ピンクな気分。U
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#701 [のの子]
 
「えっちょっとどうしたのっ?」
「何?泣いてんのっ?!」

桜姉が慌ててティッシュをとって私にかけよる。

「もう〜どうしたの?」

私はティッシュを受け取らずにまた涙を流す。

「っ‥私‥私ねっ大切な友達がいるのっ。」

二人は困った顔をしながら私の話に耳を傾けるように黙り込む。
.

⏰:10/05/21 11:19 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#702 [のの子]
 

彰君とバイバイしてからもずっと胸に引っ掛かっていた事がある。


お母さん、お姉ちゃん、



「‥どうしてっ?あっ彰君にっ‥まこ姉と会わせてあげなかったの?」


どうして?


.

⏰:10/05/21 11:22 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#703 [のの子]
 
「あきら‥?」

桜姉は誰かわからないのか小さく呟く。

「グスッ眞鍋彰‥私と同い年だけどまこ姉の彼氏だったの‥」

「彼氏‥っもしかしてあの子?」

桜姉は私からお母さんの方へ目を向ける。

「‥二人とも知ってるの?」

私の問い掛けに二人は黙り込む。

「ねぇ、答えてよ‥」
.

⏰:10/05/21 22:19 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#704 [のの子]
 
私が二人を見つめると、お母さんは静かにテレビを消した。


「‥たぶん知ってる。あの日病院にいた子だと思うから。」

お母さんは悲しげな瞳でじっと真っ黒になったテレビ画面を見つめていた。

「なんでっ‥なんでまこ姉と会わせて
「その子のせいで死んだからだよっ‥!」

桜姉が大きな声をだす。

「その子のせいで真琴は死んだのにっ‥なんで会わせなきゃいけないのよっ!」

桜姉は変わらず大きな声で、でも悲しげな瞳で唇を噛む。

⏰:10/05/21 22:26 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#705 [のの子]
 
私は大きな声に驚いたけど、それよりも桜姉の言った言葉にショックを受ける。

「彰君の‥彰君のせいで死んだんじゃないっ!なんでそんなひどい事言うのっ?」

「っ‥!聡美は何も知らないからっ
「知ってる!知ってるよ、全部っ!」

私も涙を流しながら大きな声をだす。

「知ってるならなんでかばうのよっ?真琴はね、その子に呼ばれて‥それでっ‥」

桜姉の目からも涙がこぼれた。

⏰:10/05/21 22:33 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#706 [のの子]
 
「桜も聡美も、そこに座って。」

お母さんは複雑な顔で向かいにあるイスを指差す。

私達は黙ったままそこに座った。

「はぁ‥聡美、その子とはいつ知り合ったの?」

「グスッ高校が一緒なの‥よく一緒にいる子で‥」

「そうだったの‥」

グスッ

静かなリビングに私と桜姉の鼻をすする音だけ響く。

⏰:10/05/21 22:41 📱:SH06A3 🆔:pqjogZqU


#707 [のの子]
 
「っ‥彰君、ずっと引きずってる‥まこ姉を殺したって‥」

「あの子がそう言ったの?」

私は頷く。

「二年前からずっと‥ずっと自分を責めてたのっ!責めて責めて‥自分が生きてる事さえ責めてたっ!そんなのせっかく生きてるのにダメだよっ‥そうでしょっ?」

私は桜姉とお母さんを見つめる。

⏰:10/05/22 01:38 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#708 [のの子]
ねぇ、わかるでしょ?

命の尊さや、生きる喜びも‥まこ姉から1番教わったじゃない。

「でもっ‥私は許せない‥だってそれでもあの子は生きてるじゃないっ‥!」

桜姉が顔を手で覆う。

「私から大事な妹を奪ったのにっ‥ッ‥」

「違うっ!確かに彰君はまこ姉を呼んだよ?でもっ‥道路に出たのはまこ姉の意思じゃない!」
.

⏰:10/05/22 17:15 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#709 [のの子]
 
「っ!じゃなにっ?真琴が死んだのは自業自得ってわけ?」

キッと私を睨む桜姉は

「真琴は私の大事な、大切な妹だったのよっ?」

言ってはいけない言葉を言ってしまった

「あんな子のせいでっ‥だからっだからあの子が死ねば良かったのよっ!」

バシンッ!!
.

⏰:10/05/22 17:19 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#710 [のの子]
 


一瞬何が起きたのか自分でもわからなかった。

ほっぺを抑える桜姉も、黙っていたお母さんも驚いた顔で私を見つめていた。


「ごっ‥ごめんなさい。」

私は慌てて桜姉に謝ると、ジンジンと痛む右手を握る。

桜姉は何も言わずに下に俯いた。

「お姉ちゃん‥さっきの言葉、彰君にも言ったの?」

私は右手を握りしめながらも、真っ直ぐ桜姉を見つめる。

⏰:10/05/22 20:49 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#711 [のの子]
 

「‥あの子ね、真琴が死ぬ前に病院で私達に謝りに来たの。」

桜姉じゃなくてお母さんの口が開いた。

「『すみません』って‥『彼女を守れなくてすみませんでした』って言ってた。」

その時の私は病室で一人まこ姉についていたらしい。
「でもね、その前に警察からも話を聞いてて‥その子の話を聞いてもなんとも思わなかった。むしろ【真琴が車にひかれる原因を作った子】としか思えなかったのよ。」

お母さんはその時を思い出してるのか苦痛の表情を見せる。

⏰:10/05/22 20:58 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#712 [のの子]
 
「だから止めれなかったの‥桜を止めれなかったお母さんも悪いのよ。」


二人は俯いて私とは目を合わそうとしない。


それが答えだった‥


「言ったんだ‥彰君に『死ねば良かった』って‥」


私もゆっくりと二人から目を離した。

⏰:10/05/22 21:03 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#713 [のの子]
 
そんな事一言も言ってなかったのに‥

なんで言ってくれないの?


「お母さんは悪くないよ‥あの時は本当にそう思ったんだもん!それに今だってそう思うっ‥聡美、アンタその子の事好きだとか言わないよね?私そんなの絶対許さないからねっ?!」

桜姉が私の手首を掴むとグッと力が入って痛みが手首から流れる。

「桜っアンタもやめなさ
「お姉ちゃんて教師になるんでしょ?」
.

⏰:10/05/22 21:08 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#714 [のの子]
 
私は涙を流しながら桜姉を睨む。

後から思えば、私がこんなに反抗したのは人生で初めてだった。

「子供達に夢とか人生とか色々教えるんでしょ?」

「なっなに、急に
「そんなお姉ちゃんがっ‥あんな事‥言わないでよっ!」

ピクッと私の手を握ってる桜姉の手が緩む。

「お姉ちゃんがまこ姉も私も‥大事にしてくれてたのわかってる。」

でもね、
.

⏰:10/05/22 21:17 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#715 [のの子]
 
「でもっ彰君は‥お姉ちゃんがヒドイ事言ったあの子はっ『まこ姉が愛した子』で、私とは同い年なんだよ?」

「‥っ‥でもっ!」

「桜、聡美の話ちゃんと聞きな?」

お母さんは手で目を隠しながらも、震える唇を噛んでいた。

「お姉ちゃん、あの時の彰君は私と同じ‥まだ15歳の中学生だったんだよ?」


ゆっくりと私の手首から桜姉の手が離れていった。

⏰:10/05/22 21:24 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#716 [のの子]
 
たった15歳の子が

目の前で愛する人が車にひかれて、

血だらけになった彼女を抱きしめながら

自分を責めて‥

そして訳もわからず、あっという間に

彼女は逝ってしまう..

.

⏰:10/05/22 21:30 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#717 [のの子]
 
それでも私達家族の前に現れた彼を

私達は責め立て罪を背負わせる‥


愛する彼女もいなければ

自分が生きている罪を

背負い込む彼は


まだ15歳‥


私達は15歳の心にはあまりにも大きくて、深すぎる傷を残してしまった。

⏰:10/05/22 21:36 📱:SH06A3 🆔:ycx/NTqo


#718 [のの子]
  

「‥‥っ‥もういいっ聞きたくない‥」

「お姉ちゃんっ!」

桜姉は立ち上がるとそのまま自分の部屋に行ってしまった。

お姉ちゃん‥

「‥桜は聡美の言いたい事わかってると思うよ。でも今さらどうすればいいのかわかんないんだよ‥」

お母さんは指で涙を拭う。

「お母さんもね、‥ずっと気になってたの。」

「‥彰君のこと?」

「そう、アキラ君の事。あの時は名前とかそんなの聞ける状態じゃなかったし‥」

立ち上がるとお母さんは窓を開ける。

クーラーで冷えきったリビングに入ってくる生温い風は気持ち良かった。
.

⏰:10/05/26 15:11 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#719 [のの子]
 
「真琴がいなくなって少したってからかな‥急にあの時のあの子の顔を思い出したの。私達は家族で支え合っていたけど、あの子を支えてくれる人はいるのかって‥あんな事言って傷つけた分、いてほしいって思ったわ。」

お母さんはまた私の目の前に座る。

「でも、いなかったみたいね‥」

うん、そう‥

彰君は一人抱え込んで

今まで生きてきた。

でも

「でも‥彰君には支えようとしてる友達がたくさんいるよ。」

⏰:10/05/26 15:26 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#720 [のの子]
 
「すごい仲良いんだよっ。みんな彰君の事情知ってるし‥」

旬君に博也君、フクも

それに、竜二君も。

「そう‥聡美もその一人なんだね。」

お母さんが優しく笑うから私も笑って頷く。


――――――――

コンコン

明日のバーベキューの用意をしている私の部屋にドアのノックの音が響く。
.

⏰:10/05/26 15:34 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#721 [のの子]
 
「‥?どうぞー?」

開かないドアをじっと見つめる。

「私だけど‥そのまま聞いて。」

その声はいつもよりも覇気がない桜姉の声だった

「お姉ちゃん‥」

あれから部屋から出てこなかったお姉ちゃんは夜ご飯の時も下りて来なかった。

「明日の泊り‥あの子もいるんでしょ?」

「‥うん。ダメって言っても私行くよ?」

「わかってる。」
.

⏰:10/05/26 15:39 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#722 [のの子]
 
さっきとは違って二人とも冷静で、それが逆に空気を重くする。

「‥明日あの子に迎え来てもらいな。」

「えっ?」

突然の事に私はドアの向こうにいる見えない桜姉を見つめる。

「迎えって‥家に?」

「そう‥いい?絶対来てもって。絶対だからねっ。」

パタパタパタ‥‥バタンッ

桜姉の足音とドアの閉まる音で桜姉が部屋に戻って閉まった事がすぐわかった。.

⏰:10/05/26 15:45 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#723 [のの子]
 
そんな事急に言われても‥

呆然とする私は色々考えたけど、結局彰君に連絡してみた。

彰君が断ってきたら、無理強いはしない。

そう思っていたけど、彰君は簡単に『いいよ』って言ってくれた。


「うぅ〜なんか緊張して眠れなそう‥」


案の定明日の事を考えていたらなかなか眠れなかった。

⏰:10/05/26 15:51 📱:SH06A3 🆔:6p3qIDyY


#724 [のの子]
 
―――――次の日

今日も朝から晴れて、いつものように日差しが暑い。


「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥」

「‥今日は朝から静かだこと。」

黙々とご飯を食べる私達にお母さんは呆れたように言う。

チラッと桜姉を見るとムスッとしてお母さんを見つめていた。

「‥はぁっわかったよ‥聡美、醤油とって。」

「えっあぁはいっ。」

「どーも。‥昨日は感情的になりすぎたと思ってる、ごめんね?お母さんも‥」

桜姉は箸を止める。
.

⏰:10/05/27 10:14 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#725 [のの子]
 
「今日‥あの子来るって?」

「あっうん、来てくれるって。」

そっか、と言って桜姉は複雑そうに笑った。

「あの子ってアキラ君?」
「私が呼んでもらったの。あの子とちょっと話したくて‥」

驚くお母さんに桜姉はそう言いながらまた箸を動かす。

何を話すの?

そう聞きたかったけど、そのあと桜姉はまた黙り込んでしまって何も聞けなかった。

⏰:10/05/27 10:20 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#726 [のの子]
 

―――09:12


♪〜♪〜♪〜

リビングに私の携帯の着信音が響く。

「はいっもしもし。」

「おはよ‥」

眠そうな彰君の声。

クスッ‥朝苦手なんだな。

「おはよう。今どこら辺?」

「昨日の公園過ぎたとこ。ってか道あんま覚えてないんだけど‥真っ直ぐだっけ?」

あっそっか。

「うん、真っ直ぐ行ったら十字路があるからそこ左に曲がって真っ直ぐで大丈夫っ!」
.

⏰:10/05/27 10:27 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#727 [のの子]
 
「ん‥わかった。じゃまた着いたら連絡するわ。」

「あっうん‥あの、急に頼んじゃってごめんね?」

「あぁ、別にいいよ。逆にお前のおかげで寝坊しないですんだし?」

「ぷっなにそれ〜。」

「はいはい、じゃーな。」

電話を切った後も私は笑いながら携帯を握りしめる。

そんな私の姿をお母さんと桜姉はただ優しく見つめていた。

⏰:10/05/27 10:41 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#728 [のの子]
彰Side

「あっ‥思い出した。」

欠伸をしながら聡美ん家に向かう。

聡美に道を聞いてから段々と聡美ん家への道を思い出してきた。

っつかもうこのまま真っ直ぐか‥

今日はバーベキューに最適な快晴。

「あっち‥まだ9時過ぎたばっかじゃんかよ。」

今日は気温がかなり高くなるらしい。

‥‥あいつ日傘しないとぶっ倒れそー。
.

⏰:10/05/27 10:47 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#729 [のの子]
 
聡美の顔を思い浮かべてため息をつく。

忘れてるようだったら一応言ってみるか。



そんな事を考えてるうちに聡美ん家が見えてきて、携帯をポケットから取り出す。

「あいつもう用意できてるよな?」

女ってなんか用意遅いんだよなぁ‥

そんな事を思って携帯を睨んでると、聡美ん家の前に人影を感じた。

っ?

自然と足を止める‥

なるべくなら、家族には顔を合わせたくなかった。
.

⏰:10/05/27 10:52 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#730 [のの子]
 
聡美‥じゃない?

するとその人影は俺に気づいて俺の方をじっと見つめてきた。

‥やべっ‥

「あっねぇ、もしかして‥君が‥」

その声と姿を見て俺は固まる。

「あっ‥あの‥俺‥すみませんっ!」

俺はとっさに頭を下げる。

まるであの日のように‥
.

⏰:10/05/27 10:57 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#731 [のの子]
 
ドクッ  ドクッ

そこにいたのは

聡美のもう一人の姉、

真琴の姉ちゃんだった。


「やっぱり‥君なんだ。」

ドクッ ドクッ

暑さの汗じゃなく、冷汗が俺の背中を落ちていくのがわかった。

あの時の事を思い出して、恐くて顔を上げられない。

「顔上げて?近所の人に見られても困るし‥」

「っ!すっすみません‥」

俺は慌てて顔を上げるも、目線はジッと下を向いたままだった。

⏰:10/05/27 11:02 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#732 [のの子]
 
ドクッ ドクッ

「えっとアキラ君‥聡美と友達なんだってね。」

「‥学校が一緒になって‥でも本当なんも知らないで俺達知り合って‥仲良くなって‥」

ドクッ ドクッ

「うん、聡美からも聞いた‥ははっなんかすごい運命感じちゃうよね。」

「‥すみません‥」

俺は謝ることしかできずただ俯く。

「昨日ね、聡美とアキラ君の事で喧嘩したの。」

っ!

「おっ俺の事で?」

初めて顔をあげてお姉さんを見た。

お姉さんは悲しそうに笑っていた。
.

⏰:10/05/27 11:08 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#733 [のの子]
 
「あんなに怒って泣いて、反抗してきた聡美初めて。結構ビックリしちゃった。」

苦笑いするお姉さんにつられて俺もははっと苦笑いする。


「アキラ君‥あの時言った言葉だけど‥」

ドクンッ!

「ハッキリ言うね。」

ドクッ  ドクッ

「忘れて?」
.

⏰:10/05/27 11:11 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#734 [のの子]
 
えっ?

「あなたを傷つけた分、簡単に忘れられるものじゃないってこともわかるけど‥」

そう言ってお姉さんはじっと俺の目を見つめてきた。

「あっそれは‥?」

「あの時、私は君の事が許せなかった。すごい憎んで、あんな‥『死ねばよかった』なんて言葉が出てきたの。」

俺はキュッと唇を噛む。

あの時‥

謝罪に行った俺を泣きながら睨みつけるお姉さんと

その後ろで俺に見向きもせず泣き崩れる母親の光景が

今も頭に焼き付いている。

⏰:10/05/27 22:40 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#735 [のの子]
 
「でも、あれは‥私の本心だった。それほど真琴が大切だったから‥」

あの時看護婦に止められながらも俺に掴みかかろうとして、暴言を吐くお姉さんを思い浮かべる。

「けど‥聡美にも言われたんだけどね、今冷静に考えれば君のせいじゃないとも思えるの。」

俯く俺にお姉さんは一歩近づく。

「だから‥訂正する。君は、君の人生を生きて?」
.

⏰:10/05/27 22:55 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#736 [のの子]
 
「‥死んだりしたら許さない。もちろん人生を楽しまないのもねっ。」

バンッ

「ゔっ‥ぃって。」

お姉さんは勢いよく俺の肩を掴むとクスクス笑う。

その笑顔は、聡美と同じように俺の心をどこかほぐしてくれた。


「ありがとうございます‥」


「‥聡美の事、これからもよろしくね。」
.

⏰:10/05/27 23:00 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#737 [のの子]
 
ガチャッ!

「あっ彰君っ‥って私の荷物!」

勢いよく玄関から出てきた聡美は俺に気づいたのもつかの間、黒い荷物に飛びつく。

「なんでここに?あっお姉ちゃんでしょっ?!」

「忘れないように出しといてあげたの。」

「もう〜すごい探してたんだからねぇ。お母さぁん、荷物あったー!」

お姉さんは聡美の頭をクシャッと撫でると、そのまま家の中に入って行った。
.

⏰:10/05/27 23:05 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#738 [のの子]
 
「もう〜っ‥あっ彰君ごめんね?結構待った?」

荷物を持った聡美が慌てて俺にかけよる。

「えっいや、大丈夫。」

そっか、と笑う聡美に俺も笑う。

「あっアキラ君?」

声のした方に向くと玄関から聡美の母親が立っていた。

「っ‥こんにちは。」

俺は頭を軽くさげる。
.

⏰:10/05/27 23:09 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#739 [のの子]
 
そんな俺を見て複雑そうに笑うと、

「また今度家に来てくれない?‥真琴に線香でもあげてほしいから。」

ドクッ

聡美まで眉を下げて心配そうに俺を見上げる。

「‥はい、ありがとうございます。」

俺は笑うとさっきよりも深く頭を下げた。


良かった‥
お姉さんもおばさんも、もう笑えるんだ。

そう思ったら一瞬目頭が暑くなった。
.

⏰:10/05/27 23:14 📱:SH06A3 🆔:idrM8/qs


#740 [のの子]
 
「彰君‥
「あっれー、早く行かないと二人とも遅刻じゃないの〜?」

お姉さんが笑いながら玄関からヒョコッと顔を出す。

っ!

二人して携帯を見ると

09:47‥

「うわっ彰君ヤバいよ!遅刻しちゃう!」

「わかってるよ!忘れ物ないよな?」

聡美が頷くのを見て俺はまた二人に頭を下げた。

⏰:10/05/28 10:57 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#741 [のの子]
 
「じゃ行ってくるね!」

聡美は笑って手を振る。

「二人ともいってらっしゃい。」
「気をつけてねっ。」

俺は見送ってくれた二人の笑顔をしっかり見つめて、胸に刻む。

たぶん、俺が目指すのはこういうモノなのかもしれない。


悲しい過去があっても

それをもう傷にはしない。
.

⏰:10/05/28 11:09 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#742 [のの子]
 
いつもありがとうございますこれで【彰の過去】については終了です

これからまた竜二も出てくるので今後もよろしくお願いします

>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500
>>500-600
>>600-700
>>700-800
.

⏰:10/05/28 11:21 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#743 [のの子]
竜二Side

ザワザワザワ

「彰と聡美ちゃん遅いね〜。」

「暑いしどっか入ろぉ?」

夏休み、人が多い駅前で俺達はそれぞれ荷物を抱えて二人を待っていた。

「もう着くらしいから我慢しな?」

桃ちゃんの頭をポンポンと撫でるフクを横に俺は座り込んで人混みを見つめる。

.

⏰:10/05/28 21:38 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#744 [のの子]
 
『聡美に全部話す』

そう言ってた彰から昨日何も連絡はなかった。

もちろん俺からわざわざ連絡するような事もしなかった。

でも、気になってずっと考えてた‥

「どうなったんだろ?‥」

ボソッと呟く。

「何が?」
.

⏰:10/05/28 22:19 📱:SH06A3 🆔:DVKeltdU


#745 [のの子]
 
‥‥‥はぁっ

「別に。」

「うわっ冷たーい。」

そう言って鈴はクスクスと笑う。

夏休み前、長かった髪をバッサリ切ったのに、さらにショートになっている。

「お前また髪切ったの?」

「あぁうん、暑いし邪魔だったから切っちゃった。切った時はみんなビックリしてて面白かった〜♪」

あははっと笑う鈴の頭をフクが掴む。

「こいつ急に合気道習いだしたんだよっ。だから邪魔だって切ったんだって。」.

⏰:10/05/29 12:19 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#746 [のの子]
 
「合気道?キャラじゃない事するね。」

鈴は頬を赤くして口をとんがらす。

「キャラとか関係ないもん。私は私なりに強くなろうとしてるのっ。それに運動神経は良い方だし?」

「でも怪我でもしたら‥」

そう言って心配するフクだけど、変わろうとしている鈴を見つめる瞳はどこか優しかった。

「でもぉショートになっておサルさんみたいで可愛いんじゃない?」

.

⏰:10/05/29 20:04 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#747 [のの子]
 
桃ちゃんがニコニコ笑いながら鈴の目の前に座る。

「っ‥ありがとうございます‥」

桃ちゃんを目の前に、鈴は顔を引き攣らせ笑う。

『フクの妹だからって場合によっては容赦しないからね。』

フクの妹と知った後に顔を合わせた時、桃ちゃんは笑ってそう言ったらしい。

意外にも桃ちゃんは聡美に喧嘩を売ってきた時の事をかなり根に持っていた。

それからあの自己チューだった鈴の性格も少し落ち着いたとかどうとか..
.

⏰:10/05/29 20:14 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#748 [のの子]
 
「あっ来た来たっ!」

っ!

旬の声に反応して人混みに目線を戻す。

サラリーマンもいれば、携帯をイジりながら歩くギャルに家族で仲良く手を繋いで歩く姿が目に映る。


でも、その中に見覚えのある二人の姿が現れる。


「悪いっ遅れたっ!」
「ごめんねぇっ!」


.

⏰:10/05/29 20:20 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#749 [のの子]
 
息を切らす二人。

「おっそーいっ!二人してやる気あんの〜?」

旬がムッとすると聡美が苦笑いしておでごの汗をふく。

「ハァッごめんね?電車乗り遅れちゃって‥」

「あっちぃ‥ってかたった15分ぐらいじゃんかよ。」

彰もTシャツを掴んでパタパタと動かす。

「うわっ悪気ない奴一名いるんですけどーっ!罰としてジュースおごれぇ!」

「俺が飲みてぇよっ!」
.

⏰:10/05/29 20:27 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#750 [のの子]
 
「聡美っおはよぉ♪」
「あっ桃も鈴ちゃんもおはよー♪ハァッ本当遅くなってごめんねぇ?」

桃が聡美に近寄ると鈴も自然とそれについていく。

「寝坊でもしたんですか?」

鈴が呆れた表情で聡美を見つめる。

「そういう訳じゃないんだけど〜‥むしろ睡眠不足?」

「なにやってたんですか‥」

えへへっと笑う聡美に鈴も笑う。
.

⏰:10/05/29 20:31 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#751 [のの子]
 
「あっフクと竜二君もおはよ。待たせちゃってごめんね?」

っ‥

聡美は前と変わらない表情で俺に笑顔を向ける。

「大丈夫だよ。」
「うん、文句言ってんの旬だけだから。」

騒いでいる旬と彰を見て聡美はまた笑った。

「ってか行こっか。博也とはまたこの後合流するし。」

博也は地元駅がバーベキューへ行く通り道だから途中から合流する事になっている。

⏰:10/05/29 20:38 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#752 [のの子]
 
「そうだよ〜、今度は私達が遅刻しちゃうよぉ?ほらっ行きますよ〜♪」

フクと桃ちゃんが荷物を持って改札へ向かって歩きだすと、それにつられてみんな歩きだそうとする。

「よしっじゃしゅっぱーつ!♪」

旬が周りを気にせずなかなかの大きな声を出す。

「‥小学生か。」
「ぷっ‥」

ボソッと呟くと笑い声が聞こえて振り向く。

「あっごめんね、聞こえちゃった‥」

そう言って笑った聡美は俺を見つめる。

「久しぶりだね。」

「‥うん、補習の日に会ったのが最後だっけ?」

「そうそう。」
.

⏰:10/05/29 20:49 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#753 [のの子]
 
明るく笑う聡美を蒸し暑さも忘れるぐらい見つめてしまう。


‥会いたかった。

声が聞きたかった。

その笑顔をずっと見たかったよ。


そんな言葉がこぼれ出ないよう唇を噛む。


「あっ竜二く
「聡美っ」
.

⏰:10/05/29 20:54 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#754 [のの子]
 
聡美が俺に何か話そうとした時、彰が聡美を呼んだせいで話はそこで終わってしまった。

「彰君どうかした?」

キョトンとする聡美の横に彰が立つ。

「どうかした?じゃねーし。ほらっ荷物。」

大きめのメッセンジャーバッグを背負っている彰がまた別のバッグが聡美に差し出す。

「あっごめんっ!持ってもらってたんだったぁ‥彰君ありがとね。」

苦笑いしながら荷物を受け取る聡美。

「平気。ってか行くぞ。」

彰は俺をチラッと見つめて歩きだす。
.

⏰:10/05/29 21:09 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#755 [のの子]
 
「あっ待ってよぉ!竜二君、私達も行こう?」

聡美は慌てて彰の後を追い掛けようと俺の横を通り過ぎる。


なんで‥? 

なんで俺じゃなくて

彰を見つめて

その後を追い掛けるの?


スッ‥
っ!

無意識に聡美の手を掴もうとして固まる。
.

⏰:10/05/29 21:15 📱:SH06A3 🆔:R/ocBIJk


#756 [のの子]
 

彰と聡美の後ろ姿を見て、俺は掴もうとした手を下ろす。

「‥っ‥‥‥‥」

下ろした手にグッと力が入る。

なにやってんだ俺‥聡美を止めてどうすんだよ。

「竜二君、大丈夫?」

ハッとして振り返ると鈴が気まずそうな顔をして立っていた。

「まだいたのか‥」

俺は苦笑いしながら痒くもない首をかく。
.

⏰:10/05/30 20:47 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#757 [のの子]
 
「この前までは幸せそうにしてたのに‥今は辛い立場に立っちゃったんだね。」

「辛い?何が?」

みんなを追い掛けるよう鈴と二人で歩きだす。

「元カノさん、彰君にとられちゃいそうだよ?」

「俺はもう別れたんだし二人が付き合おうと関係ないよ。ってかお前こそいいの?」

二人して真っ直ぐ前を見て聡美と彰を見つめる。
.

⏰:10/05/30 20:53 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#758 [のの子]
 
「私と彰君は友達だから。‥でも私ね、彰君の幸せを1番に望んでる。彰君が幸せになれるなら――」

鈴は俺を横目で見つめて笑う。

「竜二君の今の気持ちが変わらないよう協力してあげるよ?」

俺は眉間にシワを寄せて鈴を睨む。

俺の気が変わってあの二人の邪魔をしないようにするって事か..

「‥大きなお世話だよ。」

変わらない。

二人の幸せを願う気持ちは

鈴よりも遥かに大きい。
.

⏰:10/05/30 21:02 📱:SH06A3 🆔:SB0tBs8Y


#759 [のの子]
聡美Side

「もしもし――」
「あははっなにそれ〜」
「お母さん〜――」




「あっすみません!」

ザワザワと人が多い駅で、さっきから何人かの人と肩がぶつかる。

うぅ、人多すぎ〜‥

「おい、大丈夫かよ。」

彰君が私の荷物をとる。

「えっいいよ、大丈夫だから!」

「お前の為じゃない‥お前とぶつかる人が可哀相だから。」

⏰:10/06/02 14:49 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#760 [のの子]
 
ふんっと鼻で笑うと彰君はスタスタ歩きだす。

「失礼な!もうっ‥」

私もその後を追い掛ける。

前を桃達が歩いて、私達はそれを追うように後ろを歩く。

竜二君とは‥さっき話しただけ。

「彰君‥」

「ん?」

無意識に指が唇に触れる。

「さっき竜二君と話してた時、私普通にできてた?」
.

⏰:10/06/02 15:08 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#761 [のの子]
 
竜二君が視界に入った時、また泣いちゃうんじゃないかって不安が生まれた。

でも、竜二君は普通にしてるし私もそうしなきゃって‥

でも話した時、唇が震えて話せなくなるんじゃないかって思った。

会えたのが嬉しくて

話せたのが嬉しくて‥

でもその倍ぐらい

寂しくて、悲しかった‥

.

⏰:10/06/02 15:12 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#762 [のの子]
 
今も思い出すと唇が震えそう。

‥ポンポン

っ!

「できてた、できてた。」

彰君が私の頭をクシャクシャ撫でる。

ドキッ

「‥‥ありがと。」

私はなんでか安心して笑う。

⏰:10/06/02 16:27 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#763 [のの子]
 
―――――――

「先輩、隣いいですか?」

ニコッと笑った鈴ちゃんが私の隣を指差す。

「うん、どうぞ。」
「聡美の隣は私、鈴ちゃんはそっちね。」

私の隣にさっと桃が座ると、前の席を指差す。

「‥‥どーも。」

鈴ちゃんがムスッとしながら私達の前に座った。
.

⏰:10/06/02 16:41 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#764 [のの子]
 
「俺もこっちがいいー♪」

途中から合流した博也君が鈴ちゃんの隣に座る。

「ダメーッ♪ここは女の子だけなのぉ。」

桃が笑いながら手を振ると、ちぇっと言いながら博也君は席に戻って行く。


電車を乗り継いで二時間、向かい合う席の田舎らしい電車に乗った私達。

もう少しで到着駅に着こうとしていた。
.

⏰:10/06/02 16:57 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#765 [のの子]
 
「先輩夏休み前に竜二君と別れたらしいですね〜。」

ギクッ

鈴ちゃんが目を細めて私を見つめる。

「実は色々ありまして‥」

「その割に彰君とは夏休み前より仲良くなってるよねぇ♪」

今度は桃が私の肩に寄り掛かりながら笑う。

「え〜っとねぇ‥彰君とも色々ありまして‥」
.

⏰:10/06/02 17:02 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#766 [のの子]
 
私は二人を見つめて顔を引き攣らせながら笑う。

こっ恐い‥

「色々って?」
「私何も聞いてな〜い。」

ゔっ‥

二人から感じる黒いオーラを肌に感じて、汗が流れる。

「えっと‥何から話せば
「「最初からっ!」」


なっなんかこの二人気が合ってない?
.

⏰:10/06/02 17:06 📱:SH06A3 🆔:rGrL0wZs


#767 [のの子]
―――――

ガタン ガタンガタン

「――‥で、彰君とは仲良くなったっていうかなんというか‥」

「信じらんない‥そんな繋がりがあったなんて。」

桃は目をパチパチさせて私を見つめる。

「ごめんね、話さなくて‥彰君も関わってるからあんま話さない方がいいと思って‥」

私は二人に謝ると、

「ん、まぁしょうがないよ〜。」

桃は笑って私の肩を優しく叩く。

「‥‥先輩があの人の妹っ‥」
.

⏰:10/06/03 11:01 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#768 [のの子]
 
鈴ちゃんは驚きをかくせないのか、口に手を当てる。

「鈴ちゃん、まこ姉の事知ってたの?」

私が首をかしげると、鈴ちゃんはハッとして私を見つめた。

「あっ‥えっと会った事はないんですけど‥彰君のあの噂から知ってて‥」

気まずそうに話す鈴ちゃんは手を握って力をいれる。

「あの人の妹だなんて‥ははっ確かに敵う訳ないや。」



.

⏰:10/06/03 11:10 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#769 [のの子]
 
「まぁ逆に諦めつくっていうか‥」

鈴ちゃんは苦笑いしながら外を見つめる。

窓から見える景色はもう緑の木々とたんぼがチラッと見えるぐらい。

「‥私も言うの忘れてましたけど、彰君の事もう好きとかじゃなく友達なんで。」

「えっ!?」

「私の中でもうハッキリ友達って決めたんです。ですから先輩はご自由にして下さい。」

ご自由にって何が?

「えっいやいやでも
「はいはいっ鈴ちゃんがそう言ってんだからいいのっ♪ね?」

⏰:10/06/03 11:16 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#770 [のの子]
 
桃が私の肩を掴む。

「えぇ〜‥まぁうん、わかりました。」

私が戸惑いながらも納得すると鈴ちゃんも桃も笑うから、つられて私まで笑ってしまった。

「竜二君とはぁ?どうなの?」

桃が持ってきたお菓子を食べながらポツリと呟く。

「そうですね、竜二君とは何かなかったんですか?」

何かか〜‥

「何も‥でも、まこ姉の事話そうか迷ってるんだ。」.

⏰:10/06/03 11:24 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#771 [のの子]
 
まこ姉は竜二君の家庭教師だった。

彰君から話を聞いた限り、仲も悪くなかったみたい。

‥‥竜二君の心にも、傷としてまこ姉が残っているんじゃないのかな?

それに

「もしかしたら竜二君‥最初から私がまこ姉の妹だって気付いてたんじゃないかな?」

私は小さな声で呟く。
.

⏰:10/06/03 22:11 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#772 [のの子]
 
「えっなんでぇ?」

そう言いながら桃は私にグミをくれた。私も素直に受け取るとグミを口にいれる。

「ん〜‥なんかそう思ったの。」

グレープ味のグミが口の中でちょっとずつ溶けていく。


「その可能性はありますね。」

鈴ちゃんがチョコボールを手にだしながらサラッと言ってきた。
.

⏰:10/06/03 22:17 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#773 [のの子]
 
「えっだからなんでぇ?」

桃は首をかしげる。

「‥竜二君ね、私にこの事知られたくなかったみたいだった。」

だから私は彼が知られたくないって思うなら私は知らないままで良いって思った。

でも知ってしまった‥

全部を。

.

⏰:10/06/03 22:23 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#774 [のの子]
 
「知られたくなかったのは、彰君がまた傷ついて+私まで傷つくと思ったから、とか。」

私が曖昧な推理を話すと、案外二人は納得してるのか何も言わずに頷く。

「それも有り得ますね。それか更になにか知られたくない事があるか‥ってでも本当は何も知らずに出会ったのかも知れないですけどね。」

私はただニコッと笑う。

‥更に知られたくない事があるならそれって何だろ?
.

⏰:10/06/03 22:32 📱:SH06A3 🆔:q1wr3wj.


#775 [のの子]
 
「でもさぁ、もし竜二君が知ってたとしたらどうなるの?別に良くなぁい?」

桃が不思議そうにしてグミを口に入れた。

「でも、竜二君私のせいで苦しんでたかも‥」

「それはないでしょ〜?だって二人付き合ってたじゃん。」

「‥でも桃さん、この人フラれてるんですよ?」

鈴ちゃんが呆れたように桃を見つめる。
.

⏰:10/06/04 00:56 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#776 [のの子]
 
「でも付き合ってた、それが大事だと思うけどなぁ〜。」

私達は桃の言いたい事がわからずキョトンとする。

「だぁかぁらぁ、聡美が妹だって知ってても、彰君と聡美を近づけたら傷つくかもしれないってわかっていたとしてもぉっ!竜二君は聡美と付き合ったんでしょう?」

私はゆっくり頷く。

「それって、それほど聡美の事が好きだったんじゃない?」


ドキッ
.

⏰:10/06/04 10:49 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#777 [のの子]
 
「私はそう思いたいなぁ♪」

桃は首をかしげながら私を見つめて笑う。

なるほど、っと鈴ちゃんも笑いながら頷く。

ドキ ドキ ドキッ

これはあくまで桃の考えで、本当かどうかはわからない。

なのに私の心臓はうるさいくらい跳びはねる。

「‥だったらいいなぁ。そしたら嬉しくてまた泣いちゃうよ‥」
.

⏰:10/06/04 10:55 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#778 [のの子]
彰Side

ガタンガタン ガタン

「っつーかなんで男女別で座るかねぇ。しかもなんでこんな席遠いの?」

「女子は女子で話したい事とかあるんじゃない?桃に近づくなって言われたし‥」

博也の愚痴に複雑そうに笑うフク。

「まぁまぁ男は男でなんか話そうぜぇ♪なにげ俺達も会うの久しぶりなんだしー。」

旬がニコニコ笑いながら持ってきた水を飲む。

話かぁ‥得にない‥

いや、でも話すとしたらあの事について今話しといた方がいいのか?

「ってかじゃ〜僕はまず彰君の話を聞きたいなぁ♪」

っ!

博也が笑って俺を見てきた。

⏰:10/06/04 11:10 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#779 [のの子]
 
「は?なんで俺なんだし。」

博也とは対照的に俺は不満げな顔をする。

「だって俺達と会ってない間に何か会ったでしょ〜‥聡美ちゃんと。」

ギクッ
「ブゥーーーーッ!!!!!」


‥‥‥‥‥


「ゴホッゴホッ‥うわぁ、ごめん彰‥」
.

⏰:10/06/04 21:57 📱:SH06A3 🆔:cxRl/CEw


#780 [のの子]
 
何故か旬の口から吹き出した水が思いっ切り顔にかかった俺‥

「‥テンメェーッふざけんなっ!なんで急に口から水が出んだよっ!」

「ごめんてぇ〜。水が変なとこ入っちゃって‥」

胸倉を掴むと、旬は苦笑いしながら俺の顔を拭く。

「っ旬〜‥
「どうしたのぉ?」

っ‥!

「うわっ彰君なんで濡れてんの?」

「あっ桃ちゃん達こそどうしたの〜?♪」

聡美達三人が俺達の席に集まってきた。
.

⏰:10/06/05 11:07 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#781 [のの子]
 
「もうすぐ降りる駅かなって話してて‥彰君大丈夫?」

聡美がはい、っとハンドタオルを渡してきた。

こいついつもハンカチ持ってんな。

「サンキュー‥」

それを受け取って顔やら服を拭く。

「旬君、降りる駅って次でしたっけ?」

「そうそうっ♪駅にはおじさんが車で迎え来てくれてるから。」

聡美達は通路を挟んだ隣の席に座る。
.

⏰:10/06/05 11:11 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#782 [のの子]
 
「楽しみだねぇ♪」
「うんっ!」

そんな会話をする聡美達を見て、やっぱり今あの事について話さない方がいいって思った。

空気を壊すかもしれないしな‥

タオルに顔を埋めながら考えてると、博也が俺の肩を叩く。

「‥んだよ?」

「また後でゆっくり聞かせてよ。」

博也がニヤリと笑うのを見て、俺はため息をついた。

.

⏰:10/06/05 11:16 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#783 [のの子]
竜二Side

「着いたぁーっ!」

旬が大きな声をだすと、人が少ないとはいえだいたいの人が振り返って俺達を見てきた。

「山ばっか!」

「やっぱ若い子いない‥」

「ちょっと空気が冷たく感じるねぇ。」

各々感想をぼやきながら、改札を出る。

「おーいっ!旬、こっちこっち〜。」

改札を出るとすぐに大きく手を振る男の人が見えた。

「あっおじさ〜ん♪」
.

⏰:10/06/05 11:22 📱:SH06A3 🆔:I0Tk.MjA


#784 [のの子]
 
旬とは違って眼鏡をかけたかしこそうなおじさんが笑って出迎える。

「久しぶりだなぁ。また体格良くなったんじゃないか?」

「まぁね。一応毎日筋トレしてるし。」

旬がヘヘッと笑いながら鍛えた腕を見せる。

「はははっすごいなぁ。みんなも元気にしてたみたいだねぇ。」

俺達も笑って頭を下げる。

「あっおじさん、この子達が電話で話した女の子っ!桃ちゃんに聡美ちゃんと鈴ちゃんねっ!」

「こっこんにちは!よろしくお願いしますっ。」

聡美達も慌てて頭を下げる。

⏰:10/06/06 17:26 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#785 [のの子]
 
「初めまして、小竹和彦と申します。いつも旬がお世話になっています。」

和彦さんはそういって頭を下げる。

「あっいえいえこちらこそお世話になっています!え〜っとなんだかすみません‥」

聡美が慌てて更に頭を深く下げた。

ぷっ‥なんで謝ってんだか。

「いえいえ、どうぞ楽しんで行ってくださいね。」

和彦さんは優しく笑った。

⏰:10/06/06 17:32 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#786 [のの子]
 
「まっ挨拶はこの辺にしてそろそろ行こうよ〜。俺かなりお腹減ってるし!」

旬がそんな二人を前に腹をさする。

「あぁそうだな。じゃみんな車に乗ってね〜。」

和彦さんは乗ってきたワゴン車の運転席にさっさと座る。

「は〜い。」

俺達も後ろに荷物を乗せると助手席に旬、後ろに俺達が座った。
.

⏰:10/06/06 17:36 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#787 [のの子]
 
ちなみに俺の隣は‥

「あっごめんね、足踏んじゃった‥」

「大丈夫だよ。」

申し訳なさそうに小さくなる聡美に俺は優しく笑った。

大きいワゴン車でもさすがに9人は厳しい。

無理矢理乗ったせいで車が揺れる度に肌と肌が触れ合う。

その度心臓が跳びはねた。

‥チクショー博也の奴。

俺が乗った後に博也が無理矢理聡美を乗せたのだ。

『俺酔いやすいから窓側がいい♪』
.

⏰:10/06/06 17:44 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#788 [のの子]
 
そう言って戸惑いながら聡美が乗ってきたのだ。

はぁ〜っ‥ムカつく。

ちなみに席の順番は

俺 聡美 桃 フク
が一番後ろのシート

博也 鈴 彰
真ん中のシート

和彦さん 旬
運転席

ってな感じ。

「車で15分ぐらいだから。」

和彦さんは笑って言ったが、その15分は俺にとっちゃ我慢の時間。

⏰:10/06/06 17:50 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#789 [のの子]
 
聡美と隣にいて、懐かしい彼女の匂いを嗅ぐだけで決意が揺らぐ。

固い決意も、彼女にしたらどうってこともないただの

「竜二君、大丈夫?」

「えっ?」

「眉間にシワ‥寄せてる。」

聡美が自分の眉間を指差す。

「ははっ、疲れたのかな。」

⏰:10/06/06 17:55 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#790 [のの子]
 
俺は眉間をさすりながら笑う。

車の中は賑やかでみんなそれぞれに話をしていた。

旬は和彦さんと、博也は鈴や彰と、フクと桃ちゃん..

聡美は、俺を見て話す。

「車に酔ったのかと思っちゃった。」

「博也と違って俺は酔いにくいから大丈夫だよ。聡美ちゃんこそ大丈夫なの?」

「私?私は大丈夫‥なはず。でも昨日あんま寝れなかったんだぁ。」

聡美はははっと頭をかく。

⏰:10/06/06 18:00 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#791 [のの子]
 
昨日‥

「たぶん興奮しちゃって寝れなかったんだと思うんだ‥子供だよねぇ。」

俺はそれに笑うも、内心昨日の事が気になった。

「あっ‥竜二君、実は私帰してもらったピアスの片方なくしちゃったんだ。」

聡美が声を小さくする。

「ピアス‥そうなんだ‥」

聡美がなくしたと思ってるピアスは本当は俺が持ってる、なんて言えない。
.

⏰:10/06/06 18:05 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#792 [のの子]
 
「せっかく返してくれたのにごめんね?」

「平気だよ。‥今朝さ、俺に言おうとしたのってその事?」

途中彰が俺達の間に入ったせいで終わってしまった時、聡美は俺に何か言おうとしていた。

昨日の事を、【あの事】について話そうとしたんじゃないのか?


「‥うん、そうだよ。」

聡美は眉を下げて困ったように笑ってみせた。
.

⏰:10/06/06 18:09 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#793 [のの子]
 
「‥そっか。」

俺はそれ以上何も聞かなかったし、聡美も言わなかった。

「あっそういえば和彦さん、ハル元気っすか?」

「元気だよ〜♪あいつももう中三だから生意気でしょうがないよ。反抗期なのかね?」

和彦さんがミラー越しに苦笑いする。

「ハルって息子さんですか?」

「そうそう、春彦っていうの。」
.

⏰:10/06/06 18:19 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#794 [のの子]
 
鈴が質問すると和彦さんはどこからか写真持ち出して後ろに回して来る。

「へぇ〜可愛い。これからまた格好良くなりそう‥」

鈴がクスッと笑うと博也が写真を奪う。

「ハル大人っぽいんだよね〜。もっとガキらしくすりゃ良いのにさぁ。」

ヒョイッ

「お前が大人っぽくないんだよ。」

俺は写真を取ると聡美に渡す。
.

⏰:10/06/06 18:26 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#795 [のの子]
 
「わぁ和彦さんに似て‥‥あれ?」

聡美が写真を手に固まる。
「どうしたの?」

「聡美ぃ?」

桃ちゃんも写真を覗き込む。

写真には制服を着たハルとピースすり和彦さんが写っているだけ。

「ここ‥」

聡美は写真をじっと見つめる。
.

⏰:10/06/06 18:30 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#796 [のの子]
 
「‥ん?‥あぁーっ!」

桃ちゃんが聡美から写真を奪い取る。

「えっなに?どうしたの?」

みんなが驚く中、聡美は顔を青ざめていく。

「かっ和彦さんてもしかして‥お寺の‥」

「あれ、聞いてないの?お寺の住職ですよ〜。」

陽気な声ので話す和彦さん。

「もっもしかして別荘って‥」

「それは大丈夫大丈夫。お寺より離れたとこだから。」
.

⏰:10/06/06 18:34 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#797 [のの子]
 

「あっ本当だ、言われて見れば和彦さんお坊さんの格好してる。」

「バックに写ってんの本堂だし。」

「ピースしてんのがやっぱ旬の親戚って感じだよね。」

みんな笑っている中聡美ちゃんの青ざめた表情は戻らない。

「言ってなかったっけ?俺ん家お寺なんだよねぇ♪」

そう言って旬まで笑っている。

⏰:10/06/06 18:38 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#798 [のの子]
 
「きっ聞いてない‥」

「聡美ちゃん大丈夫?」

潤目になった聡美に焦る。

「なんで竜二君教えてくんなかったのー?私そういうのダメってわかってたくせにー‥」

小さな声で聡美はボンボン俺の足を叩く。

「だから前に言ったじゃん、どうなっても知らないからねって〜‥」
.

⏰:10/06/06 18:42 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#799 [のの子]
 
「それにお寺に泊まる訳じゃないんだから平気だって。」

「うぅっでも〜‥なんか出たらどうしよぉ!」

聡美が真剣な目で俺を見つめるもんだから、つい俺は笑ってしまう。

「クスッ大丈夫だって。はいはい‥」

前みたく優しく頭を撫でる。

「竜二く
「もし幽霊でても旬いるから大丈夫だよ。」
.

⏰:10/06/06 18:46 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


#800 [のの子]
 
「‥‥‥‥えっ?」

「あいつお寺の子だけあって霊感やらお祓いバッチリだから。ね?」

サーッとまた顔を青ざめた聡美を見て俺はまた笑う。

「意地悪ーっ!!」

今度は腕をボンボンと叩きはじめた聡美が可愛くて仕方がなかった。

前のように俺を見て

甘えてくる彼女が

愛しい。


‥大丈夫。
君は俺が守るから。
.

⏰:10/06/06 18:50 📱:SH06A3 🆔:85VqXOdo


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