記憶を売る本屋さん
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#364 [我輩は匿名である]
直人には、薫の話がバカらしく聞こえて仕方がなかった。
「…お前って、そんな失礼な奴だっけ?」
直人はストレートに言い返す。
「そりゃお前、“お前より前の女の方が好きです”って言ってるようなもんだろ。
しかもあいつは、前の夫より“お前”が好きだって言ってくれてんだろ?
そりゃあ、香月が怒るのも無理ないだろ」
薫は「響子が怒っている」とまでは言わなかったが、直人はそこまで言い切る。
:10/04/07 11:04
:N08A3
:yPxyjGr2
#365 [我輩は匿名である]
「それに…名前忘れたけど、前の嫁はもう死んだんだぞ?
いつまでもその人ばっか考えてたってしょーがねぇだろ。
その人はその人、香月は香月だろ」
そして、言った自分もハッとする。
「直人…」
「そうだ!やっぱそうだよな!」
直人は自分で納得し、ガッツポーズをする。
「何…」
「わりぃ!自己解決したわ!じゃあな!」
直人は大声で言って、一方的に電話を切った。
:10/04/07 11:05
:N08A3
:yPxyjGr2
#366 [ま]
うっへーい

:10/04/07 16:47
:P04A
:tadRV.Mw
#367 [我輩は匿名である]
「あぁ…あれは…」
薫は『どう言えばいいのか』と首をかしげる。
“いつになったら、俺が優也だと気付いてくれるのか”
もしかしたら、自分が名前を呼ぶ事で全て思い出してくれるのではないか…。
そういう思いもあった。
しかしそれよりも、薫は“香月響子=長谷部今日子”としか思っていなかったのだ。
「…私は…“長谷部今日子”じゃなくて、“香月響子”って言ってほしかったな」
響子はぽつりと言った。
薫はきょとんとする。
:10/04/07 18:24
:N08A3
:yPxyjGr2
#368 [我輩は匿名である]
「…どういう意味?」
響子は少し淋しそうに下を向く。
「…だって、私は長谷部今日子じゃないから…」
響子が何を言っているのか、薫はわからなかった。
「…キョウコ…?」
「…月城くんの言う“キョウコ”は、どっちのキョウコなの?」
響子の言葉が、薫の胸に突き刺さる。
:10/04/07 18:25
:N08A3
:yPxyjGr2
#369 [我輩は匿名である]
「確かに、私は長谷部今日子の生まれ変わりだよ?
顔もそっくりだし、同じだと思われても仕方ないと思う。
でも、私は香月響子だよ。長谷部今日子じゃない」
響子はぎゅっと、自分の両手を握り締める。
「私は、優也と月城くんを同じ人だと思わない。
“霜月優也”の記憶を持ってるだけで、あなたは“霜月優也”じゃない。
…私は…私が好きなのは、…“月城薫”だよ」
響子の声が震えている。
薫は何も言えなかった。
:10/04/07 18:25
:N08A3
:yPxyjGr2
#370 [我輩は匿名である]
ベッドの上で携帯電話のバイブが鳴る。
手にとって見てみると、直人から電話がかかってきている。
「…出なよ、って言っても、ここでは電話出来ないけど」
響子はうつむいたまま言う。
「でも…」
「大事な用かもしれないよ。…私は、後でいいから」
響子は少し笑ってみせる。
が、薫の気持ちは電話どころではない。
:10/04/07 18:25
:N08A3
:yPxyjGr2
#371 [我輩は匿名である]
:10/04/07 18:28
:N08A3
:yPxyjGr2
#372 [我輩は匿名である]
薫は「何だったんだ…」と携帯電話を見つめる。
「(…“そりゃ怒るだろ”…か…。…そうだよな…)」
直人の言った事を、薫はもう1度思い返す。
そして、薫は来たときよりも早く車椅子を走らせて、病室に戻った。
響子は自分のベッドに転がっている。
「香月、ごめん」
帰って来て早々、薫は響子に頭を下げる。
響子は少し驚いたように起き上がる。
「…どうしたの?」
:10/04/07 18:31
:N08A3
:yPxyjGr2
#373 [我輩は匿名である]
「…俺…おかしかった」
響子は黙って、薫を見つめる。
「俺、香月響子と長谷部今日子は同じだと思ってた。
自分の事も、“俺は霜月優也だ”としか思ってなかった…。
だから正直…お前を“香月響子”だと思って接した事はない。
今までずっと、お前を“長谷部今日子”だと思って傍にいたんだ」
薫は、響子に嫌われる事を承知で、全て話した。
:10/04/07 18:32
:N08A3
:yPxyjGr2
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