記憶を売る本屋 2
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#140 [我輩は匿名である]
「え?あぁ…」

言って良いものか、と、直人は目線をそらす。

「もしかして、おばあちゃんの事知ってるの?」

奏子は少し近づく。

「……いや、口が勝手に言っただけ…」

「本当に〜?」


直人は上手く誤魔化せず、しばらく悩んだ末、大きくため息を吐いた。

「…前世の俺が、会ったことがあるんだよ、多分」

そう白状するしかなかった。

⏰:10/05/05 18:06 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#141 [我輩は匿名である]
「そうなの!?なんかすごい!」

奏子は楽しそうに声を上げる。

「じゃあ、おばあちゃんが言ってた道案内したのって、やっぱあんたなの?」

「…まぁな…」

「そうなんだぁ!あんた、意外と優しいとこあるよね」

「そ、そうかぁ?」

褒められると調子に乗る直人は、照れるように笑う。

「でもなんか、飛鳥も知ってそうだったよね、おばあちゃんの事」

奏子は笑顔で話を続ける。

「…いや、あいつは多分会ったことないぞ。俺があのばあちゃんからの話を聞かせただけで」

⏰:10/05/05 18:06 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#142 [我輩は匿名である]
「おばあちゃん、あんたに何か言ったの?」

「だから、俺じゃなくて、前世の俺」

直人はそこに念を押す。

「何か言ったって、この間のあれだぞ?友達作りたいなら、壁を作るなって話。

あれを伝えてやろうと思ってたんだけどさ、なかなか…」

「伝えてやるって、飛鳥に?」

「前世のあいつに」

直人はしつこく、『前世の』にアクセントをつける。

奏子は驚きつつ、「やっぱりな」と思った。

「じゃあ、水無月と飛鳥って、前世から知り合いだったんだ?」

⏰:10/05/05 18:06 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#143 [我輩は匿名である]
「…まぁ…そうだな、知り合いだな」

言ってみれば恋人同士か、最低でも友達以上恋人未満ってところだろう。

しかし、そこまで説明するのはめんどくさい。

「…ん?じゃあ、飛鳥も本もらってたりすんの?」

奏子は首をかしげる。

「なんか、もらったって言ってた気がするけど?」

直人はめんどくさくなってきて、言い方が適当になってきた。

「そうなんだ!なんかすごいねー!じゃあ…」

⏰:10/05/05 18:07 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#144 [我輩は匿名である]
「おはよう」

いつの間にか、8時15分を過ぎていて、飛鳥がやってきた。

「よぉ」

「あっ、飛鳥に渡すものがあるの!」

奏子は立ち上がって、さっき直人にあげたクッキーを差し出す。

「クッキーだ」

「この間、おばあちゃん助けてくれたでしょ?そのお礼♪」

「えっ?いいよ、荷物運んだだけだし、お礼なんか…」

飛鳥は両手を左右に振る。

⏰:10/05/05 18:07 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#145 [我輩は匿名である]
「いいのいいの。はい!」

奏子は笑って、飛鳥の手にクッキーを置いた。

「…ありがとう」

飛鳥は小さく笑って、それを受け取る。

「あっ、じゃあ用も済んだし、私教室にかーえろ♪じゃあまた後でねー」

奏子はそのまま、教室を出ていった。

「何だったんだ…?」

「おいしそうなクッキーだね。あのおばあちゃんが焼いてくれたのかな?」

飛鳥は嬉しそうに、クッキーの入った袋を見つめている。

⏰:10/05/05 18:08 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#146 [我輩は匿名である]
「いや、安斎が焼いたらしいぞ」

「そうなの?へぇ、すごいな」

「お前、料理出来ないんだっけ?」

「やれば出来ると思うよ。施設にいた時は、よくご飯の手伝いしてたから」

「へぇ、意外」

「そう?…まぁ、今は家で作る事ないし、作ろうとも思わないしな…」

飛鳥はふぅっと息をつく。

「じゃあ、なんか作ってきた時は、俺が毒味してやるよ」

⏰:10/05/05 18:08 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#147 [我輩は匿名である]
「はあ?私の腕前なめないでよね」

飛鳥は腕を組んで言い返す。

そんな2人の会話を、廊下で窓にもたれ掛かって、奏子が聞いていた。

「(やっぱり、あの2人…なんかあるんだ…)」

「安斎?」

すぐ後ろで声がして、奏子は素早く振り返る。

⏰:10/05/05 18:08 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#148 [我輩は匿名である]
そこには、登校してきたばかりの薫が立っていた。

「月城くん…」

「何してるんだ?朝っぱらから」

薫は少し首を傾ける。

「ううん、何にもない。じゃあね」

奏子は無理に笑顔を作って、小走りで4組に戻っていった。

「…隠さなくても、知ってるのにね」

薫の後ろにいた響子が、くすっと笑う。

「…お前の言ってた事、本当だったんだな」

「予想だけどね」

2人は小さく笑い合った。

⏰:10/05/05 18:09 📱:N08A3 🆔:7fNci.3Y


#149 [我輩は匿名である]
直人は、薫が掃除を終えるのを、階段に座って、1人ぼけーっと待っていた。

奏子と飛鳥はバイトが、響子も今日は用事がある為、それぞれ先に帰っている。

「(…そういえば、神崎とここで喋った事もあったなぁ…)」

直人はあの時の事を思い出す。

親と話していないとか、そういう話をしたのがここだった。

「(懐かしいな…もう半年近く経つんだなぁ…)」

そんな事を考えていると、あの時のように、目の前を良介が通りかかった。

⏰:10/05/06 20:17 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


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