記憶を売る本屋さん
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#126 [我輩は匿名である]
「…やっぱりそうか」

「内容はまだ言えないけど、直人よりもずっと前にな」

「いつ?」

「中1の時」

「そんな早くから?」

「あぁ。読み終えるのに2年半かかった」

「そんなに…?」

全然知らなかった。ポーカーフェイスもいいところだ。

「死にたくならなかったのか?」

「いや、全然。元々俺には『目的』があったから」

⏰:10/03/23 19:01 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#127 [我輩は匿名である]
目的。直人は聞きたかったが、これはきっと答えないだろう。なぜかそんな気がした。

「その代わり」

薫が続ける。「初めて人を『殺してやりたい』と思った」

直人はドキッとした。

「なっ、何言い出すんだよ…!?」

「この間まで、ずっと考えてた。『あの女は今、どんな姿をしているのか』ってな」

「女なのか…?」

「あぁ。…でも、そんな事考えてる場合じゃないんだよな、俺」

その言葉の意味が、分からなかった。

聞きたかったが、どうしても聞けない。

薫の表情が、悲しそうに見えた。

⏰:10/03/23 19:06 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#128 [我輩は匿名である]
「…そっか、…悪かったな、いろいろ聞いて」

まだまだ話を聞きたい自分を抑えて、直人は話を終わらせた。

「何だよ、もういいのか?」

「あぁ、またぼちぼち聞いてくよ」

直人はいつも通り笑ってみせる。

「…本、読み続けるのか?」

薫がふと、そんな事を聞いてきた。

「…あぁ、実は一昨日まで怖くて読みたくなくなってたんだけど、読み始めたからには全部読もうと思ってる」

「…そうか」

薫はそれだけ言って、もう何も聞いては来なかった。

⏰:10/03/23 19:11 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#129 [我輩は匿名である]
直人はその日から毎日欠かさず本を読んだが、

特に大きな変化はなく過ぎていった。

薫の様子が気になったが、本人が本について何も語らないため、

直人も無理に聞く事は避けていた。

「…よし」

日曜日、直人は朝からジャージ姿で本を構えていた。

変化がない日々におさらばだ。

直人は鼻からふうっと深く息を吐き、

心を落ち着かせてから、ゆっくりと本を開いた。

⏰:10/03/24 10:46 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#130 [我輩は匿名である]
要はすでに、あの場所に着いていた。

デートは初めてなのか、そわそわしている。

「そんなにウロウロしないで、落ち着けよ」

直人はそう言いつつも、自分も少しドキドキしている。

美代がついて来ていないかが不安なところだが。

「…あ」

要が声を漏らす。

晶が走ってきている。

念のため後ろを確認するが、誰もついて来ていないようだ。

⏰:10/03/24 10:46 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#131 [我輩は匿名である]
「お待たせ」

「時間ちょうどだな。どうする?喫茶店でも行こうか」

「うん」

喫茶店。カフェじゃなくてか。直人は時代の変化をふと感じる。

「紅茶が美味しい所があるって聞いたんだ。行ってみよう」

「そうなんだ。私、紅茶大好きだよ」

「そりゃ良かった。…あの子はついて来てないよな?」

「大丈夫。見つからないように出て来たから」

「施設の人にも言ってきた?」

「昨日から言ってた」

⏰:10/03/24 10:47 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#132 [我輩は匿名である]
「万全だな」

直人と要は同時に言う。

晶はフフンと、誇らしげに笑っている。

「楽しみにしてたんだもん、邪魔されたくないもんね」

「うん。今日はいっぱいいろんな話をしよう」

「うん!」

晶は笑顔で大きく頷く。

「…ねぇ」

「ん?」

「…長月くんって、何かよそよそしいから…呼び方変えてもいい?」

晶はおずおずと申し出る。

⏰:10/03/24 10:47 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#133 [我輩は匿名である]
「いいねぇ、こういうの」

直人は2人が恋人同士に見えて仕方がない。

「本当だな。俺も何か考えていい?」

「うん、喫茶店に着くまでに決めよ」

晶にそう言われて、直人も一緒に考える。

「…やっぱ、呼び捨てかなぁ…でも、要なら“晶ちゃん”とか呼びそうだな」

「…要くん」

「…じゃあ、晶ちゃん」

やっぱりな。直人は予想通りの展開にちょっと笑う。

⏰:10/03/24 10:48 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#134 [我輩は匿名である]
また、2人もちょっと恥ずかしそうに笑い合う。

「なんか、友達って感じになったな」

「うん。…嬉しい」

晶は少し頬を赤くして小さく笑う。

「…可愛いな。最初は危なそうな奴だと思ってたけど、普通の女の子じゃん」

「友達って、俺が初めてなんだっけ」

「うん」

「何か嬉しいな。1番乗りだもんな」

「ははっ。喜んでもらえて私も嬉しい」

そんな、聞いている方が照れるようなやりとりをしているうちに、要の言っていた喫茶店に到着した。

⏰:10/03/24 10:49 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#135 [我輩は匿名である]
焦げ茶色のレンガで建てられた、ちょっと洋風の喫茶店。

中には多くの客が入っていたが、運良くまだ席が空いている。

店員に席へ案内され、2人は向かい合って座る。

「何頼む?」

「ミルクティーがいい」

「…それだけ?」

「私、あんまりお金持ってなくて」

「ちょっとぐらいなら、出せるよ」

要は若干不安そうながらも、ちょっとちょっと強めに言い張った。

おお、男前。直人は感心する。

⏰:10/03/24 10:49 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


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