記憶を売る本屋 2
最新 最初 🆕
#372 [我輩は匿名である]
「そう?じゃあチャイム鳴ったらダッシュな」

「はぁ?めんどくせー」

乗り気だった直人の顔が、一瞬にして欝陶しそうな表情に変わる。

が、言ってしまった以上仕方がない。

「わかったよ。俺マジでダッシュするから、ちゃんと付いて来いよな」

そういって、また飛鳥に笑いかけた。

⏰:10/06/12 20:00 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#373 [我輩は匿名である]
そして、昼休み。

「あ…あんたさぁ…」

息を切らして、途切れ途切れに飛鳥が言う。

その横には、何事もないような顔でレジに並んでいる直人の姿。

手にはちゃっかり、ペットボトル飲料が握られている。

「もうちょっと…待ってやろうとか…思わないわけ…?」

「だから言っただろ?マジでダッシュするって」

「そうだけど…!」

言い返そうにも、疲れすぎてそれどころではない。

⏰:10/06/12 20:00 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#374 [我輩は匿名である]
必死で直人に付いてきた飛鳥は、膝に手をついて息を整える。

「まぁいいじゃん。これなら売り切れる前にサンドイッチ買えるぞ」

「…まぁね……」

直人がダッシュしたおかげで、前から5、6番目に並ぶ事が出来た。

「すぐ売り切れるだろ?サンドイッチ」

「そうだね…。サンドイッチが1番人気みたいだし」

「お前サンドイッチ好きなのか?」

「結構好き、かな」

レジを待つ間、2人はそんな話をして時間を過ごす。

⏰:10/06/12 20:01 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#375 [我輩は匿名である]
「……ありがとね」

「ん?」

不意に言われて、直人はぽかんとする。

「…いや…おごってくれて、…ありがとう、って」

照れているのか、飛鳥は頬を赤くしてそっぽを向く。

「何でお前が礼言うんだよ?俺はお守りのお返ししてるだけだろ」

「…一応言っときたかったの!」

飛鳥は怒ったように言って、黙り込んでしまった。

「(…あれ?怒ったか?)」

⏰:10/06/12 20:24 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#376 [我輩は匿名である]
直人は飛鳥を見ながら考える。

「何だよ、怒んなよ」

「べっ、別に怒ってねぇよ」

「そうか?顔赤いぞ?」

「怒ってないってば!」

「怒ってんじゃん!」

「うるさいなぁ!早くサンドイッチ買ってよ!」

「今から買うっつーの!」

2人はそんな言い合いをしながら、レジの順番がまわってくるのを待っていた。

⏰:10/06/12 20:25 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#377 [我輩は匿名である]
数日後。

直人は憂鬱そうな顔で、自分のノートを見つめる。

隅っこにメモされた、数学の中間試験のテスト範囲だ。

「(………忘れてた…。再来週からテストだった…)」

直人はまるで、埴輪のような顔で茫然とする。

「変な顔」

いつの間にか目の前にいた飛鳥に言われ、直人はハッと意識を取り戻した。

「だって、テストとか…忘れてたし…。

お前のお守り、学業成就のお守りじゃねぇの?」

⏰:10/06/12 20:25 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#378 [我輩は匿名である]
「違うから。それよりほら、来てるよ。あいつ」

飛鳥は呆れた表情で、薫の座席を指差す。

薫の目の前に仁王立ちしているのは、案の定良介だった。

「……飽きねぇなぁ…あいつも…」

直人もため息を吐いて、机に肘をつく。

「おい月城!Good newsだ!」

「何だ」

薫も腕を組んでむすっとしている。

「今回のテストのBattleは無しだ!ありがたく思え!」

⏰:10/06/12 20:26 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#379 [我輩は匿名である]
「は?」

彼の言葉には、薫だけでなく直人たちもきょとんとする。

「する気は全くなかったけど、何でまた?」

「球技大会を無しにしてくれたからな。借りぐらい返させろ」

「(あれは貸しに入るのか…?)」

何故かしたり顔の良介を、薫は呆然として見上げる。
「お前…」

「用件はこれだけだ!次は覚悟しておけよ!」

「え、ちょ…」

⏰:10/06/12 20:26 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#380 [我輩は匿名である]
薫が何か言う前に、良介は走って教室を出て行った。

薫は疲れ果てたようにため息を吐く。

「…ちょっくら慰めに行ってやるか」

直人は何だか楽しそうに笑って立ち上がる。

暇なので、飛鳥もとりあえずそれについていく。

すると、響子や奏子も8組にやってきた。

「どうしたの?」

「数学の教科書忘れちゃって…」

飛鳥が尋ねると、奏子が苦笑して答えた。

⏰:10/06/12 20:26 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


#381 [我輩は匿名である]
「あぁ…今日、うち数学ないんだ。水無月は持ってるかもしれないけど」

「教科書全部置いて帰りそうだもんね、水無月くん」

響子は笑って言った。

「聞いてみよっか」

女子3人は、話しながら直人達に寄っていく。

「苦労するな、お前も」

直人はニヤニヤしながら薫の肩をたたく。

「……いいよな、あいつに絡まれなくてすむ奴は」

薫は遠い目をして言い返す。

⏰:10/06/12 20:27 📱:N08A3 🆔:C5E9sbig


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194