記憶を売る本屋さん
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#67 [我輩は匿名である]
「次、生物室だろ」
「はっ!忘れてた!」
「早くしろ」
ちょっと苛立ったように薫に言われて、慌てて生物の用意をする。
そして、教科書とノートの間に、あの本を忍ばせて教室を飛び出した。
「まだ何か考えてんのか」
呆れたように薫が言う。
「んー…あの本の事で、ちょっとさ。
あれ、開いたら急に、昔の世界に飛ばされんだよ」
他の生徒に聞こえないように、直人は小声で言った。
言ってしまった。とも思った。
:10/03/23 13:34
:N08A3
:0nKseeu.
#68 [我輩は匿名である]
「…昔の世界?」
薫は聞き返す。
「んー、しかも、知らない男の中から、そいつの目で見える物を見て、…見てるだけなんだけど」
どう言えばちゃんと伝わるのかわからず、
直人は「あー!」と、もどかしそうに頭をかく。
「落ち着け」
「なんつーかなぁ…、タイムスリップだよ、タイムスリップ。
そんな簡単なもんかわかんねえけど、とりあえず1977年に飛んじゃうわけ!」
「1977年…?」
「そう!1977年!」
:10/03/23 13:35
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:0nKseeu.
#69 [我輩は匿名である]
つい直人は声を大きくしてしまい、薫に「しーっ!」と注意されてしまった。
「おかしいだろ?何でそれで自殺とかに行き着くのか、意味わかんねぇんだよなぁ…」
「まぁなぁ…」
直人の話が何となくわかったのか、薫も首をひねる。
前方に「生物室」と札が出ているのが見える。
「まだ話終わってないのに」と、直人は舌打ちする。
「後で続き聞かせてくれよ。気になるから」
「当たり前だろ。こんな中途半端で終われるか」
2人はそんな事を言いながら、生物室に入ってそれぞれの席に着いた。
:10/03/23 13:36
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:0nKseeu.
#70 [我輩は匿名である]
先生に起立、礼をしてから、直人は本をスタンバイする。
今から開く気らしい。
教科書の適当なページとノートを広げ、
あの本だけは机のすぐ下に持って、誰にも見えないように隠す。
光った時に、大っぴらに光が漏れないようにするためだ。
同じ長机についている他のクラスメイトの様子を伺い、直人はゆっくり開く。
身体と机の僅かな隙間から光が漏れる…。
:10/03/23 13:36
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:0nKseeu.
#71 [我輩は匿名である]
目の前に広がっていたのは、木の木目のようなものだった。
なんだこれ。直人はつまらなそうに呟く。
「石川さん、昨日あんだけ泣いてたけど、大丈夫だったかなぁ…」
要が小さく独り言を言う。
視線が木目から窓に移る。
木目はどうやら、要の部屋の天井だったらしい。
細い三日月が見えた。もう夜のようだ。
「今度、行ってみようかな」
「どこに」
直人が思わず言った瞬間、周りが真っ暗になった。
:10/03/23 13:37
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:0nKseeu.
#72 [我輩は匿名である]
「もう終わりかよ!」
直人は大声で突っ込んで、その勢いで立ち上がる。
授業中だった事も忘れて。
クラスメイトが一斉にこっちを向く。
「…2回目の授業から爆睡とは、良い度胸だなぁ?水無月直人」
先生の顔が引きつっている。
クラスメイト達が笑いだす。
「…は…はは…。す、すいません…」
直人は無理やり笑って誤魔化して、静かに椅子に座った。
あの本は授業中に読むものではない。
直人はため息をついて、気付かれないように教科書の下に本を滑り込ませた。
:10/03/23 13:37
:N08A3
:0nKseeu.
#73 [我輩は匿名である]
昼休みになってもまだ、薫は笑いをこらえていた。
生物が終わってからずっとこうだ。
直人もいい加減腹が立ってきた。
「お前、いい加減にしろよ」
「無理無理。お前の顔見る度に思い出して仕方ねぇよ」
この野郎…。殴りたくなってきた。
「で?今日のタイムスリップはどうだった?」
ナメようにニヤつきながら、薫は直人に尋ねる。
「どうもこうもねーよ!見てみろよこれ!!」
他の目を気にせずに騒ぎながら、本を開いて見せてみる。
:10/03/23 13:38
:N08A3
:0nKseeu.
#74 [我輩は匿名である]
4月12日 今日は何もなかった。
長月要は昨日の石川晶の様子が心配らしく、
会いに行ってみようかと考えていた。
「こんだけだぜ!?」
「わかったから、もうちょっと静かに喋れ。
他の奴に気付かれたらめんどくさいだろ」
:10/03/23 13:39
:N08A3
:0nKseeu.
#75 [我輩は匿名である]
確かにそうだ。
直人はちょっとムスッとして頷く。
「…この、長月要ってのは?」
「タイムスリップしたら、必ずこいつの身体の中に入り込む。
で、俺はそっから見てるだけで、何も出来ねぇんだよ。」
「ふぅん…」
薫は本を見つめながら、何かを考えている。
「何で長月要なんだろうな?」
ふと、薫が言った。
:10/03/23 13:40
:N08A3
:0nKseeu.
#76 [我輩は匿名である]
「へ?」
「いやぁ…何で入り込むのが、その長月要って奴の身体なのかって」
「…あぁ…」
今まで考えた事はなかった。
「誰だ?」とか「何でタイムスリップ?」とか思った事はあっても、
何故その先がいつも彼の中なのか?
薫に言われて初めて疑問に思った。
「何だ、今まで考えた事なかったのか?」
「うん…。そうだな、何でいつもあいつの中なんだろ?」
直人は腕を組んで考える。
:10/03/23 14:03
:PC
:pMFPl9Gs
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