記憶を売る本屋 2
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#445 [我輩は匿名である]
「…そうか?まぁ、何か悩みあったら言えよ?」
「うん、ありがと」
飛鳥は小さく笑う。
困って、直人はフラフラと席を離れる。
「絶対大丈夫じゃないよ、あの子」
昨日の声が直人に言う。
直人はまた、立ち止まって周りを見回す。
「無駄だよ。お前に俺は見えない」
:10/07/10 10:13
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#446 [我輩は匿名である]
「ちっ」
声にあっさり言われて、直人は舌打ちする。
しかし、今声と話している暇はない。
さっさと薫の所へ戻り、椅子に座る。
「香月。いつ来たんだよ」
「ついさっき」
響子は笑って答え、「じゃあね」と教室に戻っていった。
:10/07/10 10:13
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#447 [我輩は匿名である]
「何しに来たんだ?あいつ」
「俺に“おはようのチュー”しに来ただけだよ」
「えぇっ!?こんな公共の場で堂々と…」
「冗談だって気付けよ!」
薫は冗談を言ったのを後悔したのか、少し赤面して言い返す。
直人は「何だよ冗談かよ」と、机に肘をつく。
「で、どうだった?」
:10/07/10 10:14
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#448 [我輩は匿名である]
「大丈夫って言われたけど、見るからに大丈夫じゃなさそうだ」
2人は深刻そうに話す。
「…あっ」
直人はひらめいた。
「安斎に聞いてくる!」
「えっ!?ちょっ…」
薫が止める間もなく、直人は教室を飛び出す。
「(おい…安斎は喧嘩相手だぞ…)」
事情を聞いた薫は、難しい顔でため息をついた。
:10/07/10 10:14
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#449 [我輩は匿名である]
「安斎ー」
直人は教室に入るなり呼び掛ける。
が、返事がくる前に奏子を見つけ、自分から走っていった。
「おはよ」
奏子はいつも通り笑って挨拶する。
「なあなあ、神崎が元気ないんだけど、お前何か知らない?」
直人は単刀直入に尋ねる。
すると、奏子は少し困ったように顔を背けた。
「……ちょっとね」
:10/07/10 10:15
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#450 [我輩は匿名である]
「(……やっぱり喧嘩かなんかしたんだな)」
奏子の反応を見て、直人は確信した。
「何だよー喧嘩か?仲良くしろよなー」
直人は面倒くさそうにポケットに手を入れる。
「女子だって喧嘩するんだよ!」
奏子はムスッとしたように言い返す。
「…つーか、何で喧嘩したんだよ?」
ちょっと勘がさえても、そこまでは頭が回らない直人。
:10/07/10 10:15
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#451 [我輩は匿名である]
何も気にする事なく、ずけずけと聞いていく。
「…女子の喧嘩の原因聞くか?」
「何だよ?いいじゃん、別に聞いたって」
直人はあっけらかんとした表情で答える。
「ちょっとは自分で考えてみな」
奏子は言いたくなさそうにそれだけ言って、そっぽを向いてしまった。
そう言われてしまうと仕方がない。
直人は「わかった」と言って出ていった。
:10/07/10 10:15
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#452 [我輩は匿名である]
「(……あいつ、やっぱり飛鳥の事しか心配してないな…)」
直人が出ていったドアの方を、奏子は淋しそうにじっと見ていた。
:10/07/10 10:16
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#453 [我輩は匿名である]
その夜。
飛鳥はベッドの上に転がって、天井を見つめる。
「(…どうしたら…仲直り出来るんだろ…)」
奏子との喧嘩の事で頭がいっぱいの飛鳥。
要を除いて、初めて出来た友達。
あの自殺騒動の後、昼食に誘ってくれたのは奏子だった。
だからこそ、彼女に背を向けられたショックは大きかった。
:10/07/10 10:16
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#454 [我輩は匿名である]
今まで人を避けて生きてきた飛鳥は、仲直りの方法など知らない。
直人に聞こうにも、これ以上頼っている姿を見られると、
奏子はきっと今以上に腹を立てるだろう。
「(……あいつに頼ろうとするからダメなんだよ…)」
飛鳥は前腕を顔にあて、目を隠す。
晶の時もそうだった。
要だけを頼って、自分の物にしたいと思っていた。
:10/07/10 10:17
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