記憶を売る本屋さん
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#408 [我輩は匿名である]
弁当を食べたかどうかも覚えていないが、弁当箱が軽くなっているのを見ると、無意識に食べたのだろう。

直人は暗い顔で、何気なく携帯電話を取り出してみる。

ちょうど、メールが1通届いている。

メールは薫からだった。

『明日退院出来るってヽ(´▽`)/

でもまだ一応自宅安静らしい…。

暇だから時間があったら遊びに来い。』

「(……こんな時にふざけた顔文字送って来やがって…)」

直人は心の底からイラッとした。

⏰:10/04/08 22:49 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#409 [我輩は匿名である]
しかし、退院出来るようになったなら良かった。

薫には、聞きたい事も、聞いてほしい事もたくさんある。

ほんの少しホッとして携帯電話をしまう。

そして教室を出ようとすると、ドアから室内を覗いている響子と奏子の姿があった。

「…あ!いたいた」

直人と目が合い、奏子が声を上げる。

2人は小走りで直人に駆け寄る。

⏰:10/04/08 22:49 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#410 [我輩は匿名である]
「香月…いつ退院したんだよ?」

「昨日ね。私はほとんど無傷だったし、検査でも異常なしだったから」

「…そっか…良かったな」

直人は元気なく笑う。

「で…俺に何か用…?」

いつもとは全く違う直人の様子に、2人は顔を見合わせる。

「今日の朝、学校行ってたらあんた見つけてさ。

でもなーんか元気無かったから、何となく気になって」

そう言ったのは、奏子だった。

否定できず、直人は「あぁ…」とうつむく。

⏰:10/04/08 22:49 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#411 [我輩は匿名である]
何か悪い事を言ってしまったのかと、奏子は少しおどおどする。

「…本を読み終えたの?」

響子はそれだけ直人に尋ねた。

直人はハッと顔を上げる。

「本…?」

事情を知らない奏子は、何の事かと首をかしげる。

「奏子ちゃん、呪いの本の話知ってる?」

「あぁ、変なおっさんが話し掛けてくるっていう、あの話?」

「…まぁ、そう。その呪いの本を、水無月くんが持ってるの」

⏰:10/04/08 22:50 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#412 [我輩は匿名である]
「…へ?」

「薫もだけどね」

「え!?」

唐突な話に、奏子はぽかんとする。

「でも、2人とも死んでないじゃん!」

「あの本は…読んだ人を死なせる本じゃない。

前世での記憶を思い出させるもの…。

悲しい過去を持つ人に与えられる本。

…前世の自分が死ぬ時が本の終わり」

誰から聞いたのか、響子は言う。

⏰:10/04/08 22:50 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#413 [我輩は匿名である]
「自殺したり、人を殺そうとする人は、その過去に耐えられなかった人。

耐えられた人も、一応いる。ほんの一握りだけね」

「…何で響子ちゃんがそんな事…」

奏子は茫然としながら尋ねる。

「…私も似たようなものだから」

響子は小さく笑う。

「…俺…」

直人はうつむきながら言う。

「俺の…前世の奴が、昨日、トラックにはねられて…死んだんだ」

彼の話に、奏子はまた驚き、響子は黙って耳を傾ける。

⏰:10/04/08 22:51 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#414 [我輩は匿名である]
「…その瞬間が…俺、ずっと忘れられなくて…。

俺じゃないのに、俺が死んだような気がして…。

違うって思えば思うほど、気分悪くて吐きそうになってくるし…」

「…それ、どんな感じで見えるの?」

奏子は恐る恐る尋ねてくる。

「…トラックが迫ってきて…鼓膜が破れそうなぐらいでかいブレーキの音が耳元でして、…それだけ」

「…怖かったでしょ」

響子は、直人の気持ちを理解したように、優しく声をかける。

⏰:10/04/08 22:51 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#415 [我輩は匿名である]
「……お前は?飛び降り自殺に巻き込まれて死んだんだろ?」

奏子は今度は響子を見つめる。

「そうなの…?」

「…うん」

響子は頷く。

「怖かったよ、私も。…でも、水無月と同じ“怖さ”とは違うと思う。

…私は…好きな人を悲しませる事が、怖かった」

響子は少し下を向き、口を閉ざした。

「…あ、あの子は?」

「…そうだ、薫は…?」

⏰:10/04/08 22:51 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#416 [我輩は匿名である]
響子の前世の最期は薫から聞いた事があるが、薫は自分の事は一言も話した事はない。

直人は気になった。

「…薫の前世の人は、前の“私”の旦那さんだった。

彼女が死んだ2ヶ月後に、肺がんで亡くなった」

奏子も直人も、言葉が出なかった。

“薫”が病死だったなんて…。予想外の話に、何も考えられない。

「…月城くん、だっけ?よく耐えれたね」

今度は奏子が口を開く。

⏰:10/04/08 22:52 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


#417 [我輩は匿名である]
「え?」

「だって、奥さんはその…誰かの自殺に巻き込まれて死んで、すぐ自分も癌だとか言われて…。

私なら無理だね、絶対」

「…彼は死ぬ直前、彼女に約束したの。

『生まれ変わったら、お前を探しだして、もう1度プロポーズする』。

薫は…それしか考えてなかったみたいだから…」

響子は呆れたように少し笑う。

「…だから、死にたくなってる場合じゃなかった…って事か」

奏子は自分で言いながら整理する。

⏰:10/04/08 22:52 📱:N08A3 🆔:SlgCFoG2


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