ピンクな気分。U
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#300 [のの子]
 
×昇さんが指差したのは
○亮さんが指差したのは
.

⏰:09/11/28 22:23 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#301 [のの子]
 
初めて昇さん家に来た‥

カチャ

「ようこそ昇ん家へ〜。暑いしクーラーつけようぜぇ。」

ズカズカと部屋に入っていく亮さんに続けて、俺は遠慮がちに入っていく。

「何か飲む?」

「えっ?えっと‥」

「烏龍茶かコーラどっちがいい?」

「じゃ烏龍茶で。」

亮さんは手慣れた手つきで冷蔵庫やグラスを取り出す。

⏰:09/11/28 22:35 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#302 [のの子]
 
「座れば?」

烏龍茶を手に亮さんが窓の近くに座った。

「ども‥」

俺は亮さんと向かい合うように座る。

「それで?話って何?」

亮さんが俺をじっと見つめる。

ドクン

「‥亮さんは二ノ宮聡美って知ってますか?」

俺も真っ直ぐ亮さんを見つめる。

⏰:09/11/28 23:35 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#303 [のの子]
 
「‥知ってるよ。」

亮さんがテーブルに肘をつく。

「そいつ俺の友達なんです。前に昇さんとも駅前で会って‥」

「あぁ聞いた聞いた。なんかさとちゃんを昇から守ったらしいじゃん?」

クスクス笑う亮さんとは逆に俺の頭にあったのは

『さとちゃん』

昇さんも同じ呼び方だった‥

「聡美とはいつから知り合いなんですか?」
.

⏰:09/11/28 23:44 📱:SH06A3 🆔:ehzfiJGc


#304 [のの子]
 
ドクン

「いつって‥二年ぐらい前かな。確かお前と同じ時期ぐらいに初めて会った。」

灰皿のない昇さんの部屋に、亮さんが吸っているタバコの煙が溶け込んでいく。

ドクン

「あのっ‥聡美って‥」

「なに?」

「いや‥あの‥‥あいつは真琴の‥妹、ですか?」

「はっ?」

ストレートにぶつけた俺の質問に驚くこの人は、どう返してくる気だろう。

⏰:09/11/29 20:14 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#305 [のの子]
 
俺はじっと亮さんを見つめながら、頭では聡美の泣き顔を思い出していた。


聡美

お前は一体

誰なんだ?


「そうだけど‥知らなかったのか?真琴は三姉妹の真ん中で、さとちゃんは末っ子だよ。」

‥‥やっぱり‥

亮さんのタバコの煙が揺れて見えた。

⏰:09/11/29 20:18 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#306 [のの子]
 
「やっぱり‥真琴の妹だったのかよ‥」

俺はうなだれるように頭をかかえる。

「妹ってのがなんか関係あんの‥?」

「‥真琴のですよ?俺のせいで死んだ真琴の妹だなんてっ‥もう会えない。」

「なんで?」

「だからっ!‥俺のせいであいつは
「お前まだそんな事思ってんのかよ。めんどくさい男だな。」

「‥‥‥‥‥っ」
.

⏰:09/11/29 20:24 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#307 [のの子]
 
下を向く目から涙が落ちる。

「なんで泣いてんの?‥真琴が死んだから?それとも聡美が真琴の妹だったからか?」

「‥そうですよっ。」

聡美‥ごめん。

真琴は俺のせいで死んだんだよ。

お前の姉貴は俺が殺したんだ‥

「いや、違う。」

「えっ‥?」

顔を上げると亮さんがタバコを持っている手で俺を指差していた。

⏰:09/11/29 20:30 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#308 [のの子]
 
「お前が泣いてんのは真琴とか妹とかじゃない。」

窓から入る光で亮さんの髪が明るく見えた。

「未来が見えなくなったからだろ?やっと真琴から解放されると思ってたのに‥」

未来‥解放‥?

「違うっ‥俺はそんな事思ってない。」

「違わない。」

「そんな事ないっ!俺は真琴をずっと
「彰、お前さとちゃんに惚れてんだろ?」

ドクン
.

⏰:09/11/29 20:36 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#309 [のの子]
 
「‥‥‥‥はっ?」

「お前が今泣いてんのは、さとちゃんを好きになる事は許されない事だって思ったからだよ。」

何を言ってんだ‥

俺が聡美に惚れてる?

「いや‥マジで意味わかんないですからっ有り得ませんよ。」

「有り得ないってなんで?」

亮さんは窓を少し開けてベランダにあるビールの空き缶にタバコを捨てた。

「もうこの世にいない奴を愛し続けるって事よりかは有り得ると思うけど?」

っ!

「お前さとちゃんに全部話してみろ。」
.

⏰:09/11/29 20:46 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#310 [のの子]
 
「全部って‥‥」

「真琴と付き合ってた事も、事故の事も全部だよ。」

ドクン

そんな

全部を知ったら‥


「嫌です‥話したくない。」

「話せ。」

「嫌です。」
.

⏰:09/11/29 21:06 📱:SH06A3 🆔:OcAJemLI


#311 [のの子]
 
「なんで?」

さっきから『なんで?』と何回も聞いてくる亮さんに少し苛立ちを感じながら、俺は小さく息を吐く。

「それは、話したらきっと‥あいつが傷つくから‥」

「さとちゃんが傷つくからねぇ。それも違うな。」

煙を吐きながらふっとバカにしたように笑う。

「またっすか‥」

「お前は彼女に嫌われたくないんだよ。自分が傷つくのが恐いんだけだ。」
.

⏰:09/11/30 11:32 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#312 [のの子]
 
‥っ

いつの間にか二本目のタバコを気持ち良さそうに吸っている亮さんを睨む。

「なんだよ?‥俺はその方が嬉しいけど。昇もお前と会った日笑って話してたよ、お前がさとちゃんを守ってたって‥生意気とも言ってたけど。」

亮さんから目を離して俺はまた俯く。

「‥昇さんは俺をいつも子供扱いしてますからね。今でも少年って呼ぶし。」

「でも、合ってると思うよ。お前は二年前から変わってない。ガキのまんまだ。」

「‥は?どこがっすか?」.

⏰:09/11/30 18:54 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#313 [のの子]
 
「昔のお前は普通の中坊のマセガキだったよ。でも今のお前は間違った自分を貫いて、周りを見ようとしない。」

間違った自分‥

「それは‥真琴を思い続ける事が間違ってるって言うんですか?」

「お前の気持ちの持ち方が間違ってるって言ってるんだよ。」

優しい口調でもはっきり言う亮さんは、やっぱり冷静に俺を見つめているんだろう。

俺の迷いがある言葉よりも、亮さんの言葉は一つ一つが胸につきささる。

⏰:09/11/30 22:41 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#314 [のの子]
 
「ムキになって他人の言葉も聞かずに見つめない‥そういうとこがガキなんだよ。」

「ムキになんてっ‥」

「彰、お前が真琴の事をすげぇ好きだったのはわかってる。でもな、今のお前の気持ちはまるで―――」


亮さんの言葉がまた一つ、俺の胸に刺さった。


俺は真琴がただ好きで、愛してた。


俺を好きだと言ってくれた真琴がいなくなっても

俺は真琴を想い続けるって決めたんだ。

真琴だけを‥


なのに、その気持ちは


「――まるで呪いだ。」

.

⏰:09/11/30 22:50 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#315 [のの子]
 
ドクン
呪い‥‥

この気持ちが‥?

ドクン
「お前は真琴を思い続ける事で自分に呪いをかけてるようなもんだろ。それが償いだって‥」

ドクン

「‥でももうやめてやれよ。そんなんじゃ真琴が可哀相だ‥」

なんで‥

だって真琴を想い続けないと

想い続けないと

‥‥‥‥‥どうなる?

もう真琴はいない。
.

⏰:09/11/30 23:01 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#316 [のの子]
ガチャ
「えっうわっ臭っ!!なんでこんなっ‥ってはぁ?!なんで君達いんのっ?」

っ!

「昇お帰り〜。」

「あっ俺の部屋でタバコ吸わないでってあんな頼んだのになんで吸ってんのー。最悪だしー!」

「ごめん、ごめん。」

昇さんが帰ってきた事で重い空気が一瞬で消える。

でも俺の胸に生まれた靄は今だ晴れない。

「おいっ少年、お前も何勝手に上がってんのー!」

「ぇっ‥あぁすみません。」

⏰:09/11/30 23:11 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#317 [のの子]
 
「二人とも泥棒って言われてもおかしくないんだからねー。」

昇さんはプンプン怒りながらクーラーを止めると窓をガラッと開けた。

「ったく、節電にご協力くださーい。」

「はーい。」

亮さんがタバコを持った手を挙げると昇さんがタバコを奪い取る。

「禁煙にもご協力ください。」

「はいはい‥」
.

⏰:09/11/30 23:15 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#318 [のの子]
 
ってか亮さん合い鍵勝手に作ってたのか‥?

「はぁっ‥で、亮に話聞いてもらったのか?」

昇さんが亮さんの隣に座る。

「まだお説教中だよな。」

ははっと笑う亮さんに俺は苦笑いを浮かべる。

「お説教中ねぇ‥話ってさとちゃんの事だったよな?」

「はい‥」
.

⏰:09/11/30 23:21 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#319 [のの子]
 
「‥さっきまでさとちゃんに会ってたんだよね。」

「えっ?!」

昇さんの予想外な言葉に驚く俺と違って亮さんはシスコン、とクスクス笑っている。

「はっきり言う‥俺はお前よりさとちゃんをとった。ごめんね。」

昇さんもヘラッと笑う。

「いやっなんで聡美と‥」

「お前と同じだよ。真琴の事‥さとちゃんから話聞いたからだいたいの事はわかってる。」

⏰:09/11/30 23:29 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#320 [のの子]
 
「彰、お前はさとちゃんとゆっくり話してみろ。」

「えっ‥‥」

さっき亮さんにも言われた言葉を昇さんも口にした。

「俺もそう言ったんだけど嫌だとさ。」

亮さんがそう口にすると昇さんが俺を見つめて笑い出した。

「ぷっはははっ‥やっぱ似てんだよ、お前ら。」

「?似てるって何が‥」

「お前とさとちゃんだよ。」

⏰:09/11/30 23:37 📱:SH06A3 🆔:/tiISVew


#321 [のの子]
 
「さとちゃんもお前と会うの嫌だって言ってたわ。」

笑いながら昇さんが言う。

会いたくないって‥

「だったら‥やっぱ会えないでしょ。」

「でもさとちゃんは最後笑ってたぞ〜?お前と会ってみるとも言ってた。」

「えっあいつが?」

ドクン
.

⏰:09/12/01 18:52 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#322 [のの子]
 
さっきまで俺の苦しめていた心臓がまた鳴り響く。

「なんで‥あんな泣いて‥嫌がってたのに‥」

「そこは直接さとちゃんに聞け。それで?‥お前はどうする?」

ドクン

「俺は‥‥でも‥」

「会ってちゃんと話したいかどうか。それだけ考えてみ?」

亮さんがテーブルに肘をついて俺を見つめる。

⏰:09/12/01 18:57 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#323 [のの子]
 
‥全部を話せばきっとあいつは傷ついて、俺の前からいなくなる。

話せば‥俺もあいつの前からいなくなる。

結局ハッピーエンドなんて有り得ない。


でも、あいつは

俺なんかと会ってみたいって言ってて‥


俺は
.

⏰:09/12/01 20:18 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#324 [のの子]
聡美Side

「桃ちゃん家泊まり行くのいつだったっけ?」

「明後日だよ〜。」

「ふーん‥それにしては準備が早いし、荷物も多いんじゃない?」

ギクッ

桜姉が買ったばかりの洋服を手に笑う。

「ただのお泊りじゃなさそうねぇ。」

「たっただのお泊りだよ。」

バッと洋服を取り替えす。

⏰:09/12/01 23:50 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#325 [のの子]
 
「うそっ!あんた本当は彼氏ん家泊まりに行く気じゃないの?それとも一泊旅行とか?白状しなさいっ!」

桜姉が仁王立ちで私を睨む。

「違うもんっ‥」

私は小旅行用のバッグを胸に小さくなる。

「最近様子もおかしいし、帰り遅くなったり‥それに昨日彼氏か知らないけどコソコソ隠れて電話してたの知ってんだからねっ?」

う"っ‥

桜姉は昔からしっかりして真面目だった。長女って事もあって責任感も強いみたい‥

「私はただ心配なの‥わかるでしょ?」
.

⏰:09/12/01 23:59 📱:SH06A3 🆔:bkrs4aZk


#326 [のの子]
 
桜姉とは違ってまこ姉は好きなように生きる性格だった。

そんなまこ姉が死んでからは、桜姉は時々異常に私の事を心配するときがある。

たぶんまこ姉を守れなかった分、私を守ろうとしてるんだと思う‥



「‥‥学校の友達とバーベキューに行くの。もちろん桃も一緒に‥」

私はこのまま嘘をつけないと思って正直に話した。
.

⏰:09/12/02 00:06 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#327 [のの子]
 
「やっぱり〜‥桃ちゃん以外は誰?」

「だから友達だよ。名前まで言わないといけない?」

私がムスッとすると桜姉はため息をついて

「一回嘘ついてるんだから仕方がないでしょ。言いなさい。彼氏も一緒なの?」

‥これじゃお母さんじゃない。いや、刑事?

それに彼氏彼氏って‥

「名前まで言いたくない。それに私彼氏なんていないもんっ!」

「はぁっ?」
.

⏰:09/12/02 14:41 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#328 [のの子]
 
「いないって‥もしかして別れたのっ?」

桜姉が驚いた顔で私の横に座る。

「‥そっそうだよっ?私フラれたのっ。」

「えぇっ?!フラれたって‥じゃ最近様子おかしかったのは別れたから?」

「そうかもねっ‥それに昨日の電話は友達っ。もういいでしょ?明後日の用意しなきゃなんだからぁ。」

フンッとそっぽを向くと桜姉は気まずそうに立ち上がって

「他にもイイ男いるし、気にしない方がいいよ‥?」.

⏰:09/12/02 22:11 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#329 [のの子]
 
ボソッと呟くと私の部屋から出て行った。

「‥‥はぁ〜っバレちゃったか。‥まぁいいや。」

竜二君と別れた事は、あれから色々あったしわざわざ言わなかった。

それに彼氏っていっても家族は竜二君とは会った事ないしね。


明後日のバーベキューの用意って言っても一泊だし、特に荷物もなく、あっという間に終わった。

「さて、これからどうしようかな‥」
.

⏰:09/12/02 22:18 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#330 [のの子]
 
時計を見るとまだ4時を過ぎたばかりだった。

ふっと昨日の事を思い出す。

―――――

♪〜♪〜♪〜

「聡美〜携帯鳴ってるよぉ!電話じゃないの?」

「んーっ今行く〜!」

タッタッタッタッ

階段を小走りで下りると私の着信音が聞こえてきた。

「はいはいっ誰ですか〜‥」

そんな事を言いながら手に取った携帯は相変わらず鳴りつづける。

パカッ

携帯を開くと相手の名前が写る。

⏰:09/12/02 22:32 📱:SH06A3 🆔:YRw8MBn2


#331 [のの子]
 
    『彰君』

ドキッ

私の心臓は彼を待ってたかのように、反応良く鳴った。

彰君から逃げるように去った昨日から、彰君とまこ姉の事ばかり考えてた。

二人はいつ、どんな出会いをして付き合ったのか‥

まこ姉は彼のどこを好きになって、彼はまこ姉のどこを好きになったのか

そして彼はまこ姉を失ってからどんな気持ちで生きてきたのか

そんな事ばっかり‥
.

⏰:09/12/03 21:55 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#332 [のの子]
 
でもそんな気持ちが会って話したいって気持ちに繋がってた。


♪〜♪〜

「ふぅ‥よしっ。」
ピッ

一息吐くと私は携帯を耳にあてる。

「もしもしっ。」

「オッス、俺だけど‥」

「うんっ‥どうしたの?」

どうしたの?って聞いたけど、だいたいわかってる。

たぶん昨日の事‥
.

⏰:09/12/03 22:03 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#333 [のの子]
 
「あぁ〜‥あのさぁ俺昨日昇さんと会ったんだよね。」

「えっ昇さんとっ?!」

つい大きな声をだしてしまって慌てて口をふさぐ。

ちょっ昨日って私も会ったんだけど〜‥!

桜姉が私の口から男の人の名前が出たからか、チラチラとこっちを気にしてるのがわかってサッと部屋に向かう。

⏰:09/12/03 22:16 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#334 [のの子]
 
パタン

「どうかした?」

「あっううんっ、なんでもない。ごめんね。えっと昇さんに会って何か聞いたの?」

急いで部屋に入るとベッドに座る。

「‥‥会いたい。」

ドキッ

「えっ?」

「会って話したいんだ‥お前と。」

.

⏰:09/12/03 22:22 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#335 [のの子]
 
昇さんから私について何か聞いたのかも知れない。

でも、私達が会って話したい事は決して宿題の事や夏休みの事なんかじゃなくて

まこ姉の事なんだろう。


「‥うん。私もそう思ってたんだ。彰にね、話したい事も聞きたい事もあるから。」

「俺も話さなきゃいけない事がある。」

断る理由なんてない。

結局私達はバーベキューの前日、つまり明日会う事になった。
.

⏰:09/12/03 22:27 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#336 [のの子]
 
バーベキュー中気まずいのは嫌だから前日に会おうっていう彰君からの提案。

そう言ったものの

「‥でも、全部話してお前に嫌われたらバーベキュー行かないから。ってか会わない。」

そんな弱気な彼を私は笑った。

「嫌いにならないと思うよ?せっかくできた夏休みの暇つぶしの相手がいなくなっちゃ困るもん。」

「ふっ‥ムカつく奴。」

――――――
.

⏰:09/12/03 22:36 📱:SH06A3 🆔:XjexLDiI


#337 [のの子]
 
カチッカチッ

時計の針がまた一つ進む。

彰君と会うのは明日‥

彼の口から何を聞けるんだろう?

逆に私の過去は受け入れてもらえるのかな?

「気持ち悪がられたりして‥ははっ‥」

力無く笑う。

でも、彰君も今同じ気持ちのはず。

私達は話さなきゃいけない。

過去の自分のためにも

未来の自分のためにも‥

⏰:09/12/05 15:48 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#338 [のの子]
竜二Side

「なぁ、それどうすんの?」

「‥‥別に‥‥‥」

はぁっ、さっきからずっとこれだもんな。

彰が急に俺の家に来てからもうすぐ30分たつ。

急に昔の写真を見たいとか言って卒アルやら色々出してずっとそれを見ている。

何も話さず、何かを探してる訳でもなく‥ただ見ているだけ。

「‥なんかあったの?」

「‥‥お前はさ‥‥」
.

⏰:09/12/05 15:58 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#339 [のの子]
 
「この時の事‥覚えてるか?」

彰は中学の卒アルの1ページを指差して話し出す。

「ん、どれ?」

彰が指を差していたページには、中二の頃の俺達とクラスメイトの数人がいた。

「あぁこれ。林間だろ?」

「うん‥まぁ。お前この時の事覚えてるか?」

この時?
.

⏰:09/12/05 20:54 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#340 [のの子]
 
「いや‥なんでだったかな?確か他のクラスの奴と喧嘩したんじゃなかったっけ?」

「そう‥お前が最初に手出してさ、俺まで巻き添いにされたんだよ。」

彰は懐かしそうに卒アルを見つめて笑う。

俺もつられて笑う。

「‥でもさ、全部をはっきり覚えてるわけじゃない。こうやって過去は曖昧になってくんだよな‥」

彰は静かに卒アルを閉じると俺を見つめる。

「真琴もそうなってく。だろ?」
.

⏰:09/12/05 23:24 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#341 [のの子]
 
ドクンッ

彰の口から彼女の名前を聞くのは久しぶりで‥彰の中で何か変わったのが伝わってきた。

「‥お前本当に聡美の事はもういいの?」

ドクンッ

聡美の名前もまた俺の心臓をうるさくする言葉だ。

「俺がフッたのにどうして?」

じんわりと手に汗を感じて俺は無意識に自分の服を掴む。

「別に‥ただお前と聡美が付き合ってたのももう過去だなぁって思って。」
.

⏰:09/12/05 23:34 📱:SH06A3 🆔:VgxOVG4c


#342 [のの子]
 
過去か‥

確かに俺と聡美は付き合ってたのは、もう過去だ。

「そう言われると‥なんだか寂しいね。」

俺がふっと笑うと、彰は卒アル以外に散らばった写真の中から一枚を手にとる。

「たぶん‥『今の俺』は、ちゃんと『今』と『未来』を見つめてる。」

彰は弱々しく笑うと


「真琴もやっぱ寂しいって思うかな?」


.

⏰:09/12/06 20:17 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#343 [のの子]
 
彰が見つめる一枚の写真は、俺と彰と‥彼女が笑っている写真だった。



「まぁ明日にははっきりするはずだし‥そろそろ帰るかな。」

彰が写真をテーブルに飛ばす。

「‥明日なんかあんの?」

「お前の元カノとデートすんの。あいつに慰めてもらうわ。」

いつものムカつく顔に戻った彰を俺は睨む。

「へぇ‥この前といい、いつの間にそんな仲良くなったんだかね。」
.

⏰:09/12/06 20:25 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#344 [のの子]
 
「そんな拗ねんなよ。ってかお前の思惑通りの展開だろ?」

っ!

「‥‥は?」

俺は更に彰を睨む。

「お前本当は聡美の事好きなのに別れたんだろ?」

「意味わかんねぇ。」

彰は余裕な表情で俺を見つめる。

「別れたのは俺と聡美を近づけさせるためとか?」

「なんでそんな事
「お前全部知ってたろ?」
.

⏰:09/12/06 20:34 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#345 [のの子]
ドクンッ

こいつ‥まさか

「全部知ってて聡美に近づいたのか?」

ドクンッ

「聡美が真琴の妹だって‥お前いつから気づいてたんだよ。」

っ!!

彰は怒る訳でも悲しむ訳でもなく、ただ俺を見つめる。


「‥彰は勘が鋭いなぁ。それに俺が思ってたより早い展開だよ。」

俺は睨むのを止めてテーブルに頬杖をつく。
.

⏰:09/12/06 20:42 📱:SH06A3 🆔:y8Fyvyos


#346 [のの子]
  
「やっぱお前の思惑通りか‥」

彰がため息をしながら笑う。

「‥妹だって言うのは結構前から知ってた。でも聡美ちゃんと別れた事には関係ないよ。」

俺はさっきテーブルに飛ばされた写真を手にとる。

「もうちょっと時間かかると思ったんだけどなぁ。バレちゃったか‥聡美ちゃんも知ってんの?」

「さぁ‥もう知ってるかもだし、まだ知らねぇかも。」

彰の曖昧な返事に俺は笑うしかできなかった。
.

⏰:09/12/08 09:11 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#347 [のの子]
 
「妹って事言わなかったの怒ってる?」

「別に‥お前なりに言わなかった理由もあるんだろうし。」

「そう。それは有り難いね。」

彰は立ち上がると大きく伸びをする。

「はぁっ‥別にどうこうってないけどさ、お前には感謝するよ。」

「感謝って?」

俺は写真に写った幼さが残る中三の頃の自分を見つめる。
.

⏰:09/12/08 09:24 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#348 [のの子]
 
「明日どうなるかわかんねぇけど、とりあえず俺は『今』をちゃんと生きてる。」

「うん。」

「それは‥たぶん聡美のおかげだから。」

「そう‥で?」

「まぁお前と聡美が別れる事で、俺に微かにチャンスをができた。」

チャンス‥

過去の鎖から解放されるチャンス。

鍵は‥聡美か。
.

⏰:09/12/08 09:35 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#349 [のの子]
 
「俺は別に真琴の事から解放されたいって思ってるわけじゃない。ただ‥確かめたいって思った。」

俺はこうなるのを望んでた。

「俺の為だけじゃなくて‥周りの奴らとか、真琴の為にも確かめたいんだよね。自分の気持ち‥」

彰をここまで変えてくれたのは聡美で、

「だから、俺は明日聡美に全部話す。」

    彰のため、
   聡美のため、
   ‥真琴のため、

 いや 自分のために
.

⏰:09/12/08 20:16 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#350 [のの子]
 
どこかでそう思って今までやってきた。


「うん‥お前達なら大丈夫だよ。」


二人なら大丈夫。

二人なら‥



俺は一人で大丈夫だから。

.

⏰:09/12/08 20:19 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#351 [のの子]
 
「きっと‥彰と聡美ちゃんが出会ったのは運命だよ。だから二人は大丈夫。」

俺が笑うと彰は複雑そうに

「お前はどうすんの?まだ好きなんだろ?」


‥うん、好き。


「いや‥女の子ってやっぱめんどくさいし俺は当分彼女はいいや。」

聡美じゃないならいらない。

.

⏰:09/12/08 20:24 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#352 [のの子]
 
「お前の思惑がどんなんだったかとか一々聞かねぇけど‥まぁお前のやりたいようにやれよ。ただ‥」


彰を見上げると、彰は真面目な顔をしていた。

「俺みたくはなんなよ?」


「‥なるわけないじゃん。」

⏰:09/12/08 20:36 📱:SH06A3 🆔:oaTP4wws


#353 [のの子]
 

彰、真琴はお前のせいで死んだんじゃないよ。

全部俺がいけなかったんだ‥

あの時の俺は

ただの生意気なガキで

真琴が俺に伝えたい言葉を

わかってなかったんだ。

.

⏰:09/12/09 20:36 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#354 [のの子]
 
全部俺のせいなんだ‥

それなのに

お前が傷ついて

苦しんでるのを見て

俺は何もできなかった。


でも、そんな俺を

聡美が救ってくれて‥


今‥俺達三人は出会った。
.

⏰:09/12/09 20:40 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#355 [のの子]
 
この運命の出会いは

お前のためにある。

本当はお前が救われるべきなんだよ。


だからそのためなら

俺はなんでもするよ‥


俺が過去を背負う。

お前は今を
未来を

彼女と生きて。
.

⏰:09/12/09 20:45 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#356 [のの子]
 
あと彰は俺の思惑通りって言ってたけど

本当は思惑通りになんていってない。

聡美と別れた時点で、俺は彼女との関係を本当に終わらせるつもりだった。

会うのも
話すのも
見つめるのも‥


でも聡美、

俺はまだこんなにも君が

愛しくて

愛しくて


愛してる‥
.

⏰:09/12/09 20:54 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#357 [のの子]
 
聡美はきっと覚えてないだろうけど、

俺達が本当に初めて出会った時‥

あの時からずっと

君を忘れられなくて

ずっと想ってた‥


過去を背負うのは苦しくない。

俺の過去には俺の横で笑う君がいる。

今も‥笑顔の君を近くで見つめられるなら

過去なんて
.

⏰:09/12/09 20:57 📱:SH06A3 🆔:dxSiOIkI


#358 [のの子]
――――――

「んっ‥竜ちゃん‥」

「‥なんです?」

シーツから伸びてきた腕が俺の身体に絡み付く。

「また何か考え事してたでしょ?」

「別にあなたに関係ないでしょ。」

二人の肌が触れる。

「そんな事言って‥呼び出したのは竜ちゃんのくせにひどい。」

そう言いながら女は面白そうにクスクス笑う。

「ひどいか‥まぁあなたに優しくするつもりなんてないですし。」

俺も力無く笑う。

⏰:09/12/10 17:05 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#359 [のの子]
 
「やだ、まだ昔の事怒ってるの?」

女は悲しそうな瞳をして俺の上に乗る。

「そりゃ忘れられないでしょ、あんな事‥」

「でもね、竜ちゃんも悪いんだよ?私を拒まなかったから‥」

妖しく笑うとそのまま彼女は唇を重ねてきた。




俺はズルイ。



聡美、今君は何をしているんだろう‥

.

⏰:09/12/10 17:21 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#360 [のの子]
聡美Side

次の日――――

「はぁっ緊張してきたぁ。」

リビングで私はじっとしてられずにウロチョロと動き回る。

お母さんはそんな私を無視して洗濯物を干している。

今日も暑い。

夏らしい山のような入道雲が空に浮かぶ。

「暑そう〜‥日焼け止め塗ろうかなっ。」
.

⏰:09/12/10 19:28 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#361 [のの子]
 
「日焼け止め日焼け止め〜‥」

日焼け止めを探してまたウロチョロと動き回る私。

「日焼け止めなら桜が持ってっちゃったよ。」

お母さんが空になった洗濯カゴを手に私の横を通り過ぎる。

「えぇっ!お姉ちゃんどこ行ってるの?」

「友達と遊んでくるって。」

だからいないんだ。

⏰:09/12/10 22:41 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#362 [のの子]
 
「そっかぁ‥じゃ日傘借りちゃおっかな。」

前桜姉が使っていた黒いフリルのついた日傘を思い出す。

新しいの買ったからあげるってこの前いわれたんだっけ。

「ってかあんたいつ出掛けんのよ?」

「えっ‥と、13時ぐらいかな。」

時計の針は11時になるところだ。

「まだまだじゃない。部屋でも掃除すれば?」

確かに‥

ちょっと落ち着こうととりあえず部屋に向かう。

⏰:09/12/10 22:59 📱:SH06A3 🆔:OT8tecr2


#363 [のの子]
 
「あっつい‥」

クーラーをつけると早速ベッドに飛び込む。

だって部屋を片付けだしたら止まらないもんね。


‥彰君も今、緊張してんのかな?


‥‥‥

私は起き上がると静かな部屋を見渡す。

「まこ姉‥」
.

⏰:09/12/11 00:29 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#364 [のの子]
 
「彰君とね、今日これから会うの。」

部屋には私の声と微かなクーラーの機械音しか聞こえない。

「すごい緊張してるんだ‥緊張して恐くて手が震えちゃいそう。」

苦笑いしながら私は立ち上がると、棚にある写真立てを手にとる。

「でも‥逃げないよ?」

写真には仲良く三姉妹が笑っていた。

真ん中でまこ姉が笑っている。

⏰:09/12/11 00:37 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#365 [のの子]
 

―――― 13:07


「行ってきまぁす。」

私は黒いフリルのついた日傘をさして家を出た。

真夏の暑い日差しから守られた私は、ほんの少し涼しさを感じながら歩く。


一歩一歩、

この道の先にいる彼との距離が縮んでいくと

私の心臓も一つ一つ、

大きく締め付ける。

私の耳には蝉の音よりも
心臓の音がうるさく響く。
.

⏰:09/12/11 20:19 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#366 [のの子]
 
彼との待ち合わせは小さな公園。

学校へ行く時、竜二君と待ち合わせ場所にしていた公園だ。


ドクン ドクン ドクン

大丈夫‥大丈夫‥

心の中で何度も唱える。


「お姉ちゃん待ってよぉ〜!」

っ!

「ほらっ早く来ないと置いてっちゃうぞ!」

小さな姉妹が私の横を元気よく走り去る姿を見て思わず振り返る。

姉の手を握って一生懸命走ってく後ろ姿は、小さい頃の私とそっくりだ。

「まこ姉‥‥」
.

⏰:09/12/11 20:27 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#367 [のの子]
 
――――――

『まこ姉、私足遅いから運動会出たくない‥』

小学低学年の頃、運動会の50b走に出たくないとまこ姉に相談した事があった。

『えぇっ別に足遅くたっていいじゃん。』

『やだよっ‥ビリ恥ずかしいもん。』

『恥ずかしいって‥なんで?』

まこ姉が私と目線を合わせるようにしゃがみ込む。

『‥だってバカにされるもんっ。』

『誰もバカにしないよ〜。そんな奴いたら私がぶっ飛ばしてやるから。』

まこ姉が笑って私の頭を撫でる。
.

⏰:09/12/11 20:35 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#368 [のの子]
 
『でも‥やっぱ嫌だ‥』

『しょうがないなぁ。』

まこ姉は困った顔をしながら笑う。


運動会当日。

結局50b走に出なきゃいけなかった私は周りで笑う友達とは違って俯いていた。

どうせビリなのに‥

そう思いながらあっという間に私の番が来た。

『ヨーイッ‥』

パァン!!
.

⏰:09/12/11 20:53 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#369 [のの子]
 
案の定私は他の子の背中を追いかける。

やっぱり‥

走りながら目線が段々下に落ちていく。

『聡美っ!!』
グイッ

『うわぁっ!‥まこ姉!?』

まこ姉が笑いながら私の手を握って走り出す。

運動神経の良いまこ姉にグイグイ引っ張られ、私はいつの間にかまこ姉の背中だけを追いかけていた。

⏰:09/12/11 20:58 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#370 [のの子]
 
『あはははっあっという間に一位〜♪ほらっ行ってこい!』

まこ姉が私の手を離すと、私はそのまま走りつづける。

『ハァッハァッ‥』

パァンッ!

私は一番最初にテープを切った。


‥もちろんこれは無し。
結局私は時間もないからって事でビリにされた。

後々まこ姉は先生やお母さんから怒られるし、

私も皆にズルイって言われたけど、羨ましいって言ってくれる子もたくさんいた。

⏰:09/12/11 21:08 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#371 [のの子]
 
『お姉ちゃんかっこよかったよぉ!』

『すっごい早かったもん!あんなお姉ちゃんいて羨ましいなぁ。』


まこ姉にその事を話すと

『でもせっかく一位になったのにビリになっちゃったのは私のせいじゃん。ごめんね?』

まこ姉はそう言って私の頭を撫でてくれた。

確かにズルをしたけど、私が一位になれたのはあれが最初で最後。
.

⏰:09/12/11 21:14 📱:SH06A3 🆔:674JS7fg


#372 [のの子]
 
何年後か、まこ姉とその話をした時まこ姉は優しく笑って

『私はたまたま聡美より運動神経が良かっただけだよ。聡美は聡美のやり方で誰かを引っ張ってあげな?』

そして大きくなっても私の頭を優しく撫でてくれた‥

―――――――


「私のやり方か‥‥」

私はまた前を向いて歩きだす。

.

⏰:09/12/12 20:17 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#373 [のの子]
彰Side

サァーーーッ

生暖かい風が公園の木の葉を揺らす。

伸びっぱなしの髪の毛も頬をくすぐるように揺れた。

そろそろ髪の毛切るかな‥

ベンチに座りながら前髪をいじる。

公園には俺以外に親子や小学生ぐらいの子達が遊んでいた。

こんな暑いのに公園には笑い声がたえない。

子供ってすげぇ‥

高校生の俺は太陽から隠れるように日影のベンチを陣取っていた。

⏰:09/12/12 20:27 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#374 [のの子]
 
それにしても

「場違いだろ。」

こんな笑い声がたえない公園で、俺達はこれから話すのかと思うと余計気分がのらない。

ただでさえここに来るまでに何回も立ち止まったのに‥

「はぁ‥あっちー。」

俺は頭を抱え込むように地面を見つめる。

日影にいてもやっぱり暑い。



「大丈夫?」
.

⏰:09/12/12 20:33 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#375 [のの子]
 
っ!
ドクン   ドクン

声に反応して顔をあげると

ドクン   ドクン

黒い日傘をさした聡美が笑って立っていた。

「ずーっと下向いてたから気づかなかったでしょ?」

「ん、ちょっと驚いた。ってか日傘とかさすんだ。」

「日焼け止めなくって。」

笑いながら聡美が俺の横に座る。
.

⏰:09/12/12 20:41 📱:SH06A3 🆔:FzfRDSnw


#376 [のの子]
 
「今日も暑いね。」

「夏だしな。」

俺達の前を子供達が走っていく。

見つめるのは平和で温かい光景なのに、俺達のいるこの空間だけ違う空気が流れてるようだ‥

「‥彰君、」

「ん?」

「彰君に話したい事も聞きたい事もあるって前言ったでしょ?」

「あぁ‥」

「だからその前にちゃんと言わなきゃなって思って‥」
.

⏰:09/12/13 00:40 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#377 [のの子]
 
「もう知ってるかもだけど、私の口から言わせて?

私は、二ノ宮真琴の妹。‥妹なんです。」

聡美が優しく笑う。

‥‥‥そっか

「うん‥昇さんから聞いた。」

俺も笑う。


「俺も言わなきゃいけない事がある。」

⏰:09/12/13 00:46 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#378 [のの子]
 

ドクン


「俺は‥‥っ‥」


ドクン  ドクン


言葉につまった俺を聡美は優しく微笑んだまま見つめる。





「俺は‥俺は真琴と付き合ってた。真琴が事故った時も‥一緒にいたんだ。」
.

⏰:09/12/13 00:51 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#379 [のの子]
 
重い‥

この言葉がずっと重かった。

「私も昇さんから聞いてる。」


「初めまして‥」


聡美がゆっくり頭を下げる。

っ‥

「初めまして‥」

こんな形で出会わなかったら、もっと心から笑って挨拶できただろう‥

真琴の『妹』に

真琴の『彼氏』として‥
.

⏰:09/12/13 20:18 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#380 [のの子]
 
「なぁんちゃって♪」

パッと顔を上げた聡美はいつもと変わらない笑顔だった。

「彰君、ごめんね?やっぱり私は彰君を彰君としてしか見れない。まこ姉の彼氏だったって聞いてもやっぱりピンとこないの‥」

聡美が日傘をクルクル回す。

「だって私が出会ったのは彰君なんだもん。」


出会ったのは

真琴の彼氏の俺じゃなくて

『俺』って事か‥

⏰:09/12/13 20:24 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#381 [のの子]
 
「そうだな‥俺もやっぱお前は真琴の妹とかじゃなくて、聡美だよ。」

そう言うと聡美はありがとう、っと呟いた。


「‥まこ姉と付き合ってたのっていつからなの?」

聡美が前を見つめながら遠慮がちに聞いてきた。

「中三から。‥正直短い付き合いだったよ。でも、真琴といるのはいつも楽しかった。」

愛して愛されてた

そう思う。

⏰:09/12/13 20:32 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#382 [のの子]
 

幸せだった。


初めて本当に人を
好きになったから‥


真琴は教えてくれたんだ。
俺に大切な事を

ドクン

「お前には‥全部を話そうって‥思ってる。」

ドクン

「‥俺達が出会ったのは―――――――」
.

⏰:09/12/13 20:35 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#383 [のの子]
 
二年前の春――――


バァンッ

「ってぇな!!何すんだよっ?!」

「あんた邪魔‥ウザい。」

ドスッ

この頃の竜二は俺から見ても荒れてた。

中学生のくせに髪染めるし、すぐ喧嘩するし、俺巻き込むし‥

もう目つきが今と違ってた。

俺に触んな.近づくな

そんな目つきにどす黒いオーラがあった。マジで‥
.

⏰:09/12/13 20:43 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#384 [のの子]
 
ドスッ 

「いっ‥ゴホッやめっ‥」

ほら、こうやって気にくわない奴捕まえてボコボコにしちゃう問題児。

「はぁ‥‥」

「何?混ざりたいの?」

俺の小さなため息が聞こえたのか不運な相手の腹に足を乗せたまま竜二が振り返る。

そんな目つきで俺を見つめんなっつーの。

「‥つまんねぇー。もう帰ろう?」

「‥‥うん。」
.

⏰:09/12/13 20:54 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#385 [のの子]
 
こういうとこはまだ素直なんだよな。

スッと足をどけると竜二は地面にうずくまって転がる相手に小さくごめんね?と呟いてニコッと笑う。

殴ってごめんね‥
いやいや違うからっ。

『最後までやってあげられなくてごめんね』だから。

こわっ‥


「彰っ待ってよ。」

「早く来いよぉ。」
.

⏰:09/12/13 21:04 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#386 [のの子]
 
そう言ってもやっぱ俺達は中学生で学校も行って、勉強もやってた。

まぁそこは今と変わらない。クラスにも友達だっていたし?

違うと言えば俺なんかよりも竜二が喧嘩してたって事ぐらい。

でも竜二は学校が好きでよくまだ帰りたくないなぁって言ってた。


「彰、俺家庭教師つけられた‥」

「はっ!?」

久しぶりに真っ直ぐ帰っている帰り道、竜二がムスッとしながら話し出す。

⏰:09/12/13 21:13 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#387 [のの子]
 
「家庭教師だよ。受験あるから勉強しろって‥最悪。」

「ぷっはははっ!マジかっ!面白そうでいいじゃん。」

竜二が俺を睨む。

「どこがだしっ!ただ俺に早く帰る理由を作りたかったんだよ‥早く帰ったっていないくせに。」

「はいはい。別に隼人さんとかいんだろ?」

「まぁ‥兄貴だけならいいんだけどね。」

「あぁ彼女連れて来るんだっけ?」
.

⏰:09/12/13 21:47 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#388 [のの子]
 
「うん‥」

「別にいいじゃん。ってか家庭教師っていつから?」

「今日。」

「今日っ?!今からって事か?」

「そうだよ。だから真っ直ぐ帰ってんだろ?」

竜二は大きなため息をつく。

「今日は兄貴もいるから帰らないと‥」
.

⏰:09/12/13 23:15 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#389 [のの子]
 
竜二の兄貴、隼人さんは優しいし面白いし頭も良い。

自慢の兄貴の隼人さんの事になると竜二も丸くなって大人しくなる。

「ふーん。じゃ俺も家庭教師っての見に行くかな。」

「はっ?勘弁してよ。」

「家庭教師って男?女?いくつ?」

俺がニヤニヤすると竜二も笑い出す。

「残念っ。高校二年の健全な男だよ。」

げっ‥なんだ〜。
.

⏰:09/12/13 23:24 📱:SH06A3 🆔:3Cqu6DA.


#390 [のの子]
 
「そいつお前にやられないといいな。」

「‥‥気が会えばいいんだけどねぇ。」

竜二が欠伸をする。

「今日来んの?」

「んー‥行くっ。おばさんのケーキをいただきに。」

軽くおばさんのケーキを食べたら帰ろう。

そんな気分で俺達は竜二ん家に向かった。
.

⏰:09/12/14 12:54 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#391 [のの子]
―――― 
「あっお帰りなさい。ちゃんと帰ってきて偉いじゃなーい♪」

「ちょっいいから。」

おばさんが竜二の頭をクシャクシャに撫でる。

「でも彰君までどうしたの?」

「おばさんのケーキ食べたくて来ちゃいました。」

ニコッと笑う。

「あぁ、それなら冷蔵庫にあるから食べて?私これからまた出掛けなきゃで‥お兄ちゃんもう少ししたら帰ってくるから。」

おばさんは慌ただしくあっちこっちを行き交う。

「初めて家庭教師来る日にいないのっ?」

竜二が眉間にシワを寄せる。

⏰:09/12/14 20:44 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#392 [のの子]
 
「何言ってんの!全く子供なんだから〜‥家庭教師の方ならもういらしてますっ!」

「「えぇっ?!」」

俺達は驚いて2階を見上げる。

「お茶とケーキ出しといたから。じゃお母さんはもう出かけるからねっ?失礼な事しちゃダメだからね?!」

バタンッ
ガチャ

シ〜〜〜ン

「おばさん行っちゃったぞ‥」

「わかってる‥」
.

⏰:09/12/14 20:48 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#393 [のの子]
 
何の音も聞こえない2階を俺達は見上げる。

「はぁ〜っ‥行く?」

竜二が俺の横で頭をかく。

「ん‥その前に俺ケーキ食いたい。」

竜二の舌打ちを無視して俺は冷蔵庫に向かう。

「おっ今日はガトーショコラ。いただきます。」

「上で食えよ。一応待たせてんだし‥」

竜二がガトーショコラの乗った皿とフォークを取り上げる。

別に俺の家庭教師じゃねぇのに。
.

⏰:09/12/14 20:52 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#394 [のの子]
 
「はいはい、わかりましたっ!」

俺は竜二からガトーショコラを取り戻すと竜二の後について階段を上る。

‥‥パクッ

うん、やっぱおばさんのケーキは美味い。

後ろで勝手にケーキを食いだした俺に竜二は気づかない。

モグモグ

「チッ‥自分の部屋なのになんでこんな気分で入らなきゃいけないんだよ。」

竜二がドアノブを握る。
.

⏰:09/12/14 20:57 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#395 [のの子]
 
ガチャ

ゆっくりドアを開ける。

竜二は家庭教師に会う前からイライラしてるし、

俺は呑気にケーキを食っていた。


この時、俺達は初めて彼女と出会った。



「こんにちは。初めまして。二ノ宮真琴です。」

.

⏰:09/12/14 21:00 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#396 [のの子]
 
はっ‥‥?


「‥あれ?竜二君てどっち?」


竜二の部屋にいたのは健全な【男】ではなく、【女】だった。


「えっ‥家庭教師?」

竜二も驚いてるのか女を指差す。

「そうだけど‥君が竜二君?」

女が首を傾げると黒い長い髪の毛が揺れる。
.

⏰:09/12/14 21:06 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#397 [のの子]
 
家庭教師って男じゃなかったっけ?

「女なんて聞いてない‥」

「女‥?あぁ男だと思ってたの?『まこと』って聞くとみんな男って思うんだよね。」

女はクスクス笑う。

「別に勉強を教えるのに男も女も関係ないでしょ?ってか君が竜二君でいいんだよね?」

最初のふんわりした印象とは違くて、ハッキリした口調で話すな‥

「‥そうですけど。」

「そう。じゃ後ろのケーキ食べてる少年は?」

ギクッ
.

⏰:09/12/14 21:13 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#398 [のの子]
 
黒い長い髪に白い肌。マスカラののったパッチリした目が俺を見つめる。

「こいつは俺の友達の彰。」

「ふーん‥なんでいるの?」

女が近づいてきた。

「私竜二君の家庭教師なんだけど‥勉強教えてほしいの?」

‥ドキッ

俺の前で目をパチパチする女は、中学の女子よりも化粧の匂いと香水の香りがする。

「べっ別に暇つぶしに来ただけだから‥」
.

⏰:09/12/14 21:19 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#399 [のの子]
 
「‥そう。じゃ竜二君勉強しよっか。」

クルッと竜二の方に振り返った時、長い髪の毛が俺の頬を撫でた。

‥ドキッ

「君は邪魔しないでね。」

ニッコリ笑う女に俺はただ頷く。

竜二はまだ女だったって事に納得がいなかいのか複雑そうな顔をしている。


勉強をしだす二人の前で、俺はケーキを食べながら竜二の隣に座ってペンを持つ女をただ見つめていた。
.

⏰:09/12/14 21:26 📱:SH06A3 🆔:XKyQ8onI


#400 [のの子]
 
二ノ宮 真琴 (17)

県立でも有名な進学校に通う高校二年生。

黒く長い髪の毛がより肌を白く見せ、少しつり目でパッチリとした瞳が印象的だ。

綺麗な化粧や香水の香り、時々意地悪くクスッと笑う姿が女を意識させる‥




真琴と出会ってから二週間、これぐらいの事がわかった。
.

⏰:09/12/15 20:55 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


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