無題【BL】
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#101 [我輩は人間である]
「………おいっ、勝手にあがんな!」
千鶴は少しポカンとした顔をしていたが、我に返って急いで大政の後を追った。
何故だか千鶴の叩きかけるような口調も今にも飛びかかってきそうな態度も、大政には全く効かない。
それどころか見事にかわされて千鶴はもう一つ頭に怒りのマークを浮かべた。
高校生の一人暮らしにしては少々広い2LDKの室内を見回しながら大政は声をあげた。
先ほどからちょこまかと中を見られて千鶴はその度飛びかかるが何も通じない。
天然なのかなんなのか。子供を相手にするかように接されてもう居てもたってもいられない気分だ。
:10/04/14 00:32
:S001
:☆☆☆
#102 [我輩は人間である]
「おーし…まずは、…何する?」
ソファに座りローテーブルに数学やら生物やら色々な教材を一通り積んで大政は顔を上げた。
千鶴の取ってわかる表情に何がなんだかわからない様子で、今度は何を勘違いしたのかあっと声を上げてカバンから英語の教材を出して見せてきたと思えば
「忘れてたこれやりたかったのな」
なんて。
頭がクラクラする。
「…………出てけ」
「………」
「……さっさと出てけ!!」
:10/04/14 00:42
:S001
:☆☆☆
#103 [我輩は人間である]
一層声を上げて怒鳴った。これでやっと帰るだろう。
千鶴はフーッフーッと息をあらげながら大政を見た。呆気に取られた顔で自分を見ていたが、それはみるみる困った表情に変わっていった。
「んな事言われてもなぁ…。俺は水野に勉強教えるために来たわけだし、お前が嫌でも俺だって仕事だし」
ポリポリとうなじの方に手を回して申し訳なさそうに千鶴を見る。
一体どこまでイラつかせるんだ、この男。
来るなと言ったのに来る。
帰れと言ったのにこの前なんか二時間位ドアの前で待っているし。そのお陰で周りからは更に変な目で見られる始末だ。
更に無理矢理あがり込んだ挙げ句、勝手に人の部屋を母親みたいにチェックし始めた。
:10/04/14 01:24
:S001
:☆☆☆
#104 [我輩は人間である]
そして今のこれ。
悪いが俺はこの上限りなく怒り狂ってるんだよ。そう言おうとしたが大政の表情にもうそれを言う気にもなれない。
なんで父親は家庭教師なんて雇ったんだろう。
そもそも自分に寄越しても意味がないとは思わなかったのだろうか?
茶髪にピアス。
それだけで周りの人間は千鶴を悪く見た。
千鶴の性格も合わせて完全に普通から外れた枠に入っていたし、高校に入った時もその視線は変わらなかった。
自分を見る目はみんな冷たくて居たたまれない気持ちになる。
中学から踏み外した道はもう引き返せなかった。後悔した時期だって何回もあったが、今はもうこれでいいのだ。
:10/04/14 01:36
:S001
:☆☆☆
#105 [我輩は人間である]
そのままがむしゃらに突っ走ってきた道のりは、そう悪くもなく良くもなくで、何回も警察にお世話になった。
それでも同じ境遇にいた人たちとつるんで、それだけが千鶴の居場所だったのだ。
しかし、それもあっけなく崩れた。
ただ金持ちというだけで僻まれて、金づるなんじゃないかと自分を追い込むようになってから、千鶴はたった一つの居場所にも居れなくなった。
千鶴は孤独だった。
:10/04/14 01:43
:S001
:☆☆☆
#106 [我輩は人間である]
実は家庭教師が家を訪ねてきたのは今回だけではない。
二人来て二人共千鶴を知るなりリタイアしていっている事を経験しているからこそ、大政もすぐに引き下がってくると思ったのだ。
つられるのは結局金に目が眩んだからで、他に理由はない。
俺じゃなくみんながみんな金なんだ。
大政は立ち上がった。
「そうだな…」
ゆっくり千鶴に近付いて、威嚇した猫のようにゴロゴロと鳴きそうな顔に思わず苦笑する。
:10/04/15 02:04
:S001
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#107 [我輩は人間である]
「50点」
「…は?」
「来月の中間で一個でも50点取れたら辞める」
「…は?」
二週間位しかない期間の中で……?
バカじゃないのか。
千鶴は数秒固まってから吹き出して笑いながら手をヒラヒラと顔の前で振る。
冷蔵庫からコーラを出してキャップを捻りながらもまだ笑う千鶴に大政はム、と眉を寄せた。
「言っとくけど俺バカだから。50点なんて中学の期末……、期末。中二の期末の国語以来だからな?59」
:10/04/15 02:38
:S001
:☆☆☆
#108 [我輩は人間である]
フンと鼻を鳴らして千鶴は得意気に言う。
「じゃあ無理だ」
「は?」
「そんなんなら無理だ無理。やっぱ40に引き下げよう」
やっぱし50点はな…、とわざとらしく呟きながら額に手を当てる。両目を覆うように隠してチラリと指の隙間から千鶴を観察した。
さっきからコロコロと言葉が変わって動揺しているというより、大政から見下された感がさっきの言葉で強かったのか気にくわない反応を見せている。
黒目がこちらに向いた瞬間大政はかかったと確信した。
「50点で!!みくびんじゃねーぞコノヤロー」
まさか本当に引っかかるとは。
すぐにかかった目の前の獲物があっさりと捕まりすぎて、可笑しくて笑いを堪える大政であった。
:10/04/15 05:50
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#109 [我輩は人間である]
「違う違う。ここ代入して、」
「……あ゛ーっ、もうっ」
リビングに千鶴の呻き声にも似た声が響いた。
まんまと大政の作戦にハマって五日目。
男二人、参考書や大政がまとめたノートを見ながら今は数学のお時間だ。
どんなに頭がクラクラして参考書に書いてあることが意味不明だったとしても、自分から話に乗ったので逃げ出すことは嫌だった。
売られた喧嘩は買うのが千鶴の考えで、逃げ出すなんてプライドが許さない。
喧嘩じゃ強いのに…、今にもパンクしそうな頭の中で千鶴は弱々しく呟いた。
:10/04/16 00:12
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#110 [我輩は人間である]
この五日間で千鶴は数学が得意だと大政は気付いた。
因数分解なんかほんの一時間で公式を簡単に覚えるし、千鶴の父親から全く勉強ができないと聞いていたが思ったより手こずることはない。
本人も負けず嫌いなのか、詰まったりイライラし始めた時はちょいちょい挑発するような言葉をかけてやると、嫌嫌ながらもちゃんと問題に向き合っている。
この五日間で大政は千鶴をコントロールできるようになっていた。
警察沙汰も度々だと聞いていたがこれなら案外―――。
:10/04/16 01:43
:S001
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