ピンクな気分。U
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#400 [のの子]
 
二ノ宮 真琴 (17)

県立でも有名な進学校に通う高校二年生。

黒く長い髪の毛がより肌を白く見せ、少しつり目でパッチリとした瞳が印象的だ。

綺麗な化粧や香水の香り、時々意地悪くクスッと笑う姿が女を意識させる‥




真琴と出会ってから二週間、これぐらいの事がわかった。
.

⏰:09/12/15 20:55 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#401 [のの子]
 
「なぁ、真琴は彼氏いんの?」

「‥‥君に教える意味がわからない。」

「仲良くなろうとしてんだしいいじゃん。ってか俺の名前は彰っ。覚えろよ〜。」

「仲良くって‥なんで君と?ってかなんでいっつもいるの?」

コツンッ
真琴がシャーペンで俺のおでこをつつく。

「別に〜‥暇だから。」
.

⏰:09/12/15 21:00 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#402 [のの子]
 
突かれたおでこをさする。

「全くもう‥勉強の邪魔しないでよね。」

ムスッとしながら真琴はノートをめくる。

「あっ竜二君、ここ‥この前間違えた所解けてるよ。すごいじゃーん♪」

真琴が竜二の頭をクシャクシャに撫でる。

「ちょっガキ扱いすんなって言ってんだろ。」

‥ふ〜ん
.

⏰:09/12/15 21:28 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#403 [のの子]
 
「俺も勉強教えてもらおうかな‥」

ボソッと呟くと、真琴と目が合う。

ドキッ

♪〜♪〜

「あっごめんね。電話みたい‥」

真琴が携帯をとると部屋を出ていく。

パタンッ

ちぇっなんだよ。

「はぁ疲れる‥彰、お前あいつの事気になんの?」

真琴がいなくなった事を良いことに竜二がベッドに寝っ転がる。

「うーん‥興味はある。」.

⏰:09/12/15 23:13 📱:SH06A3 🆔:YutDo0aY


#404 [のの子]
 
「興味ねぇ‥あいつなんかあるよ。」

竜二が枕に顔を埋めながらボソボソ喋る。

「は?なんかってなんだよ。」

「あいつ二重人格。」

「二重人格っ?ぷっ‥上等じゃん。」

俺が笑うと竜二がかったるそうに俺を見つめる。

「俺‥女苦手。」

当時の竜二は何故か女を嫌っていた。

「でもお前にしては仲良くしてるね?」
.

⏰:09/12/16 17:07 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#405 [のの子]
 
「‥だからあいつ二重人格。」

さっきから二重人格ってなんなんだよ。

「どこが?俺には真面目でちょっと気が強い女にしか見えないけど。」

「この前彰が来なかった日あるじゃん?」

そういえばこの前祐輔の面倒みるので行けなかった日があった。

「あいつ携帯忘れてったから追いかけたんだけどさ、そしたらあいつ目つきが違ったんだよ。」

「目つき?」

「たぶんだけど、あいつ俺らと似てる。こっち側の人間だよ‥」

ガチャ

「あっコラー!」
.

⏰:09/12/16 17:21 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#406 [のの子]
 
「何寝てんの!ほらっ続きやるよ?」

真琴に尻を叩かれ竜二がゆっくり立ち上がる。

「まだ終わんねぇの?疲れた‥」

「もう少しやったら終わりだから。」

真琴が竜二の肩を掴んで無理矢理座らせる。

こっち側の人間って‥なんだし。

「真琴ってどこに住んでんの?」

「教えない。」

冷たいなぁ。
.

⏰:09/12/16 17:54 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#407 [のの子]
 
「俺お茶いれてくる。」

グラスを持って部屋を出ていく時、真琴が俺をチラッと見つめてきた。

ん‥?

「あれ、また彰来てたのか。」

「こんにちは。」

「あっお邪魔してまーす。」

キッチンに行くとリビングで隼人さんと彼女さんが二人でテレビを見ていた。

大学生の二人は竜二とは違って呑気に話している。

.

⏰:09/12/16 18:03 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#408 [のの子]
 
「竜二どう?」

隼人さんが振り返って笑う。

茶髪に爽やかな笑顔。

こりゃ兄弟揃ってモテるはずだわ‥

「もともと勉強できる方だし大丈夫そうですよ。」

「邪魔してないだろうな?」

「もちろん。竜二の邪魔しに来てるわけじゃないんで。」

「あぁ、真琴ちゃんだっけ?お前も男だねー。」

隼人さんと俺は二人でニヤリと笑う。

「真琴ちゃんて、竜ちゃんの家庭教師さん?」
.

⏰:09/12/16 18:09 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#409 [のの子]
 
「ん?そうだよ。男だと気に食わなかったらあいつボコッちゃうかもじゃん?だから綺麗な女の子にしたの。」

隼人さんがクスクス笑う。

「女の子なんだ‥どんな子なの?」

隼人さんの彼女、由紀さんが二階を見つめる。

「ん〜‥綺麗な子だよ。目力が強いかも。な?」

「そうっすね。可愛いよりキレイ系ですね。」

相変わらずニヤニヤ笑う俺達を余所に由紀さんは二階を見つめたまま。

「ふーん。心配だな‥」
.

⏰:09/12/16 18:23 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#410 [のの子]
 
「えっ?」

「ん?なんでもないよ♪彰君は〜‥真琴ちゃんだっけ?その人の事好きなんだ?」

「さぁ‥気になる存在ではありますけど。」

「周りにはいない大人の女だもんなぁ。」

隼人さんがテレビを見ながらクスクス笑う。

「大人?ふふっまだ高校生じゃない。」

由紀さんが妖しく笑いながらテレビに向かうのを俺は横目で見つめる。

‥やっぱなんか掴めないんだよなぁ。

由紀さんは隼人さんと付き合ってもうすぐで二年になる。

⏰:09/12/16 18:31 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#411 [のの子]
 
可愛らしい人で優しいし、天然で面白い所もあるけど‥なんか時々見せる妖しい笑顔がなぁ。

竜二も由紀さんが苦手なのか会っても挨拶程度しかしない。

まぁ竜二は女苦手だもんな〜‥

ガチャ
「あれ、帰んの?」

俺が竜二の部屋のドアを開けると真琴がバッグに荷物を入れていた。

「ちょっと用事思い出して‥」

「彼氏からの呼び出し?」

彼氏っ?
.

⏰:09/12/16 18:40 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#412 [のの子]
 
「はっ?違う。」

「でもメール見たら急に帰るってなったし。彼氏からの呼び出しでしょ。」

竜二が意地悪く笑う。

「彼氏いるんだ。」

俺が突っ立ったまま真琴を見つめる。

「だから〜っ彼氏なんていないから!私フリーなんで。」

「じゃ俺立候補しようかな。」
.

⏰:09/12/16 18:45 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#413 [のの子]
 
俺は笑いながら真琴に手を振る。

「‥‥やだ。君に惹かれる所ないもん。じゃ私帰るね。竜二君バイバイ。」

真琴は俺を無視して横を通り過ぎていく。



「ぷっ‥フラれてるし。」

笑うのを我慢してるのか竜二の肩が揺れる。

ちっくしょー‥

君って‥俺は『彰』だって言ってんだろうがっ。

「ちょっと待てよ!」
.

⏰:09/12/16 18:59 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#414 [のの子]
 
階段を下りていく真琴を呼び止める。

「なに?」

真琴は眉間にシワをよせムスッとしながら俺を見つめた。

リビングから隼人さん達が顔を出しているのが見えたけど、俺は真琴だけを見つめる。

「俺は彰だって言ってんだろ。君って呼ぶな!」


この時の俺は好きとか付き合うとかじゃなくて、ただ『俺』を見つめて知ってほしかった。

俺が『真琴』を見つめて、知りたいと思っているように‥

⏰:09/12/16 19:05 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#415 [のの子]
 
「彰やる〜♪」

隼人さんが茶化すように笑う。

真琴は俺をじっと見つめ、

「君は馬鹿だね。」

なっ!

「はぁっ‥君の名前ぐらい覚えてるよ。でも暇つぶしに来てる子をわざわざ名前で呼ぶ必要ないでしょ。」

暇つぶしって‥

俺がいつも暇つぶしで来てるって言ってるから?
.

⏰:09/12/16 19:10 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#416 [のの子]
 
えっ俺が悪いの?

「名前で呼ばれたければそれなりの努力をしなさい。」

バタン


黒い髪をなびかせて彼女は竜二ん家を出ていった。




「かっけー‥」

俺は笑いながら呟いた。

.

⏰:09/12/16 19:44 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#417 [のの子]
――――

「あの子気が強そうな感じだね。」

「だなぁ。確かにちょっとかっこよかったし‥ありゃ彰完全惚れちゃったな。」

隼人がコーヒーを飲みながら笑う。

「そうみたいだねぇ‥でもそれなら竜ちゃんは大丈夫そう♪」

「何が?」

「ん〜?竜ちゃんには変な虫がつかないって事。」

由紀が雑誌をめくりながら笑う。

⏰:09/12/16 23:57 📱:SH06A3 🆔:noR5E.6A


#418 [のの子]
 
「変な虫って失礼だろ。」

「だってあの子きっと竜ちゃんと気が合わないよ。竜ちゃんにはもっと相応しい人がいるもの。」

由紀がニコッと笑って隼人を見つめる。

またか‥

由紀は竜二を可愛がってるけど、時々執着心が見え隠れするのを隼人は前々から気づいていた。

「お前は竜二を可愛がりすぎなんだよ。」

隼人が由紀の頭をクシャクシャに撫でる。

「だって隼人の弟なんだから当たり前だよ。」
.

⏰:09/12/17 00:05 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#419 [のの子]
 
「言ってくれたら私家庭教師やってあげたのにな。」

「そんな事したら俺との時間がなくなっちゃうだろ?」

チュッ

隼人が由紀のおでこに唇をあて背中に手を回すと、由紀も首に手を絡ませた。

「そうだよね‥隼人との時間大切だもん。またお家来てもいい?」

「いいよ。」

抱き合いお互いの肩の上で幸せそうに笑う隼人とは余所に、由紀は2階を見つめていた。
.

⏰:09/12/17 00:11 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#420 [のの子]
――――――――

「ねぇ誰待ってるの?」

「一緒に探してあげよっかぁ?」

なんか‥‥違う‥‥

「彼女待ってるんで。」

ニッコリ笑うと女達は口を尖らせながら去って行った。

「まだかなぁ‥」

真琴の通う高校を見上げて俺は門に寄り掛かる。

有名な進学校って言うから真面目そうな奴らばっかかと思ったけど、チャラそうなのもいんじゃん。

さっきから声をかけてくるのもギャルっぽいのからぶりっ子ばっか。

‥なんかピンとこないんだよなぁ。
.

⏰:09/12/17 21:20 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#421 [のの子]
 
別にギャルとかぶりっ子も嫌いなタイプじゃないんだけどなぁ‥

う〜ん、と首をかしげる。

なんかこうやっぱスラッとしてて‥あぁそうそうっあの人みたく黒髪で

「‥またいる。」

真琴が呆れた顔で門に向かって歩いてきた。

「お帰り、真琴。」

そう真琴みたいのが今の俺の心にはピンッとくる。

「君は犬か。私は君のご主人様とか?」

「うーん‥いいねっ犬。鎖で繋いでっ♪」
.

⏰:09/12/17 21:27 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#422 [のの子]
 
わんっと犬の真似をすると真琴は笑ってくれた。

「君みたいな犬のご主人様はしつけが大変そう。」

「えぇっ‥俺いい子だよ?ちゃんと真琴に言われた通り勉強もしてるし。努力してるんだけどな〜。」

ここ最近真琴を待ち伏せして一緒に竜二ん家に行くのが日課になってる俺。

『それなりの努力をしなさい。』

この時の俺は真琴に名前を呼んでほしくて自分の事を知ってもらおうと色々話した。

最初は素っ気なかった真琴も最近はよく笑ってくれるようになった。
.

⏰:09/12/17 21:34 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#423 [のの子]
 
ついでに最近は俺も真琴に勉強を教えてもらったりしてる。

もう暇つぶしで来てる俺じゃない。

「なぁ、まだ名前で呼んでくんないの?」

「そうだねぇ‥まだ努力が足りないんじゃない?」

真琴のクスクス笑う横顔を俺はムスッとしながら見つめる。

「俺の事遊んでるだろ?」

「‥‥‥さぁ。嫌なら辞めれば?」
.

⏰:09/12/17 21:40 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#424 [のの子]
 
「辞めない。」

「じゃ頑張って。」

真琴が笑うと、ムカつく気持ちもなんだか悪くない‥なんて思う俺。

♪〜♪〜♪

「あっごめん。もしもし、何?」

でたー‥謎の男。

真琴に度々かかってくる謎の男からの電話。

「今日?だから無理だって言ったじゃん。‥‥‥‥死ね。」

ピッ
.

⏰:09/12/17 21:52 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#425 [のの子]
 
‥まぁこの感じじゃ彼氏じゃねぇな。

「いっつも誰なの?」

「‥関係ないでしょ?」

「えぇ〜ご主人様の事知りたいなぁ。わん‥」

俺が大袈裟にシュンっとすると真琴が横目でチラッと見つめてきた。

「私男らしくない奴嫌いだな。」

うっ‥

「わかったよ。」
.

⏰:09/12/17 21:58 📱:SH06A3 🆔:Qh30UTts


#426 [のの子]
 
真琴はあんま自分の事を話さない。

こうやって一緒に竜二ん家に向かう事で知れたのは

真琴は女王様タイプ。

たぶん俺が真琴に惚れてるのもわかっててこいつは虐めてくんだから‥

かなり意地が悪く頑固。

「あっ今度俺お迎え来れないから。」

「えっなんで?」
.

⏰:09/12/18 22:09 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#427 [のの子]
 
「弟の面倒見なきゃなんだよね。」

「弟いんのっ?」

真琴のクリッとした黒い目が俺を見つめる。

ドキッ

「うん。まだチビだけど‥かなり歳離れてるよ〜。」

俺が苦笑いしながら写メを見せると真琴はじっと見つめる。

「可愛い‥君、お兄ちゃんなんだ。」

ふっと笑った真琴は今までで1番優しく、温かい笑顔で俺の頬も熱くなる。
.

⏰:09/12/18 22:15 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#428 [のの子]
 
「私も妹いるんだけどめちゃくちゃ可愛がってるんだぁ。」

「え?へっへぇ〜‥」

真琴が歩きながら初めて自分の話をしだした事に驚きながら平然を装う。

「下に妹とか弟がいるとさ、何でもしてあげたくならない?」

「ん〜まぁわかるかも。」

「だよねっ?!よくシスコンって言われるんだけど‥あの子は私にとって掛け替えのない子なの。」

真琴は何かを思い出すかのように空を見上げる。
.

⏰:09/12/18 22:22 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#429 [のの子]
 
「だってめちゃくちゃ可愛いんだもん。あっ先に言っとくけど君には紹介しないからね。」

真琴が俺に指をつきつける。

「俺は真琴だけだよ。」

「ふふっ本当君は私の犬だね。」


いじわるく笑う真琴は俺より先を歩く。

それについていく俺。

はぁっ本当犬みてぇ。

⏰:09/12/18 22:27 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#430 [のの子]
―――――
コンコン
「竜ちゃん。」

竜二は無表情のままドアの方を見る。

「なんでいるの?」

ドアにはニッコリ笑う由紀が立っていた。

「隼人がね、今日バイトだからお家で待っててって。」

「母さんは?」

竜二は由紀を睨む。

「また出かけちゃったよ。また竜ちゃん一人ぼっちだね。」
.

⏰:09/12/18 22:31 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#431 [のの子]
 
「うるさい。」

竜二はさっきまでつけていたウォークマンのイヤホンをまた耳につけようとすると

「可哀相な竜ちゃん‥」

っ!

由紀はベッドに座る竜二のひざ元に座り込む。

「いつも一人ぼっちな竜ちゃん。可哀相‥」

「うるさいって言ってるだろ。出てけよっ。」

「私がいなくなったらまた一人だよ?」

.

⏰:09/12/18 22:37 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#432 [のの子]
 
「っ‥これから彰と家庭教師がくんだから出てけよっ。」

「あぁ‥あの二人仲良いよね。彰君はあの子の事好きみたいだし、あの子もたぶんまんざらでもないんじゃない?」

由紀が竜二の膝にそっと触れる。

「結局竜ちゃん仲間外れじゃない。やっぱり一人ぼっ――
ダンッ

竜二がウォークマンを壁に投げつける。

「あーぁ‥壊れちゃった。」

由紀がクスクス笑い出す。
.

⏰:09/12/18 22:42 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#433 [のの子]
 
「‥なんなんだよ。いっつもいっつも‥うるせーんだよっ!」

竜二が髪をクシャッと掴む。

「私は本当の事言ってるんだよ?竜ちゃんはずーっと前から‥小さい頃から一人ぼっちだったでしょ?」

「うるさい‥やめろよ‥」

「お父さんとお母さんは仕事、お兄ちゃんは友達と遊びに行って塾にも行って‥竜ちゃんには何もなかったもんね。」

竜二が由紀を睨みつけると由紀は優しく笑う。
.

⏰:09/12/18 22:48 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#434 [のの子]
 
「その目好き‥」

由紀の手が竜二の頬に触れる。

「でも大丈夫だよ?竜ちゃんには私がいるもん。竜ちゃんの寂しさに初めて気づいてあげたのは誰?私だよね?」

由紀が妖しく笑いながら竜二の顔に近づいていく。

「竜ちゃんには私しかいないの‥忘れないで?」

二人の唇が重なったとき、

竜二の目から涙がこぼれた。

⏰:09/12/18 22:53 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#435 [のの子]
――――

「こんにちは。」

「こんにちは‥」
「お邪魔しまーす。」

竜二の家に着くと由紀さんが出迎えてくれた。

隼人さんがいなくても由紀さんはよく竜二ん家にいる。隼人さんを待ってるらしい。

「‥面倒臭いなぁ。」

真琴がボソッと呟く。

「何が?」

「‥わかんないの?」

真琴が俺を呆れた顔で見つめる。

「勉強教えんのがめんどいの?」

「バカ。」
.

⏰:09/12/18 23:00 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#436 [のの子]
 
「ひでぇ‥」

真琴は何が面倒臭いか話さないままサッサと先に階段を上っていく。

‥言わないのかよっ!

コンコン
「竜二君、入るよ?」

竜二からの返事はない。
真琴がまた小さなため息をつく。

ガチャ

「やっぱり‥」
.

⏰:09/12/18 23:27 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#437 [のの子]
 
うん、一目でわかる。

今日の竜二はご機嫌ななめ。

ウォークマンはぶっ壊れてるし、ノートも散らばっちゃって‥

ベッドの上で俯いたまま竜二は俺達を見ようともしない。

「今日ムリ。帰って‥」

イライラを我慢してる低い声で竜二が呟く。

久しぶりにご機嫌ななめだな。

「どうすんの?」
.

⏰:09/12/18 23:33 📱:SH06A3 🆔:XrF9oZgI


#438 [のの子]
 
久しぶりに近づくんじゃねぇオーラが漂ってるし‥

小さな声で真琴に聞くと真琴は面倒臭そーな顔で竜二を見つめたまま

「確かにこんなんじゃ勉強できないしね‥仕方がないなぁ。」

真琴はズカズカ竜二の部屋に入って行く。

えぇっ帰んじゃねぇの?

バシンッ
「何ボーッとしてんの。さっさと片付けるよ。」

「イッ‥はぁ?」

真琴が竜二の頭を勢いよく叩いた。

⏰:09/12/19 15:42 📱:SH06A3 🆔:0C3oGL3g


#439 [のの子]
 
「はぁ〜っ私汚い部屋嫌いなんだよねぇ‥君も手伝ってよ。」

真琴がムスッとしながら散らばったノートを集める。

「えっ‥あぁ、うん。」

俺も戸惑いながら壊れたウォークマンを拾う。

「ちょっ帰れって言ってんじゃんっ!さわん―
「竜ちゃん、大丈夫?」

由紀さんが心配そうに竜二の部屋をのぞいていた。

「真琴ちゃんだっけ?竜ちゃん一人になりみたいだし今日は帰ってあげて?私がいるから大丈夫だよ。」
.

⏰:09/12/19 16:55 📱:SH06A3 🆔:0C3oGL3g


#440 [のの子]
 
「それに勉強なんてできる状況じゃないし‥ね?」

黙って俯く竜二とは反対に由紀さんはニコニコ笑って真琴を見つめる。

「勉強?あぁこんな部屋じゃ勉強なんてできませんよねぇ。っというか別に勉強するために片付けてる訳じゃないですよ。」

真琴は集めたプリントを一枚一枚確認していて由紀さんを見ようとしない。

「私もそこにいる彼も、竜二君に勉強させるためにいるわけじゃありません。」

トントンッ

真琴は綺麗にプリントを揃える。
.

⏰:09/12/20 20:20 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#441 [のの子]
 
「彼は竜二君の親友で、私は家庭教師ですが今日の私はただの二ノ宮です。」

真琴がやっと由紀さんを見た。

「私達は竜二君を心配して、一人にさせたくないと思ってます。これはいけない事でしょうか?」


シ〜〜〜〜〜ン


「いけなくはないけど竜ちゃんは一人になりたいんだよ?無理矢理一緒にいるのは残酷だって思う‥」

由紀さんが悲しい顔をするのは竜二の気持ちを思ってなのか、真琴の考えを非難してるのか‥
俺にはわからなかった。

⏰:09/12/20 20:29 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#442 [のの子]
 
でも真琴にはどっちなのかわかってるのように真琴がニヤッと笑った。

「それならあなたもですね。無理矢理はよくないです。」

いつの間にか俺よりも前に竜二の部屋に入ってきていた由紀さんの肩がピクッと揺れた。

「うん‥じゃ仕方がないですね。私達も帰りま―」
ピタッ

立ち上がろうとした真琴のシャツを竜二が掴む。

「もういいよ。‥いていいよ。」

竜二が俯いたまま呟く。
.

⏰:09/12/20 20:40 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#443 [のの子]
 
「竜ちゃんっ?」

「‥彼の許しも貰えたんでやっぱ帰りません。お邪魔させていただきますね。」

真琴がニコッと意地悪く笑うと由紀さんもニコッと笑いながら部屋を出ていった。

バタンッ!

今度は由紀さんがご機嫌ななめになったみたいだけど‥

「私あの人苦手。」

真琴がため息をつきながらまた座り込む。
.

⏰:09/12/20 20:46 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#444 [のの子]
 
「俺もちょっと苦手。」

「俺は大っ嫌いだよ‥」

竜二がベッドに倒れ込む。

大っ嫌いって‥由紀さんとなんかあったのか?

俺も真琴の前に座る。


誰も話さないから俺も黙っていると



「ありがと‥」


小さな声がベッドから聞こえた。
.

⏰:09/12/20 20:51 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#445 [のの子]
―――――

「なぁなぁっこの前【黒蝶】現れたらしいぞっ。」

「へぇ久しぶりじゃん。最近全然噂ないからいなくなったのかと思った。」

「この前族同士のデカイ喧嘩あったじゃん?あの時見た奴がいてさ、かっこよかったってよ。」

「スノードロップだっけ?できてまだ全然だろ?‥どんどんデカくなってってんな。」

「もうこの辺はスノードロップが占めてるよ。【黒煙】に【黒蝶】‥その上に総長の【雷公】がいんだもんなぁ。」
.

⏰:09/12/20 21:15 📱:SH06A3 🆔:pQ8YiUFM


#446 [のの子]
 
「そういや今度この辺の族同士の集会あるらしいぜ。本当かわかんねぇけど‥」

「マジで?恐そぉ‥」

チッ‥うっせーな

「たぶんスノードロップも参加するはずだし、見に行く?」

気持ち良く寝ている俺の邪魔をする奴らを睨む。

「無理無理っ!見つかったらただじゃすまねぇだろっ。」

「うっせーんだよ‥」

俺に気づかずに笑うそいつらに俺は声をかけた。

⏰:09/12/21 00:21 📱:SH06A3 🆔:W0PfAZ5s


#447 [のの子]
 
「げっ彰起きてたのかよ。」

「お前らがうるさくて寝れないんだろっ。何が族の集会だよ。」

「彰も不良なら族の話とか興味あるんじゃねぇの?」

顔見知り程度のそいつらはニヤニヤ笑う。

うぜーな‥

「不良がこんな点数とれないっしょ?」

俺はニッコリ笑ってこの前のテストをポケットから出す。

「‥はっ?!82点てお前カンニングしたろっ!」

今までよりも遥かに良い点数に驚いてる。

「バーカ!カンニングなんかすっか!ってかどっか行けよ。」
.

⏰:09/12/22 21:03 📱:SH06A3 🆔:NifqdC0o


#448 [のの子]
 
真琴達と勉強するようになって竜二ももちろん俺の成績は自然と上がっていった。

最近の竜二も前みたく簡単にキレなくなったし、平和な毎日が続いてた。


「なぁ彰一緒に族の集まり見に行かねっ?」

「はぁっ?!嫌だ。俺興味ねぇもん。」

「えぇ〜っスノードロップ見れるかもなんだぞ?さすがにスノードロップぐらい知ってるだろ?」

スノードロップ

最近力をつけてきた族の一つ。
.

⏰:09/12/23 20:39 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#449 [のの子]
 
総長も含めて若い奴らが集まったらしく、

総長の『雷公』
【スノー(雪)】っていうくせに黒服が正装で、唯一総長だけ金髪・白服が許される。そいつの金髪と喧嘩後がまるで雷が落ちたかのように人がぶっ倒れてる姿からこの名がついた。

副総長『黒煙』
総長の右腕でいつもタバコを吸っているらしい。喧嘩中もタバコを吸っていてそいつが動くと煙りが舞う姿から黒煙って呼ばれる。

『黒蝶』
族の中で唯一の女で滅多に現れないらしいが、喧嘩の腕は男に負けない。特徴の素早さが蝶が舞っている姿に似ているらしい。美人って噂があるけど本当だか‥

まぁ俺でもこれぐらい知ってる有名人がいる族って事。

⏰:09/12/23 20:52 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#450 [のの子]
 
「見ても何も得ないし。」
「まぁ興味あったら行ってみろよ。確かかわかんねーけど今週らしいぞ。」

「はいはい。」

俺が欠伸をするとそいつらはつまらなそうに出ていった。

今週ねぇ‥



「それより真琴何してんのかな〜。」


.

⏰:09/12/23 20:56 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#451 [のの子]
――――

「明日なんだけど用事あるんだ。だから次なんだけどまた来週ね。」

真琴がバッグにプリントやら筆箱を入れながらサラッと言った。

「わかった。」
「はっ聞いてないっ!俺明日なんも予定入れなかったのに〜‥」

真琴が馬鹿にしたように俺を見つめる。

「じゃ勉強してなさい。」

「真琴がいなきゃ無理。」

「俺も明日暇だし久しぶりに遊び行こうよ。」

「そうね、遊んできなさい。じゃ私帰るから。」

真琴が慌ただしく立ち上がる。

いつもならゆっくりしてくのに‥
.

⏰:09/12/23 21:04 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#452 [のの子]
 
「もう帰んの?」

竜二も驚いた顔で真琴を見上げる。

「用事があるの。じゃまたね。」

真琴は軽く手を振って部屋を出て行った。


「あいつ男いるね。」

「はっっ?!!!!」

竜二が頬杖をつきながら俺を見つめる。

「さっき真琴が電話してんの聞いちゃったんだ。明日デートだよ。」
.

⏰:09/12/23 21:10 📱:SH06A3 🆔:6bYqDLU6


#453 [のの子]
 
「待ち合わせ場所も聞いちゃったけど、どうする?久しぶりに出かける?」

ニヤリと笑う竜二は天使か悪魔か...

「まぁデートを見に行く勇気があればだけど。」

勇気ねぇ‥

ふっ

俺もつられるように笑う。

「‥バーカ。よしっ久しぶりに出かけるか。」


こうなったら真琴のデートやらを見に行ってやろうじゃないか。
.

⏰:09/12/31 00:14 📱:SH06A3 🆔:TF0AcJCw


#454 [のの子]
――――――

季節はもうすぐ夏になろうとしていた。

まだ梅雨の湿った生温い空気が残るけど、夏を感じさせる太陽の暑さは日に日に増していく。

そんな中、俺達は普段は降りない駅に立っていた。


「待ち合わせ場所ってここ?」

「駅の名前と時間しか言ってなかったからなぁ。ここら辺にいれば現れると思う。」

駅前の大きな時計の針は、18時を指そうとしている。

「でも18時に駅前とかまさにデートじゃない?」

「デートにしちゃ平凡な町の駅じゃん。どこでデートすんだし。」

デートかどうかもわからないのに、俺達はもう真琴がデートするもんだと思っていた。

⏰:10/01/02 21:33 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#455 [のの子]
 
「そりゃここが相手の住んでいる町で、向かうは家とか?」

竜二の話を聞きながら、俺達はコンビニの前に座り込む。

ここなら駅から出てくる人間を目立つことなく観察できる。

「相手の家で何すんの?勉強とか?」

俺は鼻で笑いながらじっと駅の改札を見つめる。

「決まってんじゃん。‥セックスじゃないの?」

竜二が小さな声で複雑そうに言った。

‥‥‥‥‥は?
.

⏰:10/01/02 21:41 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#456 [のの子]
 
俺はゆっくり竜二を見つめて笑う。

「お前は‥‥バッカじゃねーのっ!?真琴がそんな簡単にやらせるかよっ!バーカッ!」

「うっるさいなー!そんなのわかんねぇだろっ?相手は真琴が男として好きになった奴なんだぞっ?!普通やるだろっ!」

「お前それ以上言ったらマジ殺すっ!殺すからなっ!」

デカイ声で『やる・やらない』の話をしていると、電車が着いたのか人が多く流れてきた。

「ちょっ真琴いるかもよっ!」

慌てて竜二が俺の口をふさぐ。
.

⏰:10/01/02 21:48 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#457 [のの子]
 
サラリーマンや学生がチラホラ見える。

この中に、彼氏に会いにきた真琴がいるのか。

今更少しずつここに来た事を後悔しだす。

「‥‥あっあれ真琴じゃない?」

「‥ん、だな。」

俺の気持ちを知らずに真琴は可愛らしい私服で、電話しながら現れた。

「もうすぐご対面だね。」

竜二が笑いながら俺の肩をポンッと叩く。

楽しみやがって‥
.

⏰:10/01/02 21:56 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#458 [のの子]
 
「どうすんの?めっちゃお似合いの彼氏さんだったら‥」

「別に‥俺の気持ちは変わんないし。」

「片想いか。」

「片想い上等‥」

俺は遠くに立つ真琴を見つめる。

「‥でも‥‥‥今の俺って軽くストーカー?」

「どんまい。」

竜二が今度は二回俺の肩を叩いた。
.

⏰:10/01/02 22:01 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#459 [のの子]
 
真琴が歩きだした。

「あれ‥おい、あれじゃね?」

「はぁ‥あいつっぽいな。」

真琴が手を振った先には、黒髪のタバコ吸いながら手を挙げている男がいた。

真琴と同い年ぐらいだろうか。

制服を着くずしている感じから優等生タイプではないみたいだ。

でもカッコイイ‥かな。

「真琴はあーゆーのがタイプなんだねぇ。」

二人は軽く立ち話をするとゆっくり歩きだす。

「‥もし家だったら相手ぶっ飛ばして逃げるぞ。」

「えぇ〜。そんな事したら俺達が真琴にぶっ飛ばされるじゃん。」
.

⏰:10/01/02 22:11 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#460 [のの子]
 
「いいから行くぞっ。」

真琴達の後を道路を挟んでついていく。

ストーカーがなんだし‥嫌なもんは嫌なんだよっ!


―――――――


「あれっどこ行った?」

「わかんない。あっち?」

もう空に星がハッキリ見えだす中、道路を挟んでいたせいで俺達は真琴達を見失った。
.

⏰:10/01/02 22:16 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#461 [のの子]
 
「ってかここどこっ?なんもないじゃん。」

竜二が辺りを見回す。

知らない町のせいで土地勘がない俺らにはここがどこなのか全くわからない。

わかるのは今もやってんのかわからない閉まった店と公園、もう少し行った向こうにデッカイ工場っぽいのがある事。

「道間違えたのかも。っんだよ、あの二人‥」

「はぁ、もうしょうがないよ。帰ろう?」

竜二が来た道を戻る。

俺も辺りを軽く見回して、竜二の後をついていく。

⏰:10/01/02 22:30 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#462 [のの子]
 
今頃あの二人は‥‥いやいやいやっ考えたら負けだ!考えるなっ考えるな俺っ
ドンッ

そんな事を考えてると俺は思いっきり竜二にぶつかった。

「っ‥‥お前何して
「彰っあれ‥」

竜二が指さしたのは公園を挟んで向こうの道。

明かりがほとんどなく暗い道には、

「なんだよ、あれ‥」

ゾロゾロと質が悪そうな奴らが歩いていた。
.

⏰:10/01/02 23:59 📱:SH06A3 🆔:v9vmD.8Y


#463 [のの子]
 
「あいつら‥たぶんブラクリックだ。前に見た事ある。」

「ブラクリックって族じゃん‥なんでこんなとこにいんだよ。」

俺達は見つからないよう小さな声で話す。

そいつらと俺達との距離は近くはない。けど、遠くもない。

「知らないよ。それより早くここから離れた方がいい。見つかったらどうなるかわかんないし‥」

確かに‥
.

⏰:10/01/03 00:08 📱:SH06A3 🆔:Q93rgQZs


#464 [のの子]
 
「面倒はごめんだし‥早いとこ離れよ。」

さすがにこの時の俺の頭には真琴とあの男の事を考える隙はなかった。

俺達はゆっくり静かに歩きだす。

自然と無言になる。

ブラクリックには良い噂はない。まぁ族に良いも悪いもないだろうけど..

仲間だろうとなんだろうと容赦ないらしい奴らにその辺の中坊が関わったらどうなるか。

苦笑いと同時に嫌な汗が出る。
.

⏰:10/01/06 20:50 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#465 [のの子]
 
ジャリッ
っ!

公園の中から砂利を踏むような鈍い音がしたのを俺も竜二も聞き逃さなかった。

反射的にブラクリックのいる方を見つめると彼等は音に気づいていないのか、そのまま暗闇に消えていった。

あっちって工場しかないんじゃ‥

ジャリッジャリッ

っ!

ハッとして音の方を見る。

ブラクリックじゃないならこの音は一体何の音なのか‥

まだ真夏でもないのに怪談なんてごめんだ。

ジャリ
「お前ら何してる‥?」

⏰:10/01/06 21:01 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#466 [のの子]
 
「うわっ!」

声を上げたのは俺。

「ったく、中坊がここで何してんだよ〜。お前ら早く帰った方がいいぞ。」

俺達の前に現れたのは、パーマをかけているのか髪の毛がうねっていてかったるそうな顔をした男だった。

そんな男を見て、俺はまた驚く。

「‥‥アンタもしかして‥スノードロップの‥」

その男は金髪、白いシャツの上に白のコートの様なモノを羽織っていた。唯一パンツと靴が黒っぽい。

「スノードロップのヘッド?」
.

⏰:10/01/06 21:22 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#467 [のの子]
 
竜二が俺の言葉を続けた。

「‥だったら?」

男の口元がニヤリと笑った。

はっきり認めた訳じゃないけど、こいつだって思った。

この人が‥『雷公』

噂で聞いていたよりも若く見え、カッコイイ男だった。

もっとゴリラみたいな奴かと思ってたのに..

「初めて見た‥」

俺は呟くと雷公はクスクス笑う。

「もしかしてお前らキングリー見に来たの?」

「キングリー?」
.

⏰:10/01/06 21:33 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#468 [のの子]
 
「ん?違うなら知る必要ないじゃん。っつか帰れ!俺忙しいんだから。」

シッシッとやる姿から総長の威厳みたいなもんは感じられない。

本当に雷公なのかよ‥

ブラクリックに雷公なんてこの辺どうなって‥


「あっ‥わかった。キングリーって集会の事だ?」

確か今週スノードロップを含めた族の集会があるって聞いた。
.

⏰:10/01/06 21:38 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#469 [のの子]
 
「‥知ってんじゃん。生意気なガキだな。」

俺の頭をコツンッと叩く。

「ったく、確かにこれから集会があるよ。中坊が二人でのこのこ歩いてるなんて危ないから早く帰れって言ってんの。優しいお兄さんだろ?」

「アンタは一人でのこのこ危なくないの?」

竜二が雷公を見つめる。

「‥俺はスノードロップのヘッドだぞ?」

その余裕の表情からは、この人は大丈夫なんだろうな.なんて思った。

じゃ気をつけろよ、それだけ言うと雷公はブラクリックと同じように暗闇に消えていった。

向かう先は工場‥
.

⏰:10/01/06 21:56 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#470 [のの子]
 
「あの工場で集会やんだ。」

竜二も工場の方を見つめていた。

「雷公って思ってたより優しいんだね。」

「ん〜‥まぁまぁじゃん?」

「まぁまぁって‥ってかブラクリックにスノードロップも集まる集会じゃ他のメンツもすごいのかな?」

「だろーな。あと黒煙と黒蝶も揃うらしいぞ。」

何日か前に聞いた情報を思い出す。
.

⏰:10/01/06 22:03 📱:SH06A3 🆔:NtLNoS5I


#471 [のの子]
 
「‥ちょっと見てく?」

竜二が少し遠慮しながら小さく呟く。

「‥‥‥‥見てく。」

俺も小さく呟く。

見ても何も得なんてない。

でも今の俺達の好奇心は、得とか考えるよりも足を動かせた。

この行動が俺と真琴が付き合うきっかけに繋がるとも知らずに、俺達は雷公の後を追うように暗闇に消える。

⏰:10/01/10 23:51 📱:SH06A3 🆔:0Np5zl9g


#472 [のの子]
―――――

カチャンッ

「バカッしっ!」

「ごめん‥」

竜二が口に人差し指を当てながら俺を睨む。

遠くからはわからなかったけど、この工場はもう使われてないらしくあちこちにガラスや意味のわからないゴミや卑猥な雑誌が散らばっていた。

まさにここは不良達、族にとって居心地が良さそうだった。

建物の陰に隠れながらコソコソ進む俺達を、いつの間にか現れた大きな月が照らす。

二人の影が伸びる。
.

⏰:10/01/11 21:22 📱:SH06A3 🆔:RI/yyPH2


#473 [のの子]
 
ガシャーンッ!

っ!!

俺達は慌てて隠れる。

「うっせぇなー。」

「‥はぁ‥‥早く帰りたい。」

「‥‥‥‥。」

声のする方を見ると、何台かのバイクのライトが四人の男を中心に暗闇を照らしていた。

「あぁ、ごめん。こいつが逃げようとするからさ。」

一人の男が笑いながら指さしたのは、ボコボコにされて泣いている男だった。
.

⏰:10/01/11 21:33 📱:SH06A3 🆔:RI/yyPH2


#474 [のの子]
 
「すっ‥ずみまっ許し‥くだ‥
「しーっ‥黙れ。お前の顎壊すぞ?」

何が面白いのかそう言って笑っていたのは

ブラクリック総長
『黒い死に神』
山川 総一郎

「どっか他でやれよ。」

総一郎を横目で見つめる男

ラファエル総長
『堕天使』
中井 健斗
.

⏰:10/01/12 23:49 📱:SH06A3 🆔:8CqNi16I


#475 [のの子]
 
「つまんないなぁ‥」

ボーッと空を見上げる男

クラッシュ総長
『血まみれのクラッシャー』
飯沼 順平

「‥‥‥‥。」

黙って本を読み続ける男

ファナティック総長
『沈黙の狂言者』
深田 太一


「マジかよ‥」


俺達の前には、この辺を占めるトップの族の総長が集まっていた。
.

⏰:10/01/13 22:09 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#476 [のの子]
 
「これに雷公も入るんだろ?見つかったらマジでやべぇな‥」

「確実にあの世逝きだね。」

ライトに照らされる総長達とは逆に、闇に紛れるように他にも名前が知られている奴らがチラチラ見える。

「はぁ‥もうこんなメンツ見れたら十分。帰りてぇ。」

そう言いつつ、下手に動くこともできない俺達はただじっと隠れていた。

「集会が終わるまで待ってた方がいいかもね。」

空を見上げると綺麗な満月が俺達を照らしていた。

今になって真琴の事を思い出す。
.

⏰:10/01/13 22:19 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#477 [のの子]
 
もう家に帰ったかな‥

「遅れたー。」

そんな事を思っていると聞き覚えのある声が響いてきた。

「いっつもおせーんだよっテメェはっ!」

「ごめんてぇ。そんな怒んないでよー。」

健斗がニコニコ笑う昇の胸倉を掴んでいるのが見えた。

「あれ?昇くん、姫はぁ?」

順平がキョロキョロと回りを見つめる。
.

⏰:10/01/13 22:27 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#478 [のの子]
 
「うちの姫ならもう来るよ。あっ太一久しぶりー。」

「‥‥ども‥」

太一が本を閉じると初めて声を出す。

バァンッ!

「もっ‥かっ勘弁し‥
「あぁー聞こえない聞こえない聞こえなーいっ!」

総一郎は昇が来た事に気付いていないのか、相変わらず笑いながら男をボコッていた。

「総一郎さーん、昇さんも来たんでその辺で終わりにしましょ。」

「あ゛ぁ?‥なんだ、もう来たんだ。」

総一郎をブラクリックの副総長の本田が止める。
.

⏰:10/01/13 22:35 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#479 [のの子]
 
「チッ‥手汚れたぁ。」

ブツブツ文句を言いながら総一郎が手をパンツで拭くと、総長達全員がライトの中心に輪になるように集まる。

「じゃ全員集まったし、集会始めるか。」

「姫達来てないけどいいの?」

「ヘッドの俺がいればいいじゃん?」

「‥‥‥始めましょ。」

「さっさとやって帰ろうぜ。俺パンツ汚れちゃったし今すぐにでも帰りたい。」

各々話すと一瞬時が止まったかのようにその場が静まる。

⏰:10/01/13 22:44 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#480 [のの子]
 
「んじゃ‥‥平和と破壊を胸に‥」

健斗がライターをつける。

「「「平和と破壊を胸に」」」

ライターの火にあとの三人がタバコをつけていく。

それは集会を始める時にやる決まりなのか、誰も何食わぬ顔でやっていた。



「キングリーを始める。」


.

⏰:10/01/13 22:53 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#481 [のの子]
 
「じゃまずは順平から。」

「俺?あぁーそうだな、この前なんだけど‥――」

集会って言っても各族の近況報告とか他の族の動きの話らしく、俺達にはよくわらなかった。


「それで‥あっ来た。」



「遅れましたー。」

そう言って現れたのは、

「あいつっ‥」

さっき真琴の横で笑っていた男だった。
.

⏰:10/01/13 23:01 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#482 [のの子]
 
「亮、遅くない?」

「あぁ〜うちの姫がご機嫌ななめで‥」

さっき見た時とは違う黒い服を着て昇の横に立つ男は、紛れも無くさっきの男だ。

「さっきの‥あいつスノードロップなのかよ。」

「‥まさか『黒煙』?」

竜二と顔を見合わせる。

「やばくない?絶対真琴騙されてる‥」

「確かに‥族とかあいつ嫌いそうだもんな。」
.

⏰:10/01/13 23:06 📱:SH06A3 🆔:jgJzS3f6


#483 [のの子]
 
嬉しいようなムカつくような‥

まぁ真琴に会ったら言ってやろう、なんて考えながら俺達は亮というそいつを見つめる。

「ご機嫌ななめってなんで?」

「いやーなんか返事がない!とか言ってグチグチ‥まぁもう来るよ。」

そう言って総長達の輪から離れる。

「姫のご機嫌ななめな顔拝みたいな。」

順平がクスクス笑う。

「黒蝶にぶっ殺されろ、変態。」

健斗が順平を睨む。

⏰:10/01/14 17:15 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#484 [のの子]
 
「‥‥‥くだらない‥」

「太一くんも女に興味持ちなさいよ。」

「っつーか続きっ!早く帰りたいって言ってんじゃん。」

「テメェは自己中なんだよっ!」

「‥んだとコラ?」

バンッ

総一郎と健斗が睨み合う。.

⏰:10/01/14 17:19 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#485 [のの子]
 
「ってか二人共喧嘩っ早すぎだからー。君達めんどくさいぞー。」

昇が呆れた顔で二人の間に入る。

‥‥なんなんだ、こいつら

「あっみなさーん、うちの姫が来ましたよぉ。」

亮の声が響く。

ザワザワ

あたりがざわつく。


「はぁ‥その姫っていうのやめてって言ってるでしょ。」

⏰:10/01/14 17:23 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#486 [のの子]
 
「姫ー。」

順平が手を振る。

「こんばんは。」

「こんばんはじゃねぇし。おせぇんだよっ。」

健斗が睨む。

「姫どころか女王気取りかよ。」

クククッと総一郎が笑う。

「‥‥‥‥。」

太一はただ見つめるだけ。

「私そんな遅かった?普通じゃない?」

「遅いねぇ。キングリー始まっちゃってるもん。」
.

⏰:10/01/14 17:33 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#487 [のの子]
 
「あぁ‥じゃ遅刻ね。ごめんなさい。」

その言葉に心がこもっていないのがすぐわかった。

あれが黒蝶‥?

ライトが当たるところに入らないせいで黒蝶の顔がわからない。

「全く、うちの姫がすみませんねぇ。」

昇が笑う。

「‥‥‥死ね。」

ん?‥‥今の言い方

「やめてって言ってるでしょ?」

この声
.

⏰:10/01/14 17:41 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#488 [のの子]
 
ライトによって黒い影がまた一つ伸びる。

「私の名前に姫なんて入ってた?」

「ん〜‥一文字もないね。じゃ真琴ちゃんっ♪」

「ちゃん付けも気持ち悪いからやめて。」


昇を睨みつけながらライトに照らされた、

黒い長い髪

黒のフリルのついたシャツとパンツ

高いヒールのパンプス
.

⏰:10/01/14 17:59 📱:SH06A3 🆔:h1qIIdLI


#489 [のの子]
 
っ!

その姿は

「なんであいつが‥‥」

いつも俺が見つめていた

彼女とは違ったけど、

「彰‥あれ、そうだよね?」

笑った顔は

いつもと変わらない


「真琴が‥あいつが黒蝶‥」

.

⏰:10/01/15 12:27 📱:SH06A3 🆔:dOheSbzc


#490 [のの子]
 
あんなクソ真面目そうな真琴が‥族?

しかも黒蝶って‥‥




「‥やっぱかっけぇー♪」

俺は真琴を見つめて笑う。

「いやいや、もっと驚くべきじゃない?」

竜二がため息をつく。
.

⏰:10/01/15 12:32 📱:SH06A3 🆔:dOheSbzc


#491 [のの子]
 
「ん?そりゃもう驚いた驚いた。でも面白いじゃん。」

「面白いねぇ‥確かに。」

竜二の口元が緩んだ。

「ってかさっきいた男は黒煙だろ?じゃ二人付き合ってないんじゃね?」

俺はスノードロップの三人を見つめる。

あの謎の男からの電話はたぶんあいつらからだろーし
.

⏰:10/01/16 19:54 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#492 [のの子]
 
「どうだろーね‥あの三人の関係性全くわかんないし。」

「‥‥そか。まだわかんな♪〜♪〜♪〜

っ!!!

「やばっ!」
「バカッ!なんでマナーモードにしてねぇんだよっ!」

竜二の携帯から着信音が流れて、その場に響き渡る。

もちろん向こうの奴らにも....


「誰だ‥‥?」

ジャリッ
.

⏰:10/01/16 20:02 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#493 [のの子]
 
ピッ
竜二が慌てて電話を切る。

最悪‥やっぱ聞こえちゃったよな。

「そこにいる奴、さっさと出てこい。」

「ビックリした〜。なに?敵襲とかっ?」

総一郎の笑い声が聞こえる。

敵でも味方でもないっつーの。

影から覗くと、真琴を含めた総長達がこっちを見つめていた。

「悪い。どうする?」

竜二が苦笑いしながら携帯をポケットにしまう。

⏰:10/01/16 20:08 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#494 [のの子]
 
「ったく〜‥素直に出てってもどうなるかわかんねぇし。」

それに今、真琴に会うの気まずい。

後を追ってきたのがバレたらマジで嫌われそうだし‥

「じゃやっぱり‥―」

俺達は建物に隠れながら立ち上がる。


「「ダッシュで逃げる。」」


「―‥しかないだろ。」

二人して背伸びする。
.

⏰:10/01/16 20:13 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#495 [のの子]
 
長時間座っていたせいで体が痛い。

「お゙いっ!聞いてんのかコラッ!!」

っ!

ジャリッ

健斗の低い声が響くと、同時にこっちに向かってくる足音がした。

「はぁっ‥こけても助けてやんないからな。」

「ひどっ!っつーかこけないしね。」

ふぅ‥

息をゆっくり吐く。
.

⏰:10/01/16 20:18 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#496 [のの子]
 
「行くぞっ‥」

竜二は黙ったまま頷く。


「いい加減にっ
バッッッ

二人同時に走り出す。

「あっ逃げた。」

「‥どうする?捕まえる?」

太一が呟く。

「クソがっ!テメェら捕まえろっ!」

健斗が怒鳴る。
.

⏰:10/01/16 20:25 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#497 [のの子]
 
その声は俺達にも聞こえた。

「お前ら、あいつら捕まえて俺に献上しろ。」

総一郎が冷たく笑う。

「めんどくさ〜。ったく、お前達行ってこい。」

「‥行け。逃がすな。」

順平と太一も仲間に声をかける。

キングリーでは4人までの仲間をつれてきていい事になっている。

各総長の一言でそれぞれの仲間達が走り出す。
.

⏰:10/01/16 20:31 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#498 [のの子]
 
「あいつらさっきのガキンチョ‥?バカ〜。」

昇はため息をつく。

「ガキンチョ?知り合い?」

亮が他の仲間に手で後を追うよう指示する。

「知り合いっつーかさっき公園で会ったガキンチョ。帰れって言ったのによ〜。」

「あんた余計な事教えたんじゃないの?」

真琴が呆れた顔をする。

「別に〜。でも一人がキングリーがある事知ってた。」

「興味持たせたんでしょ?」

⏰:10/01/16 20:37 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#499 [のの子]
 
「そんな事するかっ。あいつら中坊だし、忠告してやったの!」

「中坊?中学生なの?」

真琴の眉間にシワがよる。

「うん。ガキっぽかったもん。」

「見た目だけじゃん。」

亮がタバコに火をつけながら笑う。

「あっそういや名前‥一人アキラとかいってた
「はっっ?!アキラッ?そう言ってたの?」

真琴が昇の肩を掴む。
.

⏰:10/01/16 20:53 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


#500 [のの子]
 
「はっ?‥たぶん言ってた。」

昇は目を点にしながら真琴を見つめる。

「嘘でしょ?‥そんな訳ない‥でも‥」

真琴はブツブツと呟く。

「知り合いなの?」

亮がタバコを手に息を吐く。

「だったらその知り合いヤバいんじゃね?捕まったらこいつら手加減しないかもだし。」

真琴はさらに眉間にシワをよせる。

「チッ‥今日ヒール履いてきたのに‥」

そう一言呟くと真琴は走り出す。
.

⏰:10/01/16 21:02 📱:SH06A3 🆔:ktEYqGcE


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