記憶を売る本屋さん
最新 最初 🆕
#122 [我輩は匿名である]
「いや、あの…今日の朝、大橋に『友達が月城くんの事好きらしいんだけど、彼女いるのかなぁ?』って聞かれたから…」

ちょっと困った顔で話し始めた直人に、薫は眉をひそめる。

「で、お前、何て言ったんだ?」

「い…いないんじゃねーの…って、言いました」

謝るように頭を垂れて、直人は答えた。

薫は呆れ笑いしながらため息をつく。

「…まぁ、いないのは事実だしな」

「『今は』だろ?」

直人もおちょくるように言い返す。

「つーか、あの子誰?」

「4組の香月 響子」

⏰:10/03/23 18:42 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#123 [我輩は匿名である]
「いつから仲良くなっちゃったわけ?」

「直人が本をもらった次の次の日」

「何でまた」

「屋上に行ったらいたんだよ。それで」

「屋上?何で屋上なんか」

「何となく、行ってみたかったんだよ」

直人のまるで尋問のような問いかけに、薫は1つ1つ短く答えていく。

「俺からも聞くけどさぁ」

「何?」

今度は薫が、弁当箱を開けながら尋ねる。

「大橋って誰?」

「…お前、それはちょっとひどいだろ」

⏰:10/03/23 18:47 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#124 [我輩は匿名である]
直人はちょっと呆れ返る。

「あいつ。1番こっち向いてる奴」

気付かれないように、直人は女子の1グループを指をさす。

こっそり目をやって、薫は「あぁ」と思い出すように声を漏らした。

「知ってただろ?」

「風紀委員同じだった」

「…それ余計にひどくないか?」

「他の女に興味ないの」

薫のその一言に、直人はあんぐりする。

「調子に乗るなよお前…」

「何だ?またやんのか?次は手ぇ抜かねぇぞ」

真顔で2人はにらみ合う。

が、今度は流石におかしかったのか、2人とも笑い出した。

⏰:10/03/23 18:52 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#125 [我輩は匿名である]
「あーあ、喧嘩なんかするもんじゃないな」

「ホント、つまんねぇ喧嘩だったなぁ」

2人は息をつきながら弁当箱をつつく。

「…ところで、どうしても聞きたい事があるんだけど」

改まって、直人が口を開く。

もうわかっていたのか、薫も堪忍したように笑う。

「『俺が本を持っているのか』、か?」

「うーん、まぁ、そうかな。それが1番聞きたいのかも」

たくさん聞きたい事があったのに、今はそれしか出てこなかった。

しばらく考え、薫は答える。

「あぁ、持ってる」

⏰:10/03/23 18:56 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#126 [我輩は匿名である]
「…やっぱりそうか」

「内容はまだ言えないけど、直人よりもずっと前にな」

「いつ?」

「中1の時」

「そんな早くから?」

「あぁ。読み終えるのに2年半かかった」

「そんなに…?」

全然知らなかった。ポーカーフェイスもいいところだ。

「死にたくならなかったのか?」

「いや、全然。元々俺には『目的』があったから」

⏰:10/03/23 19:01 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#127 [我輩は匿名である]
目的。直人は聞きたかったが、これはきっと答えないだろう。なぜかそんな気がした。

「その代わり」

薫が続ける。「初めて人を『殺してやりたい』と思った」

直人はドキッとした。

「なっ、何言い出すんだよ…!?」

「この間まで、ずっと考えてた。『あの女は今、どんな姿をしているのか』ってな」

「女なのか…?」

「あぁ。…でも、そんな事考えてる場合じゃないんだよな、俺」

その言葉の意味が、分からなかった。

聞きたかったが、どうしても聞けない。

薫の表情が、悲しそうに見えた。

⏰:10/03/23 19:06 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#128 [我輩は匿名である]
「…そっか、…悪かったな、いろいろ聞いて」

まだまだ話を聞きたい自分を抑えて、直人は話を終わらせた。

「何だよ、もういいのか?」

「あぁ、またぼちぼち聞いてくよ」

直人はいつも通り笑ってみせる。

「…本、読み続けるのか?」

薫がふと、そんな事を聞いてきた。

「…あぁ、実は一昨日まで怖くて読みたくなくなってたんだけど、読み始めたからには全部読もうと思ってる」

「…そうか」

薫はそれだけ言って、もう何も聞いては来なかった。

⏰:10/03/23 19:11 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#129 [我輩は匿名である]
直人はその日から毎日欠かさず本を読んだが、

特に大きな変化はなく過ぎていった。

薫の様子が気になったが、本人が本について何も語らないため、

直人も無理に聞く事は避けていた。

「…よし」

日曜日、直人は朝からジャージ姿で本を構えていた。

変化がない日々におさらばだ。

直人は鼻からふうっと深く息を吐き、

心を落ち着かせてから、ゆっくりと本を開いた。

⏰:10/03/24 10:46 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#130 [我輩は匿名である]
要はすでに、あの場所に着いていた。

デートは初めてなのか、そわそわしている。

「そんなにウロウロしないで、落ち着けよ」

直人はそう言いつつも、自分も少しドキドキしている。

美代がついて来ていないかが不安なところだが。

「…あ」

要が声を漏らす。

晶が走ってきている。

念のため後ろを確認するが、誰もついて来ていないようだ。

⏰:10/03/24 10:46 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#131 [我輩は匿名である]
「お待たせ」

「時間ちょうどだな。どうする?喫茶店でも行こうか」

「うん」

喫茶店。カフェじゃなくてか。直人は時代の変化をふと感じる。

「紅茶が美味しい所があるって聞いたんだ。行ってみよう」

「そうなんだ。私、紅茶大好きだよ」

「そりゃ良かった。…あの子はついて来てないよな?」

「大丈夫。見つからないように出て来たから」

「施設の人にも言ってきた?」

「昨日から言ってた」

⏰:10/03/24 10:47 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194