記憶を売る本屋さん
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#131 [我輩は匿名である]
「お待たせ」

「時間ちょうどだな。どうする?喫茶店でも行こうか」

「うん」

喫茶店。カフェじゃなくてか。直人は時代の変化をふと感じる。

「紅茶が美味しい所があるって聞いたんだ。行ってみよう」

「そうなんだ。私、紅茶大好きだよ」

「そりゃ良かった。…あの子はついて来てないよな?」

「大丈夫。見つからないように出て来たから」

「施設の人にも言ってきた?」

「昨日から言ってた」

⏰:10/03/24 10:47 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#132 [我輩は匿名である]
「万全だな」

直人と要は同時に言う。

晶はフフンと、誇らしげに笑っている。

「楽しみにしてたんだもん、邪魔されたくないもんね」

「うん。今日はいっぱいいろんな話をしよう」

「うん!」

晶は笑顔で大きく頷く。

「…ねぇ」

「ん?」

「…長月くんって、何かよそよそしいから…呼び方変えてもいい?」

晶はおずおずと申し出る。

⏰:10/03/24 10:47 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#133 [我輩は匿名である]
「いいねぇ、こういうの」

直人は2人が恋人同士に見えて仕方がない。

「本当だな。俺も何か考えていい?」

「うん、喫茶店に着くまでに決めよ」

晶にそう言われて、直人も一緒に考える。

「…やっぱ、呼び捨てかなぁ…でも、要なら“晶ちゃん”とか呼びそうだな」

「…要くん」

「…じゃあ、晶ちゃん」

やっぱりな。直人は予想通りの展開にちょっと笑う。

⏰:10/03/24 10:48 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#134 [我輩は匿名である]
また、2人もちょっと恥ずかしそうに笑い合う。

「なんか、友達って感じになったな」

「うん。…嬉しい」

晶は少し頬を赤くして小さく笑う。

「…可愛いな。最初は危なそうな奴だと思ってたけど、普通の女の子じゃん」

「友達って、俺が初めてなんだっけ」

「うん」

「何か嬉しいな。1番乗りだもんな」

「ははっ。喜んでもらえて私も嬉しい」

そんな、聞いている方が照れるようなやりとりをしているうちに、要の言っていた喫茶店に到着した。

⏰:10/03/24 10:49 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#135 [我輩は匿名である]
焦げ茶色のレンガで建てられた、ちょっと洋風の喫茶店。

中には多くの客が入っていたが、運良くまだ席が空いている。

店員に席へ案内され、2人は向かい合って座る。

「何頼む?」

「ミルクティーがいい」

「…それだけ?」

「私、あんまりお金持ってなくて」

「ちょっとぐらいなら、出せるよ」

要は若干不安そうながらも、ちょっとちょっと強めに言い張った。

おお、男前。直人は感心する。

⏰:10/03/24 10:49 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#136 [我輩は匿名である]
「えっ、いいよいいよ。ミルクティーだけで十分」

「でも…」

「さっきお昼食べたばっかりだし、本当に大丈夫」

「そう?まぁ何か食べたくなったら言ってね」

「うん、ありがとう」

「…俺、ちょっとトイレ行って来る。もし注目聞かれたら俺もミルクティー頼んどいてもらっていい?」

「うん、わかった」

要は「ごめんな」と言って、トイレに席を立つ。

⏰:10/03/24 10:50 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#137 [我輩は匿名である]
「…ん?トイレ?」

直人はハッとする。

トイレには鏡がある。と言う事は、要の顔が映る。

『本当の世界の自分と同じ顔』

ネットでの書き込みを思い出した。

「えっ?ちょっと待てよ、俺そんな、まだ覚悟できてねーって!」

「はぁ…緊張してきた…」

直人が喚いている間に、要は息を深く吐きながらトイレに入ってしまっていた。

「ダメだダメだ!しっかりしろっ!」

要は目を閉じて、パチパチと両手で頬をたたく。

そして、鏡の前で目を開いた。

⏰:10/03/24 10:51 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#138 [我輩は匿名である]
「…!?」

直人は息を呑んだ。

やはりあの書き込みは本当だった。

どちらかというと釣り上がった感じの目に、筋の通った鼻。

そして何より、左頬の下の方にあるほくろ。

その全てが、直人と全く同じだ。

髪型は違っても、顔は直人そのものだった。

要が何か独り言を言っているが、全く耳に入ってこない。

あの書き込みが本当だということは、やはり長月要は…。

⏰:10/03/24 10:51 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#139 [我輩は匿名である]
いや、待てよ。直人は精一杯考える。

今は1977年。あっちは2017年。今要は16歳で1961年生まれ。

俺も16歳で、2001年生まれである。

2001-1977=24
24+16=40

つまり、要の寿命は40歳?早死に?

と言うことは、あと24年分も読み続けなければならないのか?

その前に、俺は何でこんな計算をしてるんだ?

あーもうわけがわからない!

でも、顔がここまでそっくりだと、他人とも思えない。

しかし、母親姓は北里だったはずだ。

⏰:10/03/24 10:53 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#140 [我輩は匿名である]
つまり、ご先祖様ではない。

薫か誰かに聞いてみるべきか?

いや、でも聞いてばっかりじゃなく、自分で暴いてみたい気もする。

でも、今はそんな事考えている場合でもない。

せっかくのデートなのに、こんな事は帰ってから考えろ!

しかし、頭がボーッとしてそんな気にもなれない。

自分の体なら、頭をぐちゃぐちゃに掻き乱しているところだ。

⏰:10/03/24 10:57 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


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