記憶を売る本屋 2
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#475 [我輩は匿名である]
「声出てるよ」

声に言われて顔を上げると、周りの生徒が不思議そうにこっちを見ている。

直人は恥ずかしくなって、黙ってうつむく。

「(でも何で?つーかお前、どこにいんだよ?)」

「お前の中だよ。直人も同じような事あっただろ?5月ぐらいに」

言われてみれば、要の声によく似ている。

しかも“直人の中にいる”という事は、半年前の直人とほぼ同じ状態だ。

⏰:10/10/21 19:07 📱:N08A3 🆔:yJnmi4cE


#476 [我輩は匿名である]
「(何で!?お前にも本あんの!?)」

「無いよ」

「(じゃあ何でこんな事になってんの?)」

「…それは…今はまだ言えないな」

要は、なぜこんな状況になっているのは知っているようだ。

しかし、『今はまだ』という事は、いつか教えてくれるのだろうか?

「(まだって、いつか教えてくれんの?)」

「まぁ、言うべき時になったらね」

⏰:10/10/22 22:24 📱:N08A3 🆔:PoYSolQc


#477 [我輩は匿名である]
「(いつになんの?それ)」

「さぁ?」

「(何なんだよお前ー!)」

「何って、長月要だよ」

「(知ってるっつーの!)」

直人はわけがわからず、うなだれながら大きくため息を吐いた。

⏰:10/10/24 22:22 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#478 [我輩は匿名である]
昼休み、直人は不服そうに薫を見る。

「…何でわかってたわけ?幽霊の正体が要だって」

「逆に何でわからなかったわけ?」

呆れるように薫が聞き返す。

「石川晶が運動嫌いって話で『意外だ』って言うんなら、

あの女を知っている人間って事だろ?

その中から男の声ってので、今日子は候補から外れる。

で、『もう忘れたのか』って言われたんなら、お前が知ってる男だろ?

だったら長月要しかいないじゃないか」

⏰:10/10/24 22:22 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#479 [我輩は匿名である]
「さすが学年1位」

薫の解説に、要も納得している。

何だか疎外感を味わっている気がして、直人はムスッとする。

「…あーあー、どうせバカですよ、俺は」

「いじけるなよ」

要と薫の声が重なる。

「ハモるなよお前ら!」

「……え、今もいるのか?長月要」

「いるよ、24時間いるみたいだぞ」

⏰:10/10/24 22:23 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#480 [我輩は匿名である]
「えー迷惑な話」

「そんな事言われたって困るよ!」

『迷惑』と言われてショックだったのか、直人の中で要が叫ぶ。

「でも、何でそんな事になってるんだ?」

「えっ?俺だけ!?お前なってないの!?」

「なってない。響子も何も言ってないし、お前だけじゃないのか?」

「えーもう意味わかんねぇ…」

直人は椅子の背もたれにもたれて天井を見上げた。

⏰:10/10/24 22:23 📱:N08A3 🆔:F3jbXIQM


#481 [我輩は匿名である]
放課後、飛鳥はボーッと、自分の席で黄昏ていた。

「神崎、帰んねぇのか?」

直人は鞄を肩から掛けながら話し掛ける。

「うん…もうちょっとボケーッとしてから帰る」

飛鳥は相変わらず、元気ない笑顔で答える。

それを見て、直人は真顔で何かを考える。

「………何で悩んでるのかわかんねぇけどさ」

少しして、直人は口を開いた。

「いつまでも悩んでるとしんどくないか?」

⏰:10/10/25 18:11 📱:N08A3 🆔:B2OZUzic


#482 [我輩は匿名である]
「…んー、まぁ、疲れるね」

飛鳥は苦笑して答える。

「じゃあさ、何かに熱中して、ちょっと間悩み事忘れたら?」

そう言われて、飛鳥はきょとんとする。

「…え?」

「いや…ずーっと悩んでると、そのうち欝になりそうな気がしてさ。

だから、たまには何かで気分転換しろよ」

直人にしてはまともなアドバイス。

飛鳥は意外そうな目で直人を見上げている。

⏰:10/10/25 18:12 📱:N08A3 🆔:B2OZUzic


#483 [我輩は匿名である]
要も何も言わない。

「…そうだね」

少しして、飛鳥は小さく笑った。

「そうしてみるよ。ありがと」

「おう」

ちょっと元気になったような彼女の笑顔を見て、直人もニッと笑い返した。

⏰:10/10/25 18:12 📱:N08A3 🆔:B2OZUzic


#484 [我輩は匿名である]
「(…どうしよう…)」

一方、奏子も悩んでいた。
どうしてあそこまで言ってしまったんだろう、と。

確かに、飛鳥が黙って直人と会っていたのには苛立った。

お守りをあげていたのにも、正直腹が立った。

しかし、飛鳥が陰でコソコソやるような性格でない事は、奏子も知っている。

「(…飛鳥の話も、聞いてあげれば良かったな…)」

帰りながら、奏子は小さくため息を吐く。

腹が立つあまり、昼食も一緒にとらなくなってしまった。

⏰:10/10/27 19:08 📱:N08A3 🆔:EbC01sZ6


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