太陽と夏の空
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#351 [ラビ]
達矢「…ッ…行ってきます!!」


俺は目に涙をため、大空に向かって叫んだ。


ぎゅっとつぶった目から


涙がポロポロと流れ出る。



達矢「…ヒロキの…バカヤロー…ッ…」


俺は片手で目を抑えながらつぶやいた。


今日この日…


ヒロキがいないことが

ツラくて死にたいくらいだった。

⏰:06/09/10 19:18 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#352 [ナナ]
失礼します
>>320-380

⏰:06/09/10 19:59 📱:N900iS 🆔:87hWeA4g


#353 [ラビ]
ナナさん☆アンカーありがとうございます(*^_^*)

⏰:06/09/10 20:11 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#354 [ラビ]
学校に着くと、ほとんどの部員が集まっていた。


俺はさっきまで泣いていたのがバレないように

帽子を深くかぶり直す。


しばらくして、監督が現れた。



監督「全員いるなー?荷物積めー」


ゾロゾロと荷物を積み込み、バスに乗っていく。

⏰:06/09/10 20:36 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#355 [ラビ]
達矢「…あ…」


俺は、ボストンを積もうとしたとき、手に握られた紙袋に気が付いた。


…ヒロキ…。


お前も一緒にバスに乗るよな?



俺はボストンだけ積んだあと、

紙袋を丁寧に抱きかかえてバスに乗り込んだ。

⏰:06/09/10 20:44 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#356 [ラビ]
俺が座る座席の隣には淳平がいた。


淳平「おっす」

達矢「おっす」

俺は挨拶を返して座席に座る。



淳平「なんだ?それ?」

早速、淳平は紙袋を指差して聞いてきた。


達矢「…ヒロキだよ」


俺は堂々と答えた。

⏰:06/09/10 20:49 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#357 [ラビ]
淳平「ヒロキ?!」


淳平は目を見開いて驚いていた。

…まぁ普通は驚くだろう。無理もない。


恐る恐る紙袋をのぞこうとする淳平に

俺は紙袋を開いて見せた。




…少し土がついていて、使い古したような茶色のグローブ。



…甲子園のマウンドを踏みしめることを楽しみにしていたであろう、黒いスパイク。

⏰:06/09/10 20:55 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#358 [ラビ]
…少し色がハゲてきた帽子。


そして…



愛川高校のユニフォーム。



背中に輝く番号は


『1』



紛れもない、ヒロキの番号。

⏰:06/09/10 21:02 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#359 [ラビ]
淳平はそれを見て表情を少し曇らせた。


…淳平も俺と同じで

ヒロキがこのユニフォームを着てマウンドに立てなかったのが

悔しくて仕方がないんだろう…。




達矢「なぁ、ヒロキも連れてってやっていいよな?」


俺は黙ってユニフォームを見つめる淳平に問いかけた。

⏰:06/09/10 21:18 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#360 [ラビ]
淳平「当たり前だろ!!」


淳平はバスの中であるのを忘れて叫んだ。


淳平「あ…コホン。」


淳平は我にかえって恥ずかしそうにしていた。


淳平「ヒロキは俺達のキャプテンだぜ。キャプテン不在で試合が出来るかよ」

⏰:06/09/10 21:47 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#361 [ラビ]
淳平は当たり前のことのように言ってくれた。


達矢「ありがとう…。」


俺達はそれ以上の会話をせず、バスの中で寝た。


…甲子園は


もう目の前だ。

⏰:06/09/10 22:16 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#362 [ラビ]
「もう着くから起きろよー!!」


監督の声で目が覚める。


長かった旅路の果てに…


見えるのは甲子園球場。



「うわぁ〜!!」

「すげぇー!!」



バスの中は興奮と感動でいっぱいだ。


達矢「…すげぇ…」

俺も感動してそれ以上の言葉は出なかった。

⏰:06/09/10 22:20 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#363 [ラビ]
長い間ずっと夢見ていた甲子園。

その甲子園が、すぐ目の前にある。


淳平「今年はテレビを通さないで生で見れるんだな」


隣で淳平がつぶやく。


達矢「そうだな…。」


バスは甲子園の近くに止まり、部員はバスを降りる。


とりあえず、球場内を見学するようだ。

⏰:06/09/10 22:28 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#364 [ラビ]
「うぉぉぉ!!!」


球場の中に入ると、興奮は倍以上だ。


なんと言っても広い。


俺は球場を見ただけで涙が出そうなくらい感動した。




ガサッ



俺はとっさに一緒に持ってきた紙袋を思い出した。

⏰:06/09/10 22:34 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#365 [ラビ]
…ヒロキ…。


お前にも見せてやりたいよ。


めちゃくちゃ感動するぜ…?


お前…


あのマウンドで投げれるなんて


これほどない幸せだろ…?


投げたかったよなぁ…?


ヒロキ…。

⏰:06/09/10 22:36 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#366 [ラビ]
ずっとそんなことを考えながら

球場を見回していた。


監督「バスに戻るぞぉ〜」


監督の指示に従いバスに戻る。


これから泊まるホテルへ向かうようだ。



開会式は明日…。


いよいよ“夏の甲子園”が始まる。

⏰:06/09/10 22:45 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#367 [ラビ]
―次の日

ホテルで一夜を過ごし、甲子園に戻って来た。


俺達が着く頃には、すでにたくさんの学校が来ていた。


ハンパないバスの数。



バスを飾る文字たちは


“北澤学園”


“西ノ宮高校”


“田島商業”


などなど…全国に知れ渡る名門ばかりだ。

⏰:06/09/10 22:52 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#368 [ラビ]
もちろん、TV局も来ている。


俺は今までにないほど緊張していた。


バスを降り、球場へ入って行く。


昨日とは違って、観客席も満員。


すでに会場の雰囲気に押しつぶされそうだ。

⏰:06/09/10 22:56 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#369 [カズ]
アゲアゲ

⏰:06/09/11 11:56 📱:W41CA 🆔:Z95XGhJ.


#370 [ラビ]
カズさん~アゲありがとうございます咐~

⏰:06/09/11 22:32 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#371 [ラビ]
「出場校の選手は整列して下さーい」


係員の声が響く。


俺達は“愛川高校”と書かれたプレートの前に並ぶ。



どんどん鼓動が早くなる…。


緊張する…。


その時。



「おい、坂本」


監督が俺の名前を呼ぶ。

⏰:06/09/11 22:43 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#372 [ラビ]
達矢「はい?」


振り向くと、監督は俺に何かを手渡した。


監督「これ、持って歩け。」


そう言って渡されたのは…


ヒロキの遺影だった。



監督「緊張してコケんなよ」



それだけ言って監督は立ち去って行った。

⏰:06/09/11 22:47 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#373 [ラビ]
わぁぁぁぁぁぁぁぁ…


急に会場が沸く。


開会式が始まったようだ。



俺はヒロキの遺影をぎゅっと抱き締め、愛川高校の先頭を歩いた。

⏰:06/09/11 22:49 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#374 [ラビ]
…開会式が終わり、監督の元へ戻る。


監督「これから地元の高校のグランドを借りて調整程度に練習する。いよいよ本番だからケガはするなよ。」


部員『おっす』



全員バスに乗り込み目的地へと向かう。

⏰:06/09/11 22:53 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#375 [ラビ]
学校に着くと、軽いウォーミングアップから始まり、

すぐに実戦に備えた練習が始まった。


打たれてからの切り返しや、守備の確認などを中心にやった。



俺達の試合は明日。


対戦相手は“高井高校”。


高井高校は甲子園初出場だが、

182センチの長身エースを軸に粘り強く戦ってくるチームだ。

⏰:06/09/12 23:39 📱:W32SA 🆔:gzgnq7RE


#376 [ラビ]
高井高校の長所は守備の良さ。


全くと言っていいほど、弱い場所が見つからない。



さすが全国。


当たり前だが、余裕があるチームなんて、これっぽっちもない。



それに、守備のいいチームに対しては、こちらもしっかり守らなければ勝ち目はない。

⏰:06/09/13 07:05 📱:W32SA 🆔:AJ9B/YDw


#377 [ラビ]
「よーし、クールダウンしろぉ〜」


試合前の調整練習が終わった。


あとは明日…


全力を出すだけだ。

⏰:06/09/13 22:10 📱:W32SA 🆔:AJ9B/YDw


#378 [ラビ]
ホテルに戻り、部屋での自由時間。


ふと空を見上げると、キラキラと輝く夜空があった。


達矢「負けたら最後かぁ〜…」


…高校最後の大会。


これで負けたら…


もうこの愛川の仲間達と野球をすることはない。


そう考えると胸がギューっと苦しかった。

⏰:06/09/14 06:57 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#379 []
ぁげ
ぃつも読ンでるンで頑張ってくださぃ

⏰:06/09/14 19:18 📱:SH902i 🆔:A7a/CjGc


#380 [ラビ]
―次の日の朝。


わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…


球場内の歓声が外まで聞こえる。


今日の第2試合目の俺達は、軽いウォーミングアップを終えて球場に到着した。


「緊張するな…」


部員達も緊張した顔付きで球場に向かう。

⏰:06/09/14 19:33 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#381 [ラビ]
イさん☆ありがとうございます(*^^*)♪♪最近更新が遅くてごめんなさい↓(T_T)頑張りますねッ(*≧m≦*)

⏰:06/09/14 22:58 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#382 [ラビ]
そして、1試合目の試合が終わった。



「よし!行くぞ!」


『おう!!』



全員が気合いを入れ、グランドに足を踏み入れる。



…甲子園の砂。


ただの砂には変わりないのに


なんでこんなにも感動するんだろう。


砂に触れられるだけで…

涙が落ちそうだった。

⏰:06/09/14 23:19 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#383 [ラビ]
しばらくすると、試合開始の合図が出た。


《両校、あいさつ》



アナウンスが響き渡り、俺達は全力で走って整列した。



『っします!!』


相手の高井高校と向かい合い、頭を下げる。


…いよいよプレイボール。


俺達の甲子園第1ゲーム目が幕を開けた。

⏰:06/09/15 06:55 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#384 [ラビ]
1回表…


先攻は高井高校。



愛川は歓声をあびながら守備位置についた。



俺は一人、マウンドに上がる。



トクン…トクン…



立っているだけでも胸が高鳴っているのがわかる。

⏰:06/09/15 21:12 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#385 [ラビ]
…ここが甲子園。



…ここが甲子園のマウンド。



いつもいつもテレビでしか見れなかった。


いつも誰かが投げてるのを見てるしかなかった。


でも…


今投げるのはこの俺だ。



甲子園のマウンドは


すごく居心地が良かった。

⏰:06/09/15 21:33 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#386 [ラビ]
父さんも



何年か前、ここに立っていたんだ…。


そう思うと同時に


ヒロキのことが頭に浮かんだ。



…ここは…



…本当はヒロキが立つ場所だった。

⏰:06/09/15 21:36 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#387 [ラビ]
…俺が立ってていいのか?



いつも後ろ向きに物事を考えてしまう俺の悪い癖。


でも、この日は違った。




達矢「俺じゃなきゃダメだろ」


ボソッとつぶやき、胸を押さえた。



…ヒロキに変わって投げれる奴は俺しかいねぇ。



そう自分にいい聞かせて白球を握りしめた。

⏰:06/09/15 21:44 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#388 [ラビ]
…5回の裏。


試合は両者一歩も引かず、0対0のまま5回を迎えた。


そして愛川高校の攻撃。



相手の長身ピッチャーから振り降ろされる速球に


愛川はなかなか手が出なかった。


それに、相手高校の守備はハンパなかった。

⏰:06/09/15 21:51 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#389 [ラビ]
さすが守備の上手さが有名なだけある。


いいとこに打ったと思っても


ファインプレーの連続。



あっというまにアウトにされてしまう。



「さすがだな…」



俺は全国のレベルの高さを改めて実感した。

⏰:06/09/15 21:54 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#390 [ラビ]
ツーアウト ランナー無し。


…この回も得点0で終わりそうだ。


そう思い守備の準備をしようとベンチ内を見回していると…


ヒロキのユニフォームが目に入った。



ヒロキのユニフォームはキレイにたたまれ、


ベンチの隅に置かれていた。

⏰:06/09/15 21:59 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#391 [ラビ]
グランドを見守るかのように遺影が置かれ、


スパイク、グローブ、帽子もキレイに置かれていた。




達矢「なぁヒロキ、お前だったらどう投げる?」



俺は思わず声をかける。

⏰:06/09/15 22:05 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#392 [ラビ]
当然、返答はあるわけないが、



“達矢は達矢の投げたいように投げればいいさ”



と、笑って言うヒロキの顔が浮かびあがる。



“達矢のやりたいように”



それは、ヒロキがいつも口癖のように言ってた言葉だ。

⏰:06/09/15 22:08 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#393 [ラビ]
俺が投球のことでヒロキに相談すると、


ヒロキはいつも決まってそう言った。



前までは『アドバイスになってねぇよ』ってコントみたいになってたけど…



今思えばこれ以上ない最高のアドバイスだった。

⏰:06/09/15 22:11 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#394 [ラビ]
達矢「お前に相談しても返ってくる返事は予想出来るからダメだな(笑)」


俺は笑ってヒロキの遺影につぶやいた。



達矢「俺は俺のやりたいように…か…」



俺はヒロキの顔を思い出しながらぼんやりと考えていた。

⏰:06/09/15 22:18 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#395 [ラビ]
こうしたらいいんじゃない?とか

下手に自分の感覚を押し付けて言うよりも


“やりたいようにやればいい”


と、自由な感じで言われると、困ったことは困ったが、


心の緊張は溶けていった。



確かに、「こうしたらいい」というアドバイスは大切だが


悩みやすい俺には、逆に「やりたいように」と言われたほうが良かったのかもしれない。

⏰:06/09/15 22:26 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#396 [ラビ]
きっとヒロキは、そんな俺の性格を知ってて


“やりたいように”と言ったんだ。



ホントに…



お前は俺の一番の理解者だったよ…。

⏰:06/09/15 22:32 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#397 [ラビ]
「バッターアウト!!」


審判の叫び声に俺はハッとした。


スリーアウト…チェンジだ。



俺は立ち上がってグローブをはめた。


達矢「やりたいようにやってくるぜ」


俺はヒロキの遺影に向かって笑い、ベンチを出た。

⏰:06/09/15 22:40 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#398 [ラビ]
試合は進み、後半戦に突入。




7回の裏…


愛川が1点を先制し、そのまま流れをつかみ、もう1点を追加し2対0。



「残り2回を守りきれ」



監督はそうとだけ指示を出し、8回の表に入った。

⏰:06/09/16 14:27 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


#399 [ラビ]
2点を追い掛ける高井高校。



「ストライク!!バッターアウト!!」


わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…



球場が揺れるような大歓声。



俺は高井の攻撃を抑え、またひとつ三振を奪った。


8回の表、高井の得点は0。


そして迎える最終回。


この回を守りきるだけ…。

⏰:06/09/16 15:08 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


#400 [ラビ]
さすがに俺もこの回は緊張して体がガチガチだった。


マウンドで足がふるえる。



…情けねぇ…この場面で投げれなかったら



ここに立った意味がねぇ…。



力を入れ緊張をごまかす。



そしてキャッチャー目がけてボールを投げた。

⏰:06/09/16 22:12 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


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