記憶を売る本屋さん
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#121 [我輩は匿名である]
「悪かった!!!」
昼休みになるやいなや、直人は薫の元に謝りに行った。
急に手を合わせて謝ってきたため、薫はきょとんとする。
「…そのぉ〜、昨日は俺ちょっとイライラしてて、おまけに女連れてるし、何かモテるみたいだし?
なんか余計に腹立ってきて、っていうか今もあんまりスッキリしてないけど」
「謝る気あるのか?お前」
謝っているのか皮肉っているのかわからない直人に、薫も言い返す。
「っていうか、『モテるみたい』ってどこ情報?」
「俺情報」
「はぁ?」
:10/03/23 18:37
:PC
:pMFPl9Gs
#122 [我輩は匿名である]
「いや、あの…今日の朝、大橋に『友達が月城くんの事好きらしいんだけど、彼女いるのかなぁ?』って聞かれたから…」
ちょっと困った顔で話し始めた直人に、薫は眉をひそめる。
「で、お前、何て言ったんだ?」
「い…いないんじゃねーの…って、言いました」
謝るように頭を垂れて、直人は答えた。
薫は呆れ笑いしながらため息をつく。
「…まぁ、いないのは事実だしな」
「『今は』だろ?」
直人もおちょくるように言い返す。
「つーか、あの子誰?」
「4組の香月 響子」
:10/03/23 18:42
:PC
:pMFPl9Gs
#123 [我輩は匿名である]
「いつから仲良くなっちゃったわけ?」
「直人が本をもらった次の次の日」
「何でまた」
「屋上に行ったらいたんだよ。それで」
「屋上?何で屋上なんか」
「何となく、行ってみたかったんだよ」
直人のまるで尋問のような問いかけに、薫は1つ1つ短く答えていく。
「俺からも聞くけどさぁ」
「何?」
今度は薫が、弁当箱を開けながら尋ねる。
「大橋って誰?」
「…お前、それはちょっとひどいだろ」
:10/03/23 18:47
:PC
:pMFPl9Gs
#124 [我輩は匿名である]
直人はちょっと呆れ返る。
「あいつ。1番こっち向いてる奴」
気付かれないように、直人は女子の1グループを指をさす。
こっそり目をやって、薫は「あぁ」と思い出すように声を漏らした。
「知ってただろ?」
「風紀委員同じだった」
「…それ余計にひどくないか?」
「他の女に興味ないの」
薫のその一言に、直人はあんぐりする。
「調子に乗るなよお前…」
「何だ?またやんのか?次は手ぇ抜かねぇぞ」
真顔で2人はにらみ合う。
が、今度は流石におかしかったのか、2人とも笑い出した。
:10/03/23 18:52
:PC
:pMFPl9Gs
#125 [我輩は匿名である]
「あーあ、喧嘩なんかするもんじゃないな」
「ホント、つまんねぇ喧嘩だったなぁ」
2人は息をつきながら弁当箱をつつく。
「…ところで、どうしても聞きたい事があるんだけど」
改まって、直人が口を開く。
もうわかっていたのか、薫も堪忍したように笑う。
「『俺が本を持っているのか』、か?」
「うーん、まぁ、そうかな。それが1番聞きたいのかも」
たくさん聞きたい事があったのに、今はそれしか出てこなかった。
しばらく考え、薫は答える。
「あぁ、持ってる」
:10/03/23 18:56
:PC
:pMFPl9Gs
#126 [我輩は匿名である]
「…やっぱりそうか」
「内容はまだ言えないけど、直人よりもずっと前にな」
「いつ?」
「中1の時」
「そんな早くから?」
「あぁ。読み終えるのに2年半かかった」
「そんなに…?」
全然知らなかった。ポーカーフェイスもいいところだ。
「死にたくならなかったのか?」
「いや、全然。元々俺には『目的』があったから」
:10/03/23 19:01
:PC
:pMFPl9Gs
#127 [我輩は匿名である]
目的。直人は聞きたかったが、これはきっと答えないだろう。なぜかそんな気がした。
「その代わり」
薫が続ける。「初めて人を『殺してやりたい』と思った」
直人はドキッとした。
「なっ、何言い出すんだよ…!?」
「この間まで、ずっと考えてた。『あの女は今、どんな姿をしているのか』ってな」
「女なのか…?」
「あぁ。…でも、そんな事考えてる場合じゃないんだよな、俺」
その言葉の意味が、分からなかった。
聞きたかったが、どうしても聞けない。
薫の表情が、悲しそうに見えた。
:10/03/23 19:06
:PC
:pMFPl9Gs
#128 [我輩は匿名である]
「…そっか、…悪かったな、いろいろ聞いて」
まだまだ話を聞きたい自分を抑えて、直人は話を終わらせた。
「何だよ、もういいのか?」
「あぁ、またぼちぼち聞いてくよ」
直人はいつも通り笑ってみせる。
「…本、読み続けるのか?」
薫がふと、そんな事を聞いてきた。
「…あぁ、実は一昨日まで怖くて読みたくなくなってたんだけど、読み始めたからには全部読もうと思ってる」
「…そうか」
薫はそれだけ言って、もう何も聞いては来なかった。
:10/03/23 19:11
:PC
:pMFPl9Gs
#129 [我輩は匿名である]
直人はその日から毎日欠かさず本を読んだが、
特に大きな変化はなく過ぎていった。
薫の様子が気になったが、本人が本について何も語らないため、
直人も無理に聞く事は避けていた。
「…よし」
日曜日、直人は朝からジャージ姿で本を構えていた。
変化がない日々におさらばだ。
直人は鼻からふうっと深く息を吐き、
心を落ち着かせてから、ゆっくりと本を開いた。
:10/03/24 10:46
:N08A3
:vv1d3OC.
#130 [我輩は匿名である]
要はすでに、あの場所に着いていた。
デートは初めてなのか、そわそわしている。
「そんなにウロウロしないで、落ち着けよ」
直人はそう言いつつも、自分も少しドキドキしている。
美代がついて来ていないかが不安なところだが。
「…あ」
要が声を漏らす。
晶が走ってきている。
念のため後ろを確認するが、誰もついて来ていないようだ。
:10/03/24 10:46
:N08A3
:vv1d3OC.
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