君に告げる
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#1 [すー]
私は伝えなければならない
君に恋をし、君を愛していたことを
君は知っているはずだ
君の記憶に残らなくては君に愛されなければならない
何通もの手紙を破られ拒否されるならば
私は
:10/01/29 16:37
:F706i
:QwaWqOt6
#2 [すー]
夢をみた。
またアイツだった。
こっちをみていつものように笑っている。
ただ笑っている。
目線が合えばアイツは一気に無表情になって、私の横を通り過ぎる。
通り過ぎた瞬間、アイツは果てしない闇に落ちてしまう。
自己嫌悪と気味悪さで目が覚める。
そんな夢だ。
:10/01/29 16:41
:F706i
:QwaWqOt6
#3 [すー]
「おはよう、よく眠れた?」
カーテンが開かれる音がした後、少し枯れた声が聞こえた。
質問に答えず黙っていると、ため息とともに布団を一気にはがされた。
「いい加減起きないと遅刻しちゃうよ、瑠衣?」
:10/01/29 16:47
:F706i
:QwaWqOt6
#4 [すー]
体が冷たい空気に触れて、さらに機嫌が悪くなったのが自分でも分かった。体を起こし、制服の身だしなみを気にしている女の子をみた。
「分かってるよ、沙耶」
シャツを脱ぎながら言うと、やっぱり瑠衣の肌は綺麗だねと、うっとりした目を向けられた。
:10/01/29 17:17
:F706i
:QwaWqOt6
#5 [すー]
私が今いるこの場所は学校の女子寮だ。
「やっぱり、っていつみたのよ?」
「秘密」
沙耶は笑いながら言うと長い髪を1つに結び、鞄を取ると先に出て行った。
遅れないでね。と言い残して。
:10/01/29 17:25
:F706i
:QwaWqOt6
#6 [すー]
あと30分ぐらいで学校が始まる。
「ご飯食べ損ねた」
急ぐことなく、顔やら髪を整えて制服を着る。
購買で買えればいいか、と考えながら部屋をでた。
寮から学校は近い。
欠伸を隠しながら歩いていく。
同じ制服をきた女子は通り道にはもういなくて、遅刻するかもな。そう思った。
:10/01/29 17:36
:F706i
:QwaWqOt6
#7 [すー]
学校に入り、古ぼけた木の下駄箱をあけるとそこには三枚それぞれの柄の便箋が置いてあった。
『三橋瑠衣様へ』
多分ラブレター。
どれも同じような内容だろう。そう思いながらも三通の手紙を鞄に入れた。
チャイムはまだ鳴らなかった。
:10/01/29 17:47
:F706i
:QwaWqOt6
#8 [すー]
教室に向かうと廊下がざわついている。階段を上りきると、廊下には生徒が出ていた。もう時間はすぎているはずなのに。
そしてどうしてか、みんなヒソヒソと顔をしかめて話している。
何か良くないことが起こったのは分かった。
『って……分からないけど…』
『あそこから?』
『あ、三橋さんだ』
チラリと誰かと目があったけど気にせずに自分の教室へ向かった。
:10/01/29 18:03
:F706i
:QwaWqOt6
#9 [すー]
どうしたらいいか
どうしたら君の記憶にはっきりとより鮮明に私の存在が残るのか
ずっと考えていました。
三橋瑠衣さん
私はずっと考えていました。
:10/01/29 18:09
:F706i
:QwaWqOt6
#10 [すー]
教室に入ると重苦しい空気と共に誰かが泣いているしぐさが見えた気がした。
「瑠衣っ」
「遅れたけど、何かあったの?」
隣の席の田中葉津がオロオロとしながら私に話始めた。
:10/01/29 18:17
:F706i
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#11 [すー]
「桜田さんが……事故でっ……今病院にいるんだって」
桜田
桜田春代
異性からも同性からも好かれていた同じクラスの人気者。名の通り彼女の雰囲気は春のような穏やかさがあった。ふわふわした髪、白い肌、ぽってりとした桜色の唇。なにより彼女は桜が好きだ。
だからみんなは彼女のことを「春姫」やら「春の乙女」やらくさい名前で呼んでいた。
そんな桜田春代が事故にあった。
みんなの人気者のあの子が………ふと桜田の席を見た。
:10/01/29 19:38
:F706i
:QwaWqOt6
#12 [すー]
いつもだったら
彼女の席の周りには男女関係なく人がいた。
今は誰もいない。
あるのは重い空気。
「……死んだの?」
私の答えに葉津は首を横に振った。まだ分からないようだが、葉津の顔は死を連想させるくらい暗かった。
:10/01/29 19:47
:F706i
:QwaWqOt6
#13 [すー]
「席について、出席とるから」
いきなり教室に入ってきたのは担任の佐藤先生ではなく副担の村山先生だった。あまり見ない村山先生の登場にみんなの空気が一瞬止まった。
淡々と出席を取っていく村山先生。
そして、桜田春代が事故にあったことをみんなに伝えた。やはりまだ生死については分からないのか村山先生は口を濁しながら、ホームルームを終わらせ教室を出て行った。
:10/01/29 20:01
:F706i
:QwaWqOt6
#14 [すー]
ざわざわ
ざわざわ
教室はいつもよりうるさく、廊下はさらにざわめき、学校中が桜田春代の話題だった。
『あの春姫が…』
『笑顔が見れないのか』『なぜ春姫なんだ』
まだ死んだとは誰も言っていないのに、もはや桜田はいなくなってしまったように嘆き悲しまれていた。
:10/01/29 20:15
:F706i
:QwaWqOt6
#15 [すー]
「瑠衣知ってた?」
今は昼休み。寮で同室の沙耶と一緒にお弁当を食べている。
知ってた?と言うのは桜田のことだろう。
「知ってたというか…葉津に教えてもらった」
「ふーん、今日も手紙入ってたんでしょ?」
手紙…そう言えば今日は手紙が3通入っていたのを思い出した。本当は思い出したくなかったのだか、沙耶にそう言われて大人しく鞄から手紙を取り出した。
:10/01/29 20:26
:F706i
:QwaWqOt6
#16 [すー]
「今日は3通かー」
沙耶はニヤニヤしながら私を見た。そして呼んでごらんなよと目で言ってきた。
3枚の手紙はそれぞれの柄つきだった。
1つは動物の可愛らしいキャラクター
1つは桜の花びら
1つは一匹の黒猫
「もちろん春姫のから読むでしょ?」
ギクリと体が硬直した。今日の夢を思い出す。そういえばアイツは……
春代は闇に落ちていった。
:10/01/29 20:40
:F706i
:QwaWqOt6
#17 [すー]
呼んで×
読んで○
「いつものように破り捨てる訳にはいかないもんね、最後かも知れないし読んであげなよ」
案外冷たいことを言うものだと思いながら、今まで自分がやってきたことを振り返ると、自分も冷たい奴だと思った。
「…破り捨ててたの知ってたの?」
「ゴミ箱みた」
悪趣味な奴。そう思いながらも、桜の花びらの手紙を開けた。
:10/01/29 20:52
:F706i
:QwaWqOt6
#18 [すー]
三橋瑠衣さんへ
覚えていますか?
あなたが私に言ったことを。
忘れたと言うならもう一度だけ私を見て下さい。
私は覚えています。
ずっとあなたのことを忘れません。
気づいてください。
私はあなたのことを騙していないことを。
本当のことを。
あなたは分かっているはず。
いつでも待っています
桜田春代より
:10/01/29 21:04
:F706i
:QwaWqOt6
#19 [すー]
毎回毎回、春代は私に手紙を書いて、毎回毎回私は読みもせずにそれを破り捨てていた。
春姫はそれを知っていたのだろうか。
「破り捨てるの?」
「………さぁ」
沙耶の問に私はため息をつきながらもう一度手紙を読んだ。
綺麗な字。
なんで朝に手紙を置いてまた外へ出たのだろうか。
:10/01/29 21:14
:F706i
:QwaWqOt6
#20 [すー]
今まで破り捨ててきた手紙にも同じことが書かれてたのだろうか。
「瑠衣は、まだあのこと怒ってるの?」
「あのことって何?」
あのこととは何か知っているけど、知らないふりをした。
それを知ってか、沙耶はため息をついて私をみた。
「可哀想な春姫」
:10/01/29 21:23
:F706i
:QwaWqOt6
#21 [すー]
可哀想な春姫
確かに可哀想なのかもしれない。
手紙を読まれず、
許されず、
今にも命を落としそうな春姫。
でも、それでも私は悪くない。
:10/01/29 21:30
:F706i
:QwaWqOt6
#22 [すー]
「三橋っみっけ」
聞き覚えのある声に、振り向くとそこには幼なじみの村井和樹。
柔らかい微笑みで女子を虜にしている。
「沙耶も一緒か」
「あんたにやるご飯はないわよ」
沙耶は笑いながらいうと村井はむっとした表情をしながら近づいてきた。
「何か用?」
「あー夏休みさ、一緒に地元帰らない?」
村井は頭をポリポリ掻きながら照れくさそうに言った。
:10/01/29 21:48
:F706i
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#23 [すー]
「あんたって空気読めないの?それともただの馬鹿?」
「え?なんだよ沙耶!ただ一緒に帰る約束してるだけじゃん」
それが馬鹿なんだよと、あきれた顔をしながら私のほうをみた。
「今年はどうかな」
そう言うと村井はガックリと肩を落とした。そんな村井を見て沙耶は笑っている。
:10/01/29 22:09
:F706i
:QwaWqOt6
#24 [すー]
「ほらみて村井、瑠衣にはね今まで色んな子から今時ラブレターもらってるんだから」
沙耶はいつのまにか春姫以外の2つの手紙をヒラヒラと見せている。
「まじかよ?誰から?」
そんなこと教えないと分かっているのに村井は必死だ。
:10/01/29 22:23
:F706i
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#25 [すー]
そんな2人のやりとりを見ながら、やはり考えてしまうのは桜田春代のことだった。
彼女が死んだら
何か変わるのか。
何も変わらないのか。
『いつまでも待っています』
その文字を頭の中で繰り返した。
:10/01/29 22:33
:F706i
:QwaWqOt6
#26 [すー]
いつまでも×
いつも○
春姫と出会ったのは、桜咲く入学式でだった。
誰もが桜田春代を見ていた。
可愛い女の子。
誰からも愛されることを許された女の子。
中学校の頃にもの凄く可愛い子がいると聞いたことがあって、彼女を見たときは
あぁ、この子か。と確信した。
:10/01/29 22:46
:F706i
:QwaWqOt6
#27 [すー]
桜田春代と会話をしたのは沙耶を通してだった。
間近で春姫と呼ばれる女の子と見たときは、同性でもドキリとした。
本当に『春姫』という名にふさわしいと思った。
クラスは違うがいつのまにか沙耶がいなくなっても、暇があれば2人で話をするような仲になっていった。
気が合う友人だった。
:10/01/29 23:03
:F706i
:QwaWqOt6
#28 [すー]
寮でも一緒にいて不思議に思われるほど仲が良かったと思う。
だからあんなことも信じてしまったのかもしれない。
いや、冗談だということも分かっていた。
私は彼女の罠にはまっていたことを噂で知った。
:10/01/29 23:16
:F706i
:QwaWqOt6
#29 [すー]
私は春姫という可愛らしい呼び名とは違った呼ばれ方をされていたのを知っている。
『橋の上の君』
まったく意味が分からない呼び名だった。きっと三橋の橋からかけたのかなんてことをその時は思った。
『いいじゃない、橋の上の君』
春姫にそう呼ばれると、不思議とその名も悪くないかと思えた。
:10/01/29 23:41
:F706i
:QwaWqOt6
#30 [すー]
カサリと桜の花びらの柄をした手紙を閉じた。
ゆるい風が窓から入ってくる。
「春姫…死んじゃったらどうする?」
「あれ、村井は?」
沙耶の問を無視して、村井がどこに行ったか聞く。
もう春姫の話は聞きたくない。
考えたくない。
死んでしまったら死んでしまったで、彼女の話は終わりにしたい。
:10/01/29 23:48
:F706i
:QwaWqOt6
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