記憶を売る本屋 2
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#372 [我輩は匿名である]
「そう?じゃあチャイム鳴ったらダッシュな」
「はぁ?めんどくせー」
乗り気だった直人の顔が、一瞬にして欝陶しそうな表情に変わる。
が、言ってしまった以上仕方がない。
「わかったよ。俺マジでダッシュするから、ちゃんと付いて来いよな」
そういって、また飛鳥に笑いかけた。
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#373 [我輩は匿名である]
そして、昼休み。
「あ…あんたさぁ…」
息を切らして、途切れ途切れに飛鳥が言う。
その横には、何事もないような顔でレジに並んでいる直人の姿。
手にはちゃっかり、ペットボトル飲料が握られている。
「もうちょっと…待ってやろうとか…思わないわけ…?」
「だから言っただろ?マジでダッシュするって」
「そうだけど…!」
言い返そうにも、疲れすぎてそれどころではない。
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#374 [我輩は匿名である]
必死で直人に付いてきた飛鳥は、膝に手をついて息を整える。
「まぁいいじゃん。これなら売り切れる前にサンドイッチ買えるぞ」
「…まぁね……」
直人がダッシュしたおかげで、前から5、6番目に並ぶ事が出来た。
「すぐ売り切れるだろ?サンドイッチ」
「そうだね…。サンドイッチが1番人気みたいだし」
「お前サンドイッチ好きなのか?」
「結構好き、かな」
レジを待つ間、2人はそんな話をして時間を過ごす。
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#375 [我輩は匿名である]
「……ありがとね」
「ん?」
不意に言われて、直人はぽかんとする。
「…いや…おごってくれて、…ありがとう、って」
照れているのか、飛鳥は頬を赤くしてそっぽを向く。
「何でお前が礼言うんだよ?俺はお守りのお返ししてるだけだろ」
「…一応言っときたかったの!」
飛鳥は怒ったように言って、黙り込んでしまった。
「(…あれ?怒ったか?)」
:10/06/12 20:24
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#376 [我輩は匿名である]
直人は飛鳥を見ながら考える。
「何だよ、怒んなよ」
「べっ、別に怒ってねぇよ」
「そうか?顔赤いぞ?」
「怒ってないってば!」
「怒ってんじゃん!」
「うるさいなぁ!早くサンドイッチ買ってよ!」
「今から買うっつーの!」
2人はそんな言い合いをしながら、レジの順番がまわってくるのを待っていた。
:10/06/12 20:25
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#377 [我輩は匿名である]
数日後。
直人は憂鬱そうな顔で、自分のノートを見つめる。
隅っこにメモされた、数学の中間試験のテスト範囲だ。
「(………忘れてた…。再来週からテストだった…)」
直人はまるで、埴輪のような顔で茫然とする。
「変な顔」
いつの間にか目の前にいた飛鳥に言われ、直人はハッと意識を取り戻した。
「だって、テストとか…忘れてたし…。
お前のお守り、学業成就のお守りじゃねぇの?」
:10/06/12 20:25
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#378 [我輩は匿名である]
「違うから。それよりほら、来てるよ。あいつ」
飛鳥は呆れた表情で、薫の座席を指差す。
薫の目の前に仁王立ちしているのは、案の定良介だった。
「……飽きねぇなぁ…あいつも…」
直人もため息を吐いて、机に肘をつく。
「おい月城!Good newsだ!」
「何だ」
薫も腕を組んでむすっとしている。
「今回のテストのBattleは無しだ!ありがたく思え!」
:10/06/12 20:26
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#379 [我輩は匿名である]
「は?」
彼の言葉には、薫だけでなく直人たちもきょとんとする。
「する気は全くなかったけど、何でまた?」
「球技大会を無しにしてくれたからな。借りぐらい返させろ」
「(あれは貸しに入るのか…?)」
何故かしたり顔の良介を、薫は呆然として見上げる。
「お前…」
「用件はこれだけだ!次は覚悟しておけよ!」
「え、ちょ…」
:10/06/12 20:26
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#380 [我輩は匿名である]
薫が何か言う前に、良介は走って教室を出て行った。
薫は疲れ果てたようにため息を吐く。
「…ちょっくら慰めに行ってやるか」
直人は何だか楽しそうに笑って立ち上がる。
暇なので、飛鳥もとりあえずそれについていく。
すると、響子や奏子も8組にやってきた。
「どうしたの?」
「数学の教科書忘れちゃって…」
飛鳥が尋ねると、奏子が苦笑して答えた。
:10/06/12 20:26
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#381 [我輩は匿名である]
「あぁ…今日、うち数学ないんだ。水無月は持ってるかもしれないけど」
「教科書全部置いて帰りそうだもんね、水無月くん」
響子は笑って言った。
「聞いてみよっか」
女子3人は、話しながら直人達に寄っていく。
「苦労するな、お前も」
直人はニヤニヤしながら薫の肩をたたく。
「……いいよな、あいつに絡まれなくてすむ奴は」
薫は遠い目をして言い返す。
:10/06/12 20:27
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