無題【BL】
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#30 [我輩は人間である]

【中編】アンバランスがいつの日か


⏰:10/01/21 23:41 📱:S001 🆔:☆☆☆


#31 [我輩は人間である]

補習で遅れた。補習で遅れた。補習で遅れた。

「だから補習で遅れたんだって…」

四回目。
一向に信じてくれない日向源治郎に山中悟は本日五回目の台詞をはいた。

「さっきからわかったって言ってるだろう」
「いや腑に落ちない顔してるじゃん」

端正な顔の眉間に皺が少しできてるのは気のせいでも何でもない。
信じてるんだか信じてないんだかの曖昧な顔に悟は溜め息を漏らした。

かれこれ二人ここで一時間はこのやりとりだった。いい加減どっかのファミレスに寄るとか、でなくてもそこのベンチに座るとか、とにかく一時間立ちっぱはキツイ。

⏰:10/01/22 00:00 📱:S001 🆔:☆☆☆


#32 [我輩は人間である]

しかも高校三年生男子二人で一時間。女子ならわからない気もしないが駅のホームで……いや、ないだろう。悟は今まで自分達がしでかした恥にじわじわと気付いた。

「とにかくどっか座れるとこ行こ。脚パンパンだから」
「俺は大丈夫だけど」
「お前はいいけど俺はダメなの。それに遅れたお詫びもしたいし」

源治郎は間をあけてわかったと単調な返事を返した後行き先も決めてないのに歩き出す。その後を追って悟も歩き出した。

どうせ同じ方面だし、つかお隣だしと取り付けた約束。学校違えど仲良し同士仲良く帰ろうと昨日悟は軽く取り付けた。
ただ一度目の大遅刻で信用を失ったのは確かだった。だから気を付けようと思ってた後の、コレ。

⏰:10/01/22 00:52 📱:S001 🆔:☆☆☆


#33 [我輩は人間である]

源治郎をチラッと横目で見てもまだ許しきってもらってないのはよくわかった。

「………本当に補習なんだけどなあー」
「…………」
「本当に本当に補習…」
「わかったって」

やや強めの口調で源治郎は言葉を遮った。ビクッと肩を揺らす悟を尻目に歩くスピードを早める。

「四時間も待たされるよりはマシだ」
「それ嫌味?だから本当にあれは悪かったって言ってんじゃん」
「正直言って引きずってる」
「だから今日も引きずんの?」

⏰:10/01/22 01:05 📱:S001 🆔:☆☆☆


#34 [我輩は人間である]

源治郎の中で悟の発言信憑性は五分五分位だ。
前にも帰る約束して駅で待っていた事があった。約束の時間から四時間経っても悟の姿が見えず、五時間が経とうとしていた時悟がやっと駆け足で駅に来た。理由は友達とゲームセンター。
この時ばかりは全面に怒りが出た。
今日も同じ事が起こるのかと思ったが悟は少し遅れただけ。ほんの数十分。

「別に」

嫌味言われても仕方ないだろと源治郎は呟くように言った。

⏰:10/01/22 01:17 📱:S001 🆔:☆☆☆


#35 [我輩は人間である]

悟は少し黙り込んだ。自分がやった事をもし友達にされたらと思うと何発懐にパンチするかわからない。
だけどまさかここまで根に持たれると困ったもんだ。
……だいたい今日は、

「携帯持ってない源治郎も悪い」
「はあ?」
「携帯持ってりゃ補習で少し遅れるよ、とかすぐに知らせられたのに」
「何を言うかと思えば……。ちなみにここまで一回も謝罪の言葉を聞いていない。そんなあがきを言う前に素直にごめんと言えないのか、お前は」
「はあっ!?ごめんて言いました〜!」
「言ってないな、間違いない」
「オイッ、嘘っぱちこくなっ。言いました、確かに言いましたあー」

⏰:10/01/22 13:31 📱:S001 🆔:☆☆☆


#36 [我輩は人間である]

見慣れた住宅街。帰り道に男二人の口喧嘩が勃発した。

「第一、携帯がどうのこうのと重箱の隅をつつくような…」
「重箱か小箱かわからないけど今時の高校生が携帯持ってないなんておかしいだろ」

源治郎は父和菓子職人、母着物の着付けとなんとも古風な家に産まれいわゆる源治郎もその古風なニュアンスに包まれて育ってきた。
父親はよく漫画に出てきそうな頑固者でその遺伝子も源治郎にちゃんと伝わっている。だから言った事は曲げないし、何よりルーズな事が大嫌いだった。

⏰:10/01/22 18:01 📱:S001 🆔:☆☆☆


#37 [我輩は人間である]

「携帯なんか持たなくとも生きていける」
「機械音痴なだけでしょ。よく言う」

だから今回だって少しイラつく部分だってある。たかが十分、されど十分。
しかし源治郎はそんな事では怒らない。例え頑固でも機械音痴と言われようと今は論外としても滅多に表情を崩さない。
穏和な性格で人を思いやったりするのが源治郎であって争いはあまり好まないのだ。
まぁ今は論外なんだけど。

「うるさい。少しは減らず口直さないのか?周りにいいイメージを与えない」
「へっ!ちょっと顔が良くて頭良くて運動できるからって調子に乗んなよっ!頑固!機械音痴!天才!もういいっ!」

悟は小学生の決まり文句みたいに悪口をつらつらと並べるとフンと鼻を鳴らし家に早足で入って行った。

「はあ……………」

深い深い溜め息を吐く。
やってしまった。悟を怒らせてしまった。

⏰:10/01/22 18:16 📱:S001 🆔:☆☆☆


#38 [ゅぃ]
sageて書いてくれません?BL不快に思う人もいるんで

⏰:10/01/22 18:28 📱:PC 🆔:☆☆☆


#39 [我輩は人間である]

源治郎は入っていった隣人の玄関を見て立っている事しか出来なかった。
仕方なく自分も家へと戻る。

「ただいま帰りました」

ギシッ、ギィッ、と木製の我が家は悲鳴をあげるように音が鳴る。
いくらただいまと言っても返事がないので茶会か何かに行っているのだろうと玄関廊下の奥の襖を開けた。

「あ、お帰り」
「…なんで勝手に入って…」
「悟君と居たでしょ?声おっきいんだもん。ケンカ?」

襖を開けてすぐ目に入った源治郎の兄、荘二郎は椅子に座り源治郎に先程の事を尋ねる。足を組み直しながらラッキーと何かを思わせるような口ぶりで挑発的に微笑した。

⏰:10/01/22 18:30 📱:S001 🆔:☆☆☆


#40 [我輩は人間である]



>>38さん

>>1の感想板に返事を書きました。

⏰:10/01/22 18:41 📱:S001 🆔:☆☆☆


#41 [我輩は人間である]

「関係ないだろ。さっさと出ていってくれ」
「謝りに行かないの?悟君、今ならガード薄いかな?」

源治郎は黙り込んだまま荘二郎の言葉を無視しもう一度部屋から出ていって欲しいと告げる。
それに対し荘二郎は顔を上げ源治郎を見つめた。

「また勉強?疲れるな、お前。いいの?悟貰っても」
「貰うも何も興味ない、それに…」
「嘘」

⏰:10/01/30 22:10 📱:S001 🆔:☆☆☆


#42 [我輩は人間である]

あまりにも即答すぎて驚いた反面、どこか自分自身納得しているような気がして苛ついたその言葉を無視するように源治郎はいい加減にしろよと口調を早めた。
嘘呼ばわりは今日で二回目だ。俺は一回だって嘘をついたことはないのに。

「………………」

部屋を出ていった兄を尻目にやっと腰を下ろした。
さっきまでキャンキャンと小生意気な事を言う奴もいないし相性の悪い兄もいない。なのに落ち着かないのは―――…?

「全く…………やめだやめ」

源治郎はポソリと呟き鞄から数学の参考書を出した。

⏰:10/01/31 04:21 📱:S001 🆔:☆☆☆


#43 [我輩は人間である]


⏰:10/01/31 04:23 📱:S001 🆔:☆☆☆


#44 [我輩は人間である]

あの日から一切言葉を交わしていないのが二人の現状だった。朝は自然と駅まで一緒に歩いてた二人の風景も、もう一週間は見られていなかった。

当然お互い行き帰りの道は途中から同じ。家から出るタイミングが一緒な時も度々あった。もちろん帰るタイミングも。

悟は今日もかよと思いながら源治郎の後ろ姿を見て歩くスピードを遅めた。

いつまでこの気まずさが続くのだろう。本当は今すぐにでも駆け寄って肩に手を回して何でもいいから話がしたいのに。今じゃ早足で追い越す事も躊躇いがちだ。

⏰:10/01/31 04:43 📱:S001 🆔:☆☆☆


#45 [我輩は人間である]

話したい事は山ほどあるのに、そう出来ない状況に悟は退屈気味だった。
元は自分が悪いとわかっていてもそんな素直さ持ち合わせてない。
だから今だって声をかけられない。
少しでも気をまぎらわすように、すれ違う親子や宅配便、外の景色へと悟は視線を向けた。

それでも視界に入ってくる源治郎の背中をまぎらわすように。

「悟君」

源治郎とは少しトーンが上がった声で名前を呼ばれパッとその方向へと顔を向けた。

⏰:10/01/31 23:23 📱:S001 🆔:☆☆☆


#46 [我輩は人間である]

気が付けばもう源治郎の家の前まで歩いていたのかと思いハッとした。
目の前に源治郎がいて二人の間には少しぎこちなさを漂わせている。もう少しでぶつかるところを免れ悟は胸を撫で下ろした。

荘二郎はどっしりと建てられた渋みのある木製の門下から呑気な様子で歩み寄った。

「いつも源治郎がお世話になって。俺は相手に出来ないから助かるよ」
「あっ、ああ…いえ」

暗めの茶髪を風になびかせたプレイボーイを思わせる出で立ち。この兄弟の容姿は罪な事ではなかろうかと悟は後頭に手をやりながら久々に感じる。

⏰:10/01/31 23:38 📱:S001 🆔:☆☆☆


#47 [我輩は人間である]

気にくわなそうな顔をした弟を少し押し退けた。源治郎は道の真ん中に体を押されそのまま兄の姿を無表情に見つめた。そしてそんな二人を悟は見つめた。

どうしたんですか?と聞けるわけもなくただ黙って二人の様子を観察する事しか出来ない。

その視線に気まずさといたたまれなさで足を進めた。木戸に手をかけたところで何を今更と思ったが源治郎は自分部屋へと向かった。
兄弟の仲の悪さなんて悟は知ってるはずだ。小さい頃から俺たちの嫌悪感が抜けない間柄を見てきたのだから、別に一言嫌味を返してやってもいいのだけど。だけど視線が辛かった。

⏰:10/01/31 23:58 📱:S001 🆔:☆☆☆


#48 [我輩は人間である]

なんだか自分が負けているような気がしていたたまれない気持ちに思えてきたのかもしれない。
渋みの出た畳へ柄にもなく鞄を投げてコップの中の水を一気に喉へ流し込む。冷静さが戻ってきて、さっきの悟の顔が頭に浮かんだ。
さっきから一向に荘二郎が帰ってこないのが心配になって、何より悟が何かされてるんじゃないかと玄関戸を少し開けたが門下に二人の姿はもうなかった。

「……………」

脳裏に嫌な予感が浮かぶ。もしかしたら荘二郎が………いやいや兄でもそれは……。

⏰:10/02/03 02:24 📱:S001 🆔:☆☆☆


#49 [我輩は人間である]

夏の暑さから、胸騒ぎが更に膨張してきて今にも破裂しそうである。

もしかして…と二人がいるであろう家をじっと見つめた。今行くべきだと直感が伝えているにも関わらず、なかなか踏み出せない自分と闘いながら。

⏰:10/03/11 20:49 📱:S001 🆔:☆☆☆


#50 [我輩は人間である]

半ば強制的に家へ入ってきた荘二郎を少し怪訝に思いながらもリビングに招き入れた。
ソファーに座ってもらって二人分の麦茶を入れる。机に置く。

「………」
「どうぞ」
「ありがとう」
「いえ、暑いッスね〜…」
「そうだけど、なんで立ちっぱなし? こっち座りなよ」

クスクスと笑われて苦笑いで返しながら、ポンと一回叩かれた荘二郎の隣へと悟は腰を降ろした。

「源治郎んとこ行かないんですか? きっとアイツ荘二郎さんに構って欲しいと思いますよ…?」
「いいんだよ。ほっとけば。それより悟君に話があってね」

話?と悟は首を傾けた。
カランと麦茶の中で小さくなった氷が音を立てた。荘二郎はコップを手に、うんと軽く頷く。

⏰:10/03/11 21:03 📱:S001 🆔:☆☆☆


#51 [我輩は人間である]

「源治郎の事どう思う?」
「源治郎?」

あっけらかんな質問に疑問符を頭に浮かべた。源治郎?

「大切な友達……、っていうか俺にとっては親友的な存在っていうか」

他に何があるのだろうと言う瞳で荘二郎を見た。
クイッとコップを傾けて麦茶を一口飲むと、荘二郎はどこか満足そうに笑みをこぼしてコップを机に戻した。

「それならいいや。じゃあさ、俺たち付き合おう」

⏰:10/03/11 21:11 📱:S001 🆔:☆☆☆


#52 [我輩は人間である]

一瞬相手の言ってる意味がわからず理解するまでに時間がかかった。
だが、理解した後にはもう遅かった。

男子高校生の中では比較的小柄な体はすっぽりとソファーに埋め込まれて、二つの華奢な手首は荘二郎の手によってソファーに縫い付けられている。

悟は数秒で自分自身にどんな事が起きたのか分かってハッと我に返った。

「そ、荘二郎さん?は、は…離してください」

荘二郎は悟の上に覆い被さるようにして動かない。

⏰:10/03/11 21:34 📱:S001 🆔:☆☆☆


#53 [我輩は人間である]

更に恐怖感を与えるように荘二郎は顔を近付ける。悟はそれに逃げるように首を左へと逸らして暴れる事もなく冷や汗を額からソファーへ垂らした。

「悟君がアイツの事そーゆー対象として見てないならいいじゃん。俺は悟君の事好きだし」

なんとも理不尽な事を言う。さっきまで優しいお兄さん位置にいた荘二郎の面影はない。

「今は悟君に嫌われそうだけど…。だんだん、ね?」

指先が首筋をかすめた。汗で濡れてワイシャツの下のTシャツが見える。チラリと見え隠れする鎖骨に荘二郎は生唾を飲んだ。

⏰:10/03/11 22:15 📱:S001 🆔:☆☆☆


#54 [我輩は人間である]

「…そっ、ッ…」

悟の開きかけた唇は荘二郎の唇に塞がれて、目を瞑ってただ受ける事しかできない悟は頭の隅で源治郎を思い出していた。

口の中に躊躇いもなく入ってくる荘二郎の舌に気持ち悪さを覚えながら源治郎の事ばかりが頭にちらついて。
ちらついてちらついて、離れなくなった。

されるがままの悟に荘二郎の手はシャツのボタンへと伸びていった。

「…………」

一個、二個とボタンを外していく手が急に止まる。

二回目の規則正しいインターホンがリビングに鳴り響いた。

⏰:10/03/11 23:00 📱:S001 🆔:☆☆☆


#55 [我輩は人間である]

源治郎だ。

「………?」

もう一度鳴らしてみるがやはり反応はない。
ドアに手をかけるとドラマのワンシーンのようにカチャッと簡単に開いた。
玄関に並んだ靴の中に兄がいつも履いている茶色の革靴が目に入って、
「おい荘二郎?悟?」
と声をかけるが二人の名前を呼んでも返事がない。その代わりにドン!と何の音がした。
どうやらリビングから音がするようだった。何回も同じような音が途切れて聞こえてくる。

「悟、いるのか?」

リビングのドアを開けると

「……チッ」
「………」

目の前には見たくない光景が広がっていた。

⏰:10/03/12 21:05 📱:S001 🆔:☆☆☆


#56 [我輩は人間である]

「悟」
「げんじろ……」

力のない声がより現実さを増させる。
目尻からはまた新しく水滴が溜まってしばらくすると肌を伝う。

最悪だ。一番見られたくない姿を見せてしまった事に悟は深く胸をえぐられた気分になった。
そんな気持ちとはおかまいなしに荘二郎は優越感たっぷりな表情で弟を見つめ

「お楽しみ中邪魔すんなよ。何?」

わざとらしく怪訝そうな顔で言った。

源治郎は暫く黙ってから二人のもとへ歩み寄って荘二郎を無理矢理引き剥がし床へと投げ倒した後、悟の腕を掴んだ。

⏰:10/03/12 21:15 📱:S001 🆔:☆☆☆


#57 [我輩は人間である]

「げんじろ、ッ」
「行くぞ」
「おいちょっと、待てよ!」

かけられている声を無視して震えている腕を起こすように引っ張って、悟をそのまま外に連れ出した。

手に力が入り掴まれたところがジンジンする。
源治郎は自分の部屋に連れていくなり壁に悟を押し付けた。

「、ッ……」
「どこまで行った」
「え…」
「どこまで行ったんだ。荘二郎と」

源治郎の何もかもを見透かされるような黒目はじっと悟を捉えて離さない。嫌がおうにも吸い込まれてしまいそうになるその瞳に目が離せなくなる。

⏰:10/03/12 23:43 📱:S001 🆔:☆☆☆


#58 [我輩は人間である]

「あ…源治郎…、」

胸が高まる。鼓動が早くなってドキドキする。
…なんでキスなんて……。

「しちゃったんだろ…」

袖で自分の口をゴシゴシと拭くとまた涙が出てきた。何度も何度も拭くもんだから少し痛くなって唇は赤くなってしまった。


「ひっく…うぇっ…う……」
その唇に親指をそっと添えて、顔をゆっくり近付けながら源治郎は名前を呼んだ。

「悟」
「うっ…ッ源治郎…!」

…キスして。

⏰:10/03/12 23:59 📱:S001 🆔:☆☆☆


#59 [我輩は人間である]

END

⏰:10/03/13 00:01 📱:S001 🆔:☆☆☆


#60 [我輩は人間である]

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4648/

良ければ感想など募集しています。

⏰:10/03/13 11:17 📱:S001 🆔:☆☆☆


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