太陽と夏の空
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#251 [ラビ]
…でも、開けなければいけない…。


震える手を握り、ノックする。


…コンコン…


そして次に冷たいドアノブに手をかけた。



…ガラガラガラ…



俺はゆっくりとドアを開けた。

⏰:06/09/05 19:29 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#252 [ラビ]
静かに病室に入る…。


達矢「…………」


俺は言葉を失った。


…何で?



深く深呼吸をして


ベッドに近付いた。

⏰:06/09/05 19:40 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#253 [ラビ]
俺は…目の前の真実を受け入れられなかった…。



ベッドの中では…








ヒロキが眠っていた。

⏰:06/09/05 19:43 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#254 [ラビ]
達矢「おい…?」


俺はゆっくり手を伸ばし、ヒロキの体に触れた。



…氷のように冷たい。


父さんのときと同じ冷たさだ。



…嘘だろ?


誰か嘘だって言えよ…。

⏰:06/09/05 19:46 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#255 [ラビ]
ヒロキ…


ホントは寝てるだけだろ…?


だって…今にも目ぇ覚ましそうな顔してんじゃん。


俺は何がなんだかわからなくなって、ヒロキの体を起こしてゆすった。

⏰:06/09/05 19:49 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#256 [ラビ]
達矢「おい!起きろ!!これから練習だぞ!!あと3日で甲子園だ!!寝てるヒマなんてねぇよ!!」


いくら揺すっても揺すっても起きない。


それに…


ヒロキの体は本当に冷たくて



人間の温かさなんてモンはなかった。

⏰:06/09/05 19:51 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#257 [ラビ]
…死んだのか…?


頭をよぎった言葉…。


そして目からは


涙がポロポロとこぼれ落ちた。

⏰:06/09/05 19:58 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#258 [ラビ]
達矢「ちくしょう!!」


俺はベッドの横にうずくまり、大声で泣いた。


達矢「何でだよ?!お前…俺を日本一のショートにしてくれるんじゃなかったのかよ?!
やっと甲子園が決まったのに…。もうちょっとすりぁ甲子園だったのに…。
お前が一番楽しみにしてたじゃねぇかよ!!
勝手にいなくなってんじゃねぇよ…。

⏰:06/09/05 20:03 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#259 []
どーなッちゃぅの

⏰:06/09/05 20:08 📱:SH902i 🆔:Rz/56dwY


#260 [ラビ]
誰がマウンドに立つんだよ…。お前の変わりなんていやしねぇのに!愛川を甲子園に行かせたのも…お前だろうがぁ…。
死んでんじゃねぇよ…ヒロキ…。」


俺は悔しくて悔しくてたまらなかった。


誰よりも甲子園を楽しみにしている奴が…

甲子園を目の前にしていなくなった。


俺には泣くことしか出来なかった。

⏰:06/09/05 20:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#261 [ラビ]
ヒロキは、毎日朝早くに起きてランニングをしているらしかった。

そして今日も朝早くにランニングに出かけた。


家を出て30分後…





道路で倒れた。

⏰:06/09/05 20:12 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#262 [ラビ]
犬の散歩をしていた人が偶然通りかかり、すぐに救急車で運ばれたが…


目を覚ますことはなかった。





“心不全”



それがヒロキの死因だった。

⏰:06/09/05 20:15 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#263 [ラビ]
ヒロキの母さんは、ランニングなんか行かせなければ良かったと自分を責めているらしい。


…ヒロキ…。



悔しいよ…。


悔しくて悔しくてたまんねぇ。



でもさ…


お前はもっと悔しいよな。


ずっと夢見てた甲子園…


お前は…

立てないで終わったんだ…。

⏰:06/09/05 20:18 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#264 [ラビ]
なんで神様は…


こんなヒドイことするんだろう…。


ヒロキ…


お前…

悔しくて死にきれねぇよな…。



達矢「…っくしょう!!ちくしょう!!」


俺は床を殴った。


悔しくて悔しくて…



バカみたいに床を殴った。

⏰:06/09/05 20:22 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#265 [ラビ]
達矢「ヒロキ…戻ってこいよ…ヒロキぃぃ…」


床を殴り続ける俺を母さんが止めた。


「達矢ぁ!止めなさい!」


母さんも涙で顔がぐしゃぐしゃだった。



俺はとりあえず病室を出ることにした。

⏰:06/09/05 22:02 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#266 [ラビ]
病室を出て、待合室の椅子に座る。


俺は下を向いてボーっといていた。


とゆうか、ボーっとすることしか出来なかった…。





『甲子園行こうぜ』


『お前を日本一のショートにしてやんなきゃな!』


『達矢がいてくれて本当に良かった』

⏰:06/09/05 22:06 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#267 [ラビ]
次々に出てきては消える、ヒロキの言葉…。


あんなに笑ってたのに…


ずっと一緒に戦ってきたのに…。


そのヒロキはもういないんだ…。




『ありがとう』



これもヒロキが残した言葉…。

⏰:06/09/05 22:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#268 [ラビ]
この言葉は…


俺もヒロキに言わなきゃならない言葉だ。


ヒロキのおかげで…


もっと野球が楽しくなった。



また涙がポロポロと流れ落ちる。

本当に…悪夢だ。

⏰:06/09/05 22:11 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#269 [ラビ]
いや、違う…。


悪夢…“夢”であるならまだマシだ…。


とゆうより、夢であって欲しい。


明日の朝、目が覚めて学校に行ったら…


ヒロキが朝練してて…

「おはよう」

っていつものように笑ってる。



…そうなればいいと何度も何度も思っていた。

⏰:06/09/05 22:15 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#270 [ラビ]
達矢「はぁ…くそっ…」


…とその時、隣に誰かが座った。

俺は驚いて横を見る。



「…おっす」


…隣には監督が座っていた。


達矢「…監督…」



監督は俺の頭をポンポンと叩いた。

⏰:06/09/05 22:25 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#271 [ラビ]
監督「あんまり泣いたら宮本が心配するぞ」


達矢「そうですけど…泣かないなんて…無理っすよ」


監督「そうだな。悪い悪い。お前はずっと宮本を見てきたんだもんな…。」


監督の言葉に、俺はまた涙を流した。

達矢「俺…悔しいです…。ヒロキが甲子園前に死ぬなんて…有り得ない…」

⏰:06/09/05 22:31 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#272 [ラビ]
泣く俺の頭をまたポンポンと叩き、監督は優しく言った。


監督「俺も本当に無念でならない…。悔しいな。神様もずいぶんヒドイことするモンだ」

監督も泣いているようだった。


静かな待合室で、鼻をすする音が響く。

⏰:06/09/05 22:35 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#273 [ラビ]
しばらくすると、監督がゆっくりと口を開いた。


監督「なぁ…お前、1番着ないか?」


達矢「…え?」


監督「ヒロキがいなくても甲子園出ないわけにはいかないだろう?大会ではお前をピッチャーで戦おうと思ってる…。どうだ?」


俺がピッチャー…。


俺が…ヒロキの変わり…?

⏰:06/09/05 22:42 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#274 [ラビ]
背番号1番はヒロキの番号だ。


俺はショートだから6番…。


監督「ショートには他の奴を入れるよ。ヒロキも変わりに1番を着てもらうとしたら、親友であるお前に着て欲しいと思うだろう」


俺は困った。

確かに…ヒロキも俺に着ろと言いそうだ…。

だが俺は…。


俺は答えを決めた。

⏰:06/09/05 22:45 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#275 [ラビ]
達矢「…着ないです。」


監督は意外な返答に驚いていた。

監督「どうしてだ?ピッチャーは嫌か?どう考えたってピッチャーはお前しか…」


達矢「そうじゃないんです」


俺は監督の言葉を止めた。

⏰:06/09/05 22:49 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#276 [ラビ]
達矢「ピッチャーをやるとか、やらないとかじゃなくて…。背番号1はヒロキのものです。他の誰のものでもありません。」


俺はまっすぐ監督を見て訴えた。

達矢「ウチのエースはヒロキです。だから…ヒロキ以外の奴が着る資格は…ないっ…です…」


話してる途中でまた涙が溢れてきた。

背番号1はヒロキの番号。

それ以外何でもないんだ…。

⏰:06/09/05 22:54 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#277 [ラビ]
達矢「ヒロキは…愛川高校の…ピッチャーですよ…」


俺が涙ながらに話すと、監督はニコっと笑ってそうだな、と言った。


監督「そうだな。宮本はウチのエースだもんな…。よし、そのままで行くか」

そう言うと、監督は立ち上がった。


監督「チームの皆からは俺が報告しておく。今日の練習は中止だな…。お前は学校来なくていいからゆっくり気持ちを落ち着かせておけよ。」

⏰:06/09/05 23:02 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#278 [ラビ]
俺はハイと返事をして、また下を向いた。


監督「じゃあな」


そう言って監督は病院を後にした。





…こんな日でも空はあの時のように青くてキレイだ。


ゆっくりと雲が流れ、いい野球日和。


甲子園まであと3日…。

俺は立ち上がり、また病室へ戻った。

ヒロキに…

別れの言葉と感謝の言葉を伝えに。

⏰:06/09/05 23:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#279 [ラビ]
【8章―先発投手は背番号6】

チュンチュン…


スズメが鳴いている。


…朝だ。


俺は昨日、あのあと家に戻ってひたすら寝た。


起きていたら涙が止まらないし、ツラくなるだけだった。


「うぅ〜ん…」

⏰:06/09/06 15:54 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#280 [ラビ]
俺は重たい体を起こした。



昨日、ヒロキが死んだっていうのに


何ひとつ変わりない朝だった。



「着替えなきゃ…」


今日は練習だ…。


俺は練習なんて気分じゃなかった。

⏰:06/09/06 16:08 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#281 [カズ]
アゲアゲ

⏰:06/09/06 18:06 📱:W41CA 🆔:ICArSa4w


#282 [ナナ]
>>200->>250
>>250->>300

⏰:06/09/06 18:58 📱:N900iS 🆔:oJfmBvK2


#283 [ラビ]
カズさん~アゲありがとうございます

ナナさん☆アンカーありがとうございます♪(≧∪≦*)

ちょっと更新します((φ( ̄ー ̄ )

⏰:06/09/06 22:34 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#284 [ラビ]
こんなにも

野球がユウウツなのは始めてだ。


「達矢ぁ?起きたぁ?」


下では母さんが俺を呼ぶ。



「あぁ。起きてる」


俺は眠たい目をこすり、部屋を出た。

⏰:06/09/06 23:04 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#285 [ラビ]
「行ってきます」


朝食も済ませ、俺は家を出た。


気持ちのいい風が吹き抜ける。


俺は自転車に乗り、学校に向かった。

⏰:06/09/06 23:09 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#286 [ラビ]
それから20分後…学校に到着。


グランドには誰もいなかった。


達矢「1番に来たのは初めてだな。」

そう…俺は1番最初にグランドに来たことはなかった。


いつも学校に来ると…



ヒロキがいたから。



ヒロキはいつも早く学校に来て、朝練をしていた。

⏰:06/09/06 23:14 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#287 [ラビ]
そして、俺の顔を見るなり、汗だくの顔でニコッと笑い、


“おはよう”


って言うんだ。


学校に来て、最初に聞く言葉…。


「…おはよう」


俺は誰もいないシーンとしたグランドで、ポツリとつぶやいた。

⏰:06/09/06 23:19 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#288 [ラビ]
もちろん、返答はない。


つき抜ける風の音だけが

むなしく聞こえた。



俺は部室にカバンを置き、練習の支度をした。



『達矢、帰ろうぜ☆』


いつもここでは、ヒロキは笑って俺に“帰ろう”と誘ってくれた。

⏰:06/09/07 07:08 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#289 [ラビ]
…ダメだ。


グランドにも…


部室にも…



ヒロキの思い出はありすぎる…。


どこに行ってもヒロキの声が聞こえてきそうでツラい…。


そして俺の目から


一筋の涙がこぼれた。

⏰:06/09/07 07:14 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#290 [ラビ]
支度を済ませ、グランドに戻り、何かするのでもなく


ただボーっとしていた。


…天気は晴れ。


穏やかに雲は流れ、


空はただ青く、


太陽は優しく照らす。


俺は、前にこんな空を見上げながら、


ヒロキと交した約束を思い出した。

⏰:06/09/07 07:31 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#291 [ラビ]
『お前を日本一のピッチャーにしてやるよ』


『じゃあオレはお前を日本一のショートにしてやんなきゃな』



…甲子園が始まる前から

この約束は果たせないものになってしまった。

⏰:06/09/07 07:49 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#292 [ラビ]
ぼんやりとそんなことを考えていると、部員たちが集まってきた。


そろそろ練習が始まる。


俺は重たい体を無理に動かして立ち上がった。



「よ〜し、集合!」


監督が号令をかける。


俺は帽子をかぶりなおして走った。

⏰:06/09/07 13:16 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#293 [カズ]
上げます

⏰:06/09/07 14:14 📱:W41CA 🆔:Dhucym1Q


#294 [ラビ]
カズさんアゲありがとうございます~~いつもA感謝です@
今日もバイトなんでまた夜更新しますねc

⏰:06/09/07 16:19 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#295 [ゅぅ]
ここに書き込んですいませんこの話1番すきですまじ泣けます主サン頑張ってください

⏰:06/09/07 16:38 📱:D901iS 🆔:5apinD3Q


#296 [ラビ]
ゅぅサン☆ありがとうございます♪(*´エ`*)ここに書き込んでくださって結構ですよ♪感想板立ててない主が悪いので↓(笑)読んでいただけて本当に嬉しいです(T_T)☆頑張って書くので最後までお付きあいくださぃm(__)m

⏰:06/09/07 22:33 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#297 [ラビ]
全員が集まると、練習前のミーティングが始まった。


『ヒロキの分まで野球をやろう』


監督はそう言った。



そして黙祷(モクトウ)…。


俺たちは帽子を取り


全員が目をつぶり


ヒロキの冥福を祈った。

⏰:06/09/07 22:37 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#298 [ラビ]
黙祷が終わって、すぐ練習に入った。


甲子園も近いので、チーム練習が中心だった。



…そこで、俺はチームの雰囲気の変化に気が付いた。


今まで後輩に冷たく当たっていた3年生が元に戻っている…。


というか、冷たくなる前よりも声をかけている。

⏰:06/09/07 22:43 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#299 [ラビ]
3年「お前、今のナイスプレーだったな☆」


後輩「あ…ありがとうございます!」


そんな場面があっちこっちで見受けられた。


そんなこともあってか、チームの雰囲気はバッチリ。


試合の流れを想定した練習では


驚くほどのチームプレーが連発した。

⏰:06/09/07 22:47 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#300 [ラビ]
…きっと、ヒロキの死が影響しているのだろう…。


俺はといえば、ひたすらピッチング練習に励んでいた。


ヒロキに劣らないピッチャーにならないと…。


その思いでいっぱいだった。


悲しいのは俺だけじゃない。


チームみんな悲しいハズだ。

⏰:06/09/07 22:50 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


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