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#24 [コウ]
Title:look at (1)

初めにはっきり申し上げましょうか。あたくし、美しくなんてございません。言ってしまえば“不細工”という部類にございます。

擦れ違う人には後ろ指を差され、学校での友人もおりません。

あたくし、不細工なんでございます。

「あんた、綺麗な人だなぁ」

「はい?」



⏰:10/02/03 17:15 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#25 [コウ]
Title:look at (2)

今日もいつもと変わらず、学校で独りの一日を過ごし、帰り際に教室の花瓶の水を変えてきたところのこと。急に後ろから、聞き覚えのない男性の声が聞こえてまいりました。

「おぉ、やはりそうだ。後ろ姿が美しい人はすべてに置いて美しいようだ」

ちらりとあたくしの手元をに視線をやり、それからその方はジロジロと無遠慮にあたくしを眺めます。全く記憶にないその方はとても美しい男性で、まだ見慣れない西洋の洋服(確か“すーつ”と言ったかしら)を身に纏っておられました。



⏰:10/02/03 17:19 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#26 [コウ]
Title:look at (3)

どうやら新任の先生らしく、まだとても若々しい方でいらっしゃいます。失礼ながら同じ形の服をお召しになっている先生方よりも違和感が無く、寧ろ彼のすらりと伸びた背丈にはとても良く似合っていました。

「……おかしな方ですこと」

「おや、何故ですか」

あたくしは優雅に微笑むその彼から目を反らし、今さらながら着物の袖で顔を隠しました。だってあまりにも、彼が美しいから。羨ましいほど、純粋に澄んだ黒い瞳が醜いあたくしを映していると思うと、ひどく情けなくなってしまったのですもの。

⏰:10/02/03 17:22 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#27 [コウ]
Title:look at (4)

「何故お顔を隠されるのです。折角の美貌を出し惜しみする気ですか」

「おかしいわ。こんなあたくしを、その……き、きれい、だなんて」

自分で口にして更に心が沈みます。どうして自分で自分を貶めなければならないのでしょう。総てはこの異質で不細工な顔に問題があるのですが。

「何を言います。綺麗な人に綺麗と言って、何が悪い」

まるで舞台の役者様のように。彼は綺麗な顔をしかめて、大袈裟にそうおっしゃいました。

⏰:10/02/03 17:24 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#28 [コウ]
Title:look at (5)

「あたくしには、わかりません。どこを見て、きれい、だなんておっしゃっているのやら」

「綺麗だから綺麗と言ったんだ」

ああどうしましょう。からかわれているのかしら、全く話しが通じません。あたくしはどうしたものかと首を捻りました。

「では逆にお尋ねします。何故そこまでご自分を美しくないと、そうおっしゃるのです?」

なんて失礼な方でしょう。年頃の娘にそんなことをわざわざ尋ねるなんて。

⏰:10/02/03 17:25 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#29 [コウ]
Title:look at (6)

「ご覧になればわかりますでしょう?この髪も、肌も、目も、総て美しくない原因です」

あたくしはとても悲しくなってまいりました。目の奥がとても熱くなり、気付けば小さな泪が頬を伝っておりました。

「どうして泣いているのです」

「悲しいからに決まってます」

「どうして悲しいのですか」

少し慌てたようにそう尋ねるその人を、あたくしは睨んで差し上げました。

「あなたのような方にはわかりません。不細工な娘の心中など」

⏰:10/02/03 17:27 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#30 [コウ]
Title:look at (7)

あたくしがそう言って鼻を啜り上げると、彼はきょとんとした顔で目を瞬きし、一瞬の後に大きく声を上げて笑い出しました。なんて方でしょう。あたくしの悲しみは沸々とした怒りに変わり始めました。

「何がそんなにおかしいのですか!」

たまり兼ねてあたくしがついに声を荒げると、彼はふと真剣な顔であたくしとの距離を縮められました。

「おかしくてたまりません。あなたはご自分をご覧になったことはないのですか」

⏰:10/02/03 17:30 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#31 [コウ]
Title:look at (8)

彼はすぐにふわりと微笑み、彼はあたくしの肩に手を置きます。それは大きくて、とても温かい。あたくしの心臓は激しく鼓動を続けます。

「あなたは美しい」

「何をおっしゃっているのか」

「あなたはきっと、狭い世界に囚われている。誰も、あなたを良い目で見ないのでしょう。それに慣れてしまっている」

彼はするりとあたくしの髪に触れ、そっと指を絡めます。あまりにも優雅なその姿に、あたくしは目を奪われてしまいました。

⏰:10/02/03 17:31 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#32 [コウ]
Title:look at (9)

「髪は太陽の光の様なゴールド、瞳は空を映すブルー。肌は雪のように白く、唇は薔薇のように赤い」

今度はあたくしがきょとんとする番でございました。彼はそんなアタシをくるりと反転させ、暗くなった外を指差します。

「まるでドールの様なこの姿。“日本”ではまだ、異質でしょうが」





「ご両親は外国の方ですか?」

⏰:10/02/03 17:33 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


#33 [コウ]
Title:look at (10)

暗い窓の外。そのせいで電気が反射して、窓は鏡のようにあたくしを映します。あたくしが小さく頷くと、彼は笑って頷き返して下さいました。





「さぞ、お美しい方なんでしょうね」
そう言って微笑む彼が窓ガラスに映ります。やはりその優雅な笑みは、とても綺麗でございました。





look at
(さぁよくご覧、
この狭い世界を抜け出して)
(本当に美しいものは何だ?)



-end-

⏰:10/02/03 17:37 📱:SH02A 🆔:☆☆☆


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