記憶を売る本屋さん
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#381 [我輩は匿名である]
次の日。

直人はドキドキしながら本を見つめている。

果たして、晶との関係はどうなるのか。

深呼吸を1回して、直人は一気に本を開く。

⏰:10/04/07 22:53 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#382 [我輩は匿名である]
要は早足でどこかへ向かっていた。

太陽はもうだいぶ高く上っている。

「えっ、何だよいきなり?どこ行ってんの?」

珍しく速く過ぎていく景色に、少し酔いそうになる。

「やっぱりおかしいよな…。何か怒ってたし…今日も結局来なかったし…」

要は小さく独り言を言いながら歩いていく。

「やっぱり来なかったのか…」

直人はため息をつく。

という事は、今は施設に向かっている途中なのだろう。

⏰:10/04/07 22:54 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#383 [我輩は匿名である]
晶を説得しに行くのか、別れを告げるのか。

どうやら今日が正念場のようだ。

直人は思わず力む。

あの角を曲がれば、晶のいる養護施設だ。

要も直人も、ただ黙って突き進む。

そして。

「(いたいた…)」

晶は、今日は門の傍にボーッと座っていた。

⏰:10/04/07 22:54 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#384 [我輩は匿名である]
「晶ちゃん」

いつになく、要は何の躊躇いもなく話し掛ける。

晶はそれに気付き、また背を向けようとする。

「逃げないでよ!」

要は思わず声を上げる。

晶はピタッと足を止める。

「俺、ちゃんと話がしたいんだ!だから、逃げないで!」

要は必死に晶を引き止める。

⏰:10/04/07 22:55 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#385 [我輩は匿名である]
晶は突っ立ったまま何も言わない。

沈黙のまま、ただ時間が過ぎていく。

その間ずっと、要は晶の返事を待ち続ける。

「………ちょっと待ってて」

要の粘りに負け、晶はそう言って建物に入っていった。

しばらくして、晶が戻ってきた。

「…来て」

門から出るなり、晶は要の手を引っ張って連れ出す。

要も何も言わずに、言われた通りについていく。

しばらく歩いて、2人はあまり人通りの多くない通りに入った。

⏰:10/04/07 22:55 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#386 [我輩は匿名である]
「…何?」

晶は視線も合わせずに尋ねる。

「…何でいきなり来なくなったの?俺ずっと待ってたのに」

要は少し苛立ったように聞き返す。

「『待ってた』?…うそ言わないでよ」

晶は笑う。

「あんたがそんな嘘つきだったなんて…最低」

「嘘なんかついてないよ!俺毎週…」

「知らない女の人と、楽しそうに歩いてたじゃない!!」

晶は声を荒げながら振り向く。

⏰:10/04/07 22:55 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#387 [我輩は匿名である]
「…何の事?」

要は首をかしげる。

しかし、直人は「あ…!」と声を上げた。

晶が言っているのは、きっと道案内を頼まれたあの日の事だ。

「あれは…!」

要も直人と同時に気付き、事情を説明しようとする。

しかし晶は冷たい視線を送ってそれを止める。

「そりゃ、私みたいな子といるよりも、あんな美人な人といる方が楽しいよね」

「違うよ!あの人は…」

⏰:10/04/07 22:56 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#388 [我輩は匿名である]
「私、ずっとあそこで待ってたのに!」

晶は「見損なった」という目で要を見る。

今度は逆に、要と直人がその言葉を疑った。

「待ってた?だって、2時になっても来なかったじゃないか!」

「あの日は、小さい子のお世話してたらちょっと遅れて…。

でも、遅れたって言っても2、3分だけよ!

私、走って行ったのに…」

「だ…だって、あの日は来れないって…」

「いい加減な事ばっかり言わないでよ!!

いつ私がそんな事言った!?」

⏰:10/04/07 22:56 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#389 [我輩は匿名である]
「…え…?」

2人ともわけがわからない。

しかし、少し考えて、直人は理解した。

「…あいつ…俺達をはめたって事か…?」

美代が「伝言だ」と要のところに来た、あの日。

理由がない事しか気にしていなかった要と直人。

それが、美代が勝手に作り出した嘘だったとしたら…。

「…あの人は、そんなんじゃないよ」

要は先に、あの女性の話をするつもりのようだ。

⏰:10/04/07 22:57 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#390 [我輩は匿名である]
「あの人は、俺に道を聞いてきたんだ。姫崎公園に行きたいって。

説明するだけにしようかと思ってたけど、ややこしいし…。

晶ちゃんも来なかったから、案内した方が早いと思ったんだ」

「…道案内だけであんなに楽しそうに喋れる?」

晶は全く信じてくれない。

「…さっきから思ってたんだけど…」

さすがに要も腹が立ってきたのか、不機嫌そうに言い返す。

「晶ちゃん、何で俺達が一緒に歩いてたの知ってるの?」

要が女性を案内した道は、待ち合わせ場所から角を曲がらないと見えない。

要はそれがひっかかっていたらしい。

⏰:10/04/07 22:57 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


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