逆に、闇に紛れるように他にも名前が知られている奴らがチラチラ見える。

「はぁ‥もうこんなメンツ見れたら十分。帰りてぇ。」

そう言いつつ、下手に動くこともできない俺達はただじっと隠れていた。

「集会が終わるまで待ってた方がいいかもね。」

空を見上げると綺麗な満月が俺達を照らしていた。

今になって真琴の事を思い出す。
.

⏰:10/01/13 22:19 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#477 [のの子]
 
もう家に帰ったかな‥

「遅れたー。」

そんな事を思っていると聞き覚えのある声が響いてきた。

「いっつもおせーんだよっテメェはっ!」

「ごめんてぇ。そんな怒んないでよー。」

健斗がニコニコ笑う昇の胸倉を掴んでいるのが見えた。

「あれ?昇くん、姫はぁ?」

順平がキョロキョロと回りを見つめる。
.

⏰:10/01/13 22:27 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#478 [のの子]
 
「うちの姫ならもう来るよ。あっ太一久しぶりー。」

「‥‥ども‥」

太一が本を閉じると初めて声を出す。

バァンッ!

「もっ‥かっ勘弁し‥
「あぁー聞こえない聞こえない聞こえなーいっ!」

総一郎は昇が来た事に気付いていないのか、相変わらず笑いながら男をボコッていた。

「総一郎さーん、昇さんも来たんでその辺で終わりにしましょ。」

「あ゛ぁ?‥なんだ、もう来たんだ。」

総一郎をブラクリックの副総長の本田が止める。
.

⏰:10/01/13 22:35 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#479 [のの子]
 
「チッ‥手汚れたぁ。」

ブツブツ文句を言いながら総一郎が手をパンツで拭くと、総長達全員がライトの中心に輪になるように集まる。

「じゃ全員集まったし、集会始めるか。」

「姫達来てないけどいいの?」

「ヘッドの俺がいればいいじゃん?」

「‥‥‥始めましょ。」

「さっさとやって帰ろうぜ。俺パンツ汚れちゃったし今すぐにでも帰りたい。」

各々話すと一瞬時が止まったかのようにその場が静まる。

⏰:10/01/13 22:44 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#480 [のの子]
 
「んじゃ‥‥平和と破壊を胸に‥」

健斗がライターをつける。

「「「平和と破壊を胸に」」」

ライターの火にあとの三人がタバコをつけていく。

それは集会を始める時にやる決まりなのか、誰も何食わぬ顔でやっていた。



「キングリーを始める。」


.

⏰:10/01/13 22:53 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#481 [のの子]
 
「じゃまずは順平から。」

「俺?あぁーそうだな、この前なんだけど‥――」

集会って言っても各族の近況報告とか他の族の動きの話らしく、俺達にはよくわらなかった。


「それで‥あっ来た。」



「遅れましたー。」

そう言って現れたのは、

「あいつっ‥」

さっき真琴の横で笑っていた男だった。
.

⏰:10/01/13 23:01 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#482 [のの子]
 
「亮、遅くない?」

「あぁ〜うちの姫がご機嫌ななめで‥」

さっき見た時とは違う黒い服を着て昇の横に立つ男は、紛れも無くさっきの男だ。

「さっきの‥あいつスノードロップなのかよ。」

「‥まさか『黒煙』?」

竜二と顔を見合わせる。

「やばくない?絶対真琴騙されてる‥」

「確かに‥族とかあいつ嫌いそうだもんな。」
.

⏰:10/01/13 23:06 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#483 [のの子]
 
嬉しいようなムカつくような‥

まぁ真琴に会ったら言ってやろう、なんて考えながら俺達は亮というそいつを見つめる。

「ご機嫌ななめってなんで?」

「いやーなんか返事がない!とか言ってグチグチ‥まぁもう来るよ。」

そう言って総長達の輪から離れる。

「姫のご機嫌ななめな顔拝みたいな。」

順平がクスクス笑う。

「黒蝶にぶっ殺されろ、変態。」

健斗が順平を睨む。

⏰:10/01/14 17:15 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#484 [のの子]
 
「‥‥‥くだらない‥」

「太一くんも女に興味持ちなさいよ。」

「っつーか続きっ!早く帰りたいって言ってんじゃん。」

「テメェは自己中なんだよっ!」

「‥んだとコラ?」

バンッ

総一郎と健斗が睨み合う。.

⏰:10/01/14 17:19 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#485 [のの子]
 
「ってか二人共喧嘩っ早すぎだからー。君達めんどくさいぞー。」

昇が呆れた顔で二人の間に入る。

‥‥なんなんだ、こいつら

「あっみなさーん、うちの姫が来ましたよぉ。」

亮の声が響く。

ザワザワ

あたりがざわつく。


「はぁ‥その姫っていうのやめてって言ってるでしょ。」

⏰:10/01/14 17:23 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#486 [のの子]
 
「姫ー。」

順平が手を振る。

「こんばんは。」

「こんばんはじゃねぇし。おせぇんだよっ。」

健斗が睨む。

「姫どころか女王気取りかよ。」

クククッと総一郎が笑う。

「‥‥‥‥。」

太一はただ見つめるだけ。

「私そんな遅かった?普通じゃない?」

「遅いねぇ。キングリー始まっちゃってるもん。」
.

⏰:10/01/14 17:33 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#487 [のの子]
 
「あぁ‥じゃ遅刻ね。ごめんなさい。」

その言葉に心がこもっていないのがすぐわかった。

あれが黒蝶‥?

ライトが当たるところに入らないせいで黒蝶の顔がわからない。

「全く、うちの姫がすみませんねぇ。」

昇が笑う。

「‥‥‥死ね。」

ん?‥‥今の言い方

「やめてって言ってるでしょ?」

この声
.

⏰:10/01/14 17:41 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#488 [のの子]
 
ライトによって黒い影がまた一つ伸びる。

「私の名前に姫なんて入ってた?」

「ん〜‥一文字もないね。じゃ真琴ちゃんっ♪」

「ちゃん付けも気持ち悪いからやめて。」


昇を睨みつけながらライトに照らされた、

黒い長い髪

黒のフリルのついたシャツとパンツ

高いヒールのパンプス
.

⏰:10/01/14 17:59 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#489 [のの子]
 
っ!

その姿は

「なんであいつが‥‥」

いつも俺が見つめていた

彼女とは違ったけど、

「彰‥あれ、そうだよね?」

笑った顔は

いつもと変わらない


「真琴が‥あいつが黒蝶‥」

.

⏰:10/01/15 12:27 📱:SH06A3 🆔:dOheSbzc


#490 [のの子]
 
あんなクソ真面目そうな真琴が‥族?

しかも黒蝶って‥‥




「‥やっぱかっけぇー♪」

俺は真琴を見つめて笑う。

「いやいや、もっと驚くべきじゃない?」

竜二がため息をつく。
.

⏰:10/01/15 12:32 📱:SH06A3 🆔:dOheSbzc


#491 [のの子]
 
「ん?そりゃもう驚いた驚いた。でも面白いじゃん。」

「面白いねぇ‥確かに。」

竜二の口元が緩んだ。

「ってかさっきいた男は黒煙だろ?じゃ二人付き合ってないんじゃね?」

俺はスノードロップの三人を見つめる。

あの謎の男からの電話はたぶんあいつらからだろーし
.

⏰:10/01/16 19:54 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#492 [のの子]
 
「どうだろーね‥あの三人の関係性全くわかんないし。」

「‥‥そか。まだわかんな♪〜♪〜♪〜

っ!!!

「やばっ!」
「バカッ!なんでマナーモードにしてねぇんだよっ!」

竜二の携帯から着信音が流れて、その場に響き渡る。

もちろん向こうの奴らにも....


「誰だ‥‥?」

ジャリッ
.

⏰:10/01/16 20:02 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#493 [のの子]
 
ピッ
竜二が慌てて電話を切る。

最悪‥やっぱ聞こえちゃったよな。

「そこにいる奴、さっさと出てこい。」

「ビックリした〜。なに?敵襲とかっ?」

総一郎の笑い声が聞こえる。

敵でも味方でもないっつーの。

影から覗くと、真琴を含めた総長達がこっちを見つめていた。

「悪い。どうする?」

竜二が苦笑いしながら携帯をポケットにしまう。

⏰:10/01/16 20:08 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#494 [のの子]
 
「ったく〜‥素直に出てってもどうなるかわかんねぇし。」

それに今、真琴に会うの気まずい。

後を追ってきたのがバレたらマジで嫌われそうだし‥

「じゃやっぱり‥―」

俺達は建物に隠れながら立ち上がる。


「「ダッシュで逃げる。」」


「―‥しかないだろ。」

二人して背伸びする。
.

⏰:10/01/16 20:13 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#495 [のの子]
 
長時間座っていたせいで体が痛い。

「お゙いっ!聞いてんのかコラッ!!」

っ!

ジャリッ

健斗の低い声が響くと、同時にこっちに向かってくる足音がした。

「はぁっ‥こけても助けてやんないからな。」

「ひどっ!っつーかこけないしね。」

ふぅ‥

息をゆっくり吐く。
.

⏰:10/01/16 20:18 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#496 [のの子]
 
「行くぞっ‥」

竜二は黙ったまま頷く。


「いい加減にっ
バッッッ

二人同時に走り出す。

「あっ逃げた。」

「‥どうする?捕まえる?」

太一が呟く。

「クソがっ!テメェら捕まえろっ!」

健斗が怒鳴る。
.

⏰:10/01/16 20:25 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#497 [のの子]
 
その声は俺達にも聞こえた。

「お前ら、あいつら捕まえて俺に献上しろ。」

総一郎が冷たく笑う。

「めんどくさ〜。ったく、お前達行ってこい。」

「‥行け。逃がすな。」

順平と太一も仲間に声をかける。

キングリーでは4人までの仲間をつれてきていい事になっている。

各総長の一言でそれぞれの仲間達が走り出す。
.

⏰:10/01/16 20:31 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#498 [のの子]
 
「あいつらさっきのガキンチョ‥?バカ〜。」

昇はため息をつく。

「ガキンチョ?知り合い?」

亮が他の仲間に手で後を追うよう指示する。

「知り合いっつーかさっき公園で会ったガキンチョ。帰れって言ったのによ〜。」

「あんた余計な事教えたんじゃないの?」

真琴が呆れた顔をする。

「別に〜。でも一人がキングリーがある事知ってた。」

「興味持たせたんでしょ?」

⏰:10/01/16 20:37 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#499 [のの子]
 
「そんな事するかっ。あいつら中坊だし、忠告してやったの!」

「中坊?中学生なの?」

真琴の眉間にシワがよる。

「うん。ガキっぽかったもん。」

「見た目だけじゃん。」

亮がタバコに火をつけながら笑う。

「あっそういや名前‥一人アキラとかいってた
「はっっ?!アキラッ?そう言ってたの?」

真琴が昇の肩を掴む。
.

⏰:10/01/16 20:53 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#500 [のの子]
 
「はっ?‥たぶん言ってた。」

昇は目を点にしながら真琴を見つめる。

「嘘でしょ?‥そんな訳ない‥でも‥」

真琴はブツブツと呟く。

「知り合いなの?」

亮がタバコを手に息を吐く。

「だったらその知り合いヤバいんじゃね?捕まったらこいつら手加減しないかもだし。」

真琴はさらに眉間にシワをよせる。

「チッ‥今日ヒール履いてきたのに‥」

そう一言呟くと真琴は走り出す。
.

⏰:10/01/16 21:02 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#501 [のの子]
 
ハァッハァッハァ

「彰っそっちじゃないっ!こっち!」

「あぁっ!?んだよっ!」

竜二の後を追いかける。

ガシャン ダダダダッ バンッ

俺達の後ろから何人も追いかけてきているのがわかる。

「待てコラァッ!」
「ぶっ殺すぞ!」

汚い言葉が工場に響く。

「ちょっどこまで走りゃっ‥いいんだよっ!」

「ハァッハァッ‥あいつらが諦めるまでだろ!」

あの状況で走って逃げるってアイディアは1番正しいって思う。
.

⏰:10/01/17 23:25 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#502 [のの子]
 
ただ計算外だったのが、あいつらの足の速さ。

全力で走らなきゃ人数的にも速さ的にもヤバい。

「彰っあの柵乗り越えてもっ‥ハァッ止まるなよ。」

「っマジかよ〜‥」

俺達の先にある柵はよじ登らないと乗り越えられない高さで、入る時もめんどかった。

それを今この状況で登るのはキツイ。
.

⏰:10/01/17 23:31 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#503 [のの子]
 
さすがにずっと全速力は体力が持たない。

「そっち行ったぞ!捕まえろっ!」

っ!

先回りしていたのか二人の男が柵の前に立ちはだかる。

チッ‥

「ハァッしょうがねぇー。このまま走ってぶっ飛ばすぞ‥」

「‥りょーかいっ。」

二人して勢いづける。

立ちはだかる男はニヤリと笑う。

.

⏰:10/01/17 23:38 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#504 [のの子]
 

すると俺達の視界にもう一人入ってきた。

男達は一瞬驚いた顔をすると、俺達の視界から遠ざかる。

あれはっ‥‥

「まっ真琴‥?」

黒い髪をかきあげ、真琴も息をきらしていた。

「本当だ。真琴じゃんっ。」

俺達を見つめる目は、いつもと変わらない呆れた目つき。

なんでか俺は胸がギュッとなった。

「ハァッこのままじゃっバレるんじゃね?ゴホッ」

竜二が咳込む。
.

⏰:10/01/17 23:45 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#505 [のの子]
 
「あぁー‥どうしよっ。」

俺も苦しさで眉間にシワがよる。

もしバレたら
「アンタ達若いんだからさっさと来なさいっ!もうバレてんだからねっ!」

「「えっ?」」

真琴が呆れた顔でため息ついてるのがわかる。

俺達は顔を見合わせると、ふっと笑みがこぼれた。

「「まことぉーっ!」」

一気に勢いづける。

その時、真琴も呆れながらも口元が笑っていた。
.

⏰:10/01/17 23:52 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#506 [のの子]
 
「助けてーっ!」

竜二が笑いながら叫ぶ。

「バカ。さっさと行きなさい。」

ガシャンッ

俺達はそのまま真琴の横を通り過ぎて柵にとびついた。

「真琴っ‥!」

真琴が振り返る。

「マジで俺と付き合ってよ。」

「はっ?この状況で告白すんの?」

追いかけてきた奴らがすぐそこまで来ていた。

「今だから告白すんだよ。」

「ぷっ‥私スノードロップの黒蝶だよ?」

「そこも魅力的。」
.

⏰:10/01/17 23:58 📱:SH06A3 🆔:VHQ6kprM


#507 [のの子]
 
「君って本当バカな
グイッ

「あっ‥」
「「‥テメェーッ!」」

竜二の声とすぐそこまで追いかけてきた奴らが声をあげる。

でもそんなの俺には関係ない。

今の俺に見えるのは

真琴だけだ。

チュッ

二人の唇が重なった。


「本当に好き‥」

.

⏰:10/01/21 00:32 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#508 [のの子]
 
「真琴‥俺の名前を呼んでよ。」

固まる真琴の瞳を見つめる。

その瞳には俺しか写っていなくて、そこから消えるのは少し名残惜しかったけど俺は柵を登って反対側に降りる。

カシャンッ

「ロマンチックだこと。」
「うるさい。行くぞっ。」

竜二とその場から立ち去る時、振り返ると真琴はもう背を向けて仲間達の所へ歩いていた。

‥動揺もしねぇのかよ。
.

⏰:10/01/21 00:40 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#509 [のの子]
――――――

「‥で?あの二人組はそちらの姫のお友達だったわけ?」

「そうそう。」

「族にも入ってない奴らがなんでここにいんだよ。」

「さぁー?なんでかね。」

「まぁキングリーの情報が漏れてたんじゃないかな?」

「あぁなるほど。」

「‥でも別に聞かれて困る話はしていない。」

「確かにー。じゃこの話はもう解決だね♪」
.

⏰:10/01/21 00:45 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#510 [のの子]
「ちょっと待てっ!」
ガシッ

健斗が昇の肩を掴む。

「お前さっきからヘラヘラ相槌打つぐらいで謝ってもねぇじゃねぇかよっ。」

「あぁ‥ごめんねっ♪」

昇が手を合わせて笑う。

「‥‥こンのクソガキー!!俺をなめてんのかっコラァッ!」

「うわぁっ俺真剣だしー!」

健斗と昇の追いかけっこが始まった中、真琴と亮の二人は少し離れた場所で話していた。

「真琴大丈夫か?」

⏰:10/01/21 00:50 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#511 [のの子]
 
「‥ん‥‥‥‥。」

ボーッと空を見上げる真琴の目の前に、タバコを人差し指と中指に挟みながら亮が手を振る。

小さなタバコの火が揺れた。

「オーイッ真琴〜?」

「‥えっあっごめん。なんだっけ?」

亮がニッコリ笑うとタバコを口に付ける。

「お前どーしたのよ?たかが中坊にキスされたからってさぁ。確か名前〜‥アキラだっけ?」

真琴の肩がピクッと動いたのを亮は見逃さなかった。

「それに逃がしちゃうしさぁ〜‥ほら、うちの昇が怒られちゃうんだから、一応捕まえてから事情を説明でもすれば
「初めてだったの‥」
.

⏰:10/01/21 00:59 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#512 [のの子]
 
真琴が空を見つめながら呟く。

「ハァ〜‥何が?」

亮は諦めたかのようにその場に座り込み、真琴が見つめる空を見上げた。

「今まで色んな人に出会って色んな事経験してきたつもり‥その中でアンタ達にも出会えたわけだし。」

「そうだねぇ。」

「今の私は『私』だけど、また別の『私』もいるこの生活を気に入ってる。そうでもしなきゃこの世界は息が詰まって死んでしまいそうだから。」
.

⏰:10/01/21 01:06 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#513 [のの子]
 
「でもそうやって生きる私は、きっと汚い人間。だから‥家族や、昇に亮みたいな存在が大切なのよ。救われる気がする‥」

「さとちゃんとか特にじゃない?」

「そりゃ聡美は特別っ。あの子は私の宝物だもの。家の中じゃ天使よ。」

「ははっ出たシスコン。」

亮が笑うとタバコの灰が崩れて落ちる。

「‥私は十分だったの。それだけで‥なのにあの少年に見えちゃったのよ。」

「何が?」


「『希望』が‥‥」
.

⏰:10/01/21 01:31 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#514 [のの子]
 
「『希望』?そこまで言っちゃうの?」

亮が苦笑いする。

「二つの『私』を見てもあの子の気持ちは変わらなかったの。黒蝶の私も魅力的だって‥馬鹿だよね。」

そういいつつも、真琴はクスクス笑う。

「私の裏も表も見て、それでもあの子が告白してきた時‥嫌だけど、かなり嫌なんだけどね。」

「はいはい、何?」

「‥希望を感じたのと同時に‥ピンクな気分になっちゃった‥」
.

⏰:10/01/21 16:55 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#515 [のの子]
―――――――


ミーンミンミン ミーンミンミンミーン


「その後キスした事で真琴に一発殴られたけど、何回かアタックした俺に真琴はOKくれたわけ‥」

聡美は俺の横でじっと話を聞いていた。

「なんか‥まこ姉が色々キツイ言葉言ったみたいですみませんでした。」

聡美は気まずそうに頭を下げる。

「はっ?!あぁ別に気にしてないから。それに、そこも好きな所だったし‥」

「ぷっ‥そうなんだ。なら良かった。」

聡美が笑うと、俺の心は少しほっとした。
.

⏰:10/01/21 17:03 📱:SH06A3 🆔:v2ncIf6.


#516 [のの子]
 
俺は青い空を見上げる。

空には飛行機雲の白い線がうっすら浮かんでいた。


「‥すげぇ幸せだったよ。喧嘩もたくさんしたけど、いつも一緒に笑ってた。」

今でもすぐ思い出す。

あの温かくて、優しく俺を包んでくれた日々を‥

「‥本当に好きだった。」


それなのに
.

⏰:10/02/02 00:13 📱:SH06A3 🆔:Drdv5K4k


#517 [のの子]
 

俺は‥


青い空から目を反らすように、俺は前屈みになり地面を見つめた。

ジリジリとした太陽の暑い光が俺を照らしつけ、じんわりと汗をかく。

それでも俺の体は逆に冷えていった。


俺の脳裏に、あの日の光景が蘇る。


「彰君、‥‥」
.

⏰:10/02/02 00:21 📱:SH06A3 🆔:Drdv5K4k


#518 [のの子]
 
聡美がまるで太陽から俺を守るように、日傘を俺にあててきた。


「太陽に当たりすぎると危ないよ?ほら‥目眩とか起こしちゃうから。」


そう言いながら人差し指をグルグル回す聡美の姿を見つめた俺にグッと熱い気持ちが溢れ出す。

「聡美っ‥」
「ぁっ‥」

グィッ


俺が聡美を抱きしめると黒い日傘が地面に落ちた。
.

⏰:10/02/02 00:31 📱:SH06A3 🆔:Drdv5K4k


#519 [のの子]
 
「ごめんっごめんごめんごめんっ!本当にっ‥ごめん‥」

「彰君?」


真琴、お前は今なんでいないんだろう。

‥例えば俺達にいつか別れる時があったのなら、その後も真琴には笑っていてほしいって俺は願ったよ。

幸せになってほしいって願ったはずだよ。

俺は真琴の未来を奪った。

「聡美っごめん‥俺がっ‥俺が真琴を‥真琴を殺したんだ。」
.

⏰:10/02/02 00:38 📱:SH06A3 🆔:Drdv5K4k


#520 [のの子]
 
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
 

⏰:10/02/02 00:43 📱:SH06A3 🆔:Drdv5K4k


#521 [のの子]
聡美Side

ミーンミンミーン

真夏の太陽とは違って彼の体は冷たかった。

その冷たさからか、私は彼の言葉を聞いてもどこか冷静でいれた。

「‥そんな事ないよ。彰君のせいじゃ
「俺のせいなんだよっ。あいつは、俺と一緒にいて‥目の前で車に引かれた‥」

二年前、まこ姉は車に引かれた。

すぐに救急車で病院に運ばれたけど、そのまま息を引き取った。
.

⏰:10/02/11 20:15 📱:SH06A3 🆔:K3a5nuSA


#522 [のの子]
 
「そうだったんだね‥でも別に彰君のせいじゃないよ。」

私は彰君の背中に手を当てる。

すると彰君の腕から力が抜けて私から離れた。



「‥違うっ違うんだよ。あいつが引かれたのは、俺が‥」

「俺が‥なに?」

彰君はもう今にも泣きそうな、辛そうな顔をしている。

「あの時‥あいつ道向こう側にいて‥俺、真琴を呼んだんだ。そしたらあいつ笑いながら手振って走ってきた‥」
.

⏰:10/02/11 20:45 📱:SH06A3 🆔:K3a5nuSA


#523 [のの子]
 
まこ姉の笑った顔を思い出す。

「‥俺も真琴も車に気づかなくて‥そのまま車がっ‥‥‥真琴を‥」

彰君はその時の光景を思い出しているのか、顔が青ざめていく。

「あの時、俺が真琴を呼ばなきゃ‥あいつは死なずにすんだのに‥っ‥」

彰君は震える手で顔をおおう。

今の彼の目には、私じゃなくて血だらけのまこ姉が写っているのだろう。


「俺が殺したんだ‥」
.

⏰:10/02/11 21:01 📱:SH06A3 🆔:K3a5nuSA


#524 [のの子]
二年前――――

「彰、これほしい。」

真琴が雑誌に指をさす。

「ん〜?‥あぁ‥いつかね。」

「‥‥‥アンタぶっ飛ばされたいの?」
「はぁっ?」

真琴が雑誌を握り潰しながら彰を睨む。

「私は『これほしい』って言ったの。『いつか』なんて言ってないっ。アンタ私と別れたいわけ?」

「違ぇしっ!そんな高いもん買えないから言ってんだろーが!ってかそんなの中坊に頼むなよっ!」
.

⏰:10/02/12 21:55 📱:SH06A3 🆔:GylXrKEU


#525 [のの子]
 
真琴が指さしたのは指輪だった。

そりゃ買ってあげたい気持ちもあるけど、値段を見て胃が痛くなった。

「なにそれ。まるで私がカツアゲしてるみたいじゃない。」

真琴はふんっとそっぽを向く。

「あぁ〜言い過ぎたよ。ごめん。許してっ?。」

「うるさい、バカ。ハゲろ。」

「‥‥嫌いになった?」

「知らない。」

「俺は真琴の事好きだよ。」

「知ってる。」
.

⏰:10/02/12 22:04 📱:SH06A3 🆔:GylXrKEU


#526 [のの子]
 
そっぽを向いたままの真琴は、しわくちゃになった雑誌に載る指輪を見つめていた。

‥‥そんなほしいのか?

「真琴、いつか買ってあげるから。」

「いつかじゃ嫌。今すぐほしい。」

「うーん‥なんで急にほしくなったの?」

いつもの真琴はここまでワガママは言わない。

「‥学校の友達がね、この指輪を持ってるカップルは幸せになれるって言ってた。永遠に結ばれるんだって‥」

俯きにながら話す真琴のほっぺがほのかに赤くなる。

かっ可愛い‥‥‥!

⏰:10/02/12 22:12 📱:SH06A3 🆔:GylXrKEU


#527 [のの子]
 
「そういう目で見ないで。キモいから‥」

ゔっ‥
慌てて真琴から目を外す。

「やっぱやめたっ!私のキャラじゃないし、ちょっとほしくなっただけだしね。忘れて。」

雑誌をベッドに投げる。

「幸せとかは二人で作ってくもんだしね?あーきらっ。」

真琴が俺の顔を両手で掴むから、ただコクコクッと頷く俺に真琴が笑う。

「‥彰、私も好きだよ。」

チュッ

そのまま真琴は唇を重ねてきた。
.

⏰:10/02/12 22:20 📱:SH06A3 🆔:GylXrKEU


#528 [のの子]
 
「―――で、俺に金でも借りにきたの?」

竜二が頬杖をつきながら呆れた顔をする。

「違ぇよっ。俺明日からバイトするからさ、そのこと真琴に秘密にしといてほしいんだよね。」

「はっバイト?中学生なんか雇ってくれんの?」

竜二が眉間にしわをよせる。

「親の友達が小さいけどレストラン経営してんだよね。そこに頼み込んだらOK貰えた。」

俺は笑いながらピースする。

⏰:10/02/23 22:20 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#529 [のの子]
 
「ずるっ。じゃ夏休みバイトばっか?」

「‥かなぁ。OK貰えたけど時給めちゃくちゃ安いし。」

ふーん、と竜二がソファーに寄り掛かる。

「まぁ頑張って。」

「おうっ。じゃバイトの事真琴に絶対言うなよ。」

「はいはい。お前こそバレないよーにね。」



.

⏰:10/02/23 22:26 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#530 [のの子]
 
夏休み前から始めたバイトは皿洗いとか掃除とか‥

雑用ばっかだったけど、別に辛くはなかった。

まぁ一日があっという間だったし、夏休みが始まったらバイト以外は寝てばっかだった。

♪〜♪〜♪

「‥‥っ‥‥んだよ‥。」

気持ち良く寝ていた俺を携帯の機械音が起こす。
.

⏰:10/02/23 22:32 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#531 [のの子]
 
携帯を見ると竜二からで、しかも電話。

「ッチ‥‥あぁ〜いいや‥眠い‥‥」

俺は竜二からの電話を無視して、またウトウトと瞼が閉じていく。

少しして携帯も静かになった。

俺は半分寝ながら携帯を手にとって電源を切る。

‥‥はぁ‥これでゆっくり寝れる。


次の日、竜二から電話がかかってきた事もすっかり忘れて俺はまたバイトに向かった。

⏰:10/02/23 22:37 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#532 [のの子]
 
ねみぃ‥

「あっ彰君外の花に水あげといてくれる?」

「はぁい。」

俺は欠伸を我慢して、暑い夏の日差しに照らされた花に水をあげに行く。

可愛らしい白い壁のレストランの周りには、カラフルな花や小さな緑の木々が囲んでいた。

小さなレストランでも毎日ちゃんとお客さんは来るし、ランチは満席になる事がほとんどだった。

「‥商売繁盛してますねぇ。」

一人ボソッと呟きながらホースを手に水を撒く。
.

⏰:10/02/23 22:45 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#533 [のの子]
 
シャァーーー

綺麗な虹が見えた。


――――――――

「ねぇ、この前いつ会ったか覚えてる?」

「えっ?あぁ‥えっと〜‥いつだっけ?」

「一週間と二日前。」

真琴が腕を組みながら俺を見つめる。

「じゃ今何月何日?」

「8月‥23日。」
.

⏰:10/02/23 22:57 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#534 [のの子]
 
「夏休みだよね?ってかもう終わるよね?」

「‥だね。」

クーラーの効いたファミレスで、しかも飯を前にこの重い空気って‥

「アンタ夏休み何してたの?」

‥‥最悪だ。

「別に普通に生きてた。」
「バカにしてんの?」


‥‥‥やっぱ最悪だ。

⏰:10/02/23 23:01 📱:SH06A3 🆔:73lvWJ/6


#535 [のの子]
 
「ねぇバカにしてんのか聞いてんのっ。」

「してないっす‥」

旨そうな飯を前に俺の胃は心と一緒に小さくなっていく。

「私達夏休み何回あったっけ?」

「っと‥6回?」
「今日入れて5回なんだけど。」

真琴が目の前のサラダに思いっ切りフォークを刺した。

怖〜‥
.

⏰:10/02/24 01:42 📱:SH06A3 🆔:wxXIHsW.


#536 [のの子]
 
「怒ってんの?」

俺がヘラッと笑うと真琴が更に俺を睨む。

「‥はぁ‥めんどくさいんだよね、こういうの。」

「めんどくさいって‥」

サラダをむしゃむしゃ食べる真琴。

「疲れるの。ってか既に疲れた。」

チーーーン
.

⏰:10/03/04 15:29 📱:SH06A3 🆔:JoPqir2o


#537 [のの子]
 
「そんな事言うなよ。」

俺もため息混じりに言うと、真琴は相変わらずサラダを食べつづける。

こんな暑い日が続いてんのにサラダだけで生きてけんのかよ‥

「私達‥‥別れる?」

「はぁっ?!!」

俺も頼んだステーキを食べようとして手を止める。

「だって別れたいんじゃないの?」

「なんでっ?なんでそうなんだよぉ〜‥」
.

⏰:10/03/04 15:40 📱:SH06A3 🆔:JoPqir2o


#538 [のの子]
 
「お前すぐ別れるとか口にすんのやめろよ。」

「だって別れたいのかと思って。」

「あのねぇ俺は一言も言ってないし、思ってもない!」

真琴が俺のステーキをひょいっととると、口に運んだ。

「‥っ‥じゃ何なのアンタ。意味わかんない。」

「だからぁ〜‥」

「彰、言葉だけじゃ伝わんない事もあんのよ。今のアンタから‥何も伝わってこない。」

.

⏰:10/03/04 15:53 📱:SH06A3 🆔:JoPqir2o


#539 [のの子]
 
いっそお前の為にバイトして指輪買おうとしてますって言っちゃおうか..

すっげぇ悩んで無言になる俺に、真琴は悲しそうな瞳で小さくため息をした。

「もういい‥やっぱわかんない。」

「あっちょっ‥
「当分会うのやめよ。じゃぁね。」

真琴は席を立つとそのままファミレスを出ていく。

「‥‥‥どうすりゃいいんだよ、もうー!」

追いかけてもきっと返り討ちに一発殴られるだけだろうし‥

⏰:10/03/04 16:07 📱:SH06A3 🆔:JoPqir2o


#540 [のの子]
―――――

あれから本当に真琴とは会わなかった。

というか連絡してもシカトで会ってくれない。


「〜ですからぁ、真琴に会わせてくださいよっ。」

「真琴だぁ?うちの姫を呼び捨てとは良い度胸してんじゃん。ん?」

昇さんが俺のおでこをつつく。

むかっ

「そんなんより真琴に会わせてくださいって。」
.

⏰:10/03/09 23:52 📱:SH06A3 🆔:FDjxzlos


#541 [のの子]
 
「ヤダッ!」

「真琴は会いたくないらしいからさ、会わせたら俺らが怒られちゃうのよ。」

亮さんがタバコに火をつける。

「ほら、真琴って怒ると恐いし?だから無理なんだわ。」

困ったように笑う亮さん。

会いたくないって‥

「そんなの納得できなっ
「帰れ帰れぇー♪」

昇さんがニヤニヤ笑いながら拳をあげる。
.

⏰:10/03/10 19:58 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#542 [のの子]
 
真琴と付き合う事になった時、まずスノードロップの頭の二人を紹介された。

それから何回も会っているうちに仲良くさせてもらってるつもり‥だけど

「‥こんな子供っぽい人だったとは‥
「テメェ今なんつった?」

昇さんが俺を睨む。

「いや、何も言ってないです。」

ニッコリ笑う俺に昇さんも怒りを抑えるかのように笑う。

俺と昇さんの相性はあまり良くないみたいだ。
.

⏰:10/03/10 20:04 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#543 [のの子]
  
――――――
「ふーん。大変みたいだね。」

「はぁあ〜‥指輪買える金貯まっても渡す相手がいなくなっちゃ最悪だろ‥」

「確かに。」

久しぶりに竜二と会った。

「ってかもうお金貯まったの?」

「まぁね。彼女と会わずに頑張りましたから‥明日買いに行くつもり。」

「すごいじゃん。」

指輪を買って、無理矢理にでも会って渡せば許してくれるかな‥なんて。

⏰:10/03/10 20:09 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#544 [のの子]
 
「指輪のサイズとかわかんの?」
「わかる。」

真琴の指の思い浮かべる。

‥‥あぁ、触れたい。

「真琴、今何してんのかなぁ。」

「昨日真琴が来てたんだけどさ、」

へぇー

竜二のベッドに座りながらクッションを胸にボーッとする俺。

「えっマジッ?!」

クッションを投げ飛ばす。.

⏰:10/03/10 20:19 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#545 [のの子]
 
「うん。」

竜二がゲームをしながら頷く。

「まっえぇっ!連絡しろよっ!なんでしないんだし!」

「だって‥お前こっちが電話しても出ないじゃん。」

‥‥あぁ‥それは、まぁ、最近バイトで忙しくて‥
ねぇ?

「出ないのは別にいいし、バイトなのもわかってるけどさ‥そういう都合良いときだけ使うなよ。」

‥‥そぉっすよね。

「真琴がお前と会えなかった夏休み、何してたと思う?」

⏰:10/03/10 20:27 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#546 [のの子]
 
‥‥ん〜‥‥‥

「喧嘩とか?」

俺が苦笑いしながら言うと竜二がブチッとゲームの電源を切る。

「残念。正解は俺と会ってました。」

ドクンッ

「はぁっ?!!」

「したくもない勉強させられたり、漫画読んだり、そのベッドで寝たり‥
グイッ!

俺は竜二のシャツを力強く引っ張る。

「お前真琴になんか
「‥するわけないだろ。」

⏰:10/03/10 20:34 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#547 [のの子]
 
俺はジッと竜二を見つめる。

竜二は少しイラつきながら、寂しそうな目で俺を見つめ返した。

「‥はぁっわかんないの?真琴は俺といたらお前と会えるかもって思ってたんだよ。」

はっ?

「口では強がってたけどさ、俺んとこ何回も来てお前の事聞いてきたし‥」

あのワガママ姫が?

「俺に連絡する時間があれば真琴に連絡するって言ってんのに何回も来てさ。」

強くにぎった竜二のシャツからゆっくり手を離す。

⏰:10/03/10 20:42 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#548 [のの子]
 
「あいつ‥結構寂しかったんだと思う。」

そんなに?

最後に会った時とか全然そんなそぶり見せなかったのに‥

「だから俺何回も電話したろ?真琴には言ったらぶっ飛ばすとか脅されるしはっきり言えなかったのは悪かったけど‥」

「そんなっそんなのメールしろよっ!」

思わず大きな声になる。

「っ‥お前彼氏だろ?それぐらい気づいてやれよ‥」.

⏰:10/03/10 20:51 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#549 [のの子]
 
「余計なお世話だったかもしんないけどっ自分で伝えるより、人に教えてもらうよりもお前自身に気づいて欲しかったんだよっ。」

竜二もムキになるかのように大きな声を出す。

「‥‥俺ならそう思う。気づいて欲しいって‥」

俺は何も言えずにただ黙り込む。





「‥たぶん今もそう思ってんじゃないの?」
.

⏰:10/03/10 20:57 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#550 [のの子]
 
竜二が気まずそうに目が会わないよう横目で俺を見る。

「会いたくないって言ってるけど、本当は会いたいって思ってるよ。」




この時、俺は自分の未熟さと真琴に負けないほどの自分勝手さを知った。

そして真琴に会いたい気持ちが溢れ出す。

その溢れ出した気持ちが

次の日

真琴との最後の日に

繋がった。
.

⏰:10/03/10 21:07 📱:SH06A3 🆔:Dey7OGlg


#551 [のの子]
 
――――――
ザワザワ


「‥‥‥はい、ではこちらでお間違えはないですか?」

「はい、それで。」

「かしこまりました。ありがとうございます。では‥「それ、そのままケースでください。」

銀色に光る指輪を指差す。

「あっ、お包みしなくてよろしいんですか?」

「この後すぐ渡すんで。」

そうですか、と優しく笑った店員に俺はうっすら頬を赤くする。

⏰:10/03/12 22:31 📱:SH06A3 🆔:incjl1jE


#552 [のの子]
 
学生にとって大事な夏休みも終わるって言うのに朝っぱらから指輪を買いに来た俺に、店員は少し驚いていた。

まぁ俺なんてまだガキだしね..

ボーッとキラキラ光る指輪が入ったショーケースを眺める。

「お待たせ致しました。ではこちらになります。」

「どーも。」

手の平に収まる白い箱を手にとる。

‥‥やべっ緊張してきた。

「お客様にとっても、お相手の方にとってもステキな日になると良いですね。」

また優しく笑う店員と目が合う。

「‥ありがとうございました。お姉さんも良い日になるといいっすね。」
.

⏰:10/03/12 22:41 📱:SH06A3 🆔:incjl1jE


#553 [のの子]
 
「ふふっはい、ありがとうございます。」

「ありがとうございました。」

涼しい店内から出ると、暑苦しい空気にすげぇ人にため息をする。

「‥よし、行きますか。」


俺はゆっくり歩き出す。


一歩一歩を、真琴との思い出と重ねて進んでいく。


.

⏰:10/03/12 22:49 📱:SH06A3 🆔:incjl1jE


#554 [のの子]
 
初めて真琴と出会ってから

一日が 一週間が 一ヶ月が

早く過ぎていった。

それはもう止める事はできなくて、

それどころか俺はずっとそれを望んでる。

早く大人になって

真琴と一緒に

最期まで永遠に

生きていきたい。
.

⏰:10/03/12 22:58 📱:SH06A3 🆔:incjl1jE


#555 [のの子]
 
真琴の笑う顔も

怒った顔も

拗ねてる顔も

泣く顔も

全部

俺に向けていてほしい。

俺はずっと真琴に向いているから。


ねぇ真琴、俺達は今ちゃんと向き合えてる?
.

⏰:10/03/12 23:03 📱:SH06A3 🆔:incjl1jE


#556 [のの子]
 
ふっと足を止める。

「今、俺の前にいないんじゃ‥向き合えてないって事だよな。」

苦笑いしながらポケットに入れてた白いケースを手にとって見つめる。

でも、例え今そうでもこれに誓い合おう?

これからは

明日からは

今日からは

その時から..

もう俺達は

お互いを

「―っ――あ―‥きらっ!彰っ!」

見失わないって。
.
っ!

⏰:10/03/13 20:10 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#557 [のの子]
 
今、俺の名前を‥

顔を上げる。

「彰っ‥彰こっち!」

俺の名前を呼ぶ声は

「‥真琴っ?」

キョロキョロと回りを見渡すけど、人通りが多いせいで声は聞こえるのに彼女は見つからない。

「彰ぁっこっち!右っ!反対側!」

反対側って‥

道路を挟んだ向こうを見ると手を挙げてる彼女がいた。

⏰:10/03/13 20:16 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#558 [のの子]
 
「真琴っ!」

俺達の間の道には車が行き交ってて渡れそうにない。

「彰っ‥アンタ遅いっ!いつになったら会いに来んのよバカッ!」

いっいきなり説教かよ。

「会いに行ったのに会ってくんなかったのそっちじゃん!」

違う、こんな事を言いたいんじゃない。

「そんな会いに来てくれたのたった二回じゃん!もっと頑張りなさいよ!」

真琴が寂しそうな顔が車が通っていく隙間から何度も見える。
.

⏰:10/03/13 20:26 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#559 [のの子]
 
真琴の寂しそうな顔は、俺の胸を痛いくらい締め付ける。

その痛みからか、真琴に会えた喜びからか‥

なんでだろ。なんで俺が

泣きそうになってんだろ。

「‥‥ごめんっ!真琴ごめんっ!」

回りの通行人が俺達をチラチラと見つめているのがわかる。

でもそんなの今の俺には関係ない。

俺が真琴に言いたかったのはこれだけ。



「真琴っ好きだよ。ずっとずっと好きだっ。」

.

⏰:10/03/13 20:32 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#560 [のの子]
 
ずっと


ずっと


ずっと ずっと



「俺の隣に、一緒にいてよっ。」




.

⏰:10/03/13 20:34 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#561 [のの子]
 

白いケースを握り締める。

相変わらず車は俺達の間を行き交う。


「‥彰の‥‥バーカ。」


でもすき間から見えた

真琴の顔は

いつもと同じように

笑っていた。
.

⏰:10/03/13 20:37 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#562 [のの子]
 
俺も嬉しくて笑う。



でも



「  真琴っ  」



この呼び声で



キキーーーーーッ!!
ドンッ‥!



全てが終わった。


.

⏰:10/03/13 20:39 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#563 [のの子]
 








「キャーーッ!!」
「きゅっ救急車っ誰か救急車呼んで!」
「うわぁっ事故だぞっ!」

.

⏰:10/03/13 20:42 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#564 [のの子]
 








俺の前には

真琴はいない。


.

⏰:10/03/13 20:43 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#565 [のの子]
 




「ま‥こと‥‥?」


なんでか回りの音も動きも全てが感じ取れない。


ゆっくり視線を動かす。


.

⏰:10/03/13 20:46 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#566 [のの子]
 


俺の視線の先には



変にへこんだ車と



赤い血と




真琴がいた。


.

⏰:10/03/13 20:48 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#567 [のの子]
 

ゾクッ



嫌な悪寒が全身に走る。




「まこ、と‥‥‥真琴っ‥真琴っ真琴っ!」


そんな訳がない。


そんな訳がないっ。

.

⏰:10/03/13 20:51 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#568 [のの子]
 


震える足を動かす。



「君っ危ないよっ!」


誰かが俺の腕を掴もうとしたけど、俺はスルリとその腕から抜け出す。



.

⏰:10/03/13 20:53 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#569 [のの子]
 
本当は‥

誰かに止めてほしかった。


そこに行きたくなかったし、見たくなかった。


怖かった。



怖くて怖くて


心臓まで震え上がって


死んでしまいそうだった。
.

⏰:10/03/13 20:55 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#570 [のの子]
 






「‥‥‥‥‥真琴っ?」



黒くて長い髪の毛が顔にかぶさっている。


俺が呼んでもそれは動かない。

.

⏰:10/03/13 20:57 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#571 [のの子]
 




違う。 違う。 違う。



こいつは 違う。





.

⏰:10/03/13 20:59 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#572 [のの子]
 


それは体中傷だらけで


血を流していた。


頭ら辺からも血を流していた。




震える手で


それに触れる。

.

⏰:10/03/13 21:01 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#573 [のの子]
 



‥‥‥‥温かい。




そっと長い髪の毛に




触れた。



.

⏰:10/03/13 21:02 📱:SH06A3 🆔:GuEl8mtM


#574 [のの子]
 






「‥っ‥‥うぁっ‥‥あっ‥そんなっ‥‥‥」


やっぱりそれは



真琴だった。


.

⏰:10/03/14 02:09 📱:SH06A3 🆔:CSnKyBGM


#575 [のの子]
 


力なく目をつぶったまま


うっすら口からも


血が出ている。



震える手で


真琴の頬に触れる。

.

⏰:10/03/14 23:53 📱:SH06A3 🆔:CSnKyBGM


#576 [のの子]
 


「っ‥ま‥ま、こ‥‥嘘だろ‥?‥こんなっ‥」


喉がカァーッと熱くなって
声が出ない。


ボロボロと落ちる涙。


「‥っ‥やだっ‥ま‥ま、こ‥嫌だ嫌だっ‥」


真琴は動かない。

.

⏰:10/03/14 23:56 📱:SH06A3 🆔:CSnKyBGM


#577 [のの子]
 

真琴に触れる手に力が入る。


真琴っ

頼むから目を開けて

俺を見てっ‥


「真琴っ‥頼むからぁ‥っ‥!!」


グッタリとしたままの真琴を

抱きしめる。

.

⏰:10/03/15 00:02 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#578 [のの子]
 

「あっあまり動かさない方が‥頭を、強く打ってるはずだから‥」


近寄ってきた女が俺の肩に触れる。


「っ‥ぅっ‥誰かっ‥早く助けてっ‥早くしないと真琴がぁ‥っ‥早くしてくれよぉぉっ!!」


真琴を抱きしめたまま

俺は泣き叫ぶ。


.

⏰:10/03/15 00:07 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#579 [のの子]
 


その横で


手から落ちた白いケースが


真琴の血によって


赤く染まり、


俺達を見つめるかのように

ただ転がっていた。


.

⏰:10/03/15 00:10 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#580 [のの子]
 







皮肉にもその日は


彼女の17歳の


誕生日だった。

.

⏰:10/03/15 00:12 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#581 [のの子]
――――――――

ミーン ミンミン ミーン



「―‥で、病院に‥ってその後はお前の方が詳しいか‥」

彰君はふっと笑ったようだったけど、その目からは悲しみしか感じれなかった。

「私も‥病院にいたけど、彰君のこと‥気づかなかった‥」

私は俯いて握り締めて丸くなった拳をただ見つめる。

「俺は‥っ‥その後真琴に会わせてもらえなかったからさ‥」

俯く私とは逆に彰君はベンチの背に寄り掛かり上を向く。
.

⏰:10/03/15 19:10 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#582 [のの子]
 

「会わせてもらえなかったって‥誰かがダメッて言ったの?」

彰君を見つめると、彰君は黙ったまま視線を落とす。

「うちのっ‥私の家族がそう言ったの?ねぇっ?」

私が彼の服を掴む。

「‥俺のせいで‥真琴は死んだんだ。‥当たり前だろ?」

彰君も私を見つめる。


そんなっなんで‥

.

⏰:10/03/15 22:09 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#583 [のの子]
 
ポロッ

「っ‥お前がそんな悲しそうな顔すんなよ。」

私の頭を暖かい手で撫でる彰君。


こんな優しい彼なのに


どうして神様は


彼に冷たいの?


ポロッ ポロッ

私は涙が止まらなかった。
.

⏰:10/03/15 22:12 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#584 [のの子]
 

「ごっごめん、なさいっ‥ごめんね、彰君っ‥」


何も知らなかった。


あの時、私が真実を知っていたら

私の一言で

彰君とまこ姉は

最期に会えたかもしれない。


今、わかった。

彼はまだまこ姉とお別れができていないんだ。
.

⏰:10/03/15 22:16 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#585 [のの子]
 

「泣くなよ。」

「大丈夫だから。」

「仕方なかったんだよ。」

「俺が悪いんだ。」


彼が言う言葉は、
私の胸を締め付けて
涙腺を痛いくらい刺激する。


違うよ、彰君。

謝らなきゃなのは私の方‥
.

⏰:10/03/15 22:21 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#586 [のの子]
 

「‥っ彰くんっ‥ごめんねっ。」

私は彰君の服を掴んだまま涙を手で拭う。

「だから‥お前が泣く事もないし、謝る事もないんだって。」

相変わらず彰君は私の頭を優しく撫でてくれる。

でもその顔はとても悲しくて、寂しそう。

「聡美‥ごめんな。お前の姉ちゃん‥俺のせいで
「違うっ!違うよっ‥違うのぉ‥」

私はまた涙をこぼす。
.

⏰:10/03/15 22:28 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#587 [のの子]
 
「みんなっ‥まこ姉は殺されたとかこっ殺したとか‥誰のせいとかっ‥」

そんなの違う。


「違うよ‥っ‥まこ姉は、『事故』で死んだの。」


涙でぼやける彰君を真っ直ぐ見つめる。


「誰かのっせいに‥そんな事しても変わらないっ。」

まこ姉は確かに17歳というとっても短い人生だった。
.

⏰:10/03/15 22:35 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#588 [のの子]
 
多くの人から慕われて


愛されながら


私を、家族を、友人を、


そして彰君も


愛してくれた。


ただ、深い悲しみを残して


いなくなってしまった。

⏰:10/03/15 22:40 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#589 [のの子]
 

私もまこ姉が大好きだったから

だからまこ姉がいなくなった後、


まこ姉を『傷』として

残したくなかった。


「‥もし誰かのせいになるなら、飛び出したまこ姉だって悪い。なっ夏休みで車通りが多かった事も、そのせいで救急車が遅くなった事も‥」
.

⏰:10/03/15 22:50 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#590 [のの子]
 
もしかしたら

その日が晴れていたせいかもしれない。


もしかしたら

飛び出そうとするまこ姉をただ横目で見ていた通行人のせいかもしれない。

もしかしたら‥


「もしかしたら神様のせいかもしれないっ‥」

.

⏰:10/03/15 22:54 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#591 [のの子]
 

あなたが自分を責めるなら

私は神様までも責める。



「‥聡美っ‥‥でも‥」

「わっ私は‥彰君を責めない。」


彰君の頬にそっと触れる。

「まこ姉も‥彰君を責めてないよ?」
.

⏰:10/03/15 22:58 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#592 [のの子]
 
まこ姉、そうだよね?

だから私と彰君を

出会わせたんでしょう?

伝えたかったんだよね?


まこ姉の最期の言葉を‥


「『バカ、愛してる』」


.

⏰:10/03/15 23:05 📱:SH06A3 🆔:6F6KZ0zw


#593 [のの子]
 
彰君が目を見開く。

「それっ‥‥」

彼が話してくれたように

次は私が話す番だ。

「グスッ‥彰君、今度は私の話を聞いて?」


私からこの話をするのは

彰君が初めてかもしれない。

彼はどう受け止めるんだろう?
.

⏰:10/03/16 01:34 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#594 [のの子]
二年前――――


「聡美っ!」

ガバッ

まこ姉が私を後ろから抱きしめてきた。

っ!

私は驚いて持っていたお菓子を落とす。

「うわぁっごめん!お菓子がぁ‥」

申し訳なさそうにお菓子を拾うまこ姉。

私はキョロキョロとあるモノを探す。

あっ、あった。
.

⏰:10/03/16 01:38 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#595 [のの子]
 
手にとったのはノートとボールペン。

私は急いでノートにペンを走らせると、まこ姉の頭を軽く叩く。

「ん‥?」

トントンッ

顔を上げたまこ姉にノートを指で叩きながら見せる。

『ビックリした!それ最後の一個だったのになぁ』


ノートを見せながらほっぺを膨らます私。
.

⏰:10/03/16 01:43 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#596 [のの子]
 
「ごめんって〜。」

苦笑いするまこ姉。


‥二年前、当時の私は

急に声が出なくなって

会話はいつもノートに書いて伝えていた。

原因は不明で、たぶんストレスのせいらしい。

私は自分で思っていたよりも心が弱くて、いつの間にか大量のストレスを心に溜めていたらしい。

⏰:10/03/16 01:47 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#597 [のの子]
 
原因は‥‥イジメ。

昔の私は今よりも頼りなくて、いつも優柔不断な所が周りの皆は気に食わなかったみたい。

それでも嫌われないよう気を使っていたら

ある日声を失った。


更にその事もあって私はクラスで孤立していった。

まるで透明人間。

.

⏰:10/03/16 19:31 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#598 [のの子]
 

そんな私を家族は心配して学校にも話してこうやって時々休ませてくれてる。

それが良い事なのか、良くないのかはわからないけど‥

イジメとかが原因で声がでなくなるってあんまりないんだって。

まこ姉は、私は皆に自分の言葉を伝えるのに疲れちゃっただけって言ってた。

.

⏰:10/03/16 22:04 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#599 [のの子]
 
まこ姉がそう言うならそうなんだって私も思った。

でも、周りの皆はわかってくれないみたいで‥

最近はほとんど学校に行ってない。

皆の視線や声が怖かった。


「あっ聡美、今日来る?」

まこ姉が私の横に座る。

私は笑顔で頷く。
.

⏰:10/03/16 22:13 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#600 [のの子]
 
――――――

「おっ真琴だ〜♪ってさとちゃんもいるっ!」

「シスコンが来たぞーっ。」

人気のない暗い公園。

あるのはバチバチッと今にも切れてしまいそうな電灯と、いくつかの赤く小さく光るタバコの火。

「うっさい!聡美が可愛いからって騒がないの。」

まこ姉は黒くて長い髪をなびかせる。
.

⏰:10/03/16 22:21 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#601 [のの子]
 
「カッコつけてもシスコンに変わりないぞー。」

「シスコンで何が悪いの?」

亮さんのヤジを見下すかのようにまこ姉はふんっと私を抱きしめる。

「こぉーっんな可愛い妹がいたらアンタらもシスコンになるのよ。」

ベーッと舌を出すまこ姉に呆れた顔の亮さん。

「俺は妹じゃなくて良かったかも‥さとちゃん俺と付き合っ
「ぶっ飛ばすよ?」
.

⏰:10/03/16 22:25 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#602 [のの子]
 
私の手を握ってきた昇さんの胸倉を、まこ姉が絞めつける。

あはは‥いつものパターン。

それを見て周りの皆も笑い出す。


ここはスノードロップがいつも集まる錆び付いた公園。

いつも夜のこの公園には、笑い声がたえない。

.

⏰:10/03/16 22:29 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#603 [のの子]
 
まこ姉がスノードロップっていう族?に入ったのを知ったのは調度一年前。

まこ姉は小さい頃から勉強もできたし美少女だったから、家族や周りから期待されてた。

でもまこ姉はそういうのを嫌がってて、その反抗からか習い事は【少林寺拳法】に【空手】、【剣道】っていう男勝りのものばっかり。

しかも上達が早くて男の子より強くなっちゃっうんだもん。すごい‥
.

⏰:10/03/16 22:36 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#604 [のの子]
 
高校に入ってから習い事を辞めたまこ姉。

そしたら次は族に入ったって言うから驚いた。

心配する私に

『母さん達には秘密だよ?聡美にしか言わないんだからね。』

そう言って笑うまこ姉を私なんかが止める事なんてできなかった。

でも初めてまこ姉にここに連れてきてもらった時、

怖いイメージを持ってビクビクしてた私をみんなは笑って受け入れてくれた。
.

⏰:10/03/16 22:43 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#605 [のの子]
 
みんな私より年上でお兄ちゃんみたいだった。


「さとちゃん、元気してた?」

私は声が出ないからただ頷く。

「こいつと話すと妊娠するからやめな〜。」

私は声が出ないのに笑う。

「さとちゃん、さとちゃん―‥‥」


私は声が出ないのに、みんな話しかけてくれる。

私をちゃんと見て、

話してくれる。
.

⏰:10/03/16 22:49 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#606 [のの子]
 
すごいすごい

胸が温かくなる。



「あっそういえば私今度からバイトするんだ。」

「えっ聞いてないんだけどっ!」

私も初耳で驚く。

慌ててペンをとる。

『私も聞いてないよ!何のバイトするの?』

「えぇ〜‥カテキョ。」


カテキョ?

.

⏰:10/03/16 22:52 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#607 [のの子]
 
「‥家庭教師だよ。」

首を傾げる私に亮さんが耳打ちする。

あぁっ家庭教師か!

「うわっなにそれぇ〜。とうとうお前ガリ勉ちゃんかよ!」

ガリ勉ちゃんって‥

「だって時給もいいし勉強教えんのとか楽じゃない?」

「まぁ真琴なら向いてんじゃね?誰かと違って‥」

亮さんがタバコを口に昇さんを横目で見る。

「そんな目で俺を見るなっ亮チンのバカチーン!」
.

⏰:10/03/16 22:56 📱:SH06A3 🆔:kDXCdGG.


#608 [のの子]
 
「‥アホだな。」
「+バカね。」

二人の冷たい言葉と視線に昇さんは拗ねて黙り込む。

‥まこ姉バイトするんだぁ
ツンツン

「ん?どうしたの聡美?」

『バイト頑張ってね』

ノートで顔を半分隠しながらまこ姉を見つめる。

「うん、ありがとう。」
.

⏰:10/03/19 00:10 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#609 [のの子]
 
それから四日後、まこ姉の初バイトの日。

私はその日、久しぶりに学校に行ってた。

自主勉強をやってたからそんなに遅れはなかったけど、周りの目は相変わらずどこか冷たく違和感があった‥


「二ノ宮さぁん、久しぶりだね。」

同じクラスの田中さんが話しかけてきた。

私はニコッと笑う。

「声の調子はどう?」

彼女は可哀相な目で見つめる。
.

⏰:10/03/19 00:18 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#610 [のの子]
 
『まだ』

「えぇっまだ治んないんだ〜。大変だねぇ。」

私はまたニコッと笑う。

「‥いつも思ってたんだけどよく笑えるよね。私ならそんな時笑えないなぁ。」

‥‥へぇ。

「だって声出なきゃ今後の人生真っ暗じゃん?」

『そうかな?私は大丈夫だから。』

「ふーん‥まぁいいけど。」
.

⏰:10/03/19 00:25 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#611 [のの子]
 
そう言って彼女は私から離れていった。

一体彼女は何が言いたかったのだろう。

私の人生もう終わりって言いたかったの?

可哀相な人って?

‥はぁっ‥嫌みな人。

でも、何も言わずに影でコソコソ言う人達よりマシなのかもしれない。

学校で私に声をかけてくる人はあまりいない。

私はいてもいなくても同じなんだ。
.

⏰:10/03/19 00:32 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#612 [のの子]
 
相変わらず透明人間。

ってダメダメ!こんな事ばっかり考えてたら本当に、本当に声をなくしちゃう‥

喉に手をあてる。

私の声はまだここにある‥眠ってるだけなんだから。

.

⏰:10/03/19 22:20 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#613 [のの子]
 



「ただいまぁ。」

っ!

「あっお帰り〜。バイトどうだった?」

お母さんの質問にまこ姉は制服のブレザーを脱ぎながら眉間にシワをよせる。

「あぁ‥なんか無愛想な男の子だった。でも勉強できなくはなさそうだったよ。」.

⏰:10/03/19 22:25 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#614 [のの子]
 
へぇ〜、男の子なんだ。

「確か聡美と同い年だったっけ?」

「そうそう。」

同い年‥どこ中だろ?

「ってか初めての授業で友達連れて来たんだけど。しかもその子帰んないし、やりづらかった〜。」

はぁっとため息をつくとまこ姉は制服のまま私の隣に座る。

『その子も勉強教えてほしかったんじゃない?』

.

⏰:10/03/19 22:29 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#615 [のの子]
 
ノートを見せるとまこ姉は

「お金くれるならいいけどタダはなぁ‥」

って腕を組んで笑った。

「あっそれより今日学校どうだった?」

『変わりないよ。』

「そっか。よしよし‥」

そういって私の頭を優しく撫でてくれた。
.

⏰:10/03/19 22:35 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#616 [のの子]
 
それから二人でお菓子をポリポリ食べていると

「お母さーん‥って真琴帰ってたんだ。」

「ただいまぁ。」

桜姉が階段から下りてくると、私達の隣に座った。

「制服シワになるから着替えたら?ねぇお母さん、この前頼んだカメラ現像しといてくれたぁ?」

べぇっと舌を出すまこ姉を無視して桜姉がお菓子をひょいっと摘む。

「あぁあれ‥確かあと一枚余ってたからまだ出してないね。」
.

⏰:10/03/19 22:43 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#617 [のの子]
 
「えぇっ!!」

「じゃあと一枚撮っちゃってね。」

はいっと手渡してきたのはインスタントカメラ。

「うわっそれ使ってる人久しぶりに見たっ!ぷっウケんだけどっ。」

まこ姉と二人で笑っていると桜姉はムスッとしてほっぺを膨らます。

「うっさいなぁ。デジカメ忘れちゃったのよ。ほらっ写真とるよっ!お母さん撮ってー。」

桜姉がギュッと体を寄せてきた。
.

⏰:10/03/19 22:49 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#618 [のの子]
 
「はいはい‥撮るよ〜?」

三人笑って合図する。


ハイッチーズ‥


パシャッ




三人で写った写真は


この日撮ったのが最後になった。


.

⏰:10/03/19 22:53 📱:SH06A3 🆔:vmyLW.8k


#619 [のの子]
 


「真琴にキングリーの事言ったぁ?」

「まだ言ってない。」

昇さんと亮さんと三人でブランコに乗って揺らす。

キングリーってなんだろ?

「今回は真琴も参加してほしいんだけどなぁ。」

「久しぶりだしな。」

‥‥キング‥キング‥リー?
王様のリー???

???

「さとちゃん、キングリーってのは集会の事だよ。」
.

⏰:10/03/21 21:06 📱:SH06A3 🆔:Bt1lxJU2


#620 [のの子]
 
また亮さんが耳打ちしてくれた。

集会?そんなのあるんだ‥

『危なくない?』

「あぁ、大丈夫だよ。ただ他の族と話すだけだから。」

亮さんの優しい笑顔にほっと安心する。

「真琴今日もバイト?」

うん、と頷く。

.

⏰:10/03/21 21:09 📱:SH06A3 🆔:Bt1lxJU2


#621 [のの子]
 
現在の時刻、16時26分。

夜じゃない今の昇さん達は制服で、学校帰りの普通の不良っぽい高校生。

時々三人こうやってまこ姉を待ってたりする。

「キングリーの事話したかったのになぁ。もうすぐだし‥」

昇さんがうーん、と首を曲げる。

「あっさとちゃんメールしてみてよ〜。そしたらあいつ絶対来るし♪」

えっ!

「今回だけっね?」

昇さんが両手を合わせてお願いしてくる。

⏰:10/03/21 21:19 📱:SH06A3 🆔:Bt1lxJU2


#622 [のの子]
 
たぶん私がメールすればまこ姉はすぐ来てくれるだろうけど‥

『その後どうなっても知らないよ?』

「え?平気平気〜♪」

手をヒラヒラ揺らす昇さんを横に私はメールを打つ。





30分後、まこ姉は公園に来てくれた。
.

⏰:10/03/24 19:44 📱:SH06A3 🆔:m9iHNUa2


#623 [のの子]
 
「聡美連れてなにやってんの?」

まこ姉は昇さん達を呆れた目つきで睨む。

「真琴が最近つれないからさ、さとちゃんを勧誘してたの♪」

「はぁ?冗談よしてよ。」

三人用のブランコの前でまこ姉は立ったまま腕を組む。

「冗談はいいから本題に入ろうよ。」

亮さんがタバコの煙りを空に向かって吐く。
.

⏰:10/03/24 19:50 📱:SH06A3 🆔:m9iHNUa2


#624 [のの子]
 
「本題って何?」

「ん〜‥実は今度キングリーがあるんだよねぇ。で、お前も参加してねって話。」

まこ姉の眉間にシワがよる。

「嫌に決まってんじゃん。」

「ダメ〜。これは命令だからねぇ♪」

まこ姉とは反対に昇さんはニコニコ笑う。

「やだってば!私がそういうの好きじゃないの知ってるでしょ?」
.

⏰:10/03/24 19:55 📱:SH06A3 🆔:m9iHNUa2


#625 [のの子]
 
「だから命令してんじゃん。お前だってスノードロップの上に立つ存在ならそれなりの行動しろ。」

亮さんがまこ姉を見つめる。

想像以上の空気の重さに私はじっとその場で固まる。

「ムカつく言い方‥」

ふっと鼻で笑うまこ姉に、昇さんが立ち上がって目の前に立つ。

.

⏰:10/03/25 01:12 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#626 [のの子]
 
「場所は前と同じ所‥バレないはずだよ。お前のもう一つの顔を汚す事はない。」

まこ姉は学校では普通の女子高生として過ごして、夜のスノードロップでは黒蝶の名前を持つ。

その二つの真逆の仮面を被る生活が、どこか私の心を満たしてくれる‥

前にそんな事を口にしていた事を思い出す。

「頼むよ、お前もスノードロップの仲間だろ?」

優しく笑う昇さんをじっと見つめるまこ姉。

「‥‥はぁ、総長に頼まれちゃ行くしかないか。」
.

⏰:10/03/25 01:22 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#627 [のの子]
 
「おっ珍しく素直じゃ〜ん♪いつもこうなら可愛いのにね、真琴ちゃんっ♪」

昇さんがまこ姉の頭をクシャクシャ撫でる。

「ちょっ、もう!やめてよね。ぶっ飛ばすよ?」

「恐い事言わないのー。」

そんな事言いながらまこ姉はクスクス笑っていた。

やっぱ仲いいなぁ〜

私もニコニコして見つめる。

⏰:10/03/25 20:08 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#628 [のの子]
 
「本当真琴にしては珍しく素直で恐いな。」

亮さんもタバコを手に笑う。

「なんか最近若い子達に影響されてるのかも。私も純粋で可愛らしくなってきたでしょ?」

首を傾げるまこ姉は確かに可愛い。

「いいなぁ♪俺も若いエキスがほしいよぉ〜。」
「ってか高校生がいう言葉じゃねぇだろ。」

『生徒さんの影響?』

私がノートを見せるとまこ姉はニヤッと笑う。
.

⏰:10/03/25 20:15 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#629 [のの子]
 
「なんかあいつら面白いんだよね〜。でもちょっとめんどくさい所もあるんだけど‥」

何かを思い出してクスクス笑うまこ姉。

「からかって遊んでんな?」

「遊んでないしっ。なんか私には持ってないモノ持ってて‥ちょっとこの子を見てたいなーって思う。」

「うわぁっ年下なんてやめとけ〜。俺が許さん!」

昇さんがフンッとそっぽを向く。
.

⏰:10/03/25 20:20 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#630 [のの子]
 
「別に興味深いって話でしょうが。ってか聡美、もう帰ろ。」

手招きするまこ姉に走って近づくと、まこ姉から知らない家の匂いがした。

甘い甘いお菓子みたいな匂い。

「じゃあね。」
「おう、キングリー忘れんなよ。」
「さとちゃんばいばーい♪」

昇さん達に手を振って公園を出る。

.

⏰:10/03/25 20:25 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#631 [のの子]
 
ツンツン
「ん?なぁに?」

『生徒さんと仲良しなんだね。』

「あぁ、仲良しっていうか‥一人は一方的に好いてくれてて、もう一人は問題児なだけだよ。変な奴らでしょ?」

そう言いながら優しく笑うまこ姉。

『相変わらず友達はいつも来るの?』

「そうそう、なんか私の事気に入っちゃったみたい。」

気に入ったって‥まこ姉の事好きなのかな?
.

⏰:10/03/25 20:30 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#632 [のの子]
 
『問題児は?』

「その子さぁ‥なんか嫌な奴がいてね、そいつのせいでグレちゃってると思うんだよね。」

嫌な奴?

「たぶん‥本当は優しい子なんだと思う。でもそこが弱さになっちゃってんだよ。聡美とちょっと似てるかもね。」

私と似てる‥?

『その人には誰か守ってくれる人はいないの?』

私にまこ姉達がいるように‥その人には誰かいないの?

「‥‥‥いない、かも。」.

⏰:10/03/25 20:39 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#633 [のの子]
 
一人ぼっち。

そんな言葉が頭に浮かんだ。

私はまこ姉達がいてすごいすごい助けられてる。

なのにその人にはいないんだ‥

もし私も一人ぼっちだったら
「でも大丈夫だよ。その子にはいっつもくっついてくる友達と私がいるから。」

まこ姉が俯く私の頭を優しく撫でてくれた。

この手の温かさが、いつか彼にも届きますように‥‥

ひっそりと声のない言葉を呟いた。

⏰:10/03/25 20:45 📱:SH06A3 🆔:t5AGYcKM


#634 [のの子]
 
―――――――



ガチャ キィーー ‥パタン



あっ帰ってきた‥


もう時計の針が1時をさそうとしている。

もう家で起きてるのは私だけ。あとの皆は寝ちゃって時計の音しか聞こえない。

静かに階段を下りていくと、リビングに明かりがついていた。
.

⏰:10/04/05 22:01 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#635 [のの子]
 
ジャーッ

洗面所から勢いよく流れる水の音が聞こえる。

私はそのままソファーに座ってテレビをつける。音量を小さくしていると

「うわっっ!ビックリした〜‥起きてたんだ。」

顔を洗ったまこ姉が苦笑いしているのを見て私は笑いながら頷く。

「夜更かししちゃダメっしょー?お母さんに怒られるよ?」

お茶の入ったコップを手にまこ姉が隣に座る。

『大丈夫だよ。それより今日集会だったんでしょ?』

「それよりって‥ったく、そうだよ。超ー疲れた!」

⏰:10/04/05 22:21 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#636 [のの子]
 
『喧嘩とかじゃないよね?』

「違う違う、会議みたいなもんだよ。エリア内の各グループの情報を交換し合うの。」

『エリア?』

「一応エリアみたいなのがあるのよ。グループで占めてる場所によって分けられてても時には助け合いも必要だからね。」

へぇ〜‥

『他にどんな人達がいるの?』

「バカばっか。」
.

⏰:10/04/05 22:28 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#637 [のの子]
 
「喧嘩バカに格好つけバカ、仏頂面バカに短気バカ‥あとねー」

ムスッとしながらまこ姉が話しているのを私はクスクス笑いながら聞く。

「―‥本っ当に今回のキングリーは最悪だったの。バカばっかだしヒール履いてったのに走ったし、と思ったらあいつっ‥‥あぁーなんでもない。」



『なに?あいつって?』

「えっ?なんでもないっなんでもない。」

焦ったように笑いながらまこ姉。
.

⏰:10/04/05 22:39 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#638 [のの子]
 
「‥あぁ‥聡美はさ、将来の夢ある?」

急に話が変わってキョトンとする私。

「なんでもいいから、ある?」

夢か‥

『わかんないや。今の私ならただ皆に心配かけない強い人になりたい、かな?』

「こらっ弱気な事言わないの。」

『まこ姉は?』
.

⏰:10/04/05 22:51 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#639 [のの子]
 
「私はねぇ‥大好きな人のお嫁さんになって幸せにする事。私が幸せにしてあげたいなぁって。」

恥ずかしそうに話すまこ姉の横顔は、今まで見た事がない女の子の表情だった。

『意外!』

私は目をパチクリさせながらまこ姉を見つめた。

「だよね‥自分でもこの夢恥ずかしいもん。」

うぇっと舌を出して嫌そうな顔をする。

『でも素敵な夢だよ!』

「‥そう?」

うんっ!と勢いよく頷く。.

⏰:10/04/05 22:59 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#640 [のの子]
 
「きっとそんな事言ってくれるの聡美だけだよ〜。」

ガバッと抱き着いてきたまこ姉。

あはは、まこ姉可愛い♪

「‥よく結婚する人と出会った時ピンッとくるものがあるっていうけど‥まさかあの子とはなぁ‥はぁ〜〜。」




ボソボソと耳元で話していてよく聞き取れない。

トントン

「んー?」

私から離れたまこ姉のほっぺはうっすらピンク色に染まっていた。

⏰:10/04/05 23:06 📱:SH06A3 🆔:eteQEc9g


#641 [のの子]
 
なんか変‥

『やっぱり何かあったんでしょ?』

「えっないないっ!」

ジーッとまこ姉を見つめると、まこ姉は少しずつ目をそらす。

『ほらっ今目そらした!』

「コラコラッそれぐらいで人を疑うんじゃないの!」

笑いながらまこ姉は立ち上がると、お風呂に入ってくるっと言ってリビングからそそくさと出て行った。

‥逃げられた〜。

フンッと傍にあったクッションを抱きしめる。


「あれ、聡美か。」
.

⏰:10/04/30 09:17 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#642 [のの子]
 
っっ!!

ビックリしてドアの方を見ると、そこにはお父さんが立っていた。

「てっきり真琴かと思ったんだけどなぁ‥ん?あぁ、真琴は風呂入ってんのか。」

欠伸をしながらお父さんは冷蔵庫からミネラルウォーターを出す。

「聡美も飲むか?」

私は首を横に降る。

お父さんはそうか、と言いながら小さなグラスに水を注ぐ。

「‥こんな時間に二人で内緒話か?」

優しく笑うお父さん。
.

⏰:10/04/30 09:22 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#643 [のの子]
 
『内緒。』

「ははっそれも内緒か。」

『起こしちゃった?』

「いや、なんか目が覚めただけだよ。そういえば今日真琴と話してないなぁ‥いや、もう昨日か。そう思ったらついね。」

私はつい笑ってしまう。

『それだけで起きてきたんだ?』

「それだけなんて言うなよ。普段仕事ばかりの父さんにとっては大事な事なんだからさ。」

そう言って最後の一口の水を飲み終えるとお父さんはゆっくり立ち上がる。

「じゃ父さん寝るよ。肝心の真琴は長風呂みたいだしな。おやすみ。」

おやすみの代わりに私が手を振ると、お父さんも手を振ってリビングから出ていった。

⏰:10/04/30 09:33 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#644 [のの子]
 
私ももう寝ようとテレビを消す。

【もう寝るね。おやすみ。あとお父さんが起きてきて、まこ姉と話せないの寂しがってたよ〜。笑】

クスクス笑いながらメモを置いて自分の部屋に向かう。

ベッドに入ると、案外すぐに夢の世界に入っていった。



.

⏰:10/04/30 09:38 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#645 [のの子]
――――――――

「なんか最近真琴おかしくない?」

桜姉が私に耳打ちをしてきた。

「この前まで機嫌良く出かけてたのにさ、最近機嫌悪くない?」

テレビを見ているまこ姉を見ると、クッションを握りしめながらただボーッとしていた。

確かにそうかも‥

『元気ないね。』

「だよねっ!?真琴ってあんま自分の事話さないから心配で‥何か聞いてない?」

私が首を横に振ると桜姉も私も、っとため息をつく。.

⏰:10/04/30 09:47 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#646 [のの子]
 
夏休みに入る前、まこ姉はバイトと言ってよく出かけるようになった。

たぶん全部がバイトな訳じゃないだろうけど‥

でも確かに機嫌良くて、いつもは歌わない鼻歌まで歌っちゃうぐらいなんだからかなりのご機嫌。

それを家族の私達は驚きながらも、笑いながら見ていた。

だってそれはまこ姉にとって嬉しい事や幸せな事があったって事だしね。

‥‥‥なのにそれが今は全く逆になっちゃったもんだからビックリ。
.

⏰:10/04/30 09:53 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#647 [のの子]
 
元気もなければ機嫌も悪くなってくし‥

それに時々寂しそうにしているのが気にかかる。

「真琴の事だし聞いても教えてくれないんだろうね。」

桜姉がため息をつく。

本当にどうしたんだろう‥



私達の気持ちを余所に、あの日が一刻と近づいてきていた。

⏰:10/04/30 20:53 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#648 [のの子]
 
――――――数日後

ツンツン

「なぁに〜?」

『まこ姉もうすぐ誕生日だね。』

「あぁっそういえばそうだね。もう17歳かぁ‥」

ふっと笑いながら瞳を伏せるまこ姉。

まこ姉の普通を装いながら時々見え隠れする寂しげな顔は、私までも悲しくする。

でも、だからこそ私は元気でいなくちゃ‥


『プレゼント何がいい?』

「ん〜いいよ。」

『ダメ!言ってくんなきゃ秘密バラすよ?』

「おやおや、プレゼントあげる為に脅すとは聡美もなかなか悪い子に育っちゃったねぇ。」

ニヤニヤ笑うまこ姉をムスッとしながら睨む。

「‥‥‥‥っもう、わかったわかった。」
.

⏰:10/04/30 21:04 📱:SH06A3 🆔:JQWBh9gs


#649 [のの子]
 
「って言っても急には出てこないしなぁ‥あっじゃぁさ、今度買い物行こうよ?その時選ぶから。ねっ?」

『うん。一緒に買い物久しぶりだしね。』

「だね。桜姉も来るかな?」

『じゃ私が伝えとく!』

「うん、ありがとね。」

まこ姉が笑いながら優しく頭を撫でてくれた。
.

⏰:10/05/11 23:19 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#650 [のの子]
――――――――


はぁ、今日も暑いなぁ‥

「あれ、二ノちゃん?」

っ!

ビックリして振り返ると同じクラスの花嶋さんが立っていた。

「ってアイス食べてるし。あっ買い物?」

アイスを食べながらスーパーの袋を持つ私に笑顔で話す花嶋さんの手にもスーパーの袋があった。

「あははっ私も。」

両手がふさがってるは私はただニコッと笑う。

夏休みに入ってから学校の子と会うのは初めてじゃなかったけど、話し掛けてきたのは花嶋さんが初めてだった。

⏰:10/05/11 23:32 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#651 [のの子]
 
「私もアイス買えば良かったぁ〜。あっ帰り道途中まで一緒だよね?せっかくだし一緒行こうよ。」

そう言って私の返答を確認しないでテクテクと歩きだす花嶋さんの後を私はゆっくりついていく。

「あっつ‥二ノちゃん宿題やった?」

私はアイスを口に入れながら首を振る。

「私も。私特に自由研究嫌いなんだよねぇ。研究って私ら学者じゃないっつーの。ね?」

私はまたニコッと笑う。

花嶋さんとは、三年生になってから同じクラスになった。

⏰:10/05/11 23:38 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#652 [のの子]
 
それまで話した事もなかったし、特に関わる事もないと思ってた。

でも、彼女は私に普通に話し掛けてきた。

花嶋さんは独特の雰囲気を持っていて、皆から好かれてもいるけど一人でも全然平気そうにしている。

だからなのかな?

私にも普通に話し掛けてくる。

否定でも哀れみの目でも見つめない彼女が、私は好き。

⏰:10/05/11 23:45 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#653 [のの子]
 
「じゃ私こっちだから。宿題頑張ろうねぇ〜。」

手を振る花嶋さんに私も手を振る。

『ばいばい』

音のない声で、私は花嶋さんの後ろ姿に呟いた。

他の人から見ればただの口パクにしか見えないだろう。

すると花嶋さんが振り返って笑いながら手を挙げた。

「ばいば〜い。」

.

⏰:10/05/11 23:51 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#654 [のの子]
 
えっ?私の声‥聞こえたの?

キョトンしながらも私も慌てて手を振った。



また一人歩く帰り道で考える。

あの時声は絶対出てなかった。

でも本当に私の声に反応したのかと思った‥

なんだったんだろう?ってただの偶然かな。
.

⏰:10/05/11 23:57 📱:SH06A3 🆔:SDZ/VAsU


#655 [のの子]
――――――――

そしてついにあの日がやってきた。

大切な人を失う日が‥‥




「聡美っそろそろ起きなって言ってんでしょ!」

その日は朝から蒸し暑くて、私はなかなか起きれないでいた。

「今日真琴と買い物行くんでしょ?真琴ならもう先出たよ。」

ガバッ!

なんでって顔をする私にお母さんは横目で

⏰:10/05/12 00:02 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#656 [のの子]
 
「一時半に駅の改札前で待ち合わせだって。桜もその時間まで図書館行ってくるって行っちゃったからね。」

えぇ‥なんか私置いてけぼり。

欠伸をしながらノロノロと起き上がる。

時計を見るとまだ10時で、今の蒸し暑さからお昼頃には更に暑くなるんだと思ってため息をつく。


『ケーキ何のケーキにしたの?』

「普通のショートケーキ。」

『ご飯何にするの?』

「んー‥そうめん。」

『えぇーっ誕生日だよ?お祝いなんだよ?』

「じゃ冷し中華。」
.

⏰:10/05/12 00:12 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#657 [のの子]
 
じゃ冷し中華の意味がわかんないんだけど‥

お母さんと二人でお昼ご飯を食べながらまこ姉の誕生日の話をしていた。

もうすぐ12時半になる。

そろそろ行かないと‥

『桜姉は図書館からそのまま行くのかな?』

「荷物あるし戻ってくるんじゃない?」

そっか。

この夏休みに桜姉は何回図書館に行ったんだろう。
勉強しやすいし、調べ物もできるからって毎週通うとこは桜姉の真面目さを表してる。
.

⏰:10/05/12 22:13 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#658 [のの子]
 
ガチャッ
「ただいまぁ。」

あっ 桜姉だっ!

「はぁっ本当この暑さイライラする〜。聡美もう用意できてる?」

汗を拭きながら桜姉は冷蔵庫を開ける。

「ちょっと待ってね。なんか飲みたい。」

私は笑いながらバッグを手に持って桜姉を見つめる。

「桜、帰りにケーキ貰ってきてね。」

「ん〜、わかった。」

.

⏰:10/05/12 22:18 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#659 [のの子]
 
この時、私達家族はまこ姉の誕生日を祝う夜を想像してたと思う。

蝋燭を吹き消すまこ姉に

おめでとうっと笑う私。

プレゼントを渡す桜姉を

優しく見つめるお父さんと

ケーキを五人分に分けるお母さん。


そんな今までと同じ誕生日のはずだった。

でも、違った
.

⏰:10/05/12 22:23 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#660 [のの子]
 
私達が家を出ようと玄関に立った時、電話がなった。
♪〜♪〜♪〜♪〜

「お母さん、電話ぁ!」

「はいはい。」

お母さんが電話にでる。

「やばっ間に合うかな‥一応真琴にメールしとこっか。」

桜姉が私を見て苦笑いしながら、携帯を開く。

私はメールを打つ桜姉の横に立って、ふっとお母さんを見た。

‥‥‥? お母さん?
.

⏰:10/05/12 22:29 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#661 [のの子]
 
お母さんは口を震わせながら真っ青な顔をしていた。

「ちょっちょっと待ってくださいっ!」

急に大きな声を出したから私と桜姉はビクッと肩を揺らす。

「そんなっ‥本当にうちの子なんですかっ?‥でもっ‥っ‥だっ大丈夫なんですよねっ?たいしたことないんですよねっ?」

私達は訳がわからずただお母さんを見つめる。

「そんなっ‥‥」

お母さんはそのまま電話を置くとただ呆然と立ち尽くす。

「なにっ?お母さん今の電話何かあったの?」

.

⏰:10/05/12 22:37 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#662 [のの子]
 
桜姉が真剣な顔付きで少し大きな声で話す。

「‥‥真琴がっ‥なんであの子が‥‥」

そう言うとお母さんはボロボロと目から涙を流す。

「ちょっなんなの?真琴に何かあったのっ?」

桜姉は靴を脱いでお母さんに駆け寄る。

私もお母さんの取り乱した姿に驚きながらもその後を追いかける。

桜姉がお母さんの背中をさすると、

「っ‥あっ‥あの子‥事故った、みたいで‥っ‥重体‥でっ‥びょ病院に‥急いで来てくれっ、て‥」

お母さんは手で顔を覆いながら、小さく震える声を搾り出した。

⏰:10/05/12 22:47 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#663 [のの子]
 




――――――――――

「真琴っ真琴はっ?」

「落ち着いてくださいっ。今からお話しま
「大丈夫ですよねっ?あの子大丈夫なんですよね?」

「ですからっ今からお話しするので落ち着いてくださいっ!」

取り乱すお母さんの肩をお医者さんが掴む。

「‥おいで。」

仕事場からかけつけたお父さんがお母さんの手をとって横に座らせる。

⏰:10/05/12 23:03 📱:SH06A3 🆔:fbiQYKBo


#664 [のの子]
 
桜姉と私は体を寄せ合ってただ泣いていた。

「‥娘さんですが、乗用車にひかれたらしく運ばれてきた時点で既に意識不明の重体でした。身体の外傷は擦り傷と肋骨や腕の骨折と命に関わるほどのものではなかったです。‥ですが娘さんは臓器の破裂、そして頭を強く打っています。」

「‥先生、はっきり言ってください。」

お父さんがしっかりとお母さんの肩を掴む。
.

⏰:10/05/13 10:57 📱:SH06A3 🆔:tVY7tLZs


#665 [のの子]
 
一瞬間を置くように、お医者さんが息を吐く。



「‥残念ですが、我々の精一杯の力でも娘さんの命を助けることは厳しいかと‥」

っっ!

そんなっ‥それって

泣き崩れかかるお母さんを、うぅっと唸るように涙を流すお父さんはしっかりと抱きしめる。

桜姉は私の手をグッと握って小さな悲鳴に近い声をあげた。

.

⏰:10/05/13 11:09 📱:SH06A3 🆔:tVY7tLZs


#666 [のの子]
 
まこ姉が死んじゃう?

そんなのウソ。

信じないよ‥

信じられるわけない。

今日一緒に買い物して

プレゼントを買って

みんなでまこ姉の17歳の

誕生日を祝うんだから‥



まこ姉、どこにいるの?

.

⏰:10/05/13 11:12 📱:SH06A3 🆔:tVY7tLZs


#667 [のの子]
 
私は立ち上がるとまこ姉がいるはずの病室へ走る。

「ぁっ‥聡美っ!」

桜姉が私を呼んだけど、誰も止めようとはしなかった。


ガラガラッ


ピッ ピッ ピッ


‥‥っ‥まこ姉‥‥

.

⏰:10/05/13 22:41 📱:SH06A3 🆔:tVY7tLZs


#668 [のの子]
 

そこには見るだけで痛々しいほどの包帯と点滴、呼吸機をつけたまこ姉がいた。

「真琴っ!!」

私の後からお母さん達も病室に入ってきた。

「こんなに‥っ‥真琴‥」

まこ姉の手を握ってお母さんはシーツに顔を埋める。

「ッ‥クッ‥嫌だ‥死んじゃ嫌だよっ真琴っ‥」

桜姉は反対の手を握って、起きてと言うばかりにまこ姉の手を揺らす。

.

⏰:10/05/13 22:52 📱:SH06A3 🆔:tVY7tLZs


#669 [のの子]
 
いつも強く自分の道を真っ直ぐに生きてるまこ姉は、私の憧れだった。

でも今傷だらけのまこ姉を見て、人の命のはかなさと弱さを思い知る。

そして自分の無力さにも‥

皆がまこ姉に泣きながら声をかけてるのに、私はただ泣く事しかできない。

まこ姉に伝えたい事はたくさんあるのに。

まこ姉死なないで

私もそう言いたかった‥
.

⏰:10/05/14 11:14 📱:SH06A3 🆔:EuBew5nc


#670 [のの子]
 





「‥っ‥‥あっ真琴?真琴っ!わかるっ?真琴っ!」

私達が病室に入ってから2時間が過ぎた頃、まこ姉がうっすらと目を開けた。

後からお医者さんから聞いた話だと、少しだけでも意識を取り戻した事は奇跡に近いらしい。

「真琴っお母さん!わかる?」

まこ姉はゆっくり瞳だけ動かして私達一人一人の顔を見つめる。
.

⏰:10/05/14 11:18 📱:SH06A3 🆔:EuBew5nc


#671 [のの子]
 
「真琴ここ病院だよ?わかるっ?」

その時私達はこのまままこ姉は助かるって思った。



でも、違うって事に私は一人早く気づく。

たぶんまこ姉自身が一番わかっていたんだと思う。


「真琴?なに?なんて言ってるの?」

まこ姉は唇を震わせながら口を微かに動かした。
.

⏰:10/05/14 11:22 📱:SH06A3 🆔:EuBew5nc


#672 [のの子]
 


「‥あ っ  ‥   」

そこにいる誰もがまこ姉の声を聞き取れず、その事がまた胸を苦しめる。


でもまこ姉はいつもと同じように笑った。

「‥ ‥ ね っ ‥」


っ!

その時、確かに一瞬まこ姉は私を見つめて笑った。


うん‥ うん

わかる。
わかるよ、私には。
.

⏰:10/05/14 11:30 📱:SH06A3 🆔:EuBew5nc


#673 [のの子]
 
まこ姉の言葉は‥ちゃんと私には伝わってるから。



「 ‥ っ‥かっ‥ 」


最後、一筋の涙を流してまこ姉はまた意識をなくした。



そして、


その後目が覚める事なく


まこ姉は



逝ってしまった‥


.

⏰:10/05/14 11:38 📱:SH06A3 🆔:EuBew5nc


#674 [のの子]
 




――――――――


ミーンミンミンミーン


「彰君、私ね‥まこ姉が死んじゃってから今みたいに話せるようになったの。‥やっぱり変に思う?」

俯きながら黙って聞いてくれてた彰君が顔をあげる。
.

⏰:10/05/15 22:23 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#675 [のの子]
 

「思わないよ。むしろ今、お前とこうやって話せて良かったって思うし‥」

「そっか、ありがと‥それ結構嬉しいかも。」

私が照れながら笑うと、彰君も笑ってくれた。

「あのね‥私が話せるようになったの、まこ姉のおかげなの。」

私達は真っ直ぐ前を見つめる。


「私の声は‥まこ姉の最期の言葉を伝えるために、戻ってきたの。」

.

⏰:10/05/15 22:36 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#676 [のの子]
 
ふわっと風が吹くと髪を揺らす。


「‥‥‥あいつの最期の言葉って?」

彰君はベンチに足をのせると体育座りをして自分の肩を掴んだ。

私は前を向きながら、まこ姉の顔と最期の言葉を思い浮かべる。


「『ありがとう、ごめんなさい』」


これを話した時のお母さん達は、悲しげに笑っていた。

⏰:10/05/15 22:43 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#677 [のの子]
 

「『よろしくね』」


たぶんこれは私に言ったんだと思う。


最期の言葉を私にたくす、そんな意味があったんだろう。


そして


本当に


本当の‥

まこ姉の最期の言葉。


.

⏰:10/05/15 22:45 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#678 [のの子]
 


「『バカ、愛してる』。

‥この言葉だけ、誰にたいしてなのかわからなかったんだ。バカなんて私達家族には言わないと思って。でも、今ならわかる‥」

彰君はギュッと肩を掴む手に力を入れる。


「この言葉は、まこ姉から彰君への最期の言葉だよ?」

私は優しく彰君の手に触れる。

彼の手は微かに震えてて、でも温かい。
.

⏰:10/05/15 22:55 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#679 [のの子]
 

「っ‥違うかもだろ‥」

「そんな事ない。彰君からまこ姉の話聞いて確信持てたもん。」

彰君はまだ俯いたまま肩を掴む。

「まこ姉は最期もふざけ半分で『バカ』って言ったんだろうけど『愛してる』は、本当の気持ちを彰君に言ったんだよ。」

「‥っ‥‥でも‥」

「まこ姉らしい告白でしょ?そう思わない?」

.

⏰:10/05/15 23:05 📱:SH06A3 🆔:ryUNYQxE


#680 [のの子]
 

「‥‥っ‥‥でも‥俺は‥」

キュッと丸くなって黙り込む彰君は小さくて、子供のように感じた。


「彰君、もういいよ?‥もう自分を許してあげて?」

もういいよ。

まこ姉を死なせてしまったと思う自分。

助けられなかった自分。

生きている自分。

お願い‥もう彰君自身を、許してあげて。
.

⏰:10/05/16 22:22 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#681 [のの子]
 

「まこ姉は死ぬ時ちゃんと死を受け入れてた‥」

だから最期の言葉が生まれたの。

「最期の言葉に憎しみも後悔もなかった。それどころか‥愛がこもってたって思う。」

一緒に生きてきた家族へ..

恋人の彰君へ..


「彰君‥彰君は生きて。今を精一杯生きてほしい‥生きてまた誰かを好きになって幸せになって?」
.

⏰:10/05/16 22:31 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#682 [のの子]
 
「それでもまだ自分を責めるなら‥償って。」


まこ姉の人生の分


「心から好きになった人を幸せにしてあげて?」


まこ姉の夢を


「‥いつか結婚して、彰君がその人を幸せにするの。それがまこ姉の夢だったから。」


まこ姉が愛した彰君が叶えてあげてほしい‥


「それが償い‥だよ?」

.

⏰:10/05/16 22:40 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#683 [のの子]
 


「‥ッ‥‥そんなのが‥償いかよ‥」


「うん‥」


「‥‥俺は‥本当に、真琴を愛してた。」


「うん、わかってる。」


「忘れられる訳ないっ‥」

「うん。」
.

⏰:10/05/16 22:43 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#684 [のの子]
 
「‥っ‥‥忘れない‥‥」

ベンチの上に置いていた私の手に彰君の手が重なる。

「でも‥‥‥俺は‥前に進んで‥」

「いいよ‥進んでいいの。」

私は彰君の手をキュッと握る。




「   うん‥  」


彰君がキュッと握り返すように力を入れた。



「‥ありがとう、聡美」


.

⏰:10/05/16 22:52 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#685 [のの子]
 


私こそ、ありがとう‥



まこ姉を愛してくれて



私の隠していた過去を受け入れてくれて


彰君、ありがとう。


.

⏰:10/05/16 23:08 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#686 [のの子]
彰Side


「‥‥クスッ‥‥」

「? 今笑った?」

「笑った。」

俺は笑いながら横にいる聡美を見つめる。

「‥なんで?」

聡美は困ったように笑いながら首を傾げる。

「ん、これ‥俺達ずっと手繋いでる。」

俺は聡美と繋いでる手をあげてまた笑う。

「あっ‥これは変な意味はなくってですねっ!」

顔を赤くして慌てて手を離す聡美。

‥真琴と似ているようで似てないな。

俺は聡美を見つめながらふっと思った。

⏰:10/05/16 23:15 📱:SH06A3 🆔:rNVBZsSE


#687 [のの子]
 
「っはぁ〜‥ってかまたお前の前で泣いちゃったし、最悪。ってか俺キモい。」

うげっと舌を出す。

「あははっ、でももういつもの彰君だね。」

そんな俺を見て笑う聡美。


あぁ‥やっぱり似てる。

笑った顔はどこか真琴と似ている気がした。


「よしっ!明日バーベキューだし帰ろっか!」

「うわ〜っ話終わったら即効帰るのかよ。薄情な奴〜‥」

横目で見つめた俺に聡美はほっぺを膨らます。
.

⏰:10/05/19 20:57 📱:SH06A3 🆔:CtT7/wcU


#688 [のの子]
 
「えぇ〜‥だって彰君大丈夫そうだし、それに私も泣いたから顔汚れてない?」

化粧を気にしてるのか目元を隠す聡美のほっぺには、涙の跡がうっすら残っていた。

やべっ俺も残ってるかも‥

俺は慌てて自分の頬をこする。

「それにバーベキュー楽しみなんだもんっ。」

そう言って目元から手を離して笑う聡美。

「‥お前目よりほっぺ。」

「へ?」
.

⏰:10/05/19 21:04 📱:SH06A3 🆔:CtT7/wcU


#689 [のの子]
 
「‥だからほっぺ。」

「ほっぺ?ほっぺってほっぺ?」

キョトンとしてほっぺを指差す聡美。

‥‥‥‥イラッ

「だぁかぁらぁっ!ほっぺに涙の跡ついてんだよ!」
「ちょっ!むぅわっんぅ〜!」

つい聡美のほっぺに手をやると勢いよくこする。
.

⏰:10/05/20 19:07 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#690 [のの子]
 
「‥ったく。」

ゴシゴシゴシッ

うっすら赤くなった頬をこする俺に対して聡美は目をつぶる。

ゴシゴシッ

‥ゴシッ

っつか俺何してんだ?
真琴の話でさっきまでお互いピーピー泣いてたくせに今じゃすっかり普通に聡美の頬触って‥それにこいつもこいつで何目つぶって黙ったまま俺のいいなりになってんだよっ!!

「ん、とれた?」

聡美が目を開けるとバチッと目が合った。

⏰:10/05/20 19:22 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#691 [のの子]
 
ドキッ

「んっあぁとれたっ!」

「そっか、ありがと。‥なんか彰君お兄ちゃんみたいだね。」

へへっと笑う聡美に俺は顔を赤くする。

「バッカじゃねぇの‥」

「あっまたバカって言ったぁ。」

ふんっとそっぽを向く聡美とは逆に俺はまた膝を抱え込んで丸くなる。

何考えてんだ、俺‥



「なぁ、俺がさ‥」
.

⏰:10/05/20 19:29 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#692 [のの子]
 
「なに?」

首を傾げながら聡美は横目で俺を見つめた。

「俺が、これから‥すぐに誰かを好きになったら‥どう思う?」

「えっすごい良い事だと思うよ?」

でも‥

「真琴の事もあったのに‥軽くね?」

真琴の事で周りの奴らにも迷惑かけたのに‥

コロッと変わるのは

そいつらにも

‥真琴にも
.

⏰:10/05/20 19:37 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#693 [のの子]
 
「軽いって彰君彼女二年もいなかったじゃん?」

‥‥‥そーだけどさっ!

「いや、でも‥罪悪感がでるんだよ。」

俺は遠くを見つめる。

頭に浮かぶのは‥

真琴の笑顔や

旬達の笑った顔に困った顔

竜二の悲しげな顔‥

.

⏰:10/05/20 20:23 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#694 [のの子]
 
「‥私は嬉しいって思うんだけどなぁ。」

っ!

俺は聡美に顔を向ける。

「なんで?」

聡美も俺を見つめて優しく笑う。

「だって彰君が前に進んだんだもん、嬉しいよ。それにすぐ好きな子できたら‥それってまこ姉が重荷になってないって事だから。」

嬉しそうに笑う聡美。

「だから早く好きな子作ってね♪」

そう言って聡美は立ち上がる。

⏰:10/05/20 20:41 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#695 [のの子]
 
「帰ろっか?」

「‥‥‥あぁ。」

聡美は相変わらず膝を抱えて座っていた俺に優しく笑って手を差し出した。

俺はゆっくりとその手を握る。


真琴、ありがとう。

俺を愛してくれて‥

聡美と出会わせてくれて

ありがとう。

これから俺は

自分と向き合って

前に進む。
.

⏰:10/05/20 20:45 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#696 [のの子]
 

俺は立ち上がって一歩踏み出した。

「明日楽しみだね。」
「だな。」

聡美と笑って歩きだす。


‥隣に真琴はいないけど

真っ直ぐ前を見て進むよ。

『―‥彰っ』

っ!

俺はさっきまでいたベンチを振り返る。
.

⏰:10/05/20 20:49 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#697 [のの子]
 
そこにはいるはずのない

『泣かしたらただじゃすまないからっ!』

「‥真琴‥?」

俺を睨みつける彼女。

『ぷっはは、バーカ。ありがとね。』

そう言って笑って手を振る彼女に俺は

「‥ありがとう。」

小さな声で呟く。

「あれっ彰くーん?」

先を歩いていた聡美が公園の入口辺りから俺に声をかけてきた。
.

⏰:10/05/20 21:01 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#698 [のの子]
 
「‥行ってきます。」

そう言って俺は彼女から目を離す。

『――‥二人とも幸せになんなさいよ。』


俺は力強くまた大きな一歩を踏み出す。


「どうかした?」

聡美が不思議そうにキョトンとする。

「いや‥なんでもない。」

俺が笑いながら歩くのを見て、聡美は相変わらず不思議そうにしていた。
.

⏰:10/05/20 21:24 📱:SH06A3 🆔:5PfRElhM


#699 [のの子]
聡美Side

――――――――

「ただいま。」

「お帰り〜。」
「お帰り〜♪聡美アイス買ってきたから食べていいよ。」

リビングに入るとアイスを食べながらテレビを見ていた桜姉とお母さんがいた。

「うん、ありがと‥」

私はそう言って冷蔵庫から麦茶をだす。

「あははっねぇ聡美の好きな芸人出てるよ?」

桜姉がテレビを指差しながら振り返る。

「あぁ‥うん、だね。」

私はコップに注がれる麦茶を見つめた。
.

⏰:10/05/21 11:11 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#700 [のの子]
 
「‥あれ、元気なくない?気持ち悪いの?」

桜姉が心配そうに私に声をかける。

「熱中症とかじゃないでしょうね?」

お母さんも私に顔を向ける。




ポロッ
「‥っ‥‥私っ‥」

麦茶の入ったコップに私の涙が落ちた。

⏰:10/05/21 11:15 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#701 [のの子]
 
「えっちょっとどうしたのっ?」
「何?泣いてんのっ?!」

桜姉が慌ててティッシュをとって私にかけよる。

「もう〜どうしたの?」

私はティッシュを受け取らずにまた涙を流す。

「っ‥私‥私ねっ大切な友達がいるのっ。」

二人は困った顔をしながら私の話に耳を傾けるように黙り込む。
.

⏰:10/05/21 11:19 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#702 [のの子]
 

彰君とバイバイしてからもずっと胸に引っ掛かっていた事がある。


お母さん、お姉ちゃん、



「‥どうしてっ?あっ彰君にっ‥まこ姉と会わせてあげなかったの?」


どうして?


.

⏰:10/05/21 11:22 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#703 [のの子]
 
「あきら‥?」

桜姉は誰かわからないのか小さく呟く。

「グスッ眞鍋彰‥私と同い年だけどまこ姉の彼氏だったの‥」

「彼氏‥っもしかしてあの子?」

桜姉は私からお母さんの方へ目を向ける。

「‥二人とも知ってるの?」

私の問い掛けに二人は黙り込む。

「ねぇ、答えてよ‥」
.

⏰:10/05/21 22:19 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#704 [のの子]
 
私が二人を見つめると、お母さんは静かにテレビを消した。


「‥たぶん知ってる。あの日病院にいた子だと思うから。」

お母さんは悲しげな瞳でじっと真っ黒になったテレビ画面を見つめていた。

「なんでっ‥なんでまこ姉と会わせて
「その子のせいで死んだからだよっ‥!」

桜姉が大きな声をだす。

「その子のせいで真琴は死んだのにっ‥なんで会わせなきゃいけないのよっ!」

桜姉は変わらず大きな声で、でも悲しげな瞳で唇を噛む。

⏰:10/05/21 22:26 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#705 [のの子]
 
私は大きな声に驚いたけど、それよりも桜姉の言った言葉にショックを受ける。

「彰君の‥彰君のせいで死んだんじゃないっ!なんでそんなひどい事言うのっ?」

「っ‥!聡美は何も知らないからっ
「知ってる!知ってるよ、全部っ!」

私も涙を流しながら大きな声をだす。

「知ってるならなんでかばうのよっ?真琴はね、その子に呼ばれて‥それでっ‥」

桜姉の目からも涙がこぼれた。

⏰:10/05/21 22:33 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#706 [のの子]
 
「桜も聡美も、そこに座って。」

お母さんは複雑な顔で向かいにあるイスを指差す。

私達は黙ったままそこに座った。

「はぁ‥聡美、その子とはいつ知り合ったの?」

「グスッ高校が一緒なの‥よく一緒にいる子で‥」

「そうだったの‥」

グスッ

静かなリビングに私と桜姉の鼻をすする音だけ響く。

⏰:10/05/21 22:41 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#707 [のの子]
 
「っ‥彰君、ずっと引きずってる‥まこ姉を殺したって‥」

「あの子がそう言ったの?」

私は頷く。

「二年前からずっと‥ずっと自分を責めてたのっ!責めて責めて‥自分が生きてる事さえ責めてたっ!そんなのせっかく生きてるのにダメだよっ‥そうでしょっ?」

私は桜姉とお母さんを見つめる。

⏰:10/05/22 01:38 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#708 [のの子]
ねぇ、わかるでしょ?

命の尊さや、生きる喜びも‥まこ姉から1番教わったじゃない。

「でもっ‥私は許せない‥だってそれでもあの子は生きてるじゃないっ‥!」

桜姉が顔を手で覆う。

「私から大事な妹を奪ったのにっ‥ッ‥」

「違うっ!確かに彰君はまこ姉を呼んだよ?でもっ‥道路に出たのはまこ姉の意思じゃない!」
.

⏰:10/05/22 17:15 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#709 [のの子]
 
「っ!じゃなにっ?真琴が死んだのは自業自得ってわけ?」

キッと私を睨む桜姉は

「真琴は私の大事な、大切な妹だったのよっ?」

言ってはいけない言葉を言ってしまった

「あんな子のせいでっ‥だからっだからあの子が死ねば良かったのよっ!」

バシンッ!!
.

⏰:10/05/22 17:19 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#710 [のの子]
 


一瞬何が起きたのか自分でもわからなかった。

ほっぺを抑える桜姉も、黙っていたお母さんも驚いた顔で私を見つめていた。


「ごっ‥ごめんなさい。」

私は慌てて桜姉に謝ると、ジンジンと痛む右手を握る。

桜姉は何も言わずに下に俯いた。

「お姉ちゃん‥さっきの言葉、彰君にも言ったの?」

私は右手を握りしめながらも、真っ直ぐ桜姉を見つめる。

⏰:10/05/22 20:49 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#711 [のの子]
 

「‥あの子ね、真琴が死ぬ前に病院で私達に謝りに来たの。」

桜姉じゃなくてお母さんの口が開いた。

「『すみません』って‥『彼女を守れなくてすみませんでした』って言ってた。」

その時の私は病室で一人まこ姉についていたらしい。
「でもね、その前に警察からも話を聞いてて‥その子の話を聞いてもなんとも思わなかった。むしろ【真琴が車にひかれる原因を作った子】としか思えなかったのよ。」

お母さんはその時を思い出してるのか苦痛の表情を見せる。

⏰:10/05/22 20:58 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#712 [のの子]
 
「だから止めれなかったの‥桜を止めれなかったお母さんも悪いのよ。」


二人は俯いて私とは目を合わそうとしない。


それが答えだった‥


「言ったんだ‥彰君に『死ねば良かった』って‥」


私もゆっくりと二人から目を離した。

⏰:10/05/22 21:03 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#713 [のの子]
 
そんな事一言も言ってなかったのに‥

なんで言ってくれないの?


「お母さんは悪くないよ‥あの時は本当にそう思ったんだもん!それに今だってそう思うっ‥聡美、アンタその子の事好きだとか言わないよね?私そんなの絶対許さないからねっ?!」

桜姉が私の手首を掴むとグッと力が入って痛みが手首から流れる。

「桜っアンタもやめなさ
「お姉ちゃんて教師になるんでしょ?」
.

⏰:10/05/22 21:08 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#714 [のの子]
 
私は涙を流しながら桜姉を睨む。

後から思えば、私がこんなに反抗したのは人生で初めてだった。

「子供達に夢とか人生とか色々教えるんでしょ?」

「なっなに、急に
「そんなお姉ちゃんがっ‥あんな事‥言わないでよっ!」

ピクッと私の手を握ってる桜姉の手が緩む。

「お姉ちゃんがまこ姉も私も‥大事にしてくれてたのわかってる。」

でもね、
.

⏰:10/05/22 21:17 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#715 [のの子]
 
「でもっ彰君は‥お姉ちゃんがヒドイ事言ったあの子はっ『まこ姉が愛した子』で、私とは同い年なんだよ?」

「‥っ‥でもっ!」

「桜、聡美の話ちゃんと聞きな?」

お母さんは手で目を隠しながらも、震える唇を噛んでいた。

「お姉ちゃん、あの時の彰君は私と同じ‥まだ15歳の中学生だったんだよ?」


ゆっくりと私の手首から桜姉の手が離れていった。

⏰:10/05/22 21:24 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#716 [のの子]
 
たった15歳の子が

目の前で愛する人が車にひかれて、

血だらけになった彼女を抱きしめながら

自分を責めて‥

そして訳もわからず、あっという間に

彼女は逝ってしまう..

.

⏰:10/05/22 21:30 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#717 [のの子]
 
それでも私達家族の前に現れた彼を

私達は責め立て罪を背負わせる‥


愛する彼女もいなければ

自分が生きている罪を

背負い込む彼は


まだ15歳‥


私達は15歳の心にはあまりにも大きくて、深すぎる傷を残してしまった。

⏰:10/05/22 21:36 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#718 [のの子]
  

「‥‥っ‥もういいっ聞きたくない‥」

「お姉ちゃんっ!」

桜姉は立ち上がるとそのまま自分の部屋に行ってしまった。

お姉ちゃん‥

「‥桜は聡美の言いたい事わかってると思うよ。でも今さらどうすればいいのかわかんないんだよ‥」

お母さんは指で涙を拭う。

「お母さんもね、‥ずっと気になってたの。」

「‥彰君のこと?」

「そう、アキラ君の事。あの時は名前とかそんなの聞ける状態じゃなかったし‥」

立ち上がるとお母さんは窓を開ける。

クーラーで冷えきったリビングに入ってくる生温い風は気持ち良かった。
.

⏰:10/05/26 15:11 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#719 [のの子]
 
「真琴がいなくなって少したってからかな‥急にあの時のあの子の顔を思い出したの。私達は家族で支え合っていたけど、あの子を支えてくれる人はいるのかって‥あんな事言って傷つけた分、いてほしいって思ったわ。」

お母さんはまた私の目の前に座る。

「でも、いなかったみたいね‥」

うん、そう‥

彰君は一人抱え込んで

今まで生きてきた。

でも

「でも‥彰君には支えようとしてる友達がたくさんいるよ。」

⏰:10/05/26 15:26 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#720 [のの子]
 
「すごい仲良いんだよっ。みんな彰君の事情知ってるし‥」

旬君に博也君、フクも

それに、竜二君も。

「そう‥聡美もその一人なんだね。」

お母さんが優しく笑うから私も笑って頷く。


――――――――

コンコン

明日のバーベキューの用意をしている私の部屋にドアのノックの音が響く。
.

⏰:10/05/26 15:34 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#721 [のの子]
 
「‥?どうぞー?」

開かないドアをじっと見つめる。

「私だけど‥そのまま聞いて。」

その声はいつもよりも覇気がない桜姉の声だった

「お姉ちゃん‥」

あれから部屋から出てこなかったお姉ちゃんは夜ご飯の時も下りて来なかった。

「明日の泊り‥あの子もいるんでしょ?」

「‥うん。ダメって言っても私行くよ?」

「わかってる。」
.

⏰:10/05/26 15:39 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#722 [のの子]
 
さっきとは違って二人とも冷静で、それが逆に空気を重くする。

「‥明日あの子に迎え来てもらいな。」

「えっ?」

突然の事に私はドアの向こうにいる見えない桜姉を見つめる。

「迎えって‥家に?」

「そう‥いい?絶対来てもって。絶対だからねっ。」

パタパタパタ‥‥バタンッ

桜姉の足音とドアの閉まる音で桜姉が部屋に戻って閉まった事がすぐわかった。.

⏰:10/05/26 15:45 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#723 [のの子]
 
そんな事急に言われても‥

呆然とする私は色々考えたけど、結局彰君に連絡してみた。

彰君が断ってきたら、無理強いはしない。

そう思っていたけど、彰君は簡単に『いいよ』って言ってくれた。


「うぅ〜なんか緊張して眠れなそう‥」


案の定明日の事を考えていたらなかなか眠れなかった。

⏰:10/05/26 15:51 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#724 [のの子]
 
―――――次の日

今日も朝から晴れて、いつものように日差しが暑い。


「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥」

「‥今日は朝から静かだこと。」

黙々とご飯を食べる私達にお母さんは呆れたように言う。

チラッと桜姉を見るとムスッとしてお母さんを見つめていた。

「‥はぁっわかったよ‥聡美、醤油とって。」

「えっあぁはいっ。」

「どーも。‥昨日は感情的になりすぎたと思ってる、ごめんね?お母さんも‥」

桜姉は箸を止める。
.

⏰:10/05/27 10:14 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#725 [のの子]
 
「今日‥あの子来るって?」

「あっうん、来てくれるって。」

そっか、と言って桜姉は複雑そうに笑った。

「あの子ってアキラ君?」
「私が呼んでもらったの。あの子とちょっと話したくて‥」

驚くお母さんに桜姉はそう言いながらまた箸を動かす。

何を話すの?

そう聞きたかったけど、そのあと桜姉はまた黙り込んでしまって何も聞けなかった。

⏰:10/05/27 10:20 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#726 [のの子]
 

―――09:12


♪〜♪〜♪〜

リビングに私の携帯の着信音が響く。

「はいっもしもし。」

「おはよ‥」

眠そうな彰君の声。

クスッ‥朝苦手なんだな。

「おはよう。今どこら辺?」

「昨日の公園過ぎたとこ。ってか道あんま覚えてないんだけど‥真っ直ぐだっけ?」

あっそっか。

「うん、真っ直ぐ行ったら十字路があるからそこ左に曲がって真っ直ぐで大丈夫っ!」
.

⏰:10/05/27 10:27 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#727 [のの子]
 
「ん‥わかった。じゃまた着いたら連絡するわ。」

「あっうん‥あの、急に頼んじゃってごめんね?」

「あぁ、別にいいよ。逆にお前のおかげで寝坊しないですんだし?」

「ぷっなにそれ〜。」

「はいはい、じゃーな。」

電話を切った後も私は笑いながら携帯を握りしめる。

そんな私の姿をお母さんと桜姉はただ優しく見つめていた。

⏰:10/05/27 10:41 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#728 [のの子]
彰Side

「あっ‥思い出した。」

欠伸をしながら聡美ん家に向かう。

聡美に道を聞いてから段々と聡美ん家への道を思い出してきた。

っつかもうこのまま真っ直ぐか‥

今日はバーベキューに最適な快晴。

「あっち‥まだ9時過ぎたばっかじゃんかよ。」

今日は気温がかなり高くなるらしい。

‥‥あいつ日傘しないとぶっ倒れそー。
.

⏰:10/05/27 10:47 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#729 [のの子]
 
聡美の顔を思い浮かべてため息をつく。

忘れてるようだったら一応言ってみるか。



そんな事を考えてるうちに聡美ん家が見えてきて、携帯をポケットから取り出す。

「あいつもう用意できてるよな?」

女ってなんか用意遅いんだよなぁ‥

そんな事を思って携帯を睨んでると、聡美ん家の前に人影を感じた。

っ?

自然と足を止める‥

なるべくなら、家族には顔を合わせたくなかった。
.

⏰:10/05/27 10:52 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#730 [のの子]
 
聡美‥じゃない?

するとその人影は俺に気づいて俺の方をじっと見つめてきた。

‥やべっ‥

「あっねぇ、もしかして‥君が‥」

その声と姿を見て俺は固まる。

「あっ‥あの‥俺‥すみませんっ!」

俺はとっさに頭を下げる。

まるであの日のように‥
.

⏰:10/05/27 10:57 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#731 [のの子]
 
ドクッ  ドクッ

そこにいたのは

聡美のもう一人の姉、

真琴の姉ちゃんだった。


「やっぱり‥君なんだ。」

ドクッ ドクッ

暑さの汗じゃなく、冷汗が俺の背中を落ちていくのがわかった。

あの時の事を思い出して、恐くて顔を上げられない。

「顔上げて?近所の人に見られても困るし‥」

「っ!すっすみません‥」

俺は慌てて顔を上げるも、目線はジッと下を向いたままだった。

⏰:10/05/27 11:02 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#732 [のの子]
 
ドクッ ドクッ

「えっとアキラ君‥聡美と友達なんだってね。」

「‥学校が一緒になって‥でも本当なんも知らないで俺達知り合って‥仲良くなって‥」

ドクッ ドクッ

「うん、聡美からも聞いた‥ははっなんかすごい運命感じちゃうよね。」

「‥すみません‥」

俺は謝ることしかできずただ俯く。

「昨日ね、聡美とアキラ君の事で喧嘩したの。」

っ!

「おっ俺の事で?」

初めて顔をあげてお姉さんを見た。

お姉さんは悲しそうに笑っていた。
.

⏰:10/05/27 11:08 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#733 [のの子]
 
「あんなに怒って泣いて、反抗してきた聡美初めて。結構ビックリしちゃった。」

苦笑いするお姉さんにつられて俺もははっと苦笑いする。


「アキラ君‥あの時言った言葉だけど‥」

ドクンッ!

「ハッキリ言うね。」

ドクッ  ドクッ

「忘れて?」
.

⏰:10/05/27 11:11 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#734 [のの子]
 
えっ?

「あなたを傷つけた分、簡単に忘れられるものじゃないってこともわかるけど‥」

そう言ってお姉さんはじっと俺の目を見つめてきた。

「あっそれは‥?」

「あの時、私は君の事が許せなかった。すごい憎んで、あんな‥『死ねばよかった』なんて言葉が出てきたの。」

俺はキュッと唇を噛む。

あの時‥

謝罪に行った俺を泣きながら睨みつけるお姉さんと

その後ろで俺に見向きもせず泣き崩れる母親の光景が

今も頭に焼き付いている。

⏰:10/05/27 22:40 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#735 [のの子]
 
「でも、あれは‥私の本心だった。それほど真琴が大切だったから‥」

あの時看護婦に止められながらも俺に掴みかかろうとして、暴言を吐くお姉さんを思い浮かべる。

「けど‥聡美にも言われたんだけどね、今冷静に考えれば君のせいじゃないとも思えるの。」

俯く俺にお姉さんは一歩近づく。

「だから‥訂正する。君は、君の人生を生きて?」
.

⏰:10/05/27 22:55 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#736 [のの子]
 
「‥死んだりしたら許さない。もちろん人生を楽しまないのもねっ。」

バンッ

「ゔっ‥ぃって。」

お姉さんは勢いよく俺の肩を掴むとクスクス笑う。

その笑顔は、聡美と同じように俺の心をどこかほぐしてくれた。


「ありがとうございます‥」


「‥聡美の事、これからもよろしくね。」
.

⏰:10/05/27 23:00 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#737 [のの子]
 
ガチャッ!

「あっ彰君っ‥って私の荷物!」

勢いよく玄関から出てきた聡美は俺に気づいたのもつかの間、黒い荷物に飛びつく。

「なんでここに?あっお姉ちゃんでしょっ?!」

「忘れないように出しといてあげたの。」

「もう〜すごい探してたんだからねぇ。お母さぁん、荷物あったー!」

お姉さんは聡美の頭をクシャッと撫でると、そのまま家の中に入って行った。
.

⏰:10/05/27 23:05 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#738 [のの子]
 
「もう〜っ‥あっ彰君ごめんね?結構待った?」

荷物を持った聡美が慌てて俺にかけよる。

「えっいや、大丈夫。」

そっか、と笑う聡美に俺も笑う。

「あっアキラ君?」

声のした方に向くと玄関から聡美の母親が立っていた。

「っ‥こんにちは。」

俺は頭を軽くさげる。
.

⏰:10/05/27 23:09 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#739 [のの子]
 
そんな俺を見て複雑そうに笑うと、

「また今度家に来てくれない?‥真琴に線香でもあげてほしいから。」

ドクッ

聡美まで眉を下げて心配そうに俺を見上げる。

「‥はい、ありがとうございます。」

俺は笑うとさっきよりも深く頭を下げた。


良かった‥
お姉さんもおばさんも、もう笑えるんだ。

そう思ったら一瞬目頭が暑くなった。
.

⏰:10/05/27 23:14 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#740 [のの子]
 
「彰君‥
「あっれー、早く行かないと二人とも遅刻じゃないの〜?」

お姉さんが笑いながら玄関からヒョコッと顔を出す。

っ!

二人して携帯を見ると

09:47‥

「うわっ彰君ヤバいよ!遅刻しちゃう!」

「わかってるよ!忘れ物ないよな?」

聡美が頷くのを見て俺はまた二人に頭を下げた。

⏰:10/05/28 10:57 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#741 [のの子]
 
「じゃ行ってくるね!」

聡美は笑って手を振る。

「二人ともいってらっしゃい。」
「気をつけてねっ。」

俺は見送ってくれた二人の笑顔をしっかり見つめて、胸に刻む。

たぶん、俺が目指すのはこういうモノなのかもしれない。


悲しい過去があっても

それをもう傷にはしない。
.

⏰:10/05/28 11:09 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#742 [のの子]
 
いつもありがとうございますこれで【彰の過去】については終了です

これからまた竜二も出てくるので今後もよろしくお願いします

>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500
>>500-600
>>600-700
>>700-800
.

⏰:10/05/28 11:21 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#743 [のの子]
竜二Side

ザワザワザワ

「彰と聡美ちゃん遅いね〜。」

「暑いしどっか入ろぉ?」

夏休み、人が多い駅前で俺達はそれぞれ荷物を抱えて二人を待っていた。

「もう着くらしいから我慢しな?」

桃ちゃんの頭をポンポンと撫でるフクを横に俺は座り込んで人混みを見つめる。

.

⏰:10/05/28 21:38 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#744 [のの子]
 
『聡美に全部話す』

そう言ってた彰から昨日何も連絡はなかった。

もちろん俺からわざわざ連絡するような事もしなかった。

でも、気になってずっと考えてた‥

「どうなったんだろ?‥」

ボソッと呟く。

「何が?」
.

⏰:10/05/28 22:19 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#745 [のの子]
 
‥‥‥はぁっ

「別に。」

「うわっ冷たーい。」

そう言って鈴はクスクスと笑う。

夏休み前、長かった髪をバッサリ切ったのに、さらにショートになっている。

「お前また髪切ったの?」

「あぁうん、暑いし邪魔だったから切っちゃった。切った時はみんなビックリしてて面白かった〜♪」

あははっと笑う鈴の頭をフクが掴む。

「こいつ急に合気道習いだしたんだよっ。だから邪魔だって切ったんだって。」.

⏰:10/05/29 12:19 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#746 [のの子]
 
「合気道?キャラじゃない事するね。」

鈴は頬を赤くして口をとんがらす。

「キャラとか関係ないもん。私は私なりに強くなろうとしてるのっ。それに運動神経は良い方だし?」

「でも怪我でもしたら‥」

そう言って心配するフクだけど、変わろうとしている鈴を見つめる瞳はどこか優しかった。

「でもぉショートになっておサルさんみたいで可愛いんじゃない?」

.

⏰:10/05/29 20:04 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#747 [のの子]
 
桃ちゃんがニコニコ笑いながら鈴の目の前に座る。

「っ‥ありがとうございます‥」

桃ちゃんを目の前に、鈴は顔を引き攣らせ笑う。

『フクの妹だからって場合によっては容赦しないからね。』

フクの妹と知った後に顔を合わせた時、桃ちゃんは笑ってそう言ったらしい。

意外にも桃ちゃんは聡美に喧嘩を売ってきた時の事をかなり根に持っていた。

それからあの自己チューだった鈴の性格も少し落ち着いたとかどうとか..
.

⏰:10/05/29 20:14 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#748 [のの子]
 
「あっ来た来たっ!」

っ!

旬の声に反応して人混みに目線を戻す。

サラリーマンもいれば、携帯をイジりながら歩くギャルに家族で仲良く手を繋いで歩く姿が目に映る。


でも、その中に見覚えのある二人の姿が現れる。


「悪いっ遅れたっ!」
「ごめんねぇっ!」


.

⏰:10/05/29 20:20 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#749 [のの子]
 
息を切らす二人。

「おっそーいっ!二人してやる気あんの〜?」

旬がムッとすると聡美が苦笑いしておでごの汗をふく。

「ハァッごめんね?電車乗り遅れちゃって‥」

「あっちぃ‥ってかたった15分ぐらいじゃんかよ。」

彰もTシャツを掴んでパタパタと動かす。

「うわっ悪気ない奴一名いるんですけどーっ!罰としてジュースおごれぇ!」

「俺が飲みてぇよっ!」
.

⏰:10/05/29 20:27 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#750 [のの子]
 
「聡美っおはよぉ♪」
「あっ桃も鈴ちゃんもおはよー♪ハァッ本当遅くなってごめんねぇ?」

桃が聡美に近寄ると鈴も自然とそれについていく。

「寝坊でもしたんですか?」

鈴が呆れた表情で聡美を見つめる。

「そういう訳じゃないんだけど〜‥むしろ睡眠不足?」

「なにやってたんですか‥」

えへへっと笑う聡美に鈴も笑う。
.

⏰:10/05/29 20:31 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#751 [のの子]
 
「あっフクと竜二君もおはよ。待たせちゃってごめんね?」

っ‥

聡美は前と変わらない表情で俺に笑顔を向ける。

「大丈夫だよ。」
「うん、文句言ってんの旬だけだから。」

騒いでいる旬と彰を見て聡美はまた笑った。

「ってか行こっか。博也とはまたこの後合流するし。」

博也は地元駅がバーベキューへ行く通り道だから途中から合流する事になっている。

⏰:10/05/29 20:38 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#752 [のの子]
 
「そうだよ〜、今度は私達が遅刻しちゃうよぉ?ほらっ行きますよ〜♪」

フクと桃ちゃんが荷物を持って改札へ向かって歩きだすと、それにつられてみんな歩きだそうとする。

「よしっじゃしゅっぱーつ!♪」

旬が周りを気にせずなかなかの大きな声を出す。

「‥小学生か。」
「ぷっ‥」

ボソッと呟くと笑い声が聞こえて振り向く。

「あっごめんね、聞こえちゃった‥」

そう言って笑った聡美は俺を見つめる。

「久しぶりだね。」

「‥うん、補習の日に会ったのが最後だっけ?」

「そうそう。」
.

⏰:10/05/29 20:49 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#753 [のの子]
 
明るく笑う聡美を蒸し暑さも忘れるぐらい見つめてしまう。


‥会いたかった。

声が聞きたかった。

その笑顔をずっと見たかったよ。


そんな言葉がこぼれ出ないよう唇を噛む。


「あっ竜二く
「聡美っ」
.

⏰:10/05/29 20:54 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#754 [のの子]
 
聡美が俺に何か話そうとした時、彰が聡美を呼んだせいで話はそこで終わってしまった。

「彰君どうかした?」

キョトンとする聡美の横に彰が立つ。

「どうかした?じゃねーし。ほらっ荷物。」

大きめのメッセンジャーバッグを背負っている彰がまた別のバッグが聡美に差し出す。

「あっごめんっ!持ってもらってたんだったぁ‥彰君ありがとね。」

苦笑いしながら荷物を受け取る聡美。

「平気。ってか行くぞ。」

彰は俺をチラッと見つめて歩きだす。
.

⏰:10/05/29 21:09 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#755 [のの子]
 
「あっ待ってよぉ!竜二君、私達も行こう?」

聡美は慌てて彰の後を追い掛けようと俺の横を通り過ぎる。


なんで‥? 

なんで俺じゃなくて

彰を見つめて

その後を追い掛けるの?


スッ‥
っ!

無意識に聡美の手を掴もうとして固まる。
.

⏰:10/05/29 21:15 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#756 [のの子]
 

彰と聡美の後ろ姿を見て、俺は掴もうとした手を下ろす。

「‥っ‥‥‥‥」

下ろした手にグッと力が入る。

なにやってんだ俺‥聡美を止めてどうすんだよ。

「竜二君、大丈夫?」

ハッとして振り返ると鈴が気まずそうな顔をして立っていた。

「まだいたのか‥」

俺は苦笑いしながら痒くもない首をかく。
.

⏰:10/05/30 20:47 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#757 [のの子]
 
「この前までは幸せそうにしてたのに‥今は辛い立場に立っちゃったんだね。」

「辛い?何が?」

みんなを追い掛けるよう鈴と二人で歩きだす。

「元カノさん、彰君にとられちゃいそうだよ?」

「俺はもう別れたんだし二人が付き合おうと関係ないよ。ってかお前こそいいの?」

二人して真っ直ぐ前を見て聡美と彰を見つめる。
.

⏰:10/05/30 20:53 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#758 [のの子]
 
「私と彰君は友達だから。‥でも私ね、彰君の幸せを1番に望んでる。彰君が幸せになれるなら――」

鈴は俺を横目で見つめて笑う。

「竜二君の今の気持ちが変わらないよう協力してあげるよ?」

俺は眉間にシワを寄せて鈴を睨む。

俺の気が変わってあの二人の邪魔をしないようにするって事か..

「‥大きなお世話だよ。」

変わらない。

二人の幸せを願う気持ちは

鈴よりも遥かに大きい。
.

⏰:10/05/30 21:02 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#759 [のの子]
聡美Side

「もしもし――」
「あははっなにそれ〜」
「お母さん〜――」




「あっすみません!」

ザワザワと人が多い駅で、さっきから何人かの人と肩がぶつかる。

うぅ、人多すぎ〜‥

「おい、大丈夫かよ。」

彰君が私の荷物をとる。

「えっいいよ、大丈夫だから!」

「お前の為じゃない‥お前とぶつかる人が可哀相だから。」

⏰:10/06/02 14:49 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#760 [のの子]
 
ふんっと鼻で笑うと彰君はスタスタ歩きだす。

「失礼な!もうっ‥」

私もその後を追い掛ける。

前を桃達が歩いて、私達はそれを追うように後ろを歩く。

竜二君とは‥さっき話しただけ。

「彰君‥」

「ん?」

無意識に指が唇に触れる。

「さっき竜二君と話してた時、私普通にできてた?」
.

⏰:10/06/02 15:08 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#761 [のの子]
 
竜二君が視界に入った時、また泣いちゃうんじゃないかって不安が生まれた。

でも、竜二君は普通にしてるし私もそうしなきゃって‥

でも話した時、唇が震えて話せなくなるんじゃないかって思った。

会えたのが嬉しくて

話せたのが嬉しくて‥

でもその倍ぐらい

寂しくて、悲しかった‥

.

⏰:10/06/02 15:12 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#762 [のの子]
 
今も思い出すと唇が震えそう。

‥ポンポン

っ!

「できてた、できてた。」

彰君が私の頭をクシャクシャ撫でる。

ドキッ

「‥‥ありがと。」

私はなんでか安心して笑う。

⏰:10/06/02 16:27 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#763 [のの子]
 
―――――――

「先輩、隣いいですか?」

ニコッと笑った鈴ちゃんが私の隣を指差す。

「うん、どうぞ。」
「聡美の隣は私、鈴ちゃんはそっちね。」

私の隣にさっと桃が座ると、前の席を指差す。

「‥‥どーも。」

鈴ちゃんがムスッとしながら私達の前に座った。
.

⏰:10/06/02 16:41 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#764 [のの子]
 
「俺もこっちがいいー♪」

途中から合流した博也君が鈴ちゃんの隣に座る。

「ダメーッ♪ここは女の子だけなのぉ。」

桃が笑いながら手を振ると、ちぇっと言いながら博也君は席に戻って行く。


電車を乗り継いで二時間、向かい合う席の田舎らしい電車に乗った私達。

もう少しで到着駅に着こうとしていた。
.

⏰:10/06/02 16:57 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#765 [のの子]
 
「先輩夏休み前に竜二君と別れたらしいですね〜。」

ギクッ

鈴ちゃんが目を細めて私を見つめる。

「実は色々ありまして‥」

「その割に彰君とは夏休み前より仲良くなってるよねぇ♪」

今度は桃が私の肩に寄り掛かりながら笑う。

「え〜っとねぇ‥彰君とも色々ありまして‥」
.

⏰:10/06/02 17:02 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#766 [のの子]
 
私は二人を見つめて顔を引き攣らせながら笑う。

こっ恐い‥

「色々って?」
「私何も聞いてな〜い。」

ゔっ‥

二人から感じる黒いオーラを肌に感じて、汗が流れる。

「えっと‥何から話せば
「「最初からっ!」」


なっなんかこの二人気が合ってない?
.

⏰:10/06/02 17:06 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#767 [のの子]
―――――

ガタン ガタンガタン

「――‥で、彰君とは仲良くなったっていうかなんというか‥」

「信じらんない‥そんな繋がりがあったなんて。」

桃は目をパチパチさせて私を見つめる。

「ごめんね、話さなくて‥彰君も関わってるからあんま話さない方がいいと思って‥」

私は二人に謝ると、

「ん、まぁしょうがないよ〜。」

桃は笑って私の肩を優しく叩く。

「‥‥先輩があの人の妹っ‥」
.

⏰:10/06/03 11:01 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#768 [のの子]
 
鈴ちゃんは驚きをかくせないのか、口に手を当てる。

「鈴ちゃん、まこ姉の事知ってたの?」

私が首をかしげると、鈴ちゃんはハッとして私を見つめた。

「あっ‥えっと会った事はないんですけど‥彰君のあの噂から知ってて‥」

気まずそうに話す鈴ちゃんは手を握って力をいれる。

「あの人の妹だなんて‥ははっ確かに敵う訳ないや。」



.

⏰:10/06/03 11:10 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#769 [のの子]
 
「まぁ逆に諦めつくっていうか‥」

鈴ちゃんは苦笑いしながら外を見つめる。

窓から見える景色はもう緑の木々とたんぼがチラッと見えるぐらい。

「‥私も言うの忘れてましたけど、彰君の事もう好きとかじゃなく友達なんで。」

「えっ!?」

「私の中でもうハッキリ友達って決めたんです。ですから先輩はご自由にして下さい。」

ご自由にって何が?

「えっいやいやでも
「はいはいっ鈴ちゃんがそう言ってんだからいいのっ♪ね?」

⏰:10/06/03 11:16 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#770 [のの子]
 
桃が私の肩を掴む。

「えぇ〜‥まぁうん、わかりました。」

私が戸惑いながらも納得すると鈴ちゃんも桃も笑うから、つられて私まで笑ってしまった。

「竜二君とはぁ?どうなの?」

桃が持ってきたお菓子を食べながらポツリと呟く。

「そうですね、竜二君とは何かなかったんですか?」

何かか〜‥

「何も‥でも、まこ姉の事話そうか迷ってるんだ。」.

⏰:10/06/03 11:24 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#771 [のの子]
 
まこ姉は竜二君の家庭教師だった。

彰君から話を聞いた限り、仲も悪くなかったみたい。

‥‥竜二君の心にも、傷としてまこ姉が残っているんじゃないのかな?

それに

「もしかしたら竜二君‥最初から私がまこ姉の妹だって気付いてたんじゃないかな?」

私は小さな声で呟く。
.

⏰:10/06/03 22:11 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#772 [のの子]
 
「えっなんでぇ?」

そう言いながら桃は私にグミをくれた。私も素直に受け取るとグミを口にいれる。

「ん〜‥なんかそう思ったの。」

グレープ味のグミが口の中でちょっとずつ溶けていく。


「その可能性はありますね。」

鈴ちゃんがチョコボールを手にだしながらサラッと言ってきた。
.

⏰:10/06/03 22:17 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#773 [のの子]
 
「えっだからなんでぇ?」

桃は首をかしげる。

「‥竜二君ね、私にこの事知られたくなかったみたいだった。」

だから私は彼が知られたくないって思うなら私は知らないままで良いって思った。

でも知ってしまった‥

全部を。

.

⏰:10/06/03 22:23 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#774 [のの子]
 
「知られたくなかったのは、彰君がまた傷ついて+私まで傷つくと思ったから、とか。」

私が曖昧な推理を話すと、案外二人は納得してるのか何も言わずに頷く。

「それも有り得ますね。それか更になにか知られたくない事があるか‥ってでも本当は何も知らずに出会ったのかも知れないですけどね。」

私はただニコッと笑う。

‥更に知られたくない事があるならそれって何だろ?
.

⏰:10/06/03 22:32 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#775 [のの子]
 
「でもさぁ、もし竜二君が知ってたとしたらどうなるの?別に良くなぁい?」

桃が不思議そうにしてグミを口に入れた。

「でも、竜二君私のせいで苦しんでたかも‥」

「それはないでしょ〜?だって二人付き合ってたじゃん。」

「‥でも桃さん、この人フラれてるんですよ?」

鈴ちゃんが呆れたように桃を見つめる。
.

⏰:10/06/04 00:56 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#776 [のの子]
 
「でも付き合ってた、それが大事だと思うけどなぁ〜。」

私達は桃の言いたい事がわからずキョトンとする。

「だぁかぁらぁ、聡美が妹だって知ってても、彰君と聡美を近づけたら傷つくかもしれないってわかっていたとしてもぉっ!竜二君は聡美と付き合ったんでしょう?」

私はゆっくり頷く。

「それって、それほど聡美の事が好きだったんじゃない?」


ドキッ
.

⏰:10/06/04 10:49 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#777 [のの子]
 
「私はそう思いたいなぁ♪」

桃は首をかしげながら私を見つめて笑う。

なるほど、っと鈴ちゃんも笑いながら頷く。

ドキ ドキ ドキッ

これはあくまで桃の考えで、本当かどうかはわからない。

なのに私の心臓はうるさいくらい跳びはねる。

「‥だったらいいなぁ。そしたら嬉しくてまた泣いちゃうよ‥」
.

⏰:10/06/04 10:55 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#778 [のの子]
彰Side

ガタンガタン ガタン

「っつーかなんで男女別で座るかねぇ。しかもなんでこんな席遠いの?」

「女子は女子で話したい事とかあるんじゃない?桃に近づくなって言われたし‥」

博也の愚痴に複雑そうに笑うフク。

「まぁまぁ男は男でなんか話そうぜぇ♪なにげ俺達も会うの久しぶりなんだしー。」

旬がニコニコ笑いながら持ってきた水を飲む。

話かぁ‥得にない‥

いや、でも話すとしたらあの事について今話しといた方がいいのか?

「ってかじゃ〜僕はまず彰君の話を聞きたいなぁ♪」

っ!

博也が笑って俺を見てきた。

⏰:10/06/04 11:10 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#779 [のの子]
 
「は?なんで俺なんだし。」

博也とは対照的に俺は不満げな顔をする。

「だって俺達と会ってない間に何か会ったでしょ〜‥聡美ちゃんと。」

ギクッ
「ブゥーーーーッ!!!!!」


‥‥‥‥‥


「ゴホッゴホッ‥うわぁ、ごめん彰‥」
.

⏰:10/06/04 21:57 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#780 [のの子]
 
何故か旬の口から吹き出した水が思いっ切り顔にかかった俺‥

「‥テンメェーッふざけんなっ!なんで急に口から水が出んだよっ!」

「ごめんてぇ〜。水が変なとこ入っちゃって‥」

胸倉を掴むと、旬は苦笑いしながら俺の顔を拭く。

「っ旬〜‥
「どうしたのぉ?」

っ‥!

「うわっ彰君なんで濡れてんの?」

「あっ桃ちゃん達こそどうしたの〜?♪」

聡美達三人が俺達の席に集まってきた。
.

⏰:10/06/05 11:07 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#781 [のの子]
 
「もうすぐ降りる駅かなって話してて‥彰君大丈夫?」

聡美がはい、っとハンドタオルを渡してきた。

こいついつもハンカチ持ってんな。

「サンキュー‥」

それを受け取って顔やら服を拭く。

「旬君、降りる駅って次でしたっけ?」

「そうそうっ♪駅にはおじさんが車で迎え来てくれてるから。」

聡美達は通路を挟んだ隣の席に座る。
.

⏰:10/06/05 11:11 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#782 [のの子]
 
「楽しみだねぇ♪」
「うんっ!」

そんな会話をする聡美達を見て、やっぱり今あの事について話さない方がいいって思った。

空気を壊すかもしれないしな‥

タオルに顔を埋めながら考えてると、博也が俺の肩を叩く。

「‥んだよ?」

「また後でゆっくり聞かせてよ。」

博也がニヤリと笑うのを見て、俺はため息をついた。

.

⏰:10/06/05 11:16 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#783 [のの子]
竜二Side

「着いたぁーっ!」

旬が大きな声をだすと、人が少ないとはいえだいたいの人が振り返って俺達を見てきた。

「山ばっか!」

「やっぱ若い子いない‥」

「ちょっと空気が冷たく感じるねぇ。」

各々感想をぼやきながら、改札を出る。

「おーいっ!旬、こっちこっち〜。」

改札を出るとすぐに大きく手を振る男の人が見えた。

「あっおじさ〜ん♪」
.

⏰:10/06/05 11:22 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#784 [のの子]
 
旬とは違って眼鏡をかけたかしこそうなおじさんが笑って出迎える。

「久しぶりだなぁ。また体格良くなったんじゃないか?」

「まぁね。一応毎日筋トレしてるし。」

旬がヘヘッと笑いながら鍛えた腕を見せる。

「はははっすごいなぁ。みんなも元気にしてたみたいだねぇ。」

俺達も笑って頭を下げる。

「あっおじさん、この子達が電話で話した女の子っ!桃ちゃんに聡美ちゃんと鈴ちゃんねっ!」

「こっこんにちは!よろしくお願いしますっ。」

聡美達も慌てて頭を下げる。

⏰:10/06/06 17:26 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#785 [のの子]
 
「初めまして、小竹和彦と申します。いつも旬がお世話になっています。」

和彦さんはそういって頭を下げる。

「あっいえいえこちらこそお世話になっています!え〜っとなんだかすみません‥」

聡美が慌てて更に頭を深く下げた。

ぷっ‥なんで謝ってんだか。

「いえいえ、どうぞ楽しんで行ってくださいね。」

和彦さんは優しく笑った。

⏰:10/06/06 17:32 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#786 [のの子]
 
「まっ挨拶はこの辺にしてそろそろ行こうよ〜。俺かなりお腹減ってるし!」

旬がそんな二人を前に腹をさする。

「あぁそうだな。じゃみんな車に乗ってね〜。」

和彦さんは乗ってきたワゴン車の運転席にさっさと座る。

「は〜い。」

俺達も後ろに荷物を乗せると助手席に旬、後ろに俺達が座った。
.

⏰:10/06/06 17:36 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#787 [のの子]
 
ちなみに俺の隣は‥

「あっごめんね、足踏んじゃった‥」

「大丈夫だよ。」

申し訳なさそうに小さくなる聡美に俺は優しく笑った。

大きいワゴン車でもさすがに9人は厳しい。

無理矢理乗ったせいで車が揺れる度に肌と肌が触れ合う。

その度心臓が跳びはねた。

‥チクショー博也の奴。

俺が乗った後に博也が無理矢理聡美を乗せたのだ。

『俺酔いやすいから窓側がいい♪』
.

⏰:10/06/06 17:44 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#788 [のの子]
 
そう言って戸惑いながら聡美が乗ってきたのだ。

はぁ〜っ‥ムカつく。

ちなみに席の順番は

俺 聡美 桃 フク
が一番後ろのシート

博也 鈴 彰
真ん中のシート

和彦さん 旬
運転席

ってな感じ。

「車で15分ぐらいだから。」

和彦さんは笑って言ったが、その15分は俺にとっちゃ我慢の時間。

⏰:10/06/06 17:50 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#789 [のの子]
 
聡美と隣にいて、懐かしい彼女の匂いを嗅ぐだけで決意が揺らぐ。

固い決意も、彼女にしたらどうってこともないただの

「竜二君、大丈夫?」

「えっ?」

「眉間にシワ‥寄せてる。」

聡美が自分の眉間を指差す。

「ははっ、疲れたのかな。」

⏰:10/06/06 17:55 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#790 [のの子]
 
俺は眉間をさすりながら笑う。

車の中は賑やかでみんなそれぞれに話をしていた。

旬は和彦さんと、博也は鈴や彰と、フクと桃ちゃん..

聡美は、俺を見て話す。

「車に酔ったのかと思っちゃった。」

「博也と違って俺は酔いにくいから大丈夫だよ。聡美ちゃんこそ大丈夫なの?」

「私?私は大丈夫‥なはず。でも昨日あんま寝れなかったんだぁ。」

聡美はははっと頭をかく。

⏰:10/06/06 18:00 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#791 [のの子]
 
昨日‥

「たぶん興奮しちゃって寝れなかったんだと思うんだ‥子供だよねぇ。」

俺はそれに笑うも、内心昨日の事が気になった。

「あっ‥竜二君、実は私帰してもらったピアスの片方なくしちゃったんだ。」

聡美が声を小さくする。

「ピアス‥そうなんだ‥」

聡美がなくしたと思ってるピアスは本当は俺が持ってる、なんて言えない。
.

⏰:10/06/06 18:05 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#792 [のの子]
 
「せっかく返してくれたのにごめんね?」

「平気だよ。‥今朝さ、俺に言おうとしたのってその事?」

途中彰が俺達の間に入ったせいで終わってしまった時、聡美は俺に何か言おうとしていた。

昨日の事を、【あの事】について話そうとしたんじゃないのか?


「‥うん、そうだよ。」

聡美は眉を下げて困ったように笑ってみせた。
.

⏰:10/06/06 18:09 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#793 [のの子]
 
「‥そっか。」

俺はそれ以上何も聞かなかったし、聡美も言わなかった。

「あっそういえば和彦さん、ハル元気っすか?」

「元気だよ〜♪あいつももう中三だから生意気でしょうがないよ。反抗期なのかね?」

和彦さんがミラー越しに苦笑いする。

「ハルって息子さんですか?」

「そうそう、春彦っていうの。」
.

⏰:10/06/06 18:19 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#794 [のの子]
 
鈴が質問すると和彦さんはどこからか写真持ち出して後ろに回して来る。

「へぇ〜可愛い。これからまた格好良くなりそう‥」

鈴がクスッと笑うと博也が写真を奪う。

「ハル大人っぽいんだよね〜。もっとガキらしくすりゃ良いのにさぁ。」

ヒョイッ

「お前が大人っぽくないんだよ。」

俺は写真を取ると聡美に渡す。
.

⏰:10/06/06 18:26 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#795 [のの子]
 
「わぁ和彦さんに似て‥‥あれ?」

聡美が写真を手に固まる。
「どうしたの?」

「聡美ぃ?」

桃ちゃんも写真を覗き込む。

写真には制服を着たハルとピースすり和彦さんが写っているだけ。

「ここ‥」

聡美は写真をじっと見つめる。
.

⏰:10/06/06 18:30 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#796 [のの子]
 
「‥ん?‥あぁーっ!」

桃ちゃんが聡美から写真を奪い取る。

「えっなに?どうしたの?」

みんなが驚く中、聡美は顔を青ざめていく。

「かっ和彦さんてもしかして‥お寺の‥」

「あれ、聞いてないの?お寺の住職ですよ〜。」

陽気な声ので話す和彦さん。

「もっもしかして別荘って‥」

「それは大丈夫大丈夫。お寺より離れたとこだから。」
.

⏰:10/06/06 18:34 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#797 [のの子]
 

「あっ本当だ、言われて見れば和彦さんお坊さんの格好してる。」

「バックに写ってんの本堂だし。」

「ピースしてんのがやっぱ旬の親戚って感じだよね。」

みんな笑っている中聡美ちゃんの青ざめた表情は戻らない。

「言ってなかったっけ?俺ん家お寺なんだよねぇ♪」

そう言って旬まで笑っている。

⏰:10/06/06 18:38 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#798 [のの子]
 
「きっ聞いてない‥」

「聡美ちゃん大丈夫?」

潤目になった聡美に焦る。

「なんで竜二君教えてくんなかったのー?私そういうのダメってわかってたくせにー‥」

小さな声で聡美はボンボン俺の足を叩く。

「だから前に言ったじゃん、どうなっても知らないからねって〜‥」
.

⏰:10/06/06 18:42 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#799 [のの子]
 
「それにお寺に泊まる訳じゃないんだから平気だって。」

「うぅっでも〜‥なんか出たらどうしよぉ!」

聡美が真剣な目で俺を見つめるもんだから、つい俺は笑ってしまう。

「クスッ大丈夫だって。はいはい‥」

前みたく優しく頭を撫でる。

「竜二く
「もし幽霊でても旬いるから大丈夫だよ。」
.

⏰:10/06/06 18:46 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#800 [のの子]
 
「‥‥‥‥えっ?」

「あいつお寺の子だけあって霊感やらお祓いバッチリだから。ね?」

サーッとまた顔を青ざめた聡美を見て俺はまた笑う。

「意地悪ーっ!!」

今度は腕をボンボンと叩きはじめた聡美が可愛くて仕方がなかった。

前のように俺を見て

甘えてくる彼女が

愛しい。


‥大丈夫。
君は俺が守るから。
.

⏰:10/06/06 18:50 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#801 [のの子]
そんな言葉もう言えないけど、

大丈夫だから

そんな気持ちで叩いてくる聡美の手を捕まえる。

あぁダメだって‥

そう頭で考えるのに俺の手は彼女の手を離さない。

温かくて、柔らかい

愛しい気持ちが溢れ出す。

彼女の潤んだ目を見ると、今すぐ抱きしめてめちゃくちゃにしてやりたくなる。

‥うわ‥ヤバいなぁ


「聡美ちゃん、みんな見てるよ?」

俺は意地悪そうに笑うと、聡美もハッとして周りを見る。

⏰:10/06/06 18:59 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#802 [のの子]
 
「うわわっすみませんっ!ごめんなさいっ!」

聡美は慌てて俺から離れると桃ちゃんの影に隠れるように小さくなる。

「なんか懐かしい光景を見た気が‥俺だけ?」

「私もそんな気がしました。」

博也達の声に耳を真っ赤にする聡美を見つめていると、視界に彰が入った。

   『バーカ』

口パクでそう言ってベッと舌を出す姿が昔の懐かしい光景を蘇らせる。

⏰:10/06/06 19:03 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#803 [のの子]
 
そういえば聡美と別れる事を決める前に、こんなやりとりしたっけ‥

そんな事ふっと考える。

  『うるせーっ』

俺は笑って返す。

あの時とはなにもかも違うけど、

俺と、彰と、聡美は

まだ一緒にいる。

一緒に笑っている。

それはすごい幸せな事だと思った。
.

⏰:10/06/07 00:52 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#804 [のの子]
聡美Side

「俺ん家先祖代々継いでる寺で、親戚もお坊さんばっかだし霊感ついちゃってさ〜。」

「旬は霊感強くてねぇ。そのせいで小さい頃は今よりもーっとピリピリしてたんだよ?」

あははっと笑う旬君に私も苦笑いする。

「あっでも本当大丈夫だからね。俺もおじさんのとこで修業して使い分けられるからさ♪普段全く霊感0だしっ♪」

修業?

「修業って‥?」

私が遠慮気味に聞くと、

「あぁっ!言うの忘れてたよ。今うちに修業しに来てる子がいるんだ。」
.

⏰:10/06/07 09:35 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#805 [のの子]
 
「えっそうなの?」

「そうそう、旬に似て霊感強い子でね‥」

いや、だから修業ってなんの‥‥?

「あの修業‥って
「あっあれあれ!おじさんの寺だよ!」

旬君が満面の笑みで助手席から振り返る。

‥‥‥‥だから修業って

「じゃせっかくだし家に寄ってってよ。」

えぇーっ!!
.

⏰:10/06/07 09:38 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#806 [のの子]
 
「だから、修業って‥なんですか?」

ガックリと肩を落としてつぶやく。

「聡美ちゃん大丈夫?」

竜二君がクスクス笑いながら私の顔を覗き込んできた。

「‥たぶん大丈夫かな。ただ旬君が霊感あるなんて知らなかったから驚いてるだけ。」

「最初は俺も驚いたよ。でもあいつわざと怖がらせたりしないから平気。」

そっか、と話しているうちに和彦さんのお家に着いた。

お家っていうかお寺‥
.

⏰:10/06/07 13:02 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#807 [のの子]
 
でも緑に囲まれて大きな本堂に青い空はとてもきれいで、車を降りてから少し見入ってしまう。

「大きくて‥キレイ。」

私がポツリと呟くと、和彦さんは嬉しそうに笑っていた。

「じゃせっかくだ
「クソガキーッ!どこ行きやがったぁ!!」

ニッコリ笑った和彦さんが固まる。

「‥‥あの馬鹿〜っ。」

ため息をつく和彦さんの後ろの方から男の子が見えた。

⏰:10/06/07 13:07 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#808 [のの子]
 
「ハルッ!静かにしなさい!今皆さんが
「あっ旬君っ!旬くーんっ!!」

ハルと呼ばれた男の子は私達に気づくと満面の笑みで走って来る。

ガバッ!

「うぉっと‥ハル元気みたいじゃん。」

「うんっ!ってか旬君久しぶりじゃん!俺なんも予定入れないで待ってたのに思ってたより遅いから俺超ーっ暇でさ〜‥あっ怒ってる訳じゃないよ?だってこうやって会えたんだし!あれっ?旬君また髪の毛の色変えた?俺も早く染め―‥」
「いい加減にしなさいっ!」

和彦さんがハル君の腕を掴んで旬君から引き離す。
.

⏰:10/06/07 13:16 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#809 [のの子]
 
「ってぇ‥」

ムスッとしながらマシンガントークを止めたハル君。

ははっハル君て旬君が大好きなんだ‥

「すみませんね、こいつ旬来るといっつもこうで‥」

和彦さんは恥ずかしそうに頭をかく。

「俺ハルに好かれてんの♪」

旬君は逆に嬉しそうに笑っていた。

「ほらっ挨拶しろ。」
.

⏰:10/06/07 13:19 📱:SH06A3 🆔:n/VTElJI


#810 [のの子]
 
和彦さんに頭を叩かれ、ハル君はやっと旬君以外の私達に目を向けた。

「コホンッ‥えー皆さん初めまして、小竹春彦です。中三です。えーっと、ハルって呼んでください。」

簡単な自己紹介を終えるとハル君は気まずそうに頬をかく。

きっとさっき旬君に甘える姿を見られたのが恥ずかしくなったんだろうな‥

ハル君は肌が焼けて小麦肌に真っ黒な髪の毛は短くてさっぱり。さっきとは違ってキリッとした目には銀色のフレームの眼鏡をかけていた。
.

⏰:10/06/08 23:50 📱:SH06A3 🆔:Qfu8ZLHM


#811 [のの子]
 
「お坊さんにしては良い顔してるね♪」

桃が私に耳打ちしてきて私は頷く。

幼さの残る顔に大人っぽい雰囲気を持っていた。

「そういやハルさっきガキって言ってたけど‥」

「あぁっ!そうだっ親父っ!またあいついねーんだよ!」

ハルが和彦さんの肩を揺らす。

「あぁ〜またか‥」

和彦さんは揺れながら苦笑いする。
.
「」

⏰:10/06/08 23:57 📱:SH06A3 🆔:Qfu8ZLHM


#812 [のの子]
 
「困ったなぁ、千夏には‥」

千夏?

「‥先生、ぼくいるよ‥」

ビクッ!

小さな弱々しい声が私の足元から聞こえてきた事にビックリして目線をやると、そこにはいつの間にか男の子が私のショートパンツを掴んでいた。

「ひっ‥いつの間に?」

私の方をチラッと見ると、男の子はまた真っ直ぐ和彦さんの方を見つめた。

「おや、本当だ。そこにいたのか。皆が驚いてるからこっちにおいで。」
.

⏰:10/06/09 00:06 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#813 [のの子]
 
男の子はまた私を見つめると、すぐに和彦さんの元へ走って行った。

なっなんだったの?

「おじさんっこの子が今修業してる子?」

「あぁ、そうだよ。千夏って言うんだけど‥ほら、千夏も挨拶しなさい?」

「‥‥‥‥‥‥‥。」

頭を撫でられた千夏君は変わらずじっと和彦さんにくっついたまま‥

「よっ、俺旬って言うんだ♪おじさんの親戚で、こいつらは俺の友達!お前は?」

旬君が目線を合わすように屈む。

⏰:10/06/09 00:20 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#814 [のの子]
 
千夏君が和彦さんをチラッと見つめると和彦さんは笑って頷く。

「‥‥‥ぼくは千夏。千の夏って書く。」

「へーっ。じゃ千夏は夏生まれか?」

旬君の問いに答えるように千夏君は頷いた。

「夏男か。カッコイイじゃ〜ん。ちなみに俺は秋生まれ。千夏は小学何年だ?」

「‥‥‥二年。」
.

⏰:10/06/09 00:27 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#815 [のの子]
 
「そっか。まだ二年か‥」

旬君は千夏君の頭を撫でる。

「大丈夫だよ。」

そう言う旬君の目はとっても優しかった。


――――――――


「じゃーねぇ!」

「何かあったら連絡しろよ〜?」

はーいっと私達も和彦さんの車を見送る。
.

⏰:10/06/09 00:34 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#816 [のの子]
 
あの後本堂を案内してもらってから、私達は今日泊まる別荘に送ってもらった。

和彦さんのお寺から車で5分しか離れていなかったのがちょっと驚きだったけど‥

「木の家とか別荘っぽ〜い♪」

「うんっ、可愛いね♪」

初めてきた私達がはしゃぐのを余所に、旬君達はさっさと中に入っていく。
.

⏰:10/06/09 10:58 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#817 [のの子]
 
「じゃ荷物置いたら早速始めよー。食材とか全部頼んでおいたから♪」

旬君はニコニコ笑って動き回る。

「あっじゃ私達食材切ったりするね。」

「おっじゃ女子チームは食材で、俺達は焼いてくわ。フクこれも持ってって〜。」


こうしてなんとか私達の目的、バーベキューが始まったのです。
.

⏰:10/06/09 11:03 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#818 [のの子]
 
皆さんこんにちは

今回のバーベキューのお話なんですが、少し番外編に近いお話にしようと思います千夏君達と触れ合うお話になると思うので、楽しみにしてください

これからもよろしくお願いします
.

⏰:10/06/09 11:08 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#819 [のの子]
千夏Side

――――――――

「おいっ千夏、聞いてんのかよ?」

ハルに呼ばれてハッとする。慌てて見つめるとハルはぼくを睨んでいた。

ハルこわい‥

「また見えたのか?」

ぼくはハルを見つめたまま頷く。

「ったく‥しょうがねぇな。」

ハルはため息を着くとぼくを抱き上げる。

ハルは目つきが悪いから怒ってると思うと、こうやってぼくを抱っこしてくれる。

怒ってるんじゃなくて、心配してくれてるんだって最近わかった。
.

⏰:10/06/09 11:18 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#820 [のの子]
 
「相変わらず軽〜‥ちゃんと飯食ってんのになぁ。」

ぼくは小学二年生にしては背が低くて、ちっちゃい方だから簡単に抱っこできるみたい。

ハルはぼくを抱っこしたまま部屋に向かう。

「ハル‥‥ぼく早く大きくなりたい‥」

「じゃ牛乳飲め。」

「‥牛乳‥嫌い‥」

嫌い。

牛乳よりも自分が嫌い。

アレが見えちゃう自分が怖いよ‥
.

⏰:10/06/09 11:28 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#821 [のの子]
 
ハルに抱き抱えられてもぼくには後をついてくるアレが見える。

「ハル‥怖いよ‥」

「大丈夫。」

ハルは少し早歩きになって部屋に向かう。

「お守りは持ってるか?」

ぼくは頷く。

「じゃそれ握ってろ。」

バンッ

部屋に入るとすぐに戸を閉める。

.

⏰:10/06/09 11:35 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#822 [のの子]
 
「ほら、もう大丈夫だろ?」

ぼくはお守りを握ったまま戸の向こうを見つめる。

何もいない。

「まだ修業中なんだからあんまあいつらに関わるな‥前にも痛いめに合った事あるんだろーが。」

ぼくは小さな体をギュッとする。

「ハル‥さっきの旬て人も僕達と同じ?」

「そうだよ。旬君も寺の息子だから同じだよ。」
.

⏰:10/06/09 11:40 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#823 [のの子]
 
「お前は旬君みたくなるんだ。霊感のONとOffを使い分けられるようにな‥だから修業サボんなよ?」

ハルがぼくの頭をクシャクシャ撫でると体温が伝わってきてホッとする。

あの人みたくなれたら、ぼくにも友達ができるかな‥

ハルに聞こうか迷ってやめた。

期待するのは疲れるから。
.

⏰:10/06/09 14:50 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#824 [のの子]
――――――――

「ねぇ‥さっき言ってたの本当?」

『――本当だよ――』

「‥こんなに天気いいのに‥」

『――でも夜になれば変わるさ――』

「へぇ‥なんでわかるの?」

『――ずっと空を見てたらわかるようになった――』

「すごいね‥きっと嵐になるなんて誰も知らないよ‥君はすごいなぁ。」
.

⏰:10/06/09 14:56 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#825 [のの子]
竜二Side

「あっこの肉焼けてるよ!」

「玉ねぎがぁ〜!目が痛い〜!」

「ってか焼きそばは?」

「焼きそばは最後だろ!」

「ちょっ聡美ちゃんその切り方危ないから!」

「えっ?大丈夫大丈夫♪」

「俺コーラ飲みた〜い。」

「そんな事言っても炭酸ないですよ!」
.

⏰:10/06/09 21:30 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#826 [のの子]
 
少し遅れて始まったバーベキューはそれぞれ自由に動き回りながらも、みんな楽しんでいた。

「聡美ちゃん、そんな細かく無理に切らなくていいから。ね?」

さっきから俺は野菜を切る聡美の手つきが気になって仕方がない。

「ん〜‥でも細かくしないとっ!」

うわっ!!今指に当たってたっしょ‥!

「火が通りにくいでしょ?」

ニッコリ笑う聡美ちゃんの額に汗がにじむ。

頑張ってるのはわかるよ‥わかるんだけどっ

「じゃ俺と交代しよっ?聡美ちゃん休憩っね?」
.

⏰:10/06/09 21:40 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#827 [のの子]
 
危なっかしくて見てられないっつーの!

「えぇ〜でも大丈夫っ。私女の子だし♪」

‥‥まさかの逆に気合いを入れてしまったパターン。

また野菜と向き合う聡美の手を慌ててとる。

「っ?なに?」

「もっもう野菜は十分じゃない?」

俺は聡美が切った野菜を指差す。
.

⏰:10/06/09 21:49 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#828 [のの子]
 
「あれ、本当だ‥夢中で切ってたから気づかなかったや。」

包丁を手に置いたのを見て俺は小さく息を吐く。

「ってか早く食べなきゃ肉なくなっちゃうよ?男ばっかなんだし。」

「そうだねぇ、食べよ食べよ♪竜二君は食べた?」

聡美が俺に空の皿を渡してきた。

「俺もまだ‥」

そういやあんま食ってなかった。

「じゃ早くしないとっ!男の子なんだしたくさん食べなきゃ。」

聡美は自分の箸と皿を持ってニコッと笑う。
.

⏰:10/06/09 21:55 📱:SH06A3 🆔:mcZ2Ajo.


#829 [のの子]
 
「そうだね。」

俺もつられて笑う。


聡美とこうやって普通に話せるのが嬉しい。

でも聡美はもう全部を知っているはずで..

君は今、何を思って

俺を見つめて

笑っているんだろう?


俺は今、

君への愛を想ってる。
.

⏰:10/06/10 10:52 📱:SH06A3 🆔:8C1WWHb.


#830 [のの子]
 
♪〜♪〜♪〜

「あっ竜二君、携帯鳴ってるよ?」

バッグの上で俺の携帯が着信音を鳴らしていた。

「‥ありがとう。先行ってて。」

「うん。」

聡美がいなくなったのを確認して電話に出ると、俺もその場から裏庭の方へ向かう。

「なんですか?」

「竜ちゃん怒ってるの?せっかく勇気だして電話したのにな‥」

「電話してこないでください。友達いるんで切りますから。」
.

⏰:10/06/10 11:07 📱:SH06A3 🆔:8C1WWHb.


#831 [のの子]
 
「そこに元カノもいるんでしょ?」

ピタッ

携帯を握ったまま固まる。

こいつっ‥

「私も元カノさんと会いたいなぁ。竜ちゃんを夢中にさせてる女‥どんな子なのかな?」

「アンタに関係ないだろ。」

「関係あるよ〜。だって私の方が竜ちゃんの事わかってるん
「っるさいんだよっ!昔っからアンタのそういう所が大っ嫌いなんだよ!」

俺はつい大きな声を出す。
.

⏰:10/06/10 11:18 📱:SH06A3 🆔:8C1WWHb.


#832 [のの子]
  
「っひどい‥」

震える声が聞こえてきても、俺の胸にある怒りは消えない。

「ひどい?はっ笑わせんな、その言葉はアンタにお似合いだろ?」

俺は携帯を握り締める。

「昔アンタが俺を使ったように、今度は俺がアンタを使ってやる‥利用させてもらうよ。」

「‥っなにそれ‥復讐のつもり?」

うっすらと泣き声にも聞こえる声に、俺は動揺する事なく冷静でいられた。

「‥別に復讐じゃないよ。【暇潰しの遊び】。だからさぁ、ただのゲームの駒がでしゃばってんじゃねぇよ?」

「っ‥り ピッ!
プーップーップーッ
.

⏰:10/06/15 00:48 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#833 [のの子]
ざまぁみろ‥

切れた携帯を見つめる。

パキッ
っ!

「‥よっ。」

枝の折れる音に反応して振り返ると、気まずそうな顔付きで立つ彰がいた。

「‥‥よっ。って、いつからいたわけ?」

俺は携帯をパンツのポケットにしまう。

「あぁ‥なんか『うるせー』とか『大っ嫌いだー』とかぐらいから?」

彰は人差し指で頬を書きながら俺に近づく。
.

⏰:10/06/15 10:01 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#834 [のの子]
 
ほとんど最初っからじゃんかよ。

「あっそ‥まぁ俺も色々あるんだよね。」

愛想のいい笑顔を彰に向ける。

「色々ってお前‥電話の相手、由紀さんじゃねぇの?」

「‥は?」

‥その女の名前を聞けば、愛想のいい笑顔も固まる。

「知ってた、お前と由紀さんの関係。けど、俺が知った時はもう‥なんつーか終わった後だったっつーかさ‥だから敢えて振り返すような事言わなかったんだ。」

⏰:10/06/15 10:08 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#835 [のの子]
 
「お前、知ってたのか‥そっか‥」

複雑そうに歪む彰の顔を見て、俺はただそれしか言えなかった。

「なぁ、さっきの由紀さんなんだろ?昔っから嫌いだとか復讐だとか‥由紀さんしか思い浮かばねぇし。」

彰は俺を真っ直ぐに見つめる。

その瞳は、以前のモノとは違う強い眼差しだった。

あぁ、やっぱり‥

良かった 良かった..

お前もう、

大丈夫。


「‥だったらなんだよ?」.

⏰:10/06/15 10:15 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#836 [のの子]
 
「別に良くね?それにお前がむきになるような事じゃないだろ。」

俺は優しく笑う。

「っ‥お前わかってんのかよっ!由紀さんは隼人さんの元カノで、お前に何したかっ!」

「わかってるよ、そんな事俺が1番わかってる。でもさ、その俺がいいって言ってるんだし大丈夫だよ。」

彰は信じられないとでもいう顔で俺を見つめると、俺の肩を掴んできた。

いっ‥てぇ。

「彰、肩痛いんだけど‥」

「あいつはっ‥聡美はどうなんだよ‥」
.

⏰:10/06/15 10:31 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#837 [のの子]
 
さっきまでとは違って彰は俺を睨む。

「お前が良くてもっ聡美はどうなんだよっ!あいつはまだお前の事好きなんだぞっ?」

彰の手で揺られる肩。

俺はそれを止める事もできずに固まる。

「お前がそんな事してたら‥あいつが傷つくんだよ‥俺も皆もっ!!それでもいいのかよっ?」

っ!

俺は彰から視線を外すように俯く。

彰も黙ると、俺達の耳にはバーベキューを楽しむ皆の声が聞こえてきた。

⏰:10/06/15 10:38 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#838 [のの子]
 
「‥‥聡美はもう全部知ってるから。」

彰は俺の肩から手を離すと、小さな声でつぶやく。

「聡美は‥全部知ってなんだって?」

俺も自然と声が小さくなる。

「‥俺のせいじゃないって。償うなら、生きて真琴の分まで幸せになれってさ‥」

そっか‥聡美らしい言葉だな。

そんな事を思って俺はふっと笑う。

.

⏰:10/06/15 15:18 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#839 [のの子]
 
「俺は‥これからちゃんと真琴の分も生きる。一応幸せになってやるつもり。」

彰もふっと優しく笑った。

「そっか‥良かった。」

俺の言葉に反応して彰が顔をあげる。

「色々‥心配かけて悪かった。旬達にも言うつもりだけど帰ってから話す。でもお前には、先に言っとこうと思って。」

俺はただ笑う。

「‥これがお前の思惑通りなら、この後はどうなる?お前は?」
.

⏰:10/06/15 15:27 📱:SH06A3 🆔:pCcc.LHc


#840 [のの子]
 
そう言って彰はじっと俺を見つめる。そんな彰を見つめながら、俺は何を言えばいいか考える。


彰、全てが俺の思惑通りに進んでなんかいない。

というか、お前が言うような思惑なんて最初からなかったのかもしれない。

これはただの俺の想いで、願いで、ワガママで‥

それに二人を巻き込んだだけなんだよ。

だから今、彰が言う思惑通りに進んでいるっていうなら、その先は‥
.

⏰:10/06/16 08:57 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#841 [のの子]
 
「彰君?って竜二君もいる。こんなとこで何してるの?」

「っ!鈴‥」

ペットボトルを手に鈴が不思議そうに立っている。

彰は慌てて振り返って鈴を見つめる。

「お前こそ何してんだよっ?」

「飲み物なくなりそうだから冷蔵庫から持ってきたの。それより二人こそ何してんのよぉ?

「‥それは秘密だよ。俺達も戻ろっか?」

俺は笑って彰の背中を叩く。

「竜二っ‥まだ話の途中
「 彰、 ‥―――」
.

⏰:10/06/16 09:06 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#842 [のの子]
彰Side


「――‥もう終わり。ね?」


そう小さく話すと、竜二は笑って俺の横を通り過ぎた。

グッ
握りしめた手に力が入る。

終わりって‥何がだよっ。

この話がかよ?

思惑がかよ?

お前がかよっ?


竜二‥お前はまた前みたく辛い事があっても平然と笑ってくのか?

「‥‥竜二っ、あの時気付いてやれなくてごめん。」.
.

⏰:10/06/16 09:13 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#843 [のの子]
 
俺は竜二の背中に呟く。

鈴には聞こえなかったのか鈴も戻ろうと歩きだす中、

竜二は振り返らずに

そっと右手を上げて手を振った。


俺は悔しくて、悲しくて、自分にムカついて‥その手を見つめる事しかできない。

「あれ、鈴ちゃんと竜二君?何して‥あっ彰くーん!」

っ?

竜二と鈴の背中を見つめていると、向こうから聡美が走ってきた。
.

⏰:10/06/16 09:21 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#844 [のの子]
 
聡美は竜二と鈴の横を通りすぎて、真っ直ぐ俺の所に走ってくる。

「‥‥聡美ちゃん?」

その時、竜二の声が聞こえた気がした。


「彰君っ、次っ!次彰君の番だよ!」

笑いながら俺の腕を掴む聡美に俺はビクッとする。

「なっちょっと待っはぁ?何が俺の番なんだしっ!」

とりあえず訳がわからないもんだから俺はその手を振り払う。

⏰:10/06/16 09:34 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#845 [のの子]
 
「やっぱり忘れてる〜。次、彰君が仕事する番だって!私、旬君達に呼んできてって頼まれたんだよ。」

‥‥‥仕事?ってかそんなほっぺ膨らまさせて睨まれても可愛いだけ―――

「ってこんなの俺のキャラじゃないだろ!!っつか仕事ってなんだし!」

自分の心の声にツッコミながら、聡美の言う仕事も聞き捨てならない。

「買い出しだって。」

「はぁっ!?」

あいつら1番めんどくせーの回してきやがったな‥
.

⏰:10/06/16 09:41 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#846 [のの子]
 
「彰君、大丈夫?」

遠い目をしてる俺に聡美は首をかしげる。

「ん?あぁ大丈夫。」

「本当に?」

「本当に。‥お前こそ大丈夫か?」

聡美の頭に手をやると驚いたのか聡美がビクッとする。

「わっ私?私なら大丈夫‥うん、平気。」

嫌がるかと思ったけど聡美はそのままじっとして俺を見つめながらいつものように笑う。
.

⏰:10/06/16 13:51 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#847 [のの子]
 
さっきまでのイラつきは一体どこへ行ったんだろう。聡美がいると自然と心が和む。

ふっとさっきまで見つめていた先を見ると、竜二と鈴の姿はもうなかった。

危ねぇーっ。こんな所見られたら気まずかった‥

「ねぇ彰君‥」

「ん?」

「竜二君に話したの?」
.

⏰:10/06/16 13:56 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#848 [のの子]
 
聡美は眉を下げて俺を見つめていた。

「‥一応。詳しくは話してないけど、お前に全部話した事は言ったよ。ダメだった?」

「ん、大丈夫‥」

聡美は首を振るとそのまま俯くと黙ってしまった。

‥‥困った。こんな凹まれてもなぁ..

「ごめん、聡美。お前自分で話したかったんだろ?勝手に俺言っちゃって‥」

「えっ違う違う。それは大丈夫っ。ただ‥ただね、竜二君は大丈夫かなって。」.

⏰:10/06/16 14:02 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#849 [のの子]
 
「彰君と同じように竜二君も‥まこ姉の事で傷ついてるんじゃないかな?」

「あぁ‥まぁそれなりにあいつも当時色々あったからな。」

聡美は悲しそうな目でさっきまで竜二がいた所を見つめる。

やっぱまだ好きなのか‥

「まだ好きなら‥力にでもなってやれば?」

俺は嫌みにも聞こえる言葉を口にしてしまったと口元を抑える。
.

⏰:10/06/16 14:09 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#850 [のの子]
 
やっべ‥今のは聡美機嫌悪くなるかもな

そーっと聡美を見ると案の定俺をじっと見つめていた。

「やっ今のは悪い意味じゃなくって‥」

「私と竜二君てね、一ヶ月も付き合ってなかったの。私自身もっと長く感じてたんだけど‥呆気ないよね。」

聡美は苦笑いする。

「別れてから何がダメだったのかなとか、私嫌われたのかなってずーっと考えてた。私のあれがダメだったのかも、嫌われるような事したんだって思って‥」

俺は黙って聡美の話を聞く。

「でも竜二君に『友達だよ』って言われてからちょっと気持ちが軽くなったの。それは私の全てを嫌いになったとか、否定する訳じゃないって思えて‥」
.

⏰:10/06/16 14:19 📱:SH06A3 🆔:SEUCZ6F6


#851 [のの子]
 
「でもそしたら逆になんで私達は終わったんだろう、ってまた思うようになっちゃったの。」

「それはたぶん‥」

「うん‥まこ姉の事かなって私も思った。竜二君てさ‥たぶん私が妹だって最初から気付いてたよね?」

聡美は困ったように笑う。

「今思い出すとちょっとそれっぽい事とかあったし‥まぁそれでどうして別れに繋がったのかまではわかんないけどね。」

聡美はうーんと考えるかのように首をかしげる。

.

⏰:10/06/18 12:00 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#852 [のの子]
 
「もしかしたら私が妹って事に耐えられなかったのかもだし、私の事をただ単に好きじゃなくなったのかもしれない‥私がわかるのは竜二君は別れるって決めた事だけ。」

聡美は大きなため息をつく。

「なんだよ、デカイため息して‥」

「ん〜?なんかもう正直わっかんない。私ね、もう竜二君とは友達っ!て思ってるつもり。まぁできてるかわかんないけど‥」

確かにできてるか微妙‥
.

⏰:10/06/18 17:07 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#853 [のの子]
 
「だからぁ、彰君に『まだ好きなら力になってやれよ』なんて言われたら困っちゃうの。」

「結局そう言われんの嫌って事か。」

俺がボソッと呟くと聡美が俺の肩にパンチしてきた。

「っなんだよ?」

「嫌なんて言ってないでしょう?ただ困っちゃうって言ったの。私はもう竜二君とは友達なんだもん‥好きならとか言われてもどうすればいいかわかんないっ。もちろん友達としてなら力になるよ?」
.

⏰:10/06/18 17:16 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#854 [のの子]
 
「ふ〜ん‥友達ねぇ。」

俺は殴られた肩をさすりながら聡美を横目で見つめる。

「‥‥こんな事言う私は薄情かな?」

「友達として力になるのがなんで薄情なんだよ。」

「だって‥なんか‥」

聡美が俯いてるのを見て俺までため息をつく。

「えっと〜‥あるところに大好きな彼と付き合っていたのに突然フラれてずっと泣いてた女がいました。ですが彼にフラれて一週間ちょっとでその女は彼とは友達!と話しました。」
.

⏰:10/06/18 17:28 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#855 [のの子]
 
突然話し出した俺に聡美は顔を上げる。

「さて、それを聞いてどう思うか?そりゃ人それぞれの意見があるでしょうが‥」

聡美はじっと俺を見つめる。

「俺は、頑張り屋で真っ直ぐな子だと思いましたとさ。ちゃんちゃん‥ぐらいの話しだろ。お前気にしすぎっ。」

聡美の頭をクシャクシャっと撫でると俺は歩きだす。

「っつーか俺買い出し行かねぇと旬達うるせぇし行くわ。お前ももう戻れよ?」
.

⏰:10/06/18 17:38 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#856 [のの子]
 
「あっ待って。」

聡美も慌てて小走りで俺の横にくると

「コホンッ‥えっと悩んでいたその女の子はある男の子に励まされて嬉しくなりました。なので、」

コラコラ、適当に俺が作った話の続きを勝手に作るなよ。

クスクスと笑う聡美を不思議そうに見つめる。

「私も一緒に買い出しに行きまーすっ♪」

「はっ?」

元気に手をあげる聡美に呆れ顔で俺は笑った。
.

⏰:10/06/18 17:50 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#857 [のの子]
聡美Side

「ちょっと聡美〜‥」

「わわっ何?どうしたの?」

桃に引っ張られ無理矢理座らさせる。

小声で話す桃は私を呆れた表情でため息をつく。

「どうしたの、はこっちのセリフでしょう?突然いなくなったと思ったら彰君と戻ってきてしかも二人だけで買い出し行くなんてぇ‥いいのぉ?」

「?‥何が?」

桃はもうっとほっぺを膨らます。

「りゅ・う・じ・く・んっ!彰君とばっかいて誤解されちゃうかもよぉ?」
.

⏰:10/06/18 20:31 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#858 [のの子]
 
「あははっ誤解も何も別になんもないもん。それに私竜二君とは友達だし?」

私はほっぺを人差し指でさすとえへっと首をかしげる。

「そうだけどぉ‥竜二君と復活するぞっとか思ってないわけぇ?」

復活‥そういえばよりを戻すとか深く考えた事なかったかも。

「思ってなかったんだ‥なんだぁ、じゃいいや。」

私の表情を見て桃は察知したのかストンッと私の横に座った。
.

⏰:10/06/18 20:39 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#859 [のの子]
 
「じゃいいやって‥あははっ‥」

苦笑いする私に桃は

「聡美なりに気持ちの整理はもうついてるって事なんでしょう?なら私がとやかく騒ぐ事もないし〜。」

「ん、まぁね‥なんか気使わせちゃったみたいでごめんね?ありがとっ♪」

そう言って私が笑うと、桃はチョンッとくっついてきた。

「桃?」

桃はニコッと笑って私に衝撃的な言葉を耳打ちしてきた。




「じゃぁさ、彰君とくっついちゃいなよ♪」


.

⏰:10/06/18 20:45 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#860 [のの子]
 
「‥‥‥えぇーーーっ!」


――――――――

「おいっ!聞いてんのかよ?」

「っ!えっあっごごごめんなさいっ!聞いてなかったです。」

彰君はムスッとして私を睨む。

「あはははっ‥暑くてボーッとしちゃっひゃ!!」

「目泳いでんだけど。なんかあったのか?」

急にほっぺを摘まれてつい私は彰君を見つめる。

ドキッ

「あっ‥‥」

ドキッてしちゃった‥

「‥お前変だぞ?」

彰君は私を相変わらず睨む。

⏰:10/06/18 20:57 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#861 [のの子]
 
『彰君とくっついちゃいなよ♪』

桃の言葉が再び蘇ると、頭の中に響く。

もっ桃が変な事言うから変に意識しちゃうじゃんかー!

何も知らない彰君は相変わらず私のほっぺを摘んだままムスッとしている。

「っ‥あにょ‥‥いひゃい‥」

「んっ?なんだよ?」

ドキッッ!

自分よりも小さい私と目線を合わせようと前屈みになった彰君。

「なに?」

「あっ‥う‥あにょ〜‥」
.

⏰:10/06/18 23:22 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#862 [のの子]
 
今まで彰君を男の子として意識した事はあったけど、正直そういう恋愛面で意識した事はなかったと思う。

だって私ずっと竜二君の事が好きだったし‥

でもまさか桃の一言でこんなに意識しちゃう自分がいたとは‥‥

たぶん今の私顔真っ赤なんだろうな‥ははっ

「お前顔赤いけど大丈夫かよ?」

ほらやっぱり〜‥

「気分悪いのか?」

私はほっぺを摘まれたまま小さく首を振る。
.

⏰:10/06/18 23:28 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#863 [のの子]
 
私が顔赤いのは彰君と顔近くて恥ずかしいからだよ〜

なんて心の中で叫んでみたり。

「あっそうだ‥」

彰君は何か思い出したのかパッと手を離す。

私は彰君をチラッと見上げてすぐに自分のほっぺを撫でる。

「どうしたの?」

「ん?あぁなんでもない。ってか旬が言ってたスーパーこの辺だよな?」

そう、私達は買い出しに来ていたんです。
.

⏰:10/06/18 23:34 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#864 [のの子]
 
別荘にあった自転車を二人乗りしてやっと着いた駅前。地元じゃない私達は旬君から聞いた情報を元にスーパーを探す。

「あっあれ!あの看板そうじゃない?」

「スーパー川杉‥あれだ。」

大きくも小さくもない看板が目に入った。


「思ってたより普通のスーパーだったね。」

「なんかもっとボロいかと思ってた。スーパーってよりも八百屋的なやつ‥」

そう言って二人してぷっと笑い出す。
.

⏰:10/06/18 23:55 📱:SH06A3 🆔:Tze.UBAs


#865 [のの子]
 
ウィーン

「うわぁ〜涼しい♪生き返りますな♪」

「お前は年寄りか。」

彰君がカゴを持つと買い出しリストの紙を取り出す。

「まずは〜‥肉か。あいつらどんだけ食うんだよ。」

「でも夜ご飯の分も入ってるんじゃない?ほらっカレーのルーもあるっ。夜ご飯カレーなんだね。」

私は彰君からリストの紙を受け取る。

「俺カゴ持つからお前リスト見てよ。」
.

⏰:10/06/19 00:01 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#866 [のの子]
 
「はーい。じゃぁまずは〜‥野菜コーナーから行こうっ!」

「はいはい。」

変に気合いの入った私の後に彰君がついてくる。


「あっこっちの方がいいかな?」

「ん〜そっちの方が新鮮そう。」

「じゃこっちにしよう♪」

順調に買い物をしていく私達。

「あっあれ上手そう‥」

すると彰君がフラッと私から離れる。
.

⏰:10/06/19 00:06 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#867 [のの子]
 
「あっ彰くーん、リスト以外のはダメだよぉ?」

「んーっ見るだけぇ。」

彰君の向かう先は意外にもケーキや和菓子が置いてあるデザートコーナー。

そっか、彰君て甘いの好きなんだっけ。

少し離れた所からケーキを見ている彰君をクスッと笑いながら見つめる。

‥‥なんかこうやって二人で買い物してると、他の人が見たらカップルに見えるのかな?

「って私ってば何考えてんだろ。」

考えてた事を吹き飛ばすかのように頭を振る。
.

⏰:10/06/19 00:13 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#868 [のの子]
 
「もう〜‥どうしよぉ。」

「何が?」

ビクッ!

いつの間にか彰君がケーキが入ったカゴを手に戻ってきていた。

「あっケーキ持ってきてる!」

「うん、買っていい?」

「いやいやっダメでしょ!」

「えぇ〜‥ケーキ食いたい。買っていいっしょ?」

「ダメー。」

私はカゴに入ったケーキを奪い取る。
.

⏰:10/06/19 00:55 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#869 [のの子]
 
「皆に怒られちゃうよ?」

「うん。」

うんって‥

奪い取ったケーキを手に私は困って立ち尽くす。

「ぷっ別にいいよ。」

彰君は私の手からケーキをとるとまたデザートコーナーに向かう。

別にいいならわざわざ持ってこないでしょうが‥
.

⏰:10/06/19 01:21 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#870 [のの子]
 
私もデザートに向かって彰君の服を掴む。

「っなに?」

「今日暑いし、アイス食べながら帰らない?」

彰君はキョトンと口を開けて私を見つめると

「皆に怒られるかもよ?」

すぐにニヤッと笑った。

「秘密だからねっ?」

「やったねぇ〜♪早速選び行こうっと。」
.

⏰:10/06/19 01:27 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#871 [のの子]
 
私ってあまいなぁ‥

苦笑いしながら私もアイスのコーナーに向かった。

「アイス選んだらもう帰るよ?もうリストにのってたやつは終わったし。って聞いてます?」

「はいはい。あっ俺これ〜。聡美は?」

「っと私は〜これっ。」

彰君はグレープ味のアイスキャンディー、私はストロベリー味のアイスクリームを手にとって笑う。

「お前ストロベリー好きだな。」

「うん、一番好き♪」
.

⏰:10/06/19 09:36 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#872 [のの子]
 
あっそういえば前に彰君と一緒に帰った時もアイス食べたんだ。

その時の光景を蘇らせる。

確かあの時私が言ったまこ姉の言葉で彰君が気付いたんだよねぇ。なんかこの前の話なのにずっと前みたい。

‥‥ん?‥‥

確かその前に‥何かあったよーな気が‥

‥‥‥‥‥っ!!!

「聡美?」

ビクッ!

「あはっあはははっ早く行こう!アイス溶けちゃうよ〜?」

⏰:10/06/19 17:16 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#873 [のの子]
 
そうだっ!

そうだっそうだっそうだっそうだぁーっ!

その時の彰君との間接キスを思い出して私は慌てて早歩きする。

うぅーっ‥なんで今思い出すかなぁっ!」

「聡美、お前やっぱ変じゃね?」

「えっはっえっ?別に変じゃないしねぇ!」

「‥でもまた顔赤いぞ。」

ギクッ
.

⏰:10/06/19 17:20 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#874 [のの子]
 
「やっやっぱりなんか暑くて‥とりあえず早く買って帰ろう?ね?」

レジを指差すと彰君は明らか不満そうにレジにカゴを置いた。

「あっ‥肉とかあるんで氷とかあったら貰えます?」

「あぁ、それならあっちにあるからどうぞ〜。」

レジのおばさんが目線を送った先に冷凍庫らしき小さな箱がある。

「貰ってくるからお前金払っといて。」

「あっはい。」
.

⏰:10/06/19 17:26 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#875 [のの子]
 
彰君は私にお財布を渡すとスタスタ行ってしまう。

「ってこれ彰君のお財布だし‥使っていいのかな?」

勝手に人のお金を使っていいものかと困っていると

「後で割り勘するんじゃないの?」

おばさんがカレーのルーの箱のバーコードを探しながら話しかけてきた。

「あっそうですよねっ。すみませんっ‥」

私は慌ててお財布を開ける。

⏰:10/06/19 17:31 📱:SH06A3 🆔:GytCxcsE


#876 [のの子]
 
私はおばさんに急かされながら表示された金額をだそうと使い慣れない彰君のお財布をさぐる。

「あっちょっと待った。おばさんこれも一緒にして。」

「えっ!」
「あら‥」

戻ってきたと思ったら彰君は氷だけじゃなくてお酒まで持ってきていた。

「ちょっと!」

私は彰君のTシャツの裾を掴む。

「私達どうみても未成年なのに無理だよ!しかもこんないっぱい!」

「今旬からメール来て酒買ってこいって。」
.

⏰:10/06/20 13:20 📱:SH06A3 🆔:5URJh.N6


#877 [のの子]
 
あの不良めーっ!

「でもっ!」
「おばさん、旬の頼みだしいいっしょ?」

彰君はレジのおばさんに笑いかける。

「えぇ〜っ‥全くしょうがないわねぇ。その変わり割引はしないからね?」

えぇっ?!なんで旬君の頼みだからっておばさん許しちゃうの?

「あと警察沙汰はやめてよ?私が和彦に怒られちゃうんだから〜。」

和彦さんって‥

「あの、もしかして和彦さんの‥」

「あらどうも〜、和彦の妻で春子ですぅ。」

オホホと上品に口に手をそえて笑うレジのおばさん。

って和彦さんの奥さんっ?

⏰:10/06/20 13:29 📱:SH06A3 🆔:5URJh.N6


#878 [のの子]
 
少しふっくらとしたほっぺとたれ目が春子さんから優しそうな雰囲気をかもしだす。

「あっすみません、私知らなくって‥あの色々ありがとうございますっ。とても綺麗な別荘でみんなしんでますっ。」

私は慌てて頭を下げる。

「あらあら、しっかりと挨拶していい子ねぇ。」

「それより会計お願いします。アイス溶けちゃうんで‥」

彰君が私からお財布をとる。

「はいはい。‥ってこれも?」

春子さんが手に持ったのは黒いキャップ。

「?なにそれ?」
.

⏰:10/06/20 13:36 📱:SH06A3 🆔:5URJh.N6


#879 [のの子]
 
私もキョトンとして彰君を見上げる。

「帽子だよ。それ値札とってください。」

「それはわかるけど‥被るの?」

春子さんが値札を切って彰君に帽子を渡す。

「俺じゃなくて‥‥」

 ‥ポスッ

私の頭に黒い帽子がのる。

「お前がかぶんの。」

ドキッ

「わ‥たし?」

「日傘忘れたみたいだし、少しは日差し避けになるだろ?」
.

⏰:10/06/20 13:43 📱:SH06A3 🆔:5URJh.N6


#880 [のの子]
 
「まぁスーパーに売ってるようなやつだから可愛くはないけど。」

「あっ別にそういうのは‥私なら大丈夫だよ?それに悪いし‥」

私が帽子をとるとキュッと握る。

「そんな事言ってお前さっきから暑いとか言ってんじゃんかよ。ボーッとして顔赤くなるし。」

うっそれは違う事で赤くなってたんだけど‥

「でも
「はいはーいっもうそれ彰君買っちゃったんだから、ね?それにうち返品お断りなのよ〜。」

春子さんがジャーンッとレシートを見せる。
.

⏰:10/06/21 10:14 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#881 [のの子]
 
「ありがとうございましたぁ♪」

春子さんまでニコニコ笑ってどうしようもなくなった私。

「‥ありがと。」

私は小さく頭をさげると帽子をかぶった。

「どういたしまして。」

ポンポンと彰君が私の頭に手をおく。

「ふふっ似合ってる、似合ってる♪」

春子さんはそう言いながらクスクス笑って私達の買った商品わビニールに詰めていく。

私はなんでか恥ずかしくて帽子のつばを引っ張って帽子を深くかぶる。
.

⏰:10/06/21 10:22 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#882 [のの子]
 
ドキッ  ドキッ ドキッ

私‥どうしたんだろ?

「ほら、また顔赤くなってる。」

彰君が笑いながらまた私の右のほっぺを摘んだ。

「うっうるふぁいっ‥」

ドキッ  ドキッ  ドキッ

心臓がうるさい。

でも彰君を見つめるとキュッと胸が締め付けられる。

あぁ‥私きっと今彰君を意識してるんだなぁ。

もう私も彼も前とは違う。
.

⏰:10/06/21 15:05 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#883 [のの子]
 
彼の私よりも大きな手は前なら男の人の手と感じていたのに‥

なのに今は

温かくて心地好い。

私は今まで彰君にどう触れてたっけ..

ほっぺを摘む彼の手にそっと手を重ねる。

ドキッ

「さと‥っいってぇ!」

私は手を重ねると彰君の手をつねった。

「あははっべぇーっ!」

「お前なぁ!」
.

⏰:10/06/21 15:11 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#884 [のの子]
 
私ってば何考えてんの‥

彰君はまこ姉の彼氏だったのに..

私は竜二君と別れたばっかなのに..

   私、嫌な女だ。

  こんな私嫌だっ‥


でも、ふざけてみても私の胸の心臓は相変わらずうるさかった。

「あなた達アイス溶けるよ?」

「「あ゙っ!!」」
.

⏰:10/06/21 15:16 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#885 [のの子]
千夏Side

―――タッタッタッ

「ハァッハァッ‥ゴホッ‥ハァッうわっ‥」

ドンッ

足がもつれてこける。

ハァッもうダメだ‥疲れたっ

「カァーーッカァーーッ」

ビクッ!

空を見上げると大きな黒い翼を広げた烏が何羽も飛んでいる。

「‥増えたっゴホゴホッ!」

もうちょっとなのに‥

急いで立ち上がろうとする膝に痛みが走る。
.

⏰:10/06/21 15:26 📱:SH06A3 🆔:HyvEUMMI


#886 [のの子]
 
「カァーッカァーッ!!」

バサバサバサッ

っ!

つい足に気を取られていたぼくに向かって、黒い翼を大きく羽ばたかせながら烏が急降下してきた。

バサッ!バサッ!
「うわっ‥やめろっやっ‥痛っやだっ!!」

烏はぼくに大きな翼と足で何度もぶつかってくる。

「っ嫌だっやめろっ!やめっ‥」

どうして‥どうしてぼくばっかこんなめに‥
.

⏰:10/06/22 10:24 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#887 [のの子]
 
もうやだ‥

ぼくはただ震える体を丸くして烏から身を守るぐらいしかできない。

ぼくはなんて弱いんだろう。」

ぼくはこの世界にいらない‥だからみんなぼくをいじめるんだ‥

「痛っ‥グスッ‥‥」

「‥千‥くんっ―‥!!」
バサバサバサッ

「―‥千夏くんっ!」
「千夏っ!!」

烏の翼の音と一緒に男女の声が微かに聞こえた。
.

⏰:10/06/22 10:37 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#888 [のの子]
 
‥だれかいるの?

「カァーッカァーッ!」

バサッバサッ

ぼくは顔を上げる事もできない。

「うわっなんだよこれっ!このっ‥」
「カァーーッ!」

男の人と烏が戦ってるのかその音しか聞こえない。

だれ?

そこにいるのは‥だれ?

烏がぼくへの体当たりしなくなったので顔をゆっくりあげる。

グイッ

「やっぱ千夏君だぁ〜。大丈夫?」

あっ‥この人‥
.

⏰:10/06/22 10:42 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#889 [のの子]
 
後ろからぼくをかばうように覆いかぶさって、旬て人の友達のお姉ちゃんは

「もう大丈夫だよ。」

そう言って弱々しく笑った。

温かい‥

ぼくはただお姉ちゃんを見上げる。

「いってぇ!おいっ早くどっか逃げろよ!俺も烏怖ぇんだからっ!」

「あっうん!」
.

⏰:10/06/22 15:33 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#890 [のの子]
 
もう一人の男の人が大きな声をあげると、お姉ちゃんは慌てて立ち上がろうとする。

「カァーッカァーッ!」

バサバサバサッ

「聡美っ!」
「きゃっ!っ痛ぁ‥」

ぼくをかばおうとしたお姉ちゃんの腕を烏の爪が引っかいた。

「あ‥‥血がっ‥‥」

「あっちゃ〜、本当だ。」

腕から血がうっすら出ているのを見てぼくは青ざめる。
.

⏰:10/06/22 19:30 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#891 [のの子]
 
「ぼくの、せいだ‥ぼくのっ‥‥グスッ‥」

ぼくは悲しくて怖くてお姉ちゃんの前で涙をボロボロ流す。

「カァーッカァーッ!」

烏はそれを嘲笑うかのように何回か鳴くと、満足したのかすぐにいなくなった。

「聡美っ!大丈夫か?血出てるじゃんかよっ‥」

お兄ちゃんがぼくたちの所にくるとすぐにお姉ちゃんの腕を掴む。

「あはは、ごめんね。でも大丈夫だから。彰君も大丈夫?」
.

⏰:10/06/22 19:42 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#892 [のの子]
 
お兄ちゃんも腕に擦り傷が何個もあった。

ぼくのせいで‥

「とりあえず水で洗わないとな‥お前は大丈夫か?」

お兄ちゃんは泣いてるぼくの頭をポンポンと撫でる。

「千夏くんも擦り傷あるみたい。もう烏いなくなったから大丈夫だよ?」

ぼくは泣いたまま首を振る。

「あらら‥どうしよ?」

「どうしよっつってもなぁ‥また烏来ても嫌だし。行くぞっほらっ。」
.

⏰:10/06/22 19:52 📱:SH06A3 🆔:fqbVEA06


#893 [のの子]
 
「‥っ‥!」

お兄ちゃんはぼくを抱き上げる。

「聡美、悪いけど自転車持ってきて。」

「うん。」

お姉ちゃんが小走りで向かう先に買い物袋が入った自転車があった。

「グスッ‥う‥ごめんなさっ‥ぼくっ‥」

お兄ちゃんに抱っこされながらぼくは涙を拭う。でも涙はどんどん流れてきた。
.

⏰:10/06/23 10:59 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#894 [のの子]
 
「お前俺の弟よりデカいくせに泣き虫だな。別に大丈夫だから謝んな。」

ポンポンと優しく背中を叩く。

「うっグスッ‥ごめんなさいっごめんなさいっ‥」

「だから、俺もあいつも怒ってないって。な?」

ぼくはそのままお兄ちゃんにギュッと抱き着いた。

お兄ちゃんはハルよりも体がガッシリしていて、お兄ちゃんもぼくを抱きしめてくれた。

「もう大丈夫だよ、千夏‥」

‥‥温かい。
.

⏰:10/06/23 11:11 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#895 [のの子]
 
「お待たせ〜。」

自転車を持ってお姉ちゃんが笑って走ってきた。

「あれ、ギューッなんかして二人兄弟みたいだね。」

優しく笑ってぼくの頭を撫でてくれた。

「はいはい、それよりどっか洗えるとこ探すぞ。スーパー戻っても帰り遅くなるだけだし‥」

「でもこの先公園とかなかったよ?」

二人の会話聞いてぼくはある所を思い出す。

「グスッ‥‥ちょっと先に‥神社がある‥」
.

⏰:10/06/23 11:18 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#896 [のの子]
 
ぼくが向かっていた場所だ。

―――――――――


「大丈夫か?」

「うん、もう血止まってるし大丈夫。」

「千夏送りながら和彦さんとこで消毒してもらおう。」

「うん。千夏くんは大丈夫?」

ぼくは頷く。

「そっか‥良かったね。」

お兄ちゃんとお姉ちゃんの間に挟まれながら三人で神社のおさい銭箱の前に座る。

⏰:10/06/23 11:40 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#897 [のの子]
 
ザワザワザワ―‥

民家も近くに全くなく、静かな神社には緑の葉を揺らす風の音しか聞こえない。

「ってかお前なんで烏に襲われてたんだよ?なんか烏にやったのか?」

ぼくは首をふる。

「じゃなんで襲われたんだよ?」

ぼくはじっと膝の擦り傷を見つめる。

「‥黙んなよ、俺が虐めてるみたいじゃん。」

お兄ちゃんはため息をつく。ぼくはお兄ちゃんにため息をされたのが少し悲しかった。

「彰君、そんな冷たく言わないの。」
.

⏰:10/06/23 15:20 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#898 [のの子]
 
お姉ちゃんがぼくの頭に手をおく。

「千夏くん、お姉ちゃん達誰だかわかる?」

「そこからかよっ!」

お兄ちゃんを無視してお姉ちゃんが笑顔で俯くぼくの顔を覗き込んできた。

ぼくは少し驚いたけど、すぐ頷いた。

「‥旬て人の‥友達‥」

「そうそうっ。私は聡美で、お兄ちゃんは彰って名前なの。よろしくね?」

ぼくは頷いた。
.

⏰:10/06/23 15:29 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#899 [のの子]
 
聡美と彰‥

「私達バーベキューしてるんだけどね、二人で買い出しに来たんだ。春子さんにも会ったよ。」

お姉ちゃんはニコニコ笑って話す。

それを見てると不思議な気分になった。

「で、その帰り道に烏に襲われてるお前と遭遇ってわけ。」

お兄ちゃんも膝に肘をついてぼくを見つめてきた。


「ぼくは‥神社‥ここにお参りしに‥でも、烏が‥」
.

⏰:10/06/23 15:35 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#900 [のの子]
 
ぼくは二人の顔をチラチラと見つめた。

「時々‥時々だけどっ‥あいつら、ぼくを襲ってくるんだ‥だから今日も‥」

今日の烏はいつもよりしつこくて逃げ切れなかった。
「えぇっ!!時々っ?」
「‥時々襲われるってどんだけだよ。」

ぼくはすぐに言うんじゃなかったって思った。

気持ち悪がられたかな‥

ぼくはまた俯く。
.

⏰:10/06/23 15:40 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#901 [のの子]
 
「‥大丈夫だった?」

お姉ちゃんがぼくの頭を優しく撫でる。

‥‥‥あぁ‥まただ‥

「お前バットでも持ち歩けよ。烏撃退用バット。」

「彰君、変な事教えないでっ。」

「はいはい、冗談です。」

お姉ちゃんに睨まれてお兄ちゃんはクスクス笑った。

この二人‥
.

⏰:10/06/23 15:46 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#902 [のの子]
 
「神社には何しにきたの?お参り?」

お姉ちゃんはぼくには優しく笑ってくれた。

ぼくはお姉ちゃんを見つめて頷く。

「いつも来るの?」

「時々‥」

「時々神社に来て烏に襲われてんのか?」

「それも‥時々‥」

ぼくは膝をかかえる。

「烏に襲われるかもなのになんでお参りにくんの?願い事でもあんのか?」
.

⏰:10/06/23 15:50 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#903 [のの子]
 
ぼくは頷く。

「お願い事って?」

お姉ちゃんが首をかしげる。

ぼくは体育座りの形で更に小さく丸くなる。

「‥ゆ‥‥なく‥よ‥に」

「ん?」

二人ともぼくを見つめて首をかしげる。



「‥‥幽霊が‥見えなく、なりますように‥」


それがぼくの叶うことのない願い。
.

⏰:10/06/23 15:54 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#904 [のの子]
 

ザワザワザワ――――

二人は黙ったままぼくを見つめていた。

「ぼく‥幽霊‥見える‥」

あまり人に言っちゃいけないって先生にもハルにも言われた。

言ったらどうなるか、それは自分が1番わかってる。

でもお姉ちゃん達に言ってみたくなった。

この人達はぼくをどう思うのかな‥

気持ち悪がられても平気。
だってみんな同じ反応をするから‥

気持ち悪がるか偽善者になるかのどちらか。
.

⏰:10/06/23 16:03 📱:SH06A3 🆔:ewi2CokI


#905 [のの子]
 
ボーッと前を見つめるぼくに二人の視線が感じる。


「やっ‥やっぱりーっ!旬君が修業とか言ってたからもしかしてって思ってたんだー!」

「こいつ怖い話ダメだから幽霊いたらすぐ言っていいぞ。」

「え‥‥?」

「ちょっ彰君やめてよ!千夏くん言わないでっ。私本当怖いのダメだからっ!」

「えっ‥あの‥」

「ん?幽霊でもいたか?」

「もうーっ彰君本当やめてってばー!」
.

⏰:10/06/24 10:41 📱:SH06A3 🆔:cQms/rXw


#906 [のの子]
 
「あっ‥いっいないよ?」

ぼくは耳を抑えるお姉ちゃんの服を掴む。

「本当に?」

「うん‥ぼくたちだけ‥」

お姉ちゃんは安心したのか苦笑いしながら耳から手を離した。

「良かった〜‥」

「っと見せかけ本当はお前の後ろにっ!
「もうーっ怒るよ?あっきー!」

「なんでそこであっきーって呼ぶんだよっ。」

お兄ちゃんが少し恥ずかしそうにするとお姉ちゃんは笑いながらベーッと舌をだした。

⏰:10/06/24 10:46 📱:SH06A3 🆔:cQms/rXw


#907 [のの子]
 
「千夏くんもあっきーって呼んでいいからね?」

「勝手に承諾すんな!」

この人達変わってる‥


「あっ千夏くん笑った。」

「本当だ。」

なんでかぼくもつられて笑ってた。

「っ‥お姉ちゃん達‥変わってる‥よね。」

「失礼なガキだな。」

お兄ちゃんがムスッとする。

「‥怖くないの?ぼくの事‥気持ち悪く‥ない?」

ぼくは膝をかかえる。
.

⏰:10/06/24 17:51 📱:SH06A3 🆔:cQms/rXw


#908 [のの子]
 
「ぼく小さい頃からあいつらが見えて‥周りから頭おかしいとか、嘘つき‥とか言われて」

これはぼくが胸に抱える暗い過去であり、ぼくの人生。

「最後には‥父さんにも捨てられた‥先生のところに預けるって言って‥もうぼくを迎えに来ないんだ‥」

ぼくは‥いらない。

ぼくもいらないと思う。

だってぼくはぼくが気持ち悪くて怖くて嫌いだから。
.

⏰:10/06/24 18:00 📱:SH06A3 🆔:cQms/rXw


#909 [のの子]
 
「お母さんも、小さい頃に‥死んじゃった‥」

ぼくの記憶が正しければ、初めて見た幽霊はお母さんだった。

「ぼく、疲れたよ‥どんなに頑張っても‥みんな、ぼくをいらないって言うから‥もう消えてなくなりたいっ‥」

声が震えた。

「‥それが全てじゃないよ?」

お姉ちゃんがぼくの頭を優しく撫でる。

「千夏くんが思っているよりも、いっぱいの人がこの世界にはいるの。」
.

⏰:10/06/25 09:38 📱:SH06A3 🆔:WsYkI2lE


#910 [のの子]
 
「今私達と出会ったように、これからもたくさんの人と出会っていくから‥全ての人を否定するのはダメ。理解してくれる人だっているよ?」

ぼくの頭に先生やハルや春子さんの顔が浮かんだ。

「全てを否定すると周りも自分も未来も‥わかんなくなるぞ。俺もこの前まで似た感じだったし。」

ぼくはお兄ちゃんをチラッ見上げる。

「それに辛い事は皆あんだよ‥辛い事に大きいも小さいもない。みんなそれなりに傷ついてる。」

みんなも‥‥?
.

⏰:10/06/25 17:20 📱:SH06A3 🆔:WsYkI2lE


#911 [のの子]
 
「でも‥ぼくは変だもん‥幽霊見えるなんて‥」

「でも旬もハルも見えるんだろ?そんだけいりゃ珍しくもなくなるね。」

お兄ちゃんが呆れた表情をする。

「お兄ちゃんはっ‥辛い事あった‥の?」

「あった。」

お兄ちゃんはキッパリそう言ったけど悲しい表情をした。
.

⏰:10/06/25 17:23 📱:SH06A3 🆔:WsYkI2lE


#912 [のの子]
 
「すごい大切だった彼女が‥俺の前で事故って死んじゃった。自分のせいだって責めた。‥責めまくったよ。」

「私もね、昔だけど声が突然出なくなって虐められたの。途中からまるで透明人間になったみたいだったなぁ。」

二人とも悲しそうに、でも懐かしむかのようにふっと笑っていた。

「‥なんで笑えるの?」

ぼくはそんな上手く笑えない。

「なんでって‥なんで?」

お兄ちゃんがお姉ちゃんを見た。ぼくも一緒にお姉ちゃんを見つめた。
.

⏰:10/06/26 09:16 📱:SH06A3 🆔:oBjWdxLA


#913 [のの子]
 
「えっ私?ん〜‥今を大切にしてるからかな。」

大切にする‥?

「実はね、あっきーの死んじゃった彼女さんて、私のお姉ちゃんなの。」

「‥えっ?」

「そうそう、俺達はお互い何も知らないで出会ったんだよ。知った時は運命感じた、本当‥」

「うん、わかるわかる。近いようで遠い存在だったもんね。でも私達は知り合って仲良くなって、お互い大切な人を失った傷を持ってて‥でも私達は今生きてるから。」
.

⏰:10/06/26 14:36 📱:SH06A3 🆔:oBjWdxLA


#914 [のの子]
 
「辛い過去を持っていたって今を生きなきゃいけない。私達には未来があるでしょ?未来は今の私達が決めるから今を大切に精一杯生きる、そして未来は幸せになるぞーっていう心構え?‥やっぱよくわかんない。」

最後の最後に首をかしげて終わらせたお姉ちゃんをお兄ちゃんは笑った。

「結局はだな、過去に捕われずに今をしっかり生きれば未来に繋がる‥みたいな事だよ。まぁおれもよくわかんないけど。」

二人してわからないって言うとクスクス笑っていた。

「‥‥でも、未来に期待したって‥意味ない。変わらないよ‥」

ぼくは一人笑わなかった。
.

⏰:10/06/27 11:18 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#915 [のの子]
 
「別に未来に期待しろって事じゃない。ただ今をちゃんと生きるんだよ。」

「うん、未来は今の千夏くんでどうにでも変わるんだよ?」

今のぼく?

「よくわかんない‥」

ぼくは二人の気持ちがわからなくて俯く。

「ならそうだな‥旬にでも聞いてみれば?」

旬‥あの人もたくさん笑ってたな‥

「それいいかもっ!ちょっと旬君じゃ不安だけど、1番千夏くんの気持ちわかるもんね。」
.

⏰:10/06/27 11:35 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#916 [のの子]
 
「千夏もちょっと俺らのバーベキュー顔出してみろよ。」

「‥でも先生が‥いいって言うか‥」

「じゃ消毒ついでに聞いてみようよっ。って私達また遅刻じゃないっ?!もう一時間たつよっ!」

二人が慌てて立ち上がる。

「ってか肉腐ってねぇかな‥」

「やっやばいよ〜!早く行こうっ!」
.

⏰:10/06/27 11:38 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#917 [のの子]
 
「また走んのかよ〜っ。ほらっ千夏も行くぞ。」

「千夏くん、おいで?」

お兄ちゃんはぼくを見つめて、お姉ちゃんはぼくに手を差し延べてきた。

「あっ‥うん‥」

ぼくはお姉ちゃんの手を握る。

お兄ちゃんとお姉ちゃんに挟まれて三人並んで小走りする。

やっぱり温かい‥

ぼくお兄ちゃんやお姉ちゃんが、お父さんとお母さんだったらいいのにって思った。

⏰:10/06/27 16:54 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#918 [のの子]
 
ぼくがまだ幼稚園生の時、お母さんは買い物に出掛けて事故で死んじゃった。

ぼくは家にいて、買い物に出掛けたお母さんが突然ぼくの目の前に現れてびっくりしたのを覚えてる。

お母さんはそんなぼくを見て何も言わずにただ笑っていた。

その後事故の報告を受けてお父さんと病院に行った。でもお母さんはぼくの横にいるよって言ったら怒られた。

ぼくもお母さんも悲しい顔をした。

お母さんのお葬式が終わるとお母さんは本当にいなくなった。
.

⏰:10/06/27 17:07 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#919 [のの子]
 
それからぼくは幽霊を見るようになった。

声をかけてくる奴もいれば追い掛けてきたり驚かしてきたり、ぼくを仲間にしようとしてくる奴もいた‥

ぼくは他のみんなには見えない奴らにいつも怖がってたら頭がおかしいって言われるようになった。

お母さんが死んじゃったせいだって言われてぼくは悲しかった。

お父さんに相談した。

ぼくは普通じゃない。幽霊が見えるんだよ、って。
.

⏰:10/06/27 17:12 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#920 [のの子]
 
そしたらお父さんはとても悲しそうな目でぼくを見つめる。

なんでそんな事ばかり言うんだ、お父さんを困らせたいのか、お前がそれじゃお母さんが悪く言われて可哀相だろっ、嘘つきは嫌いだって言われた。

‥信じてくれなかった。

ぼくは泣いた。たくさん泣いたけど、お父さんもお母さんももうぼくの横にはいてくれない。

ぼくは一人ぼっちになった。

⏰:10/06/27 17:18 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#921 [のの子]
 
そして先生達のところへ預けられた。

初めてぼくと同じように幽霊が見える人に会った。

でもぼくとは違う。

先生もハルも友達や家族が傍にいるもん。

ぼくにはいない。

結局ぼくは一人ぼっちだ。

でも先生達はぼくを家族として傍にいてくれる。

嬉しかった。

⏰:10/06/27 19:08 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#922 [のの子]
 
でも、ぼくは本当の家族じゃないから。

羨ましかった。

ぼくは寝る前に考える。

もしぼくが幽霊なんて見えなかったら‥

見えてもそれを受け入れてくれる家族がいたら‥

そんな事ばかり考えてると寂しくなるから時々ハルと一緒のお布団で寝る。

夢は見ない。
.

⏰:10/06/27 19:12 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#923 [のの子]
 
でも、お兄ちゃんとお姉ちゃん達に触れて一緒にいるとね

思っちゃうんだ‥

烏から助けてくれた時も

ぼくに優しく触れた時も

笑ってくれた時も

こんな家族が傍にいてくれて、愛されたら幸せだろうなって。
.

⏰:10/06/27 19:15 📱:SH06A3 🆔:rbRiBuR6


#924 [のの子]
竜二Side

――――――――

「ってかさ〜‥遅くね?」

「あの二人怪しいな。」

「ふざけた事言うなよっ。」

「そうだよ〜。」

「でも遅すぎません?何かあったのかも。」

「何かってなに?」

「「「‥‥さぁ?」」」
.

⏰:10/06/29 09:09 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#925 [のの子]
 
みんなが俺に聞こえないようコソコソと話しているのを気にしながら、まだ戻って来ない二人をただ静かに待つ。

なんでこんな遅いんだよ‥

「なんかあったのかな?」

段々とイラつきから不安に変わってくる。

ってか遅くなるなら連絡の一つぐらい入れろよなっ!

ため息をつくと、旬達が俺の方をじっと見つめる。

‥‥‥‥‥はぁっ

「なに?」
.

⏰:10/06/29 09:14 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#926 [のの子]
 
「俺の顔になんかついてる?」

俺は旬達を睨む。

「いや〜っあのさ‥竜二やっぱまだ聡美ちゃんの事好きっしょ?」

「‥はっ?意味わかんない。」

俺は更に旬を睨む。

「だって今機嫌悪いのとか付き合ってた頃と同じ感じだぜ?」

「あははっ顔に『聡美は俺のもんだーっ』って書いてあるよぉ?」

桃ちゃんまでクスクス笑い出す。

⏰:10/06/29 09:19 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#927 [のの子]
 
俺はつい頬を触る。

って書いてある訳無いか‥

「聡美ちゃんとは友達だよ。」

「俺達から見ればそんな風に見えないって言ってんの。」

旬が呆れた顔で笑う。

「でも竜二君の言う通りもう別れてるんですし、二人の事はあまり干渉しない方がいいんじゃないですか?」

鈴が旬に食ってかかる。

「そっちこそ好きだった男にあんま干渉しない方がいいんじゃないの?っていうかまだ好きとか?」
.

⏰:10/06/29 09:38 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#928 [のの子]
 
うわっでた、旬の辛口‥

笑顔で辛口コメントを吐いた旬を鈴は信じられないと口を開けて呆然とする。

「まっまたそうやって私の事ばっか悪く言って‥本っ当旬君て私の事嫌いなんですねっ!」

「嫌いじゃないけど嫌いなとこあるよ?」

「なっ‥直人ぉーっ!」

鈴は旬から逃げるようにフクに抱き着く。
.

⏰:10/06/29 14:35 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#929 [のの子]
 
「あれっ、俺悪い事言った?」

「お前のその無意識なとこ憧れるわ‥」

「憧れなくて結構です!」

鈴がそう言うとみんな笑い出した。

「はははっ‥あぁっ帰ってきた!」

旬が立ち上がる。

っ!

「遅くなってごめんねぇ〜。」

聡美が手を振っているのが見えた。

⏰:10/06/29 14:39 📱:SH06A3 🆔:tWtvyYGo


#930 [我輩は匿名である]
 
気まずそうに手を振る聡美の後ろに悪びれもなく欠伸をする彰も見えた。

少しほっとしながら、でも複雑な気持ちで二人を見つめる。

あれっ?

「お帰りーっ‥って遅すぎっ!心配した
「聡美ちゃんっ!」

俺は聡美にかけよると腕を掴む。

「どうしたのっこれ‥?」

掴んだ腕には包帯が巻かれていた。

「あっこれ?これは‥ちょっと怪我して‥でも大丈夫っ!和彦さんの所で消毒もしてもらったしっ!」

「本当だ。ってか彰もじゃん!どうしたんだよ?」

彰を見ると彰も腕に絆創膏を何箇所に貼っていた。
.

⏰:10/07/09 22:10 📱:SH06A3 🆔:wr0cHXs.


#931 [のの子]
↑我輩は〜になっていますがのの子本人です


「烏と戦った。」

「はっ?カラスってあの鳥のカラスッ?!」

彰と旬達が騒ぐ横で、俺は聡美の腕を掴んだまま包帯を見つめる。

「竜二君、私なら大丈夫だからっね?」

「‥でも包帯までして、怪我ひどいんじゃないの?」
俺はキュッと力を入れる。

「ちょっと切れただけなんだけど一応って和彦さんが‥本当はたいしたことないんだよ?」

「‥ごめんなさい‥お姉ちゃんの、怪我‥ぼくのせい‥」

っ!

「あっ千夏くんっ♪」
.

⏰:10/07/09 22:21 📱:SH06A3 🆔:wr0cHXs.


#932 [のの子]
 
「‥なんでいんの?」

聡美の後ろに隠れていたのか千夏が急に顔をだす。

「お姉ちゃん‥やっぱりぼく帰
「うわっ千夏いんだけどっ!なんでっ?迷子っ?」

旬がすぐ千夏を見つけると驚いて大きな声をだす。

「ぼく‥」
「千夏が肉食いてーしカレーも食いてーって言うから連れてきた。」

彰が荷物をテーブルに起く。

「別にいいっしょ?」
.

⏰:10/07/09 22:30 📱:SH06A3 🆔:wr0cHXs.


#933 [のの子]
 
みんな急な事に目が点になる。

「俺はみんながいいなら別にいいよ〜♪」

博也が早速買ってきた荷物をあさりながら言う。

「んー、まぁいいんじゃない?」
「俺もいいよ。」

みんな笑って頷く。

「よしっじゃ今日酒飲んだ俺らを看病する係りは千夏に決定ーっ!」

旬が笑いながら千夏を指差した。

⏰:10/07/09 22:36 📱:SH06A3 🆔:wr0cHXs.


#934 [のの子]
千夏Side

―――――――

「だぁかぁらぁーっ!俺玉ねぎ嫌いなんだって!」

「ガキじゃねーんだから玉ねぎぐらい食えよっ!」

「玉ねぎ臭くて辛いしっ嫌なのっ!食えないっ!」

「でも千夏は食ってんじゃんかよ!」

ぼくは玉ねぎを掴んだ箸を止める。

「でもじゃねーしっ!千夏は食えても俺は食えないのっ!」
.

⏰:10/07/13 13:34 📱:SH06A3 🆔:m2zw4P1U


#935 [のの子]
 
旬と博也っていう人が玉ねぎを食べる食べないでさっきからもめている。

「お前最っ低ぇだな。千夏の前でさ‥カッコ悪ぃ。」

「いやいやっ玉ねぎの事でそこまで言われたくねぇんだけど‥」

旬はふんっと博也を無視してぼくの隣に座った。

「千夏、あんな玉ねぎ嫌いで馬鹿で女ったらしで腹黒い奴にはなんなよ‥?」
「聞こえてんだよっテメェはっ!」

ぷっ‥

「‥うん、わかった。」
.

⏰:10/07/13 13:41 📱:SH06A3 🆔:m2zw4P1U


#936 [のの子]
 
「千夏お前も素直に頷くなっつーのっ!」

博也がぼくをおでこを突く。

「だって‥旬は‥ぼくの先輩、だから‥それにハルが、旬みたくなれって‥」

「はぁっ?ったくハルは旬を買い被りすぎなんだよなぁ。」

不満そうにブツブツと話す博也をじっと見てると、旬がぼくの頭を撫でてきた。

っ?

「千夏は千夏っ!‥それでいいんだよ。」
.

⏰:10/07/13 13:45 📱:SH06A3 🆔:m2zw4P1U


#937 [のの子]
 
ぼくはぼく‥

「そうだよ、千夏。旬みたくなったら馬鹿にな
「うっせーっ!」

笑いながら博也の頭を掴んで揺さぶる旬は、ぼくとは違うって思った。

ぼくは旬みたく笑えないし、からかい合う友達もいない。

この場にいる皆が笑っている。ぼくを抜かして‥

あっ‥いた‥

ぼくは旬達の横を通ってある人の隣に行く。
.

⏰:10/07/20 20:50 📱:SH06A3 🆔:BmkLtJhU


#938 [のの子]
 
「ん?何か用?」

ぼくは首を振る。

「え‥っと‥俺子供嫌いじゃないけどさ、こういうの慣れてないっていうか‥」

困ったように笑うその人をぼくはじっと見つめる。

やっぱり‥

初めて見た時からぼくと似ているモノを感じた。

「りゅーじ‥疲れない?」

「別に疲れてないけど‥どうしたんだよ?」

りゅーじはぼくの頭を撫でながら目線を合わせるように座ってくれた。
.

⏰:10/07/20 20:58 📱:SH06A3 🆔:BmkLtJhU


#939 [のの子]
 
「あっ千夏泣かすなよ〜♪」

後ろから旬の声が聞こえる。

「うるさいっ。」

ふんっと鼻で笑いながら旬を睨むりゅーじは、ぼくに視線を戻す前に気づかれないよう一瞬だけ別の方向を見る。

「りゅーじ‥」

「ん?」

「嘘‥つくの、疲れない‥?」

りゅーじの目がハッキリとぼくを見つめた。

⏰:10/07/20 21:04 📱:SH06A3 🆔:BmkLtJhU


#940 [のの子]
 
「嘘って何?俺嘘ついてないよ。」

ニコッと笑うりゅーじをぼくは無表情のまま見つめる。

「ついてる‥りゅーじの笑顔‥嘘、でしょ‥?」

「‥‥‥なるほど。」

りゅーじは変わらずぼくを笑って見つめたかと思うと、また目線がずれた。

今度はぼくもりゅーじの視線の先を見る。

ほら‥やっぱり‥
.

⏰:10/07/21 17:49 📱:SH06A3 🆔:ikGbTw0E


#941 [のの子]
 
「聡美ぃ、焼きそばの麺ここにあったよぉ。」
「あっありがと‥っとじゃ〜まずはねぇ‥」
「先輩大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫っ♪焼きそばぐらい作れるもん。」


ぼくたちが見つめる先にお姉ちゃんが笑っていた。

りゅーじはお姉ちゃんを見つめる時一番嘘をつく。

口も目元も笑っていても、その奥の瞳が悲しさと絶望感を漂わせていた。
.

⏰:10/07/21 23:08 📱:SH06A3 🆔:ikGbTw0E


#942 [のの子]
 
それに気づいたぼくは、りゅーじとぼくは似ているって思った。

「‥千夏、嘘をつくのは悪い事とは限らない。俺は今を幸せに思ってる‥だから笑顔の秘密、内緒な?」

ぼくの頭を優しく撫でるりゅーじは、また悲しそうに笑っている。

ぼくは頷く事も、笑う事もできなかった。

りゅーじ、

それならどうしてりゅーじはそんな悲しそうに笑うの?

りゅーじはお姉ちゃんが好きなの?
.

⏰:10/07/22 10:33 📱:SH06A3 🆔:QDHnDQE6


#943 [のの子]
 
りゅーじは、辛くないの?

聞きたい事はたくさんあったけど、りゅーじが聞かれたくない事も聞かれたら困る事もわかったから何も言わなかった。

りゅーじはそのまま旬達の方へ行ってしまった。

一人になってぼくは椅子に座りながら皆をただ見つめる。

‥暖かい場所だなぁ

そんな事を思う。
.

⏰:10/07/22 10:40 📱:SH06A3 🆔:QDHnDQE6


#944 [のの子]
 
『‥み‥ぃ―‥た‥』

ビクッ!!

耳の奥に響く太い声がぼくの体を凍らせる。

ドクッ ドクッ ドクッ

『―‥ぃ‥け‥た‥』

ドクッドクッドクッ

目の前に見える温かな光景とぼくとの間に急に壁ができたみたいだった。

もう皆の笑い声も聞こえない。ぼくに聞こえるのは‥

『‥‥みぃつけた‥っ‥』
ドクンッ!

⏰:10/07/22 15:36 📱:SH06A3 🆔:QDHnDQE6


#945 [のの子]
 
――‥ヒヤッ
ゾクッ!

何かがぼくの耳に触れた。冷たくて、もうこの世のモノではない‥指が‥

ドクッドクッドクッドクッ

‥怖いっ‥誰か

「あっ‥‥たす‥っ」
『‥お前‥見えるのか‥』
ビクッ!!

ドクッドクッドクッドクッ
ぼくのすぐ後ろにいるそいつに睨まれている気がして体が動かない。
.

⏰:10/07/22 15:44 📱:SH06A3 🆔:QDHnDQE6


#946 [のの子]
 
『‥見える‥んだな?』

真っ白な手がぼくの頭の両脇から伸びて現れた。

怖い怖い怖い怖い怖いっ

「あっ‥‥やめ‥っ‥」

触れてもいないその両手はただぼくの両脇で手首をダランと下げている。

でもぼくは落ち着く事も逃げる事もできない。

もうぼくはそいつの腕の中にいるようなもんなのだ。

そいつが腕を曲げればぼくを捕まえ、暗闇に連れていく。

誰にも見つからない暗闇に‥‥‥
.

⏰:10/07/22 15:51 📱:SH06A3 🆔:QDHnDQE6


#947 [のの子]
 
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ

「ハァッハァッ‥ッ‥ゴホッゴホゴホッ!‥ハァッ‥」

口を手で覆う。

ぼくはあいつらが近くにいると恐怖心から咳がでる。時には喘息のように、息が上手くできなくなる。

ハァッ‥苦しっ‥


「こらっ!」
コツンッ
―――っ!

「何一人でボーッとしてんだよ、こっち来て食え食えっ!」

頭を上げると旬がぼくの目の前に立っていた。

太陽の光が逆光して旬の顔が見えない。
.

⏰:10/07/23 11:19 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#948 [のの子]
 
‥旬っ

「ゴホゴホッ‥ッ‥ハァッ旬‥」

ぼくは旬に手を伸ばすと腕にしがみつく。

「ん?どうした、熱中症か?」

旬がぼくの額に流れる汗に触れる。

いつの間にか真っ白な手も、冷たく低い声もいなくなってた。

でもぼくの体は震えが止まらない。

あいつらは消えない‥
今もどこかからぼくを見ているはず‥
.

⏰:10/07/23 11:33 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#949 [のの子]
聡美Side
――――――――

―‥ザァーーッ

「信じらんないねぇ‥」

「うん‥まさか、ねぇ。」

ゴロゴロ‥‥ドカーッン!

桃と私の肩がピクッと震えた。

「山の天気は変わりやすいって言いますけどここまで変わるとはですね。」

鈴ちゃんも外を見つめる。

「これじゃ星見れないよねぇ。」

ぶすっとする桃を横に私も外を見つめる。
.

⏰:10/07/23 11:39 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#950 [のの子]
 
「そうだよねぇ‥」

1時間ほど前は青い空だったのが、今は黒い雲に覆われ凄まじい雨と雷になっていた。

楽しみにしていた花火も星もこのまま雨が止まないと見れない。

「流れ星‥見たかったなぁ。」

「何かお願いでもする気だった?」

振り返ると彰君が立っていた。

「秘密〜。それより千夏くんは?」

「ん、今さっき寝たとこ。和彦さん達にも連絡したんだけどこの雨だし、やっぱこのまま泊めてやってくれってさ。」
.

⏰:10/07/23 17:44 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#951 [のの子]
 
「でもぉ千夏くん自体は帰りたがってるんでしょう?いいのかなぁ‥私達幽霊なんて見えないから助けたくても助けらんないよぉ?」

桃がテーブルに顔をつける。

「千夏くんに見えてぇー、私達には何も見えなぁい。それって逆に可哀相じゃぁん‥」

「‥‥‥‥‥‥。」

1時間前、千夏くんが突然体調を崩したと思ったらこんな天気になって皆少し不安がっている。

幽霊が見える千夏くんが何かに怯えているのはすぐにわかった。

体調を崩してから旬君から離れようとしない。

つまりそれは旬君だけ自分と同じような人間だから、助けを求めているのだ。
.

⏰:10/07/23 17:54 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#952 [のの子]
 
外国で日本人に出会えて少しほっとするあの感じ‥なのかな。

「でも今離れたらさ、それは千夏にとったら拒否されたように感じるんじゃない?」

「あっお疲れさま、大丈夫だった?」

竜二君と博也君が髪をタオルで拭きながらリビングに入ってくる。

突然降り出した雨でそのままだったバーベキューの道具らを二人で一緒に片付けてくれてたのだ。

「大丈夫だよ。その変わり先にお風呂入らせてもらっちゃったけど。」
.

⏰:10/07/23 21:56 📱:SH06A3 🆔:rbwdegx.


#953 [のの子]
 
「そっそんなの全然大丈夫だよっ。風邪ひいちゃったら大変だし‥」

優しく笑う竜二君の髪は濡れていて、首にかかったタオルに雫が落ちる。

‥うぅ‥‥かっこいい

こんな時に私ってば何ドキドキしてるのー!

バシッ
「いったー‥」

「‥お前いちいち顔赤くしてんじゃねぇよ。」

彰君が私の頭を叩くと小さな声で喝を入れてきた。

「うっすみません‥」

頭をさすりながら私は小さくなる。
.

⏰:10/07/24 10:57 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#954 [のの子]
 
「ってか喉渇いたぁ!もう一杯やっていい〜?」

博也君が冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

「えっもう飲むのっ?」

「だって働いてお風呂入ったらもう極楽タイムでしょ〜♪えぃっ!♪」

プシュッと缶ビールの開く音がしたかと思うと

「プハァーッ!やっぱ夏の夜はこうでなきゃねぇん♪皆も飲めばぁ?」

飲めばってまだ5時になったばっかりなんですけど‥
「せっかく来たんだし、楽しまなきゃっしょ!」
.

⏰:10/07/24 11:03 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#955 [のの子]
 
「じゃ俺も貰おっかな。」

「えぇっ!」

意外にも竜二君が1番最初に缶ビールに手を出した。

「いや、だって俺らが悩んでても何も解決しないし、それなら千夏が起きた時普通に笑って楽しんでる方が良いかなって。」

まっまぁ確かにそうかもだけど‥

「それもそうかもな。俺も適当に貰うわ。」

彰君まで冷蔵庫を漁りだす。

「彰君が飲むなら私もいただきまぁす。」

鈴ちゃんまでっ!!
.

⏰:10/07/24 11:09 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#956 [のの子]
 
「ってかフクはぁ?どこぉ?」

桃がほっぺを膨らましながら博也君達を睨む。

「そっそうだよ!それに旬君もいないのに先に飲むのも‥」

「旬ならもう千夏の横で一人で飲んでたよ。あいついつの間に酒取ったんだか‥」

「えぇっ!もう何それぇ、千夏くん大丈夫なのかな?」

私の肩が段々重くなる。

みんな、なんて自由なんだ‥

「フク部屋で寝てたよ〜。疲れちゃったのかねぇ。」.

⏰:10/07/24 11:16 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#957 [のの子]
 
「寝てるのっ?もう〜‥桃フクの所行ってくるぅ。」

桃がムスッとしながら歩くと

「あっ一応戻ってくるまで部屋には入らないでねぇ♪ばいばぁい♪」

「はっ?直人に変な事
バタンッ!

鈴ちゃんの事を無視して最後にニコッと笑いながら桃はリビングから出ていった。

「‥ありゃ襲う気だね。」

「いやっやめてください!‥ってかなんで私がこんな目に合わなきゃ‥」

クスクス笑う博也君の横で鈴ちゃんはお酒をぐいぐい飲んだ。
.

⏰:10/07/24 11:21 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#958 [のの子]
 
「お前も飲めば?」

彰君が桃のチューハイを渡してきた。

「えっ‥私は‥」

「もうみんな飲みだしちゃったんだし飲んじゃおうよ。」

竜二君まで缶ビール片手にニコッと笑う。

「それともお前酔ったら人変わっちゃうとか?」

っ!

彰君がクスクス笑うのを前に私は固まる。

「聡美ちゃん?」
.

⏰:10/07/24 11:40 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#959 [のの子]
 
「ぁっ‥あのっ私お風呂入りたいから入ってきます!じゃっ!」

「「えっ!」」

私は二人に手を挙げて素早くリビングから女子の部屋に向かう。

フクと桃がいるのは男子の部屋だろうし会う心配もないと思うと小走りになる。

―――パタンッ

静かな部屋に入ると黙ったままベッドに座る。

「‥‥‥‥どうしよう。」

『それともお前酔ったら人変わっちゃうとか?』

彰君の言葉が頭にこだまする。

⏰:10/07/24 17:03 📱:SH06A3 🆔:i9xhtV8Q


#960 [のの子]
 
どうしよう‥でももうみんな飲んじゃってるし〜っ

「私お酒飲むと‥あんまよろしくないって言われてるのに‥」

私はう〜‥っと頭を抱える。

確か前にまこ姉と昇さん達に誘われてお酒飲んだけど、次の日まこ姉に人前であまり飲むなって言われたんだ‥

―――――――

『聡美、あんま仲良くもない人の前でお酒飲まない方がいいよ‥』

『えっなんで?私なんか昨日しちゃった?』

『本当に覚えてないの〜?うっ気持ち悪‥ってかなんでそんな元気なのよ‥』

『全く覚えてないっ!えぇ〜‥昇さん達になんかしちゃった?』
.

⏰:10/07/26 10:10 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#961 [のの子]
 
『忘れてんなら忘れたままの方がいいよ‥あぁーっもう無理っ!頭痛いし気持ち悪いっ!聡美みっ水持ってきて!』

『えぇっもう〜、まこ姉結構飲んだの?』

『うぅ〜‥いいから水〜‥』

『ちょっもうどんだけ飲んだのぉ?はいっ水!』

『ん゙ーっ‥アレを覚えてないなんて小悪魔ねぇ‥』
『なにが?』
―――――――
.

⏰:10/07/26 14:41 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#962 [のの子]
 
二日酔いのまこ姉はそれ以上教えてくれなかった、っというか話せるような状態じゃなかったし..

「ちゃんと聞いとけば良かった‥」

確か昇さん達にも聞いたらまこ姉と同じように人前であまり飲まない方がいいって言われたんだよね。

それからお酒なんて飲む機会なかったし、

どっどうしよ〜‥!!

「でも飲まなきゃノリ悪いとか思われるかな‥」

きっとフクと桃も飲むよね。

⏰:10/07/26 14:48 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#963 [のの子]
 
一か八か飲んじゃうっ?

いやいやっでも皆に迷惑かけたら嫌だしそれにっ‥

それに...

「酔っ払って変なとこ見られたくない‥」

1番に竜二君の顔が浮かんだ。

恥ずかしいもんっ!それに嫌われたくないし‥

‥彰君だったらきっと笑ってネタにしてきそうだなぁ。うん、絶対そうっ!

「‥はぁっとりあえずお風呂入っちゃおうかな。」
.

⏰:10/07/26 14:53 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#964 [のの子]
 
私は誰にも見つからないようコソコソとお風呂場に向かう。

お風呂場に向かう途中、リビングから皆の笑い声が聞こえてそれがちょっと胸にチクンッと刺さった。

お風呂は家のお風呂より少し大きくて、一人で入るとのんびり足が延ばせる。

「んー‥っはぁ、お風呂出たらどうしようかなぁ‥」

ってかカレー作ってない‥

「私はカレーでも作ろうかな。」
.

⏰:10/07/26 21:51 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#965 [のの子]
 
きっと千夏くんが起きたらお腹空いてるだろうし

「うん、甘口のカレー買っといて良かったぁ♪」

そうだよっ千夏くんもいるんだし私一人飲まなくても大丈夫だよね!♪

千夏くんの存在を思い出してほっとした私は湯舟から上がる。

よしっさっさと出てカレー作らなきゃ!

体を洗ってサッパリしたからか、お風呂に入る前の胸の痛みはなくなっていた。
.

⏰:10/07/26 21:57 📱:SH06A3 🆔:yJjfQO6g


#966 [のの子]
みなさんへ。

いつも読んでくださってありがとうございます
ピンクな気分。Uはキリがいいのでここで終わりにしますUの続きはVに書いていきますね

長期の小説になってしまって申し訳ないです

これからも皆さんに楽しんでいただけるよう最後まで書いて行くので宜しくお願いいたします
.

⏰:10/07/27 10:53 📱:SH06A3 🆔:tHxKU.56


#967 [我輩は匿名である]
>>1〜100
>>101〜200
>>201〜300
>>301〜400
>>401〜500
>>501〜600
>>601〜700
>>701〜800
>>801〜900
>>901〜999

⏰:10/08/06 23:15 📱:SH706i 🆔:5ZscoBMA


#968 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-999

⏰:10/08/06 23:18 📱:SH706i 🆔:5ZscoBMA


#969 [我輩は匿名である]
あげ↑↑

⏰:11/05/18 12:50 📱:SH001 🆔:KSv4oJN6


#970 [ケ]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

失礼しましたホ

⏰:11/07/18 00:16 📱:S006 🆔:eE5MJ782


#971 [ん]
>>800->>1000

⏰:11/08/11 03:45 📱:P02C 🆔:TGMkQKsI


#972 [ん]
>>800-1000

⏰:11/08/11 03:46 📱:P02C 🆔:TGMkQKsI


#973 [我輩は匿名である]
あげます

⏰:12/04/12 23:20 📱:Android 🆔:SyDVKXA.


#974 [我輩は匿名である]
>>36-50

⏰:12/04/14 08:46 📱:K002 🆔:ZhUITpDo


#975 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-100
😿💯

⏰:22/10/02 01:20 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#976 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/02 01:54 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#977 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/07 13:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#978 [○○&◆.x/9qDRof2]
↑(*゚∀゚*)↑(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/24 14:09 📱:Android 🆔:JMKv58vc


#979 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/24 19:48 📱:Android 🆔:JMKv58vc


#980 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>940-970

⏰:22/10/24 19:49 📱:Android 🆔:JMKv58vc


#981 [○&◆oe/DCsIuaw]
↑(*゚∀゚*)

⏰:22/10/25 20:19 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#982 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:23/01/01 20:48 📱:Android 🆔:2rUS2lJ.


#983 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age

⏰:23/01/10 10:08 📱:Android 🆔:nQ6dQ5MU


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