記憶を売る本屋さん
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#547 [我輩は匿名である]
「…手、大丈夫?」
帰り道、飛鳥がおずおずと尋ねた。
「あ?あぁ、これ?まぁ大丈夫じゃねーの?わかんねぇけど」
「どっかで洗ったら?…ちょうどそこに公園あるし」
飛鳥が指差した先には、姫崎公園があった。
直人は「あっ」と、ある事を思い出す。
「何?」
「そう、お前に…つーか、本当は要が晶にいうつもりだったんだけど」
飛鳥は首をかしげる。
:10/04/13 17:28
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#548 [我輩は匿名である]
「あれ、本当に道案内だったんだからな。
美代が『来週行けないって言ってた』とかほざいてたけど、要は…」
「美代が?」
飛鳥はムッとして、眉間にしわを寄せる。
「…やっぱり嘘だったのか…」
直人は大きくため息をつく。
「あいつがそう言いに来たの?」
:10/04/13 17:28
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:Zq6n1SuI
#549 [我輩は匿名である]
「そう。でも“もしかしたら晶は来るかもしれない”と思って、要も行ったんだ。
で、途中で道聞かれて、一旦待ち合わせ場所に晶がいないか、ちゃんと見に行ったんだよ。
でもやっぱりいなかったから、案内しようってなったわけ」
「…そうだったんだ…」
晶は後悔し、肩を落とす。
「ま、美代にまんまと騙されたってわけだ、俺たちは」
公園に着き、水道の前に直人が腰を下ろす。
:10/04/13 17:29
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#550 [我輩は匿名である]
「…ごめんね」
飛鳥も、直人の左後ろにしゃがみこむ。
「私が…私があの時、ちゃんと話を聞いてたら…
こんな事にならずに済んだのに…」
直人は黙って手を洗いながら、背後からのすすり泣きを聞く。
「…まぁ、この方が良かったのかもしれねぇけど」
直人はぼそっと、飛鳥に背を向けたまま言った。
:10/04/13 17:29
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#551 [我輩は匿名である]
「だってお前、要がいればそれでいいって思ったままだっただろ?
それってダメなんじゃねぇのって思って。
あいつはどうか知らねぇけど、俺はそう思う」
飛鳥は顔を上げ、直人の背中を見つめる。
「…要は謝られるよりも、友達に囲まれて楽しそうにしてるの見る方が嬉しいんじゃない?
あんなのんきな性格だったし、多分その方が、あいつもホッとするだろ」
「……うん」
飛鳥は涙を拭い、大きく頷いた。
:10/04/13 19:45
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#552 [我輩は匿名である]
「…帰るか」
蛇口を閉めて、直人は立ち上がる。
それを見て、飛鳥も立って歩きだした。
「…そういえば、要が見た案内してた女の人いるじゃん?
あの人も晶と同じように、養護施設で育ったんだって」
思いもよらない話に、飛鳥は直人を見る。
「そうなの?」
:10/04/13 19:45
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#553 [我輩は匿名である]
「うん。で、お前にその女の人から伝言」
「伝言?」
「『“施設で育とうが親の元で育とうが、どっちが良い”なんてない。
他の人との間に壁を作らずに、一歩踏み込んでみろ。』……ってな。
ちなみにあの時は、友達の家に遊びに行く途中だったらしい」
「……そっか…」
飛鳥は再び、少し下を向く。
:10/04/13 19:46
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:Zq6n1SuI
#554 [我輩は匿名である]
「……やっぱり、怖かったんだ。
誰かを信じようとしても、また捨てられたらどうしようって…。
そう思ったら、なんかすごい怖かったんだよ」
直人の隣で、飛鳥は言う。
「…そりゃ、生みの親に捨てられたんだから、人間不信にもなるだろうな」
「うん…。でも要は何となく…本当に何となく、ずっと友達でいてくれる気がしたし、
一緒にいる時は、嫌な事全部忘れられたぐらい、楽しかった。
…だからその分、要が待ち合わせに来ずに、女の人連れて歩いてるの見たら…
ショックすぎて、もうわけわかんなくなって…」
:10/04/13 19:46
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#555 [我輩は匿名である]
飛鳥はため息を吐きながら、両手で髪をかきあげた。
「…ま、そんだけ友達の大事さわかってるんなら、大丈夫なんじゃね?
俺達の学年で女子150人ぐらいいるんだし、いい奴みつかるよ、多分」
平然と言う直人を、飛鳥は横目で見つめる。
「……あんた、何でそんな前向きなの?」
そう言われて、直人は「さぁ〜?」と首をかしげる。
「要がそうだったからじゃない?能天気と言うか何と言うか…」
「あー、あんたそんな感じだね。バカっていうかなんというか」
「はぁ?」
:10/04/13 19:47
:N08A3
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#556 [我輩は匿名である]
「何よ。バカはバカでしょ?」
「お前に言われたくねぇよ」
「ま、横にいる子が頭良いし、運動も出来そうだし、イケメンだもんね。仕方ないか」
「黙ってれば調子に乗りやがって!」
直人は飛鳥に食って掛かる。
「だって本当の事じゃん!!」
飛鳥は言いながら、逃げるように走りだす。
:10/04/13 19:47
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