無題【BL】
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#56 [我輩は人間である]

「悟」
「げんじろ……」

力のない声がより現実さを増させる。
目尻からはまた新しく水滴が溜まってしばらくすると肌を伝う。

最悪だ。一番見られたくない姿を見せてしまった事に悟は深く胸をえぐられた気分になった。
そんな気持ちとはおかまいなしに荘二郎は優越感たっぷりな表情で弟を見つめ

「お楽しみ中邪魔すんなよ。何?」

わざとらしく怪訝そうな顔で言った。

源治郎は暫く黙ってから二人のもとへ歩み寄って荘二郎を無理矢理引き剥がし床へと投げ倒した後、悟の腕を掴んだ。

⏰:10/03/12 21:15 📱:S001 🆔:☆☆☆


#57 [我輩は人間である]

「げんじろ、ッ」
「行くぞ」
「おいちょっと、待てよ!」

かけられている声を無視して震えている腕を起こすように引っ張って、悟をそのまま外に連れ出した。

手に力が入り掴まれたところがジンジンする。
源治郎は自分の部屋に連れていくなり壁に悟を押し付けた。

「、ッ……」
「どこまで行った」
「え…」
「どこまで行ったんだ。荘二郎と」

源治郎の何もかもを見透かされるような黒目はじっと悟を捉えて離さない。嫌がおうにも吸い込まれてしまいそうになるその瞳に目が離せなくなる。

⏰:10/03/12 23:43 📱:S001 🆔:☆☆☆


#58 [我輩は人間である]

「あ…源治郎…、」

胸が高まる。鼓動が早くなってドキドキする。
…なんでキスなんて……。

「しちゃったんだろ…」

袖で自分の口をゴシゴシと拭くとまた涙が出てきた。何度も何度も拭くもんだから少し痛くなって唇は赤くなってしまった。


「ひっく…うぇっ…う……」
その唇に親指をそっと添えて、顔をゆっくり近付けながら源治郎は名前を呼んだ。

「悟」
「うっ…ッ源治郎…!」

…キスして。

⏰:10/03/12 23:59 📱:S001 🆔:☆☆☆


#59 [我輩は人間である]

END

⏰:10/03/13 00:01 📱:S001 🆔:☆☆☆


#60 [我輩は人間である]

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4648/

良ければ感想など募集しています。

⏰:10/03/13 11:17 📱:S001 🆔:☆☆☆


#61 [我輩は人間である]

【短編】

ハートは繋がって

⏰:10/03/14 00:56 📱:S001 🆔:☆☆☆


#62 [我輩は人間である]

それはバイトの帰りだった。

今日はレジもうまくいって僕を担当してくれてる品川さんも珍しく誉めてくれた。
晴れ晴れとした昼下がり、僕の心も晴れ晴れとしていてとても気分がよかった。

帰り道のルートにやや敷地が広い公園の前を通る。
そこは昼過ぎには近くの団地に住んでいる子供たちがよく遊びに来る場所なのだが、ふと見ると、わいわいと楽しそうに遊んでいる子供たちの風景に紛れて見慣れない一人の男の人がブランコに座っていた。

赤いパーカーにダボダボなデニム、黒髪に金のメッシュが入っている。端から見るとよく駅前にたむろしている不良みたいな人だった。

⏰:10/03/14 01:31 📱:S001 🆔:☆☆☆


#63 [我輩は人間である]

ブランコに座ったままボーッとどこか一点を見つめて動かない様子で、出来心か少し観察してみることにした。
ブランコから少し離れたベンチに座って携帯をいじるフリをして見ていると、
「ぁ………」

小さな女の子がその人の隣に座って話しかけているみたい。

そのまま二人の様子を見続けていると彼は笑いながらポケットから何かを出した。
握られたままの手をじっと女の子は見つめて僕も遠くから見つめる。
すると彼は手を数回軽く左右に振って、小さな花束を出して見せたのだ。
そしてその花束を女の子に差し出して、女の子は嬉しそうにそれを受け取った。

僕の他にも二人を見ていた子供たちは次々に彼に寄ってきた。

⏰:10/03/14 01:45 📱:S001 🆔:☆☆☆


#64 [我輩は人間である]

そこからは彼の一人舞台。
コインマジックや砂場にあった玩具の小さいバケツを使って中からまた花束を出したり。
彼の周りはいつの間にか公園で遊んでいた子供たち、そしてお母さんたち全員囲まれていた。

わあっ…という歓声やスゴーイ!という声に彼はだろ?と人当たり良く笑顔で答えてまたマジックで引き付ける。

柄の悪そうなイメージから一変、きっと優しい人なんだなあ、と思った。
目付きの悪そうな切れ長な目も、笑うと少し垂れて優しい表情へ変わる彼の笑顔に少し見とれてしまった。

⏰:10/03/14 02:12 📱:S001 🆔:☆☆☆


#65 [我輩は人間である]

それが彼との出会いだ。
それから次の日、またその次の日も彼は公園で子供たちにマジックを披露していた。

それは僕が春休みに入ってからも変わらなかった。
周りからもいつしかそれが“変わらぬ風景”となっていて、そして僕も彼のマジックを見に行く事が日課となっていた。


公園に入ってすぐ左にある低い鉄棒と高い鉄棒の斜め後ろにあるベンチ。そこが僕の特等席になりつつある。

二週間は経つのだろうか。あの日から僕は毎日この公園に足を運んでいる。

⏰:10/03/14 02:54 📱:S001 🆔:☆☆☆


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