記憶を売る本屋 2
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#272 [我輩は匿名である]
「そうなの?」
「んー」
直人は髪をいじりながら頷く。
「根暗かヤンキーとか…やたら貢がせる女とかじゃなかったら、どんな女でも」
「…ふぅん、そっか」
飛鳥はちょっと笑って返事をした。
「(……何でいきなりそんな事聞いてきたんだろ?こいつ)」
直人はまだ少しぽかんとして飛鳥を見ている。
「(こいつはやっぱ、要みたいな、のんきでちょっと弱々しいけどしっかりしてる奴が好きなのか?)」
今までの要の事を思い出しながら、直人はぼけーっと考える。
:10/05/28 22:13
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:TdbZtgtI
#273 [我輩は匿名である]
晶に告白した時の事、デートの時の事、晶ともめた時の事…。
よくよく考えてみると、頼れるのか頼りないのかよくわからない性格だった要。
言いたい事をなかなか言いだせない要に、イライラした時も多かった気がする。
「……いや、俺の方がいい男だったな」
思わず声に出して言ってしまった。
「何の話?」と、飛鳥が怪訝そうな目でこっちを見てくる。
「いや、要と俺だと、どっちがいい男かって話」
「1人で何バカな事考えてんの?」
「バカとはなんだよ!」
「どう見てもバカだろ!いきなり『俺の方がいい男だ』とか言っちゃって!」
:10/05/28 22:14
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:TdbZtgtI
#274 [我輩は匿名である]
「じゃあお前はどっちがいい!?」
「私は…!!」
そこまで来て、2人は言い合うのをやめた。
言い争いの内容が、何だか恥ずかしくなってきたらしい。
「…わりぃ、今考えるとかなりしょーもないな」
「…そうだね、やめとこ」
2人はそれぞれ違う方向を見ながら言った。
「(…なんか楽しそうに喋ってるなぁ…)」
たまたま、奏子の目が直人達に向いた。
結局試合には8対4で勝ったのだが、奏子には直人達のことの方が気になっていた。
:10/05/28 22:14
:N08A3
:TdbZtgtI
#275 [我輩は匿名である]
「さっき何喋ってたの?」
体育館に移動している間に、奏子が直人に尋ねてきた。
試合時間が迫っていたため、響子は先に体育館に入って準備をしている。
飛鳥と薫が、無言で顔を見合わせる。
「…本の話か?」
薫が小声で、奏子に聞こえないように飛鳥に尋ねる。
飛鳥は無言で頷く。
「何喋ってたって…」
直人は首をかしげながら考える。
「(…要とかの話だったな…。本の話はしない方がいいって言ってたし…)」
:10/05/28 22:15
:N08A3
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#276 [我輩は匿名である]
奏子は「聞いてるー?」と、顔を覗き込んでくる。
飛鳥と薫は、奏子に気付かれないように横目で直人を見つめる。
「…何だったか忘れたわ」
直人は笑って奏子に答えた。
その答えに、飛鳥と薫がホッとして、再び目を見合わせる。
「えー、結構楽しそうに喋ってたじゃなーい」
「まぁ、忘れるぐらいのしょーもない話だったんだろ」
「ま、直人の話はいつもしょーもないからな」
薫は直人を見ながら小さく笑う。
しかし、奏子はどこか不満そうな顔で黙り込んだ。
:10/05/28 22:15
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#277 [我輩は匿名である]
飛鳥は少し困ったように、奏子の表情を見る。
「おっ、いたいた」
直人は響子を見付け、指差す。
4人は響子の近くに腰を下ろす。
「ケガするなよ」
「大丈夫だって」
外野だから、と、響子はにっこり笑う。
「心配性だなぁ、お前」
「仕方ないだろ、心配なものは心配なんだ」
薫は開き直ったように言い返す。
:10/05/28 22:15
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#278 [我輩は匿名である]
すると、ブザーが鳴って試合が始まった。
響子のクラスが、ジャンプボールでボールを取る。
いかにもスポーツ好きそうな女子が、大きく腕を回してボールを投げた。
しかし、誰にも当たる事なく、外野の響子に向かって一直線に飛んでいく。
薫達が『危ない』と思うと同時に、バチーンという大きな音がした。
4人はハラハラして響子を見つめる。
響子は顔の目の前で、飛んできたボールをキャッチしていた。
ニヤリと口元に笑みを浮かべ、ボールを構える。
そして、同じように足を開いて、思いっきりボールを投げた。
:10/05/28 22:16
:N08A3
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#279 [我輩は匿名である]
ボコン!と音がして、相手チームの1人の女子が倒れこむ。
「(あ…当てた…)」
予想外の事に、直人と飛鳥は呆然とする。
「か…薫、お前の嫁ってあんな強かったか!?」
「みたいだな」
薫は何だか嬉しそうに笑って返事をする。
「薫!今の見た!?」
響子は試合そっちのけで薫に声をかける。
「あぁ、見たよ。格好良かった」
:10/05/28 22:16
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#280 [我輩は匿名である]
「(いや、怖かった…)」
「(絶対この夫婦おかしいよ…)」
ボールを投げる時の響子の顔を思い出し、直人と飛鳥は視線を落とす。
しかし結局、響子のクラスは1回戦敗退となった。
:10/05/28 22:17
:N08A3
:TdbZtgtI
#281 [我輩は匿名である]
「よっしゃあ!行くぜ!」
直人は気合いを入れるように声を出す。
飛鳥と試合時間がかぶってしまい、残りの3人は両方が見える位置に腰を下ろす。
「……あぁ!?」
相手チームの1人を見て、直人は目を丸くした。
相手は1年5組。良介のクラスだったのだ。
「はっ!君は!あの負け犬の友達!」
「だぁかぁら!君って言うな!負け犬って言うな!!」
直人はムカッとしながら大声で言い返す。
「今日は絶対!お前を負かしてやるからな!」
:10/05/28 22:17
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