記憶を売る本屋 2
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#431 [我輩は匿名である]
一方、女子達は。

飛鳥と響子は、じっと奏子を見つめる。

奏子は一言も話さず、ただ黙々と弁当を食べている。

「(……何かあったのかな?)」

「(さぁ…?)」

2人は目で会話する。

「飛鳥さぁ」

不意に奏子が口を開き、飛鳥はビクッとする。

⏰:10/06/22 19:50 📱:N08A3 🆔:3deUowRU


#432 [我輩は匿名である]
「……な、何?」

恐る恐る尋ねる。

「水無月の事好きだよね」

「…え」

目も合わさずに言われて、飛鳥は困ったように響子を見る。

響子も不安そうに飛鳥を見ている。

「この間、公園で2人で喋ってるの見たからさ」

「…えっ」

⏰:10/06/22 19:50 📱:N08A3 🆔:3deUowRU


#433 [我輩は匿名である]
「(…反応薄いなぁ…)」

「え」しか言っていない飛鳥に、響子は少し呆れる。

なぜ奏子に見られたのか、飛鳥は全く理解出来ない。

1番起きてほしくない事が、早くも起きてしまった。

飛鳥の顔に、焦りの表情が浮かぶ。

「好きならそう言ってくれたらいいじゃん。

陰でコソコソされるの、あたし1番腹立つの」

「…奏子ちゃん、飛鳥ちゃんは別にコソコソしてたわけじゃ…」

⏰:10/06/22 19:51 📱:N08A3 🆔:3deUowRU


#434 [我輩は匿名である]
「響子は黙ってて」

止めようとする響子を、奏子はきっぱり黙らせる。

「あたしがあいつの事好きだって知ってるのに、よく出来るよね。

お守り買ってあげたり、2人で会ったり…」

「あれは…」

「悪いけど」

奏子はさっさと弁当を食べ終え、片付ける。

「あたし、そういうの見て黙ってられるようないい子じゃないから」

奏子はきつく吐き捨てて、早足で教室を出て行った。

⏰:10/06/22 19:51 📱:N08A3 🆔:3deUowRU


#435 [我輩は匿名である]
飛鳥も響子も暗い顔で黙り込む。

「………ごめんね」

しばらくして、先に口を開いたのは響子だった。

「…カラオケ、勧めなかったら良かったね」

「…響子のせいじゃないよ」

飛鳥は弱々しく笑う。

「……隠してたあたしが悪いんだ」

無理して笑う飛鳥を見て、響子も肩を落とす。

⏰:10/06/23 18:08 📱:N08A3 🆔:0Q5km5DM


#436 [我輩は匿名である]
言い出すタイミングが掴めなかっただけなのに。

それだけで、こんな事になるなんて。

飛鳥はどうすれば良いのかわからず、大きくため息をついた。

⏰:10/06/23 18:09 📱:N08A3 🆔:0Q5km5DM


#437 [我輩は匿名である]
「…1人で帰んの、久しぶりだなぁー」

飛鳥と奏子はバイト、薫と響子は寄り道するとか。

直人は独り言を言いながら、1人で帰っていた。

「(でも、あいつら今日別々にバイト行ってたな。何かあったのか?)」

今日は別々にバイトに行った、飛鳥と奏子。

2人がもめている事を知らない直人は、のんきに考える。

「(昼休み終わってから、神崎もなーんか元気無かったし…。

もしかして、喧嘩でもしたのか!?)」

珍しくその予想は当たっている。

⏰:10/06/26 13:54 📱:N08A3 🆔:sOCuCGLY


#438 [我輩は匿名である]
「(えーっ、困るって!あいつかなり落ち込むじゃん!

つーか、何で喧嘩したんだ!?そもそも喧嘩で合ってるのか!?)」

直人は歩きながら頭を抱える。

「(……明日、さりげなく声かけてみるか)」

「何て声かけるの?」

「『元気ないじゃん』って」

普通に答えて、直人は足を止めた。

今、直人に話し掛けたのは誰だ?

直人は素早く振り返る。

⏰:10/06/26 13:55 📱:N08A3 🆔:sOCuCGLY


#439 [我輩は匿名である]
しかし、直人以外に誰も歩いていない。

1人でいると怖くなったのか、直人はしばらく息を殺して黙り込む。

「そんなに怖がらなくていいじゃないか」

しかし、黙っていても、また声がした。

「……誰だよ、お前」

直人は恐る恐る呟く。

「水無月直人。16歳。7月20日生まれ。O型」

声は問いに答えるどころか、直人のプロフィールを次々に言い当てる。

⏰:10/06/26 13:55 📱:N08A3 🆔:sOCuCGLY


#440 [我輩は匿名である]
「何だよ?何で俺の事…」

付近を見回しながら、直人は更に問いかける。

「そりゃ知ってるよ。俺はお前の“一部”なんだから」

「“一部”?」

直人は繰り返す。

「まっ、そのうちわかるよ、俺が誰なのか」

それ以上、声は何も言わなくなった。

「(……俺の一部…?どういう事だよ…?)」

声が言ったその言葉の意味が、全く理解出来ない。

直人はなかなか足を動かす事が出来ず、しばらくその場に立ち尽くしていた。

⏰:10/06/26 13:56 📱:N08A3 🆔:sOCuCGLY


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