記憶を売る本屋さん
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#341 [我輩は匿名である]
「自分が欲しいものは絶対手に入れないと気が済まない。

でも、月城くんは香月さんを選んだ。

…だから、許せなかったんじゃない?」

「まぁ香月は結構ちっちゃいしな」

「そうだね、私は香月さんの方が可愛いと思うけど」

「可愛いっていうか、将来美人になりそうな顔だよな」

2人は「うんうん」と頷く。

「…だから『私より劣ってるくせに』とか言ってたのか」

「そういう事。ここまで大事になったのは初めてだよ。

もういい加減懲りて、こんな事しなくなるんじゃない?」

⏰:10/04/06 20:28 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#342 [我輩は匿名である]
「これ以上やったらもう人間失格だろ」

直人はため息をつきながら笑う。

「…さて、帰るか」

「そうだね」

直人と奏子は椅子から立ち上がり、一緒に家に帰っていった。

⏰:10/04/06 20:28 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#343 [我輩は匿名である]
「さーてさて…お?」

奏子と別れて1人で歩いていた直人は、ふと足を止める。

目の前を、ジャージを着た金髪の女性が歩いている。

飛鳥のようだ。

直人は早足で近づく。

斜め後ろくらいから顔を見ようと、前かがみで歩く。

「(やっぱりな)」

ジャージの女性は、やはり飛鳥だった。

「おい、金髪女」

直人はポンと、彼女の肩をたたく。

⏰:10/04/06 20:42 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#344 [我輩は匿名である]
飛鳥は足を止め、ゆっくりと振り向く。

彼女の顔を見て、直人は少し驚いた。

ひどく疲れたような、暗い表情。

「え、何…どうしたんだよ?…お前、最近元気ないぞ?」

直人は内心焦りながら、おどけて笑ってみせる。

が、飛鳥はにこりともしない。

彼女が笑わないのはいつもの事だが、今日はどう見ても様子がおかしい。

⏰:10/04/06 20:43 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#345 [我輩は匿名である]
「…あんたさぁ…」

飛鳥が静かに口を開く。

「…本読んでて、人間不信になった事ない…?」

「…は…?」

直人は首をかしげる。

「俺は、別に…ないけど…」

「……だろうね、あんたなら。…変な事聞いた、ごめん…忘れて」

飛鳥はそれだけ言って、またフラフラ歩きだす。

⏰:10/04/06 20:43 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#346 [我輩は匿名である]
「ちょ、ちょっと待てよ」

直人はとっさに、飛鳥の手を掴む。

しかし、飛鳥が素早くその手を振り払ってしまった。

「……ほっといて…。誰とも話したくない…」

直人は言葉が出なかった。

一体何があったのだろう…?

寂しげに見える飛鳥の背中を、直人はただ心配そうに見つめるしかできなかった。

⏰:10/04/06 20:44 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#347 [我輩は匿名である]
次から次へと問題が起きる。

薫の件がほとんど片付いたと思えば、今度は飛鳥の様子がおかしい。

ベッドの上で、直人はぼーっと考える。

『本を読んでて、人間不信になった事ない?』

あの言葉は一体何だったのだろう。

「(…あいつが…今そうなのかな…?)」

今まで普通に話していたのに、「誰とも話したくない」と言う。

彼女の話からすれば、本のせいでおかしくなったのは明らかだ。

⏰:10/04/06 20:44 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#348 [我輩は匿名である]
「(…あ!そういえば)」

直人は飛び起きて、机にほったらかしになっていた本を手にとる。

昨日は怜奈の一件で、本を見るのを忘れていた。

「あー、くそう…昨日何もなかったよな…?」

直人は何もなかった事を願いながら本を開く。

⏰:10/04/06 20:45 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#349 [我輩は匿名である]
要は直人と同じように、布団の上に寝転がっていた。

「…晶ちゃん、なんであんなに怒ってたんだろう…?」

部屋の中で1人呟く。

この間会いに行った時の、晶のあの態度。

直人と同じように、要もかなり気にしていた。

「(…そりゃそうだよな…。俺は…)」

こいつの生まれ変わりなんだから。

そう思いかけて、直人はふと、それを止めた。

⏰:10/04/06 20:45 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#350 [我輩は匿名である]
“本の中の自分”は、自分の前世の人間。

先に本を手にし、全て読み終えた薫が認めるのだから、ほぼ間違いない。

それでも、直人はどこか、それを認めたくなかった。

「俺の前世が要だろうが…俺は俺だ…」

心の中でそう呟いた後、変に複雑な気分になった。

「…もし明日も来なかったら、もう1回会いに行ってみよう」

「…この間来なかったんだから、明日も来るわけないだろ…」

要の言葉に、直人は呆れたように言い返す。

⏰:10/04/06 20:46 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


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