記憶を売る本屋さん
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#378 [我輩は匿名である]
それを見て、薫は少し下を向いて笑った。
長谷部今日子は、こんなに言い返してくる性格ではなかった。
霜月優也は、そんなおしとやかな彼女が好きだった。
こんなくだらない言い合いをした事などない。
「(…確かに、あいつとは違うな…)」
「…何笑ってんの?」
少し顔を上げると、さっきまで怒っていた響子が、しゃがみこんでこちらを見上げている。
:10/04/07 18:44
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#379 [我輩は匿名である]
「…別に。何か面白くなっただけ」
薫はすました表情で言う。
響子も「…確かに」と返事をして笑う。
いつもの笑顔に、薫も何だかホッとして小さく笑い返した。
:10/04/07 18:44
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#380 [我輩は匿名である]
「そうだよな、要は要、俺は俺だよな!」
その頃、直人は清々しい気分でいっぱいになっていた。
携帯電話を枕元に放り投げ、寝転がる。
「(初めて薫に勝った気がするぞ…)」
今まで勉強でも運動でも薫に負けてきた直人は、大の字に寝転がってニヤける。
何だか自分に自信が湧いてきた。
さっきまでの不安も吹き飛ばして、早く明日にならないかと、直人は窓の外を見上げていた。
:10/04/07 22:00
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#381 [我輩は匿名である]
次の日。
直人はドキドキしながら本を見つめている。
果たして、晶との関係はどうなるのか。
深呼吸を1回して、直人は一気に本を開く。
:10/04/07 22:53
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#382 [我輩は匿名である]
要は早足でどこかへ向かっていた。
太陽はもうだいぶ高く上っている。
「えっ、何だよいきなり?どこ行ってんの?」
珍しく速く過ぎていく景色に、少し酔いそうになる。
「やっぱりおかしいよな…。何か怒ってたし…今日も結局来なかったし…」
要は小さく独り言を言いながら歩いていく。
「やっぱり来なかったのか…」
直人はため息をつく。
という事は、今は施設に向かっている途中なのだろう。
:10/04/07 22:54
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#383 [我輩は匿名である]
晶を説得しに行くのか、別れを告げるのか。
どうやら今日が正念場のようだ。
直人は思わず力む。
あの角を曲がれば、晶のいる養護施設だ。
要も直人も、ただ黙って突き進む。
そして。
「(いたいた…)」
晶は、今日は門の傍にボーッと座っていた。
:10/04/07 22:54
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#384 [我輩は匿名である]
「晶ちゃん」
いつになく、要は何の躊躇いもなく話し掛ける。
晶はそれに気付き、また背を向けようとする。
「逃げないでよ!」
要は思わず声を上げる。
晶はピタッと足を止める。
「俺、ちゃんと話がしたいんだ!だから、逃げないで!」
要は必死に晶を引き止める。
:10/04/07 22:55
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#385 [我輩は匿名である]
晶は突っ立ったまま何も言わない。
沈黙のまま、ただ時間が過ぎていく。
その間ずっと、要は晶の返事を待ち続ける。
「………ちょっと待ってて」
要の粘りに負け、晶はそう言って建物に入っていった。
しばらくして、晶が戻ってきた。
「…来て」
門から出るなり、晶は要の手を引っ張って連れ出す。
要も何も言わずに、言われた通りについていく。
しばらく歩いて、2人はあまり人通りの多くない通りに入った。
:10/04/07 22:55
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#386 [我輩は匿名である]
「…何?」
晶は視線も合わせずに尋ねる。
「…何でいきなり来なくなったの?俺ずっと待ってたのに」
要は少し苛立ったように聞き返す。
「『待ってた』?…うそ言わないでよ」
晶は笑う。
「あんたがそんな嘘つきだったなんて…最低」
「嘘なんかついてないよ!俺毎週…」
「知らない女の人と、楽しそうに歩いてたじゃない!!」
晶は声を荒げながら振り向く。
:10/04/07 22:55
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#387 [我輩は匿名である]
「…何の事?」
要は首をかしげる。
しかし、直人は「あ…!」と声を上げた。
晶が言っているのは、きっと道案内を頼まれたあの日の事だ。
「あれは…!」
要も直人と同時に気付き、事情を説明しようとする。
しかし晶は冷たい視線を送ってそれを止める。
「そりゃ、私みたいな子といるよりも、あんな美人な人といる方が楽しいよね」
「違うよ!あの人は…」
:10/04/07 22:56
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