記憶を売る本屋さん
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#31 [我輩は匿名である]
「…本」
直人はドキッとする。
いつの間にか下を向いていた顔を上げれば、薫が机に肘をついて、笑みを浮かべていた。
「…なんで…」
「当たりか」
「お前、何か知ってんのか…!?」
直人は机に手をついて、薫に問いかける。
「……別に何も知らねぇよ」
薫はそう言ったが、直人は気付いていた。返事をするまでに、少し間があった事に。
「っていうか、もらったのか?その、『呪いの本』みたいな本」
「…うん…」
直人はしぶしぶ頷く。
:10/03/22 17:28
:PC
:W0uoRcww
#32 [我輩は匿名である]
「そんなのいつもらったんだよ?今日?」
「…昨日。お前が弁当箱取りに行ってる間に」
「やっぱりな…。腹痛じゃないな、とは思ってたけど」
薫は呆れたように息をつく。
「で、それどんな本なんだよ?俺見ても大丈夫?」
昨日は興味なさそうな素振りをしていたのに、やっぱり見たいのか。
なんかちょっと不満ながらも、直人はとりあえず鞄に入れて持って来ていた本を取り出し、机に置く。
「…何だ、これ」
「本」
「見りゃ分かる。…何も書いてないな」
表紙を見て、薫は首をひねる。
:10/03/22 17:34
:PC
:W0uoRcww
#33 [我輩は匿名である]
「中身もさぁ…」
直人は本を開こうと手をかける。しかし、ぴたっと動きを止めた。
このまま開けば、薫まで変な時代に飛ばされるのではないか…。
そう思うと、開く気が引けてきてしまった。
「…何だよ、大丈夫だって!本読んだぐらいで死ぬかよ」
直人の心配をよそに、薫は直人の手を払いのけて本を開いてしまった。
「うわっ!ばかやろう!!」
直人は大袈裟に、眩しそうに手でブロックしながら目をつぶった。…が。
「…あれ?」
何も起きない。直人の慌てっぷりに、薫が声をあげて笑っている。
「何!?何だよお前!!本っ当変な奴」
「うるせぇ!!」
言い合いをしながら、2人で本に目をやる。
:10/03/22 17:42
:PC
:W0uoRcww
#34 [我輩は匿名である]
中身は、昨日直人が見た状態そのままだった。
「(はぁ…良かった…)」
直人は、心配して損した、と肩の力を抜いてうなだれる。
「変だろ?そんだけしか…」
とりあえずタイムスリップは後で説明しようと思った直人は、呆れ笑いしながら薫を見る。
そして、自分の目を疑った。
本を読む薫の目が、今までに見た事の無いほど冷たく、影を背負っていたからだ。
眉間にしわを寄せ、口を真一文字に閉め、まるで何かを憎んでいるような表情。
薫のこんな顔は、16年間付き合ってきて初めてだ。
「…おい…」
「…石川…晶…」
薫が小声で呟いた。
:10/03/22 17:52
:PC
:W0uoRcww
#35 [我輩は匿名である]
だんだん恐ろしくなってきた直人は、無理やり本を閉じた。
「…なんだよ?まだ読んでたのに」
目線を上げてそう言う時には、薫の表情はいつもの薫に戻っていた。
「いや…なんか、やっぱ怖くなっちゃってさ」
直人は苦笑して言う。怖いのは本ではなく、薫の方だったが。
「そうかぁ?でもほら、見ても何ともないだろ」
薫は両手を広げてにっこり笑ってみせる。
さっきのは、気のせいだったのだろうか?
「ま、見せたくないなら、無理に見せてくれなくてもいいけどさ。
その代わり、なんかあったらすぐ言えよ」
「…おう。サンキュ。俺、ちょっとトイレ行って来るわ」
「あぁ」
直人は本を鞄にしまい、席を立った。彼は知らなかった。
背中を見送る薫の顔が、さっきの憎しみのこもった表情に戻っていた事に。
:10/03/22 17:59
:PC
:W0uoRcww
#36 [我輩は匿名である]
続き楽しみにしてます^^
:10/03/22 21:06
:W65T
:XgEtkN3Q
#37 [我輩は匿名である]
著者です。パソコン付けるのめんどくさいので、ケータイから失礼します。
>>36さん
ありがとうございます


今からまたちょっと進めます


:10/03/22 22:25
:N08A3
:d1RCppyk
#38 [我輩は匿名である]
結局、タイムスリップの事は薫には話せなかった。
それどころか、薫にはあの本の話し自体しない方がいいかもしれない、とさえ思った。
制服のままベッドに寝転んで、直人は本を見つめる。
なぜ薫と見た時は何も起きなかったのだろう?
直人は起き上がり、あぐらをかく。
そして、何気なく開いてみた。
「えっ!?」
昨日と同じように、直人はあのまばゆい光に包まれた。
:10/03/22 22:27
:N08A3
:d1RCppyk
#39 [我輩は匿名である]
「なんでぇーっ!?」
そう言った時には、すでに声が出なくなっていた。
気付けば、後ろの方でチャイムが鳴り、周りは下校中らしい生徒で溢れていた。
「実力試験、どうだった?」
隣にいた友人らしい男子が話しかけてくる。
「全然だめ。勉強しておけば良かったなぁ…」
この声は長月要だ。直人はすぐに気付いた。
「また来たのかよ!?」
覚悟が出来ていなかった直人は、呆然とする。
しかしまぁ、勝手に元に戻れるのならと考えると、昨日よりは気が楽だ。
:10/03/22 22:28
:N08A3
:d1RCppyk
#40 [我輩は匿名である]
「あ!」
要と直人が声を上げたのは、同時だった。
視線の先には、制服姿で1人で歩く石川晶がいた。
「ちょっと知り合い見つけたから、先帰ってて」
「へ?あぁ…」
要は「ごめんな」と手を合わせて、走りだす。
「石川さん!」
要の声に、晶は振り向く。
要を見て、憂うつそうな顔がパッと明るくなる。
「長月くん!」
「今帰り?」
「うん、ちょっとブラブラしてから帰ろうかと思って」
:10/03/22 22:29
:N08A3
:d1RCppyk
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