記憶を売る本屋さん
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#107 [我輩は匿名である]
要の話を聞いて、晶は小さく笑う。
「やだなぁ、悲しくて泣いてたんじゃないよ?」
「わかってるけどさぁ、帰るまでずっと泣いてたから、どうしても心配になって」
「ありがとう。…私、最近前より元気だよ。長月くんのお陰で」
晶は嬉しそうに笑う。可愛らしい笑顔。
「…照れるじゃん」
「やめろよ、照れるから」
直人と要は同時に言った。
「ハモった…」
「でも、元気なんだったら、良かった」
:10/03/23 17:13
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#108 [我輩は匿名である]
「最近雨だったでしょ?だから、散歩できなくて。また会いに行きたいなぁとは、思ってたんだけど」
「そっか。じゃあちょうど良かったかな」
「うん。本当にちょうど良かったよ。…門にあいつがいたのは、ちょっと具合悪かったけど」
晶はちょっと苦笑いして、ふと後ろを向く。
その瞬間、曲がり角の影に誰かが隠れた。
「今のって…」
「ちょっと待ってて」
晶がそう言って、そこまで様子を見に行く。
「…やっぱりあんただったの」
晶の声が曇る。
:10/03/23 17:19
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#109 [我輩は匿名である]
「やっぱあいつか。おい、早く追い返しに行けよ」
直人の指示が聞こえたように、要が歩き出す。
来てみると、美代が後をつけてきていた。
「晶ちゃん、いいなぁ…。私も男のお友達欲しいな」
「知らないわよ、自分で作ればいいでしょ。さっさと帰りなさい」
「えー、いいじゃない。ちょっとだけ」
美代は「お願い!」と手を合わせる。
「悪いけど」
要が口を開く。
「後をつけて来るような人と、友達になる気はないから」
要は意外にも、きっぱりとそう断った。
:10/03/23 17:23
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#110 [我輩は匿名である]
「長月くん…」
「ちぇっ、つまんないの」
美代は怒ったように頬を膨らませて、プイッと背を向けて帰っていった。
「2度と来んなよ」
直人は美代の背中を睨みつける。
「…これで大丈夫だろ」
「…うん…」
困り果てたように、晶は力なく返事した。
「そんなに気にしなくても、あんな子相手にしないから、心配するなよ」
「…うん、わかった」
晶は笑って、大きく頷いた。
:10/03/23 17:28
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#111 [我輩は匿名である]
「そうだ、あいつに会わなくて済むように、今度いつ会うか決めとこう。場所も」
少し考えてから、要はそう提案した。
晶の顔が、ぱぁっと明るくなる。
いい考えだと、直人も頷く。
「うん、そうしよう!」
「よし、じゃあ…いつがいいかな?日曜日の方が、長い時間いれるよね」
「うん。じゃあ、次の日曜日にしよう!場所は…あ、初めて会った、あの場所がいい!」
晶は、自分がしゃがんでいた、あの場所を言っていた。
あそこなら、美代も知らないだろう。
「わかった。昼からでいいかな?」
「うん。ご飯食べてから」
:10/03/23 17:35
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#112 [我輩は匿名である]
「じゃあ、2時ごろ、2時ぴったりにしよう」
「うん!」
晶は楽しそうに、笑って大きく頷く。
待ち合わせなど、した事がないのかもしれない。
まるでデートの待ち合わせをしているような2人。
それを見ていて、直人も何だか嬉しくなってきた。
「じゃあ、次の日曜日の2時に、あの場所で」
「うん!絶対だよ!」
「うん」
要が頷くのを見てから、晶は手を振りながら帰っていった。
晶が見えなくなってから、直人の視界も暗くなった。
:10/03/23 17:39
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#113 [我輩は匿名である]
次の日曜日、つまり4月21日。2人が初めてデートする日。
「(…この日は、忘れずに読まないとな)」
直人は40年前の今日の話に一通り目を通す。
やはり、読んでいない日の事は書かれていなかった。
「(毎日ちゃんと読めって事か)」
直人は少し反省する。
ただ、話が急激に変わっていない事にはホッとした。
『自分に起きている事のように感じられる』
ネットで見たあの一言が、ふと頭の中をよぎった。
少しだけ、今の自分がそうなりつつある気がした。
:10/03/23 17:53
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#114 [我輩は匿名である]
要と晶の間を見守るのもいいが、直人はもう1つ肝心な事を思い出した。
「(…薫に謝ったほうがいいかなぁ…)」
直人は考えながら、携帯電話を開く。
しかし、誰からもメールはない。
「(…いや、意外と明日はいつも通りかもしれないな)」
直人はそんな変な期待を抱き、携帯電話を閉じた。
:10/03/23 17:57
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#115 [我輩は匿名である]
しかし、それはどうやら甘かったようだ。
朝少し早めに学校に着いたが、すでに薫は鞄だけを残し、教室内にはいなかった。
「はぁ…」
机に座って、何て謝ろうか考える。
すると。
「ねぇねぇ、水無月くん」
隣の席の女子が話しかけてきた。大橋怜奈。そんな名前だった気がする。
「…何か用…?」
「水無月くんって、月城くんと仲良いよね?」
こんな時に。お前は嫌味を言いたいのか。直人はその気持ちを抑えて「まぁ」とだけ返事をする。
:10/03/23 18:02
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#116 [我輩は匿名である]
「月城くんって、彼女いるの?」
何だこの女。直人は答えず、「何で?」と聞き返す。
「なんか、友達が月城くんの事好きらしくて」
「(…モテるんだな、あいつ)」
直人は若干ショックを受けつつ、「いないんじゃない?」と適当に返事をする。
「ふぅん、そっか」
「あ!」
昨日薫が女を連れていたのを、今思い出した。
しかし、すでに怜奈は席を離れ、教室を出てしまっていた。
「あぁ〜やっちまった…」
直人は頭を抱えて、机に突っ伏した。
:10/03/23 18:07
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