記憶を売る本屋さん
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#61 [我輩は匿名である]
薫はドアの屋根になっている所をを見上げる。

そこには、寝転がって肘をついてこっちを見る少女がいた。

薫のネクタイと同じ赤いリボンをしており、同級生のようだ。

薫を見てニコニコ笑っている少女を見て、薫は一瞬の間にいろんな事を思った。

「彼女には会ったことがある」

1番強く感じたのは、それだった。

少女もまた、黙って薫を見下ろしている。

まさか。薫は思った。

「…どこかで会った事ある?」

先にそう切り出したのは、少女の方だった。

⏰:10/03/23 13:30 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#62 [我輩は匿名である]
「…ない、はず。でも…俺もそんな気がする」

驚きながらも、薫は答える。

「あんた、名前は?」

「私?私は、カヅキ キョウコ」

少女の名前に、薫はハッと目を見開く。

「キョウコ!?昨日今日の“今日”に、子どもの“子”か!?」

少女もまたびっくりしつつ、「違うよ」と返事をした。

「“響く子”って書いて、“響子”。カヅキは“香る月”」

「…そ、そうか」

落ち着け。薫は自分に言い聞かせる。

「自分も名前が変わっているじゃないか」と。

⏰:10/03/23 13:31 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#63 [我輩は匿名である]
「あなたは?」

香月響子が聞き返してくる。

「あぁ…俺は、月城薫。あんたの“月”に、…えー、

シンデレラ城の“城”に、骨董品の“薫”」

言いながら、もっと良い言い方はなかったのか。

「シンデレラ城」と言った後に、薫は自分に呆れた。

響子もそれを聞いて笑っている。

「可愛いね、シンデレラ城って」

「そ、それしか出て来なかったんだよ!」

恥ずかしくなって、薫は少し顔を赤くして言い返す。

⏰:10/03/23 13:31 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#64 [我輩は匿名である]
「…月城くん、何組?」

「8組」

「遠いね。私4組」

「あー…遠いな」

もう少し近ければ…。薫は小さくため息をつく。

「なぁ、香月。いつも朝はここにいるか?」

「ん?うん、いるよ」

響子は頷く。

「月城くんも来る?」

「…そうしようかな」

薫は小さく笑って答える。

それを聞いて、響子もまた、嬉しそうに笑い返した。

⏰:10/03/23 13:32 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#65 [我輩は匿名である]
タイミングを見計らったかのように、学校中に予鈴が鳴り響く。

「あ。教室に帰らないと」

そう言うと、響子は後ろにある梯子を降りて、薫の横に来た。

「行くか」

「うん」

2人は一緒に歩きだしたが、1歩踏み出した所で響子が足を止めた。

振り返って見ると、響子は眉間にしわを寄せて、頭の側面を押さえている。

「どうした?大丈夫か?」

「うん…ちょっと、急に頭痛くなって。でも、大丈夫。行こ」

今度は先に響子が歩きだした。

薫は心配に思いながらも、彼女について階段を降りていった。

⏰:10/03/23 13:33 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#66 [我輩は匿名である]
直人はある事を考えていた。

一昨日、昨日と、1日に1度しか“あっち”に行けなかった。

1日に2回本を開けば、2日分進む事が出来るのだろうか、と。

その方が早く話を進められるのだが。

担任の話そっちのけで、直人はずーっと本の事を考えていた。

「おい」

すぐ横で薫の声がして、直人はやっと顔を上げた。

クラスメイト達がぞろぞろと教室を出て行っている。

⏰:10/03/23 13:33 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#67 [我輩は匿名である]
「次、生物室だろ」

「はっ!忘れてた!」

「早くしろ」

ちょっと苛立ったように薫に言われて、慌てて生物の用意をする。

そして、教科書とノートの間に、あの本を忍ばせて教室を飛び出した。

「まだ何か考えてんのか」

呆れたように薫が言う。

「んー…あの本の事で、ちょっとさ。

あれ、開いたら急に、昔の世界に飛ばされんだよ」

他の生徒に聞こえないように、直人は小声で言った。

言ってしまった。とも思った。

⏰:10/03/23 13:34 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#68 [我輩は匿名である]
「…昔の世界?」

薫は聞き返す。

「んー、しかも、知らない男の中から、そいつの目で見える物を見て、…見てるだけなんだけど」

どう言えばちゃんと伝わるのかわからず、

直人は「あー!」と、もどかしそうに頭をかく。

「落ち着け」

「なんつーかなぁ…、タイムスリップだよ、タイムスリップ。

そんな簡単なもんかわかんねえけど、とりあえず1977年に飛んじゃうわけ!」

「1977年…?」

「そう!1977年!」

⏰:10/03/23 13:35 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#69 [我輩は匿名である]
つい直人は声を大きくしてしまい、薫に「しーっ!」と注意されてしまった。

「おかしいだろ?何でそれで自殺とかに行き着くのか、意味わかんねぇんだよなぁ…」

「まぁなぁ…」

直人の話が何となくわかったのか、薫も首をひねる。

前方に「生物室」と札が出ているのが見える。

「まだ話終わってないのに」と、直人は舌打ちする。

「後で続き聞かせてくれよ。気になるから」

「当たり前だろ。こんな中途半端で終われるか」

2人はそんな事を言いながら、生物室に入ってそれぞれの席に着いた。

⏰:10/03/23 13:36 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#70 [我輩は匿名である]
先生に起立、礼をしてから、直人は本をスタンバイする。

今から開く気らしい。

教科書の適当なページとノートを広げ、

あの本だけは机のすぐ下に持って、誰にも見えないように隠す。

光った時に、大っぴらに光が漏れないようにするためだ。

同じ長机についている他のクラスメイトの様子を伺い、直人はゆっくり開く。

身体と机の僅かな隙間から光が漏れる…。

⏰:10/03/23 13:36 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


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