Traumerei‐トロイメライ‐
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#42 [moeco◆eedZl7e0Rw]
よく考えてみると……あいつに似てるからかもしれないな。



花さんはいい人なんだけど。


僕を店長からかばってくれるし。

明るいし、いつも笑顔だし。


おしゃべりで行動的だし……まるで僕とは正反対な人間だった。


ちょっとうらやましい。
僕なんて妹にイメージが糸引いたなめくじなんて言われたからな。立ち直れそうにない。

⏰:10/04/04 21:53 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#43 [moeco◆eedZl7e0Rw]
店長と花さん、二人がしゃべりながら入ってきた。




しかし、よく見ると店長の後ろから女の子がぴったりくっついてスルッと入ってきた。



どきっとした。

その子を見たとき、時間が止まったような錯覚におちいった。

⏰:10/04/04 21:54 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#44 [moeco◆eedZl7e0Rw]
普通の人とは違う、説明しがたい違和感を感じた。


並外れて美しいというのもあった。


うるんだおおきい瞳。

真っ赤な唇。

幼さの残る整った顔立ちにすらりと伸びた細い手足。


黒いワンピース姿の、たぶん中学生くらいの女の子だった。

⏰:10/04/04 22:03 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#45 [moeco◆eedZl7e0Rw]
遠目でもわかるくらいなめらかな肌が透けるように白い。



それよりびっくりしたのは、腰まで伸びた髪が雪みたいに真っ白だったことだった。


まさか白髪じゃないだろうし。

カツラ……だろうか。



白い。

とにかく雰囲気まで白かった。

⏰:10/04/04 22:06 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#46 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「天使……」


無意識に口にしていた。


あまりに小声で誰にも聞こえなかったようだが、言ってから僕は恥ずかしくて口を片手で押さえた。



天使?


確かにそんな感じがするけど……さすがに口に出すとめちゃくちゃ恥ずかしいな。


本当に小声でよかった。

⏰:10/04/04 22:12 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#47 [moeco◆eedZl7e0Rw]
――目があった。



「いらっしゃいませ」


気まずくて、頭を下げてお決まりの挨拶をした。



ふと顔を上げてぎょっとした。

女の子は立ちどまったまま、不思議そうにぽかんと口を開けて僕をずっと見ていた。


そらさずに、ずっと。

なんだろう。

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⏰:10/04/04 22:14 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#48 [moeco◆eedZl7e0Rw]
しばらくすると女の子はにぃ、と八重歯をみせて無邪気に笑った。


女の子は僕を見つめたまま近くの棚にあったお菓子を手に取ると――そのまま背を向けて外へ出ていった。



突然の出来事。


僕は口を開けたまま外にでた女の子をただ見ていた。


こんな経験ははじめてだった。

⏰:10/04/04 22:17 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#49 [moeco◆eedZl7e0Rw]
お客が金を払わずに出ていった。


レジを通さずに出ていった。


逃げた。



あれ……これってまさか。

まさか。



「ま、万引きだ!」

僕は叫んだ。

となりでレジの計算をしていた花さんが小さな悲鳴を上げた。

⏰:10/04/04 22:41 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#50 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「なによいきなり……」


「万引きです! 僕つかまえてきますから、花さんは店長に知らせておいてください」


急いで外に出ると、女の子はのうのうと歩いて逃げていた。


しかも万引きしたお菓子を食べながら。



店員の見てるなかで万引きしておいてこの余裕しゃくしゃくっぷりはほめてやりたいとこだ。

ほめないけど。

⏰:10/04/04 22:42 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


#51 [moeco◆eedZl7e0Rw]
「ちょっと待って」


僕は女の子の肩をつかんだ。

と、思っていた。
確信していた。

というより、そうなるはずだった。



「え……え?」

しかしそうならなかった。




つかんだはずの僕の手が『そこになにもなかったように』女の子の肩をすりぬけた。

⏰:10/04/04 23:10 📱:N03A 🆔:fRcR2/pM


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