無題【BL】
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#68 [我輩は人間である]

「隣座ってもいい?」
「あ、はいっ、どうぞ」

慌てて横にずれて教科書を閉じる。

「あ。勉強中ごめん。俺に構わず続けていいから」

少し掠れた声。遠くからしか聞こえなかったから間近で聞く彼の声はとても新鮮だ。
笑い声以外はあまり聞こえなかったので嬉しい。僕は静かに教科書を閉じた。

「いえ…た、たまたま読んでただけです」
「そっか。最近ずっといるよね?ココ」
「はい」

顔を見たいけど、見れない。緊張して話すのもぎこちないのに顔を向けるなんて滅相もない。
頑張ってチラッと横目で見てみると、少し猫背になって座っていた。初めて見た日と同じ格好だった。

⏰:10/03/14 04:25 📱:S001 🆔:☆☆☆


#69 [我輩は人間である]

服装から目線を上げていくと彼もこっちを見ていたらしく目が合って、その瞬間胸がドキッと高鳴って、思わず目を逸らしてしまった。
なんだか失礼かなと思って今度は顔を少し向けると。彼は口を開いた。

「名前は?高校生だよな?」
「うん、宮内優って言います」
「ミヤウチって普通に書いて…、」
「そう。それで優しいって書いて“すぐる”って読むんだ」

へぇ、と相づちを打ってから
「優しいで優か。なんかぽい」
「…そうかな?」

微笑んだ彼の目に笑い皺が出来る。柔らかい表情で笑う彼に、優しそうな人だと僕は改めて思った。

⏰:10/03/14 04:57 📱:S001 🆔:☆☆☆


#70 [我輩は人間である]

「俺は上木栄治。上の木に栄養の栄でさんずいの方の治る」
「上木さん…」
「上木さんてなんかムズムズすんなあ。高一…?」
「もうすぐ二年になります」
「んじゃ17?あれっ、16?」
「今年で17になります」
「そっか。俺19」

お互いの名前と年齢を教え合って、そこから色々話をした。

上木さんはマジックが大好きで将来はマジシャンになりたい事。
一人暮らし。今はバイトで生計を立ててるらしく、駅前のレンタルビデオ屋とファミレスの掛け持ちでアルバイトをしている事。(上木さん曰くボロアパートに住んでいるらしい)

⏰:10/03/14 05:22 📱:S001 🆔:☆☆☆


#71 [我輩は人間である]

話している間もドキドキは治まらなかった。それどころかどんどん鼓動が早くなってる気がして上木さんに聞こえてないかとハラハラしっぱなしだ。

「…そういえば子供たち、遅いですね」
「今日は遠足だから今頃お昼終わってゾウとか見てんじゃねーかな」
「そうだったんだ……。動物園かあ…」

そこで僕はハッとした。
「じゃあ今日はマジックやらないんですか…?」

少し残念ながらも尋ねると、上木さんは何を思ったのか僕の顔を見てからハハハッと軽く笑って、パーカーのポケットからトランプケースを出して今度は無邪気にニィッと笑った。

⏰:10/03/14 05:55 📱:S001 🆔:☆☆☆


#72 [我輩は人間である]

「あんたが俺のマジック見てたの知ってたし、今日も来るんじゃねぇかと思って」

束ねられたトランプをシャッフルする姿はやっぱりマジシャンを目指すだけの事はあるのか手際がいい。
二つの山を作ってパラパラと一枚交互に重ねてシャッフルするやつ。あれ…なんて言うんだっけ?
「ブリッジみたいな…」
「ブリッジ…?」

考えてるうちに心の声が勝手に出ていて上木さんは不思議そうに僕を見た。

「そのトランプのきり方、なんて言うのかなって…」
「ああ。リフトシャッフルっつーんだ」

ブリッジ…と呟きもう一度リフトシャッフルをし始めた上木さんは、パラパラと落ちてまとまっていくトランプを見る。

⏰:10/03/15 01:16 📱:S001 🆔:☆☆☆


#73 [下ネタの勇者]

「あー、橋にも見えっかも」

多分僕に合わせて言ってくれたんだと思うと申し訳なさ半分恥ずかしい。

束になったトランプを扇形に広げて自分に向けてくるのでよくわからず上木さんを見ると顎でクイッと広がったトランプを指した。どうやら引いてと言っているらしい。

「………」
引いたカードはハートの2。

「俺に見えないようによく覚えてからここに乗せて。んで気が済むまできっちゃって」

言われた通り一番上にカードを乗せたあと。受け取ってシャッフル。それを渡した。

「俺さぁ、魔法の目持ってっから一発で引いたカードわかるんだ」

⏰:10/03/15 06:35 📱:S001 🆔:☆☆☆


#74 [我輩は人間である]

上木さんはどれかな〜…と呟きながら一枚のカードを引いた。僕には裏面しか見えないので、どのカードを選んだのかよくわからない。

ワクワクしてじーっとカードを見つめた。

「引いたのは………コレだ!」
「…わ……、すごい!!当たってるっ」

ひっくり返されたカードに描いてあったのは二つの赤いハートと2の文字だった。

「これ記念にやるよ」
「え?…いいの?」

ほい、とカードを差し出されて遠慮しつつも受け取る。

「ありがとう…ございます」

僕が微笑んで、そしたら上木さんも微笑んだ。その瞬間、時間が止まった気がして息もうまく呼吸ができなくなった。
なんだろう。この感じ。

「こ、これからバイトなので!!」

居たたまれなくなって僕は鞄を手にお辞儀してから素早く公園を出た。

⏰:10/03/15 06:59 📱:S001 🆔:☆☆☆


#75 [我輩は人間である]

歩いてクールダウンを図ったはずなのに上木さんの事が頭に離れなくて落ち着くばかりか身体中が火照るように熱くなった。
ずっと持っていたハートの2を見ると上木さんの笑顔が頭に浮かんで離れない。

まだこの胸の高鳴りが何なのかはわからないし、明日も多分うまく話すことは出来ないだろう。
……っていうかまずは話しかけられるかが心配だ。


だけど明日も公園に行こう。

昨日はすいませんって謝ってマジックを見て、出来ることならもっと彼の笑顔を見たい。
出来ることならもっと上木さんの事を知りたい。


僕はもう一度ハートの2を見た。

⏰:10/03/15 07:16 📱:S001 🆔:☆☆☆


#76 [我輩は人間である]
END

⏰:10/03/15 07:17 📱:S001 🆔:☆☆☆


#77 [我輩は人間である]

【短編】※18
ギャップ

⏰:10/03/15 07:32 📱:S001 🆔:☆☆☆


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